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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1335970
審判番号 不服2016-18458  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-08 
確定日 2018-01-26 
事件の表示 特願2012-104838「傷病者特定システム及び特定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-232161、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年5月1日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 2月 4日付け:拒絶理由の通知
平成28年 4月11日 :意見書、及び、手続補正書の提出
平成28年 9月 6日付け:拒絶査定
平成28年12月 8日 :審判請求書、及び、手続補正書の提出
平成29年 2月 7日 :前置報告
平成29年 9月21日付け:当審による拒絶理由の通知
平成29年11月13日 :意見書、及び、手続補正書の提出


第2 原査定の概要

原査定(平成28年9月6日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-217449号公報
2.特開2011-048734号公報


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.請求項1-6に係る発明は、明確でないため、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができない。


第4 本願発明

本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年11月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
傷病者の発見地点からの搬送先である域内搬送拠点に設置される域内拠点端末と、救助者が所持し、GPS機能を備えていてネットワークを介して前記域内拠点端末に接続される携帯端末と、前記域内搬送拠点からの搬送先である域外搬送拠点に設置され、ネットワークを介して前記域内拠点端末に接続される域外拠点端末とを少なくとも含んで構成される傷病者特定システムであって、傷病者が発見された場所の座標値と発見時刻とから当該傷病者の初期値IDが設定され、前記初期値IDを含む一次データが前記携帯端末からネットワークを介して当該傷病者の搬送先の前記域内搬送拠点の前記域内拠点端末に送信されてそのデータベース管理手段によって管理され、前記傷病者が搬送された域内搬送拠点において、その域内搬送拠点の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから第2IDが設定されて前記初期値IDに付加され、それに当該域内搬送拠点における処置内容を含む情報が関連付けされて付加されて二次データが作成され、前記域内拠点端末のデータベースにおける当該傷病者の一次データが更新されると共に、前記二次データが前記域内拠点端末から前記傷病者の搬送先である前記域外搬送拠点の域外拠点端末に送信されてそのデータベース管理手段によって管理され、前記傷病者が搬送された域外搬送拠点において、その域外搬送拠点の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから第3IDが設定されて前記初期値ID及び前記第2IDに付加され、それに前記域外搬送拠点における処置内容を含む情報が関連付けされて付加されて三次データが作成され、前記域外拠点端末のデータベースにおける当該傷病者の前記二次データが更新されることを特徴とする傷病者特定システム。

【請求項2】
更に、前記域外搬送拠点からの搬送先である最終治療病院に設置され、ネットワークを介して前記域外拠点端末に接続される最終病院端末を含み、前記三次データが前記域外拠点端末から前記最終治療病院の前記最終病院端末に送信されてそのデータベース管理手段によって管理され、前記最終治療病院において、その最終治療病院の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから最終IDが設定されて前記初期値ID、前記第2ID及び前記第3IDに付加され、これに当該最終治療病院における処置内容が関連付けされて付加されて最終データが作成され、前記最終病院端末のデータベースにおける当該傷病者の三次データが更新される、請求項1に記載の傷病者特定システム。

【請求項3】
前記域内拠点端末、前記域外拠点端末及び前記最終病院端末のそれぞれに対して外部からアクセスして、前記二次データ、三次データ及び最終データをそれぞれ閲覧することを可能にした、請求項2に記載の傷病者特定システム。

【請求項4】
傷病者の発見地点からの搬送先である域内搬送拠点に設置される域内拠点端末と、救助者が所持し、GPS機能を備えていてネットワークを介して前記域内拠点端末に接続される携帯端末と、前記域内搬送拠点からの搬送先である域外搬送拠点に設置され、ネットワークを介して前記域内拠点端末に接続される域外拠点端末とを用いて実行される傷病者特定方法であって、
前記携帯端末により、一次トリアージ実施者である前記救助者により入力された、傷病者が発見された場所の座標値と発見時間とから当該傷病者の初期値IDが設定されてそれに関連付けされた一次データが作成されるステップと、
設定された前記初期値IDが、前記一次データが前記ネットワークを介して前記携帯端末から当該傷病者の搬送先の前記域内搬送拠点の前記域内拠点端末に送信されてそのデータベース管理手段によって管理されるステップと、
前記域内拠点端末により、当該傷病者が搬送された前記域内搬送拠点において、前記域内搬送拠点における二次トリアージ実施者により入力された、その域内搬送拠点の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから第2IDが設定されて前記初期値IDに付加され、これに前記域内搬送拠点における処置内容を含む情報が関連付けされて付加されて二次データが作成され、当該傷病者の前記一次データが更新されるステップと、
前記二次データが、当該傷病者の搬送先である前記域外搬送拠点の域外拠点端末に送信されてそのデータベース管理手段によって管理されるステップと、
前記域外拠点端末により、当該傷病者が搬送された前記域外搬送拠点において、前記域外搬送拠点における三次トリアージ実施者により入力された、その域外搬送拠点の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから第3IDが設定されて前記初期値ID及び前記第2IDに付加され、これに前記域外搬送拠点における処置内容を含む情報が関連付けされて付加されて三次データが作成され、当該傷病者の前記二次データが更新されるステップと、 から成ることを特徴とする傷病者特定方法。

【請求項5】
更に、前記傷病者の前記域外搬送拠点からの搬送先である最終治療病院に設置され、ネットワークを介して前記域外拠点端末に接続される最終病院端末を含み、前記最終病院端末により、前記傷病者が搬送された前記最終治療病院において、前記最終治療病院における最終治療者により入力された、前記最終治療病院の地点の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから最終IDが設定され、前記初期値ID、第2ID及び第3IDに付加され、また、これに前記最終治療病院における処置内容を含む情報が関連付けされて付加されて最終データが作成され、前記最終病院端末のデータベース管理手段によって管理されるステップを含む、請求項4に記載の傷病者特定方法。

【請求項6】
前記域内拠点端末、前記域外拠点端末及び前記最終病院端末のそれぞれに対して外部からアクセスして、前記二次データ、三次データ及び最終データをそれぞれ閲覧することが可能にされる、請求項5に記載の傷病者特定方法。」


第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「本発明は、傷病者選別票(以下、トリアージタグという。)使用による傷病者管理システムに係り、特に、電子ペンと、電子ペン専用ドットパターンが印刷されたトリアージタグ使用による傷病者管理システムに関する。」(【0001】)

(イ)「図1は、トリアージタグ使用による傷病者管理システム100の一例であり、図1に示すように、トリアージタグ使用による傷病者管理システム100は、トリアージタグ2上のドットパターンから記録情報を取得する電子ペン1、通信端末3、電子ペンシステム管理サーバ4、トリアージタグ情報サーバ5、携帯型ICタグリーダ7が、ネットワーク9を介して接続されて構成される。尚、トリアージタグ使用による傷病者管理システム100は、WWW(World Wide Web)技術を用いて実現した場合の構成図である。」(【0018】)

(ウ)「携帯型ICタグリーダ7は、傷病者の搬送に伴って、拠点(搬送拠点)8-1、拠点(医療機関)8-2等にて、傷病者に装着したトリアージタグ2のICタグ10に記憶されたトリアージタグ番号を読み取り、トリアージタグ情報サーバ5に送信し、傷病者情報データベース6から該当するトリアージタグ2の傷病者情報を問い合わせ、傷病者の搬送により変化する所在情報、トリアージ区分等の情報を更新要求する。」(【0024】)

(エ)「トリアージタグ2はICタグ10を備え、トリアージタグ2の表面は、傷病者情報記載部21、チェックボックス23、その下部に形成された治療の優先度を識別する標識24とから構成され、トリアージタグ2の裏面は、人体図25、トリアージ区分22、チェックボックス23、標識24等から構成されている。
ICタグ10は、トリアージタグ2の表面、裏面、内部のいずれかに設け、自身のトリアージタグ番号を記憶しておく。本実施の形態では、裏面に貼着させるものとする。ICタグ10は、通常は金属層を積層した紙や、PETやポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ナイロン等の各種材料等の基材に、ラミネートしたアルミ箔等の金属箔をフォトエッチングやレジスト印刷後のエッチングによりコイル状のアンテナを形成し、ICチップを接続することにより形成する。
傷病者情報記載部21は、傷病者に関する固有情報、収容された医療機関情報、搬送者に関する情報等が記載される第1の記載欄と、トリアージ実施情報、傷病者の状態情報等が記載される第2の記載欄からなる。
第1の記載欄には、トリアージタグの「トリアージタグ番号」、および、傷病者の「氏名」,「年齢」,「性別」,「住所」,「電話」、および、「トリアージ実施月日」,「トリアージ実施者氏名」,「搬送機関名」,「収容医療機関名」等を記載する。
第2の記載欄には、「トリアージ実施場所」、「傷病者の症状・傷病名」、トリアージ区分22等を記載する。トリアージ区分22は、後述する標識24の情報を表し、治療の優先度を識別する情報である。」(【0030】-【0032】)

(オ)「災害現場18において、電子ペン1、トリアージタグ2、通信端末3(携帯電話)を所有するトリアージ実施者7は、災害現場で傷病者を診断し、トリアージタグ2に電子ペン1を用いてトリアージタグ記載情報を記入し(ステップS201)、治療の優先度を識別する標識24を適当な切り取り線で切り取り、当該傷病者につける。
電子ペンの制御部11は、撮像部15で読み取ったドットパターンから記入したトリアージタグ記載情報(座標情報)を取得する(ステップS202)。
電子ペンの制御部11は、トリアージタグ2のチェックボックス23にチェックマークを記入することにより、取得した電子ペンコードとトリアージタグ記載情報(座標情報)を通信端末3(携帯電話)に送信する(ステップS203)。
通信端末3の制御部31は、電子ペン1から受信した電子ペンコードとトリアージタグ記載情報(座標情報)を、電子ペンシステム管理サーバ4に送信する(ステップS204)。
前述したように、電子ペンシステム管理サーバ4(PLSサーバ)は、ASHサーバのURLを、通信端末3を介して電子ペン1に送信する。電子ペンは再度、通信端末3を介して電子ペンコードとトリアージタグ記載情報を電子ペンシステム管理サーバ4(ASHサーバ)のURLに送信する。
電子ペンシステム管理サーバ4(ASHサーバ)は、受信した電子ペンコードとトリアージタグ記載情報(座標情報)をテキストデータに変換し、通信端末3(携帯電話)に送信する。
通信端末3の制御部31は、テキストデータ化した電子ペンコードとトリアージタグ記載情報を受信する(ステップS205)。
通信端末3の制御部31は、テキストデータ化した電子ペンコードとトリアージタグ記載情報をトリアージタグ情報サーバ5に送信する(ステップS206)。」(【0067】-【0069】)

(カ)「図10に示すように、災害現場18でトリアージ実施者は、傷病者を診断し、トリアージタグ2(ICタグ付与)に電子ペン1を用いてトリアージタグ記載情報を記入し、トリアージタグ情報サーバ5は、傷病者情報登録手段101により、電子ペン1より取得したトリアージタグ記載情報を基に傷病者情報を傷病者情報データベース6に登録する。傷病者の搬送に伴い、トリアージタグ情報サーバ5は、情報更新手段102により、拠点(搬送拠点)8-1(例えば避難場所)で、携帯型ICタグリーダ7を用いて、トリアージタグ2(ICタグ貼付)からトリアージタグ番号を読み取り、トリアージタグ情報サーバ5に傷病者の情報を問い合わせ、登録されている情報を携帯型ICタグリーダ7の液晶ディスプレイに表示し、拠点8-1の所在情報の更新を行う。更に、拠点(医療機関)8-2に搬送されると、トリアージタグ情報サーバ5は、情報更新手段102により、同様に、拠点8-2の所在情報の更新を行う。
図12に示すように、拠点8にて、傷病者に装着されているトリアージタグ2(ICタグ10貼付)に携帯型ICタグリーダ7かざす(ステップS301)。携帯型ICタグリーダ7の制御部71は、ICタグ10のメモリに記憶した情報であるトリアージタグ番号61、トリアージタグ情報サーバ5の送信先アドレスであるURLを読み取る(ステップS302)。
ICタグリーダ7の制御部71は、読み取ったトリアージタグ番号61を、読み取ったトリアージタグ情報サーバ5のURLに送信する(ステップS303)。
トリアージタグ情報サーバ5の制御部51は、傷病者情報データベース6から受け取ったトリアージタグ番号61に該当する傷病者情報60を取得する(ステップS304)。
トリアージタグ情報サーバ5の制御部51は、登録されている該傷病者情報60のトリアージタグ番号61、所在情報63、トリアージ区分62と、拠点所在情報テーブル80を基に所定範囲の拠点のリストボックスからなる情報更新画面データを生成し、ICタグリーダ7に送信する(ステップS305)。
ICタグリーダ7の制御部71は、受け取った情報更新画面92を表示する(ステップS306)。
図10に示すように、情報更新画面92は、該傷病者のトリアージタグ番号、トリアージ区分、登録されている都道府県名、市区町村名、拠点名と、所定範囲の拠点のリストボックスからなる。
トリアージ実施者は、情報更新画面92に従って、現在地(拠点名等)、傷病者の症状の変化に応じてトリアージ区分をリストボックスから選択、入力する(ステップS307)。
ICタグリーダ7の制御部71は、更新ボタンにより、入力された現在地(拠点名等)、トリアージ区分等をトリアージタグ情報サーバ5に送信する(ステップS308)。
トリアージタグ情報サーバ5の制御部51は、受信した現在地(都道府県名、市区町村名、拠点)、トリアージ区分を基に所在情報63を、傷病者情報データベース6の該当する傷病者情報60に登録(更新)する(ステップS309)。」(【0073】-【0077】)

したがって、上記(ア)ないし(カ)の記載から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「トリアージタグ使用による傷病者管理システム100は、電子ペン1、通信端末3、電子ペンシステム管理サーバ4、トリアージタグ情報サーバ5、携帯型ICタグリーダ7が、ネットワーク9を介して接続されて構成され、
携帯型ICタグリーダ7は、傷病者の搬送に伴って、拠点(搬送拠点)8-1、拠点(医療機関)8-2等にて、傷病者に装着したトリアージタグ2のICタグ10に記憶されたトリアージタグ番号を読み取り、トリアージタグ情報サーバ5に送信し、傷病者情報データベース6から該当するトリアージタグ2の傷病者情報を問い合わせ、傷病者の搬送により変化する所在情報、トリアージ区分等の情報を更新要求し、
トリアージタグ2はICタグ10を備え、トリアージタグ2の表面は、傷病者情報記載部21、チェックボックス23、その下部に形成された治療の優先度を識別する標識24とから構成され、
傷病者情報記載部21は、傷病者に関する固有情報、収容された医療機関情報、搬送者に関する情報等が記載される第1の記載欄と、トリアージ実施情報、傷病者の状態情報等が記載される第2の記載欄からなり、
第1の記載欄には、「トリアージ実施月日」が記載され、第2の記載欄には、「トリアージ実施場所」が記載され、
災害現場18において、電子ペン1、トリアージタグ2、通信端末3(携帯電話)を所有するトリアージ実施者7は、災害現場で傷病者を診断し、トリアージタグ2に電子ペン1を用いてトリアージタグ記載情報を記入し、
電子ペンは、トリアージタグ記載情報(座標情報)を通信端末3(携帯電話)に送信し、
通信端末3は、トリアージタグ記載情報をトリアージタグ情報サーバ5に送信し、
トリアージタグ情報サーバ5は、電子ペン1より取得したトリアージタグ記載情報を基に傷病者情報を傷病者情報データベース6に登録し、
トリアージタグ情報サーバ5は、登録されている該傷病者情報60のトリアージタグ番号61、所在情報63、トリアージ区分62と、拠点所在情報テーブル80を基に所定範囲の拠点のリストボックスからなる情報更新画面データを生成し、ICタグリーダ7に送信し、
トリアージタグ情報サーバ5は、受信した現在地(都道府県名、市区町村名、拠点)、トリアージ区分を基に所在情報63を、傷病者情報データベース6の該当する傷病者情報60に登録(更新)する
傷病者管理システム」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(キ)「本発明は、災害・救急医療において傷病者に対して決定されたトリアージ区分を示すトリアージ情報を入力するためのトリアージ情報入力端末、およびトリアージ情報入力端末を使用した傷病者管理システムに関するものである。」(【0001】)

(ク)「入力端末2では、制御部18が、トリアージ情報検出処理を繰り返し実行する。その際に、区分入力スイッチに対する操作を検出したとき(本例では、誤入力防止のため、区分入力スイッチに対する操作が一例として2秒以上継続したときに、制御部18は区分入力スイッチに対する操作があったと検出する)には、制御部18は、区分入力スイッチに対する操作を受け付けたことを使用者に表示するため、発光ダイオードLD1(緑色)を所定時間点灯させる。また、制御部18は、各区分入力スイッチ11?14のうちから操作された区分入力スイッチを特定して、この区分入力スイッチに対応するトリアージ区分を示すトリアージ情報Dtを内部メモリに記憶する。また、制御部18は、区分入力スイッチに対する操作を検出したときには、識別情報読み取り処理、位置情報取得処理および送信処理を実行する。この識別情報読み取り処理では、制御部18は、制御信号S1を読取部15に対して出力することにより、入力端末2に最も近接する傷病者5に取り付けられたトリアージタッグ6に配設されているICタグ6eから識別情報Ddを読み出して、内部メモリに記憶する。また、位置情報取得処理では、制御部18は、制御信号S2をGPS受信部16に対して出力することにより、GPS受信部16で算出された位置情報Dgを入力して、内部メモリに記憶する。また、識別情報読み取り処理および位置情報取得処理に続いて実行される送信処理では、制御部18は、内部メモリに記憶されているトリアージ情報Dt、識別情報Ddおよび位置情報Dgを読み出して、これらを傷病者情報Dpとして送信部17に出力する。送信部17は、入力したこの傷病者情報Dpを無線で送信する。また、制御部18は、傷病者情報Dpを送信部17に出力した後、発光ダイオードLD1(緑色)を所定時間点灯(一例として点滅)させる。これにより、送信部17が送信動作を実行しているときに発光ダイオードLD1が点灯するため、使用者は傷病者情報Dpが送信されていることを認識することができる。なお、送信部17が送信動作状態にあることを示す状態信号を送信動作中に制御部18に対して出力する構成を採用したときには、制御部18がこの状態信号の入力を検出したときに発光ダイオードLD1を点灯させる構成とすることもできる。
中継装置3は、このようにして複数の入力端末2から送信された傷病者情報Dpを中継して、管理装置4に伝送する。管理装置4では、受信装置21が傷病者情報Dpを受信して処理装置22に出力し、処理装置22が内部記憶装置に記憶する。また、処理装置22は、内部記憶装置に予め記憶されている地図情報と傷病者情報Dpとに基づいて、地域毎の傷病者5の発生状況、および地域毎の傷病者5の重症度の分布状況を集計して、傷病者発生情報Diとして配信装置23に、傷病者情報Dpと共に配信可能に記憶(保持)させる。」(【0034】-【0035】)

(ケ)「また、この傷病者管理システム1によれば、以上のような入力端末2と、入力端末2から送信された傷病者情報Dpを受信する受信装置21と、傷病者情報Dpを受信装置21から入力して配信可能に保持する配信装置23とを備えたことにより、配信装置23に対してアクセスし得る装置であれば、場所や時間を問わず、傷病者情報Dpおよび傷病者発生情報Diを取得することができる。また、この装置が傷病者情報Dpおよび傷病者発生情報Diを表示し得る表示装置31を含むものであれば、配信装置23に対してアクセスすることにより、場所や時間を問わず、傷病者情報Dpおよび傷病者発生情報Diを表示させて、確認することができる。
なお、図2において破線で示すように、時刻情報Dcを生成する時計部20を入力端末2に設けて、区分入力スイッチ11?14のいずれかが操作された際に、制御部18が時計部20から時刻情報Dcを取得して、傷病者情報Dpの一部として送信部17に出力する構成を採用することもできる。なお、時計部20は、例えば、RTC(Real Time Clock)で構成することができる。この構成によれば、携帯型パソコンを使用する端末とは異なり、極めて短時間で時刻情報Dcを含む傷病者情報Dpを送信することができる。また、GPS受信部16がGPS衛星7から受信する電波には、位置情報のみならず、時刻情報も含まれている。このため、時計部20を設ける構成に代えて、GPS受信部16が位置情報Dgと共に時刻情報を出力するように構成した場合、制御部18がGPS受信部16から時刻情報を取得して、傷病者情報Dpの一部として送信部17に出力する構成を採用することもできる。」(【0040】-【0041】)


第6 対比・判断

1.本願発明1について

1-1.対比

本願発明1と引用発明とを対比する。

(1)
引用発明では、「災害現場18において、電子ペン1、トリアージタグ2、通信端末3(携帯電話)を所有するトリアージ実施者7は、災害現場で傷病者を診断」するのであるから、引用発明の「災害現場」及び「トリアージ実施者」は、本願発明1でいうところの『傷病者の発見地点』及び『救助者』に相当する。
また、引用発明において、「トリアージ実施者」が所有する「通信端末」は、本願発明1でいうところの『携帯端末』に相当する。

(2)
引用発明では、災害現場から「拠点(搬送拠点)8-1」に傷病者が搬送されることは明らかであるから、引用発明の「拠点(搬送拠点)8-1」は、『傷病者の発見地点からの搬送先である搬送拠点』である点で、本願発明1でいうところの『域内搬送拠点』と共通している。
また、引用発明では、「拠点(搬送拠点)8-1」から「拠点(医療機関)8-2」に傷病者が搬送されることも明らかであるから、引用発明の「拠点(医療機関)8-2」は、『搬送拠点からの搬送先である搬送拠点』である点で、本願発明1でいうところの『域外搬送拠点』と共通している。
そして、引用発明において、「携帯型ICタグリーダ」は、各拠点に備えられているものであることは明らかであるから、「携帯型ICタグリーダ」は、本願発明1でいうところの『拠点端末』に相当する。

(3)
引用発明の「トリアージタグ使用による傷病者管理システム」は、「電子ペン1、通信端末3、電子ペンシステム管理サーバ4、トリアージタグ情報サーバ5、携帯型ICタグリーダ7が、ネットワーク9を介して接続されて構成され」ているのであるから、「通信端末」及び各拠点の備えられている「携帯型ICタグリーダ」がネットワークを介して接続されていることは明らかである。

(4)
引用発明では、「所在情報63を、傷病者情報データベース6の該当する傷病者情報60に登録(更新)する」のであるから、引用発明と本願発明1とは、『傷病者のデータが更新される』点で共通する。

(5)
引用発明の「傷病者管理システム」は、本願発明1でいうところの『傷病者特定システム』に相当することは明らかである

したがって、上記(1)から(5)で対比した様に、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

(一致点)
「傷病者の発見地点からの搬送先である搬送拠点に設置される拠点端末と、救助者が所持し、ネットワークを介して前記拠点端末に接続される携帯端末と、前記搬送拠点からの搬送先である搬送拠点に設置され、ネットワークを介して前記拠点端末に接続される拠点端末とを少なくとも含んで構成される傷病者特定システムであって、傷病者のデータが更新される傷病者特定システム」

(相違点)
(相違点1)本願発明1では、『携帯端末』が『GPS機能を備えている』のに対し、引用発明の「通信端末」には、その旨の特定がない点。

(相違点2)本願発明1では、各『搬送拠点』が『域内』と『域外』で特定されているのに対し、引用発明の「拠点(搬送拠点)8-1」と「拠点(医療機関)8-2」には、その旨の特定がない点。

(相違点3)本願発明1では、『傷病者が発見された場所の座標値と発見時刻とから当該傷病者の初期値IDが設定され』るのに対し、引用発明では、傷病者の情報として「トリアージ実施場所」と「トリアージ実施月日」が記載されるものの、それらを初期値IDとして設定することは特定されていない点。

(相違点4)本願発明1では、『前記初期値IDを含む一次データが前記携帯端末からネットワークを介して当該傷病者の搬送先の前記域内搬送拠点の前記域内拠点端末に送信されてそのデータベース管理手段によって管理され』るのに対し、引用発明では、「通信端末」が「拠点(搬送拠点)8-1」の「携帯型ICタグリーダ」には送信していない点。

(相違点5)本願発明1では、『前記傷病者が搬送された域内搬送拠点において、その域内搬送拠点の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから第2IDが設定されて前記初期値IDに付加され、それに当該域内搬送拠点における処置内容を含む情報が関連付けされて付加されて二次データが作成され、前記域内拠点端末のデータベースにおける当該傷病者の一次データが更新されると共に、前記二次データが前記域内拠点端末から前記傷病者の搬送先である前記域外搬送拠点の域外拠点端末に送信されてそのデータベース管理手段によって管理され、前記傷病者が搬送された域外搬送拠点において、その域外搬送拠点の座標値と当該傷病者の受け入れ時刻とから第3IDが設定されて前記初期値ID及び前記第2IDに付加され、それに前記域外搬送拠点における処置内容を含む情報が関連付けされて付加されて三次データが作成され、前記域外拠点端末のデータベースにおける当該傷病者の前記二次データが更新される』のに対し、引用発明では、各拠点にて、傷病者の搬送により変化する所在情報を更新要求し、トリアージタグ情報サーバで所在情報を更新している点。

1-2.相違点についての判断

上記相違点4について判断する。

本願発明1では、『初期値IDを含む一次データ』が『携帯端末』からネットワークを介して『域内拠点端末』に送信され、域内拠点端末の『データベース管理手段によって管理され』る構成を備えているのに対し、引用発明では、「トリアージタグ記載情報」を「通信端末」から「トリアージタグ情報サーバ」に送信して、「トリアージタグ記載情報」は「トリアージタグ情報サーバ」で管理されるものである。
そして、引用文献1には、「通信端末」から「拠点(搬送拠点)8-1」の「携帯型ICタグリーダ」に「トリアージタグ記載情報」を送信すること、及び、「トリアージタグ情報サーバ」を用いずに、傷病者のデータである「トリアージタグ記載情報」を「拠点(搬送拠点)8-1」の「携帯型ICタグリーダ」で管理することは、記載も示唆もされていない。
また、引用文献2にも上記構成については記載されておらず、上記構成が周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2、3について

本願発明2、3はいずれも請求項1を引用するものであり、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4-6について

本願発明4-6は、本願発明1-3にそれぞれ対応する方法の発明であり、本願発明1の構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断

平成29年11月13日付け手続補正により補正された請求項1-6は、それぞれ上記相違点4に係る構成を備えるものとなっており、上記「第5 引用文献、引用発明等」から「第6 対比・判断」で言及したとおり、本願発明1-6は、原査定における引用文献1、2には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-6は、当業者であっても、原査定における引用文献1、2に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。


第8 当審拒絶理由について

当審では、請求項1の「初期値IDが設定されて当該傷病者に付されると共に」との記載、及び、請求項4の「設定された前記初期値IDが、前記救助者により当該傷病者に付されると共に」との記載に対し、「傷病者に付される」ことは端末が行う動作であるのか不明瞭であるという拒絶の理由を通知しているが、平成29年11月13日付けの補正において、請求項1、4において、「傷病者に付される」ことが削除された結果、この拒絶の理由は解消した。

当審では、請求項4の各ステップの主体が不明瞭であるという拒絶の理由を通知しているが、平成29年11月13日付けの補正において、ステップの主体が特定された結果、この拒絶の理由は解消した。

当審では、請求項3、6の「前記域内拠点端末、前記域外拠点端末及び前記最終病院端末に対して外部からアクセスして、前記二次データ、三次データ及び最終データを閲覧する」との記載に対し、それぞれに対し外部からアクセスするのか、全てに対し外部からアクセスするのか不明瞭であるという拒絶の理由を通知しているが、平成29年11月13日付けの補正において、それぞれに対し外部からアクセスすることが特定された結果、この拒絶理由は解消した。


第9 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-16 
出願番号 特願2012-104838(P2012-104838)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大野 朋也  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 相崎 裕恒
宇多川 勉
発明の名称 傷病者特定システム及び特定方法  
代理人 齋藤 晴男  
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