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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C23C
管理番号 1336030
審判番号 不服2015-17409  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-09-25 
確定日 2018-01-04 
事件の表示 特願2012-556155「可変容量性チューナおよびフィードバック回路を有する物理的気相堆積」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 9日国際公開、WO2011/109337、平成25年 6月10日国内公表、特表2013-521410〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成23年3月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成22年3月1日 同年6月25日 いずれも米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年8月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月18日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年5月20日付で拒絶査定(以下「原査定」という。)されたのに対し、同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものであり、その後、請求人より平成28年2月9日付けで上申書が提出され、当審において平成29年1月16日付けで拒絶理由を通知し、同年6月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
そして、本願の請求項1?3に係る発明は、平成29年6月16日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
側壁および天井部を有し、前記側壁がRFグラウンドに結合するチャンバと、
前記天井部に面する支持体表面および前記支持体表面の下にあるバイアス電極を有するチャンバ内部の加工物支持体と、
前記天井部にあるスパッタターゲットと、
前記スパッタターゲットに結合する第1の周波数のRFソース電源、および前記バイアス電極に結合する第2の周波数のRFバイアス電源と、
前記RFソース電源と前記スパッタターゲットとの間に結合された第1の整合システム及び前記RFバイアス電源と前記バイアス電極との間に結合された第2の整合システムと、
前記RFソース電源の出力において、第1の組の周波数において少なくとも第1の調節可能なインピーダンスを提供する第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラであって、モータによって2つの状態の少なくとも1つに置かれることが可能な可変コンデンサであって前記可変コンデンサの前記少なくとも2つの状態は異なる容量である可変コンデンサと、前記可変コンデンサと直列に接続された誘導性素子と、前記可変コンデンサの出力を決定するセンサ回路とを有し、
前記センサ回路は、前記可変コンデンサの出力部において電圧を監視する電圧センサまたは該出力部において電流を監視する電流センサを有し、グラウンドと前記スパッタターゲットとの間に第1の整合システムと電気的に並列に接続される、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラと、
前記RFバイアス電源の出力において、第2の組の周波数において少なくとも第2の調節可能なインピーダンスを提供する第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラであって、グラウンドと前記バイアス電極との間に第2の整合システムと電気的に並列に接続される、第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラと、
前記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラの前記可変コンデンサの前記モータを制御するプロセッサであって、前記センサ回路が前記プロセッサにフィードバックを提供し、前記プロセッサが前記モータを制御して、前記可変コンデンサを所望の設定にする、プロセッサと、
を備える物理的気相堆積プラズマリアクタであって、
ウエハからのバイアス電力の電流が、前記スパッタターゲットへの中央経路Icと前記側壁へのエッジ経路Isとの間で配分され、前記スパッタターゲットからのソース電力の電流が、前記ウエハへの中央経路icと前記側壁へのエッジ経路isとの間で配分され、
前記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラによって、前記Icに関与する対グラウンド間インピーダンスと前記Isに関与する対グラウンド間インピーダンスとの割合を、
前記第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラによって、前記icに関与する対グラウンド間インピーダンスと前記isに関与する対グラウンド間インピーダンスとの割合を制御し、
前記可変コンデンサの状態が、プロセスコントローラにおける処理方策と関連づけられており、
前記処理方策が、チャンバ間のばらつきに対して調節された共通の処理方策である物理的気相堆積プラズマリアクタ。」

第2 原査定の理由の概要
原査定の理由の一つは、
「本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1,2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2010/0012480号明細書
2.特開2001-250811号公報

なお、当審で通知したの拒絶理由は、上記原査定についての判断を保留した上で、特許法第36条第6項第1号及び同項第2号に規定する要件を満たしていないとの記載不備について指摘したものである。

第3 引用文献及びその記載事項
1 引用文献1について
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1)記載事項
なお、当審による訳における下線は、以下の引用発明の認定に関連する箇所として当審において付与したものである。
(1ア)「[0021]The first multi-frequency impedance controller (which is connected to the ceiling or sputter target) governs the ratio of the impedances to ground through the ceiling (sputter target) and the side wall. At low frequencies, this ratio affects the radial distribution of ion energy across the wafer. At very high frequencies, this ratio affects the radial distribution of ion density across the wafer.
[0022]The second multi-frequency impedance controller (which is connected to the cathode or wafer susceptor) governs the ratio of the impedances to ground through the cathode and the side wall. At low frequencies, this ratio affects the radial distribution of ion energy across the ceiling or sputter target. At very high frequencies, this ratio affects the radial distribution of ion density across ceiling or sputter target.
[0023]Each multi-frequency impedance controller governs the impedance to ground through the ceiling (in the case of the first controller) or through the cathode (in the case of the second controller) of different frequencies present in the plasma, including harmonics of the bias power frequency, harmonics of the source power frequency, inter-modulation products of the source and bias power frequencies and their harmonics, for example. The harmonics and intermodulation products may be selectively suppressed from the plasma by the multi-frequency impedance controller, in order to minimize inconsistencies in performance between reactors of the same design. It is our belief that some of these harmonics and intermodulation products are responsible for inconsistencies in reactor performance between reactors of identical design.」
(訳:「[0021]第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ(天井部またはスパッタターゲットに接続される)は、天井部(スパッタターゲット)を経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配する。低い周波数では、この割合は、ウエハ全体にわたるイオンエネルギーの半径方向分布に影響を与える。非常に高い周波数では、この割合は、ウエハ全体にわたるイオン密度の半径方向分布に影響を与える。
[0022]第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラ(カソードまたはウエハサセプタに接続される)は、カソードを経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配する。低い周波数では、この割合は、天井部またはスパッタターゲット全体にわたるイオンエネルギーの半径方向分布に影響を与える。非常に高い周波数では、この割合は、天井部またはスパッタターゲット全体にわたるイオン密度の半径方向分布に影響を与える。
[0023]各マルチ周波数インピーダンスコントローラは、例えば、バイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を含む、プラズマ中に存在する様々な周波数の、天井部を経由する(第1のコントローラの場合)またはカソードを経由する(第2のコントローラの場合)対グラウンド間インピーダンスを支配する。高調波および相互変調積は、同一設計のリアクタ間での性能の不一致を最小限に抑えるために、マルチ周波数インピーダンスコントローラによってプラズマから選択的に抑制されてよい。これらの高調波および相互変調積の一部が、同一設計の反応器間での反応器の性能の不一致に対する原因であると確信している。」

(1イ)「[0027] FIG.1 depicts a PEPVD plasma reactor in accordance with a first embodiment. The reactor includes a vacuum chamber 100 enclosed by a cylindrical side wall 102, a ceiling 104 and a floor 106. A workpiece support pedestal 108 within the chamber 100 has a support surface 108a for supporting a workpiece such as a semiconductor wafer 110. The support pedestal 108 may consist of an insulating (e.g., ceramic) top layer 112 and a conductive base 114 supporting the insulating top layer 112. A planar conductive grid 116 may be encapsulated within the top insulating layer 112 to serve as an electrostatic clamping (ESC) electrode. A D.C. clamping voltage source 118 is connected to the ESC electrode 116. An RF plasma bias power generator 120 of a bias frequency f_(b) may be coupled through an impedance match 122 to either the ESC electrode 116 or to the conductive base 114. The conductive base 114 may house certain utilities such as internal coolant channels (not shown), for example. If the bias impedance match 122 and bias generator 120 are connected to the ESC electrode 116 instead of the conductive base 114, then an optional capacitor 119 may be provided to isolate the impedance match 122 and RF bias generator 120 from the D.C. chucking power supply 118.
[0028]Process gas is introduced into the chamber 100 by suitable gas dispersing apparatus. For example, in the embodiment of FIG. 1, the gas dispersing apparatus consists of gas injectors 124 in the side wall 102, the gas injectors being supplied by a ring manifold 126 coupled to a gas distribution panel 128 that includes various supplies of different process gases (not shown). The gas distribution panel 128 controls the mixture of process gases supplied to the manifold 126 and the gas flow rate into the chamber 100. Gas pressure in the chamber 100 is controlled by a vacuum pump 130 coupled to the chamber 100 through a pumping port 132 in the floor 106.
[0029] A PVD sputter target 140 is supported on the interior surface of the ceiling 104. A dielectric ring 105 insulates the ceiling 104 from the grounded side wall 102. The sputter target 140 is typically a material, such as a metal, to be deposited on the surface of the wafer 110. A high voltage D.C. power source 142 may be coupled to the target 140 to promote plasma sputtering. RF plasma source power may be applied to the target 140 from an RF plasma source power generator 144 of frequency f, through an impedance match 146. A capacitor 143 isolates the RF impedance match 146 from the D.C. power source 142. The target 140 functions as an electrode that capacitively couples RF source power to plasma in the chamber 100.
[0030] A first (or “target”) multi-frequency impedance controller 150 is connected between the target 140 and RF ground. Optionally, a second (or “bias”) multi-frequency impedance controller 170 is connected between the output of the bias match 122 (i.e., to either the conductive base 114 or to the grid electrode 116, depending upon which one is driven by the bias generator 120). A process controller 101 controls the two impedance controllers 150, 170. The process controller can respond to user instructions to increase or decrease the impedance to ground of a selected frequency through either of the first and second multi-frequency impedance controllers 150, 170.」
(訳:[0027]図1は、第1の実施形態によるPEPVDプラズマリアクタを示す。このリアクタは、円筒状の側壁102によって密閉された真空チャンバ100、天井部104、および床部106を有する。チャンバ100内部の加工物支持体ペデスタル108は、半導体ウエハ110などの加工物を支持するための支持体表面108aを有する。支持体ペデスタル108は、絶縁性(例えば、セラミック)最上層112および絶縁性最上層112を支持する導電性基部114から構成されうる。平面の導電性グリッド116は、絶縁性最上層112内部に埋め込まれて、静電クランプ(ESC)電極として働きうる。DCクランプ電源118は、ESC電極116に接続される。バイアス周波数f_(b)のRFプラズマバイアス電源120は、インピーダンス整合器122を介して、ESC電極116または導電性基部114のいずれかに接続されうる。導電性基部114は、例えば、内部冷媒チャネル(図示せず)などのある一定のユーティリティを収容しうる。バイアスインピーダンス整合器122およびバイアス電源120が、導電性基部114の代わりにESC電極116に接続される場合、任意選択のコンデンサ119が、インピーダンス整合器122およびRFバイアス電源120をDCチャック用電源118から分離するために設けられうる。
[0028]プロセスガスは、好適なガス分散装置によってチャンバ100内に導入される。例えば、図1の実施形態において、ガス分散装置は、側壁102内のガス注入器124から構成され、このガス注入器は、様々なプロセスガスの種々の供給源(図示せず)を有するガス分配パネル128に結合するリング状連結管126によって供給される。ガス分配パネル128は、連結管126に供給されるプロセスガスの混合、およびチャンバ100内へのガス流量を制御する。チャンバ100内のガス圧は、床部106の排出口132を介してチャンバ100に結合する真空ポンプ130によって制御される。
[0029]PVDスパッタターゲット140は、天井部104の内部表面上に支持される。誘電体リング105は、天井部104を接地された側壁102から絶縁する。スパッタターゲット140は、典型的には、ウエハ110の表面に堆積される金属などの材料である。高電圧DC電源142は、プラズマスパッタリングを促進するためにターゲット140に接続されうる。RFプラズマソース電力は、インピーダンス整合器146を介して周波数fのRFプラズマソース電源144からターゲット140に印加されうる。コンデンサ143は、RFインピーダンス整合器146をDC電源142から分離する。ターゲット140は、チャンバ100内のプラズマにRFソース電力を容量的に接続する電極として機能する。
[0030]第1(又は“ターゲット”)のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150は、ターゲット140とRFグラウンド間に接続される。任意で、第2(又は“バイアス”)のマルチ周波数インピーダンスコントローラ170が、バイアス整合器122の出力部との間に(すなわち、バイアス電源120によってどちらが駆動されているかに応じて、導電性基部114またはグリッド電極116のいずれかに)接続される。プロセスコントローラ101は、2つのインピーダンスコントローラ150、170を制御する。プロセスコントローラは、ユーザの指示に応答して、第1および第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150、170のいずれかを介して、選択された周波数の対グラウンド間インピーダンスを増加または減少させることができる。」

(1ウ)FIG.1(図1)として以下の図面が記載されている。


上記図1は、本願に添付されている【図1】と符号もその説明も同じであり、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150が、グラウンドとスパッタターゲット140との間にインピーダンス整合器146と電気的に並列に接続されていることが、第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、グラウンドと導電性グリッド116との間にインピーダンス整合器122と電気的に並列に接続されていることが見て取れる。

(1エ)「[0037]Precise control of RF ground return paths through each of the multi-frequency impedance controllers at selected frequencies is attained by the process controller 101 individually governing each of the variable capacitors 158, 164 of the first multi-frequency impedance controller 150 and each of the variable capacitors 178, 184 of the second multi-frequency impedance controller 170.」
(訳:[0037]選択された周波数において、マルチ周波数インピーダンスコントローラのそれぞれを介するRFグラウンドリターン経路の精密な制御は、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150の各可変コンデンサ158、164、および第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラ170の各可変コンデンサ178、184を個別に支配するプロセスコントローラ101によって実現される。」

(1オ)FIG.3(図3)として、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150の以下の回路図が記載されており、そこには、可変コンデンサ164と直列に接続されたinductor(誘導性素子)166が記載されている。


(1カ)「[0041]FIG. 6 depicts a method of operating the reactor of FIGS. 1 through 3. In the method, the bias power current from the wafer is apportioned, as depicted in FIG. 7, between a center path to the target, I_(c), and an edge path I_(s), to the side wall. Also, source power current from the target is apportioned, as depicted in FIG. 8, between a center path to the wafer, i_(c), and an edge path i_(s), to the side wall. Thus, for RF source power at the source power frequency f_(s) from the target, the method includes establishing a center RF ground return path through the wafer via the bias impedance controller 170 and an edge RF ground return path through the side wall (block 200 of FIG. 6). For RF bias power at f_(b) from the wafer pedestal, the method includes establishing a center RF ground return path through the target via the target impedance controller 150 and an edge RF ground return path through the side wall (block 210 of FIG. 6).」
(訳:[0041]図6は、図1?3のリアクタを動作させる方法を示す。本方法において、ウエハからのバイアス電力の電流は、図7に示すように、ターゲットへの中央経路I_(c)と側壁へのエッジ経路I_(s)との間で配分される。また、ターゲットからのソース電力の電流は、図8に示すように、ウエハへの中央経路i_(c)と側壁へのエッジ経路i_(s)との間で配分される。したがって、ターゲットからのソース電力周波数f_(s)におけるRFソース電力に対しては、本方法は、バイアスのインピーダンスコントローラ170を介する、ウエハを経由する中央のRFグラウンドリターン経路、および側壁を経由するエッジのRFグラウンドリターン経路を確立するステップを含む(図6のブロック200)。ウエハペデスタルからのf_(b)におけるRFバイアス電力に対しては、本方法は、ターゲットのインピーダンスコントローラ150を介する、ターゲットを経由する中央のRFグラウンドリターン経路、および側壁を経由するエッジのRFグラウンドリターン経路を確立するステップを含む(図6のブロック210)。)

(1キ)「[0046]FIG. 11 illustrates a method for suppressing harmonics and/or intermodulation products or their harmonics at a chosen one of either the wafer surface or the target surface. Different frequencies may be suppressed at the different surfaces. This may be carried out, in one application, to optimize chamber matching among reactors of identical design, for example. In order to suppress at the wafer surface a particular frequency component corresponding to a certain harmonic or intermodulation product (block 300 of FIG. 11), plasma current components at that frequency are diverted to a surface other than the wafer surface, such as the side wall or the ceiling or target. In order to divert the undesired frequency component from the wafer to the ceiling, the impedance to ground at that particular frequency through the pedestal multi-frequency impedance controller 170 is increased (block 305 of FIG. 11).・・・
[0047]In order to suppress at the target surface a particular frequency component corresponding to a certain harmonic or intermodulation product (block 330), the impedance to ground at that particular frequency through the target multi-frequency impedance controller 150 is increased (block 335).」
(訳:[0046]図11は、ウエハ表面またはターゲット表面のいずれか選ばれた一方において、高調波および/または相互変調積、もしくはそれらの高調波を抑制する方法を示す。様々な周波数が、様々な表面において抑制されうる。これは、一応用例では、例えば、同一設計のリアクタ間でチャンバの一致を最適化するために実施することができる。ウエハ表面上で、ある高調波または相互変調積に相当する特定の周波数成分を抑制するために(図11のブロック300)、この周波数におけるプラズマ電流成分を、側壁または天井部もしくはターゲットなどのウエハ表面以外の表面に方向転換させる。望ましくない周波数成分をウエハから天井部に方向転換させるために、ペデスタルのマルチ周波数インピーダンスコントローラ170を介してこの特定の周波数における対グラウンド間インピーダンスを増加させる(図11のブロック305)。・・・
[0047]ターゲット表面において、ある高調波または相互変調積に対応する特定の周波数成分を抑制するために(ブロック330)、ターゲットのマルチ周波数インピーダンスコントローラ150を介してこの特定の周波数における対グラウンド間インピーダンスを増加させる(ブロック335)。」

(2)引用発明について
ア 記載事項の整理
(ア)上記摘記(1イ)及び(1ウ)のFIG.1には、PEPVDプラズマリアクタ全体の構成が記載されており、その下線部及びFIG.1から、
・「接地された側壁102によって密閉された真空チャンバ100、天井部104、および床部106を有し、チャンバ100内部の加工物支持体ペデスタル108は、半導体ウエハ110などの加工物を支持するための支持体表面108aを有し、その支持体ペデスタル108の絶縁性最上層112内部に平面の導電性グリッド116が埋め込まれ」ていること、
・「PVDスパッタターゲット140は、天井部104の内部表面上に支持され」ていること、
・「バイアス周波数f_(b)のRFプラズマバイアス電源120は、インピーダンス整合器122を介して、ESC電極116または導電性基部114のいずれかに接続され、RFプラズマソース電力は、インピーダンス整合器146を介して周波数f_(s)のRFプラズマソース電源144からターゲット140に印加され」ていること、
・「第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150が、グラウンドとスパッタターゲット140との間にインピーダンス整合器146と電気的に並列に接続され、第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、グラウンドと導電性グリッド116との間にインピーダンス整合器122と電気的に並列に接続され」ていることが記載されている。

(イ)上記摘(1ア)及び(1エ)?(1キ)には、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150及び第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラの構造及び機能について記載されており、その下線部から、
・「第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150には、各可変コンデンサ158、164、及び可変コンデンサ164と直列に接続されたinductor(誘導性素子)166があ」ること、
・「各可変コンデンサ158、164を個別に支配するプロセスコントローラ101がある」こと、
・「ウエハからのバイアス電力の電流は、ターゲットへの中央経路I_(c)と側壁へのエッジ経路I_(s)との間で配分され、また、ターゲットからのソース電力の電流は、ウエハへの中央経路i_(c)と側壁へのエッジ経路i_(s)との間で配分され、上記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、天井部(スパッタターゲット)を経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配し、上記第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、カソードを経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配し」ていること、
・「各マルチ周波数インピーダンスコントローラは、バイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイアス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を含む、プラズマ中に存在する様々な周波数の、天井部を経由する(第1のコントローラの場合)またはカソードを経由する(第2のコントローラの場合)対グラウンド間インピーダンスを支配することにより、同一設計のリアクタ間での性能の不一致を最小限に抑える」ことが記載されている。

イ 引用発明
してみれば、上記ア(ア)及び(イ)より、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「接地された側壁102によって密閉された真空チャンバ100、天井部104、および床部106を有し、チャンバ100内部の加工物支持体ペデスタル108は、半導体ウエハ110などの加工物を支持するための支持体表面108aを有し、その支持体ペデスタル108の絶縁性最上層112内部に平面の導電性グリッド116が埋め込まれ、
PVDスパッタターゲット140は、天井部104の内部表面上に支持され、
バイアス周波数f_(b)のRFプラズマバイアス電源120は、インピーダンス整合器122を介して、ESC電極116または導電性基部114のいずれかに接続され、RFプラズマソース電力は、インピーダンス整合器146を介して周波数f_(s)のRFプラズマソース電源144からターゲット140に印加され、
第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150が、グラウンドとスパッタターゲット140との間にインピーダンス整合器146と電気的に並列に接続され、第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、グラウンドとESC電極116との間にインピーダンス整合器122と電気的に並列に接続され、
上記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150には、各可変コンデンサ158、164、及び可変コンデンサ164と直列に接続されたinductor(誘導性素子)166があり、
各可変コンデンサ158、164を個別に支配するプロセスコントローラ101がある、
PEPVDプラズマリアクタであって、
ウエハからのバイアス電力の電流は、ターゲットへの中央経路I_(c)と側壁へのエッジ経路I_(s)との間で配分され、また、ターゲットからのソース電力の電流は、ウエハへの中央経路i_(c)と側壁へのエッジ経路i_(s)との間で配分され、上記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、天井部(スパッタターゲット)を経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配し、上記第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、カソードを経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配し、
各マルチ周波数インピーダンスコントローラは、バイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイアス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を含む、プラズマ中に存在する様々な周波数の、天井部を経由する(第1のコントローラの場合)またはカソードを経由する(第2のコントローラの場合)対グラウンド間インピーダンスを支配することにより、同一設計のリアクタ間での性能の不一致を最小限に抑える、
PEPVDプラズマリアクタ。」

2 引用文献2について
本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献2には、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審において付与したものである。
(2ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スパッタリング、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)及びドライエッチング等のプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関するものである。」

(2イ)「【0011】そこで、本発明は、プラズマ処理開始から終了までの間に高周波電源から電極対して実際に印加される高周波電力が処理毎に変動するのを防止し、処理毎にばらつきのないプラズマ処理を行うことができるプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供することを課題としている。」

(2ウ)「【0023】図1は、本発明のプラズマ処理方法が適用されるプラズマ処理装置(高周波マグネトロンスパッタリング装置)を示している。
【0024】このプラズマ処理装置は、チャンバー1、このチャンバー1上に設けられた中空円筒状のケース2、このケース2上に設けられたインピーダンス整合器3を備えている。
【0025】上記チャンバー1内の上部には電極(陰極)5が配設され、この電極5にターゲット6が固定されている。また、電極5のターゲット6とは反対側(背面側)にはマグネット7が配設されている。一方、チャンバー1内の底部には、上記電極5及びターゲット6と対向して被処理物ホルダー8が配設されている。この被処理物ホルダー8には、スパッタリングにより薄膜が形成される被処理物9が着脱可能に保持されている。この被処理物9はスパッタリング処理時に陽極として機能する。また、チャンバー1には、排気機構11及びガス供給源12が接続され、図示しない圧力制御機構によりチャンバー1内は所定圧力に維持される。さらにまた、チャンバー1は上記被処理物9を出入するための搬出入機構(図示せず。)を備えている。
【0026】高周波電源15(本実施形態では出力13.56Mhz)は、高周波ケーブル16を介して上記インピーダンス整合器3に接続されている。また、インピーダンス整合器3は、高周波印加用の細長い銅板18を介して電流・電圧検出装置17に接続されている。また、電流・電圧検出装置17は高周波印加用の細長い銅板18を介して電極5に接続されている。すなわち、高周波電源15と電極5の間に電流・電圧検出装置17が介設されている。
【0027】図2に示すように、上記インピーダンス整合器3は、検出回路21、整合回路22及び制御回路23を備えている。検出回路21は、高周波電源15から入力される高周波電力の電圧/電流比と、これらの電圧及び電流の位相差を検出する。整合回路22は、バリコン24a、24b及びリアクタ25を備えている。制御回路23は、検出回路21の検出値に応じて、電極5側(プラズマ負荷側)のインピーダンスが高周波電源15側のインピーダンス(本実施例では50Ω)と整合するように、バリコン24a,24bの駆動用モータ26a,26bを制御する。なお、インピーダンス整合器3は、電極5側のインピーダンスを高周波電源15側のインピーダンスに整合させることができれば、図2に示すものに限定されない。」

(2エ)図2として、以下の図面が記載されている。
【図2】


第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「天井部104」「を有し」「接地された側壁102によって密閉された真空チャンバ100」は、本願発明の「側壁および天井部を有し、前記側壁がRFグラウンドに結合するチャンバ」に相当する。

(2)引用発明の「半導体ウエハ110などの加工物を支持するための支持体表面108aを有し」「絶縁性最上層112内部に平面の導電性グリッド116が埋め込まれ」た「チャンバ100内部の加工物支持体ペデスタル108」は、本願発明の「天井部に面する支持体表面および前記支持体表面の下にあるバイアス電極を有するチャンバ内部の加工物支持体」に相当する。

(3)引用発明の「天井部104の内部表面上に支持され」る「PVDスパッタターゲット140」は、本願発明の「天井部にあるスパッタターゲット」に相当する。

(4)引用発明の「周波数f_(s)のRFプラズマソース電源144」、「バイアス周波数f_(b)のRFプラズマバイアス電源120」、「インピーダンス整合器146」及び「インピーダンス整合器122」は、順に、本願発明の「スパッタターゲットに結合する第1の周波数のRFソース電源」、「バイアス電極に結合する第2の周波数のRFバイアス電源」、「RFソース電源とスパッタターゲットとの間に結合された第1の整合システム」及び「RFバイアス電源と前記バイアス電極との間に結合された第2の整合システム」に相当している。

(5)マルチ周波数インピーダンスコントローラとは、複数の周波数の組においてインピーダンスが調節可能な機器であるから、引用発明の「グラウンドとスパッタターゲット140との間にインピーダンス整合器146と電気的に並列に接続され」る「第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150」、「グラウンドとESC電極116との間にインピーダンス整合器122と電気的に並列に接続され」る「第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラ170」は、各々、本願発明の「RFソース電源の出力において、第1の組の周波数において少なくとも第1の調節可能なインピーダンスを提供する第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラであって」「グラウンドと前記スパッタターゲットとの間に第1の整合システムと電気的に並列に接続される、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ」、「RFバイアス電源の出力において、第2の組の周波数において少なくとも第2の調節可能なインピーダンスを提供する第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラであって、グラウンドと前記バイアス電極との間に第2の整合システムと電気的に並列に接続される、第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラ」に相当する。

(6)可変コンデンサとは、2つの状態の少なくとも1つに置かれることで異なる容量となるものであるから、引用発明の「各可変コンデンサ158、164、及び可変コンデンサ164と直列に接続されたinductor(誘導性素子)166があ」る「第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ」と、本願発明の「モータによって2つの状態の少なくとも1つに置かれることが可能な可変コンデンサであって前記可変コンデンサの前記少なくとも2つの状態は異なる容量である可変コンデンサと、前記可変コンデンサと直列に接続された誘導性素子と、前記可変コンデンサの出力を決定するセンサ回路とを有し、前記センサ回路は、前記可変コンデンサの出力部において電圧を監視する電圧センサまたは該出力部において電流を監視する電流センサを有」する「第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ」とは、「2つの状態の少なくとも1つに置かれることが可能な可変コンデンサであって前記可変コンデンサの前記少なくとも2つの状態は異なる容量である可変コンデンサと、前記可変コンデンサと直列に接続された誘導性素子とを有」する「第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ」の点で共通する。

(7)引用発明の「各可変コンデンサ158、164を個別に支配するプロセスコントローラ101」は、本願発明の「可変コンデンサを所望の設定にする、プロセッサ」に相当するから、引用発明の「第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラ150」の「各可変コンデンサ158、164を個別に支配するプロセスコントローラ101」と、本願発明の「前記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラの前記可変コンデンサの前記モータを制御するプロセッサであって、前記センサ回路が前記プロセッサにフィードバックを提供し、前記プロセッサが前記モータを制御して、前記可変コンデンサを所望の設定にする、プロセッサ」とは、「前記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラの前記可変コンデンサを制御するプロセッサであって、前記プロセッサが制御して、前記可変コンデンサを所望の設定にする、プロセッサ」の点で共通する。

(8)引用発明の「ウエハからのバイアス電力の電流は、ターゲットへの中央経路I_(c)と側壁へのエッジ経路I_(s)との間で配分され、また、ターゲットからのソース電力の電流は、ウエハへの中央経路i_(c)と側壁へのエッジ経路i_(s)との間で配分され、上記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、天井部(スパッタターゲット)を経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配し、上記第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラが、カソードを経由する対グラウンド間インピーダンスと側壁を経由する対グラウンド間インピーダンスの割合を支配」することは、本願発明の「ウエハからのバイアス電力の電流が、前記スパッタターゲットへの中央経路I_(c)と前記側壁へのエッジ経路I_(s)との間で配分され、前記スパッタターゲットからのソース電力の電流が、前記ウエハへの中央経路icと前記側壁へのエッジ経路i_(s)との間で配分され、前記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラによって、前記I_(c)に関与する対グラウンド間インピーダンスと前記I_(s)に関与する対グラウンド間インピーダンスとの割合を、前記第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラによって、前記i_(c)に関与する対グラウンド間インピーダンスと前記i_(s)に関与する対グラウンド間インピーダンスとの割合を制御」することに相当する。

(9)引用発明の「同一設計のリアクタ間での性能の不一致」は、本願発明の「チャンバ間のばらつき」に相当し、引用発明の「同一設計のリアクタ間での性能の不一致を最小限に抑える」ための「各マルチ周波数インピーダンスコントローラは、バイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を含む、プラズマ中に存在する様々な周波数の、天井部を経由する(第1のコントローラの場合)またはカソードを経由する(第2のコントローラの場合)対グラウンド間インピーダンスを支配する」ことは、本願発明の「処理方策」といえるものである。

(10)引用発明の「PEPVDプラズマリアクタ」は、本願発明の「物理的気相堆積プラズマリアクタ」に相当する。

してみれば、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「側壁および天井部を有し、前記側壁がRFグラウンドに結合するチャンバと、
前記天井部に面する支持体表面および前記支持体表面の下にあるバイアス電極を有するチャンバ内部の加工物支持体と、
前記天井部にあるスパッタターゲットと、
前記スパッタターゲットに結合する第1の周波数のRFソース電源、および前記バイアス電極に結合する第2の周波数のRFバイアス電源と、
前記RFソース電源と前記スパッタターゲットとの間に結合された第1の整合システム及び前記RFバイアス電源と前記バイアス電極との間に結合された第2の整合システムと、
前記RFソース電源の出力において、第1の組の周波数において少なくとも第1の調節可能なインピーダンスを提供する第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラであって、2つの状態の少なくとも1つに置かれることが可能な可変コンデンサであって前記可変コンデンサの前記少なくとも2つの状態は異なる容量である可変コンデンサと、前記可変コンデンサと直列に接続された誘導性素子とを有し、
グラウンドと前記スパッタターゲットとの間に第1の整合システムと電気的に並列に接続される、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラと、
前記RFバイアス電源の出力において、第2の組の周波数において少なくとも第2の調節可能なインピーダンスを提供する第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラであって、グラウンドと前記バイアス電極との間に第2の整合システムと電気的に並列に接続される、第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラと、
前記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラの前記可変コンデンサを制御するプロセッサであって、前記プロセッサが制御して、前記可変コンデンサを所望の設定にする、プロセッサと、
を備える物理的気相堆積プラズマリアクタであって、
ウエハからのバイアス電力の電流が、前記スパッタターゲットへの中央経路I_(c)と前記側壁へのエッジ経路I_(s)との間で配分され、前記スパッタターゲットからのソース電力の電流が、前記ウエハへの中央経路i_(c)と前記側壁へのエッジ経路i_(s)との間で配分され、
前記第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラによって、前記I_(c)に関与する対グラウンド間インピーダンスと前記I_(s)に関与する対グラウンド間インピーダンスとの割合を、
前記第2のマルチ周波数インピーダンスコントローラによって、前記i_(c)に関与する対グラウンド間インピーダンスと前記i_(s)に関与する対グラウンド間インピーダンスとの割合を制御し、
チャンバ間のばらつきに対しての処理方策である、
物理的気相堆積プラズマリアクタ。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラについて、本願発明では、「可変コンデンサの出力を決定するセンサ回路とを有し、前記センサ回路は、前記可変コンデンサの出力部において電圧を監視する電圧センサまたは該出力部において電流を監視する電流センサを有」し、「センサ回路がプロセッサにフィードバックを提供し、プロセッサがモータを制御」し、そして「モータによって」可変コンデンサが可変されるものであるのに対し、引用発明では、そのような「センサ回路」があるのかどうか、そして、「モータによって」可変コンデンサが可変されるものであるのかどうか不明である点。

(相違点2)
処理方策について、本願発明が、「前記可変コンデンサの状態が、プロセスコントローラにおける処理方策と関連づけられており、前記処理方策が、チャンバ間のばらつきに対して調節された共通の処理方策である」であるのに対し、引用発明では、そのような処理方策であるかどうか不明である点。

2 相違点についての判断
(1)相違点1について
上記引用文献2には、スパッタリングにより薄膜が形成されるプラズマ処理装置(引用発明の「PEPVDプラズマリアクタ」に相当)において、検出回路、整合回路及び制御回路を備えているインピーダンス整合器(引用発明の「インピーダンスコントローラ」に相当)が電流・電圧検出装置に接続され、インピーダンス整合器の整合回路22は、バリコン24a、24b(引用発明の「可変コンデンサ」に相当)及びリアクタ25を備え、制御回路23(本願発明の「プロセッサ」に相当)は、検出回路21(本願発明の「センサ回路」に相当)の検出値に応じて、バリコン24a、24bの駆動用モータ26a、26bを制御することが記載されている。上記引用文献2の摘記(2イ)の図2より電流・電圧検出装置はバリコン24a、24bの出力部において電圧を監視する電圧センサまたは該出力部において電流を監視する電流センサといえ、それは、図2より検出回路につながるものである。そして、制御回路23が、検出回路21の検出値に応じて、バリコン24a、24bの駆動用モータ26a、26bを制御するということは、検出回路が制御回路にフィードバックを提供し、制御回路がモータを制御しているといえる。
してみれば、引用文献2には、PEPVDプラズマリアクタにおいて、可変コンデンサの出力を決定するセンサ回路を有し、それは可変コンデンサの出力部において電圧を監視する電圧センサまたは該出力部において電流を監視する電流センサを有し、センサ回路によりプロセッサにフィードバックを提供し、プロセッサがモータを制御し、そして、モータによって可変コンデンサが可変される技術事項が記載されているといえる。
引用文献1には、第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラの可変コンデンサをどのような手段により制御するのか具体的に記載されていなものの、引用発明及び引用文献2に記載されている技術とも、PEPVDプラズマリアクタにおいてインピーダンスコントローラによってインピーダンスを制御するという同じ技術分野のものであるから、引用発明の第1のマルチ周波数インピーダンスコントローラの可変コンデンサの容量を変える際に、上記引用文献2の記載の技術的事項をを採用して、上記相違点1の本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点2について
本願明細書には、本願発明の「チャンバ間のばらつき」について、
「各マルチ周波数インピーダンスコントローラは、例えば、バイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を含む、プラズマ中に存在する様々な周波数の、天井部を経由する(第1のコントローラの場合)またはカソードを経由する(第2のコントローラの場合)対グラウンド間インピーダンスを支配する。高調波および相互変調積は、同一設計のリアクタ間での性能の不一致を最小限に抑えるために、マルチ周波数インピーダンスコントローラによってプラズマから選択的に抑制されてよい。これらの高調波および相互変調積の一部が、同一設計のリアクタ間でのリアクタ性能の不一致に対する原因であると考えられる。」(【0034】)と記載されており、マルチ周波数インピーダンスコントローラによって、プラズマからバイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を選択的に抑制することによって、「チャンバ間のばらつき」を抑制していることが示されている。
さらに、請求人は、チャンバ間のばらつきを抑制することについて、平成29年6月16日付け意見書で「本願明細書の段落【0066】ないし【0068】では、例えば、チャンバ間の変動に対して調整される特定のレシピに関連する、所望の結果を提供するための可変コンデンサの制御を記載しています。」と記載していることから、その本願明細書の請求人の指摘箇所(下線は当審において付与した。)を参照するに、
「たとえ処理チャンバが同じ設計であっても、チャンバ間にばらつきがあることがあり、個々のパラメータ設定値が、同一の処理結果または同一の処理結果に近い処理結果を達成するために変わりうる。チャンバは、所望の結果のために特定の(共通の)方策を備えることができる。チャンバのコントローラは、標準的な方策における少なくとも1つのパラメータを調節して、既知のばらつきに対する所定の設定値を調節し所望の結果を達成しうる。・・・
一実施形態において、チャンバにおける可変コンデンサの設定値は、所望の処理結果に関連する最適なイオンエネルギー分布またはイオン密度分布のために所望のインピーダンス調節を実現するように、標準的な方策と比較してあるばらつきを有するように決定されうる。・・・
上記により、例えば特定の方策に関連する所望の共通の結果のために、可変コンデンサの設定値がチャンバ間のばらつきに対して調節されるが、それでもなお所望の結果を達成することが可能となる。・・・
次に、上記により、チャンバ間のばらつきを考慮して、所望のおよび所定の結果に基づいてチャンバのインピーダンスのチューニングが実現される。」(【0066】?【0069】と記載されており、本願発明の「チャンバ間のばらつきに対して調節された共通の」処理方策とは、チャンバ間のばらつきに対してインピーダンスをプロセスコントローラによってコントロールすることといえ、そのインピーダンスをコントロールするために可変コンデンサの状態(設定値)を変えることが、本願発明の「可変コンデンサの状態が、プロセスコントローラにおける処理方策と関連づけられて」いることといえる。
一方、引用発明も、「同一設計のリアクタ間での性能の不一致を最小限に抑える」ために、「各マルチ周波数インピーダンスコントローラは、バイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を含む、プラズマ中に存在する様々な周波数の、天井部を経由する(第1のコントローラの場合)またはカソードを経由する(第2のコントローラの場合)対グラウンド間インピーダンスを支配する」ものであり、そのインピーダンスをコントロールするための「各可変コンデンサ158、164を個別に支配するプロセスコントローラ101」もあるものである。
そうすると、引用発明の「マルチ周波数インピーダンスコントローラ150には、各可変コンデンサ158、164」があり、「各可変コンデンサ158、164を個別に支配するプロセスコントローラ101」があり、「同一設計のリアクタ間での性能の不一致を最小限に抑える」ために「各マルチ周波数インピーダンスコントローラは、バイアス電力周波数の高調波、ソース電力周波数の高調波、ソース電力周波数とバイアス電力周波数の相互変調積、およびそれらの高調波を含む、プラズマ中に存在する様々な周波数の、天井部を経由する(第1のコントローラの場合)またはカソードを経由する(第2のコントローラの場合)対グラウンド間インピーダンスを支配する」処理方策は、本願発明の「前記可変コンデンサの状態が、プロセスコントローラにおける処理方策と関連づけられており、前記処理方策が、チャンバ間のばらつきに対して調節された共通の処理方策」と技術的に差異があるとはいえない。
よって、相違点2については、実質的な相違点とはいえない。

3 請求人の主張について
当審の拒絶理由通知書で付記として、請求人の平成28年2月9日付け上申書での原査定の理由に対する主張は採用できないことを説示したが、その当審の拒絶理由通知書に対する平成29年6月16日付け意見書では、原査定の特許法第29条第2項に対して更なる主張はしていないことから、原査定の特許法第29条第2項に対しての請求人の主張は上記上申書での主張に留まるものである。
そこで、再度、上記上申書に記載の
「引用文献2及び3に記載された装置は、マルチ周波数のインピーダンス整合システムを教示または示唆していません。また、引用文献2及び3に記載された装置は、ターゲットに接続された単一のRF電源を組み込みます。これらの引用文献のいずれも、基板支持体を介して基板へ接続された第2のRF電源の可能性を考慮しておりません。この点において、2つの電源を有する本願発明への動機付けを与えません。
さらに、引用文献を組み合わせても、本願発明の特徴の一部である、2つの整合回路と2つのマルチ周波数インピーダンスコントローラとからなる構成であって、センサ回路、可変コンデンサと直列に接続された誘導性素子、プロセッサ及びモータと結びついた構成を開示も示唆もしておりません。」との主張について検討するに、引用文献2に記載の装置が単一のRF電源を前提にしたものとは解されないから、引用文献1及び2の技術を組み合わせる動機付けはあり、その結果、2つの整合回路と2つのマルチ周波数インピーダンスコントローラとからなる構成であって、センサ回路、可変コンデンサと直列に接続された誘導性素子、プロセッサ及びモータと結びついた構成となることは、上記1及び2で説示したとおりである。

4 小括
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について、さらには特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-03 
結審通知日 2017-08-08 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2012-556155(P2012-556155)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安齋 美佐子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 宮澤 尚之
三崎 仁
発明の名称 可変容量性チューナおよびフィードバック回路を有する物理的気相堆積  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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