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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1335942
審判番号 不服2017-274  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-10 
確定日 2018-01-24 
事件の表示 特願2016- 94399「半導体洗浄用組成物の保管方法および洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月16日出願公開、特開2017-204520、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成28年5月10日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 5月12日 審査請求
平成28年 6月28日 拒絶理由通知(起案日)
平成28年 8月 5日 意見書及び手続補正書の提出
平成28年 9月 1日 最後の拒絶理由通知(起案日)
平成28年10月12日 意見書の提出
平成28年11月 7日 拒絶査定(起案日)
平成29年 1月10日 拒絶査定不服審判の請求
平成29年 9月14日 当審拒絶理由通知(起案日)
平成29年11月13日 意見書及び手続補正書の提出


第2 原査定の概要
1 原査定
平成28年11月7日付けの拒絶査定(以下「原査定」という。)の概要は次のとおりである。
「この出願については,平成28年 9月 1日付け拒絶理由通知書に記載した理由(特許法第29条第2項)によって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

・請求項:1
・引用文献等:1,2

平成28年10月12日付け意見書において出願人は,引用文献1の保管方法に代えて引用文献2の保管方法を適用するという動機付けがあるとはいえない旨,主張している。
しかしながら,引用文献1及び2は,いずれも,電子機器の製造に用いられる組成物の保管方法という点で同一の技術分野に属し,また,組成物の保管時に組成物に含まれる成分が酸化されて変質することを防止するという共通の技術課題を有するものであるから,引用文献1においても,洗浄液に含まれる還元剤が空気酸化されて洗浄液の洗浄性が低下することを防止するために,引用文献1の保管方法に代えて引用文献2の保管方法の適用を試みることは,当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内である。
余の構成については先の拒絶理由の検討のとおりである。
よって,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
……(中略)……
・請求項:5,6
・引用文献等:1-4

先の拒絶理由の検討のとおりである。
よって,引用文献1乃至4に記載された発明に基づいて本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
……(中略)……
<引用文献等一覧>

1.特開2008-091416号公報
2.国際公開第2012/090669号
3.特開2005-255983号公報
4.国際公開第2014/087925号
5.特開2003-142441号公報」

2 最後の拒絶理由
原査定の根拠となった平成28年9月1日付けの最後の拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項:1
・引用文献等:1,2
・備考:

引用文献1(特に,第3,4,46,59,62段落参照)には,CMPスラリーを用いて研磨した後のシリコン酸化膜ウェハを洗浄するための洗浄液を保管する方法であって,酸化防止材を有する洗浄液タンク内で3日間25℃で保管することで,空気酸化されて洗浄液の洗浄性が低下することを防止する技術が示されている。
本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると,本願発明にはさらに,「前記容器の内容積に対する前記半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率を5?20%とし,窒素を吹き付けて置換することにより前記空隙部の酸素濃度を0?5%」とすることが記載されているのに対して,引用文献1にはその旨が記載されていない点で両者は相違する。
しかしながら,引用文献2(特に,第94-100,172段落参照)には,長期間の保存の間に成分が酸化,変質することを抑制する組成物の保管方法において,容器の内容積に対する組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率(%)を1?20%,好ましくは3?15%,より好ましくは5?10%とし,空隙部雰囲気の酸素濃度を1%以下とすることであって,酸素濃度は組成物を保管容器へ移し替えた後,容器内へ高純度窒素を吹き付けて置換することにより調整することが示されており,引用文献1に引用文献2の保管方法を適用して本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。
……(中略)……
・請求項:5,6
・引用文献等:1-4
・備考:

引用文献1及び2からなる技術を様々な組成物の保管に適用を試みることは当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内であり,例えば引用文献4(特に,第14,25段落参照)に示されるような,水酸化カリウムを0.005?5質量%,ナトリウムを0.001ppm?0.1ppm含有した半導体素子用洗浄液の保管に適用して本願発明の構成とすることは,当業者が格別の困難性を要することなくなし得ることである。
よって,引用文献1乃至4に記載された発明に基づいて本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
……(中略)……
<最後の拒絶理由通知とする理由>

この拒絶理由通知は,最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものである。


<引用文献等一覧>
1.特開2008-091416号公報(先の拒絶理由の引用文献1)
2.国際公開第2012/090669号(新たに引用された文献)
3.特開2005-255983号公報(先の拒絶理由の引用文献5)
4.国際公開第2014/087925号(先の拒絶理由の引用文献6)
5.特開2003-142441号公報(先の拒絶理由の引用文献7)」


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2007-149892号公報
2.特開2004-123915号公報
3.特開2004-216254号公報
4.特開2008-91416号公報
5.国際公開第2012/066911号
6.国際公開第2012/090669号
7.特開2005-255983号公報
8.国際公開第2014/087925号
9.特開2003-142441号公報

・請求項 :1
・引用文献等:1?6
・備考
文献1の段落【0095】及び【0168】,文献2の段落【0023】,【0026】,【0048】及び【0050】,文献3の段落【0024】及び【0033】,及び,文献4の段落【0003】にそれぞれ記載されるように,半導体洗浄用組成物は,大気中もしくは加温された状態で空気酸化されると,洗浄液としての性能が劣化することは,周知慣用の技術である。
一方,組成物を保管する際は,当該組成物の主に酸化による性能劣化や変質を防止する目的で,10?25℃の温度で保管するとともに,前記組成物の保管容器の内容積に対する前記組成物の占める容積を除いた空隙部の容積比率を5?10%とし,窒素を吹き付けて置換することにより前記空隙部の酸素濃度を1%以下とすることは,文献5の段落[0072]?[0074]及び[0124],文献6の段落[0094]?[0097]及び[0172]に記載され,周知技術である。
そして,前記周知慣用の技術においては,洗浄用の組成物を保管する際も空気酸化を避ける必要があることは自明である。
したがって,前記周知慣用の技術において,空気酸化による洗浄液の性能劣化を避けるために,前記周知技術を適用して本願の請求項1のように構成することは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
……(中略)……
・請求項 :5,6
・引用文献等:1?8
・備考
半導体素子用洗浄液に,水酸化カリウムを0.005?5質量%,ナトリウムを0.001?0.1ppm含有させることは,文献8の段落【0014】及び【0024】?【0025】に記載されている。
なお,文献8のナトリウムは不可避不純物として混合されているが,本願の請求項5及び6は「カリウムの含有量」と「ナトリウムの含有量」の比のみを特定し「ナトリウムの含有量」自体は特定していないので,文献8の記載に基づいて本願の請求項5及び6の構成を得ることに格別の困難性を有するとは認められない。
……(以下,省略)」


第4 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,平成29年11月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
半導体洗浄用組成物を容器に充填して保管する方法であって,
前記半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1×10^(-6)?10×10^(0)(ppm),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)であり,
前記容器の内容積に対する前記半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率を5?20%とし,
窒素を吹き付けて置換することにより前記空隙部の酸素濃度を0?5%とし,
5℃以上40℃以下の温度で保管することを特徴とする,半導体洗浄用組成物の保管方法。
【請求項2】
前記半導体洗浄用組成物が,デプスタイプまたはプリーツタイプのろ過フィルタでろ過されたものである,請求項1に記載の保管方法。
【請求項3】
前記ろ過フィルタの定格ろ過精度が0.01?20μmである,請求項2に記載の保管方法。
【請求項4】
前記半導体洗浄用組成物が,0.1?0.3μmの粒子を3×10^(1)?1.5×10^(3)個/mL含有する,請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の保管方法。
【請求項5】
半導体洗浄用組成物を容器に充填して保管する方法であって,
前記半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1.0×10^(-6)?10×10^(0),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)であり,
前記容器の内容積に対する前記半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率を5?20%とし,
前記空隙部の酸素濃度が0?5%であり,
5℃以上40℃以下の温度で保管することを特徴とする,半導体洗浄用組成物の保管方法。
【請求項6】
前記半導体洗浄用組成物が有機酸を含有する,請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の保管方法。
【請求項7】
前記半導体洗浄用組成物が水溶性高分子を含有する,請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の保管方法。
【請求項8】
前記半導体洗浄用組成物が1?500倍に希釈して使用されるものである,請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の保管方法。
【請求項9】
配線材料として銅またはタングステンを含み,かつ,バリアメタル材料としてタンタル,チタン,コバルト,ルテニウム,マンガン,及びこれらの化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む配線基板を,請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の保管方法により保管された半導体洗浄用組成物を用いて洗浄する工程を含む,洗浄方法。
【請求項10】
配線基板の配線材料としてタングステンを含み,前記配線基板を鉄イオンおよび過酸化物を含有する組成物を用いて化学機械研磨した後に請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の保管方法により保管された半導体洗浄用組成物を用いて洗浄する工程を含む,洗浄方法。」


第5 引用例,引用発明等
1 引用例1
当審拒絶理由通知において「文献1」として引用した特開2007-149892号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は参考のため,当審において付したもの。以下同様である。)。
(1)「【特許請求の範囲】
……(中略)……
【請求項17】
基板保持手段により保持された基板に薬液を供給することにより基板を処理するステップと,
基板から飛散した薬液が付着する位置に設けられた部材に前記基板保持手段により保持される基板を介することなく薬液と同じ成分の洗浄液を供給することにより前記部材を洗浄するステップと,
基板に供給された薬液および前記部材に供給された洗浄液を回収するステップとを備えることを特徴とする基板処理方法。」

(2)「【0071】
(15)薬液は,基板の表面の汚染物質を除去する除去液であってもよい。この場合,薬液が基板に供給されることにより,基板の表面の汚染物質が除去される。それにより,基板の表面を洗浄することができる。」

(3)「【発明を実施するための最良の形態】
【0094】
以下,本発明の一実施の形態に係る基板処理方法および基板処理装置について図面を参照しつつ説明する。
【0095】
以下の説明において,基板とは,半導体ウェハ,液晶表示装置用ガラス基板,PDP(プラズマディスプレイパネル)用ガラス基板,フォトマスク用ガラス基板,光ディスク用基板等をいう。
【0096】
また,薬液とは,例えばBHF(バッファードフッ酸),DHF(希フッ酸),フッ酸,塩酸,硫酸,硝酸,リン酸,酢酸,シュウ酸もしくはアンモニア等の水溶液,またはそれらの混合溶液をいう。」

(4)「【0162】
なお,この洗浄タイミングaによれば,ガード洗浄用ノズル81からの第1の洗浄液の供給は,薬液処理の開始/終了に影響されることなく維持されるので,第1の洗浄液の消費量の問題が懸念される。しかしながら,薬液と第1の洗浄液が同じ成分であるので,薬液および第1の洗浄液を回収して再利用する機構(後述の図10の回収管35,循環系配管120A,120B,回収タンクRTA,ポンプ120P,薬液貯留タンクTA等からなる経路(以下,回収経路と呼ぶ))を設けておけば,第1の洗浄液を回収して再利用することができるため,第1の洗浄液の無駄な消費を防止可能である。
……(中略)……
【0168】
なお,この洗浄タイミングcにおいて,上述の洗浄タイミングa,bと同様に,上述の回収経路を設けておけば,第1の洗浄液の無駄な消費をさらに防止可能である。この回収経路を設けた場合,洗浄タイミングa,bと比較して第1の洗浄液の量が少ないため,洗浄タイミングa,bの場合よりも第1の洗浄液が大気で酸化されて劣化することを抑制できる。」

(5)「【0217】
循環系配管120Aに導かれた薬液および第1の洗浄液は,一旦回収タンクRTAに貯留される。回収タンクRTAに貯留された薬液は,ポンプ120Pにより循環系配管120Bを通じて薬液貯留タンクTAに送られるとともに,フィルタFにより清浄にされる。それにより,薬液処理に用いられた薬液およびスプラッシュガード24の洗浄に用いられた第1の洗浄液が,再度薬液貯留タンクTAに貯留される。」

2 引用例2
当審拒絶理由通知において「文献2」として引用した特開2004-123915号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のフラックス洗浄剤を用いた被洗浄物の洗浄方法,およびフラックス洗浄剤を用いた洗浄装置についての実施形態につき,それぞれ適宜図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は,例えば,図1に示すように,フラックス洗浄剤21によって,被洗浄物23を洗浄する工程(図1中,点線Aで概ね示す領域)と,フラックス洗浄剤21に対して,塩形成化合物および酸化合物吸着材料,あるいはいずれか一方の化合物や材料26を接触させる工程(図1中,点線Bで概ね示す領域)と,を含むことを特徴としたフラックス洗浄剤を用いた洗浄方法である。
以下,フラックス洗浄剤による被洗浄物の洗浄工程および塩形成化合物等との接触工程と,それらに続く,リンス工程や乾燥工程に分けてそれぞれ説明する。
【0023】
1.被洗浄物の洗浄工程
(1)被洗浄物
被洗浄物の種類は,半田付け箇所を有する部品や製品はもちろんのこと,半田付け箇所がなくとも,フラックスの影響がある部品等も好適に使用することができる。したがって,被洗浄物の種類は,特に制限されるものではないが,例えば,プリント樹脂配線基板,セラミック配線基板,半導体素子(BGA,CSP,PGA,LGA等の半導体部品を含む。),半導体素子搭載基板,バンプ付きTABテープ,バンプ無しTABテープ,半導体素子搭載TABテープ,リードフレーム,コンデンサ,および抵抗等が具体的に挙げられる。
……(中略)……
【0026】
▲3▼温度条件
また,使用するフラックス洗浄剤の温度(液温)は,被洗浄物に対する洗浄効果や,フラックス洗浄剤の酸化劣化の程度等を考慮して定めることが好ましいが,具体的に,5?120℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は,かかるフラックス洗浄剤の温度が5℃未満となると,被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方,かかる温度が120℃を越えると,フラックス洗浄剤の酸化劣化が著しくなったり,余分なフラックス等のみならず,半田についてもプリント基板等の所定場所から剥離したりする場合があるためである。
したがって,フラックス洗浄剤の温度を20?100℃の範囲内の値とすることがより好ましく,40?80℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。」

(2)「【0033】
2.接触工程
(1)塩形成化合物
▲1▼種類
接触工程で使用する塩形成化合物は,フラックス洗浄剤中に含まれるフラックス残渣としてのカルボン酸化合物や他の酸化合物と反応できる化合物であれば,特にその種類は制限されるものではないが,例えば,アルカリ金属水酸化物,およびアルカリ土類金属水酸化物,あるいはいずれか一方の水酸化物であることが好ましい。
より具体的には,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化バリウム等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
これらの水酸化物であれば,カルボン酸化合物と反応して,容易に塩を形成するので,フラックス洗浄剤に含まれるカルボン酸化合物等を容易に除去したり,不活性化したりすることができる。
さらに,これらの塩形成化合物のうち,比較的少量の使用によって,優れたフラックス洗浄剤の劣化防止効果が得られ,しかも極めて安価であることから,水酸化カルシウム(消石灰)を使用することがより好ましい。……」

(3)「【0048】
▲2▼誘電損失
また,被洗浄物の誘電損失を測定するに際して,例えば,フラックス洗浄剤で処理したJIS2型くし型電極付き基板を用い,相対湿度97%の雰囲気下で測定される誘電損失(tanδ97RH%)と,相対湿度54%の雰囲気下で測定される誘電損失(tanδ54RH%)の差(tanδ97RH%-tanδ54RH%)を0.02以下の値とすることが好ましい。
この理由は,かかる誘電損失(tanδ)の差が,0.02を超えると,フラックス洗浄剤が過度に酸化劣化し,フラックス洗浄剤が変色したり,異臭をはなったりする場合があるためである。
したがって,かかる誘電損失(tanδ)の差を0.01以下の値とすることがより好ましく,0.005以下の値とすることがさらに好ましい。
なお,図7に,フラックス洗浄剤で処理したJIS2型くし型電極付き基板を用いて測定した誘電損失(tanδ)の測定例を示す。横軸に,測定周波数(Hz)を採って示してあり,縦軸に,tanδの対数値を採って示してある。かかるtanδの対数値は,測定周波数の依存性があって,測定周波数の値が高いほど,tanδの対数値も高くなる傾向があるが,測定周波数を一点決めれば,フラックス洗浄剤の劣化を追跡することが可能である。」

(4)「【0050】
4.乾燥工程
また,リンス工程の後に,乾燥工程を設けることが好ましい。すなわち,図1に示すように,このように乾燥槽16を設けて,フラックス残渣等を除去した後の被洗浄物を加熱することにより,フラックス洗浄剤を蒸発乾燥させる工程である。
具体的に,ヒータや赤外線ランプ等の加熱部材を用いて,例えば,50?150℃に周囲温度を加熱することにより,フラックス洗浄剤を蒸発乾燥させることが好ましい。
また,フラックス洗浄剤が酸化した状態で被洗浄物に残留しないように,乾燥窒素等の不活性ガスを導入した状態で加熱乾燥することがより好ましい。」

3 引用例3
当審拒絶理由通知において「文献3」として引用した特開2004-216254号公報(以下「引用例3」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は,図1に示すように,第1の洗浄方法として,超音波洗浄するための第1の超音波振動子14を備えた洗浄槽12と,循環路20と,送液ポンプ26と,を利用した洗浄方法であって,以下の工程(A)および(B)を含むことを特徴とした洗浄方法である。
(A)洗浄液に含まれる気泡量を調整する工程(以下,単に調整工程と称する場合がある。)
(B)洗浄槽における洗浄液の音圧の最大値を平均値の400%以下とした状態で被洗浄物を洗浄する工程(以下,単に洗浄工程と称する場合がある。)
……(中略)……
【0021】
2.洗浄工程
(1)洗浄液
▲1▼種類
洗浄工程で使用する洗浄液の種類は特に制限されるものではないが,例えば,グリコール化合物や,当該グリコール化合物のエーテル化物,あるいは水溶性アミド化合物を主成分としたものであることが好ましい。
この理由は,グリコール化合物や水溶性アミド化合物等を使用することにより,取り扱いが容易となるばかりか,優れた洗浄効果を効果的かつ経済的に得ることができるためである。
また,エチレングリコールと,プロピレングリコールの両方が付加した形のグリコールエーテル化合物や,メトキシブタノールおよびメチルメトキシブタノール,さらには分子内に含まれるアルコール基がエステル化された化合物,例えば酢酸エステル化された化合物等も挙げられる。
……(中略)……
【0024】
(2)被洗浄物
洗浄工程で洗浄する被洗浄物の種類は,半田付け箇所を有する部品や製品はもちろんのこと,半田付け箇所がなくとも,フラックス残渣の影響がある部品等にも好適に使用することができる。
したがって,被洗浄物の種類は,特に制限されるものではないが,例えば,プリント樹脂配線基板,セラミック配線基板,バンプ付き半導体素子,バンプ無し半導体素子,バンプ付きTABテープ,バンプ無しTABテープ,半導体素子搭載TABテープ,リードフレーム,等が具体的に挙げられる。」

(2)「【0033】
(5)温度条件
また,洗浄槽における洗浄液の温度(液温)は,被洗浄物に対する洗浄効果や,洗浄液の酸化劣化の程度等を考慮して定めることが好ましいが,具体的に,20?90℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は,かかる洗浄液の温度が20℃未満となると,被洗浄物に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方,かかる温度が90℃を越えると,洗浄液の酸化劣化が著しくなったり,余分なフラックス等のみならず,半田についてもプリント基板等の所定場所から剥離したりする場合があるためである。
したがって,洗浄液の温度を20?80℃の範囲内の値とすることがより好ましく,20?70℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。」

4 引用例4
当審拒絶理由通知において「文献4」として引用し,原査定の根拠となった平成28年9月1日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献1」として引用された特開2008-91416号公報(以下「引用例4」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は,電子材料用基板の製造方法に関する。さらに詳しくは還元剤含有洗浄液を用いて電子材料用基板を洗浄する工程を含む電子材料用基板の製造方法に関する。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,従来の製造方法では,還元剤含有洗浄液に含まれる還元剤が空気酸化されて,還元剤含有洗浄液中の還元剤濃度が時間の経過とともに徐々に低下し,それに伴い洗浄液の洗浄性が低下するという問題がある。
本発明は,還元剤含有洗浄液中の還元剤濃度が低下を抑制することができ,洗浄液の洗浄性が低下しにくい電子材料用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は,容器(T)に貯留された還元剤含有洗浄液(A)を,容器(T)から電子材料用基板に移送して,移送した還元剤含有洗浄液(A)を用いて電子材料用基板を洗浄する工程を含む電子材料用基板の製造方法であって,容器(T)に貯留された還元剤含有洗浄液(A)の上面が還元剤含有洗浄液(A)よりも比重が小さい酸化防止材(B)で覆われていることを特徴とする電子材料用基板の製造方法からなることを要旨とする。」

(3)「【0013】
還元剤含有洗浄液(A)は,還元剤が水性溶媒に溶解した水性液である。
還元剤としては,公知(特許文献1,特開2003-17458号公報,特開2006-66889号公報及び特表2005-536738号公報等)の還元剤が含まれる。
【0014】
これらのうち,還元性及び電子材料用基板の電気特性の悪化(絶縁抵抗の低下等)が起こらないという観点等から,L-アスコルビン酸(塩)及び没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)が好ましく,さらに好ましくはL-アスコルビン酸,L-アスコルビン酸アルキルアミン(アミンの炭素数1?6:メチルアミン,エチルアミン,トリメチルアミン,トリエチルアミン及びモノブチルアミン等)塩,L-アスコルビン酸第4級アンモニウム(第4級アンモニウムの炭素数4?8:テトラメチルアンモニウム及びテトラエチルアンモニウム等)塩及び没食子酸,特に好ましくはL-アスコルビン酸,L-アスコルビン酸テトラメチルアンモニウム塩及び没食子酸である。本発明において,「・・・酸(塩)」とは,「・・・酸」及び「・・・酸塩」を意味する。」

(4)「【0046】
容器(T)が循環タンクの場合,容器(T)の中の還元剤含有洗浄液(A)の量(m^(3))は,容器(T)の容積の70?95%が好ましく,さらに好ましくは75?90%,特に好ましくは80?85%である。循環タンク内の還元剤含有洗浄液(A)の量は,生産性の観点から,電子材料用基板を洗浄する工程の間,ほぼ一定であることが好ましい。
容器(T)が希釈タンクの場合,容器(T)の中の還元剤含有洗浄液(A)の量(m^(3))は,還元剤含有洗浄液(A)の濃縮液の濃度及び調整する濃度等により決めればよく,特に制限はない{例えば,容器(T)の容積の40?80%}。」

(5)「【0059】
<試験例1:還元剤濃度経時変化試験>
洗浄液タンク(1)?(9)及び(H1)のそれぞれについて,洗浄液タンクの作製後,直ちに洗浄液タンクの上面にポリエチレン製オープンドラム(t1)の蓋(ポリエチレン製オープンドラムに付属の蓋)をして,還元剤含有洗浄液を密封した。そのままの状態で,3日間,25℃で保管した後の還元剤含有洗浄液に含まれる還元剤濃度を測定した結果を表1に示す。還元剤含有洗浄液の製造直後の還元剤濃度が,25℃で3日間保管後にどれだけ残存していたかを示す指標として,還元剤濃度残存率(%){=(25℃で3日間保管後の還元剤濃度)/(製造直後の還元剤濃度)×100}を示した。
……(中略)……
【0062】
<実施例1>
CMPスラリー{研磨粒子:コロイダルシリカ(平均粒子径70nm,カタログ値),商品名:PlanarChem OS-70KL,ATMI(アドバンストテクノロジーマテリアルズインコーポレーテッド)社製}を用いて,シリコン酸化膜ウェハ{8インチ ブランケットウェハ P-TEOS,アドバンテック社製,シリコン酸化膜厚:8000Å(カタログ値)}を下記研磨条件で研磨して,研磨後基板を得た。この研磨後基板を,試験例1に記載の条件で3日間25℃で保管した後の還元剤含有洗浄液(a1)を用いて下記洗浄条件で洗浄し,電子材料用基板(X1)を得た。」

5 引用例5
当審拒絶理由通知において「文献5」として引用した国際公開第2012-066911号(以下「引用例5」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0034] 本発明の電気化学デバイス電極用バインダーは,重合性の単量体を重合させて得られるものである限り特に制限はなく,正極用または負極用のバインダーとして用いることができるものである。」

(2)「[0071] [3]電気化学デバイス電極用バインダーの保存方法:
本発明の電気化学デバイス電極用バインダーの保存方法は,重合体粒子及び水を含有する電気化学デバイス電極用バインダーを良好に(即ち,異物が発生しない状態で)長期間保存することができる。そして,本発明の保存方法は,上述の方法で作製された,1mL当りにおける粒子径20μm以上の粒子の数が0個である電気化学デバイス電極用バインダーの保存方法として好適に採用することができる。特に,電気化学デバイス電極用バインダーに含有される重合体が,凝集し易い重合体(例えばフッ素系の重合体)を含有する場合には,本発明の保存方法は効果を更に良好に発揮する。
[0072] 本発明の保存方法では,前記電気化学デバイス電極用バインダーを2?30℃の温度で保存することが必須であり,好ましくは10?25℃である。前記範囲の上限値を超える場合,長期間の保存の間に空隙部と電気化学デバイス電極用バインダーとの界面のうち容器の壁面と接する部分に重合体粒子が凝集し,異物が発生する。そのため,長期間安定に保存することができない。前記範囲の下限値未満である場合,前記電気化学デバイス電極用バインダー中で重合体粒子が凝集し,ゲル状物や異物が発生する。そのため,長期間安定に保存することができない。
[0073] 本発明の保存方法は,前記電気化学デバイス電極用バインダーを充填して保存する容器の内容積から前記電気化学デバイス電極用バインダーの占める体積を除いた空隙部の体積の,前記容器の内容積に占める比率(%)(以下,「空隙率」ともいう)が,1?20%であることが必須であり,好ましくは3?15%であり,より好ましくは5?10%である。空隙率が前記範囲の上限値を超えると,保存温度が変化した場合に水分の揮発量が多くなり,その結果,気液界面(空隙部と電気化学デバイス電極用バインダーとの界面)にて重合体粒子の凝集が生じ,異物が発生する。そのため,安定に保存することができない。空隙率が前記範囲の下限値未満であると,保存温度の変化により電気化学デバイス電極用バインダーが体積変化を起こした場合,容器の変形や容器の破裂が発生する。そのため,安定に保存することができない。
[0074] 本発明の保存方法では,空隙部の酸素濃度が1%以下であることが好ましい。空隙部の酸素濃度が前記範囲内であると,長期間の保存の間にバインダー成分(電気化学デバイス電極用バインダーに含まれる成分)が酸化,変質することなく,重合体粒子の凝集を抑制することができる。そのため,異物の発生を効果的に抑制することができる。酸素濃度は,酸素濃度計(ジコー社製,型番「OXY-1S」)を用いて,容器を密閉する直前に空隙部の濃度を測定した値である。」

(3)「[0124] [6ヶ月保存性]:
電気化学デバイス電極用バインダーを保存容器に入れ,保存温度(℃),容器の内容積に対する空隙部の体積の比率(空隙率(%)),空隙部に残留する気体中の酸素濃度を表4,5に記載の条件とする。その後,静置して6ヶ月保存する。6ヶ月保存後,電気化学デバイス電極用バインダー中における異物の発生の有無及び容器態様を目視にて観察し評価する。評価結果を表4,5に示す。なお,酸素濃度は,電気化学デバイス電極用バインダーを保存容器に入れた後,容器内に高純度の窒素を吹き付けて窒素置換することにより調整した。」

6 引用例6
当審拒絶理由通知において「文献6」として引用し,原査定の根拠となった平成28年9月1日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献2」として引用された国際公開第2012-090669号(以下「引用例6」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0094] 1.8.電極用バインダー組成物の保管方法
本実施の形態に係る電極用バインダーの保管方法(以下,単に「保管方法」ともいう)では,上述の方法で作製され,1mL当たりにおける粒子径20μm以上の粒子の数が0個である電極用バインダー組成物に好適に用いることができる。特に,電極用バインダー組成物に含有される重合体粒子が,凝集しやすい傾向のあるフッ素系重合体を含有する場合に本願の方法は効果を発揮する。
[0095] 本実施の形態に係る保管方法は,かかる電極用バインダー組成物を2?30℃の温度で保管することが必須であり,好ましくは10?25℃である。前記範囲を超える場合,長期間の保存の間に容器の壁面の気液界面において重合体粒子が凝集し,異物が発生する傾向にあり,安定に保管することができない。前記範囲未満では,液中で重合体粒子が凝集し,ゲル状物や異物が発生する傾向にあり,安定に保管することができない。
[0096] 本実施の形態に係る保管方法は,上記の電極用バインダー組成物を充填して保存する容器において,該容器の内容積に対する電極用バインダー組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率(%)(以下,「空隙率」ともいう)が1?20%であることが必須であり,好ましくは3?15%であり,より好ましくは5?10%である。空隙率が前記範囲を超えると,保管温度が変化した場合に水分の揮発が大きくなり,その結果気液界面にて重合体粒子の凝集が発生し,異物が発生するため,安定に保管することができない。空隙率が前記範囲未満では,温度の変化により電極用バインダー組成物が体積変化を起こした場合,容器の変形や容器の破裂が発生するため,安定に保管することができない。
[0097] 本実施の形態に係る保管方法は,該空隙部雰囲気の酸素濃度が1%以下であることが好ましい。該空隙部雰囲気の酸素濃度が前記の範囲であると,長期間の保存の間にバインダー成分が酸化,変質することなく,重合体粒子の凝集を抑制することができ,異物の発生を効果的に抑制することができる。

(2)「[0172] 5.12.実験例7(電極用バインダー組成物の保管試験)
前記実施例1?3で作製された電極用バインダー組成物のいずれか1種を保存容器に入れ,容器の内容積との比率(空隙率),保管温度,容器内に残留する気体中の酸素濃度を表7に記載の条件とし,静置して6ヶ月保管した。6ヶ月保管後の後の電極用バインダー組成物の異物発生有無,容器態様を目視にて判断した結果を表7に示す。なお,酸素濃度は電極用バインダー組成物を保管容器へ移し替えた後,容器内へ高純度窒素を吹き付けて置換することにより調整した。」

7 引用例7
当審拒絶理由通知において「文献7」として引用し,原査定の根拠となった平成28年9月1日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献3」として引用された特開2005-255983号公報(以下「引用例7」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0033】
(B)界面活性剤
本発明に用いられる界面活性剤(B)としては,アニオン性界面活性剤またはノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0034】
アニオン型界面活性剤としては,たとえば,ラウリル硫酸等のアルキル硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;アルキルナフタレンスルホン酸;ポリオキシエチレンラウリル硫酸等のポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル;ナフタレンスルホン酸縮合物;ポリ(メタ)アクリル酸,アクリル酸-メタクリル酸共重合体等の不飽和カルボン酸の重合体;リグニンスルホン酸等を挙げることができる。これらのアニオン型界面活性剤は,塩の形態で使用してもよい。この場合,カウンターカチオンとしては,たとえば,ナトリウムイオン,カリウムイオン,アンモニウムイオン等を挙げることができる。これらのうち,カリウムイオンおよびアンモニウムイオンが好ましい。
【0037】
本発明に係る洗浄用組成物は,上記架橋有機重合体粒子(A)および界面活性剤(B)に加えて,必要に応じて,有機酸(C),錯化剤(D)等の他の成分を含有していてもよい。また,本発明に係る洗浄用組成物において,上記成分は,適当な溶媒に溶解または分散していることが好ましい。
【0038】
(C)有機酸
本発明に用いられる有機酸(C)は,金属,特に銅,金属酸化物,特に銅酸化物などをイオン化して,後述する溶媒中で可溶性のイオン性化合物の形成を促進する役割を担う。」

(2)「【0046】
<洗浄用組成物>
本発明に係る洗浄用組成物において,架橋有機重合体粒子(A)の含有量は,好ましくは0.001?5.0質量%であり,より好ましくは0.001?1.0質量%であり,さらに好ましくは0.001?0.5質量%である。また,界面活性剤(B)の含有量は,好ましくは0.0001?5質量%であり,より好ましくは0.001?1質量%であり,さらに好ましくは0.001?0.5質量%である。架橋有機重合体粒子(A)および界面活性剤(B)の含有量が上記範囲にあると,架橋有機重合体粒子(A)が均一に分散して安定な洗浄用組成物が得られるとともに,砥粒や金属異物等の除去効果を十分に発揮することができる。
……(中略)……
【0049】
本発明に係る洗浄用組成物のpHは,好ましくは12以下であり,より好ましくは2?11であり,さらに好ましくは2?6である。pHが上記範囲にあると,金属配線を腐食させることなく,十分な汚染除去能力を発揮することができる。
【0050】
洗浄用組成物のpHは,洗浄用組成物が有機酸(C)を含有する場合には,その配合量を調整することによりコントロールすることができる。また,適当な無機酸または塩基性物質を添加することによってもコントロールすることができる。この無機酸としては,たとえば,塩酸,硝酸,硫酸等を挙げることができる。塩基性物質としては,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化ルビジウム,水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物,アンモニアなどを挙げることができる。これらの塩基性物質のうち,アンモニアおよび水酸化カリウムが好ましい。
【0051】
本発明に係る洗浄用組成物は,使用時に各成分の濃度が上記好ましい範囲にあればよい。すなわち,本発明に係る洗浄用組成物は,各成分を上記好ましい濃度範囲となるように直接配合して使用してもよいし,あるいは,上記好ましい濃度範囲より濃縮された状態の組成物を調製し,使用前に溶媒を添加して各成分の濃度が上記好ましい範囲となるように希釈して使用してもよい。」

(3)「【0053】
〔半導体基板の洗浄方法および半導体装置の製造方法〕
本発明に係る半導体基板の洗浄方法は,本発明に係る洗浄用組成物を使用して化学機械研磨後の半導体基板を洗浄する方法である。また,本発明に係る半導体装置の製造方法は,半導体基板を化学機械研磨する工程と,該化学機械研磨後の半導体基板を本発明に係る洗浄方法により洗浄する工程とを含む方法である。
【0054】
上記半導体基板としては,被研磨面に,配線部を形成する金属材料(以下,「金属配線材料」という。),バリアメタルおよび絶縁材料のうちから選択される少なくとも1種の材料を有する半導体基板を挙げることができる。このうち,被研磨面に,少なくとも金属配線材料を有する半導体基板が好ましい。
【0055】
上記金属配線材料としては,たとえば,タングステン,アルミニウム,銅,およびこれらの金属うちの少なくとも1種を含有する合金を挙げることができる。これらのうち,銅および銅を含有する合金が好ましい。
【0056】
上記バリアメタルとしては,たとえば,タンタル,窒化タンタル,チタン,窒化チタン
,ルテニウム等を挙げることができる。これらのうち,タンタルおよび窒化タンタルが好ましい。」

(4)「【0085】
(2)洗浄用組成物の調製
(2-1)洗浄用組成物(1)?(3)の調製
ポリエチレン製容器に,表2に示す架橋有機重合体粒子を含有する,上記調製例で調製
した水分散体を架橋有機重合体粒子換算で表2に示す量と,表2に示す種類と量の界面活
性剤とを投入し,15分間攪拌した。この混合物に,全構成成分の合計量が100質量部となるようにイオン交換水を加えた後,孔径5μmのフィルタで濾過して,洗浄用組成物(1)?(3)を得た。これらの組成物のpHを表2に示す。
……(中略)……
【0095】
次いで,得られた混合物に20質量%の水酸化カリウム水溶液0.3108gを添加し,さらにイオン交換水で希釈した後,孔径5μmのデプスカートリッジフィルターで濾過して,ヒュームドシリカを30質量%含有する水分散体を得た。この水分散体に含有されるシリカの平均分散粒径は52nmであった。」

8 引用例8
当審拒絶理由通知において「文献8」として引用し,原査定の根拠となった平成28年9月1日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献4」として引用された国際公開第2014-087925号(以下「引用例8」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「[0014] 本発明は,以下の態様を含むものである。
<1> バリアメタルと,銅配線あるいは銅合金配線と,低誘電率層間絶縁膜とを有する基板上に,バリア絶縁膜,低誘電率層間絶縁膜,ハードマスク,オルガノシロキサン系薄膜,及びフォトレジストを順に積層した後,該フォトレジストに選択的露光及び現像処理を施し,フォトレジストパターンを形成し,次いで,このフォトレジストパターンをマスクとして,前記オルガノシロキサン系薄膜,ハードマスク,低誘電率層間絶縁膜およびバリア絶縁膜にドライエッチング処理を施した半導体素子を洗浄して,前記オルガノシロキサン系薄膜,ハードマスク,ドライエッチング残渣およびフォトレジストを除去する洗浄液であって,過酸化水素を10?30質量%,4級アンモニウム水酸化物を0.005?10質量%,水酸化カリウムを0.005?5質量%,アミノポリメチレンホスホン酸を0.000005?0.005質量%および水を含む洗浄液である。
……(中略)……
<5> ナトリウム濃度が0.1ppm以下である上記<1>?<4>のいずれかに記載の洗浄液である。……」

(2)「[0024] 本発明の洗浄液において,特に好ましい組み合わせは,過酸化水素を15?20質量%,4級アンモニウム水酸化物を0.01?8質量%,水酸化カリウムを0.02?1質量%,アミノポリメチレンホスホン酸を0.00001?0.003質量%含有する。
[0025] 本発明の洗浄液に含まれる不純物としてのナトリウム濃度は,質量として0.1ppm以下であることが好ましく,0.05ppm以下であることがより好ましく,0.03ppm以下であることがさらに好ましい。なお,上記水酸化カリウム中でナトリウムは不可避不純物であるため,実際上は洗浄用組成物中に0.001ppm程度は含まれてしまう。0.1ppmより多いナトリウムが含まれると,製造される半導体の特性が低下する恐れがある。」

9 引用例9
当審拒絶理由通知において「文献9」として引用し,原査定の根拠となった平成28年9月1日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献5」として引用された特開2003-142441号公報(以下「引用例9」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0038】本発明の洗浄液の領域にある薬液は,従来,有効な利用方法が見出されておらず,半導体プロセスにおいて使用されることはなかったが,本発明者の検討により(i)酸に還元剤や水素を添加しても酸の持つ洗浄能力が低下しないこと,(ii)還元性を有する酸性溶液を用いることにより,金属膜や下地層への損傷の防止効果が顕著に向上すること,を見出し,本発明に到達したものである。
【0039】本発明に係る洗浄液は,酸の水溶液に水素をバブリングして溶解させることにより得ることができる。また,酸の水溶液に還元剤を添加することにより得ることもできる。そのほか,以下のような手法により液中に水素を溶解させることによって得ることもできる。
(a)酸の水溶液を水素溶解モジュールに通液し,水素を溶解させる。
(b)純水を水素溶解モジュールに通液して水素を溶解させ,その後,酸を加える
(c)酸を電気分解して陰極から得られる水を利用する。
(d)電気分解して陰極から得られるカソード水に酸を添加する。
【0040】還元剤としては,次亜硫酸や硫酸塩系の還元剤が好ましく用いられる。例えば,チオ硫酸ナトリウム,亜二チオン酸ナトリウム,ピロ亜硫酸ナトリウム,メタ重亜硫酸ナトリウムなどが用いられる。また,ヒドロキシルアミン,トリプトファン,ヒシチジン,メチオニン,フェニルアラニンなどのアミン系還元剤を用いることもできる。
【0041】本発明の洗浄液は,カルボン酸またはその塩を含むことが好ましい。基板表面に付着した金属汚染は通常,金属酸化物により表面が覆われている。この金属酸化物に対して,カルボン酸の有するカルボキシル基が吸着し,キレート作用が発現する。これにより付着した金属汚染を効果的に除去できるのである。カルボン酸は,分子中に2以上のカルボキシル基を有することが好ましい。こうすることにより,カルボン酸の有するキレート作用がより顕著となり,洗浄能力が向上する。カルボン酸は,具体的には,シュウ酸,クエン酸,リンゴ酸,マレイン酸,コハク酸,酒石酸およびマロン酸からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。」

(2)「【0045】第一の実施の形態
本実施形態はCu配線形成プロセスに関するものであり,Cu-CMP後の洗浄に本発明を適用したものである。CMPプロセスでは,酸化剤,例えば過酸化水素水や硝酸鉄などを含んだ溶液にシリカ粒子やアルミナ粒子を加えた溶液が研磨剤として使用されている場合が多く,この場合CMP後のウェーハ表面にはアルミナ粒子等が残留する。そして,CMPで削られたCuが過酸化水素水で酸化されてCuO_(X)となり,ウェーハ表面に付着して金属汚染となる。これらの粒子および金属汚染を,Cu配線にダメージを与えることなく洗浄することが求められる。」

(3)「【0071】実施例2
シリコン基板上に銅膜を成膜した後,所定の洗浄液により洗浄処理を行い,その後,銅膜表面のラフネスを測定した。
【0072】洗浄液は以下の3種類を用いた。
【0073】(a)シュウ酸(0.03質量%)
(b)シュウ酸(0.03質量%)+水素(1ppm)
(c)シュウ酸(0.03質量%)+還元剤(0.1質量%)
*還元剤:亜二チオン酸ナトリウム
洗浄液(a)の酸化還元電位は約380mV,洗浄液(b)の酸化還元電位は約-200mV,洗浄液(c)の酸化還元電位は約50mVであった。酸化還元電位の測定は実施例1と同様の条件にて行った。また,pHは,洗浄液(a)が約2.5,洗浄液(b)が約3.0,洗浄液(c)が約2.6であった。各洗浄液についてN=5として測定を行った。結果を図7に示す。図中,縦軸は銅膜表面のラフネスの相対値である。洗浄液(a)による従来の洗浄方法では銅膜の表面ラフネスが大きいのに対して,本発明による洗浄液(b)及び(c)を用いた場合,銅膜の表面ラフネスが大幅に低減されていることがわかる。」

10 引用発明1
第5の1から,引用例1には,次の技術(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「半導体ウェハに薬液を供給することにより,前記半導体ウェハの表面の汚染物質を除去して,前記半導体ウェハの表面を洗浄するステップと,
前記半導体ウェハから飛散した前記薬液が付着する位置に設けられた部材に,前記薬液と同じ成分の洗浄液を供給することにより前記部材を洗浄するステップと,
洗浄処理後の薬液及び洗浄液を貯留する薬液貯留タンクを備える回収経路により,前記半導体ウェハに供給された前記薬液及び前記部材に供給された洗浄液を回収するステップと,
を有し,
前記薬液及び前記洗浄液を回収する回収経路を設けたことにより,前記洗浄液が大気で酸化されて劣化することを抑制する半導体ウェハ処理方法。」

11 引用発明2
引用例4には,第5の4から,次の技術(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「容器の中の還元剤含有洗浄液の量が容器の容積の70?95%であり,前記容器に貯留された洗浄液の上面が酸化防止材で覆われるようにして,密封した容器内で前記洗浄液を3日間,25℃で保管することを特徴する,電子材料用基板を洗浄する還元剤含有洗浄液の保管方法。」

12 周知慣用の技術
第5の1,第5の2,第5の3,及び,第5の4で摘記したように,
「半導体洗浄用組成物は,大気中もしくは加温された状態で空気酸化されると洗浄液としての性能が劣化することから,空気酸化による劣化を抑制する必要があること。」
は,引用例1ないし4に記載され,周知慣用の技術である。

13 周知技術
第5の5,第5の6から,引用例5,引用例6には,次の技術(以下「周知技術」という。)が記載されている。
「組成物を保管する際は,当該組成物の主に酸化による性能劣化や変質を防止する目的で,10?25℃の温度で保管するとともに,前記組成物の保管容器の内容積に対する前記組成物の占める容積を除いた空隙部の容積比率を5?10%とし,窒素を吹き付けて置換することにより前記空隙部の酸素濃度を1%以下とすること。」


第6 対比・判断
A 引用発明1を主たる引用発明としたときの検討
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「半導体洗浄用組成物を容器に充填して保管する方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「半導体洗浄用組成物の保管方法」であるのに対し,引用発明1は「洗浄処理後の薬液及び洗浄液を貯留する薬液貯留タンクを備える回収経路」を設ける「半導体ウェハ処理方法」である点。
(相違点2)本願発明1の「前記半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1×10^(-6)?10×10^(0)(ppm),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)であ」るという構成を備えるのに対し,引用発明1はそのような構成を備えていない点。
(相違点3)本願発明1は「前記容器の内容積に対する前記半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率を5?20%と」するという構成を備えるのに対し,引用発明1はそのような構成を備えていない点。
(相違点4)本願発明1は「窒素を吹き付けて置換することにより前記空隙部の酸素濃度を0?5%と」するという構成を備えるのに対し,引用発明1はそのような構成を備えていない点。
(相違点5)本願発明1は「5℃以上40℃以下の温度で保管する」という構成を備えるのに対し,引用発明1はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて,相違点2について検討する。
まず,「半導体洗浄用組成物」について,引用例5及び6には何ら記載されていないものの,引用例1ないし4,及び,引用例7ないし9に記載がある。
イ しかしながら,引用例1,3及び4には,「半導体洗浄用組成物」が「カリウムおよびナトリウムを含有」することは,記載も示唆もされていない。
ウ 引用例2には,第5の2(1),(2)で摘記したように,「フラックス洗浄剤による被洗浄物の洗浄工程」の後に実行する「塩形成化合物等との接触工程」において,前記「塩形成化合物等」として「水酸化ナトリウム,水酸化カリウム」等を用いることで,「洗浄工程」後の「フラックス洗浄剤中に含まれるフラックス残渣としてのカルボン酸化合物や他の酸化合物と反応」させて,前記「洗浄工程」後の「フラックス洗浄剤」からフラックス残渣を除去することが記載されている。
そうすると,「水酸化ナトリウム,水酸化カリウム」を用いる場合は,フラックス残渣が除去されて再利用されるフラックス洗浄剤に,カリウムもしくはナトリウムが含まれ得ると認められる。
しかし,引用例2には,「水酸化ナトリウム,水酸化カリウム」は「塩形成化合物等」として例示されているだけで,再利用されるフラックス洗浄剤に含まれ得るカリウムないしナトリウムの量は記載も示唆もされていない。
エ 引用例7には,第5の7(2)で摘記したように,pHをコントロールするために洗浄用組成物に添加される塩基性物質として,「水酸化ナトリウム,水酸化カリウム」が例示されている。
しかし,「水酸化ナトリウム,水酸化カリウム」は単に例示されているだけであり,その添加量は,引用例7には記載も示唆もされていない。
オ 引用例8には,第5の8(1),(2)で摘記したように,半導体素子用洗浄液に,水酸化カリウムを0.005?5質量%含有させ,ナトリウムが0.001?0.1ppm含有することが記載されている。
しかし,引用例8において,ナトリウムは水酸化カリウムに含まれる不可避不純物であることが段落[0025]に記載されているから,前記ナトリウムの,半導体素子用洗浄液における含有量やカリウムに対する含有量比を設定できるものではない。
カ 引用例9には,第5の9(1),(3)で摘記したように,還元性を有する酸性溶液を洗浄液とするために添加する還元剤して,チオ硫酸ナトリウム,亜二チオン酸ナトリウム,ピロ亜硫酸ナトリウム,メタ重亜硫酸ナトリウムなどの次亜硫酸や硫酸塩系の還元剤が例示されているが,還元剤の添加量は記載されていない。
また,引用例9には,洗浄液がカリウムを含むことは,記載も示唆もされていない。
キ 以上のア?カから,引用例1ないし9には,相違点2に係る「半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1×10^(-6)?10×10^(0)(ppm),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)」であることは,記載も示唆もされていない。
ク これに対して,本願発明1は,相違点2に係る構成を備えることで,「これまでの概念を覆し,CMP研磨後の洗浄工程において,カリウムおよびナトリウムを所定の割合で含有する半導体洗浄用組成物を用いることにより,半導体特性を大幅に劣化させずに,逆に洗浄特性を向上させる効果があること」が本願明細書の段落【0031】に記載され,「カリウムおよびナトリウムを前記含有比率で含有し,かつ,カリウムおよびナトリウムの含有量が前記範囲内にあることにより,洗浄工程において,被研磨面に露出した銅やタングステンなどの金属材料が過剰にエッチングされて溶出することをより効果的に抑制し,安定した洗浄特性を維持することができる」ことが同段落【0033】に記載されている。
そして,カリウムおよびナトリウムを本願発明1の含有比率で含有し,かつ,ナトリウムを本願発明1の含有量で含有する実施例1ないし31の半導体洗浄用組成物は,洗浄後の基板表面に対する評価試験の評価結果が,すべて,非常に良好または使用可能であるという本願明細書の表1?3に記載された効果を奏するものである。
ケ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明1及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,本願発明1の記載を引用しており,本願発明1をさらに限定した発明である。
したがって,本願発明1と同じ理由により,本願発明2ないし4は,当業者であっても,引用発明1及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は,本願発明1と引用発明1との相違点である相違点2に係る構成と実質的に同じである「前記半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1.0×10^(-6)?10×10^(0),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)であり」という構成を備えるものである。
したがって,本願発明5は,少なくとも前記相違点2に対応する相違点で引用発明1と相違し,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明1及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明6ないし10について
本願発明6ないし10は,本願発明1ないし5の記載を引用しており,本願発明1ないし5をさらに限定した発明である。
したがって,本願発明1ないし5と同じ理由により,本願発明6ないし10は,当業者であっても,引用発明1及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

B 引用発明2を主たる引用発明としたときの検討
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「半導体洗浄用組成物を容器に充填して保管する方法であって,
前記容器の内容積に対する前記半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率が所定の範囲にあり,
25℃の温度で保管することを特徴とする,半導体洗浄用組成物の保管方法。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の「前記半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1.0×10^(-6)?10×10^(0),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)であ」るいう構成を備えるのに対し,引用発明2はそのような構成を備えていない点。
(相違点2)本願発明1は「前記容器の内容積に対する前記半導体洗浄用組成物の占める容積を除いた空隙部の容積の比率を5?20%と」するという構成を備えるのに対し,引用発明2は「前記容器に貯留された洗浄液の上面が酸化防止材で覆われる」ものであり,前記「空隙部の容積の比率」は不明である点。
(相違点3)本願発明1は「前記空隙部の酸素濃度を0?5%であ」るという構成を備えるのに対し,引用発明2はそのような構成を備えていない点。
(相違点4)本願発明1は「5℃以上40℃以下の温度で保管する」するのに対し,引用発明2は「3日間,25℃で保管する」点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑みて,相違点1及び相違点3について検討する。
イ 相違点1について
(ア)第6のA1(2)ア?キで指摘したように,引用例1ないし9には,相違点1に係る「前記半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1.0×10^(-6)?10×10^(0),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)」であることは,記載も示唆もされていない。
(イ)これに対して,本願発明5は,相違点1に係る上記の構成を備えることにより,第6のA1(2)クで指摘した効果を奏するものである。
ウ 相違点3について
(ア)引用例4には,第5の4(2)で摘記したように,「還元剤含有洗浄液に含まれる還元剤が空気酸化されて,還元剤含有洗浄液中の還元剤濃度が時間の経過とともに徐々に低下し,それに伴い洗浄液の洗浄性が低下するという問題」(段落【0003】)を解消することが,発明が解決しようとする課題であることが記載されている。
そして,引用発明2は,「容器の中の還元剤含有洗浄液の量が容器の容積の70?95%であり,前記容器に貯留された洗浄液の上面が酸化防止材で覆われる」ようにすることで,前記問題を解消している。
(イ)そうすると,引用発明2において,「容器の中の還元剤含有洗浄液の量が容器の容積の70?95%」としたことで「酸化防止材で覆われ」た「洗浄液の上面」の上は「空隙部」であると認められるが,前記「還元剤が空気酸化され」て「洗浄液の洗浄性が低下する」という課題は既に解決されているのであるから,相違点3に係る「前記空隙部の酸素濃度を0?5%」とする構成を採用する動機付けが引用発明2にあるとは,認められない。
エ 小括
したがって,相違点2及び4について検討するまでもなく,本願発明5は,当業者であっても,引用発明2及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,本願発明1の記載を引用しており,本願発明1をさらに限定した発明である。
したがって,本願発明1と同じ理由により,本願発明2ないし4は,当業者であっても,引用発明2及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は,本願発明1と引用発明2との相違点である相違点1に係る構成と実質的に同じである「前記半導体洗浄用組成物がカリウムおよびナトリウムを含有し,前記カリウムの含有量をM_(K)(ppm),前記ナトリウムの含有量をM_(Na)(ppm)としたときに,M_(Na)=1.0×10^(-6)?10×10^(0),かつ,M_(K)/M_(Na)=5×10^(3)?1×10^(5)であり」という構成を備えるものである。
また,本願発明5は,本願発明1と引用発明2との相違点である相違点3に係る構成と同じである「前記空隙部の酸素濃度が0?5%」であるという構成を備えるものである。
したがって,本願発明5は,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明2及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明6ないし10について
本願発明6ないし10は,本願発明1ないし5の記載を引用しており,本願発明1ないし5をさらに限定した発明である。
したがって,本願発明1ないし5と同じ理由により,本願発明6ないし10は,当業者であっても,引用発明2及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第7 原査定についての判断
第6のBで記載した理由から,本願発明1-10は,当業者であっても,引用発明2及び引用例4,6ないし9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。


第8 当審拒絶理由についての判断
第6のAで記載した理由から,本願発明1-10は,当業者であっても,引用発明1及び引用例1ないし9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,平成29年9月14日付けの当審拒絶理由は解消した。


第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-10 
出願番号 特願2016-94399(P2016-94399)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼須 甲斐  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 鈴木 匡明
加藤 浩一
発明の名称 半導体洗浄用組成物の保管方法および洗浄方法  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 布施 行夫  
代理人 松本 充史  
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