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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1335584
審判番号 不服2017-4898  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-06 
確定日 2017-12-07 
事件の表示 特願2012-176473「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月24日出願公開、特開2014- 33806〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月8日に特許出願したものであって、平成28年5月23日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年7月29日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年12月28日付け(発送日:平成29年1月10日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成29年4月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、これに対して平成29年6月20日付けで前置報告がなされたものである。

第2 平成29年4月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年4月6日付けの手続補正(以下、本件補正という)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の補正を含むものであり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
補正前(平成28年7月29日付け手続補正)の
「【請求項1】
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な複数の可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
前記複数の可変表示部に表示結果の組合せを導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記導出制御手段により導出される表示結果の組合せを構成する識別情報の組合せのうち、前記複数の可変表示部に跨る複数のラインのうちの所定のライン上に導出された識別情報の組合せに応じて、複数種類の遊技状態のうちのいずれかに制御する遊技状態制御手段とを備え、
前記導出制御手段により導出され得る識別情報の組合せには、同一または類似の識別情報で構成される特定組合せと、前記特定組合せと異なる非特定組合せとが含まれ、
前記遊技状態制御手段は、
前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第1遊技状態に制御し、
前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第2遊技状態に制御し、
前記第2遊技状態は、制御された旨を報知する必要性が前記第1遊技状態よりも高い遊技状態であり、
前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技における有利度と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技における有利度とは同一であって、
前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、いずれのライン上にも前記特定組合せが導出されない表示結果の組合せであり、
前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に前記特定組合せが導出される表示結果の組合せである、スロットマシン。」
から、
補正後(本件補正である平成29年4月6日付け手続補正)の
「【請求項1】
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な複数の可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
前記複数の可変表示部に表示結果の組合せを導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記導出制御手段により導出される表示結果の組合せを構成する識別情報の組合せのうち、前記複数の可変表示部に跨る複数のラインのうちの所定のライン上に導出された識別情報の組合せに応じて、複数種類の遊技状態のうちのいずれかに制御する遊技状態制御手段とを備え、
前記導出制御手段により導出され得る識別情報の組合せには、同一または類似の識別情報で構成される特定組合せと、前記特定組合せと異なる非特定組合せとが含まれ、
前記遊技状態制御手段は、
通常遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第1遊技状態に制御し、
前記第1遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち前記通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第2遊技状態に制御し、
前記第2遊技状態は、当該第2遊技状態への制御が開始されたときに有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われる点および当該開始演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される点で、前記第1遊技状態よりも報知する必要性が高い遊技状態であり、
前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値とは、同一であって、
前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、いずれのライン上にも前記特定組合せが導出されない表示結果の組合せであり、
前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に前記特定組合せが導出される表示結果の組合せである、スロットマシン。」
へ補正された(下線は補正箇所を示す)。

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1における
(ア) 「前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第1遊技状態に制御し、」を、「通常遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第1遊技状態に制御し、」とする補正、
(イ) 「前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第2遊技状態に制御し、」を、「前記第1遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち前記通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第2遊技状態に制御し、」とする補正、
(ウ) 「前記第2遊技状態は、制御された旨を報知する必要性が前記第1遊技状態よりも高い遊技状態であり、」を、「前記第2遊技状態は、当該第2遊技状態への制御が開始されたときに有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われる点および当該開始演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される点で、前記第1遊技状態よりも報知する必要性が高い遊技状態であり、」とする補正、
(エ) 「前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技における有利度と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技における有利度とは同一であって、」を、「前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値とは、同一であって、」とする補正、
である。
そして、補正(ア)は、補正前の請求項1の発明特定事項である「前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第1遊技状態に制御」することについて、「通常遊技状態に制御している場合に」「第1遊技制御状態に制御」することを限定し、また「第1遊技制御状態」を「当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な」と限定する補正であり、補正(イ)は、補正前の請求項1の発明特定事項である「前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第2非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第2遊技状態に制御」することについて、「第1遊技状態に制御している場合に」「第2遊技制御状態に制御」することを限定し、また「第2遊技制御状態」を「当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な」と限定する補正であり、補正(ウ)は、「第2遊技状態」が「当該第2遊技状態への制御が開始されたときに有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われる点および当該開始演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される」ことを特定することにより限定する補正であり、補正(エ)は「非特定組合せが導出された遊技における有利度」について、「非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られた」ことを限定するとともに、「有利度」を「遊技的価値」を明確化するための補正である。
また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。

そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物1、2

(1-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由において提示された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2012-10769号公報(以下、刊行物1という)には以下の記載がある。(下線は合議体が審決にて付した。以下、同じ)

(a) 「【0001】
本発明は、たとえば、スロットマシンに関する。詳しくは、遊技用価値を用いて1ゲームに対して賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、表示状態を変化させることが可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果として所定の入賞ライン上に導出表示された図柄の組合せに応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
スロットマシンは、一般に、外周部に識別情報としての複数種類の図柄が描かれた複数(通常は3つ)のリールを有する可変表示装置を備えており、各リールは、遊技者がスタートレバーを操作することにより回転を開始し、また、遊技者が各リールに対応して設けられた停止ボタンを操作することにより、その操作タイミングから予め定められた最大遅延時間の範囲内で回転を停止する。そして、全てのリールの回転を停止したときに導出された表示結果に従って入賞が発生する。」

(b) 「【0027】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について説明する。図1は、この実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図である。また、図2は、スロットマシンの内部構造を示す図である。また、図3は、可変表示装置を構成する各リール上における図柄の配列を示す図である。また、図4は、スロットマシンの制御回路の全体構成を示すブロック図である。スロットマシン1は、前面が開口する筐体1aと、この筺体の側端に回動自在に枢支された前面扉1bと、から構成されている。
【0028】
スロットマシン1の筐体1a内部には、外周に複数種の図柄が配列されたリール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リールともいう)が水平方向に並設されており、図1に示すように、これらリール2L、2C、2Rに配列された図柄のうち連続する3つの図柄が前面扉1bに設けられた透視窓3から見えるように配置されている。
【0029】
リール2L、2C、2Rの外周部には、図3に示すように、それぞれ、「メロン(たとえば、左リール2Lの領域番号20の図柄)」、「バナナ(たとえば、左リール2Lの領域番号19の図柄)」、「白7(たとえば、左リール2Lの領域番号18の図柄)」、「黒BAR(たとえば、左リール2Lの領域番号17の図柄)」、「星(たとえば、左リール2Lの領域番号14の図柄)」、「ブドウ(たとえば、左リール2Lの領域番号13の図柄)」、「黒7(たとえば、左リール2Lの領域番号10の図柄)」、「白BAR(たとえば、左リール2Lの領域番号6の図柄)」、「イチゴ(たとえば、左リール2Lの領域番号5の図柄)」、「星7(たとえば、左リール2Lの領域番号1の図柄)」といった互いに識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で、それぞれ21個ずつ描かれている。」

(c) 「【0043】
入賞ラインとは、各リール2L、2C、2Rの透視窓3に表示された図柄の組合せが入賞図柄の組合せであるかを判定するために予め設定されているラインである。本実施の形態では、図1に示すように、入賞ラインL1?L4の4種類が入賞ラインとして定められている。
【0044】
入賞ラインL1は、リール2Lの中段、リール2Cの中段、リール2Rの中段、すなわち中段に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインをいう。入賞ラインL2は、リール2Lの上段、リール2Cの上段、リール2Rの上段、すなわち上段に並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインをいう。入賞ラインL3は、リール2Lの上段、リール2Cの中段、リール2Rの下段、すなわち右下がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインをいう。入賞ラインL4は、リール2Lの下段、リール2Cの中段、リール2Rの上段、すなわち右上がりに並んだ図柄に跨って設定された入賞ラインをいう。なお、入賞ラインは、L1?L4に示すラインに限らず、たとえば各リール2L、2C、2Rの下段に並んだ図柄に跨るラインなどを含むものであってもよい。
【0045】
ビッグボーナスおよびレギュラーボーナス以外の一般遊技状態であるときに規定数の賭数が設定されると、入賞ラインL1?L4(図1参照)が有効となり、スタートスイッチ7の操作が有効な状態、すなわち、ゲームが開始可能な状態となる。ビッグボーナスおよびレギュラーボーナスであるときに規定数の賭数が設定されると、入賞ラインL2?L4が有効となり、ゲームが開始可能な状態となる。
【0046】
ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L、8C、8Rを操作すると、対応するリール2L、2C、2Rの回転が停止し、透視窓3に表示結果が導出表示される。
【0047】
そして全てのリール2L、2C、2Rが停止されることで1ゲームが終了し、有効化された入賞ライン上に予め定められた図柄の組合せ(以下、役とも呼ぶ)が各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し、その入賞に応じて定められた枚数のメダルが遊技者に対して付与され、クレジットに加算される。また、クレジットが上限数(本実施の形態では50)に達した場合には、メダルが直接メダル払出口9(図1参照)から払い出されるようになっている。」

(d) 「【0052】
スロットマシン1には、図4に示すように、遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、遊技制御基板40によって遊技状態が制御され、演出制御基板90によって遊技状態に応じた演出が制御され、電源基板101によってスロットマシン1を構成する電気部品の駆動電源が生成され、各部に供給される。
・・・
【0057】
遊技制御基板40には、メインCPU41a、ROM41b、RAM41c、I/Oポート41dを備えたマイクロコンピュータからなり、遊技の制御を行なうメイン制御部41、所定範囲(本実施の形態では0?65535)の乱数を発生させる乱数回路42、一定周波数のクロック信号を乱数回路42に供給するパルス発振器43、遊技制御基板40に直接または電源基板101を介して接続されたスイッチ類から入力された検出信号を検出するスイッチ検出回路44、リールモータ32L、32C、32Rの駆動制御を行なうモータ駆動回路45、流路切替ソレノイド30の駆動制御を行なうソレノイド駆動回路46、遊技制御基板40に接続された各種表示器やLEDの駆動制御を行なうLED駆動回路47、スロットマシン1に供給される電源電圧を監視し、電圧低下を検出したときに、その旨を示す電圧低下信号をメイン制御部41に対して出力する電断検出回路48、電源投入時またはメインCPU41aからの初期化命令が入力されないときにメインCPU41aにリセット信号を与えるリセット回路49、その他各種デバイス、回路が搭載されている。」

(e) 「【0083】
次に、メイン制御部41のRAM41cの初期化について説明する。メイン制御部41のRAM41cの格納領域は、重要ワーク、一般ワーク、特別ワーク、設定値ワーク、停止相ワーク、非保存ワーク、未使用領域、スタック領域に区分されている。
【0084】
重要ワークは、各種表示器やLEDの表示用データ、I/Oポート41dの入出力データ、遊技時間の計時カウンタ等、BB終了時に初期化すると不都合があるデータが格納されるワークである。一般ワークは、停止制御テーブル、停止図柄、メダルの払出枚数、BB中のメダル払出総数等、BB終了時に初期化可能なデータ、各ゲームの終了時において初期化される当選フラグ(小役、リプレイ、SB)および入賞フラグが格納されるワークである。
【0085】
特別ワークは、演出制御基板90へコマンドを送信するためのデータ、各種ソフトウェア乱数等、設定開始前にのみ初期化されるデータ、各ゲームの終了時においてクリアされることはなく入賞時および設定変更時(設定変更モードへの移行時)に初期化される当選フラグ(ビッグボーナス、レギュラーボーナス)、次のゲームの遊技状態を特定するための遊技状態フラグ、消化したゲーム数が所定ゲーム数に到達することにより終了する遊技状態に制御される場合には残りゲーム数が格納されるワークである。なお、特別ワークにおいては、残りゲーム数が格納される例について説明するが、これに限らず、当該遊技状態に制御されてから消化したゲーム数が格納されるものであってもよい。」

(f) 「【0096】
[入賞役、遊技状態の遷移]
図5(a)は、入賞役の種類、入賞役の図柄組合せ、および入賞役に関連する技術事項について説明するための図であり、図5(b)は、予め定められた特殊出目の図柄組合せおよび特殊出目に関連する技術事項について説明するための図である。また、図6は、メイン制御部41により制御される遊技状態の遷移を説明するための図である。
【0097】
本実施の形態におけるスロットマシンは、図6に示すように、メイン制御部41により、通常遊技状態、再遊技役の当選確率が通常遊技状態よりも向上されるRT1?RT4および内部中RT、および所定枚数払出されるまで小役の当選確率が向上されるビッグボーナスやレギュラーボーナスのうち、いずれかに制御される。また、本実施の形態におけるスロットマシンは、サブ制御部91により、内部抽選結果を報知するナビ演出を実行可能な報知期間となるアシストタイム(以下、ATという)に演出状態を制御可能となっている。」

(g) 「【0122】
次に、入賞役のうち再遊技役について説明する。入賞役のうち再遊技役には、リプレイ1?リプレイ11が含まれる。再遊技役のいずれかに入賞したときには、メダルの払い出しはないが次のゲームを改めて賭数を設定することなく開始できるので、次のゲームで設定不要となった賭数に対応した枚数分のメダルが払い出されるのと実質的には同じこととなる。
【0123】
リプレイ1は、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-バナナ」の組合せが揃ったときに入賞となる。通常リプレイを構成する図柄(「バナナ」)は、左リール2L?右リール2R各々において5コマ以内に配置されている。よって、リプレイ1については、原則として、当選していれば、ストップスイッチ8L?8Rの操作タイミングに関わらず入賞させることができる役といえる。リプレイ1は、入賞してもRT移行を伴わず、現状の遊技状態を維持する通常のリプレイであるため、以下では通常リプともいう。
【0124】
リプレイ2は、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-メロン」の組合せが揃ったときに入賞となる。リプレイ2を構成する図柄(「バナナ」、「メロン」)は、左リール2L?右リール2R各々において5コマ以内に配置されている。よって、リプレイ2については、原則として、当選していれば、ストップスイッチ8L?8Rの操作タイミングに関わらず入賞させることができる役といえる。
【0125】
図6に示すように、通常遊技状態においてリプレイ2に入賞した後は、通常遊技状態よりもリプレイ当選確率が向上したRT3に制御される。このため、リプレイ2は、以下では昇格リプともいう。後述するように、リプレイ2は、RT1やRT2における内部抽選においては当選しないように設定されており、通常遊技状態における内部抽選において所定確率で当選するように設定されている。このため、RT1やRT2においてはリプレイ2に入賞しない。その結果、RT1やRT2から直接RT3に制御されないように構成されており、通常遊技状態に制御された後、リプレイ2に入賞することにより、RT3に制御されるように構成されている。
【0126】
なお、通常遊技状態以外の遊技状態(たとえば、RT1やRT2)であるときにも、所定確率(極めて低い確率、1%)でリプレイ2について抽選して当選し得るようにし、通常遊技状態以外の遊技状態からもRT3に制御されるように構成してもよい。
【0127】
リプレイ3は、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」の組合せが揃ったときに入賞となる。リプレイ3を構成する左図柄および中図柄(「バナナ」)は、左リール2Lおよび中リール2C各々において5コマ以内に配置されており、リプレイ3を構成する右図柄(「白7」および「イチゴ」)は、右リール2Rにおいて5コマ以内に配置されている。よって、リプレイ3については、原則として、当選していれば、ストップスイッチ8L?8Rの操作タイミングに関わらず入賞させることができる役といえる。
【0128】
図6に示すように、RT3においてリプレイ3に入賞した後は、RT3よりもリプレイ当選確率がさらに向上したRT4に制御される。このため、リプレイ3は、以下では突入リプともいう。後述するように、リプレイ3は、通常遊技状態、RT1、およびRT2における内部抽選においては当選しないように設定されており、RT3における内部抽選において所定確率で当選するように設定されている。このため、通常遊技状態、RT1、およびRT2においてはリプレイ3に入賞しない。その結果、通常遊技状態、RT1、およびRT2から直接RT4に制御されないように構成されており、RT3に制御された後、リプレイ3に入賞することにより、RT4に制御されるように構成されている。」

(h) 「【0175】
これらより、本実施の形態においては、いずれかのリプレイに当選する確率が、RT3、RT4、および内部中RTであるときに、通常遊技状態、RT1?RT2であるときよりも高くなるように設定されている。このため、RT3、RT4、および内部中RTは、通常遊技状態、RT1?RT2であるときよりも、リプレイの当選確率が高い点で、遊技者にとって有利な状態であるといえる。
【0176】
また、RT3では、リプレイの当選確率が高くなるものの転落リプの当選確率も高くなるため、後述するATに制御されていないときには当該RT3を維持させること、および突入リプを入賞させてRT4に制御させることが困難となるように構成されている。一方、RT4は、50ゲーム消化するまで当該RT4への制御が維持される。このため、RT4は、RT3よりも有利な遊技状態であるといえる。」

(i) 「【0242】
[メイン制御部41による処理]
次に、本実施の形態にかかるスロットマシン1におけるメイン制御部41により実行される処理について説明する。スロットマシン1においては、ゲームの処理が1ゲームずつ繰り返して行なわれることで遊技が進行されるものであるが、そのためには、まず、遊技の進行が可能な状態となっていなければならない。
・・・
【0249】
内部抽選処理が終了すると、次にリール回転処理が行なわれる。リール回転処理では、前回のゲームでのリール2L、2C、2Rの回転開始から1ゲームタイマが計時する時間が所定時間(たとえば、4.1秒)経過していることを条件に、リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させる。
【0250】
リール2L、2C、2Rの回転開始から所定の条件(回転速度が一定速度に達した後、リールセンサ33SL、33SC、33SRにより基準位置を検出すること)が成立すると、ストップスイッチ8L、8C、8Rを操作有効とする。その後、ストップスイッチ8L、8C、8Rが遊技者によって操作されることにより、操作されたストップスイッチに対応するリールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させる。本実施の形態におけるスロットマシン1は、ストップスイッチを操作することにより対応するリールの回転を停止させる例について説明するが、たとえば、リール回転開始から所定時間経過したときにストップスイッチが操作されたか否かに関わらず、回転中のリールを強制的に停止させるようにしてもよい。
【0251】
リール回転処理では、リール2L、2C、2Rの回転開始時にリールの回転の開始を通知するリール回転コマンドが演出制御基板90に送信され、リール2L、2C、2Rのうちいずれかの回転が停止する毎に、当該停止したリールがいずれであるか、該当するリールの停止操作位置の領域番号を特定可能なリール停止コマンドが演出制御基板90に送信される。
【0252】
リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果において、入賞ライン上に図5(a)で示したいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行なわれる。この入賞判定処理でいずれかの役に入賞したと判定されると、遊技制御基板40において発生した入賞に応じた各種の処理が行なわれる。
【0253】
入賞判定処理においては、入賞判定が行なわれた後に、入賞の有無、並びに入賞の種類、入賞時のメダルの払出枚数を特定可能な入賞判定コマンドが演出制御基板90に送られる。なお、入賞判定処理において、BB1?BB3およびRBのうちいずれかに入賞したと判断されたときには、対応するボーナスに制御するための処理(たとえば、遊技状態フラグの値に対応するボーナスの値を設定など)が行なわれる。
【0254】
また、RT1、通常遊技状態、およびRT3のいずれかにおける入賞判定処理において、SBに入賞したと判断されたときには、RT2に制御するための処理(たとえば、遊技状態フラグの値にRT2の値を設定など)が行なわれる。また、通常遊技状態における入賞判定処理において、昇格リプに入賞したと判断されたときには、RT3に制御するための処理(たとえば、遊技状態フラグの値にRT3の値を設定など)が行なわれる。また、RT3における入賞判定処理において、突入リプに入賞したと判断されたときには、RT4に制御するための処理(たとえば、遊技状態フラグの値にRT4の値を設定など)が行なわれる。また、RT3における入賞判定処理において、転落リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態に制御するための処理(たとえば、遊技状態フラグの値に通常遊技状態の値を設定など)が行なわれる。」

(j)「【0316】
[AT管理処理]
サブ制御部91は、通常遊技状態、RT3、あるいはRT4であるときに、AT制御処理に含まれるAT管理処理を行なうことにより、AT抽選の結果に応じてセットされるATフラグおよび潜伏期間に基づき、ATへの制御を管理する。
【0317】
具体的に、サブ制御部91は、通常遊技状態への制御が開始されるときにおいて、ATフラグからATである旨が特定されたときには、ATに制御する。通常遊技状態においては、ナビストック数を消費(減算)することなく、ATに制御されて、ナビ演出が実行可能となる。AT中における通常遊技状態において昇格リプ入賞によりRT3に制御されたときには、当該RT3においても当該ATへの制御が継続される。
【0318】
AT中におけるRT3において突入リプ入賞によりRT4に制御されたときには、ナビストック数を1消費(減算)することによるATへの開始条件が成立し、所定回数(たとえば50)ゲームを消化する間、RT4かつATであるARTに制御する。なお、ナビストック数を1消費したときには、1減算したナビストック数を示すATフラグに更新される。
【0319】
また、サブ制御部91は、AT管理処理を行なうことにより、ARTであるときには、消化したゲーム数を計数して、所定回数に到達したときには非ATに制御する。本実施の形態では、ナビストックを1消費することによりATに制御されるゲーム数と、RT4に制御されるゲーム数とが同じゲーム数に設定されているため、ARTにおけるゲーム数が所定回数に到達したときにはATが終了するとともに通常遊技状態に制御される。」

(k) 「【0435】
[フリーズ演出について]
前述した実施の形態に示すスロットマシンにおいて、ストップスイッチ8L?8Rやスタートスイッチ7などゲーム進行において操作される操作手段の操作を強制的に無効にするフリーズ制御を行なうようにしてもよい。たとえば、RT4、BB1?BB3、RBへの制御の開始時あるいは終了時において、フリーズ制御を行なうようにしてもよい。また、フリーズ制御が行なわれている間に、当該フリーズ制御を行なう契機となった事象に対応した演出(たとえば、液晶表示器51、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等により特定の演出)を行なうようにしてもよい。」

(l) 図3の可変表示装置を構成する各リール上の図柄の配列から、各リールの図柄にバナナやブドウのような同じ図柄、白BARや黒BARのような色が異なる同じ文字からなる図柄、その他図柄から各リール上の配列が構成されていることが、図5(a)の表から、列「入賞役」が「BB1」と記載されている行について、列「図柄の組合せ」が「白7-白7-白7」と記載されており、列「入賞役」が「ブドウ」と記載されている行について、列「図柄の組合せ」が「ブドウ-ブドウ-ブドウ」と記載されており、列「入賞役」が「RB」と記載されている行について列「図柄の組合せ」が「黒7-黒7-黒7/星7-星7-黒7」と記載されており、入賞役が列「リプレイ2(昇格リプ)」と記載されている行について、列「図柄の組合せ」が「バナナ-バナナ-メロン」という記載があることが読み取れる。

(m) 上記(a)の【0002】の「スロットマシンは、一般に、外周部に識別情報としての複数種類の図柄が描かれた複数(通常は3つ)のリールを有する可変表示装置を備えており、」との記載、上記(b)の【0028】の「スロットマシン1の筐体1a内部には、外周に複数種の図柄が配列されたリール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リールともいう)が水平方向に並設されており、」との記載、【0029】の「リール2L、2C、2Rの外周部には、・・・互いに識別可能な複数種類の図柄が・・・描かれている」との記載、上記(c)の【0043】の「入賞ラインとは、各リール2L、2C、2Rの透視窓3に表示された図柄の組合せが入賞図柄の組合せであるかを判定するために予め設定されているラインである。・・・入賞ラインL1?L4の4種類が入賞ラインとして定められて」、【0046】の「各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L、8C、8Rを操作すると、対応するリール2L、2C、2Rの回転が停止し、透視窓3に表示結果が導出表示され」、【0047】の「有効化された入賞ライン上に予め定められた図柄の組み合わせが・・・各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生し」との記載から、刊行物1には「外周に複数種の識別情報としての図柄が配列されたリール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リールともいう)が並設されており、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動し、リール2L、2C、2Rの回転が停止し、表示結果が導出表示され、有効化された入賞ラインである各リール2L、2C、2Rの透視窓3に表示された図柄の組合せが入賞図柄の組合せであるかを判定するために予め設定されているラインであり、入賞ラインL1?L4の4種類が入賞ラインとして定められており、有効化された入賞ライン上に予め定められた図柄の組み合わせが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生するスロットマシン1」が記載されているものといえる。

(n) 上記(d)の【0052】の「スロットマシン1には、・・・遊技制御基板40・・・が設けられており、遊技制御基板40によって遊技状態が制御され」、【0057】の「遊技制御基板40には、メインCPU41a、・・・RAM41c・・・を備えたマイクロコンピュータからなり、遊技の制御を行なうメイン制御部41・・・が搭載されている」、上記(f)の【0097】の「スロットマシンは、・・・メイン制御部41により、通常遊技状態、・・・RT1?RT4および内部中RT、および・・・ビッグボーナスやレギュラーボーナスのうち、いずれかに制御され」との記載、上記(e)の【0083】の「メイン制御部41のRAM41cの格納領域は、重要ワーク、一般ワーク、特別ワーク、設定値ワーク、停止相ワーク、非保存ワーク、未使用領域、スタック領域に区分されて」、【0085】の「特別ワークは、消化したゲーム数が所定ゲーム数に到達することにより終了する遊技状態に制御される場合には残りゲーム数が格納されるワークである」、(i)の【0242】の「スロットマシン1におけるメイン制御部41により実行される処理」、【0249】の「リール回転処理が行なわれる。リール回転処理では、・・・リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ」、【0250】の「ストップスイッチ8L、8C、8Rが・・・操作されることにより、操作されたストップスイッチに対応するリールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させ」との記載から、刊行物1には「メインCPU41a、RAM1cを備えたマイクロコンピュータからなり、遊技の制御を行うメイン制御部41が搭載されている遊技制御基板40が設けられており、遊技制御基板40のメイン制御部41により通常遊技状態、RT1?RT4及び内部中RT、およびビッグボーナス及びレギュラーボーナスのうちいずれかに制御され」る「スロットマシン1」において、メイン制御部41のRAM41cの格納領域には特別ワークがあること、「特別ワークは消化したゲーム数が所定ゲーム数に到達することにより終了する遊技状態に制御される場合には残りゲーム数が格納されるワークである」こと、「メイン制御部41により」「リール回転処理が行われ、リール回転処理では、リールモータ32L、リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチに対応するリールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させ」ることが記載されているものといえる。
さらに、上記(i)の【0252】の「リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果」との記載があり、上記(l)の記載から、刊行物1には「リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果」が得られ、図柄の組合せとしてブドウ-ブドウ-ブドウのような同一の識別情報で構成される組合せと、星7-星7-黒7のような類似の識別情報で構成される組合せと、バナナ-バナナ-メロンのような同一ないし類似の識別情報ではない識別情報で構成される組合せがあること、が記載されているといえる。

(o) 上記(i)の【0252】の「リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果において、入賞ライン上に・・・いずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行なわれ」、「入賞判定処理でいずれかの役に入賞したと判定されると、遊技制御基板40において発生した入賞に応じた各種の処理が行なわれ」との記載、【0254】の「通常遊技状態における入賞判定処理において、昇格リプに入賞したと判断されたときには、RT3に制御するための処理・・・が行なわれ」「RT3における入賞判定処理において、突入リプに入賞したと判断されたときには、RT4に制御するための処理・・・が行なわれ」との記載、上記(g)の【0124】の「リプレイ2は、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-メロン」の組合せが揃ったときに入賞となる」との記載、【0125】の「通常遊技状態においてリプレイ2に入賞した後は、通常遊技状態よりもリプレイ当選確率が向上したRT3に制御される」「リプレイ2は、以下では昇格リプともいう。」との記載、【0127】の「リプレイ3は、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」の組合せが揃ったときに入賞となる」との記載、【0128】の「RT3においてリプレイ3に入賞した後は、RT3よりもリプレイ当選確率がさらに向上したRT4に制御される」、「リプレイ3は、以下では突入リプともいう」との記載、上記(h)の【0175】の「RT3、RT4」「は、通常遊技状態」「であるときよりも」「遊技者にとって有利な状態である」との記載から、刊行物1には、「リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果」が得られ、「入賞ライン上に」「いずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行われ」「入賞判定処理でいずれかの役に入賞したと判定されると、遊技制御基板40において発生した入賞に応じた各種の処理が行なわれ、通常遊技状態における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-メロン」の組み合わせが揃ったとき入賞となるリプレイ2である昇格リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利なRT3に制御するための処理が行なわれ、RT3における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」の組合せが揃ったときに入賞となるリプレイ3である突入リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利であるRT4に制御するための処理が行なわれ」ることが記載されているものといえる。
また、上記(h)の【0176】の「RT4は、50ゲーム消化するまで当該RT4への制御が維持される」との記載から、刊行物1には「RT4は、50ゲーム消化するまで当該RT4への制御が維持され」ることが記載されているといえる。
さらに、上記(f)の【0097】には、「スロットマシンは、・・・内部抽選結果を報知するナビ演出を実行可能な報知期間となるアシストタイム(以下、ATという)に演出状態を制御可能となっている」との記載があり、上記(j)の【0318】には、「AT中におけるRT3において突入リプ入賞によりRT4に制御されたときには、・・・所定回数(たとえば50)ゲームを消化する間、RT4かつATであるARTに制御する。」、【0319】には「ATに制御されるゲーム数と、RT4に制御されるゲーム数とが同じゲーム数に設定されて」という記載があることから、刊行物1には「AT中におけるRT3において突入リプ入賞によりRT4に制御されたときには、所定回数(例えば50)ゲームを消化する間、RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるARTに制御」され、「ATに制御されるゲーム数と、RT4に制御されるゲーム数とが同じゲーム数に設定されて」いることが記載されているといえる。
加えて、上記(k)の【0435】には「RT4・・・への制御の開始時・・・において、フリーズ制御を行なう」「フリーズ制御が行われている間に、当該フリーズ制御を行なう契機となった事象に対応した演出(たとえば、液晶表示器51、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等により特定の演出)を行なう」という記載があることから、刊行物1には「RT4への制御開始時においてフリーズ制御を行なう」こと、「フリーズ制御が行われている間に、当該フリーズ制御を行なう契機となった事象に対応した演出(たとえば、液晶表示器51、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等により特定の演出)を行」なうことが記載されているといえる。

(p) 上記(g)の【0122】の「入賞役のうち再遊技役には、リプレイ1?リプレイ11が含まれ」「再遊技役のいずれかに入賞したときには、メダルの払い出しはない」との記載から、刊行物1には「再遊技役であるリプレイ2とリプレイ3は入賞した時にはメダルの払い出しはない」ことが記載されているものといえる。

上記(a)?(k)の記載事項及び上記(l)?(p)の認定事項から、刊行物1には、

「外周に複数種の識別情報としての図柄が配列されたリール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リールともいう)が並設されており、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動し、リール2L、2C、2Rの回転が停止し、表示結果が導出表示され、有効化された入賞ラインである各リール2L、2C、2Rの透視窓3に表示された図柄の組合せが入賞図柄の組合せであるかを判定するために予め設定されているラインであり、入賞ラインL1?L4の4種類が入賞ラインとして定められており、有効化された入賞ライン上に予め定められた図柄の組み合わせが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生するスロットマシン1(認定事項(m))であって、
メインCPU41a、RAM1cを備えたマイクロコンピュータからなり、遊技の制御を行うメイン制御部41が搭載されている遊技制御基板40が設けられており、遊技制御基板40のメイン制御部41により通常遊技状態、RT1?RT4及び内部中RT、およびビッグボーナス及びレギュラーボーナスのうちいずれかに制御されるスロットマシン1において、
メイン制御部41のRAM41cの格納領域には特別ワークがあり、特別ワークは消化したゲーム数が所定ゲーム数に到達することにより終了する遊技状態に制御される場合には残りゲーム数が格納されるワークであり、
メイン制御部41によりリール回転処理が行われ、リール回転処理では、リールモータ32L、リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチに対応するリールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させ、リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果が得られ、図柄の組合せとして同一の識別情報で構成される組合せと、類似の識別情報で構成される組合せと、同一または類似する識別情報ではない識別情報で構成される組合せがあり(認定事項(n))、
リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果が得られ、入賞ライン上にいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行われ、入賞判定処理でいずれかの役に入賞したと判定されると、遊技制御基板40において発生した入賞に応じた各種の処理が行なわれ、
通常遊技状態における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-メロン」の組み合わせが揃ったとき入賞となるリプレイ2である昇格リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利なRT3に制御するための処理が行なわれ、
RT3における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」の組合せが揃ったときに入賞となるリプレイ3である突入リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利であるRT4に制御するための処理が行なわれ、RT4は、50ゲーム消化するまで当該RT4への制御が維持され、
AT中におけるRT3において突入リプ入賞によりRT4に制御されたときには、所定回数(例えば50)ゲームを消化する間、RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるARTに制御され、ATに制御されるゲーム数と、RT4に制御されるゲーム数とが同じゲーム数に設定されて、RT4への制御開始時においてフリーズ制御を行ない、フリーズ制御が行われている間に、当該フリーズ制御を行なう契機となった事象に対応した演出(たとえば、液晶表示器51、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等により特定の演出)を行い、(認定事項(o))、
再遊技役であるリプレイ2とリプレイ3は入賞した時にはメダルの払い出しはないものである(認定事項(p))、
スロットマシン。」

という発明(以下、刊行物1記載の発明という)が開示されていると認める。

(1-2)刊行物2
また、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2012-55589号公報(以下、刊行物2という)には以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、外周面に複数種類の図柄が描かれた複数の回胴を回転させ、該複数の回胴が停止したときの図柄組合せに応じて、所定の特典が遊技者に付与される遊技を行う回胴式遊技機に関する。」

イ 「【0175】
図30は、再遊技B役が入賞成立した状態で停止表示された回胴を示した図である。図30に示すように、入賞ラインL1には再遊技B役に設定された図柄組合せである「リプレイ」-「青セブン」-「スイカ」の組合せが停止表示されている。また、上述のように「青セブン」の図柄が配列されているので、中段のラインには「青セブン」-「青セブン」-「青セブン」が揃って(青7揃いが)停止表示されている。すなわち、本実施例の遊技機1では、再遊技B役が入賞成立する場合には、同時に「中段のライン」に青7揃いが停止表示するように設定されている。
【0176】
本実施例の遊技機1では、「中段のライン」は、たとえ上述のように青7揃いが停止表示されたとしても入賞の成立しない無効ラインである。しかし、遊技者にとっては、同一の図柄である「青セブン」が一直線に揃って停止表示されているので、青7揃いに注目が引き付けられることになり、ひいては再遊技B役の入賞成立結果を、入賞成立図柄ではない他の「青7揃い」により効果的に目立たせることが可能となる。すなわち、全てが同じではない図柄の組合せ(一部が異なる図柄の組合せ、全てがそれぞれ異なる図柄の組合せ)が入賞ライン上に停止表示することにより遊技役の入賞が成立する場合に、同時に無効ライン上に同一の図柄組合せが停止表示するようにすることで、該遊技役の入賞成立を、入賞成立図柄でない他の図柄組合せ(無効ライン上での同一図柄組合せの停止表示)により遊技者に明確に告知することが可能となる。」

ウ 「【0215】
「第1RT遊技」中は「再遊技B役」の入賞を成立させることが可能であり、該入賞が成立すると、「第2RT遊技」が開始される。「第2RT遊技」が開始されても「AT遊技」の遊技回数(継続期間)が未だ残っている場合は、「第2RT遊技」と並行して「AT遊技」が行われる。「第2RT遊技」が行われている期間は「AT遊技」の残りの遊技回数が減らされることがなく、「AT遊技」が「第2RT遊技」中に終了することがない。従って、遊技者は、「第2RT遊技」中は「AT遊技」が終了してしまうことを気にすることなく遊技を進行させることができる。尚、このことについては後に詳しく説明する。
【0216】
「AT遊技」と並行して「第2RT遊技」が行われている期間も、「第1RT遊技」が並行して行われている期間と同じように、遊技メダルの使用量(消費量)を抑制しつつ「BB役」の入賞成立を目指しながらも、たまに内部当選する赤ベル、白ベル、バーベルの小役を確実に入賞成立させて遊技メダルの払い出しを受けることができる。ただし、「第2RT遊技」は、「第1RT遊技」よりもかなり高い確率で「再遊技B役」を入賞成立させることのできる遊技状態である。すなわち、「第1RT遊技」中に「再遊技B役」が入賞(青7揃いが停止表示)して「第2RT遊技」が開始されるとかなり高い確率で「再遊技B役」が入賞成立(青7揃いが停止表示)することになるので、遊技者に対して、「再遊技B役」の入賞成立(青7揃いが停止表示)を契機に、集中して「再遊技B役」(青7揃いが停止表示)の入賞成立が行われるように感じさせることができ、遊技者の遊技興趣を盛り上げることが可能となる。
【0217】
また、「第2RT遊技」中に「再遊技B役」の入賞が成立すると「AT遊技」の遊技回数が増加(上乗せ)するように設定されている(「AT遊技」の期間が延長されるように設定されている)。従って、第2RT遊技は、第1RT遊技の遊技性に加え、「再遊技B役」の入賞を成立(青7揃いが停止表示)させてAT遊技の遊技回数を増加させるという、特殊な遊技性が付加される遊技状態である。
【0218】
ここで、「BB遊技」中でも、「AT遊技」中でも、青7揃いが高い確率で停止表示する期間(第2JAC遊技、第2RT遊技)が発生する。この期間は、遊技者にとって、AT遊技の回数を増加させるために「青7揃いを停止表示させることが遊技の目的となる期間」である。すなわち、遊技者にとって同じ「青7揃いを停止表示させることを目的とする期間」が、異なる有利状態(「BB遊技」、「AT遊技」)であるのにも拘らず発生するので、遊技者によっては、「青7揃い(特殊図柄)を停止表示させる」ことが、本実施例の遊技機1での遊技全体につらぬかれた遊技の特性として感じることになる。そうすると、遊技者は、遊技の状態によらずに「青7揃いを停止表示させることが遊技の目的となる期間」の発生を期待するようになり、遊技者の遊技興趣を盛り上げることが可能となる。
【0219】
また、「第2RT遊技」は開始してから5回の遊技を行うと終了して、「第1RT遊技」が開始される。「第1RT遊技」が開始されると、再び「AT遊技」の残りの遊技回数が減らされていく。」

上記ア?ウの記載事項から、刊行物2には、
「外周面に複数種類の図柄が描かれた複数の回胴を回転させ、該複数の回胴が停止したときの図柄組合せに応じて、所定の特典が遊技者に付与される遊技を行う回胴式遊技機において、第1RT遊技中は再遊技B役の入賞を成立させることが可能であり、該入賞が成立すると、第2RT遊技が開始され、第2RT遊技は、第1RT遊技の遊技性に加え、再遊技B役の入賞を成立(青7揃いが停止表示)させてAT遊技の遊技回数を増加させるという、特殊な遊技性が付加される遊技状態であり、第2RT遊技は開始してから5回の遊技を行うと終了するものであり、入賞ラインL1には再遊技B役に設定された図柄組合せである「リプレイ」-「青セブン」-「スイカ」の組合せが停止表示されて再遊技B役が入賞成立する場合には、同時に「中段のライン」に青7揃いが停止表示され、全てが同じではない図柄の組合せ(一部が異なる図柄の組合せ、全てがそれぞれ異なる図柄の組合せ)が入賞ライン上に停止表示することにより遊技役の入賞が成立する場合に、同時に無効ライン上に同一の図柄組合せが停止表示するようにすることで、該遊技役の入賞成立を、入賞成立図柄でない他の図柄組合せ(無効ライン上での同一図柄組合せの停止表示)により遊技者に明確に告知」することが記載されている(以下、刊行物2記載の事項という)ものと認められる。

(2)本件補正発明と刊行物1記載の発明との対比

本件補正発明と刊行物1記載の発明とを対比する。

(ア)刊行物1記載の発明における「外周に複数種の識別情報としての図柄が配列されたリール2L、2C、2R(以下、左リール、中リール、右リールともいう)が並設されており」について、リール2L、2C、2Rは、「各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動」することから、本件補正発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な複数の可変表示部を備え」に相当する。

(イ)刊行物1記載の発明における「各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動し、リール2L、2C、2Rの回転が停止し、表示結果が導出表示され」、「有効化された入賞ライン上に予め定められた図柄の組み合わせが各リール2L、2C、2Rの表示結果として停止した場合には入賞が発生するスロットマシン1」は、本件補正発明の「前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。

(ウ)刊行物1記載の発明における「メイン制御部41によりリール回転処理が行われ、リール回転処理では、リールモータ32L、リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチに対応するリールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させ、リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果が得られ、図柄の組合せとして同一の識別情報で構成される組合せと、同一の識別情報ではない情報で構成される組合せがあり」について、「リール回転処理が行われ、リール回転処理では、リールモータ32L、リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させ、ストップスイッチ8L、8C、8Rが操作されることにより、操作されたストップスイッチに対応するリールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させ、リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果が得られ」ることは、リール回転処理によりリールの図柄の組合せを表示結果として得ることであり、この処理をおこなう「メイン制御部41」は本件補正発明の「導出制御手段」に相当する。
また、刊行物1記載の発明において、「得られた表示結果」である「図柄の組合せとして同一の識別情報で構成される組合せと、類似の識別情報で構成される組合せと、同一または類似する識別情報ではない識別情報で構成される組合せがあ」ることは、本件補正発明の「導出され得る識別情報の組合せには、同一または類似の識別情報で構成される特定組合せと、前記特定組合せと異なる非特定組合せとが含まれ」ることに相当する。

(エ)刊行物1記載の発明における「メインCPU41a、RAM1cを備えたマイクロコンピュータからなり、遊技の制御を行うメイン制御部41が搭載されている遊技制御基板40」であって、「遊技制御基板40のメイン制御部41により通常遊技状態、RT1?RT4及び内部中RT、およびビッグボーナス及びレギュラーボーナスのうちいずれかに制御され」、「メイン制御部41によりリール回転処理が行われ」「リール2L、2C、2Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示結果が得られ、入賞ライン上にいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行われ、入賞判定処理でいずれかの役に入賞したと判定されると」、「発生した入賞に応じた各種の処理が行なわれ」る「遊技制御基板40」について検討する。

(エ-1)刊行物1記載の発明における「通常遊技状態における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-メロン」の組み合わせが揃ったとき入賞となるリプレイ2である昇格リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利なRT3に制御するための処理が行なわれ、RT3における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」の組合せが揃ったときに入賞となるリプレイ3である突入リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利なRT4に制御するための処理が行なわれ」ることについて検討する。
刊行物1記載の発明において、「リプレイ2である昇格リプレイは、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-メロン」の組合せが揃ったときに入賞とな」ることから、「通常遊技状態における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-メロン」という、同一または類似する識別情報ではない識別情報が揃った場合、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利なRT3に制御するための処理が行われ」ることになるから、これは本件補正発明の「通常遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第1遊技状態に制御」することに相当し、刊行物1記載の発明における「RT3」は本件補正発明の「第1遊技状態」に相当する。
同様に、刊行物1記載の発明において、「リプレイ3である突入リプレイは、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」の組合せが揃ったときに入賞とな」ることから、「RT3における入賞判定処理において、入賞ラインのいずれかに「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」という、同一または類似する識別情報ではない識別情報であって「バナナ-バナナ-メロン」とは異なる識別情報が揃った場合、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利であり、RT3よりも有利な遊技状態であるRT4に制御するための処理が行われ」ることになり、これは本件補正発明の「前記第1遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち前記通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第2遊技状態に制御」することに相当し、刊行物1記載の発明における「RT4」は本件補正発明の「第2遊技状態」に対応する。

(エ-2)上記(ウ)のとおり、刊行物1記載の発明における「メイン制御部41によりリール回転処理が行われ」「リール2L、2C、2Rの」「停止時における表示結果」である「識別情報で構成される組合せ」は、本件補正発明における「導出制御手段により導出される表示結果の組合せを構成する識別情報の組合せ」に相当する。
また、刊行物1記載の発明における「各リール2L、2C、2Rの透視窓3に表示された図柄の組合せが入賞図柄の組合せであるかを判定するために予め設定されているライン」であり、「入賞ラインL1?L4の4種類が入賞ラインとして定められており」、「有効化された入賞ライン上に何れかの役図柄が導出表示された」ことは、「各リール2L、2C、2Rに跨がる複数のラインの所定のライン上に導出された識別情報」が「何れかの役図柄」である場合ということができ、さらに上記(エ-1)のとおり、「バナナ-バナナ-メロン」という、同一または類似する識別情報ではない識別情報が揃った場合、RT3に制御するため処理が行われ、「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」という、同一または類似する識別情報ではない識別情報が揃った場合、RT4に制御するため処理が行われることから、刊行物1記載の発明における「何れかの役に入賞したと判定されると」、「発生した入賞に応じた各種の処理が行われ」「遊技状態を制御する」「遊技制御基板40」は、本件補正発明の「複数の可変表示部に跨がる複数のラインのうち所定のライン上に導出された識別情報の組合せに応じて、複数種類の遊技状態のうちいずれかに制御する遊技状態制御手段」に相当する。

(オ)刊行物1記載の発明における、「AT中におけるRT3において突入リプ入賞によりRT4に制御されたときには、所定回数(例えば50)ゲームを消化する間、RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるARTに制御され、ATに制御されるゲーム数と、RT4に制御されるゲーム数とが同じゲーム数に設定されて」「RT4への制御開始時においてフリーズ制御を行ない、フリーズ制御が行われている間に、当該フリーズ制御を行なう契機となった事象に対応した演出(たとえば、液晶表示器51、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等により特定の演出)を行い」という事項について検討する。

(オ-1)刊行物1記載の発明における「AT中におけるRT3において突入リプ入賞によりRT4に制御されたときには、所定回数(例えば50)ゲームを消化する間、RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるARTに制御され」「RT4への制御開始時において」「フリーズ制御を行ない、フリーズ制御が行われている間に、当該フリーズ制御を行う契機となった事象に対応した演出(たとえば、液晶表示器51、演出効果LED52、スピーカ53、54、リールLED55等により特定の演出)を行」うことについて、「RT4かつATであるART、すなわち、50ゲームを消化する間ナビ演出を実行可能な状態であるART、への制御開始時において、フリーズ制御を行い、フリーズ制御を行う契機となった事象に対応した演出を行う」ということができ、刊行物1記載の発明の「RT4かつATであるART」は、本件補正発明の「第2遊技状態」に含まれるから、「RT4かつATであるART、すなわち、50ゲームを消化する間実行可能なナビ演出を実行可能な状態であるART、への制御開始時」、「フリーズ制御を行い、フリーズ制御を行う契機となった事象に対応した演出を行」うことは、本件補正発明の「第2遊技状態への制御が開始されたときに」「有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われる」ことと、「第2遊技状態への制御が開始されたときに演出が行われる」点、及び「有利量に基づいた特定演出が開始される」点で共通する。

(オ-2)また、刊行物1記載の発明は、「メイン制御部41のRAM41cの格納領域には特別ワーク」であって、「消化したゲーム数が所定ゲーム数に到達することにより終了する遊技状態に制御される場合には残りゲーム数が格納されるワーク」である「特別ワーク」を有するものであり、フリーズ制御の後にATに制御されてナビ演出が開始されることは明らかであるから、上記「AT中のRT4、すなわち、50ゲームを消化する間実行可能なナビ演出を実行可能な状態であるART、への制御開始時において、フリーズ制御を行い、フリーズ制御を行う契機となった事象に対応した演出を行い」「ATに制御されるゲーム数と、RT4に制御されるゲーム数が同じゲーム数に設定されて」からナビ演出を行うゲームを開始して、残りゲーム数を減算しその結果をRAM41cの特別ワークに記憶しているということができ、刊行物1記載の発明においても「当該演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される」ことを実行しているといえる。

(オ-3)そうすると、刊行物1記載の発明における、ある特定の条件を満たすRT4である、「RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるART」は、本件補正発明の「当該第2遊技状態への制御が開始されたときに開始演出が行われる点および当該開始演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される」「第2遊技状態」に対応する。

(カ)刊行物1記載の発明における「再遊技役であるリプレイ2とリプレイ3は入賞した時にはメダルの払い出しはないものである」ことについて、リプレイ2の入賞により再遊技が行われるがメダルの払い出しはなく、リプレイ3の入賞によっても再遊技が行われるがメダルの払い出しはないことから、リプレイ2とリプレイ3により得られる遊技的価値は同一であるということができる。
したがって、刊行物1記載の発明においても、本件補正発明同様に「所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値とは、同一であ」るといえる。

(キ)刊行物1記載の発明における「スロットマシン1」は、本件補正発明の「スロットマシン」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と刊行物1発明は以下の点で一致する。

「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な複数の可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
前記複数の可変表示部に表示結果の組合せを導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記導出制御手段により導出される表示結果の組合せを構成する識別情報の組合せのうち、前記複数の可変表示部に跨る複数のラインのうちの所定のライン上に導出された識別情報の組合せに応じて、複数種類の遊技状態のうちのいずれかに制御する遊技状態制御手段とを備え、
前記導出制御手段により導出され得る識別情報の組合せには、同一または類似の識別情報で構成される特定組合せと、前記特定組合せと異なる非特定組合せとが含まれ、
前記遊技状態制御手段は、
通常遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第1遊技状態に制御し、
前記第1遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち前記通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第2遊技状態に制御し、
前記第2遊技状態は、当該第2遊技状態への制御が開始されたときに演出が行われ、当該演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される遊技状態であり、
前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値とは、同一である、
スロットマシン。」

一方、本件補正発明と刊行物1記載の発明は以下の点で相違する。

(相違点1)
第2遊技状態について、本件補正発明は「当該第2遊技状態への制御が開始されたときに有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われる点」及び「当該開始演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される点」で「前記第1遊技状態よりも報知する必要性が高い」のに対して、刊行物1記載の発明は「有利量に基づいた特定演出が開始される」ものであって、「当該演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される」ものの、「有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出」については特定されておらず、また「第1遊技状態よりも報知する必要性が高い」ことについても特定されていない点。

(相違点2)
所定のライン上に非特定組合せが導出される表示結果の組合せについて、
本件補正発明は、「前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、いずれのライン上にも前記特定組合せが導出されない表示結果の組合せであり、
前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に前記特定組合せが導出される表示結果の組合せである」のに対して、
刊行物1記載の発明における昇格リプの組合せである「入賞ラインのいずれかに揃った「バナナ-バナナ-メロン」の組合せ」、突入リプの組合せである「入賞ラインのいずれかに揃った「バナナ-バナナ-白7」あるいは「バナナ-バナナ-イチゴ」の組合せ」のいずれの組合せについても、「いずれのライン上にも特定組合せが導出されない表示結果の組合せ」となるように制御することも、「入賞ラインと異なるライン上に特定組合せが導出される表示結果の組合せ」となるように制御することも特定されていない点。

(3)相違点に対する判断

ア 相違点1について

スロットマシンにおいて、ナビ演出を行うAT状態やART状態への制御がなされたことにより、所定ゲーム回数実行できるAT状態やART状態が開始されることを報知すること、このとき以降AT回数やART回数を表示することは周知技術(例えば、特開2012-90877号公報の【0124】「まず、1セット分の新たなART遊技が開始する時には、第1演出テーブルが設定される(ステップS250、S251)。ART開始時には、通常遊技画面表示からART遊技突入時の開始演出に切り替わり、ART遊技状態への移行が報知される。液晶表示装置2の液晶画面には、ART遊技回数のカウント値が表示され、その消化に伴って逐次表示変更されていく。」や、特開2004-154436号公報の【0171】「次に、液晶表示装置14の表示面14Aに突入抽選の演出結果が導出表示された段階で、その結果が判定され(ステップSA302)、当選である場合にはAT中である旨の報知が開始される(ステップSA303)。具体的には、リールバックランプ31がAT状態特有の点滅パターンで点滅するとともにスピーカ5(5L・5R)からAT状態特有の効果音が出力され、また、AT状態である旨を示す画像が液晶表示装置14の表示面14Aに表示される。次に、AT状態中のゲーム数を示すための画像が液晶表示装置14の表示面14Aに表示する処理が開始され(ステップSA304)、処理が終了する。」の記載を参照)にすぎない。
そして、上記周知技術を、上記刊行物1記載の発明の「所定回数ゲームを消化する間、RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるARTに制御され」る場合の「RT4への制御開始時」に適用し、ARTが開始したこと及びART回数を表示するようにすることで、「有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出」を行い、「当該開始演出が行われた後に有利量の減算を開始される」構成とすることは、当業者が適宜なし得たものである。
このとき、上記刊行物1記載の発明の「RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるART」に制御されるときはARTが開始したこと及びART回数を報知することになるのに対し、「RT3」に制御されるときはこのような演出を行わない。また、「RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるART」は、所定回数(例えば50)ゲーム消化されるまでしかその制御が維持されないのに対し、「RT3」は所定回数ゲーム消化されるまでしかその制御が維持されないというものではないから、「RT4かつナビ演出を実行可能な報知期間となるATであるART」への制御が開始される場合は、「RT3」への制御が開始される場合より遊技における興趣が向上している上に、所定ゲーム回数に亘って維持される状態の開始を報知するという点においても、遊技者に報知する必要性が高いことは明らかである。
以上によれば、上記周知技術を刊行物1記載の発明に適用し、「所定回数ゲームを消化する間、RT4かつナビ演出を実行可能なATであるARTに制御される場合」にARTが開始されたことを報知する開始演出が行われる点、及びその報知後にART回数の減算が開始される点で、RT3よりも必要性が高いものとして、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者ならば容易になし得たものである。

イ 相違点2について

刊行物2記載の事項における「再遊技B役」は、「「リプレイ」-「青セブン」-「スイカ」」という、「全てが同じではない図柄の組合せが入賞ライン上に停止表示することにより」「成立する場合に」、「同時に」「中段のライン」という「無効ライン上に」、「青7揃い」という「同一の図柄組合せが停止表示するようにすることで、該遊技役の入賞成立を、無効ライン上での同一図柄組合せの停止表示により遊技者に明確に告知」するということができる。
そうすると、刊行物2記載の事項における「全てが同じではない図柄の組合せが入賞ライン上に停止表示することにより遊技役の入賞が成立する場合に、同時に無効ライン上に同一の図柄組合せが停止表示」するようにすることは、本件補正発明の「所定のライン上に第2非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に前記特定組合せが導出される表示結果の組合せである」ことに相当する。
ここで、刊行物2記載の事項における「再遊技B役」は「第1RT遊技中に入賞を成立することが可能であり、該入賞が成立すると、第2RT遊技が開始され、第2RT遊技は開始してから5回の遊技を行うと終了する」ものであり、刊行物2記載の事項における「第2RT遊技」は開始後一定回数(5回)で終了する点で、刊行物1記載の発明における「50ゲーム消化するまで当該RT4への制御が維持され」る「RT4」と共通する。
さらに、刊行物2記載の事項における「再遊技B役」は遊技役の入賞成立を遊技者に明確に告知するものであり、刊行物1記載の発明における「RT4への制御開始時」に「フリーズ制御を行い、フリーズ制御が行われている間に、当該フリーズ制御を行う契機となった事象に対応した演出を行」うものと、遊技者に対して報知を行うものであるという点においても共通することから、刊行物1記載の発明における「RT3における入賞判定処理において、突入リプに入賞したと判断されたときには、RT4に制御するための処理が行なわれ」る場合に、刊行物2記載の事項である「全てが同じではない図柄の組合せが入賞ライン上に停止表示することにより遊技役の入賞が成立する場合に、同時に無効ライン上に同一の図柄組合せが停止表示」することを適用する動機付けを有していると言える。
一方、刊行物1記載の発明において、「通常遊技状態における入賞判定処理において、昇格リプに入賞したと判断されたときには、通常遊技状態よりも遊技者にとって有利なRT3に制御するための処理が行なわれ」る場合には、フリーズ制御や特定の演出が行われるわけではなく、ゲームを一定回数消化することで終了するわけでもない以上、この場合に刊行物2記載の事項を適用して、遊技者に対して明確な告知を行うために「特定組合せが導出される表示結果の組合せ」とすることの動機付けに乏しいと言える。
以上のことから、刊行物1記載の発明において、「RT3における入賞判定処理において、突入リプに入賞したと判断されたときには、RT4に制御するための処理が行なわれ」る場合に、刊行物2記載の事項を適用し、「前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に前記特定組合せが導出される表示結果の組合せ」である構成とし、該遊技役の入賞成立を無効ライン上での同一図柄組合せの停止表示により遊技者に明確に告知すること、このとき、「通常遊技状態における入賞判定処理において、昇格リプに入賞したと判断されたときに、RT3に制御するための処理が行なわれ」る場合、すなわち本来遊技者に対して報知する必要性が低い状態である場合には、「所定のライン上に非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に特定組合せである」構成とはしないこととして、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすること、は当業者ならば容易になし得たものである。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに周知技術に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は平成29年4月6日付け審判請求書において、以下の主張を行っている。
「本願発明のように、「共に有利な遊技状態である第1遊技状態と第2遊技状態とのうち、第1遊技状態よりも報知する必要性が高い第2遊技状態への制御が開始されるときにだけ、特定組合せが導出される」ものにはなりません。換言しますと、引用文献1,2には、引用文献1に記載の発明に引用文献2の技術事項を適用する場合に、RT3およびRT4の一方にのみ、その技術事項を適用する動機付けすら、存在しません。
特に、本願発明は、「第1遊技状態と第2遊技状態とのうち、第1遊技状態よりも報知する必要性が高い第2遊技状態への制御が開始されるときにだけ、特定組合せを導出する」という特徴を有しています。ところが、引用文献1、2には、「一方の遊技状態の方が他方の遊技状態よりも報知する必要性が高い遊技状態である点」は、教示も示唆もされておりません。したがいまして、引用文献1,2には、第1遊技状態と第2遊技状態とのうち、報知する必要性が高い遊技状態にのみ、特定組合せを導出させることの動機付けが存在しません。
しかも、本願発明は、特定組合せが導出されたときに第2遊技状態への制御が開始され、第2遊技状態への制御が開始されたときに有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われ、かつ、開始演出が行われた後に有利量の減算が開始されるます。その結果、第2遊技状態への制御が開始されるときにだけ特定組合せが導出されることで、開始演出が実行されることと、有利量の減算が開始されることがわかり易くなるという、引用文献1,2に記載の発明からでは奏されない特有の効果が奏されます。
以上より、いわゆる当業者が引用文献2に記載された技術事項を引用文献1に記載された発明に適用できたとしても、本願発明に容易に想到できるものではないと思料致します。 」

しかしながら、上記「(3)相違点に対する判断」の「イ 相違点2について」において示した通り、刊行物1記載のスロットマシンの発明において、刊行物1記載の発明の「RT4に制御するための処理が行われ」る場合には、刊行物2記載の事項における「第2RT遊技」と刊行物1記載の発明の「RT4」という状態は、共に開始後一定回数で終了する点で共通し、および開始時に遊技者に対して報知を行うものであるという点においても共通することから、刊行物1記載の発明における「RT4」という状態において刊行物2記載の「第2RT遊技」における事項を適用するという動機付けを有しているといえる。そして、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明の「RT4に制御するための処理が行われ」る場合に適用し、「前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に前記特定組合せが導出される表示結果の組合せ」である構成とすること、刊行物1記載の発明の「RT3に制御するための処理が行われ」る場合には、本来遊技者に対して報知する必要性が低い状態であることから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明の「RT3に制御するための処理が行われ」る場合には適用せず、「所定のライン上に非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に特定組合せである」構成とはしないことは、当業者ならば容易になし得たものである。

また、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項及び周知技術を上記(3)の相違点の判断に記載のように適用することで、本件補正発明同様の効果を奏することは当業者ならば予測し得た程度のものにすぎない。

したがって、審判請求人の主張は採用できない。

4.むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、平成28年7月29日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。

「【請求項1】
各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な複数の可変表示部を備え、
前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
前記複数の可変表示部に表示結果の組合せを導出させる制御を行う導出制御手段と、
前記導出制御手段により導出される表示結果の組合せを構成する識別情報の組合せのうち、前記複数の可変表示部に跨る複数のラインのうちの所定のライン上に導出された識別情報の組合せに応じて、複数種類の遊技状態のうちのいずれかに制御する遊技状態制御手段とを備え、
前記導出制御手段により導出され得る識別情報の組合せには、同一または類似の識別情報で構成される特定組合せと、前記特定組合せと異なる非特定組合せとが含まれ、
前記遊技状態制御手段は、
前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第1遊技状態に制御し、
前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときに、前記複数種類の遊技状態のうち第2遊技状態に制御し、
前記第2遊技状態は、制御された旨を報知する必要性が前記第1遊技状態よりも高い遊技状態であり、
前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技における有利度と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技における有利度とは同一であって、
前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、いずれのライン上にも前記特定組合せが導出されない表示結果の組合せであり、
前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出される表示結果の組合せは、当該所定のラインと異なるライン上に前記特定組合せが導出される表示結果の組合せである、スロットマシン。」

2.拒絶理由通知の概要
平成28年5月23日付け拒絶理由通知は、本願発明は、上記刊行物1である特開2012-10769号公報、刊行物2である特開2012-55589号公報に基づき特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項
刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項の認定は前記「第2 平成28年6月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本件補正発明について、
(ア)「通常遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち第1非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第1遊技状態に制御し、」という記載から、「第1遊技状態に制御」することについて、「通常遊技状態に制御している場合に」及び「当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な」という限定を削除し、
(イ)「前記第1遊技状態に制御している場合に、前記所定のライン上に前記非特定組合せのうち前記第1非特定組合せと異なる第2非特定組合せが導出されたときは、前記複数種類の遊技状態のうち前記通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な第2遊技状態に制御し、」という記載から、「第2遊技状態に制御」することについて、「前記第1遊技状態に制御している場合に」及び「当該通常遊技状態よりも遊技者にとって有利な」という限定を削除し、
(ウ)「前記第2遊技状態は、当該第2遊技状態への制御が開始されたときに有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われる点および当該開始演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される点で、前記第1遊技状態よりも報知する必要性が高い遊技状態であり、」という記載から、「第2遊技状態への制御が開始された」ことについて、「当該第2遊技状態への制御が開始されたときに有利量に基づいた特定演出が開始されることを報知する開始演出が行われる点および当該開始演出が行われた後に当該有利量の減算が開始される点で、前記第1遊技状態よりも」という限定を削除して、「制御された旨を」という記載を挿入することで、当該構成を上位概念化し、
(エ)「前記所定のライン上に前記第1非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値と、前記所定のライン上に前記第2非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる遊技用価値とは、同一であって、」という記載の「非特定組合せが導出された遊技において発生する遊技的価値」から「非特定組合せが導出された遊技において発生する入賞により得られる」という限定を削除して「有利度」と上位概念化したものである。

そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項や下位概念化した発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 平成29年4月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 3.独立特許要件」で検討したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものであるといえる。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに周知技術に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-06 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-10-23 
出願番号 特願2012-176473(P2012-176473)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 川崎 優
樋口 宗彦
発明の名称 スロットマシン  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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