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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G21C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G21C
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G21C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21C
管理番号 1335459
審判番号 不服2016-8206  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-18 
確定日 2017-12-23 
事件の表示 特願2011-127718「原子力発電所装置。」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月10日出願公開、特開2012-242375、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
平成23年 5月23日 特許出願
平成26年 4月14日 手続補正書
平成27年 1月29日 拒絶理由通知(同年2月10日発送)
平成27年 4月 7日 意見書・手続補正書
平成27年 9月30日 拒絶理由通知(最後)(同年10月6日発送)
平成27年10月30日 意見書・手続補正書
平成28年 3月30日 平成27年10月30日付け手続補正の却下の
決定(同年4月12日発送)
拒絶査定(同年4月12日発送)
平成28年 5月18日 本件審判請求、手続補正書
平成29年 3月31日 拒絶理由通知(同年4月11日発送、以下「当
審拒絶理由通知1」という。)
平成29年 6月 5日 意見書・手続補正書
平成29年 8月28日 拒絶理由通知(最後)(同年9月5日発送、以
下「当審拒絶理由通知2」という。)
平成29年 9月25日 手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成29年9月25日付け手続補正により補正された請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、本願発明1、2は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
原子炉の緊急時に、アキュムレーターの水をガス発生器で高圧化し、原子炉に送り込む緊急注水装置を備えた原子力発電装置であって、
前記ガス発生器は、推薬、ケースを有し、ケースからアキュムレーターへの高圧ガスの出口には、ケース内の推薬の燃焼に依って、前記高圧が発生した場合に、アキュムレーター側に向かって開く一方封版を有し、制御器又は手動起爆装置が、電気雷管又は高速導火線TLXを起動し、前記電気雷管又は高速導火線TLXにより、前記推薬が点火されて燃焼し、高圧ガスを発生するガス発生器であり、
前記ガス発生器を複数個、前記アキュムレーターに装着した事を特徴とする、緊急注水装置を備えた原子力発電装置。
【請求項2】
前記注水の進行に依り、アキュムレーター内の圧力が低下した場合には、残る他のガス発生器を作動させる追い炊きを行い、少なく共追い炊き用ガス発生器は、一方封板構造として、先行して作動したガス発生器からの高圧の影響を受けない様にした、請求項1の装置。」

第3 引用文献、引用発明等
本願発明1の発明特定事項は、原査定と同日付けの補正の却下の決定で却下された平成27年10月30日付け手続補正の請求項1の発明特定事項に類似することに鑑み、以下においては、原査定の拒絶の理由に引用された文献とともに、当該補正の却下の決定で引用された文献についても検討する。

1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献である特開2000-98078号公報(以下「引用文献1」という。注:平成28年3月30日付けの拒絶査定は、平成27年9月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-4によって、拒絶をすべきものであるとするところ、当該拒絶理由通知書で引用された文献である。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子力発電プラントに係り、特に原子炉事故時に再臨界を防止する原子炉安全設備に関する。」

(2)「【0010】次に、従来技術として特開平6-265675号公報の例を図7を用いて紹介する。従来技術の原子炉安全設備は、原子炉格納容器14内の原子炉圧力容器1の下部に耐火性の材料もしくは耐火材の構造物20を設置し、更にその構造物20に中性子吸収材を含有させることで、溶融炉心の再臨界を抑制するものである。」

(3)図7は以下のとおりである。


(4)以上によれば、刊行物1には以下の発明が記載されている。
「原子炉格納容器14内の原子炉圧力容器1の下部に耐火性の材料もしくは耐火材の構造物20を設置し、更にその構造物20に中性子吸収材を含有させることで、溶融炉心の再臨界を抑制する原子炉安全設備を備えた、原子力発電プラント。」(以下「引用発明1」という。)

2 引用文献2
平成28年3月30日付け補正の却下の決定で引用された引用文献である特開昭56-114799号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「(1) 原子炉水位検出器と、少なくともこの水位検出器からの低水位信号により付勢され再循環ポンプをトリップする再循環ポンプトリップ回路とを具備したことを特徴とする再循環ポンプトリップ装置。」(特許請求の範囲)

(2)「本発明は、沸騰水炉(以下BWRと略称する)の再循環ポンプトリップ装置に係り、特にBWRの水位低下を抑制する再循環ポンプトリップ装置に関する。
BWRプラントにおいて、原子炉の水位が高いと主タービンに悪影響を及ぼし、水位が低いと炉心露出の恐れがあるので、原子炉水位制御は圧力制御、流量制御と並んで重要なものである。従来、原子炉水位が所定レベルより低下すると原子炉をスクラムし、さらに水位が低下したときは非常用炉心冷却装置(以下ECCSと略称する)起動させることによって炉心の露出を防いでいる。」(1頁右下欄4行?同欄16行)

(3)「本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、BWRの通常運転時および異常時過渡変化中において原子炉水位の過渡的な異常低下を抑制することができ、かつ不用な原子炉隔離、ECCS起動を防止できる再循環ポンプトリップ装置を提供することを目的とする。」(2頁左下欄14行?同欄19行)

(4)以上によれば、刊行物2には以下の発明が記載されている。
「原子炉水位検出器と、少なくともこの水位検出器からの低水位信号により付勢され再循環ポンプトリップする再循環ポンプトリップ回路とを具備することにより、負荷遮断により水位が低下したときは非常用炉心冷却装置を起動して冷却水を注水する、BWRの水位低下を抑制する再循環ポンプトリップ装置。」(以下「引用発明2」という。)

3 引用文献3
平成28年3月30日付け補正の却下の決定で引用された引用文献である特開昭53-113992号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1)「1.複数の原子炉冷却ループに接続する冷却材貯留用蓄圧器を有する原子炉緊急注水系において、前記蓄圧器が前記冷却ループの蒸気管に接続する流路と、該蒸気管の設けられている冷却ループと異なる冷却ループに接続する流路と、前記蓄圧器の保温部材を有することを特徴とする原子炉緊急注水系。」(特許請求の範囲)

(2)「このような緊急注水系の設けられた原子炉においては、原子炉冷却系の蒸気ドラム11から出た冷却材は循環ポンプ12により加圧され入口ヘッダ13に入る。入口ヘッダ13を出た冷却材は多数の圧力管からなる炉心4を通り蒸気ドラム11に回流する(以下、この冷却ループをAループと称し、他の冷却ループをBループと称する)。炉心4で加熱され発生した蒸気は蒸気ドラム11において分離され、主蒸気管15によりタービン(図示せず)に到る。この際、蒸気の一部は蒸気導管16を介して蓄圧器72に導かれる。蓄圧器72の下部から出る配管は止弁82(通常時用)および逆止弁92を通って蒸気を注出した冷却ループと異なるBループの蒸気ドラム21に導かれる。Bループにおいても全く同様になる。」

(3)「このような緊急注水系の設けられている原子炉は、原子炉の一次冷却系の配管破断事故等が発生した緊急時、例えばAループの冷却ループに破断が発生したとすると、破断したAループの圧力は急激に低下してゆくが、Aループの蓄圧器71の圧力は健全なBループの蒸気圧力により保たれているため、蓄圧器71内の冷却材は自動的に逆止弁91を押し開け、破断したAループに注入される。」

(4)図2は以下のとおりである。

(5)以上によれば、刊行物3には、以下の発明が記載されている。
「複数の原子炉冷却ループに接続する冷却材貯留用蓄圧器を有する原子炉緊急注水系が設けられた原子炉において、
前記蓄圧器が前記冷却ループの蒸気管に接続する流路と、該蒸気管の設けられている冷却ループと異なる冷却ループに接続する流路と、前記蓄圧器の保温部材を有することにより、
一方の冷却ループに破断が発生した際、破断したループの蓄圧器の圧力が他の健全なループの蒸気圧力により保たれ、蓄圧器内の冷却剤が破断したループに注入される、
原子炉緊急注水系が設けられた原子炉。」(以下「引用発明3」という。)

4 引用文献4
平成28年3月30日付け補正の却下の決定で引用された引用文献である特開昭62-237395号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「内部に炉心を収納する原子炉圧力容器と、この原子炉圧力容器の上方に配置され内部に冷却材を保有するプールと、前記プールに隣接して配置され冷却材注入配管を介して前記原子炉圧力容器に接続される高圧タンクと、この高圧タンクの気相部と前記原子炉圧力容器の気相部とを接続しかつ高圧タンクから原子炉圧力容器に注入する時のみ開動作する弁を有する加圧配管と、前記高圧タンクの上部に一端を接続し他端を前記プールの液相部に開放させかつ高圧タンク内の冷却水が一定値以下になった場合に開動作する弁を有する減圧配管と、前記タンクの液相部と高圧タンクとを接続する冷却材補給配管とから成ることを特徴とする非常用炉心冷却装置。」(特許請求の範囲)

(2)「(作用)
この様にして構成された非常用炉心冷却装置に於いては、小LOCAまたは給水喪失トランジェント時のように原子炉圧力が高圧に維持され、かつ原子炉水位が低下する事象の場合、冷却材を貯えた高圧タンクに原子炉圧力を背圧として加えることにより原子炉内に冷却材が供給される。更に、同タンク内に貯えた冷却材が枯渇した場合は、まず原子炉からの圧力の供給を一旦隔離した上で同タンクを減圧することにより、Elevated Poolに貯えられた冷却材を自重によって高圧タンク内に注入する。この様な高圧タンク等から構成される系統を2系統以上設置すると、一方の高圧タンクが冷却水をElevated Poolから補給中にも、残りのタンクから冷却水を原子炉内へ注入することが出来、原子炉への注水を連続して行うことが出来る。
この様にして高圧の冷却水を原子炉内へ継続的に注入することが出来るため、原子炉圧力が高圧に維持され、かつ、原子炉水位が低下する小LOCA時、給水喪失トランジェント時等に於いても、炉心露出を防止すると同時に充分な炉心冷却を確保することが可能となる。」(2頁右下欄15行?3頁左上欄16行)

(3)以上によれば、刊行物4には以下の発明が記載されている。
「内部に炉心を収納する原子炉圧力容器と、この原子炉圧力容器の上方に配置され内部に冷却材を保有するプールと、前記プールに隣接して配置され冷却材注入配管を介して前記原子炉圧力容器に接続される高圧タンクと、この高圧タンクの気相部と前記原子炉圧力容器の気相部とを接続しかつ高圧タンクから原子炉圧力容器に注入する時のみ開動作する弁を有する加圧配管と、前記高圧タンクの上部に一端を接続し他端を前記プールの液相部に開放させかつ高圧タンク内の冷却水が一定値以下になった場合に開動作する弁を有する減圧配管と、前記タンクの液相部と高圧タンクとを接続する冷却材補給配管とを備えることにより、
原子炉圧力が高圧に維持され、かつ原子炉水位が低下する事象の場合、冷却材を貯えた高圧タンクに原子炉圧力を背圧として加えて原子炉内に冷却材を注入する、
非常用炉心冷却装置。」(以下「引用発明4」という。)

5 引用文献5
平成28年3月30日付け補正の却下の決定で引用された引用文献である特開昭61-13184号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「(1)2以上の1次冷却系ループを備えた加圧水型原子力プラントにおいて、原子炉事故時、非常用炉心冷却装置作動信号の発信に呼応して少なくとも1台の1次冷却材ポンプを運転継続し、他の1次冷却材ポンプを運転停止することを特徴とする原子炉事故時の炉心崩壊熱除去方法。」(特許請求の範囲)

(2)「蒸気発生器及び1次冷却材ポンプをそれぞれ2基づつ有する2ループプラントの1次冷却系を第1図に示す。炉心10で加熱された1次冷却材は、原子炉容器1から高温側配管2を経て蒸気発生器3に入り、そこで2次冷却系と熱交換されてポンプ吸込側配管4、1次冷却材ポンプ5、低温側配管6を経て原子炉容器1に戻る。1次冷却系の圧力制御は配管(加圧器サージ管)7により高温側配管2に接続する加圧器8によって行なわれる。加圧器8で加圧器ヒータ9による加圧効果と11次冷却材ポンプ出口側からの給水による加圧器スプレィ11の減圧効果を制御することにより圧力制御を行なう。尚、図示していないが蒸気発生器3では、放射性物質を含まない2次冷却系の水が蒸気に変換され、タービン系へ供給される。」(1頁右下欄13行?2頁左上欄7行、注:下線は当審が付加した。)

(3)「[作用]
蒸気発生器伝熱管破損事故等の1次冷却材喪失以外の事故に対しては、本発明の少なくとも1台の1次冷却材ポンプを事故後も運転継続する原子炉事故時の炉心崩壊熱除去方法は、加圧器スプレイの給水源となっているループの1次冷却材ポンプが運転継続ポンプとして含まれている限り、全台運転継続する方法と同じ効果、即ち、1次冷却系を均一に冷却でき(原子炉は停止され炉心発生熱は崩壊熱だけであるため、1台の1次冷却材ポンプだけで1次冷却材内の温度分布を均一にできる)、更に、加圧器スプレイが使用できるのでプラントの圧力制御が容易であり、したがって、1次冷却系内の気泡生成を防止できる。」(3頁左上欄16行?同頁右上欄9行)

(4)以上によれば、刊行物5には以下の発明が記載されている。
「2以上の1次冷却系ループを備えた加圧水型原子力プラントにおいて、原子炉事故時、非常用炉心冷却装置作動信号の発信に呼応して少なくとも1台の1次冷却材ポンプを運転継続し、他の1次冷却材ポンプを運転停止することにより1次冷却系を均一に冷却する、原子炉事故時の炉心崩壊熱を除去する方法。」(以下「引用発明5」という。)

(5)また、刊行物5には以下の技術事項が記載されている。
「加圧器ヒータを用いて圧力を制御すること。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1を対比する。引用発明1の「原子力発電プラント」は、本願発明1の「原子力発電装置」に相当する。してみると、両者は、「原子力発電装置」の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点:「原子力発電装置」は、本願発明1では「原子炉の緊急時に、アキュムレーターの水をガス発生器で高圧化し、原子炉に送り込む緊急注水装置を備え」、「前記ガス発生器は、推薬、ケースを有し、ケースからアキュムレーターへの高圧ガスの出口には、ケース内の推薬の燃焼に依って、前記高圧が発生した場合に、アキュムレーター側に向かって開く一方封版を有し、制御器又は手動起爆装置が、電気雷管又は高速導火線TLXを起動し、前記電気雷管又は高速導火線TLXにより、前記推薬が点火されて燃焼し、高圧ガスを発生するガス発生器であり、前記ガス発生器を複数個、前記アキュムレーターに装着」するのに対し、引用発明1は、そのような特定を有しない点。

(2)判断
ア 以下、上記相違点について検討する。上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項、特に、「推薬、ケースを有し、ケースからアキュムレーターへの高圧ガスの出口には、ケース内の推薬の燃焼に依って、前記高圧が発生した場合に、アキュムレーター側に向かって開く一方封版を有し、制御器又は手動起爆装置が、電気雷管又は高速導火線TLXを起動し、前記電気雷管又は高速導火線TLXにより、前記推薬が点火されて燃焼し、高圧ガスを発生するガス発生器」は、引用文献1?5には記載されていない。そして、引用発明1において前記ガス発生器を備えるようになすことは、当業者であっても、引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ また、引用発明2?5は、何れも、緊急時に原子炉(炉心)を冷却する発明であるが、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項である
「推薬、ケースを有し、ケースからアキュムレーターへの高圧ガスの出口には、ケース内の推薬の燃焼に依って、前記高圧が発生した場合に、アキュムレーター側に向かって開く一方封版を有し、制御器又は手動起爆装置が、電気雷管又は高速導火線TLXを起動し、前記電気雷管又は高速導火線TLXにより、前記推薬が点火されて燃焼し、高圧ガスを発生するガス発生器」
を備えるものではない。また、引用発明2?5の何れの発明においても、前記ガス発生器を備えるようになすことは、当業者であっても、引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て備え、さらに、「追い炊き用ガス発生器は、一方封板構造として、先行して作動したガス発生器からの高圧の影響を受けない」ことを特定する発明である。よって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1?5,引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
(1)新規事項:平成27年4月7日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(2)明確性:この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)新規性:この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(4)進歩性:この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 判断
(1)原査定は、平成27年4月7日付け手続補正により特許請求の範囲の請求項1に追加した「福島原発事故で発生した…」等の事項が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない旨を理由とするものである。しかしながら、平成29年9月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲では、原査定で指摘した事項が削除されているので、補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由は解消した。

(2)原査定は、平成27年4月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、「福島原発事故」等の不明確な特定事項を有すること、また、図や他の出願を引用して特定する結果、発明特定事項が不明確になっていること等を理由とするものである。しかしながら、平成29年9月25日付け手続補正により補正された特許請求の範囲では、上記不明確な発明特定事項が削除された。よって、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由は解消した。

(3)原査定は、平成27年4月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。
平成27年4月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、
「福島原発事故以前に公認され、稼働して居た原子力発電装置に、下記1から10迄の装置を1つ以上追加した原子力発電装置。
追加装置1:福島原発事故で発生した、…(略)…その具体的構造は、スプリンクラーの様に、タンク内の気体の圧力に依ってタンク内の水を圧送し、原子炉内に噴射させ、タンク内の気体は自動車用エアーバッグと類似の推薬を用いたロケットエンジンに依って加圧し、…(略)…緊急炉心冷却装置
追加装置2.:地震、津波等に依る…(略)…原子力発電用ダミーロード。
追加装置3:メルトダウンした燃料の通過を阻止し、および又は発熱を抑える機能を持つ受け皿。
追加装置4:重要な制御弁やスイッチ類の操作を、…。」
であるところ、原査定は、追加装置3に着目して新規性進歩性を判断したものである。しかしながら、平成29年9月25日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は、追加装置1に限定するとともに、不明瞭な記載を削除して発明特定事項を明確にしたものとなっており、上記のとおり、本願発明1、2は、引用発明1?5ではなく、また、引用発明1?5、及び引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(4)したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審拒絶理由1は、請求項1?3について、「自動車用エアーバッグに、構造的に類似したガス発生器」は、どのような構造のガス発生器なのか、明確でない等の拒絶の理由を通知したものであるが、平成29年9月25日付けの手続補正により特許請求の範囲が補正された結果、当審拒絶理由1で通知した拒絶の理由は解消した。
当審拒絶理由2は、請求項3について、「構造的に類似した構成とする」とは、どのような構成が構造的に類似した構成なのか、不明瞭である等の拒絶の理由を通知するものであるが、平成29年9月25日付けの手続補正により請求項3が削除された結果、当審拒絶理由2で通知した拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願の願書に添付した特許請求の範囲についてした補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。また、本願の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。さらに、本願発明1、2は、引用発明1?5ではなく、また、当業者が引用発明1?5、引用文献1?5に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない、
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-04 
出願番号 特願2011-127718(P2011-127718)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (G21C)
P 1 8・ 537- WY (G21C)
P 1 8・ 121- WY (G21C)
P 1 8・ 113- WY (G21C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松川 直樹
小松 徹三
発明の名称 原子力発電所装置。  

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