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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G06Q
管理番号 1335786
審判番号 無効2016-800016  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-02-04 
確定日 2018-01-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第5650776号発明「金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システムおよびプログラム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の特許第5650776号についての手続の経緯は,概略,以下のとおりである。

出願(特願2013-45238号) 平成25年 3月 7日
(原出願(特願2008-332599号) 平成20年12月26日)
設定登録 平成26年11月21日
本件無効審判請求 平成28年 2月 4日
上申書(請求人) 平成28年 3月31日
審判事件答弁書提出 平成28年 5月 9日
上申書(被請求人) 平成28年 9月 6日
口頭審理陳述要領書提出(請求人) 平成28年 9月15日
口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 平成28年 9月15日
口頭審理 平成28年 9月29日

第2 本件発明
特許第5650776号の請求項1乃至7に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は,特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

<本件発明>
「 【請求項1】
金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,
前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする金融商品取引管理装置。
【請求項2】
前記注文情報生成手段が生成した前記注文情報を記録する注文情報記録手段と,
前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手段とを備え,
前記約定情報生成手段は,前記注文情報記録手段に記録された前記注文情報群を形成する個々の前記注文情報のうち,前記第一注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理と,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う処理とを,予め定められた回数だけ繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項3】
前記注文情報生成手段は,前記逆指値注文情報に基づく前記逆指値注文が約定されたときに,前記第一注文情報に基づく指値注文および前記第二注文情報に基づく指値注文を停止し,
前記約定情報生成手段は,前記逆指値注文情報に基づいて約定を行った場合,該逆指値注文情報を生成した前記売買注文申込情報に対応して生成される前記第一注文情報および第二注文情報のうち,前記逆指値注文情報の生成時点で未生成である前記注文情報を,全て前記注文情報記録手段から消去するキャンセル処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の金融商品取引管理装置。
【請求項4】
前記約定情報生成手段は,一旦成立した前記金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合,該キャンセル要求のあった注文に対応する注文情報群を前記第一注文情報および前記第二注文情報から抽出し,抽出された前記注文情報群に含まれる約定前の前記注文情報を全てキャンセル処理することを特徴とする請求項2又は3の何れかに記載の金融商品取引管理装置。
【請求項5】
特定顧客の預金残高情報を記録する顧客口座情報記録手段を備え,
前記注文情報記録手段には,前記第一注文情報および前記第二注文情報の注文価格に基づく金額情報が属性情報として記録され,
前記注文情報生成手段は,前記注文価格に基づく金額情報を前記預金残高情報と比較し,該預金残高情報の値が前記注文価格に基づく金額情報の値以上である場合に,前記第一注文情報および第二注文情報を生成することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の金融商品取引管理装置。
【請求項6】
金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムであって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,
前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせることを特徴とする金融商品取引管理システム。
【請求項7】
コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とするプログラム。」

第3 請求人の主張の概要
請求人は,特許第5650776号の特許請求の範囲の欄に記載された請求項1乃至7に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求めている。
その無効理由の概要と証拠方法は,次のとおりである。
1.無効理由
(1)特許第5650776号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称する。)?本件発明7は,平成14年12月19日に公開された甲第1号証(米国特許公開第2002/0194106号公報)に記載された発明(以下「甲1発明」といい,その他の甲号証に記載された発明も同様に称する。)及び平成14年6月28日に公開された甲第2号証(特開2002-183446号公報)に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。
(2)特に本件発明1についての主張
「(1)本件発明1
本件発明1を分説すると,以下のとおりである。
1A 金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
1B 前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
1C 該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
1D 該注文情報生成手段は,
1E 一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し,
1F 売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,
1G 前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる
1H ことを特徴とする金融商品取引管理装置。」
(審判請求書第6頁第22行乃至第7頁第25行)
(2)「ク 相違点の検討(相違点1)
相違点1 本件発明1及び本件発明6と甲1発明とは,本件発明1及び本件発明6の「注文情報群」は,「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を備えるのに対し,甲1発明の「注文情報群」は,「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を備えない点。
・・・(途中省略)・・・
(イ)相違点1に係る構成は,設計事項であること
先行する売り又は買った金融商品を指値注文によって買い又は売ることに加え,損切り目的のため,逆指値注文によって買い又は売ることは,金融商品の分野において,例示するまでもなく周知・慣用の技術に過ぎない。また,甲1発明では,次の注文情報群の第一注文情報に基づく指値注文の価格を,先行する成行注文の約定価格と一致する価格とすることに本質がある。そうすると,当該指値注文によって売り又は買った金融商品をどのように買い又は売るのかは,甲1発明において,本質的な事項ではない。
以上から,甲1発明において,注文情報群に「前記金融商品の売り注文または買い注の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」を含めるか否かは,損切に係る注文を含めるのか否かを考慮して,当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。したがって,前記相違点1に係る本件発明1及び本件発明6の構成は,甲1発明に基づいて,当業者が適宜なし得るものに過ぎないので,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件発明1が奏する効果は,甲1発明から当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。
(ウ)仮に,相違点1に係る構成が設計的事項ではないとしても,当該相違点1に係る構成は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたこと
・・・(途中省略)・・・
以上より,甲第2号証には,受託者側のシステムにおいて,委託者が入力した注文に必要な情報に基づいて,金融商品の売り注文又は買い注文の一方を成行又は指値で行う新規注文のための情報と,この金融商品の売り注文又は買い注文の他方を指値で行う仕切注文に係る情報と,この金融商品の売り注文又は買い注文の他方を逆指値で行う仕切注文に係る情報を含む情報群を生成する構成が開示されている。したがって,甲2発明には,「該注文情報生成手段は,一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を生成し,」が開示されている。
甲1発明は,株等の証券について,売り注文又は買い注文をするパート1注文及びこれと反対の買い注文又は売り注文をするパート2注文の2つのパートからなるイフダン注文を自動で繰り返し行うシステム発明である。甲2発明も同じくイフダン注文を自動で行うシステム発明である。したがって,両発明は共に,金融商品取引に関するシステム発明の中でも,限定的な特定の分野に属する発明であり,共通の技術分野に属している。とりわけ,甲1発明は,イフダン注文を自動で繰り返す点に技術的意義があり,イフダン注文の注文情報を細かく規定する(成行,指値,逆指値)甲2発明と極めて強い接着性があるといえる。また,その課題は,イフダン取引を自動で行うことで,いかに顧客が自動で利益を上げられるかという点にあり,共通の課題を有する発明であるので,両発明を組み合わせることに,何らの格別の工夫も必要でなく,故に,動機付けがあるといえる。
したがって,前記相違点1に係る本件発明2の構成は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件発明2が奏する効果は,甲1発明及び甲2発明から当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。」
(審判請求書第40頁第16行乃至第45頁第9行)

2.証拠方法
請求人は,審判請求書に添付して甲第1号証の1,甲第1号証の2,及び甲第2号証を提出した。
甲第1号証の1: 米国特許公開第2002/0194106号公報
甲第1号証の2: 米国特許公開第2002/0194106号公報の 訳文
甲第2号証 : 特開平2002-183446号公報

第4 被請求人の主張の概要
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めている。
被請求人の主張の概要は,次のとおりである。
「第2 本件特許発明1(請求項1)に対する無効理由について
1 請求人の主張する相違点
(1)請求人は,本件特許発明1と甲1発明との相違点を「相違点1 本件発明1・・・『注文情報群』は,『前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報』を備えるのに対し,甲1発明の『注文情報群』は,『前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報』を備えない点」と主張する。
(2)しかしながら,後に詳述するとおり,甲1発明には,指値注文を繰り返すという構成しか開示されておらず,本件特許発明1の構成1E,1Fのように,1回目の新規注文を成行注文としつつ,2回目以降の新規注文を指値注文とする構成は開示されていない。したがって,本件特許発明1と甲1発明とは,請求人が指摘する相違点1のほか,構成要件1E,1Fの上記点において相違する。
2 甲1発明における注文の繰り返し
・・・(途中省略)・・・
(3)執行条件を変更することも開示されていない
ア 上記のとおり,甲1発明は注文情報19に基づく指値注文を繰り返す発明であり,最初のLOCK注文と2回目のLOCK注文とで新規注文(パート1)の執行条件を変更すること(変更できること)は,甲第1号証の2のどこにも記載も示唆もされていない。
イ むしろ甲第1号証の2の図6及び図7を見れば明らかなとおり,甲1発明では1回目のLOCK注文と2回目のLOCK注文とは,同じ情報19に基づき行われるのであり,1回目の新規注文と2回目以降の新規注文では,同じ執行条件を採用することが明記されているのである。
3 甲1発明と甲2発明との組合せ
(1)甲第2号証には,注文情報群の生成を繰り返すという構成すら開示されていないのであるから,当然,1回目と2回目とで注文の執行条件を変更するという構成もまた開示されていない。したがって,甲1発明と甲2発明とを組み合わせたところで,本件特許発明1のように,1回目の新規注文を成行で行い,2回目以降の新規注文を指値注文で行うという構成に至ることはない。」
(答弁書第7頁第1行乃至第11頁第12行)

第5 無効理由に対する当審の判断
1.各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証の1には,次の事項が記載されている。なお,訳は甲第1号証の2を主に採用し,また,下線は当審において付加したものである。
ア.「[0004] This invention applies to buying and selling stocks, options, commodities, bonds, and most forms of equities and securities. This invention has useful application for the individual investor, the securities broker and others who trade securities.」
(訳:この発明は,株式,オプション,商品,債券,および大部分の型式の株式および有価証券の売買に適合する。この発明は,個人投資家,証券ブローカ,および証券をトレードするその他の人のための有用なアプリケーションを有する。)

イ.「[0024] FIG. 6 shows an alternative embodiment of the LOCK method by adding options of number of cycles and increments in price changes for each increment.」
(訳:図6は,サイクル回数,および,各インクリメントに関する価格変化におけるインクリメントのオプションを追加することによるLOCK方法の代替実施形態を図示する。)

ウ.「[0074] The LOCK method and invention comprises (A) an investor who invests in a securities market with an objective to make a profit; (B) a host securities broker (such as E-Trade, Ameritrade, etc.) with a computer network, for handling their transaction. The host computer network includes a database server that provides an electronic security order template. With this template in place, the host computer network can store and organize security transaction request so that when an investor initiates a transaction, the network processes the request and sends it to a security exchange (such as New York Stock Exchange, NASDAQ, etc.); (C) individual computer workstations for each investor or broker. Each computer workstation would include a video monitor, a means for the investor of broker to send user commands to the host computer network, and a means for the investor or broker to receive and display (on the video monitor) security order templates and instructions transmitted from the host computer network; (D) a communications network electronically linking the investor's computer workstation to the host computer network; (E) a two-part securities exchange order (referred to as the LOCK order) that the investor initiates and that contains specific instructions for the host computer network to transact the security exchange. The LOCK order would include instructions and information for buying or selling a security, the name of the security, the quantity of that security, to buy the limit price or current market price at which to transact the security exchange and the increase or decrease in security price to initiate part-two of the transaction (referred to as the LOCK profit); (F) a software module that allows the investor at the computer workstation to interact with the host computer network. With this software the investor can select security exchange options and transmit them to the host computer network then receive confirmation that was underway. (G) an additional software module (referred to as the LOCK management module) as part of the securities broker host computer network. This software would link the host computer network to the security exchange markets and track and monitor the status of the investor's LOCK order. At the appropriate market price, the software would initiate a two-part, sequenced securities exchange order to buy a stock at the investor's specified price, then add the specified desired profit price and place a second order.」
(訳:LOCK方法および発明は,(A)利益を得るという目的で証券市場に投資する投資家と,(B)彼らのトランザクションを取り扱うために,コンピュータネットワークを備えた(E-Trade,Ameritrade等のような)ホスト証券ブローカと,を備える。ホストコンピュータネットワークは,電子証券注文テンプレートを提供するデータベースサーバを含む。このテンプレートで,ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できる。(C)各投資家またはブローカのための個々のコンピュータワークステーション。各コンピュータワークステーションは,ビデオモニタと,ブローカの投資家が,ホストコンピュータネットワークへユーザコマンドを送るための手段と,投資家またはブローカが,ホストコンピュータネットワークから送信された指示と証券注文テンプレートとを受信し,(ビデオモニタ上に)表示するための手段と,を含むであろう。(D)投資家のコンピュータワークステーションをホストコンピュータネットワークへ電子的にリンクさせる通信ネットワーク。(E)投資家が開始し,ホストコンピュータネットワークが証券取引をトランザクトするための特有の指示を含む(LOCK注文とも称される)2パートの証券取引注文。LOCK注文は,証券取引をトランザクトする指値または現在の市場価格,および,トランザクションのパート2を開始するための証券価格における増加または減少(LOCK利益と称される)を受け入れるために,証券を買うかまたは売るかに関する指示および情報と,証券の名称と,その証券の量とを含むであろう。(F)投資家がコンピュータワークステーションにおいて,ホストコンピュータネットワークとインタラクトすることを可能にするソフトウェアモジュール。このソフトウェアを用いて,投資家は,証券取引オプションを選択し,ホストコンピュータネットワークにそれらを送信し,その後,それが進行中であることの確認を受け取る。(G)証券ブローカホストコンピュータネットワークの一部としての(LOCK管理モジュールと称される)追加のソフトウェアモジュール。このソフトウェアは,ホストコンピュータネットワークを,証券取引市場にリンクさせ,投資家のLOCK注文のステータスを追跡およびモニタするであろう。適切な市場価格において,ソフトウェアは,投資家の指定した価格で株式を買い,その後,指定された所望の利益価格を加え,第2の注文をするための,2パートのシーケンス化された証券取引注文を開始するであろう。)

エ.「[0080] FIG. 3 shows the logic execution and conversion of the LOCK invention and process. FIG. 3's right side represents the investor's input request that is used to execute Part one of the LOCK process. The buy/sell instruction 2 convert from part 1 from buy to part 2 to sell 11. An example is if the order states to buy 100 XYZ, part 1 will buy then convert to a sell order in part 2. The order's time to be valid box in part 1 can be specified as day or good to canceled 4. If part 1 on the LOCK order is executed, this information will convert to a good till canceled order. An option for the investor is to see the status of his order and request modification to the LOCK order or cancel the second half of the LOCK order if unexecuted. An example may be that the investor's LOCK order is executed and he now holds 100 shares of XYZ and is waiting for a LOCK price move of 2.00 before he sell. During this time the investor queries the electronic investment company on the status of the LOCK order and sees that part one has been executed and now wished to cancel the #sell# order in part 2 of the LOCK order. The investor submits a cancellation request and, if received in time, the LOCK order could be canceled and the investor would only have part 1 of the LOCK order's results. Similarly, if the investor wished to cancel the entire LOCK order before part 1 has been executed, the order would be cancelled in a method similar to canceling traditional unexecuted orders.」
(訳:図3は,LOCK発明および処理のロジック実行および変換を示す。図3の右側は,LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す。買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わる。例は,注文が,100 XYZを買うことを明示しているのであれば,パート1は,買い,その後,パート2において売り注文に切り替わるであろう。パート1において,有効なボックスとなるこの注文の時間は,デイまたはグッドトゥキャンセル4として指定され得る。LOCK注文におけるパート1が実行されると,この情報は,グッドティルキャンセル注文に切り替わるであろう。投資家のためのオプションは,注文のステータスを観察し,LOCK注文に対する修正を要求するか,または,実行されていないのであれば,LOCK注文の後半をキャンセルすることである。例は,投資家のLOCK注文が実行され,投資家が,XYZの100株を保持し,売る前に,2.00のLOCK価格変動を待つことであり得る。この時間中,投資家は,電子投資会社に対して,LOCK注文のステータスについて問い合わせを行い,パート1が実行され,現在,LOCK注文のパート2において,「売り」注文のキャンセルを望んでいる。投資家は,キャンセル要求を発行し,時間内に受信されれば,LOCK注文がキャンセルされ,投資家は,LOCK注文のパート1の結果しか得ないであろう。同様に,投資家が,パート1が実行される前にLOCK注文の全体のキャンセルを望んでいるのであれば,この注文は,従来の未実行注文のキャンセルと類似の方法でキャンセルされるであろう。)

オ.「[0081] The stock symbol 5, and stock quantity 6, remains the same in part 1 and part 2. Alternate embodiment could change the quantity, such as selling half in part 2 then cycling through part 2 again selling the second half a an increased price. The price selection for part 1 involves either a market order 7, which executes the trade at the prevailing market rate or a Limit Order 8, which specifies a price. For the investor to execute a Limit Order normally he or she must check a box and enter the price at which to execute it or if market conditions permit, at a better price. The part 1 order executed price in combination with information in the LOCK box 9, and the LOCK price 10, will form the Limit Order execution price for the part 2 of the LOCK transaction.」
(訳:株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままである。代替実施形態は,パート2において半分を売り,その後,パート2を繰り返し,増加された価格で後半を売るように,量を変え得る。パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含む。投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するか,または,市場状況が許すのであれば,よりよい価格を入力する。LOCKボックス9およびLOCK価格10における情報と組み合わされたパート1注文実行価格は,LOCKトランザクションのパート2の指値注文実行価格を形成するであろう。)

カ.「[0082] FIG. 4 shows the conventional electronic trading process requiring two orders to open and close a position. The process begins with the investor 17 placing a buy or sell order 18 with an electronic trading company or organization 20. The electronic trading company 20 generates an electronic order 21 that is submitted 22 to a securities exchange 23. The order 21 is presented in the trading pit 24 and when a buyer/seller accepts the order, the order is filled 25. Once the order has been executed or filled 25, the electronic trading company is notified and the investor's account is documented 26 and the investor 17 is informed. The investor 17 must now place another order 27 to close out his or her position and make a profit. An example of this process would be if an investor 17 initiated the process to buy 100 shares of stock XYZ at $50.00 a share 18, received notification that the order was fully executed 26 now the investor 17 must resubmit an order 27 to sell 100 shares of XYZ at $52.00 to make a profit. The order 27 is submitted to the electronic trading company where a new order is generated 28, order submitted 29, presented in the trading pit 30, filled, 31 documented and the account is updated and the investor notified 32. Current state of-the-art methods require the investor or broker 17 to be involved in both transactions.」
(訳:図4は,ポジションをオープンおよびクローズするために2つの注文を必要とする従来の電子トレード処理を図示する。この処理は,投資家17が,電子トレード会社または組織20を使って買い注文または売り注文18をすることで始まる。電子トレード会社20は,証券取引所23へ発行される22電子注文21を生成する。注文21は,トレードピット24において表され,買い手/売り手がこの注文を受諾すると,注文が満たされる25。注文が実行されたか満たされた25ならば,電子トレード会社に通知され,投資家の口座がドキュメント化され26,投資家17に通知される。投資家17は,ポジションをクローズアウトし,利益を得るために,別の注文27をしなければならない。この処理の一例は,投資家17が,1株あたり50.00ドルで株式XYZを100株買う処理を開始し18,この注文が完全に実行された26との通知を受信すると,投資家17は,利益を得るために,52.00ドルでXYZの100株を得る注文27を再発行しなければならない。この注文27は,電子トレード会社へ発行される。ここでは,新たな注文が生成され28,注文が発行され29,トレードピット30において表され,満たされ31,ドキュメント化され,口座が更新され,投資家に通知される32。現在の最先端の方法は,投資家またはブローカ17が,両トランザクションに含まれることを必要とする。)

キ.「[0083] FIG. 5 shows the main embodiment of the LOCK method, process and order flow sequence for opening and closing a LOCK order. The method begins with the investor 17 submitting a LOCK order 19, which contains sufficient information as described in FIG. 3. The LOCK order 19 is submitted to the electronic trading company 20 where the order is identified as a LOCK order and enters the LOCK management module process 12. The LOCK management module 12 comprises the software interfaces that receive the LOCK order 19 document and generate a tracking record 33, record the LOCK increment 35, monitor the submission of the first part of the LOCK order submission 34, as the order 34 enters the securities exchange 23 trading pit 36, and the order is filled 37, then record the first order being filled 38, generate the second part of the LOCK order 39, and submit the second part of the LOCK order 40. The second part of the LOCK order 40 is resubmitted to the trading pit 41 and once the second order is filled 42, the electronic trading company 20, records the account balance 43 and notifies the investor 17 that the LOCK transaction has been completed.」
(訳:図5は,LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK方法,処理,および注文フローシーケンスの主な実施形態を図示する。この方法は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まる。これは,図3に記載されたような十分な情報を含む。LOCK注文19は,電子トレード会社20へ発行され,ここで,この注文は,LOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力する。LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備える。このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し,追跡記録33を生成し,LOCKインクリメント35を記録し,LOCK注文発行34の前半の発行をモニタし,この注文34が,証券取引所23にトレードピット36を入力し,注文が満たされる37と,第1の注文が満たされたことを記録し38,LOCK注文の後半を生成し39,LOCK注文の後半を発行する40。LOCK注文の後半40がトレードピット41へ再発行され,第2の注文が満たされる42と,電子トレーディング会社20は,口座残高を記録43し,投資家17に,LOCKトランザクションが完了したことを通知する。)

ク.「[0085] Alternative embodiments include inserting the option to automatically re-cycle through the process again and an additional option to increase or decrease the buy/sell prices. FIG. 6 and FIG. 7 shows alternative embodiment of the LOCK method by adding a number of cycles and increment options to the methodology. FIG. 6 shows the additional information required to cycle through the process. FIG. 7 shows the methodology for reentering the LOCK management module 12. The addition of #Number of Cycles# 44 would allow the investor to automatically reenter the LOCK process again in hopes of making more profit. An example of specifying two cycles would mean to buy 100 shares of XYZ (with a LOCK price of $1) at $50 a share, sell at $51 a share, buy back at $50 and sell again at $51. This investment process would allow the individual investor to take advantage of daily small stock fluctuations.」
(訳:代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションと,買値/売値を上げまたは下げる追加のオプションと,を挿入することを含む。図6および図7は,この方法に,サイクル数と,インクリメントオプションとを加えることによるLOCK方法の代替実施形態を図示する。図6は,処理を繰り返すために必要な追加情報を図示する。図7は,LOCK管理モジュール12に再入力するための方法を図示する。サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できるようになるであろう。2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。この投資処理によって,個人投資家は,毎日の小さな株価変動を活用することが可能となるであろう。)

ケ.FIG6



コ.FIG7



前記ア乃至コによると,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「証券市場に投資する投資家と,彼らのトランザクションを取り扱うために,コンピュータネットワークを備えた(E-Trade,Ameritrade等のような)ホスト証券ブローカを備え,ホストコンピュータネットワークは,電子証券注文テンプレートを提供するデータベースサーバを含み,このテンプレートで,ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できるものであり,
各投資家またはブローカのための各コンピュータワークステーションは,ビデオモニタと,ブローカの投資家が,ホストコンピュータネットワークへユーザコマンドを送るための手段と,投資家またはブローカが,ホストコンピュータネットワークから送信された指示と証券注文テンプレートとを受信し,(ビデオモニタ上に)表示するための手段と,を含み,
証券ブローカホストコンピュータネットワークの一部としての(LOCK管理モジュールと称される)追加のソフトウェアモジュールであって,このソフトウェアは,ホストコンピュータネットワークを,証券取引市場にリンクさせ,投資家の指定した価格で株式を買い,その後,指定された所望の利益価格を加え,第2の注文をするための,2パートのシーケンス化された証券取引注文を開始するものであり,
LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す,買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わるものであり,株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままであり,パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含み,投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するものであり,LOCKボックス9およびLOCK価格10における情報と組み合わされたパート1注文実行価格は,LOCKトランザクションのパート2の指値注文実行価格を形成し,
LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK処理は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まり,この注文はLOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力され,LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備え,このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し,追跡記録33を生成し,LOCKインクリメント35を記録し,LOCK注文発行34の前半の発行をモニタし,この注文34が,証券取引所23にトレードピット36を入力し,注文が満たされる37と,第1の注文が満たされたことを記録し38,LOCK注文の後半を生成し39,LOCK注文の後半を発行し40,LOCK注文の後半40がトレードピット41へ再発行され,第2の注文が満たされる42と,口座残高を記録43し,投資家17に,LOCKトランザクションが完了したことを通知するものであり,
代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションを含み,LOCK管理モジュール12に再入力するために,サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる,
ホスト証券ブローカ。」

(2)甲第2号証
甲第2号証には,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付加したものである。
ア.「【0037】その後,商品価格の変動に応じて,委託者2が「差金決済」により取引を終了させる場合,委託者2は受託者3に対して転売または買戻しの「仕切注文」を指示する(ステップ(E))。新規注文の場合と同様に,この指示も受託者3のホームトレードサイトにアクセスすることにより行われ,仕切注文に関する注文レコードが注文管理データベース33に新規に追加される。ここで,「差金決済」とは,当初の売買契約の価格と,その後の転売買戻しによる価格との差金の受け払いだけで決済を行い,現物およびその代金の授受を伴わない決済方法をいう。また,「仕切注文」とは,買建玉を転売し,または売建玉を買い戻すといった取引を終了させる注文をいう。」

イ.「【0041】4.注文の種類
本トレーディングシステムの特徴の説明に先立ち,その導入事項として,商品先物で用いられる注文の種類について説明する。注文には,上述した「新規注文」と「仕切注文」という分類の仕方の他に,「成行注文」,「指値注文」および「逆指値注文」という別の分類の仕方もある。新規注文または仕切注文のどちらを行うにしても,必ず「成行注文」,「指値注文」または「逆指値注文」といった執行条件を指定しなければならない。ここで,「成行注文」とは,売買価格を指定しない注文をいい,「いくらの価格でもいいから買いたい,若しくは売りたい」といった状況,すなわち,値段に構わずとにかく売買の成立を優先させたい場合に利用される。ザラバ取引の場合,成行注文は指値注文よりも優先的に約定される(価格優先)。また,同じ成行注文であれば,先に出した注文が優先的に約定される(時間優先)。また,「指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより有利な価格でのみ成立する注文をいい,「いくら以下なら買いたい,いくら以上なら売りたい」という条件が付された注文である。例えば,「東京金の2000年4月限を1,100円の指値で買い」という注文が成立する場合,必ず1,100円以下の約定価格で成立し,その取引価格が1,100円を上回っている間は成立しない。この注文を決済時に用いる場合は,主に利益確定の水準を設定する形になる。さらに,「逆指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより不利な価格でのみ成立する注文をいい,「いくら以上なら買いたい,いくら以下なら売りたい」という条件が付された注文である。例えば,東京小豆を12,000円で買った顧客が,11,500円を割り込む価格がついたら小豆を損切りしようと考えた場合,11,490円の逆指値で売り注文を出しておけば,11,490円以下になった時点で注文が執行される。この注文を決済時に用いる場合は,主に損失確定の水準を設定する形になる。」

ウ.「【0081】これに対して,「成立前提連続ダブル仕切注文」を利用すれば,委託者2の負担を生じさせることなく,モデルケース4のような発注形態を容易に実現することができる。図22は,「成立前提連続ダブル仕切注文」を利用した発注形態の説明図である。まず,委託者2は,新規注文を入力する際,新規注文と,その新規注文が成立した場合に有効としたい2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)とを一括して入力する。これを受けて,受託者3は,新規注文を発注する。2種類の仕切注文は,先に発注された新規注文が成立するまで発注されない。発注した新規注文が成立すると,それと同一の取引対象に係る保留されていた2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)が有効となって自動的に発注される。その後,市場価格が条件に合致して,一方の仕切注文が成立した場合,他方の仕切注文は自動的に取り消される。図22からわかるように,「成立前提連続ダブル仕切注文」では,新規注文の入力時に,同一の取引対象に関する新規注文の入力と2種類の仕切注文の入力とを一括して行えるため,わずか1回のアクションでモデルケース4のような発注形態を実現することができる。また,新規注文が成立すれば,仕切注文が自動的に有効となるため,従来のホームトレードのように,市場の値動きと新規注文の成立状況とを随時チェックする必要がない。そのため,委託者2の利便性を著しく向上させることができる。」

エ.「【0082】つぎに,「成立前提連続ダブル仕切注文」におけるシステムの処理手順について説明する。図23は,委託者側のパーソナルコンピュータ21の表示装置に表示される「成立前提連続ダブル仕切注文」時における表示画面の説明図である。委託者2は,表示装置上に表示された入力画面48において,新規注文の内容に関する必要情報を順次入力し,すべての必要情報の入力が完了した後に,「続けてダブル仕切注文入力へ」ボタン48aを押す。このアクションによって,新規注文の取引対象と同一物に関するダブル仕切注文の入力画面49が表示される。委託者2は,この入力画面49において,指値・逆指値注文のそれぞれについて指値を設定する。ここで,新規注文入力時には,新規注文の成立価格(約定価格)は未定である。したがって,この新規注文の成立により発注される指値・逆指値注文の各執行条件としては,「新規注文成立価格より何円プラス(またはマイナス)した価格以上(または以下)」といった設定となる。委託者2は,すべての必要情報を入力した後に,「実行/送信」ボタン49aを押す。そして,このアクションによって表示された受付内容確認画面50で,新規注文の内容とそれに関する仕切注文(指値・逆指値注文)の内容とを確認した後に,再度「送信/実行」ボタン50aを押す。これにより,同一の取引対象に関する新規注文と仕切注文とが同時に受託者側システムへ送信される。」

オ.「【0083】図24は,「成立前提連続ダブル仕切注文」により発生する注文レコードの説明図である。「成立前提連続ダブル仕切注文」では,新規注文,仕切注文としての指値注文および逆指値注文の3つがセットになっており,それぞれの対応レコードである親A,子Aおよび子Bは,「RNO=001」によって関連付けられている。「成立前提連続注文」と同様に,この注文の受付時点において,新規注文は,必要情報のすべてが記述された完全な注文レコード(親A)として注文管理データベース33に追加される。これに対して,2つの仕切注文は準備レコード(子A,子B)として生成される。」

前記ア乃至オによると,甲第2号証には次の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「トレーディングシステムにおいて,
商品先物で用いられる注文の種類には,「新規注文」と「仕切注文」という分類があり,「仕切注文」とは,買建玉を転売し,または売建玉を買い戻すといった取引を終了させる注文をいい,また,他に「成行注文」,「指値注文」および「逆指値注文」という別の分類の仕方もあり,新規注文または仕切注文のどちらを行うにしても,必ず「成行注文」,「指値注文」または「逆指値注文」といった執行条件を指定しなければならないものであり,ここで,「成行注文」とは,売買価格を指定しない注文をいい,また,「指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより有利な価格でのみ成立する注文をいい,さらに,「逆指値注文」とは,指定価格,若しくはそれより不利な価格でのみ成立する注文をいい,「いくら以上なら買いたい,いくら以下なら売りたい」という条件が付された注文であり,この注文を決済時に用いる場合は,主に損失確定の水準を設定する形になるものであり,
「成立前提連続ダブル仕切注文」を利用した発注形態では,委託者2は,新規注文を入力する際,新規注文と,その新規注文が成立した場合に有効としたい2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)とを一括して入力し,これを受けて,受託者3は,新規注文を発注し,2種類の仕切注文は,先に発注された新規注文が成立するまで発注されないものであり,発注した新規注文が成立すると,それと同一の取引対象に係る保留されていた2種類の仕切注文(指値注文および逆指値注文)が有効となって自動的に発注され,その後,市場価格が条件に合致して,一方の仕切注文が成立した場合,他方の仕切注文は自動的に取り消される,
トレーディングシステム。」

2.本件発明1についての判断
(2-1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)本件発明1の「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置」について
甲1発明における「ホスト証券ブローカ」は,「証券市場に投資する投資家と,彼らのトランザクションを取り扱うために,コンピュータネットワークを備えた(E-Trade,Ameritrade等のような)」ものであり,また,「ホストコンピュータネットワークは,電子証券注文テンプレートを提供するデータベースサーバを含み,このテンプレートで,ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できるものであり」との事項から,当該「ホスト証券ブローカ」は実質的にコンピュータ装置であって,投資家からの証券トランザクション要求を記憶して処理し,証券市場へ送信するものであることから,金融商品の売買取引を管理する装置であることは明らかである。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置」
である点で共通する。
(イ)本件発明1の「前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段」について
甲1発明では,各投資家またはブローカのための各コンピュータワークステーションは,ホストコンピュータネットワークへユーザコマンドを送るための手段を備えており,また,「LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す,買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わるものであり,株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままであり,パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含み,投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するものであり」との事項から,売買の対象とする株式銘柄や量等の注文申込みの情報が入力され,そして,「LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK処理は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まり,この注文はLOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力され,LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備え,このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し」との事項から,注文ドキュメントを受信して当該注文を受け付けるものである。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段」
を備える点で共通する。
(ウ)本件発明1の「該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段」について
甲1発明では上記(イ)で示したように,投資家からの売買の対象とする株式銘柄や量等の注文申込みの情報を受け付けて,上記(ア)で示したように,「ホストコンピュータネットワークは,証券トランザクション要求を記憶および体系化し,これによって,投資家がトランザクションを開始した場合に,このネットワークは,この要求を処理し,(ニューヨーク証券取引所,ナスダック等のような)証券取引所へ送信できる」ものであることから,受け付けた投資家からの株式売買の注文申込み情報に基づいて,証券取引所への株式の売買注文情報を生成し送信するものである。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段」
を備える点で共通する。
(エ)本件発明1の「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報とを含む注文情報群を複数回生成し」について
甲1発明の「LOCK注文」は,「投資家の指定した価格で株式を買い,その後,指定された所望の利益価格を加え,第2の注文をするための,2パートのシーケンス化された証券取引注文」である。
また,「LOCK注文」は,「LOCK処理のパート1を実行するために使用される投資家の入力要求を表す,買い/売り指示2は,パート1の買いから,パート2の売り11に切り替わるものであり,株式銘柄5,また,株式の量6は,パート1およびパート2において同じままであり,パート1の価格選択は,市場相場でトレードを実行する成行注文7または価格を指定する指値注文8かの何れかを含み,投資家が指値注文を実行するためには通常,ボックスをチェックし,実行する価格を入力するものであり,LOCKボックス9およびLOCK価格10における情報と組み合わされたパート1注文実行価格は,LOCKトランザクションのパート2の指値注文実行価格を形成し」との事項によれば,投資家により,買いまたは売りの指定,株式銘柄の入力,量の入力,成行注文の指定または指値注文の指定及び実行する価格の入力,及び,LOCK価格の入力が行われ,当該注文申込みの情報に基づいて,まずはパート1の注文として,買いまたは売り,株式銘柄,量,成り行き注文または指値注文による注文が生成実行され,その後,パート2の注文として,パート1の買いに対しての売りまたはパート1の売りに対しての買い,同じ株式銘柄,同じ量,パート1注文実行価格にLOCK価格を加算または減算した価格での注文が生成されるものである。
したがって,甲1発明における買いまたは売り,株式銘柄,量,成行注文または指値注文による注文からなるパート1の注文は,本件発明1の「所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報」に相当する。
また,甲1発明におけるパート2の注文におけるパート1注文実行価格にLOCK価格を加算または減算した価格での注文は,すなわち指値注文であるから,パート1の買いに対しての売りまたはパート1の売りに対しての買い,同じ株式銘柄,同じ量,パート1注文実行価格にLOCK価格を加算または減算した価格でのパート2の注文は,本件発明1の「該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報」に相当するものである。
そして,甲1発明におけるパート1の注文とパート2の注文はシーケンス化された1連の注文であることから,これらは注文情報群を形成しているといえ,さらに,甲1発明は「代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションを含み,LOCK管理モジュール12に再入力するために,サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる」ものであることから,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群が,サイクル数で指定された回数繰り返し生成されることは明らかである。
そうすると,本件発明1と甲1発明は,
「一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,を含む注文情報群を複数回生成し」
の点で共通している。
しかしながら,本件発明1と甲1発明は,甲1発明が,
「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」
を生成していない点で相違している。
(オ)本件発明1の「売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせること」について
甲1発明の「LOCK注文をオープンおよびクローズするためのLOCK処理は,投資家17が,LOCK注文19を発行することで始まり,この注文はLOCK注文として識別され,LOCK管理モジュール処理12に入力され,LOCK管理モジュール12は,ソフトウェアインターフェースを備え,このソフトウェアインターフェースは,LOCK注文19ドキュメントを受信し,追跡記録33を生成し,LOCKインクリメント35を記録し,LOCK注文発行34の前半の発行をモニタし,この注文34が,証券取引所23にトレードピット36を入力し,注文が満たされる37と,第1の注文が満たされたことを記録し38,LOCK注文の後半を生成し39,LOCK注文の後半を発行し40,LOCK注文の後半40がトレードピット41へ再発行され,第2の注文が満たされる42と,口座残高を記録43し,投資家17に,LOCKトランザクションが完了したことを通知する」との事項によれば,甲1発明の「LOCK注文」においても,成行注文を指定すれば,売買取引開始時に,パート1の注文として成行注文がなされ,当該注文が満たされるとパート2の注文である指値注文が生成されて発行され,当該注文が満たされると口座残高の記録とLOCKトランザクションが完了したことを通知するものである。
また,甲1発明の「代替実施形態は,この処理を再度自動的に繰り返すオプションを含み,LOCK管理モジュール12に再入力するために,サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる」との事項によれば,甲1発明でも上記(エ)でも説明したように,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群が,サイクル数で指定された回数繰り返し生成されるものである。
ところで,このサイクル数を指定するオプションは,上記「1.(1)ケ」のFIG6で示されるように「LOCK注文」の前記各種情報の入力時に指定される情報であり,上記「サイクル数44の追加によって,投資家は,より多くの利益を得ることを望んで,LOCK処理に自動的に再入力できる」との事項からして,投資家が改めて注文内容を入力することなく,当該「LOCK注文」として入力した注文内容を再入力できるというものであることから,当該「LOCK注文」として成行注文を指定した場合,2回目の「LOCK注文」として,1回目の「LOCK注文」と同じ注文内容が再入力される,つまり1回目と同じ成行注文が再入力されるとするのが相当である。
なお,この点について,上記「1.(1)ク」には「2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。この投資処理によって,個人投資家は,毎日の小さな株価変動を活用することが可能となるであろう。」との記載があり,これは1回目のパート1の注文が「1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い」,パート2の注文が「1株あたり51ドルで売り」であって,2回目のパート1の注文が「50ドルで買い戻し」,パート2の注文が「51ドルで再び売る」という例であるが,この例の場合に投資家が成行注文を指定したのか,指値注文を指定したのかの記載がないが,1回目と2回目のパート1の注文に価格が指定されていることから,投資家が指値注文を行った場合であると考えられるし,上記注文が再入力されることとも矛盾しない。
そうすると,本件発明1では「売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」ものであるのに対し,甲1発明では成行注文を指定した場合には,2回目以降も成り行き注文を繰り返し行わせる点で相違している。

以上(ア)乃至(オ)によると,本件発明1と甲1発明は,次の点で一致する。
<一致点>
「金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって,
前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報を受け付ける注文入力受付手段と,
該注文入力受付手段が受け付けた前記売買注文申込情報に基づいて金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手段とを備え,
該注文情報生成手段は,
一の前記売買注文申込情報に基づいて,所定の前記金融商品の売り注文または買い注文の一方を成行または指値で行う第一注文情報と,該金融商品の売り注文または買い注文の他方を指値で行う第二注文情報と,を含む注文情報群を複数回生成する金融商品取引管理装置。」

そして,本件発明1と甲1発明は,次の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の「注文情報生成手段」では,「前記金融商品の売り注文または買い注文の前記他方を逆指値で行う逆指値注文情報」も生成しているが,甲1発明ではそのようになっていない点。

<相違点2>
本件発明1では「売買取引開始時に,前記第一注文情報に基づく成行注文を行うとともに,当該注文情報群の前記第二注文情報に基づく指値注文を有効とし,前記第二注文情報に基づく該指値注文が約定されたとき,次の注文情報群の生成を行うと共に,該生成された注文情報群の前記第一注文情報に基づく前記成行注文の価格と同じ前記価格の指値注文を有効にし,以後,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第一注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定と,前記第二注文情報に基づく前記指値注文の約定が行われた後の,次の前記注文情報群の生成とを繰り返し行わせる」ものであるのに対し,甲1発明ではそのようになっておらず,成行注文を指定した場合には,2回目以降も成行注文を繰り返し行わせる点。

(2-2)相違点についての判断
(ア)<相違点1>について
甲2発明でも示されるように,いわゆる損切りのための「逆指値注文」自体はよく知られた技術である。
また,甲2発明では,発注した新規注文が成立すると,それと同一の取引対象に係る保留されていた2種類の仕切注文である指値注文および逆指値注文が有効となって自動的に発注される技術が開示されており,当該新規注文と仕切り注文を自動的に繰り返すことについての記載はないものの,仕切り注文時には常に相場価格の想定外の変動リスクが伴うことは明らかである。
そして,甲1発明におけるパート2の注文は仕切り注文であり,常に相場価格の想定外の変動リスクが伴う注文であることから,顧客の損失の拡大を防ぐために甲2発明を適用し,仕切り注文であるパート2における指値注文の生成と共に,逆指値注文を繰り返し生成する構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

(イ)<相違点2>について
甲1発明は,「LOCK注文」においてサイクル数を指定することにより,パート1の注文とパート2の注文からなる注文情報群が,サイクル数で指定された回数繰り返し生成されるものであるが,「LOCK注文」におけるパート1の注文として成行注文が指定された場合に,2回目の「LOCK注文」におけるパート1の注文を自動的に指値注文に変更することは,全く記載がないし,また,「2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。」との例は,「LOCK注文」におけるパート1の注文として指値注文が指定された場合としてその他の記載と矛盾しないものである。
また,一般に,成行注文を行った注文者が,常にその後に指値注文を行うわけではないし,成行注文後に指値注文を行う注文者が常に成行注文の約定価格を指値として注文をするわけでもないから,仮に,「LOCK注文」において成行注文が指定された場合に,2回目の「LOCK注文」における注文を自動的に指値注文にするようにシステムを変更しようとすれば,システムに入力指定されているのが成行注文であって指値注文でないにもかかわらず指値注文を行うとともに,その指値注文における指値が注文者の意志を反映したものとなるようにする必要がある。しかし,甲第1号証には,注文者が指値注文を指定していないにもかかわらず指値注文を行ったり,注文者が具体的に指定していない指値による指値注文を行うことを示唆する記載は見当たらない。甲1発明のシステムは,注文者からの成行注文か指値注文かの入力指定を受けて,注文者からの成行注文はそのまま成行注文として取り扱うものであり,これを注文者が成行注文を行ったにもかかわらず,注文者によって具体的に指定されていない指値での指値注文とみなすようなシステムへと変更することは困難である。
そうすると,甲1発明において,「LOCK注文」として成行注文が指定された場合の2回目のパート1の注文を自動的に指値注文とするようにシステムを変更する動機づけがあるとはいえないし,むしろ,そのようなシステムの変更は阻害されるものである。
なお,甲2発明は,そもそも新規注文と仕切り注文の注文群を繰り返し生成するものではなく,甲第2号証にも,成行注文に対する仕切り注文の約定後に,次の注文として,当該成行注文の約定価格での新規の指値注文を繰り返し行うという注文手法は記載されていない。
したがって,相違点2に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものではない。

(2-3)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2-4)請求人の主張について
上記相違点2に関連して,請求人は平成28年9月15日付け口頭審理陳述要領書において,以下のように主張している。
「被請求人は,1回目の注文(LOCK注文)のパート1で成行注文を選択した場合,2回目以降の注文(LOCK注文)のパート1おいても常に成行注文を選択することになるということを前提として,本件記載が実現できないということを主張している。しかし,本件記載が実現できないのは,被請求人の前提が誤っているからである。
なぜなら,LOCK注文において,1回目のLOCK注文のパート1が成行注文である場合,2回目以降のLOCK注文のパート1までもが常に成行注文になるという被請求人の主張を前提とした注文方法は,投資として無意味だからである。すなわち,1回目のLOCK注文のパート2で1株を51ドルで売り,すぐに2回目のLOCK注文のパート1で1株を51ドルで買うということは,売った価格と同価格ですぐに買い戻すということを意味し,何も売買をしないのと同じ結果になるから,投資として意味がない。また,被請求人の主張を前提とする当該注文方法では,甲第1号証の目的を達成することができない。すなわち,甲第1号証の[0085]には,「この投資処理によって,個人投資家は,毎日の小さな株価変動を活用することが可能となるであろう。」と記載されているように,甲1発明は,相場価格が50ドルから51ドルの間の小さな株価変動であっても,利益を出すことを目的とした注文方法である。しかし,被請求人の主張を前提とすると,1回目のLOCK注文において,パート1で1株を50ドルで買い,パート2で1株を51ドルで売ると,2回目のLOCK注文のパート1では,成行注文により,1株を51ドルで買い,パート2で1株を52ドルで売ることになり,相場価格が常に上昇するような大きな株価変動の場面でないと,そもそも売買すらできないことになる。これは,被請求人の主張を前提とする当該注文方法が,「毎日の小さな株価変動を活用することが可能」という甲1発明の目的を達することができない注文方法であることを意味するから,被請求人の当該主張は,失当であって,完全に誤りである。正しくは,本件記載は,前記第6・1・(2)・ウで主張したとおり,1回目のLOCK注文において,パート1で1株を成行注文により50ドルで買い,パート2で1株を51ドルで売ると,2回目のLOCK注文のパート1では,指値注文により1株を50ドルで買い,パート2で1株を51ドルで売るという注文方法を開示したものである。」
(口頭審理陳述要領書第7頁第2行乃至同頁第31行)
しかしながら,上記「(2-1)(オ)」で述べたように,甲1発明は「LOCK処理に自動的に再入力できる」(The addition of #Number of Cycles# 44 would allow the investor to automatically reenter the LOCK process again)というものであって,成行注文であればそれを再入力し,指値注文であればそれを再入力するものであり,また,「2つのサイクルを指定する例は,1株あたり50ドルでXYZを100株(1ドルのロック価格で)買い,1株あたり51ドルで売り,50ドルで買い戻し,51ドルで再び売ることを意味するであろう。」との記載は,2つの注文指定のうち指値注文の場合の例を示したものとするのが相当であり矛盾がない。
また,1回目のLOCK注文において,パート1で成行注文の場合に,2回目のLOCK注文が指値注文となるのであれば,注文の条件を変更した上での自動入力となるが,この点については記載も示唆も一切ないから,請求人の主張には根拠がない。
したがって,請求人の主張を採用することはできない。

3.本件発明2乃至5についての判断
本件発明2乃至5は,本件発明1をさらに限定したものであるので,本件発明1と同様に,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4.本件発明6についての判断
本件発明6は,本件発明1の「金融商品取引管理装置」との語を,「金融商品取引管理システム」に置き換えたものであって,発明を特定する各手段は同一であるから,本件発明1と同様に,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

5.本件発明7についての判断
本件発明7は「コンピュータを請求項1乃至5の何れか一つに記載の金融商品取引管理装置として機能させることを特徴とするプログラム。」であって,本件発明1乃至5の「金融商品取引管理装置」で行われる情報処理を「プログラム」の発明として請求するものであるから,本件発明1と同様に,甲1発明及び甲2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

6.無効理由についてのまとめ
以上のとおりであるから,本件発明1乃至7は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。
したがって,請求人が主張する無効理由によっては,同法第123条第1項第2号の規定に違反するものとして,請求項1乃至7に係る発明の特許を無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから,請求人の無効の理由及び証拠方法によっては,本件特許の請求項1乃至7に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-25 
結審通知日 2016-11-29 
審決日 2016-12-12 
出願番号 特願2013-45238(P2013-45238)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 哲次宮下 浩次  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 野崎 大進
金子 幸一
登録日 2014-11-21 
登録番号 特許第5650776号(P5650776)
発明の名称 金融商品取引管理装置、金融商品取引管理システムおよびプログラム  
代理人 丸田 憲和  
代理人 関 裕治朗  
代理人 伊藤 雅浩  
代理人 石井 明夫  
代理人 伊藤 真  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 平井 佑希  
代理人 牧野 知彦  
代理人 溝田 宗司  
代理人 佐野 弘  
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