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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1335778
審判番号 不服2017-1379  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-31 
確定日 2018-01-16 
事件の表示 特願2012-138833「静電荷像現像用トナー、二成分現像剤および画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月 9日出願公開,特開2014- 2309,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成24年6月20日の出願であって,平成28年4月8日付けで拒絶理由が通知され,同年6月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年10月21日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,平成29年1月31日に請求されたものである。


2 本願の請求項1ないし5に係る発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下,それぞれを「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は,平成28年6月9日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ,請求項1ないし5の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
スチレン-アクリル共重合体からなる結着樹脂が含有されてなる母体粒子の表面に,スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂によるバンプが複数形成されたトナー粒子および外添剤を有してなり,
前記バンプの平均高さが50?120nmであり,
前記バンプの平均直径が100?500nmであり,
前記母体粒子表面における前記バンプの平均分布密度が2?15個/μm^(2 )であり,
前記外添剤が,炭素数6?16のアルキルシランに由来の反応生成物が表面に存在する,平均粒径が20?40nmである疎水化処理シリカ微粒子を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記トナー粒子に対して,粒径が60?120nmである大径シリカ微粒子よりなる外添剤がさらに添加されてなることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記トナー粒子に対して,粒径が5?20nmである小径シリカ微粒子または粒径が5?20nmである小径チタニア微粒子よりなる外添剤がさらに添加されてなることを特徴とする請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
請求項1?請求項3のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーと,見かけ密度が1.0?2.0g/cm^(3 )であるキャリアとからなることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項5】
請求項4に記載の二成分現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。」


3 原査定の拒絶の理由の概要
(1) 原査定の拒絶の理由は,概略,次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は,引用例1に記載された比較例2のトナー9に係る発明及び引用例2ないし4等に示される周知技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,本願の請求項4及び5に係る発明は,引用例1に記載された比較例2のトナー9に係る発明及び引用例5及び6等に示される周知技術に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(2) 原査定で引用された引用例1ないし6は次のとおりである。
引用例1:特開2012-27179号公報
引用例2:特開2007-304494号公報
引用例3:特開2010-243693号公報
引用例4:特開平6-258862号公報
引用例5:特開2005-91458号公報
引用例6:特開2011-164225号公報


4 引用例
(1)引用例1
ア 引用例1の記載
引用例1は,本願の出願より前に頒布された刊行物であって,当該引用例1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0005】
低温定着性と耐熱保管性を両立させるためにトナーをコア・シェル型の構造に制御する技術が報告されている(例えば,特許文献1参照)。即ち,低温定着性に優れたコア粒子表面に軟化点が高く耐熱性に優れた粒子から成るシェル層を形成することで,低温定着性と耐熱保管性を両立させることが可能となる。特に乳化凝集法によるトナー製造においては,この様な形状制御が容易に行えるといった利点がある。しかし近年プロダクションプリント領域において,複写機,プリンターの高速化及び対応紙種の拡大が進む中,前記のコア・シェル型トナーでは更なる低温定着化と耐熱保管性の両立が困難になってきている。
【0006】
この問題を解決するため,シェル層にポリエステル樹脂を用いたトナーが開発されている(例えば,特許文献2参照)。ポリエステル樹脂は,スチレン-アクリル樹脂と比較して高いガラス転移温度を維持したまま低軟化点設計が容易に行えるという利点があり,シェル層にポリエステル樹脂を用いることで,低温定着性・耐熱保管性の良好なトナーを得ることが出来る。
【0007】
しかし,スチレン-アクリル樹脂とポリエステル樹脂は親和性が乏しく,コアにスチレン-アクリル樹脂を用い,シェル層にポリエステル樹脂を用いた場合,薄層で均一なシェル層の形成が困難であるため,十分な耐熱保管性を得ることが出来なかった。また,コアとシェルの融着が起こりにくいためにトナーの形状制御が困難で,シェル層の表面が平滑なトナーを作ることが難しく,また,連続プリント時に現像機内でトナーが撹拌されることによってシェル層の剥離が起こり,その結果,画像ノイズが生じ画質が低下するという課題もあった。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
スチレン-アクリル樹脂とポリエステル樹脂との親和性を改善するため,ウレタン変性ポリエステル樹脂,またはアクリル変性ポリエステル樹脂をシェル層を構成する樹脂として用いることによって,コアにスチレン-アクリル樹脂を用いた場合でもある程度均一なシェル層を形成することができる。しかし,シェル層にスチレンのドメインが存在しないため,コア樹脂にさらに低温定着性を付与した場合,低温定着性と耐熱保管性を両立させるという点において未だ十分とは言えないものであった。
【0011】
本発明は,上記課題を解決するためになされたもので,コアの表面に薄層で均一なシェル層を設けることによってプロダクションプリント領域に使用される高速機においても十分な低温定着性を有しながら耐熱保管性をも満足し,現像機内で撹拌されても破砕されることがなく耐久性(耐破砕性)の優れたコア・シェル構造の静電荷像現像用トナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は以下の構成により解決される。
1.
少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するコア粒子の表面にスチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂を含むシェル層を有して成るトナー粒子であって,該スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂のグラフト率が5質量%以上30質量%以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
2.
前記コア粒子が,少なくともスチレン-アクリル樹脂を含有することを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用トナー。
3.
前記1または前記2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法において,少なくとも結着樹脂粒子と着色剤粒子を含有する水分散液に凝集剤を添加することによって分散粒子を凝集させる工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記の構成とすることによって,低温定着性と耐熱保管性に優れ,現像機内で撹拌されても破砕されることのない耐久性の優れた静電荷像現像用トナーを得ることが出来る。」

(イ) 「【実施例】
【0107】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。
【0108】
本発明のトナーは以下の手順で作製した。
(1)コア用樹脂粒子A分散液の調整
(2)シェル用樹脂粒子B分散液の調整
(3)凝集・融着?外添剤処理工程
以下順を追って説明する。
(1)コア用樹脂粒子A分散液の調整
(1-1)第1段重合
撹拌装置,温度センサ,温度制御装置,冷却管,窒素導入装置を取り付けた反応容器に予めアニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み,窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら,内温を80℃に昇温させた。
【0109】
この界面活性剤溶液に重合開始剤「過硫酸カリウム:KPS」9.0質量部を添加し,内温を78℃とさせた後,
溶液(1)
スチレン 540質量部
n-ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n-オクチルメルカプタン 17質量部
からなる溶液(1)を3時間かけて滴下し,滴下終了後,78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することで重合(第1段重合)を行い「樹脂微粒子(a1)」の分散液を調製した。
【0110】
(1-2)第2段重合:中間層の形成
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において,
溶液(2)
スチレン 94質量部
n-ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n-オクチルメルカプタン 5質量部
からなる溶液(2)に,離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し,85℃に加温して溶解させて単量体溶液(2)を調製した。
【0111】
一方,アニオン性界面活性剤「ラウリル硫酸ナトリウム」2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し,この界面活性剤溶液に「樹脂微粒子(a1)」の分散液を,樹脂微粒子(a1)の固形分換算で28質量部添加した後,循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により,前記単量体溶液(2)を4時間混合・分散させ,分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製し,この分散液に重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し,この系を90℃において2時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第2段重合)を行って「樹脂微粒子(a11)」の分散液を調製した。
【0112】
(1-3)第3段重合:外層の形成
上記の「樹脂微粒子(a11)」の分散液に,重合開始剤「KPS」2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し,80℃の温度条件下において,
溶液(3)
スチレン 230質量部
n-ブチルアクリレート 100質量部
n-オクチルメルカプタン 5.2質量部
からなる溶液(3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後,3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行った。その後,28℃まで冷却し,アニオン性界面活性剤溶液中にコア用樹脂粒子Aが分散した「コア用樹脂粒子Aの分散液」を作製した。
(2)シェル用樹脂粒子B分散液の調整
(2-1)シェル用樹脂粒子B1分散液の調整
≪ポリエステル樹脂の作製≫
冷却管,撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に,ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物316質量部,テレフタル酸80質量部,無水マレイン酸34質量部,および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ,200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ,軟化点が104℃になった時点で取り出した。これをポリエステル(a)とする。ポリエステル(a)は,Tgは65℃,数平均分子量は4500,重量平均分子量は13500であった。
【0113】
≪スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂(シェル用樹脂B1)の作製≫
温度計および撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に,キシレン430質量部,ポリエステル樹脂(a)430質量部を入れ溶解し,窒素置換後,スチレン18.1質量部,アクリル酸2-エチルヘキシル4.5質量部,ジ-t-ブチルパーオキサイド0.16質量部,およびキシレン100質量部の混合溶液を170℃で3時間滴下重合し,さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い,スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂(シェル用樹脂B1)を得た。
【0114】
〈シェル用樹脂B2?B7の作製〉
シェル用樹脂B1の作製で用いたスチレン,アクリル酸2-エチルヘキシル,ジ-t-ブチルパーオキサイドの量を表1のように変更した以外は,同様にしてシェル用樹脂B2?B7を得た。
【0115】
【表1】

【0116】
≪スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子分散液の作製≫
得られた「スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂(シェル用樹脂B1)」100質量部を,400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し,予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し,撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所製)でV-LEVEL 300μA で30分間超音波分散後した後,40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプV-700(BUCHI社製)を使用し,減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去して,平均粒径(体積基準におけるメディアン径(D50))が160nm,固形分量が13.5質量%の「スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂粒子(シェル用樹脂粒子B1)の分散液」を得た。
(3)凝集・融着?外添剤処理工程
≪トナーの作製≫
〈着色剤分散液の作製〉
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解した。この溶液を撹拌しながら,カーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し,次いで,撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより,着色剤の粒子を分散して有する着色剤分散液を調製した。この分散液の粒子径を,マイクロトラック粒度分布測定装置UPA-150(日機装社製)を用いて測定したところ,117nmであった。
【0117】
〈トナー1の作製〉
撹拌装置,温度センサ,冷却管を取り付けた反応容器に,「コア用樹脂粒子A」の分散液を固形分換算で288質量部,イオン交換水2000質量部を投入後,5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0118】
その後,「着色剤分散液」を固形分換算で40質量部投入した。次いで,塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を,撹拌下,30℃において10分間かけて添加した。その後,3分間放置した後に昇温を開始し,この系を60分間かけて80℃まで昇温し,80℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールターベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し,体積基準におけるメディアン径(D50)が6.0μmになった時点で,「シェル用樹脂粒子B1」の分散液を固形分換算で72質量部を30分間かけて投入し,反応液の上澄みが透明になった時点で,塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。さらに,昇温を行い,90℃の状態で加熱撹拌することにより,粒子の融着を進行させ,トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で30℃に冷却し,「トナー1の分散液」を作製した。
【0119】
(洗浄・乾燥工程)
凝集・融着工程にて生成した粒子(「トナー1の分散液」)を遠心分離機で固液分離し,トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。該ウェットケーキを,前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し,その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し,水分量が0.5質量%となるまで乾燥してトナー用母体粒子〔1〕を作製した。
【0120】
(外添剤処理工程)
上記の「トナー母体粒子〔1〕」に,疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し,ヘンシェルミキサーにより混合して,「トナー1」を作製した。
【0121】
〈トナー2?10の作製〉
トナー1の作製で用いた「コア用樹脂粒子A」と「シェル用樹脂粒子B」の種類と質量部を,表2のように変更した以外は同様にして「トナー2?10」を作製した。
【0122】
【表2】

【0123】
≪現像剤の作製≫
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子を5質量部とを,撹拌羽根付き高速混合機に投入し,120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し,体積基準メディアン径50μmのキャリアを得た。
【0124】
キャリアの体積基準メディアン径は,湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。
【0125】
上記キャリアにトナーをそれぞれトナー濃度が6質量%になるように添加し,ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)に投入し,回転速度45rpmで30分間混合し現像剤を作製した。
【0126】
≪評価方法≫
(1)低温定着特性
画像評価は,市販のカラー複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)の現像装置に,上記で作製した現像剤を順次装填して評価を行った。なお,定着温度,トナー付着量,システム速度を自由に設定できるように改造した。評価紙としてNPi上質紙128g/m^(2)(日本製紙製)を用い,トナー付着量11.3g/m^(2)のベタ画像を定着速度300mm/secで定着上ベルト150?200℃,定着下ローラは上ベルトより20℃低く設定し5℃毎の水準で定着させた時に,コールドオフセットが発生しない定着下限温度を評価した。この定着下限温度が低ければ低い程,定着性が優れている。
【0127】
◎:定着下限温度が150℃以下
○:定着下限温度が165℃以下
×:定着下限温度が170℃以上
(2)耐熱保管性
トナー0.5gを内径21mmの10mlガラス瓶に取り蓋を閉めて,タップデンサーKYT-2000(セイシン企業製)で室温にて600回振とうした後,蓋を取った状態で55℃,35%RHの環境下に2時間放置した。次いで,トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に,トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて,パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし,押さえバー,ノブナットで固定し,送り幅1mmの振動強度に調整し,10秒間振動を加えた後,篩上の残存したトナー量の比率(質量%)を測定した。トナー凝集率は下記式により算出される値である。
【0128】
トナー凝集率(%)=篩上の残存トナー質量(g)/0.5(g)×100
下記に記載の基準によりトナーの耐熱保管性の評価を行った。
【0129】
◎:トナー凝集率が15質量%未満(トナーの耐熱保管性が極めて良好)
○:トナー凝集率が20質量%以下(トナーの耐熱保管性が良好)
×:トナー凝集率が20質量%を超える(トナーの耐熱保管性が悪く,使用不可)
(3)耐破砕性
コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製の「bizhub PRO C6500」で用いられている現像器に,上記現像剤を投入し,単体駆動機にて600rpmの速度で3.5時間駆動させた。そこで,現像器内の現像剤をサンプリングし,トナーの粒度分布をマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)にて測定した。現像器投入前のトナーと比較して,2.5μm以下のトナー増加率(質量%)を算出し,耐破砕性を評価した。増加率が高いほど現像器内での破砕が発生しやすいことを表す。評価基準は以下の通りである。
【0130】
◎:増加率が5%以下である
○:増加率が5%を超えるが10%以内である
×:増加率が10%を超える
【0131】
【表3】

【0132】
以上の結果から明らかなように,本発明のトナーは比較用トナーに比べて,低温定着特性,耐熱保管性,耐破砕性とも優れたものであることが分かる。」

イ 引用例1に記載された発明
前記ア(ア)及び(イ)の記載から,引用例1に,比較例2のトナー9に係る発明として次の発明が記載されていると認められる。(なお,便宜上,比較例2のトナー9における「トナー用母体粒子」を「トナー用母体粒子〔9〕」と表現した。)

「電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナーであって,
下記方法で作製したトナー用母体粒子〔9〕に,疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し,ヘンシェルミキサーで混合することによって得られたトナー9。

[トナー用母体粒子〔9〕の作製方法]
撹拌装置,温度センサ,冷却管を取り付けた反応容器に,下記方法で作製した『コア用樹脂粒子Aの分散液』を固形分換算で288質量部,イオン交換水2000質量部を投入後,5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整し,その後,下記方法で調整した『着色剤分散液』を固形分換算で40質量部投入し,次いで,塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を,撹拌下,30℃において10分間かけて添加し,その後,3分間放置した後に昇温を開始し,この系を60分間かけて80℃まで昇温し,80℃を保持したまま粒子成長反応を継続し,この状態で『コールターマルチサイザー3』(コールターベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定し,体積基準におけるメディアン径(D50)が6.0μmになった時点で,下記方法で作製した『シェル用樹脂粒子B6の分散液』を固形分換算で72質量部を30分間かけて投入し,反応液の上澄みが透明になった時点で,塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ,さらに,昇温を行い,90℃の状態で加熱撹拌することにより,粒子の融着を進行させ,トナーの平均円形度の測定装置『FPIA-2100』(Sysmex社製)を用いて(HPF検出数を4000個)平均円形度が0.945になった時点で30℃に冷却することで,『トナー9の分散液』を作製し,当該『トナー9の分散液』を遠心分離機で固液分離し,トナー母体粒子のウェットケーキを形成し,当該ウェットケーキを,前記遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し,その後『フラッシュジェットドライヤー』(セイシン企業社製)に移し,水分量が0.5質量%となるまで乾燥する。

[『コア用樹脂粒子Aの分散液』の作製方法]
撹拌装置,温度センサ,温度制御装置,冷却管,窒素導入装置を取り付けた反応容器に予めアニオン性界面活性剤『ラウリル硫酸ナトリウム』2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させたアニオン性界面活性剤溶液を仕込み,窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら,内温を80℃に昇温させ,この界面活性剤溶液に重合開始剤『過硫酸カリウム:KPS』9.0質量部を添加し,内温を78℃とさせた後,
スチレン 540質量部
n-ブチルアクリレート 270質量部
メタクリル酸 65質量部
n-オクチルメルカプタン 17質量部
からなる溶液(1)を3時間かけて滴下し,滴下終了後,78℃において1時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第1段重合)を行って『樹脂微粒子(a1)の分散液』を調製し,
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において,
スチレン 94質量部
n-ブチルアクリレート 60質量部
メタクリル酸 11質量部
n-オクチルメルカプタン 5質量部
からなる溶液(2)に,離型剤としてパラフィンワックス(融点:73℃)51質量部を添加し,85℃に加温して溶解させて単量体溶液(2)を調製し,
アニオン性界面活性剤『ラウリル硫酸ナトリウム』2質量部をイオン交換水1100質量部に溶解させた界面活性剤溶液を90℃に加温し,この界面活性剤溶液に前記『樹脂微粒子(a1)の分散液』を,樹脂微粒子(a1)の固形分換算で28質量部添加した後,循環経路を有する機械式分散機『クレアミックス』(エム・テクニック社製)により,前記単量体溶液(2)を4時間混合・分散させ,分散粒子径350nmの乳化粒子を含有する分散液を調製し,当該分散液に重合開始剤『KPS』2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し,この系を90℃において2時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第2段重合)を行って『樹脂微粒子(a11)の分散液』を調製し,
前記『樹脂微粒子(a11)の分散液』に,重合開始剤『KPS』2.5質量部をイオン交換水110質量部に溶解させた開始剤水溶液を添加し,80℃の温度条件下において,
スチレン 230質量部
n-ブチルアクリレート 100質量部
n-オクチルメルカプタン 5.2質量部
からなる溶液(3)を1時間かけて滴下し,滴下終了後,3時間にわたって加熱・撹拌することによって重合(第3段重合)を行い,その後,28℃まで冷却する。

[『着色剤分散液』の調整方法]
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し,この溶液を撹拌しながら,カーボンブラック『モーガルL』(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し,次いで,撹拌装置『クレアミックス』(エム・テクニック社製)を用いて分散処理する。

[『シェル用樹脂粒子B6の分散液』の作製方法]
冷却管,撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に,ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物316質量部,テレフタル酸80質量部,無水マレイン酸34質量部,および重縮合触媒としてチタンテトライソプロポキシド2質量部を10回に分割して入れ,200℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させ,次いで13.3kPa(100mmHg)の減圧下に反応させ,軟化点が104℃になった時点で取り出すことによって,Tgが65℃,数平均分子量が4500,重量平均分子量が13500のポリエステル(a)を得,
温度計および撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に,キシレン430質量部,前記ポリエステル(a)430質量部を入れて溶解し,窒素置換後,スチレン7.0質量部,アクリル酸2-エチルヘキシル1.8質量部,ジ-t-ブチルパーオキサイド0.06質量部,及びキシレン100質量部の混合溶液を170℃で3時間滴下重合し,さらにこの温度で30分間保持し,次いで脱溶剤を行うことによって,スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂(シェル用樹脂B6)を得,
当該スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂(シェル用樹脂B6)100質量部を,400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し,予め作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合し,撹拌しながら超音波ホモジナイザー『US-150T』(日本精機製作所製)によりV-LEVEL 300μA で30分間超音波分散した後,40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプV-700(BUCHI社製)を使用し,減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去する。」(以下,「引用発明」という。)

(2)引用例2ないし4の記載から把握される事項
ア 引用例2の記載
引用例2は,本願の出願より前に頒布された刊行物であって,当該引用例2には次の記載がある。(下線は,後述する周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真法,静電記録法等において,静電潜像の現像のために使用する静電潜像現像用トナーに関する。」

(イ) 「【0123】
<外添剤粒子の疎水化処理>
外添剤粒子の疎水化処理は,下記の通りにして行った。なお,処理剤としてはシラン及びシランカップリング剤を用いた。
反応容器に純水1000部に2-プロパノール100部を混ぜた混合溶剤中に外添剤コアを80部加えてスラリー状にする。次に,外添剤コア量100部に対し,下記表1に示した処理剤種を,同じく表1に示した処理剤量分をスラリー状になった反応容器へ投入した。反応容器内を乾燥窒素ガスで置換した後,昇温後0.1N-HClを30部滴下し,混合溶液を窒素ガス気流下攪拌しながら約80℃まで昇温した。
【0124】
その後,オイルバスで加熱・還流しながら3時間攪拌反応した。冷却後混合溶液を取出し遠心分離機で微粒子を分離し上澄みを除去した。濾過された微粒子をメタノール10%水溶液に混合攪拌し遠心分離する操作を3回繰り返した。更に,純水に混合攪拌し,遠心分離操作3回繰り返した後,微粒子湿品を凍結乾燥して水分を除去した。160℃で2時間真空乾燥した後,メノウ乳鉢で壊砕し,40μm篩分網にて篩分した。
以上のようにして,3種の外添剤粒子からなる外添剤I?VIを得た。
【0125】
【表1】

【0126】
<実施例1>
上記トナー母粒子K1,C1,M1,Y1のそれぞれ100部に対し,表1の外添剤Iの小径外添剤を0.5部,中径外添剤を1.0部,大径外添剤を1.0部各々添加し,5リットルヘンシェルミキサーを用い,周速30m/sで15分間ブレンドを行った後,45μmの目開きのシーブを用いて粗大粒子を除去し,トナー1を作製した。
・・・(中略)・・・
【0129】
<実施例4>
上記トナー母粒子K1,C1,M1,Y1のそれぞれ100部に対し,表1の外添剤IVの小径外添剤を0.5部,中径外添剤を1.0部,大径外添剤を1.0部各々添加し,5リットルヘンシェルミキサーを用い,周速30m/sで15分間ブレンドを行った後,45μmの目開きのシーブを用いて粗大粒子を除去し,トナー4を作製した。」

イ 引用例3の記載
引用例3は,本願の出願より前に頒布された刊行物であって,当該引用例3には次の記載がある。(下線は,後述する周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成方法に用いられるトナーおよびその製造方法に関するものである。」

(イ) 「【実施例】
【0126】
以下に,本発明を製造例,実施例によりさらに詳細に説明するが,本発明はこの実施例に限定されるものではない。
・・・(中略)・・・
(1)「外添剤粒子(ア)?(ス)」の準備
以下の「小径外添剤粒子(ア)?(ス)」を準備した。すなわち,
小径外添剤粒子(ア);数平均1次粒径7nmのシリカ粒子
小径外添剤粒子(イ);数平均1次粒径13nmのシリカ粒子
小径外添剤粒子(ウ);数平均1次粒径21nmのシリカ粒子
小径外添剤粒子(エ);数平均1次粒径40nmのシリカ粒子
以上,シリカは,HMDSで疎水化処理を行った。
【0129】
小径外添剤粒子(オ);数平均1次粒径15nmのアナターゼ型チタニア粒子
小径外添剤粒子(カ);数平均1次粒径35nmのルチル型疎水性チタニア
以上,チタニアは,i-ブチルトリメトキシシランで疎水化処理を行った。
【0130】
大径外添剤粒子(キ);数平均1次粒径55nm疎水性シリカ
大径外添剤粒子(ク);数平均1次粒径80nm疎水性シリカ
大径外添剤粒子(ケ);数平均1次粒径110nm疎水性シリカ
大径外添剤粒子(コ);数平均1次粒径150nm疎水性シリカ
大径外添剤粒子(サ);数平均1次粒径250nm疎水性シリカ
以上,シリカは,HMDSで疎水化処理を行った。
【0131】
大径外添剤粒子(シ);数平均1次粒径120nmチタン酸カルシウム
大径外添剤粒子(ス);数平均1次粒径330nmチタン酸カルシウム
以上,チタン酸カルシウムは,シリコーンオイル処理で疎水化処理を行った。
(50?300nm外添剤の製造例)
(シリカ粒子(ケ)の作製)
・・・(中略)・・・
【0132】
このメタノール-水分散液に室温でヘキサメチルジシラザン484,2g(3モル)を加えて疎水化処理を施し,シリカ粒子ケを得た。
・・・(中略)・・・
【0161】
・・・(中略)・・・「シアントナー1?41,イエロートナー1?41,マゼンタトナー1?41,黒色トナー1?41」の作製
各「トナー用母体粒子」に対し,以下の手順で表2?表9に示す様に外添剤を添加して処理を行うことにより,「シアントナー1?41,イエロートナー1?41,マゼンタトナー1?41,黒色トナー1?41」を作製した。
【0162】
【表2】



ウ 引用例4の記載
引用例4は,本願の出願より前に頒布された刊行物であって,当該引用例4には次の記載がある。(下線は,後述する周知技術の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,薄層形成方式の現像方式において,会合型不定形重合トナーを使用した場合に,長期にわたって現像性が安定するトナーに関し,更に詳しくは色再現性に優れ安定したトナー及び薄層形成現像方式による画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,電子写真に於いて画質の向上を目的としてトナーの粒径を小粒径化することが種々提案されている。」

(イ) 「【0053】
【実施例】
実施例1
トナー作製例
・・・(中略)・・・
【0054】上記によって得られた着色粒子に次表に示す材料及び配合で外添剤を添加混合して本発明の現像剤を得た。
【0055】
【表1】



エ 引用例2ないし4の記載から把握される事項
引用例2の【0125】の表2に示された「外添剤I」の「中径外添剤」及び「外添剤I」の「中径外添剤」は,信越化学社製「KBM3063」(ヘキシルトリエトキシシランであり,本件発明1の「炭素数6ないし16のアルキルシラン」に該当する。)で疎水化処理した平均一次粒子径が40nmの「アエロジルOX50」(フュームドシリカである。)であり,引用例3の【0128】に記載された「小径外添剤粒子(ウ)」及び「小型外添剤粒子(エ)」は,HMDSすなわちヘキサメチルジシラザンで疎水化処理された数平均1次粒径が21nmのシリカ粒子及びHMDSで疎水化処理された数平均1次粒径が40nmのシリカ粒子であり,引用例4の【0055】の表1に示された「トナー104」及び「トナー105」の「外添剤B」は,ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理された一次粒子径が40nmのシリカであって,引用文献2ないし4には,これら外添剤を,平均一次粒径の異なる外添剤とともに用いたトナーが記載されているから,引用例2ないし4の記載から,次の技術事項が本願の出願前に周知であったと認められる。

「電子写真方式の画像形成に用いられる現像用トナーにおいて,外添剤として,シラン化合物を用いて疎水化処理された平均一次粒径が21ないし40nmのシリカ粒子と,当該シリカ粒子とは異なる平均一次粒径の外添剤とを併用すること。」(以下,「周知技術」という。)


5 判断
(1)本件発明1について
ア 対比
引用発明の「トナー9」は,「電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用トナー」であって,「トナー用母体粒子〔9〕」と「疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)」とからなるところ,「トナー用母体粒子〔9〕」が本件発明1の「トナー粒子」に該当し,「疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)」が本件発明1の「外添剤」に該当するから,引用発明の「トナー9」は,本件発明1の「静電荷像現像用トナー」と「トナー粒子および外添剤を有してな」る「静電荷像現像用トナー」である点で一致する。
また,引用発明の「トナー用母体粒子〔9〕」は,その作製方法によれば,概略,「コア用樹脂粒子Aの分散液」中のコア用樹脂粒子Aと「着色剤分散液」中の着色剤とを凝集・融着させて,体積基準におけるメディアン径(D50)が6.0μmとなるまで粒子成長させ,さらにその表面に「シェル用樹脂粒子B6の分散液」中のシェル用樹脂粒子B6を凝集・融着させてなるものであるところ,「コア用樹脂粒子Aの分散液」の作製方法における第1段重合ないし第3段重合で合成される樹脂は,いずれも本件発明1の「スチレン-アクリル共重合体」に該当する樹脂であり,かつ,「シェル用樹脂粒子B6の分散液」の作製方法により合成される「スチレン-アクリルグラフト変性ポリエステル樹脂(シェル用樹脂B6)」は本件発明1の「スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂」に該当する樹脂である。したがって,引用発明の「コア用樹脂粒子Aと着色剤とを凝集・融着させて,体積基準におけるメディアン径(D50)が6.0μmとなるまで粒子成長させ」た粒子(以下,便宜上「会合粒子」という。)は,本件発明1の「スチレン-アクリル共重合体からなる結着樹脂を含有されてなる母体粒子」に相当し,当該「会合粒子」の表面に凝集・融着した「シェル用樹脂粒子B6」からなる構造物は,本件発明1の「母体粒子の表面」に「複数」形成された「スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂によるバンプ」と,「母体粒子の表面」に形成された「スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂による構造物」である点で共通する。
以上によれば,本願の請求項1に係る発明と引用発明とは,
「スチレン-アクリル共重合体からなる結着樹脂が含有されてなる母体粒子の表面に,スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂による構造物が形成されたトナー粒子および外添剤を有してなる静電荷像現像用トナー。」
である点で一致し,次の点で一応相違する。

相違点1:
本件発明1の「スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂による構造物」が,平均高さが50?120nmで,平均直径が100?500nmで,母体粒子表面における平均分布密度が2?15個/μm^(2 )の複数のバンプであるのに対して,
引用発明の「スチレン-アクリル変性ポリエステル樹脂による構造物」は,そのような複数のバンプであるのか否かが定かでない点。

相違点2:
本件発明1の「外添剤」が,炭素数6?16のアルキルシランに由来の反応生成物が表面に存在する,平均粒径が20?40nmである疎水化処理シリカ微粒子を含むのに対して,
引用発明の「外添剤」は,疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)であって,本件発明1のような疎水化処理シリカ微粒子を含んでいない点。

イ 容易想到性の判断
事案に鑑みて,まず相違点2について判断する。
引用発明は,引用例1に記載された各実施例のトナーが,「低温定着特性」,「耐熱保管性」及び「耐破砕性」に優れていることを示すための「比較例」である。そして,引用例1の【0131】の表3によれば,引用発明の「耐熱保管性」は「×」すなわち「トナー凝集率が20質量%を超える(トナーの耐熱保管性が悪く,使用不可)」(【0129】)と評価され,「耐破砕性」についても「×」すなわち「増加率が10%を超える」(【0130】)と評価されている。
しかるに,引用発明において前記4(2)エで認定した周知技術における外添剤を用いることで,「使用不可」と評価されるような「耐熱保管性」や,「耐破砕性」が,引用例1に記載された各実施例と同程度以上に改善するはずもないから,当業者が,前述したような評価がなされた引用発明に対して,前記周知技術に基づく改良を行おうとするとは到底いえない。
したがって,引用発明において,前記周知技術を適用することには,動機付けがないというべきである。

ウ 効果について
本件発明1は,請求項1に記載された構成の複数のバンプと,請求項1に記載された平均粒径の疎水化処理シリカ微粒子とを採用することによって,前記疎水化処理シリカ微粒子が前記バンプ間に入り込むことで,トナー粒子とキャリア粒子の衝突やトナー粒子同士の衝突による衝撃力によって前記疎水化処理シリカ微粒子がキャリアに移行したりトナー粒子へ埋没したりすることが抑制されるために,耐刷時における現像性及び転写性が確保されるという,引用例1の記載や前記周知技術からは予測できない,本願明細書の【0013】に記載の作用効果を奏するものと認められる。

エ 小括
以上のとおりであるから,本件発明1は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2ないし5について
請求項2ないし5は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件発明2ないし5は,いずれも,本件発明1の発明特定事項を全て含み,さらに限定を付加したものに相当するところ,前記(1)で述べたとおり,本件発明が,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上,本件発明2ないし5も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


6 むすび
以上のとおり,本件発明1ないし5は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-25 
出願番号 特願2012-138833(P2012-138833)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮澤 浩  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
樋口 信宏
発明の名称 静電荷像現像用トナー、二成分現像剤および画像形成方法  
代理人 大井 正彦  
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