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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1335550
審判番号 不服2017-7268  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-19 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2012-218465「半導体基板パッシベーション膜形成用組成物、パッシベーション膜付半導体基板及びその製造方法、並びに太陽電池素子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 72448、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年9月28日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 8月10日 審査請求
平成28年 6月20日 拒絶理由通知
平成28年 8月29日 意見書・手続補正
平成29年 1月31日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 5月19日 審判請求

第2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と,
脂肪酸アミド及び下記一般式(II)で表される化合物から選択される少なくとも1種と,
を含む半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【化1】


〔式(I)中,R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは0?3の整数を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2),R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。〕
R^(5)-(-O-R^(10)-)_(n)-O-R^(6) ・・・(II)
〔式(II)中,R^(5)及びR^(6)はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し,R^(10)はアルキレン基を示す。nは3以上の任意の整数である。なお,複数存在する-(-O-R^(10)-)-におけるR^(10)は同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記脂肪酸アミドを含有し,該脂肪酸アミドが下記一般式(1),(2),(3)及び(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
R^(7)CONH_(2)・・・・(1)
R^(7)CONH-R^(8)-NHCOR^(7)・・・・(2)
R^(7)NHCO-R^(8)-CONHR^(7)・・・・(3)
R^(7)CONH-R^(8)-N(R^(9))_(2)・・・・(4)
〔一般式(1),(2),(3)及び(4)中,R^(7)及びR^(9)は各々独立に炭素数1?30のアルキル基又はアルケニル基を示し,R^(8)は炭素数1?10のアルキレン基を示す。R^(7)及びR^(9)は同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項3】
前記脂肪酸アミドを含有し,該脂肪酸アミドが,ステアリン酸アミド,N,N’-メチレンビスステアリン酸アミド及びステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドからなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1又は請求項2に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸アミドを含有し,該脂肪酸アミドの分解温度が,400℃以下である請求項1?請求項3のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【請求項5】
前記一般式(II)で表される化合物を含有し,該一般式(II)で表される化合物の数平均分子量が300?1,000,000である請求項1?請求項4のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【請求項6】
前記一般式(I)におけるR^(1)は,それぞれ独立に炭素数1?4のアルキル基である請求項1?請求項5のいずれかに記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【請求項7】
前記一般式(I)において,nが1?3の整数であり,R^(4)がそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?4のアルキル基である請求項1?請求項6のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【請求項8】
さらに樹脂を含有する請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【請求項9】
前記樹脂の含有率が0.1質量%?30質量%である請求項8に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
【請求項10】
半導体基板と,前記半導体基板上の全面又は一部に設けられた請求項1?請求項9のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物の焼成物層と,を有するパッシベーション膜付半導体基板。
【請求項11】
半導体基板上の全面又は一部に,請求項1?請求項9のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と,
前記組成物層を焼成処理して,パッシベーション膜を形成する工程と,
を有するパッシベーション膜付半導体基板の製造方法。
【請求項12】
p型層及びn型層がpn接合されてなる半導体基板と,
前記半導体基板上の全面又は一部に設けられた請求項1?請求項9のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物の焼成物層と,
前記半導体基板の前記p型層及びn型層の少なくとも一方の層上に配置された電極と,
を有する太陽電池素子。
【請求項13】
p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有し,前記p型層及びn型層の少なくとも一方の層上に電極を有する半導体基板の,前記電極を有する面の一方又は両方の面上に,請求項1?請求項9のいずれか1項に記載の半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を用いて組成物層を形成する工程と,
前記組成物層を焼成処理して,パッシベーション膜を形成する工程と,
を有する太陽電池素子の製造方法。」

第3 原査定の概要
A.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
B.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由A(特許法第29条第1項第3号)について
・請求項1,6,7
・引用文献等 2
出願人は意見書において,引用文献2について,
「引用文献2は「層間絶縁膜」を形成するための組成物であり[請求項1],銅拡散防止膜であるバリアメタルとの密着性を課題としています[0004]。本願のような,パッシベーション層形成の用途は記載も示唆もされておりません。」と主張している。
しかしながら,引用文献2の段落[0048]には,「このようにして得られる層間絶縁膜は,低比誘電率を示し,かつバリアメタルとの密着性に優れることから,…,半導体素子の表面コート膜などの保護膜,…,液晶表示素子用の保護膜や絶縁膜,エレクトロルミネッセンス表示素子用の保護膜や絶縁膜などの用途に有用である。」とあり,保護膜に用いられていることは明らかであって,特に,最初の下線部の「半導体素子の表面コート膜」からみて,パッシベーション層形成の用途に対する示唆がなされているものと認める。
したがって,出願人の主張は採用できず,よって,請求項1,6,7に係る発明は,引用文献2に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
●理由B(特許法第29条第2項)について
・請求項5?7
・引用文献等 2,3,4
上記拒絶理由通知書で述べたとおり,有機アルミニウム化合物と共に用いられる一般式(II)で表される化合物において,当該化合物の数平均分子量として300?1,000,000を満たすものについては,引用文献3又は4に挙げられており,そうすると,請求項5?7に係る発明は,引用文献2,3,4に基いて当業者が容易に想到できたものといえ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項8,9
・引用文献等 2,3,4,5
引用文献2,4には,樹脂(ポリマー)を加えることが示されているし,引用文献4,5には,樹脂の含有率についての記載がある。
よって,請求項8,9に係る発明は,引用文献2,3,4,5に基いて当業者が容易に想到できたものといえ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項10?13
・引用文献等 2,3,4,5,1
引用文献1,5には,太陽電池素子に関する記載がある。
よって,請求項10?13に係る発明は,引用文献1,2,3,4,5に基いて当業者が容易に想到できたものといえ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2012/119684号
2.特開2002-363490号公報
3.特開2001-226171号公報
4.特開2000-319530号公報
5.特開平08-225382号公報
(当審注:引用文献番号は当審において付け替えた。)

第4 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)(当審注:訳は,対応する特表2014-516467号公報による。)
ア 「Die vorliegende Erfindung betrifft Aluminiumoxid basierte Passivierungs-schichten, die gleichzeitig als Diffusionsbarriere fuer Aluminium und andere Metalle gegenueber darunter liegenden Waferschichten wirken. Weiterhin werden ein Verfahren und geeignete Zusammensetzungen zur Herstellung dieser Schichten beschrieben. 」(1頁3-7行)
(訳:本発明は,下部ウエハ層のための,アルミニウムおよび他の金属に対する拡散バリアの役割を同時に果たす,酸化アルミニウムベースの不動態化層に関する。さらに,これらの層の製造のための方法および好適な組成物を記載する。)
イ 「Die Aluminiumoxidschicht wirkt nicht nur als Barriereschicht sondern zeigt aussrdem gegenueber der p-dotierten Basis hervorragende Passivierungs- eigenschaften, weshalb man nach dem Feuerprozess keine weiteren Reinigungs- und Fertigungsschritte benoetigt.

In dem erfindungsgemaessen Verfahren sind vorzugsweise Sol-Gel basierte Tinten und/oder Pasten einsetzbar, durch die dielektrische Aluminiumoxidoder Aluminiumoxid-Hybridschichten mit Barrierewirkung ausgebildet werden koennen, durch die die Diffusion von metallischem Aluminium und/oder andere vergleichbaren Metallen und Metallpasten, die mit Silizium eine niedrigschmelzende (<1300°C) Legierung bilden koennen, verhindert werden kann. Die im erfindungsgemaessen Verfahren gebildeten dielektrische Aluminiumoxid- oder Aluminiumoxid-Hybridschichten wirken dementsprechend als Diffusionsbarriere.

Besonders bevorzugt ist die Verwendung von sterisch stabilisierte Tinten und /oder Pasten, wie sie in den oben zitierten Patentanmeldungen beschrieben und charakterisiert sind, um im erfindungsgemaessen Verfahren Al_(2)O_(3) -Beschichtungen als auch gemischten Al_(2)O_(3) -Hybrid-Schichten auszubilden.

Als Hybridmaterialien kommen fuer diese Verwendung insbesondere Mischungen aus Al_(2)O_(3) mit den Oxiden von Bor, Gallium, Silicium, Germanium, Zink, Zinn, Phosphor, Titan, Zirkonium, Yttrium, Nickel, Cobalt, Eisen, Cer, Niob, Arsen und Blei in Frage, wobei die Tinten und/oder Pasten durch Einbringung der entsprechenden Precursoren in das System erhalten werden.

Nachdem die erfindungsgemaessen Tinten und/oder Pasten in gewuenschter Weise auf die Waferoberflaechen aufgebracht worden sind, werden sie bei erhoehten Temperaturen zur Ausbildung der Barriereschichten getrocknet. Diese Trocknung erfolgt bei Temperaturen zwischen 300 und 1000 °C, wobei sich amorphe Al_(2)O_(3) und/oder Aluminiumoxidhybrid-Schichten ausbilden. Bei diesen Temperaturen erfolgt innerhalb einer Zeit von < 5 Minuten bei einer Schichtdicke von <100 nm eine rueckstandsfreie Trocknung unter Ausbildung der gewuenschten Schichten. Bevorzugt wird der Trocknungsschritt bei Temperaturen im Bereich von 350 - 450 °C durchgefuehrt. Bei dickeren Schichten muessen die Trocknungsbedingungen entsprechend angepasst werden. Es ist jedoch hierbei zu beachten, dass bei Temperung ab 1000 °C harte, kristalline Schichten (vgl. Korund) entstehen.」(12頁1行-13頁6行)
(訳:酸化アルミニウム層は,バリア層の役割を果たすだけでなく,さらにp-ドープ基材に対して優れた不動態化特性をも示し,これは,さらなる洗浄および製造のステップを,焼成処理後に必要としないことを意味する。
本発明の方法を,好ましくは,バリア作用を有する誘電体酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムハイブリッドの層の形成を可能にするゾルゲルベースのインクおよび/またはペーストを使用して行うことができ,これにより,ケイ素と低融点(<1300℃)合金を形成することができる金属アルミニウムおよび/もしくは他の同等の金属または金属ペーストの拡散を防止することができる。したがって,本発明の方法において形成される誘電体酸化アルミニウムまたは酸化アルミニウムハイブリッドの層は,拡散バリアの役割を果たす。
特に好ましいのは,上で引用された特許出願に記載され特徴づけられるように,本発明の方法におけるAl_(2)O_(3)のコーティングおよび混合Al_(2)O_(3)ハイブリッド層の形成のために立体的に安定化されたインクおよび/またはペーストの使用である。
この使用のための好適なハイブリッド材料は,特に,Al_(2)O_(3)と,ホウ素,ガリウム,ケイ素,ゲルマニウム,亜鉛,スズ,リン,チタン,ジルコニウム,イットリウム,ニッケル,コバルト,鉄,セリウム,ニオブ,ヒ素または鉛の酸化物との混合物であり,ここで,インクおよび/またはペーストは,対応する前駆体の系中への導入により得られる。
本発明のインクおよび/またはペーストを,所望のやり方でウエハ表面に適用した後,それらを,バリア層を形成させるために高温で乾燥させる。この乾燥を,300℃と1000℃との間の温度で行い,アモルファスAl_(2)O_(3)および/または酸化アルミニウムハイブリッドの層が形成される。これらの温度において,所望の層を形成させながらの残渣を含まない(residue-free)乾燥は,<5分間以内に,<100nmの層厚で起こる。乾燥ステップを,好ましくは,350-450℃の範囲で行う。より厚い層の場合には,乾燥条件をそれに対応して適合させなければならない。しかしながら,ここで,硬い結晶層は,1000℃からの加熱で形成することに注意しなければならない。)
ウ 「Bei den Tinten handelt es sich um sterisch stabilisierte Al_(2)O_(3) -Tinten mit einem sauren pH-Wert im Bereich von 4 - 5, vorzugsweise < 4.5, welche alkoholische und/oder polyoxylierte Loesungsmittel enthalten. Solche Zusammensetzungen weisen sehr gute Benetzungs- und Adhaesions- eigenschaften auf SiO_(2)- und silan-terminierten Siliciumwaferoberflaechen auf.

Zur Formulierung dieser tintenfoermigen Aluminium-Sole koennen entsprechende Alkoxide des Aluminiums verwendet werden, wie Aluminium- triethylat, Aluminiumtriisopropylat und Aluminiumtri-sec-butylat, oder leicht loesliche Hydroxide und Oxide des Aluminiums. Diese Aluminiumverbindungen sind in Loesungsmittelgemischen geloest. Dabei kann es sich um polare protische und um polare aprotische Loesungsmittel handeln, die wiederum mit unpolaren Loesungsmitteln versetzt sein koennen, um das Benetzungsverhalten den gewuenschten Bedingungen und Eigenschaften der Beschichtungen anzupassen. In der Beschreibung der oben genannten Anmeldung sind verschiedenste Beispiele fuer die entsprechenden Loesungsmittel aufgezaehlt.

Als Loesungsmittel koennen in den Tinten Mischungen aus mindestens einem niedrigsiedendem Alkohol, vorzugsweise Ethanol oder Isopropanol, und einem hochsiedenden Glykolether, bevorzugt Diethylenglykol- monoethylether, Ethylenglykolmonobutylether oder Diethylenglykolmono- butylether, enthalten sein. Es koennen aber auch andere polare Loesungsmittel, wie Aceton, DMSO, Sulfolan oder Ethylacetat und aehnliche verwendet werden. Durch ihr Mischungsverhaeltnis kann die Beschichtungseigenschaft an das gewuenschte Substrat angepasst werden. Weiterhin enthalten die einsetzbaren Tinten Wasser, wenn Aluminiumalkoxide zur Solbildung eingesetzt worden sind. Das Wasser ist erforderlich zur Erzielung der Hydrolyse der Aluminiumkerne und deren Praekonden- sation, sowie zur Ausbildung einer gewuenschten dichten, homogenen Schicht, wobei das molare Verhaeltnis von Wasser zu Precursor zwischen 1 : 1 und 1 : 9, bevorzugt zwischen 1 : 1.,5 und 1 : 2.5 liegen sollte.

Weiterhin ist die Zugabe von organischer Saeure, bevorzugt Essigsaeure, erforderlich, wodurch die freigesetzten alkoxide zu den korrespondierenden Alkoholen umgesetzt werden. Gleichzeitig katalysiert die zugesetzte Saeure die Praekondensation und die damit einsetzende Vernetzung der in Loesung hydrolisierten Aluminiumkerne. In der oben genannten Anmeldung sind viele geeignete Saeuren aufgezaehlt.

Durch die Zugabe geeigneter Saeuren oder Saeuregemische kann gleichzeitig eine Stabilisierung des Tinten-Sols erfolgen. Es koennen dem Sol zu diesem Zweck aber auch gezielt komplexbildende und/oder chelatisierende Additive zugesetzt sein. Entsprechende Komplexbildner koennen der oben genannten Anmeldung entnommen werden.

Eine sterische Stabilisierung der Tinten erfolgt dabei durch Vermischen mit hydrophoben Komponenten, wie 1 ,3-Cyclohexadion, Salicylsaeure und deren Strukturverwandten, und maessig hydrophilen Komponenten, wie Acetylaceton, Dihydroxybenzoesaeure, Trihydroxybenzoesaeure sowie deren Strukturverwandten, oder mit Chelatbildnern, wie Ethylendiamintetra- essigsaeure (EDTA), Diethylentriaminpeantaessigsaeure (DETPA), Nitrilotriessigsaeure (NTA), Ethylendiaminetetramethylenephosphonsaeure (EDTPA), Diethylentriaminpentamethylenephosphonsaeure (DETPPA) und strukturverwandten Komplexbildnern bzw. Chelatbildnern.

Des Weiteren koennen dem Aluminium-Sol weitere Additive zur Einstellung der Oberflaechenspannung, Viskositaet, des Benetzungsverhaltens, Trocknungsverhaltens und der Adhaesionsfaehigkeit zugesetzt sein. U. a. koennen auch partikulaere Zuschlagsstoffe zur Beeinflussung der Theologischen Eigenschaften und des Trocknungsverhaltens zugesetzt sein, wie z. B. Aluminiumhydroxide, Aluminiumoxide, Siliziumdioxid, oder zur Formulierung von Hybridsolen Oxide, Hydroxide, Alkoxide der Elemente Bor, Gallium, Silizium, Germanium, Zink, Zinn, Phosphor, Titan, Zirkonium, Yttrium, Nickel, Kobalt, Eisen, Cer, Niob, Arsen, Blei u. a., wobei Oxide, Hydroxide, Alkoxide des Bors und Phosphors auf Halbleitern insbesondere gegenueber Siliziumschichten dotierend wirken.

Vorzugsweise sind in geeigneten Tintenzusammensetzungen die schichtbildenden Komponenten im Verhaeltnis so eingesetzt, dass der Feststoff- gehalt der Tinten zwischen 0.5 und 10 Gew.-%, bevorzugt zwischen 1 und 5 Gew.-%, liegt.

Durch die rueckstandsfreie Trocknung der Tinten nach Beschichtung der Oberflaechen resultieren amorphe AI_(2)O_(3) Schichten, wobei die Trocknung bei Temperaturen zwischen 300 und 1000 °C, bevorzugt bei etwa 350 °C, erfolgt. Bei geeigneter Beschichtung erfolgt die Trocknung innerhalb einer Zeit von < 5 Minuten, wobei einer Schichtdicke von < 100 nm erhalten wird. Werden dickere Schichten gewuenscht, muessen die Trocknungsbedingungen entsprechend variiert werden. Al_(2)O_(3)(-Hybrid)-Schichten, die bei Temperaturen < 500 °C getrockneten worden sind, koennen durch Verwendung der meisten anorganischen Mineralsaeuren, bevorzugt jedoch durch HF und H_(3)PO_(4), sowie durch viele organische Saeuren wie Essigsaeure, Propionsaeure und aehnliche, geaetzt und strukturiert werden.

Als Substrat fuer die Beschichtung mit den entsprechenden Tinten kommen mono- oder multikristalline Siliziumwafer (HF oder RCA-gereinigt), Saphirwafer, Duenn- schichtsolarmodule, mit funktionalen Materialien (z.B. ITO, FTO, AZO, IZO oder Vergleichbare) beschichtete Glaeser, unbeschichtete Glauser, sowie sonstige in der Mikroelektronik verwendete Materialien in Frage. Entsprechend der verwendeten Substrate koennen die durch Verwendung der Tinten gebildeten Schichten als Diffusionsbarriere, druckbares Dielektrikum, elektronische und elektrische Passivierung, Antireflex- beschichtung dienen.」(15頁1行-17頁16行)
(訳:インクは,立体的に安定化させた,4-5,好ましくは<4.5の範囲の酸性pHを有するAl_(2)O_(3)インクであり,これは,アルコール性および/またはポリオキシル化(polyoxylated)溶媒を含む。このタイプの組成物は,SiO_(2)終端およびシラン終端シリコンウエハ表面に対して極めて良好な湿潤特性および固着特性を有する。
これらのインク形態アルミニウムゾルを,アルミニウムトリエトキシド,アルミニウムトリイソプロポキシドおよびアルミニウムトリ-sec-ブトキシドなどの対応するアルミニウムのアルコキシド,または容易に溶解可能なアルミニウムの水酸化物および酸化物を使用して,処方することができる。これらのアルミニウム化合物を,溶媒混合物に溶解させる。ここで,溶媒は,極性プロトン性溶媒および極性非プロトン性溶媒であり得,これに,湿潤挙動をコーティングの所望の条件および特性に適合させるために非極性溶媒を代わりに添加してもよい。上述した出願の記載には,対応する溶媒の極めて多種多様な例が列挙されている。
インク中に存在し得る溶媒は,少なくとも1種の低沸点アルコール,好ましくはエタノールまたはイソプロパノールと,高沸点グリコールエーテル,好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテルまたはジエチレングリコールモノブチルエーテルとの混合物である。しかしながら,アセトン,DMSO,スルホランまたは酢酸エチルなどの他の極性溶媒もまた使用してもよい。コーティング特性を,これらの混合比により所望の基板に適合させることができる。さらに,用い得るインクは,アルミニウムアルコキシドがゾル形成に用いられた場合には,水を含む。水は,アルミニウム核の加水分解およびその予備濃縮(pre-condensation)を達成するために,および所望の不透過性均一層を形成させるために必要であり,ここで,前駆体に対する水のモル比は,1:1と1:9との間,好ましくは1:1.5と1:2.5との間でなければならない。
さらには,有機酸,好ましくは酢酸の添加が必要であり,これは,遊離したアルコキシドを対応するアルコールに変換させる。同時に,添加された酸は,溶液中で加水分解されたアルミニウム核の予備濃縮およびそれに伴って開始される架橋において,触媒作用を及ぼす。上述の出願には,多くの好適な酸が列挙されている。
好適な酸または酸混合物の添加は,同時に,インクゾルの安定化が起こることを可能にする。しかしながら,錯化剤および/またはキレート添加剤もまた,この目的のためにゾルに意図的に添加してもよい。対応する錯化剤は,上述の出願により明らかにされている。
インクの立体的安定化は,ここで,1,3-シクロヘキサジオン,サリチル酸およびそれらの構造類似体(structural relatives)などの疎水性成分,ならびにアセチルアセトン,ジヒドロキシ安息香酸,トリヒドロキシ安息香酸およびそれらの構造類似体などの中程度の疎水性成分,またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA),ジエチレントリアミン五酢酸(DETPA),ニトリロ三酢酸(NTA),エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTPA),ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DETPPA)および構造的に類似する錯化剤もしくはキレート剤などのキレート剤と混合することによりもたらされる。
さらに,表面張力,粘度,湿潤挙動,乾燥挙動および固着能力を調整するためのさらなる添加剤を,アルミニウムゾルに添加することができる。とりわけ,レオロジー特性および乾燥挙動に影響を与えるための粒状化添加剤(particulate additives),例えば水酸化アルミニウム,酸化アルミニウム,二酸化ケイ素などを,または,ホウ素,ガリウム,ケイ素,ゲルマニウム,亜鉛,スズ,リン,チタン,ジルコニウム,イットリウム,ニッケル,コバルト,鉄,セリウム,ニオブ,ヒ素,鉛の元素のハイブリッドゾル,酸化物,水酸化物,アルコキシドの形成のための粒状化添加剤を添加することもまた可能であり,とりわけ,ここで,ホウ素およびリンの酸化物,水酸化物,アルコキシドは,半導体,特にケイ素層に対してドープ効果を有する。
層形成成分を,好ましくは,好適なインク組成物中で,インクの固体含有量が0.5重量%と10重量%との間,好ましくは1重量%と5重量%との間となるような比で用いる

表面のコーティング後のインクの残渣を含まない乾燥により,アモルファスAl_(2)O_(3)層がもたらされ,ここで,乾燥を,300℃と1000℃との間の温度で,好ましくは約350℃で行う。好適なコーティングの場合には,乾燥を,<5分間以内で行い,<100nmの厚みを得る。より厚い層を所望する場合には,これに応じて乾燥条件を変化させなければならない。温度<500℃で乾燥されたAl_(2)O_(3)(ハイブリッド)層を,ほとんどの無機鉱酸の使用によるが,好ましくはHFおよびH_(3)PO_(4)により,ならびに酢酸,プロピオン酸などの多くの有機酸により,エッチングし,構造化することができる。
対応するインクによるコーティングに好適な基板は,単結晶または多結晶のシリコンウエハ(HFまたはRCAで洗浄されたもの),サファイアウエハ,薄膜太陽電池用モジュール,機能性材料(例えば,ITO,FTO,AZO,IZOまたは同種のもの)によりコートされたガラス,コートされていないガラスおよびマイクロエレクトロニクスにおいて使用される他の材料である。使用される基板に従い,インクの使用により形成された層は,拡散バリア,印刷可能な誘電体,電子的および電気的な不動態化または反射防止のコーティングとして役立つ。」
(2)引用発明1
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「酸化アルミニウムベースの不動態化層に好適な組成物であって,このインクをウエハ表面に適用した後高温で乾燥させるとアモルファスAl_(2)O_(3)層が形成され,このインクは,アルミニウムトリエトキシドなどのアルミニウムのアルコキシドを使用すること。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,絶縁膜形成用組成物に関し,さらに詳しくは,半導体素子などにおける層間絶縁膜材料として,低比誘電率の塗膜が得られ,かつ銅拡散防止膜であるバリアメタルとの密着性に優れる絶縁膜形成用組成物に関する。」
イ 「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は,
A)下記一般式(1)で表される化合物,下記一般式(2)で表される化合物および下記一般式(3)で表される化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を加水分解,縮合して得られる加水分解縮合物ならびに(B)有機溶媒ならびに(C)チタンアルコキシド化合物,ジルコニウムアルコキシド化合物,アルミニウムアルコキシド化合物,タンタルアルコキシド化合物,ボロンアルコキシド化合物,チタンキレート化合物,ジルコニウムキレート化合物,アルミニウムキレート化合物,タンタルキレート化合物,ボロンキレート化合物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解,縮合して得られる加水分解縮合物を含有することを特徴とする絶縁膜形成用組成物。
R_(a) Si(OR^(2))_(4-a) ・・・・・(1)
(式中,Rは水素原子,フッ素原子または1価の有機基,R^(2)は1価の有機基,aは1?2の整数を示す。)
Si(OR^(3))_(4) ・・・・・(2)
(式中,R_(3)は1価の有機基を示す。)
R^(4)_(b) (R^(5)O)_(3-b) Si-(R^(8))_(d) -Si(OR^(6))_(3-c) R^(7)_(c) ・・・・・(3)
〔式中,R^(4)?R^(7)は同一または異なり,それぞれ1価の有機基,b?cは同一または異なり,0?2の整数,R^(8)は酸素原子,フェニレン基または-(CH_(2) )_(n)-で表される基(ここで,nは1?6の整数である),dは0または1を示す。〕次に,本発明は,上記絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し,加熱することを特徴とする絶縁膜の形成方法に関する。次に,本発明は,上記絶縁膜の形成方法によって得られるシリカ系絶縁膜に関する。」
ウ 「【0006】
【発明の実施の形態】本発明において,(A)成分の加水分解縮合物とは,上記化合物(1)?(3)の群から選ばれた少なくとも1種の加水分解物および縮合物もしくはいずれか一方である。ここで,(A)成分における加水分解物とは,上記(A)成分の加水分解縮合物を構成する化合物(1)?(3)に含まれるR^(2) O-基,R^(3) O-基,R^(5) O-基およびR^(6) O-基のすべてが加水分解されている必要はなく,例えば,1個だけが加水分解されているもの,2個以上が加水分解されているもの,あるいは,これらの混合物であってもよい。また,(A)成分における縮合物は,(A)成分を構成する化合物(1)?(3)の加水分解物のシラノール基が縮合してSi-O-Si結合を形成したものであるが,本発明では,シラノール基がすべて縮合している必要はなく,僅かな一部のシラノール基が縮合したもの,縮合の程度が異なっているものの混合物などをも包含した概念である。」
エ 「【0025】(B)有機溶媒
本発明の絶縁膜形成用組成物は,(A)成分と(C)成分を,通常,(B)有機溶媒に溶解または分散してなる。この(B)有機溶媒としては,アルコール系溶媒,ケトン系溶媒,アミド系溶媒,エステル系溶媒および非プロトン系溶媒の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。・・・
【0028】アミド系溶媒としては,ホルムアミド,N-メチルホルムアミド,N,N-ジメチルホルムアミド,N-エチルホルムアミド,N,N-ジエチルホルムアミド,アセトアミド,N-メチルアセトアミド,N,N-ジメチルアセトアミド,N-エチルアセトアミド,N,N-ジエチルアセトアミド,N-メチルプロピオンアミド,N-メチルピロリドン,N-ホルミルモルホリン,N-ホルミルピペリジン,N-ホルミルピロリジン,N-アセチルモルホリン,N-アセチルピペリジン,N-アセチルピロリジンなどが挙げられる。これらアミド系溶媒は,1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。」
オ 「【0032】(C)成分
本発明の絶縁膜形成用組成物には,チタンアルコキシド化合物,ジルコニウムアルコキシド化合物,アルミニウムアルコキシド化合物,タンタルアルコキシド化合物,ボロンアルコキシド化合物,チタンキレート化合物,ジルコニウムキレート化合物,アルミニウムキレート化合物,タンタルキレート化合物,ボロンキレート化合物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解,縮合して得られる加水分解縮合物を含有することを特徴とする。
【0033】(C)成分を添加することで銅拡散防止膜であるバリアメタルとの密着性に優れる絶縁膜形成用組成物が得られる。この際のバリアメタルとしては,例えばTaN,Ta,TiN,Ti,SiN,TiTaNなどを挙げることが出来る。
【0034】(C)成分の合成に使用する化合物としては、例えばテトラエトキシチタン・・・などのチタンアルコキシド、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン・・・などのチタンキレート;テトラエトキシジルコニウム・・・などのジルコニウムアルコキシド、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム・・・などのジルコニウムキレート;トリエトキシアルミニウム・・・などのアルミニウムアルコキシド、ジエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム・・・などのアルミニウムキレート;ペンタエトキシタンタル・・・などのタンタルアルコキシド、テトラエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)タンタル・・・などのタンタルキレート;トリエトキシボロン・・・などのボロンアルコキシド、ジエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ボロン・・・トリス(エチルアセトアセテート)ボロンキレートなどを挙げることが出来る。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用することが出来る。」
カ 「【0037】その他の添加剤
本発明で得られる絶縁膜形成用組成物には、さらにβ-ジケトン、コロイド状シリカ、コロイド状アルミナ、有機ポリマー、界面活性剤、シランカップリング剤、ラジカル発生剤、トリアゼン化合物などの成分を添加してもよい。
・・・
【0039】・・・
有機ポリマーとしては、例えば、糖鎖構造を有する化合物、ビニルアミド系重合体、(メタ)アクリル系重合体、芳香族ビニル化合物、デンドリマー、ポリイミド,ポリアミック酸、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物などを挙げることができる。
【0040】ポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物としては、ポリメチレンオキサイド構造、ポリエチレンオキサイド構造、ポリプロピレンオキサイド構造、ポリテトラメチレンオキサイド構造、ポリブチレンオキシド構造などが挙げられる。具体的には、ポリオキシメチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエテチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル型化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩などのエーテルエステル型化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型化合物などを挙げることができる。」
キ 「【0048】このようにして得られる層間絶縁膜は,低比誘電率を示し,かつバリアメタルとの密着性に優れることから,LSI,システムLSI,DRAM,SDRAM,RDRAM,D-RDRAMなどの半導体素子用層間絶縁膜やエッチングストッパー膜,半導体素子の表面コート膜などの保護膜,多層レジストを用いた半導体作製工程の中間層,多層配線基板の層間絶縁膜,液晶表示素子用の保護膜や絶縁膜,エレクトロルミネッセンス表示素子用の保護膜や絶縁膜などの用途に有用である。」
(2)引用発明2
前記(1)より,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)」が記載されていると認められる。
「(A)成分の縮合物,(B)有機溶媒及び(C)チタンアルコキシド化合物,ジルコニウムアルコキシド化合物,アルミニウムアルコキシド化合物,タンタルアルコキシド化合物,ボロンアルコキシド化合物,チタンキレート化合物,ジルコニウムキレート化合物,アルミニウムキレート化合物,タンタルキレート化合物,ボロンキレート化合物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解,縮合して得られる加水分解縮合物を含有する絶縁膜形成用組成物であって,基板に塗布加熱してシリカ系絶縁膜を形成するものであって,(A)成分の縮合物はシラノール基が縮合してSi-O-Si結合を形成したものであり,(B)有機溶媒としてアセトアミドなどのアミド系溶媒であり,さらに有機ポリマーとしてポリオキシメチレンアルキルエーテルなどのポリアルキレンオキサイド構造を有する化合物を添加してもよいこと。」
3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミック前駆体,触媒,界面活性剤および溶媒からなるフィルム形成性液体を調製する工程,前記フィルム形成性液体を前記基板上に置く工程および前記基板上の前記フィルム形成性液体から前記溶媒を除去して,前記基板上にセラミックフィルムを製造する工程からなり,前記セラミックフィルムが2.3未満の誘電率および500ppm未満の金属含量を有することを特徴とする基板上にセラミックフィルムを製造する方法。
・・・
【請求項7】 前記セラミック前駆体が,テトラエトキシシラン(TEOS),テトラメトキシシラン(TMOS),チタン(IV)イソプロポキシド,チタン(IV)メトキシドおよびアルミニウムsec-ブトキシドからなる群から選択される,請求項1?6のいずれかに記載の方法。
・・・
【請求項12】 前記界面活性剤がエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである,請求項1?11のいずれかに記載の方法。
・・・」
イ 「【0010】
【発明の実施の形態】本発明によるフィルムは,セラミック前駆体(例えばシリカ前駆体)を含む塗布液を基板上に塗布しスピンプロセッサー上で回転させる,以下の好ましい方法により提供できる。シリカが最も好ましいセラミックフィルムではあるが,本発明は他のセラミックの利用を想起している。本明細書で使用されるセラミックという用語は,イオン結合および共有結合により結合している金属および非金属元素でできた複雑な化合物および固溶体のことである。セラミック材料は無機元素の組合せである場合が一番多い。セラミック材料は炭素を含むことがある。セラミック材料の例は,金属酸化物,金属酸化物の化合物,金属炭化物および窒化物ならびに炭酸塩があるがこれらに限定されない。より詳細には,例えば,セラミック材料には,シリカ,チタニア,アルミナ,ケイ酸チタン,炭化チタン,窒化アルミニウム,炭化ケイ素,窒化ケイ素があるがこれらに限定されない。セラミック材料は,動物の外皮,骨および歯の中に天然に存在するが,磁器または他の人工製品にも見出される。
【0011】フィルムが形成される元の塗布液は,好ましくは以下の2段階プロセスにより提供される。第1段階では,部分的に加水分解したシリカのストック溶液が提供される。これは,シリカ前駆体(例えばオルトケイ酸テトラエチル),アルコール(例えばエタノールなど),水および酸触媒を反応させることにより実施される。得られたストック溶液は昇温下で(好ましくは約40?70℃,より好ましくは約60℃)ある期間(好ましくは約60?150分間,より好ましくは約90分間)エージングされ,次いで第2段階で使用される。
【0012】塗布液(spinning solution)を調製する第2段階では,このストック溶液の一部を追加のアルコール(すなわちアルコール希釈剤,第1段階で使用したアルコールと同じである必要はない)で希釈し,単官能化アルコキシシランを,追加の酸触媒,水および界面活性剤とともに添加する。界面活性剤は混合物中で細孔形成剤として機能する。
【0013】塗布液提供方法での使用に好適なセラミック前駆体には,例えばテトラエトキシシラン(TEOS),テトラメトキシシラン(TMOS),チタン(IV)イソプロポキシド,チタン(IV)メトキシドおよびアルミニウムsec-ブトキシドがある。塗布液提供方法の第1段階で使用するのに好適なアルコールには,例えばエタノール,メタノール,プロパノール(例えばイソプロパノール),イソブタノールおよびn-ブタノールがある。
【0014】塗布液提供方法の第2段階で使用するのが好適なアルコール希釈剤には,例えばエタノール,メタノール,プロパノール(例えば,イソプロパノール),イソブタノールおよびn-ブタノールがある。塗布液提供方法で使用される酸触媒は,好ましくは有機酸である。酸触媒の具体例としては,例えば酢酸,シュウ酸およびギ酸がある。
【0015】塗布液提供方法で使用するのに好適な官能化アルコキシシランには,RSi(OR’)_(3);R_(2)Si(OR’)_(2);R_(3)SiOR’;RR’Si(OR”)_(2);およびRR’R”SiOR'''があり,前式において,R,R’,R”およびR'''はそれぞれアルキル(特にメチル,エチル,イソプロピル,ブチル)またはアリール(特にフェニル)であり;例えばメチルトリエトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランであり,またはRがフェニル,CF_(3)またはブチルでありR’が上記で定義されたとおりのR_(2)Si(OR’)_(2);R_(3)SiOR’がある。R,R’およびR”が上記で定義されととおりのR_(2)R’SiOSiR_(2)R’およびRR’R”SiOSiRR’R”も使用できる。アルキルアルコキシシランの使用は,低いκおよび高いモジュラスを維持しながら,κの安定性を向上させる。
【0016】塗布液提供方法で使用するのに好適な界面活性剤としては,例えばPluronic L121,L123,L31,L81,L101およびP123(BASF Inc.),Brij 56(C_(16)H_(33)(OCH_(2)CH_(2))_(10)OH)(ICI),Brij 58(C_(16)H_(33)(OCH_(2)CH_(2))_(20)OH)(ICI)およびSurfynol 465および485(Air Products and Chemicals,Inc)がある。前記界面活性剤は,エチレンオキシドプロピレンオキシド(EO-PO)ブロックコポリマーでもよく,またはポリオキシエチレンアルキルエーテルでもよい。好ましくは,前記界面活性剤は,AirProducts and Chemicals,Inc,Allentown,PAから市販されているSurfynolシリーズなどのエトキシ化アセチレンジオール(ethoxylated acetylenic diol)である。金属含量が20ppm未満の界面活性剤を提供することが特に好ましい。そのような界面活性剤は,Brijの商標でWilmington,DEのICISurfactants (Uniqema)から,Surfynolの商標でAllentown,PAのAir Products and Chemicals,Incから,Pluronicの商標でMt.Olive,NJのBASF Corp.Performance Chemicalsから市販されている。
【0017】塗布液は基板(例えば,シリコンウェハ,Si_(3)N_(4),Al,Ptなど)に塗布され,溶液はスピンプロセッサー上で回転される。高速の動きにより揮発性アルコールが除去され,フィルム形成を引き起こす。アルコールが除去されるにつれ,界面活性剤濃度が臨界ミセル濃度(C_(mc))を超え秩序ある液晶相が溶解状態で形成される。存在するシリカ前駆体は液晶の周囲にネットワークを形成し,加水分解および縮合反応が進行するにつれ,ネットワークは固形薄膜を形成する。焼成して界面活性剤を除去すると,シリカネットワークはさらに反応して硬質な薄膜を形成する。」
(2)引用発明3
前記(1)より,引用文献3には次の発明(以下,「引用発明3」という。)」が記載されていると認められる。
「セラミック前駆体,触媒,界面活性剤および溶媒からなるフィルム形成性液体であって,前記セラミック前駆体がアルミニウムsec-ブトキシドであって,前記界面活性剤がエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであること。」
4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)アルコキシシラン類,(b)4族,5族,6族,13族,14族から選ばれる少なくとも1種類のケイ素以外の金属元素からなる金属化合物,(c)脂肪族有機ポリマー,を包含する半導体素子用組成物。
【請求項2】 金属化合物に含まれる金属元素が,アルミニウム,チタン,ジルコニウムであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 金属化合物の形態が,金属アルコキシド,有機酸の金属塩,ジケトンの金属錯体であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】 脂肪族有機ポリマーが,脂肪族ポリエーテル,脂肪族ポリエステル,脂肪族ポリカーボネート,脂肪族ポリアンハイドライドを主たる構成成分とする脂肪族有機ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。」
イ 「【0011】さらに,得られる脂肪族有機ポリマー-金属酸化物複合体や多孔質のケイ素含有金属複合酸化物を改質するために,ケイ素原子上に2?3個の水素,アルキル基又はアリール基をもつアルコキシシランを上記のアルコキシシラン類に混合することも可能である。混合する量は,原料のシラン化合物の全モル数のうち80モル%以下となるようにする。80モル%を超えるとゲル化しない場合がある。本発明で用いられる金属化合物は,加水分解を経る脱水縮合反応や,置換基および/または配位子の脱離による縮合反応によって金属酸化物を生成するものであれば如何なるものでも用いることができる。好適に用いることができる金属原子の例としては,例えば,アルミニウム,チタン,ジルコニウム,スズ,ゲルマニウム,タングステン,タンタル,バナジウムなどが挙げられる。この中でも特に好ましいのはアルミニウム,チタン,ジルコニウムである。
【0012】また金属化合物の形態としては,
メトキシド,エトキシド,プロポキシド,ブトキシド,フェノキシドなど炭素数1?6のアルコールの金属アルコキシド,
ギ酸,酢酸,プロピオン酸,蓚酸,マロン酸,乳酸,酒石酸などの有機酸の金属塩,
アセト酢酸アルキル,マロン酸ジアルキル,アセチルアセトン,テトラメチルヘプタンジオン,ヘキサフルオロアセチルアセトンなどのジケトンを配位子とする金属の錯体,
メタンスルホン酸,トリフルオロメタンスルホン酸,p-トルエンスルホン酸などのスルホン酸の金属塩,
燐酸,硫酸,硝酸,炭酸などの無機酸の金属塩,
その他ハロゲン化物,シアン化物,アルキル化物,水素化物,水酸化物,金属アミド,キノリネートなど,
等が挙げられる。上記に列挙した中でも特に好ましいのがアルコキシド,有機酸の塩,ジケトン錯体である。
【0013】金属化合物は1種類の形態で構成されていてもよいし,反応性を制御するために2種類以上の形態から構成されていてもよい。これらは金属化合物に含まれる金属原子の種類と前述のアルコキシシランの加水分解反応の起こり易さによって決められる。金属化合物の量は,用いたアルコキシシランのケイ素原子1モルに対して金属原子が0.001?10モル,好ましくは0.01?1モルの範囲になるように設定する。金属原子の含有量が0.001モルより少ないと金属化合物の効果が得られない場合があり,10モルより多いと均一にゲル化しない場合がある。上述のアルコキシシラン類と金属化合物を添加する順序は,アルコキシシラン類を部分加水分解させた後に金属化合物を添加しても,その逆でも,また同時に加水分解反応を開始し,進行させてもよい。
【0014】該組成物に用いられる脂肪族有機ポリマーは限定されないが,好適に用いることができる脂肪族有機ポリマーの例としては,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル類,ポリアクリルアミド誘導体,ポリメタクリルアミド誘導体,ポリ(N-ビニルピロリドン),ポリ(N-アシルエチレンイミン)などのアミド類,ポリビニルアルコール,ポリ酢酸ビニル,ポリアクリル酸誘導体,ポリメタクリル酸誘導体,ポリカプロラクトンなどのエステル類,ポリイミド類,ポリウレタン類,ポリ尿素類,ポリカーボネート類,ポリアンハイドライド類などが挙げられる。また,これらのポリマーの構成成分であるモノマーどうしの共重合体や,他の任意のモノマーとの共重合体を用いてもよい。脂肪族有機ポリマーの重合度は8?350000の範囲から選ばれる。ポリマーの基本骨格が脂肪族であると,後述するように加熱焼成によって多孔質ケイ素含有金属複合酸化物に変換するのが容易であるので好ましい。好ましいのは脂肪族ポリエーテル,脂肪族ポリエステル,脂肪族ポリカーボネート,脂肪族ポリアンハイドライドであり,特に好ましいのはポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル類である。」
(2)引用発明4
前記(1)より,引用文献4には次の発明(以下,「引用発明4」という。)」が記載されていると認められる。
「アルコキシシラン類,珪素以外の金属元素からなる金属化合物,脂肪族有機ポリマーを包含する半導体素子用組成物であって,金属化合物がアルミニウムアルコキシドであって,脂肪族有機ポリマーが脂肪族ポリエーテルで重合度が8?350000であること。」
5 引用文献5について
(1)引用文献5の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は耐熱性繊維を含むセラミック複合被膜がエレクトロニクス装置上にその保護のために形成できることを見出した。
【0005】本発明は,エレクトロニクス装置上に被膜を形成する方法,及びそのようにして被覆した装置を提供する。この方法は,先ずH-樹脂及び耐熱性繊維を含む組成物を基体上に適用する。次いでこの被覆された基体を,前記H-樹脂をセラミックに変換するに充分な温度で加熱する。
【0006】本発明は,溶剤中に希釈されたH-樹脂及び耐熱性繊維を含む被覆組成物にも関する。
【0007】本発明は,H-樹脂及び耐熱性繊維を含む組成物からセラミック複合被膜を形成することができることを,本発明者等が見出したことに基づいている。これらの被膜は,それらが優れた機械的保護及び誘電保護を与えるので,H-樹脂装置上に使用して有用である。加えて,この被膜は不透明なので,下に横たわる装置が目で見えることが損なわれる。この方法にH-樹脂を使用することは,低変換温度で形成され,H-樹脂がさほど収縮しないので,この被膜が割れない点で有利である。
【0008】ここで用いている用語「シリカ含有マトリックス」又は「セラミックマトリックス」は,H-樹脂を加熱した後に得られる硬い被膜を記述するのに用いられている。この被膜は,アモルファスシリカ(SiO_(2) )材料並びにアルファスシリカ様材料で,残留炭素(例えばSi-C又はSi-OC),シラノール(Si-OH)及び/又は水素の完全には抜けていないもの(これらは前記シリカ前駆体樹脂を加熱したとき得られる)並びに耐熱性繊維の両方を含む。用語「エレクトロニクス基体」は,エレクトロニクス装置又はエレクトロニクス回路,例えばシリコンをベースにした装置又はガリウムをベースにした装置,焦点面配列(focal plane arrays),光電式装置,光起電力セル及び光学装置を含む。
【0009】本発明において,H-樹脂と耐熱性繊維とを含む被覆組成物を基体に適用し,次いでこの被覆された基体を,前記組成物をセラミックに変換するに充分な温度で加熱することを含むプロセスによって,基体上にセラミック被膜が形成される。
【0010】本発明において使用できるH-樹脂は,式HSi(OH)_(x) (OR)_(y) O_(z/2)(ここに,各Rは独立に有機基又は置換された有機基であって酸素原子を介してケイ素に結合したとき,加水分解性置換基形成するものであり,x=0?2,y=0?2,z=1?3,x+y+z=3である)で示されるヒドリドシロキサン樹脂を含む。Rの例は,アルキル,例えばメチル,エチル,プロピル及びブチル;アリール,例えばフェニル及びアルケニル,例えばアリール及びビニルである。そのようなものとして,これらの樹脂は完全に縮合していてもよく(HSiO_(3/2))_(n) ,又はそれらは単に部分的に加水分解しているか(即ち,幾らかのSi-ORを含んでいる)及び/又は部分的に縮合している(即ち,幾らかのSi-OHを含んでいる)。この構造によっては表せないが,これらの樹脂は,それらの形成又は取扱いに含まれる種々のファクターの故にそれらに結合している0又は2個の水素原子を有する少数(例えば,10%未満)のケイ素原子を含んでいてもよい。
・・・
【0017】ここで用いられる耐熱性繊維は当技術分野において公知であり,H-樹脂と混和性であり,加熱に耐えることができるどんな繊維も含むことができる。これらの多数の繊維が商業的に入手可能である。適当な繊維の例は,炭化ケイ素,窒化ケイ素,炭素の芯に炭化ケイ素が析出したもの,ホウ酸アルミニウム,酸化アルミニウム,酸化ケイ素,チタンを含む炭化ケイ素,酸化炭化ケイ素,シリコンオキシカルボナイトライド,炭素,グラファイト,アラミド及び有機顔料を含む。これらの繊維は,1トウ(tow)当たりどんな望みの数のフィラメントを含んでいてもよく,1μm 未満(例えば0.1μm )?500μm の範囲のサイズを有する。
・・・
【0020】本発明において使用される耐熱性繊維の量も,例えば,最終被覆に望まれる特性に依存して広い範囲に亘って変化しうる。しかしながら,一般に,耐熱性繊維は,充分なH-樹脂が存在して耐熱性繊維を結び付けることを確保するために,90容量%未満の量で使用される。明らかに,より少量の繊維(例えば,1?5容量%)も使用できる。繊維の体積は25?80%の範囲にあることが好ましい。」
(2)引用発明5
前記(1)より,引用文献5には次の発明(以下,「引用発明5」という。)」が記載されていると認められる。
「溶剤中に希釈されたH-樹脂及び耐熱性繊維を含む被覆組成物。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「アルミニウムトリエトキシドなどのアルミニウムのアルコキシド」は,本願発明1の「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物」を満たす。
イ 引用発明1の「酸化アルミニウムベースの不動態化層に好適な組成物」は,ウエハ表面に適用」されるものであるから,下記相違点1を除いて,本願発明の「半導体基板パッシベーション膜形成用組成物」に相当する。
ウ すると,本願発明1と引用発明1とは,下記エの点で一致し,下記オの点で相違する。
エ 一致点
「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と,
を含む半導体基板パッシベーション膜形成用組成物。
(当審注:請求項1に記載された式(I)の構造式は,以下では,単に【化1】と表す。)
【化1】
〔式(I)中,R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは0?3の整数を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2),R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。〕」
オ 相違点1
本願発明1は「脂肪酸アミド及び下記一般式(II)で表される化合物から選択される少なくとも1種
R^(5)-(-O-R^(10)-)_(n)-O-R^(6) ・・・(II)
〔式(II)中,R^(5)及びR^(6)はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し,R^(10)はアルキレン基を示す。nは3以上の任意の整数である。なお,複数存在する-(-O-R^(10)-)-におけるR^(10)は同一であっても異なっていてもよい。〕」を含むのに対し,引用発明1にはこのことが明示されない点。
(2)相違点1についての判断
引用文献1においては粘度を調整するためのさらなる添加剤を添加することが示唆されている(前記第4の1(1)ウ)が,そこで例示されている有機化合物は特定の元素のアルコキシドのみであって,相違点1に係る構成は示唆されていない。
また,粘度を調整するために相違点1に係る構成を備えることは,引用文献2ないし5には,記載も示唆もされていない。
そして,本願発明1は相違点1に係る構成を備えることにより,「半導体基板パッシベーション膜形成用組成物が半導体基板上へ印刷するのに適した粘度特性を持つ。前記印刷するのに適した粘度特性とは,前記半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を付与する際に粘度が低下し,付与した後に粘度が上昇する性質を指す。」「前記半導体基板パッシベーション膜形成用組成物の塗膜がより均一となる。これは、前記半導体基板パッシベーション膜形成用組成物を付与する際に粘度が低下することによって、印刷工程で膜中へ入り込んでしまう気泡が、パッシベーション膜中へ残ること(固定化)が起こりにくくなるためであると考えられる。」(本願明細書段落0063及び0064)という有利な効果を奏するものである。
なお,引用文献1には溶媒として高沸点グリコールエーテルを含むことが記載されている(前記第4の1(1)ウ)が重合度の点で相違点1に係る構成を満たさないし,引用発明1の組成物に適する溶媒として記載されている高沸点グリコールエーテルの重合度を変えるべき動機付けも見いだせない。
(3)まとめ
したがって,本願発明1は,引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本願発明2ないし13について
本願発明2ないし13は,本願発明1を引用するものであるから,前記1と同様の理由により,引用発明1及び引用文献2ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 原査定について
1 理由Aについて
(1)本願発明1と引用発明2との対比
引用発明2の「アセトアミドなどのアミド系溶媒」及び「ポリオキシメチレンアルキルエーテルなどのポリアルキレンオキサイド構造」は,それぞれ本願発明1の「脂肪酸アミド」及び「下記一般式(II)で表される化合物」を満たす。
本願発明1と引用発明2とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違する。
ア 一致点
「脂肪酸アミド及び下記一般式(II)で表される化合物から選択される少なくとも1種と,を含む組成物。
R^(5)-(-O-R^(10)-)_(n)-O-R^(6) ・・・(II)
〔式(II)中,R^(5)及びR^(6)はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し,R^(10)はアルキレン基を示す。nは3以上の任意の整数である。なお,複数存在する-(-O-R^(10)-)-におけるR^(10)は同一であっても異なっていてもよい。〕」
イ 相違点
(ア)相違点2
本願発明1は「(A)成分の縮合物」「(A)成分の縮合物はシラノール基が縮合してSi-O-Si結合を形成したもの」を発明特定事項としないのに対し,引用発明2はこれを含有する点。
(イ)相違点3
本願発明1は「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物
【化1】
〔式(I)中,R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは0?3の整数を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2),R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。〕」を含むのに対し,引用発明2は「(C)チタンアルコキシド化合物,ジルコニウムアルコキシド化合物,アルミニウムアルコキシド化合物,タンタルアルコキシド化合物,ボロンアルコキシド化合物,チタンキレート化合物,ジルコニウムキレート化合物,アルミニウムキレート化合物,タンタルキレート化合物,ボロンキレート化合物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解,縮合して得られる加水分解縮合物」を含有する点。
(ウ)相違点4
本願発明1の組成物は「半導体基板パッシベーション膜形成用」であるのに対し,引用発明2の組成物は「絶縁膜形成用」である点。
(2)本願発明1についての判断
本願発明1は,相違点2ないし4の点で,引用発明2と相違するから,引用発明2ではない。
(3)本願発明6及び7についての判断
本願発明6及び7は,本願発明1を引用するものであるから,同様に,引用発明2ではない。
(4)まとめ
以上のとおり,本願発明1,6及び7は引用発明2ではないから,原査定の理由Aによって,本願を拒絶することはできない。
2 理由Bについて
(1)相違点についての判断
本願発明5ないし13は,いずれも本願発明1を引用するものであるから,少なくとも相違点2ないし4で相違する。
ア 相違点2について
引用発明2は「基板に塗布加熱してシリカ系絶縁膜を形成するもの」であるから,シリカの前駆体となる「(A)成分の縮合物」「(A)成分の縮合物はシラノール基が縮合してSi-O-Si結合を形成したもの」を欠くことはできないし,これを欠くと引用発明2は「絶縁膜形成用組成物」ではなくなるから,相違点2を解消することには阻害要因があるというべきである。
そして,引用文献1,3ないし5には,相違点2を解消することについて,記載も示唆もない。
イ 相違点3について
引用発明2は,(C)成分として多くの選択肢を有しており,この選択肢の中から「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物」を選択することにより,形成される酸化アルミニウムはアモルファス状態となりやすく優れたパッシベーション効果を有するパッシベーション膜を形成することができる(本願明細書段落0043)という有利な効果を奏するものである。
一方,引用発明2は,そもそもシリカ系絶縁膜を形成するものであり,引用発明2において(C)成分は「銅拡散防止膜であるバリアメタルとの密着性に優れる」ものを得るためであり(前記第4の2(1)オ【0033】),前記有利な効果は予測できたものではない。
ウ 相違点4について
引用発明2を半導体基板に適用して「半導体基板パッシベーション膜形成用」とすることに動機付けが見いだせない。引用発明2は「(C)成分の加水分解縮合物」を含有しており,これは,「銅拡散防止膜であるバリアメタルとの密着性に優れる」ものを得るためであり(前記第4の2(1)オ【0033】),引用発明2では半導体基板表面に直接適用することは想定されていない。引用文献2には「半導体素子の表面コート膜などの保護膜」の用途が記載されている(前記第4の2(1)キ)が,同【0033】の記載を考慮すると「半導体素子の表面」は「半導体基板の表面」と同視することはできない。
よって,引用文献1又は3に記載された発明を引用発明2に採用する動機付けが見いだせない。引用文献4及び5には,相違点4に係る構成についての記載や示唆はない。
(2)まとめ
以上のとおり,本願発明5ないし13は,引用発明2及び引用文献1,3ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものではない。
よって,原査定の理由Bによって,本願を拒絶することはできない。

第7 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-18 
出願番号 特願2012-218465(P2012-218465)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 正山 旭  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
深沢 正志
発明の名称 半導体基板パッシベーション膜形成用組成物、パッシベーション膜付半導体基板及びその製造方法、並びに太陽電池素子及びその製造方法  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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