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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47B
管理番号 1335734
審判番号 不服2016-7898  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-31 
確定日 2017-12-28 
事件の表示 特願2014-220927「ベッドサイドテーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日出願公開、特開2015- 91313〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月9日を出願日とする特願2011-270684号(以下「原出願」という。)の一部を、平成26年10月30日に新たな特許出願としたものであって、同日に上申書が提出され、平成27年10月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日に意見書の提出とともに手続補正がされ、平成28年5月13日付けで拒絶査定がされ、同年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成29年6月9日付けで当審において拒絶理由が通知され、同年に7月27日に意見書の提出とともに手続補正がされたものである。


第2 当審における拒絶理由の概要
平成29年6月9日付けで通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

1 理由1(明確性要件違反)
請求項2及び3並びにそれらを引用する請求項4及び5に係る発明は、その記載において、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 理由2(進歩性欠如)
本願の請求項1ないし5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物1に記載された発明、又は下記の刊行物1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
補足すると、本願は分割要件を満たしているとはいえず、出願日の遡及は認められない。
刊行物1:特開2013-121425号公報(原出願の公開公報)
刊行物2:特開2011-5219号公報


第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年7月27日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「テーブル支持部でテーブルが上下昇降可能であるベッドサイドテーブルであって、前記テーブルを上下昇降可能に操作するテーブル昇降操作レバーの他に、テーブルの側部又は底部にキャスターを操作するキャスター操作レバーを設けたベッドサイドテーブルにおいて、
前記キャスター操作レバーを2箇所以上設けるとともに、そのうちの少なくとも1カ所のキャスター操作レバーの操作によって、ベッドサイドテーブルの全て又はそれ以下の複数のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うものであって、
前記キャスター操作部からの各キャスターへのロック及びロック解除操作は同軸の操作伝達ワイヤーによって行い、該操作伝達ワイヤーを分岐して複数の分岐ワイヤーとし、該分岐ワイヤーは前記全て又はそれ以下の複数のキャスターに連結して、どちらか一方のキャスター操作部レバーを操作することにより前記分岐ワイヤーを操作するようにしたことを特徴とするベッドサイドテーブル。」

第4 判断(進歩性欠如)
1 分割要件の適否
本願が特許法第44条第1項に定める分割要件を満たすか否かについて検討する。

(1) 本願の特許請求の範囲及び明細書の記載事項(下線は審決で付した。)
ア 特許請求の範囲の請求項1には、「ベッドサイドテーブルの全て又はそれ以下の複数のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うものであって、」「該分岐ワイヤーは前記全て又はそれ以下の複数のキャスターに連結」と記載されている。

イ 明細書の段落【0050】には、「実施例ではベッドサイドテーブルのロック及びロック解除するキャスターは4個としたが、ベッドサイドテーブルが停止及び停止解除する作用があれば2個であってもよく、複数であればよいことは勿論である。」と記載されている。

(2) 原出願の当初明細書等の記載事項
原出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「原出願の当初明細書等」という。)には以下の記載がある(下線は審決で付した。)。

ア 特許請求の範囲
「【請求項1】・・・ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う・・・
・・・
【請求項4】
前記キャスター操作レバーを、通常の場合では下方に下がった状態に維持し全てのキャスターを一括してロックし、移動する場合では使用者によって該キャスター操作レバーを上方に挙げて全てのキャスターを一括してロック解除する・・・」

イ 明細書
(ア) 「【背景技術】
【0002】
従来より、病院のベッド等にはベッドサイドテーブル等の上下昇降可能なテーブルが配置され、このテーブルの脚部は、・・・合計で4個のロックレバー付きキャスターが配置されて、食事や医療行為等のテーブルとして用いるものである。ところで、通常、ベッドサイドテーブルには、特にベッド下のキャスターはロックが困難であるためキャスターロックが無く、テーブル板に手をついただけでも簡単に動いてしまい、使用者が思わぬ事故を引き起こすことがあった。・・・
・・・
【0005】
・・・一カ所の操作部の操作により4個のキャスターを同時にロック及びロック解除作動が行われるテーブルが提案されているが、キャスター操作部がテーブル上にあり、食事や医療処置の邪魔になってしまうという問題点があった。
また、操作レバーがテーブルの昇降用操作レバーとキャスターロック或いは解除用操作レバーのと2種類が存在するが、キャスターロック/解除の一括操作レバーが一カ所とテーブルの昇降用操作レバーが離れていて、操作手順に戸惑うこともあった。
更には、一カ所の操作部で操作可能であっても、配置場所が1カ所であると、テーブル支持部の反対側に操作部があるとテーブル支持部が邪魔になり操作がしづらかったり、テーブルが細長いので長手方向の反対側に操作部があるとやはり操作がし難いという問題点があった。
【0006】
本発明の課題は、・・・このような場合でも操作が容易になるようにしたサイドテーブルを提供するものである。
更に、キャスター4個のロック/解除を一括操作レバーをテーブル側部又は底部に配置して、テーブルの上面を平坦にして、食事や医療処置の邪魔にならないようにして、かつ、テーブル昇降操作レバーの近傍に配置してテーブル昇降操作とキャスターのロック/解除操作とを一カ所に集中して、これらの操作をし易くするテーブルのサイドテーブルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、・・・少なくとも1カ所のキャスター操作レバーの操作によって、ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うたことを特徴とする。
・・・
【発明の効果】
【0008】
請求項1のベッドサイドテーブルの発明によれば、少なくとも2カ所に全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うキャスター操作レバーを設けたので、使用者により近くのキャスター操作レバーを操作すれば良いので操作が単純になり操作が一回で完結する。
また、テーブルの側部又は底部にキャスター操作レバーを設けたので、テーブル上にはキャスター操作レバーを設けないので、食事等の邪魔にならないようにテーブル上面を広く平坦にすることができる。
このように、一回の操作でベッドサイドテーブルの全てのキャスターをロック状態及び解除状態にでき、従来のように各キャスター毎にロックをする必要がなく、特に、忙しい看護師や使用者の労力を軽減することができ、テーブル部にテーブル昇降操作兼用のキャスター操作部を設けたので、患者や看護師が簡単にテーブル昇降操作とキャスターロック・解除操作を一回の操作で終えることができる。・・・」

(イ) 「【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、・・・脚部の全キャスターを一括して同時にロック/ロック解除操作を行うキャスター操作レバーを側部又は底部の複数の適所にテーブル昇降レバーに配置し、・・・。」

(ウ) 「【実施例1】
【0012】
・・・
【0015】
・・・ベッドサイドテーブル1の移動の際には、双輪キャスター4a?dの全てがロック解除状態となり、ロック状態ではその場所に固定されてベッドサイドテーブル1が移動や転倒しないような形状をしている。
【0016】
(ワイヤー収納機構)
・・・図6(b)に示すように、テーブル部11は中空部112が形成され、1対のキャスター操作部2と双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)とを連結する操作伝達ワイヤー30とこれらにワイヤー分岐盤32が収納されるとともに、伸縮する操作伝達ワイヤー30等を収納するワイヤー収納機構14が構成されている。
【0017】
後述するように(図13参照)、この操作伝達ワイヤー30は2本のレバー連結ワイヤー311,312と、中間の1本の連結ワイヤー32と、4個の双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)に繋がる4本の分岐ワイヤー33から構成され、レバー連結ワイヤー31a,31bと連結ワイヤー32との間には第1ワイヤー分岐盤34が、連結ワイヤー32と4本の分岐ワイヤー33との間には第2ワイヤー分岐盤35が介在している。
・・・
【0020】
ところで、キャスター操作部2をテーブル部11に設けることによって、第2ワイヤー分岐盤35をテーブル部11の中空部112の自由位置に固定することができるので、本実施例では第2ワイヤー分岐盤35をテーブル部11の略中央に配置したので、第2ワイヤー分岐盤35から双輪キャスター4a?dまでの分岐ワイヤー33の長さがほぼ等しくでき、双輪キャスターのロック及びロック解除作動を均一に働かせることができる。
このテーブル部11上のキャスター操作レバー21を操作の詳細は後述するが、インナーワイヤーとアウターワイヤーの同軸ワイヤーを用いた操作伝達機構3を介し、4個の双輪キャスター4のそれぞれの車輪ロック機構5を操作する。・・・
【0031】
・・・更に、基本的にレバー連結ワイヤー31のどちらか1本から4本の分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)に分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にロック状態及びロック解除状態にでき、・・・
【0032】
(双輪キャスターの配置)
・・・ところで、本実施例で使用する双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)は、双輪の巾が単輪よりも広いので、単輪キャスターに比べて走行安定性があり、また、双輪の回転をロックすると進行方向は勿論のこと、双輪の巾が広いことから旋回阻止できる。
したがって、本実施例のように、4箇所のキャスターをロックしようとした場合は、仮に、4箇所のうち一箇所のキャスターのロック機構が不完全、或いは、破損した場合でも、ベッドサイドテーブルを確実に固定及び解除できる。
・・・
【0034】
・・・また、車輪41(41A,41B)の両車輪(双輪)がロックすると走行が出来なくなり、キャスターの旋回も制限されて、更に、本実施例のように、ベッドサイドテーブル1の一対の脚部13の枠体132の両端の2箇所の双輪キャスター4a,4b、及び、双輪キャスター4c,4dの各車輪41A,41Bが固定されると、キャスター4自体の旋回を固定しなくても、車輪の回転の固定だけでベッドサイドテーブル1は、ほぼ完全に固定されることを見出し、この知見を基礎とするものである。
・・・
【実施例2】
【0046】
・・・他の構成は実施例1と同じであるので、説明は省略する。・・・
【0047】
以上の説明したように、実施例1及び実施例2は、ベッドサイドテーブルのような昇降テーブルにおいて、少なくとも2カ所に全キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うキャスター操作レバーを設けたので、使用者により近くのキャスター操作レバーを操作すれば良いので操作が単純になり操作を一回で完結する。
・・・また、キャスター操作レバーを、通常の場合では、下方に下がった状態にバネ力等で自然に維持し全てのキャスターを一括してロックし、移動する場合では使用者によって該キャスター操作レバーを上方に挙げて全てのキャスターを一括してロック解除するようにしたので、ベッドサイドテーブルに使用者や患者が誤って掴まったり、寄りかかっても移動することがなく、思わぬ事故を防止できる。
【0048】
・・・このように、一回の操作でベッドサイドテーブルの全てのキャスターをロック状態及び解除状態にでき、従来のように各キャスター毎にロックをする必要がなく、特に、忙しい看護師や使用者の労力を軽減することができ、テーブル部にテーブル昇降操作兼用のキャスター操作部を設けたので、患者や看護師が簡単にテーブル昇降操作とキャスターロック・解除操作を一回の操作で終えることができる。
【0049】
また、キャスターのロック/解除の操作を操作伝達ワイヤーを用いた操作伝達機構としたので、これまでのリンク機構の組み合わせと異なり、構造も簡単で製作費も安価で、部品点数が少ないことから保守も容易になり、1本の操作ワイヤーを4本に分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にロック状態及び解除状態にできる。・・・」

(エ) 「【0050】
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論である。例えば、昇降可能なテーブルを持つサイドベッドテーブルとしたが、同様の機能をもつベッドサイドテーブルでもよい。また、キャスター操作レバーをテーブルの側部又は底部としたが、テーブルの上面でなければ、操作しやすい複数の箇所にもうければよく、2カ所以上、例えば、実施例1と実施例2を合わせた3箇所の位置に配置させてもよく、3カ所以上の適所に配置してもよい。」

(3) 検討
ア 本願の特許請求の範囲には、上記(1)アで摘記したように、「ベッドサイドテーブルの全て又はそれ以下の複数のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」ことが記載されているが、当該記載事項からは、「ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」ことの他に、「ベッドサイドテーブルのそれ以下の複数のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」こと、すなわち、ベッドサイドテーブルの(全てではなく)それ以下の複数のキャスター、例えば4個のうちの2個や3個のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことが含まれていると解される。
しかしながら、原出願の当初明細書等には、上記(2)で摘記したように、ベッドサイドテーブルの全て(実施例においては4個のうちの4個)のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことは記載されているが、ベッドサイドテーブルの(全てではなく)それ以下の複数のキャスター、例えば4個のうちの2個や3個のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことは記載されていない。
また、本願の特許請求の範囲には、上記(1)アで摘記したように、キャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うために「分岐ワイヤー」を(全てではなく)「それ以下の複数のキャスターに連結」するという事項も記載されているが、原出願の当初明細書等には、上記(2)で摘記したように、(4本の)分岐ワイヤーを全て(4個)のキャスターに連結することは記載されているが、分岐ワイヤーを(全てではなく)それ以下の複数のキャスター、例えば4個のうちの2個や3個のキャスターに連結することは記載されていない。
さらに、本願明細書の段落【0050】には、上記(1)イで摘記したように、「実施例ではベッドサイドテーブルのロック及びロック解除するキャスターは4個としたが、ベッドサイドテーブルが停止及び停止解除する作用があれば2個であってもよく、複数であればよいことは勿論である」という事項、すなわち、ベッドサイドテーブルの4個のうちの2個のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことが記載されているが、原出願の当初明細書等には、上記(2)で摘記したように、ベッドサイドテーブルの4個全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことは記載されているが、4個のうちの2個や3個のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことは記載されていない。

イ 上記(2)イ(ウ)に摘記したように、原出願の当初明細書の段落【0032】には、「したがって、本実施例のように、4箇所のキャスターをロックしようとした場合は、仮に、4箇所のうち一箇所のキャスターのロック機構が不完全、或いは、破損した場合でも、ベッドサイドテーブルを確実に固定及び解除できる。」と記載されている。
しかしながら、当該記載からは、「一箇所のキャスターのロック機構が不完全、或いは、破損」のため結果的に4箇所中3箇所のキャスターがロックとなっても「ベッドサイドテーブルを確実に固定」できることが理解できるとしても、「4箇所のキャスターをロックしようとした場合」すなわちロック操作する対象のキャスターは「4箇所」全てであることが認識できることにとどまり、ロック操作する対象のキャスターを(全てではなく)「それ以下の複数」あるいは(4個のうちの)「2個であってもよく、複数であればよい」ことが認識できるものではない。

ウ 上記(2)イ(エ)に摘記したように、原出願の当初明細書の段落【0050】には、「なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論である。例えば、昇降可能なテーブルを持つサイドベッドテーブルとしたが、同様の機能をもつベッドサイドテーブルでもよい。また、キャスター操作レバーをテーブルの側部又は底部としたが、テーブルの上面でなければ、操作しやすい複数の箇所にもうければよく、2カ所以上、例えば、実施例1と実施例2を合わせた3箇所の位置に配置させてもよく、3カ所以上の適所に配置してもよい。」と記載されている。
しかしながら、上記「本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論である」との記載は、当該限定されるものでない構成が実施例のどの構成かが明らかではないから、当該記載事項が「ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」ことを示すものであるとはいえず、また、当該記載事項があるとしても、「ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」ことに着目し、当該構成に代えて「ベッドサイドテーブルのそれ以下の複数のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」こと、すなわち、ベッドサイドテーブルの(全てではなく)それ以下の複数のキャスター、例えば4個のうちの2個や3個のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことに変更することが、当業者にとって直ちに着想し得ることとはいえない。加えて、限定されないとする具体例の記載をみても、テーブル自体の種類、また、キャスター操作レバーの配置についてのものであり、これら記載からロック操作するキャスターが(全てではなく)「それ以下の複数」あるいは(4個のうちの)「2個であってもよく、複数であればよい」ことが記載されているのと同然であると当業者が理解できるとはいえない。
また、原出願の当初明細書等においては、背景技術や課題に関して、4個全てのキャスターがロックされるベッドサイドテーブルにおける課題とその解決手段が説明され、発明を実施するための形態及び各実施例でも一貫して4個全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことおよびそのための機構について具体的に説明されており、この、一括して同時にロック及びロック解除操作を行うのは4個全てのキャスターであるものが、「全て又はそれ以下の複数のキャスター」(本願請求項1)あるいは「キャスターは4個としたが、・・・2個であってもよく、複数であればよい」(本願明細書段落【0050】)の一例示に過ぎないと認識できるような記載はない。なお、上記で述べたように、原出願明細書段落【0050】の「なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論である。」という記載があったとしても、実施例の全ての構成が一例示に過ぎないといえるものではない。

(4) 請求人の主張について
審判請求人は、平成29年7月27日に提出した意見書においては、ベッドサイドテーブルを含め「テーブル用のキャスタにおいても2箇所以上のキャスターをロックすればよいことが、本願出願時の技術常識」であり、この「本願発明のベッドサイドテーブルにおいて、「全て又はそれ以下の複数のキャスター」としたことは、原出願時の技術常識を加味すれば、新たな技術的事項を導入するものでもなく、この点は明示的記載がなくとも、記載されているに同然である事項である」旨の主張がされている。

しかしながら、仮に、ベッドサイドテーブルを含め「テーブル用のキャスタにおいても2箇所以上のキャスターをロックすればよいこと」が技術常識であったとしても、それで直ちにロック操作するキャスターが(全てではなく)「それ以下の複数」あるいは(4個のうちの)「2個であってもよく、複数であればよい」ことが原出願の当初明細書等に記載されているのと同然であるということにはならない。
上記(3)で述べたように、原出願の当初明細書等は、発明が解決しようとする課題についての記載も発明の具体例の記載も一貫して全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うものについて記載されているものであり、すなわち原出願の当初明細書等の記載から自明な事項と当業者が理解できる手がかりとなる記載がない以上、ロック操作するキャスターが(全てではなく)「それ以下の複数」あるいは(4個のうちの)「2個であってもよく、複数であればよい」ことが原出願の当初明細書等に記載されているのと同然であるとはいえない。
加えていうと、「ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」ことに対して、「ベッドサイドテーブルのそれ以下の複数のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」こと、すなわち、ベッドサイドテーブルの(全てではなく)それ以下の複数のキャスター、例えば4個のうちの2個や3個のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うことは、構成の簡素化が図れるなどの作用効果が期待できるから、新たな技術的事項を導入するものといえる。
よって、上記主張は採用できない。


(5) 小括
以上より、本願の特許請求の範囲の請求項1記載の、「ベッドサイドテーブルの」(全てではなく)「それ以下の複数のキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うものであって、」「該分岐ワイヤーは前記」(全てではなく)「それ以下の複数のキャスターに連結」するという事項は、原出願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。
また、本願明細書の段落【0050】記載の「実施例ではベッドサイドテーブルのロック及びロック解除するキャスターは4個としたが、ベッドサイドテーブルが停止及び停止解除する作用があれば2個であってもよく、複数であればよいことは勿論である。」という事項は、原出願の当初明細書等に対して「停止及び停止解除する作用があれば2個であってもよく、複数であればよい」という発明の具体例を追加するものであり、原出願の当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。

以上のとおり、本願は分割要件を満たしておらず、本願について出願日の遡及は認められないものであるから、本願の出願日は、実際に出願がなされた平成26年10月30日である。

2 進歩性の検討
(1) 刊行物に記載された事項
ア 刊行物1
当審における拒絶の理由に引用された、本願の現実の出願日(平成26年10月30日)前に頒布された刊行物1である特開2013-121425号公報には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同様。)。

(ア) 「【請求項1】
テーブルが上下昇降可能なベッドサイドテーブルにおいて、テーブルの側部又は底部に少なくとも2カ所以上にキャスター操作レバーを有するキャスター操作部を設け、少なくとも1カ所のキャスター操作レバーの操作によって、ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うたことを特徴とするベッドサイドテーブル。
・・・
【請求項5】
前記キャスター操作部からの各キャスターへのロック及びロック解除操作は同軸の操作伝達ワイヤーによって行い、テーブルの昇降に伴う操作伝達ワイヤーである分岐ワイヤーの弛緩部分の貯留をテーブルの中空或いは底面の収納部で吸収するようにしたことを特徴とする請求項1又は2又は3又は4に記載のベッドサイドテーブル。」

(イ) 「【実施例1】
【0012】
(テーブル部分、及び、支柱部分)
図1及びその背面図である図2は、昇降テーブルの一種であるベッドサイドテーブル1において、ベッドサイドテーブル1の側部中央部にはテーブル昇降操作レバー16が配置され、従来、テーブル昇降操作レバー16は装置内のバネ等によって下がっている場合は、テーブル部11の高さは固定され、テーブル昇降操作レバー16を挙げることによってテーブル部11の上下に移動可能となり、適宜の高さに調整して操作レバーを離せば、テーブル昇降操作レバー16は自動的に下がって、テーブル部11を所定の高さに固定する。・・・
【0013】
図3及びその背面図である図4は、テーブル昇降操作レバー16を挙げてテーブル部の昇降を可能にした状態で、1対のキャスター操作部2のそれぞれのキャスター操作レバー21a,bも挙げて(図3:実線)、双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)をロック解除状態にしてベッドサイドテーブル1が移動可能状態である全体を示す図で、図5は、ベッドサイドテーブル1のテーブル部11を下降させて双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)をロック状態とした全体を示す図である。
・・・
【0014】
支柱部12は、上部の四角柱のテーブル支持部122と、この支持部122の内側に嵌合しスライドする小径四角柱の基礎部123からなり、テーブル部11の高さをテーブル昇降操作レバー16によって支持部122への基礎部123の嵌合度合い、つまりテーブル部11の高さ調整するようになっている。
・・・
【0016】
・・・図6(b)に示すように、テーブル部11は中空部112が形成され、1対のキャスター操作部2と双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)とを連結する操作伝達ワイヤー30とこれらにワイヤー分岐盤32が収納されるとともに、伸縮する操作伝達ワイヤー30等を収納するワイヤー収納機構14が構成されている。
【0017】
後述するように(図13参照)、この操作伝達ワイヤー30は2本のレバー連結ワイヤー311,312と、中間の1本の連結ワイヤー32と、4個の双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)に繋がる4本の分岐ワイヤー33から構成され、レバー連結ワイヤー31a,31bと連結ワイヤー32との間には第1ワイヤー分岐盤34が、連結ワイヤー32と4本の分岐ワイヤー33との間には第2ワイヤー分岐盤35が介在している。
・・・
【0020】
・・・キャスター操作部2のキャスター操作レバー21を引き挙げることにより(図9(c))、インナーワイヤーを引っ張り、双輪キャスター4の車輪ロック機構5のロックを解除し、逆に、操作レバー21を昇降機構やキャスターロック機構のバネ等で下げ(図9(a))て、車輪ロック機構5のバネによりロックする。
・・・
【0026】
ここで、第1ワイヤー分岐盤34の構成を図17で説明すると、ワイヤー分岐機構の第1ワイヤー分岐盤34は、図17(a)(b)(c)に示すように、2本のレバー連結ワイヤー31a,31bのうち、1本でもインナーワイヤー312が引っ張られると、連結ワイヤー32に引っ張られる構造である。
・・・
【0031】
・・・
言い換えれば、キャスター操作部2からのどちらか1本のレバー連結ワイヤー31を4本の分岐ワイヤー33に分岐して4個の車輪ロック機構5であるキャスター操作機構に接続し、どちらか1本のレバー連結ワイヤー31のインナーワイヤー312の前進/後退を4本の分岐ワイヤー33のインナーワイヤー332の前進/後退に伝達しており、4本の分岐ワイヤー33に分岐するためにワイヤー分岐機構として第2ワイヤー分岐盤35或いは単独ワイヤー分岐盤36を設け、これらワイヤー分岐盤には分岐ワイヤー33(33a,33b,33c,33d)の4本の末端部331を並列にして固定するスライダー352(362)を設け、このスライダー352(362)をインナーワイヤー312,322,332の前進後退方向とて正確に平行に移動伝達できる。・・・」

(ウ) 上記(ア)及び(イ)からみて、刊行物1には、次の発明(以下「刊1発明」という。)が記載されていると認められる。

「テーブル支持部でテーブルが上下昇降可能なベッドサイドテーブルであって、前記テーブルを上下昇降可能に操作するテーブル昇降操作レバーの他に、テーブルの側部又は底部にキャスターを操作するキャスター操作レバーを設けたベッドサイドテーブルにおいて、
前記キャスター操作レバーを2カ所以上設けるとともに、少なくとも1カ所のキャスター操作レバーの操作によって、ベッドサイドテーブルの全てのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うものであって、
前記キャスター操作部からの各キャスターへのロック及びロック解除操作は同軸の操作伝達ワイヤーによって行い、該操作伝達ワイヤーを分岐して複数の分岐ワイヤーとし、該分岐ワイヤーは前記全てのキャスターに連結して、どちらか一方のキャスター操作部レバーを操作することにより前記分岐ワイヤーを操作するようにしたベッドサイドテーブル。」

イ 刊行物2
当審における拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物2である特開2011-5219号公報には、次の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
本発明は、病院のベッド等に配置するサイドテーブルに関し、さらに詳しくは、ベッドサイドテーブルを使用する際に動かないように双輪キャスターをロック状態或いはロック解除状態にする固定機構に関するものである。」

(イ) 「【0052】
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、ベッドサイドテーブルの底面に配置される4個所全部の双輪キャスターの車輪の回転を一箇所の操作部によって同時にロック状態及び解除状態にしたが、キャスターの双輪の幅によっては、1箇所以上であれば2個所や3個所の双輪キャスターの車輪の回転のロックでベッドサイドテーブルが完全に固定される場合もあり、完全に固定できるのであれば、双輪キャスター1箇所以上で2箇所や3箇所の車輪回転ロックでも良い。」

(ウ) 上記(ア)及び(イ)からみて、刊行物2には、次の事項(以下「刊2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「病院のベッド等に配置するベッドサイドテーブルを使用する際に動かないようにキャスターをロック状態或いはロック解除状態にする固定機構に関して、完全に固定できるのであれば、4個所全部のロックではなく、1箇所以上であれば2箇所や3箇所のロックでも良いこと。」

(2) 対比
本願発明と刊1発明とを対比すると、本願発明と刊1発明は、下記の点で一致している。

[一致点]
「テーブル支持部でテーブルが上下昇降可能であるベッドサイドテーブルであって、前記テーブルを上下昇降可能に操作するテーブル昇降操作レバーの他に、テーブルの側部又は底部にキャスターを操作するキャスター操作レバーを設けたベッドサイドテーブルにおいて、
前記キャスター操作レバーを2箇所以上設けるとともに、そのうちの少なくとも1カ所のキャスター操作レバーの操作によって、ベッドサイドテーブルのキャスターを一括して同時にロック及びロック解除操作を行うものであって、
前記キャスター操作部からの各キャスターへのロック及びロック解除操作は同軸の操作伝達ワイヤーによって行い、該操作伝達ワイヤーを分岐して複数の分岐ワイヤーとし、該分岐ワイヤーは前記キャスターに連結して、どちらか一方のキャスター操作部レバーを操作することにより前記分岐ワイヤーを操作するようにしたことを特徴とするベッドサイドテーブル。」

他方、本願発明と刊1発明は、下記の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では「一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」キャスターが、「全て又はそれ以下の複数」であるのに対し、刊1発明では「全て」である点。

[相違点2]
本願発明では「分岐ワイヤー」が連結するキャスターが「全て又はそれ以下の複数」であるのに対し、刊1発明では「全て」である点。

(4) 判断
ア 相違点1について
上記(1)イ(ウ)に記載したとおり、刊行物2には以下の刊2記載事項が記載されている。
「病院のベッド等に配置するベッドサイドテーブルを使用する際に動かないようにキャスターをロック状態或いはロック解除状態にする固定機構に関して、完全に固定できるのであれば、4個所全部のロックではなく、1箇所以上であれば2箇所や3箇所のロックでも良いこと。」
このような「2箇所や3箇所のロックでも良い」という記載に接した当業者であれば、刊1発明において、「一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」キャスターを「4個所全部」だけではなく「2箇所や3箇所」とすることは容易に想到できる。
以上のように、相違点1に係る本願発明の構成は、当業者が刊1発明及び刊2記載事項に基づいて容易に想到し得るものである。

イ 相違点2について
上記アで述べたとおり、「一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」キャスターを「4個所全部」だけではなく「2箇所や3箇所」とすることは容易に想到でき、そしてそれが「2箇所や3箇所」であるならば、「分岐ワイヤー」が連結されるキャスターも「2箇所や3箇所」となることは明らかである。
以上のように、相違点2に係る本願発明の構成は、当業者が刊1発明及び刊2記載事項に基づいて容易に想到し得るものである。

(5) 予備的検討
付言すれば、上記(3)の対比においては、「一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」キャスター及び「分岐ワイヤー」が連結されるキャスターについて、本願発明が「全て又はそれ以下の複数」であるのに対し、刊1発明では「全て」である点を相違点としたが、本願発明と刊1発明は、「一括して同時にロック及びロック解除操作を行う」キャスター及び「分岐ワイヤー」が連結されるキャスターについて「全て」という点で一致するから、本願発明と刊1発明とに相違点はなく、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるということもできる。
よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-27 
結審通知日 2017-10-31 
審決日 2017-11-14 
出願番号 特願2014-220927(P2014-220927)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 小野 忠悦
前川 慎喜
発明の名称 ベッドサイドテーブル  
代理人 小原 英一  

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