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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K |
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管理番号 | 1336115 |
審判番号 | 不服2017-7247 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-19 |
確定日 | 2018-01-23 |
事件の表示 | 特願2013- 79737「可逆性感熱記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月27日出願公開、特開2014-203301、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2013年4月5日の出願であって,平成28年11月21日付けで拒絶理由が通知され,平成29年1月27日に意見書と手続補正書が提出されたが,平成29年2月15日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成29年5月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され,平成29年6月21日に前置報告がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-3に係る発明は,下記の引用文献1-2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2001-341427号公報 2.特開2001-287457号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 1.請求項1について 審判請求時の補正によって請求項1の「前記表基材は,3.0%以下のヘイズ値及び75μm?125μmの厚さを有し」を「前記表基材及び裏基材は,3.0%以下のヘイズ値及び75μm?125μmの厚さを有する透明ポリエチレンテレフタレート基材であり」とする補正は,補正前の請求項1に記載された「表基材」及び「裏基材」の構成を限定するものであって,同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また,請求項1に「前記コアシートは,ICチップを含むインレットの表裏にコア基材を,接着層を有さずに積層させて成り」という事項を追加する補正は,補正前の請求項1に記載された「コアシート」の構成を限定するものであって,同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 さらに,請求項1の「前記コアシートの前記表基材側には印刷層が形成されている」を「前記コアシートの前記表基材側表面には,印刷層が印刷されており,かつ,前記コアシートと前記表基材は前記印刷層を介して積層されている」とする補正は,補正前の請求項1に記載された「コアシート」,「表基材」及び「印刷層」の位置関係を限定するものであって,同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。 2.請求項2について 審判請求時の補正によって請求項2の「前記表基材は,3.0%以下のヘイズ値及び75μm?125μmの厚さを有し」を「前記表基材及び裏基材は,3.0%以下のヘイズ値及び75μm?125μmの厚さを有する透明ポリエチレンテレフタレート基材であり」とする補正は,補正前の請求項2に記載された「表基材」及び「裏基材」の構成を限定するものであって,同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また,請求項2に「前記コアシートは,ICチップを含むインレットの表裏にコア基材を,接着層を有さずに積層させて成り」という事項を追加する補正は,補正前の請求項2に記載された「コアシート」の構成を限定するものであって,同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 さらに,請求項2の「前記表基材の前記コアシート側には印刷層が形成されている」を「前記表基材の前記コアシート側表面には,印刷層が印刷されており,かつ,前記コアシートと前記表基材は前記印刷層を介して積層されている」とする補正は,補正前の請求項2に記載された「表基材」,「コアシート」及び「印刷層」の位置関係を限定するものであって,同法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。 そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-2に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は,平成29年5月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-2は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 積層されている保護層,可逆性感熱記録層,表基材,コアシート及び裏基材を含み,かつ680μm?840μmの厚さを有する非接触IC記録媒体であって, 前記保護層は,紫外線硬化性樹脂で形成されており, 前記表基材及び裏基材は,3.0%以下のヘイズ値及び75μm?125μmの厚さを有する透明ポリエチレンテレフタレート基材であり, 前記コアシートは,ICチップを含むインレットの表裏にコア基材を,接着層を有さずに積層させて成り, 前記コアシートの前記表基材側表面には,印刷層が印刷されており,かつ 前記コアシートと前記表基材は前記印刷層を介して積層されている, 非接触IC記録媒体。 【請求項2】 積層されている保護層,可逆性感熱記録層,表基材,コアシート及び裏基材を含み,かつ680μm?840μmの厚さを有する非接触IC記録媒体であって, 前記保護層は,紫外線硬化性樹脂で形成されており, 前記表基材及び裏基材は,3.0%以下のヘイズ値及び75μm?125μmの厚さを有する透明ポリエチレンテレフタレート基材であり, 前記コアシートは,ICチップを含むインレットの表裏にコア基材を,接着層を有さずに積層させて成り, 前記表基材の前記コアシート側表面には,印刷層が印刷されており,かつ, 前記コアシートと前記表基材は前記印刷層を介して積層されている, 非接触IC記録媒体。」 第5 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(なお,下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。 「【0014】 【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態につき説明する。図1は,本発明による可逆性記録シートの一実施例を示す断面図である。図1に示すように,可逆性記録シート(10)は,支持体(2)上に印刷層(6)を設けた印刷フィルム(12)の印刷層面側に,透明支持体(1)の表面上に可逆性記録層(3),保護層(4)を設けた可逆性記録フィルム(11)を,その透明支持体(1)の裏面側を向けて接着層(5)を介して一体化したものである。 【0015】図2は,本発明による可逆性記録媒体の一実施例を示す断面図である。図2に示すように,可逆性記録媒体(20)は,コアシート(7)の片面上に,図1に示す可逆性記録シート(10)を,その支持体(2)側を向けて配し,また,コアシート(7)の他面上に,印刷フィルム(12)を構成する支持体(2)と同一の基材及び可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と同一の基材を積層し,これらを接着層(5)を介して一体化したものである。 【0016】コアシート(7)の他面上に積層した印刷フィルム(12)を構成する支持体(2)と同一の基材は,印刷フィルム(12)を構成する支持体(2)と,熱収縮を相殺するように,その延伸配向を合わせあり,また,可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と同一の基材は,可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と,熱収縮を相殺するように,その延伸配向を合わせてある。 【0017】本発明による可逆性記録シート,及び可逆性記録媒体は,上記のように,可逆性記録を行う可逆性記録層(3)と印刷層(6)の間に透明支持体(1)を介させることで,印刷層を構成する顔料或いは染料,バインダーの影響,及び基材の印刷層の有無による熱伝導性,蓄熱性の影響を受けることのない,すなわち,印字消去の特性が安定した可逆性記録シート,及び可逆性記録媒体となる。また,透明支持体(1)の光透過度は50%以上であるので,可逆性記録層(3)を通して印刷層(6)を観視できるので意匠性の優れたものとなる。 【0018】また,図2に示す可逆性記録媒体(20)は,コアシート(7)の他面上に熱収縮を相殺するように,その延伸配向を合わせて支持体(2)と同一の基材および透明支持体(1)と同一の基材を積層してあるので,印字消去の特性が安定し,且つ,反りや変形のない可逆性記録媒体となる。尚,支持体(2)と透明支持体(1)とを積層する順序を変えてもよい。 【0019】図3は,本発明による可逆性記録媒体の他の例を示す断面図である。図3に示すように,可逆性記録媒体(30)は,図2に示す可逆性記録媒体(20)の内部のコアシート(7)に電子記録部(8)として非接触ICインレットを設けたものである。電子記録部(8)は,非接触ICインレット以外に接触型ICチップを可逆性記録媒体の表面に設けることも可能である。また,磁気記録部として磁気記録層を可逆性記録媒体の表面に設けることも可能である。 【0020】透明支持体(1)は,耐熱性,引っ張り強度等に優れた強靱なプラスチックフィルムが適用できる。例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム,ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム,ポリイミド(PI)フィルム,ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム等のフィルムが使用できる。これらフィルムは加工性,操作性を考慮し,物理特性の優れた厚み8.5μmから300μmの範囲から選択され,好ましくは8.5μmから250μm前後の厚みが用いられる。透明支持体(1)の光透過度は凡そ50%以上のものが好ましい。凡そ50%以下においては,印刷層の視認性が悪化したものとなる。」 「【0022】可逆性記録層(3)は,例えば,ロイコ化合物の場合,少なくともロイコ化合物,該ロイコ化合物と反応して発色または消色させる顕減色剤,樹脂バインダーよりなる結着剤で構成したものであり,バインダー中に分散されたロイコ化合物と顕減色剤の可逆的な発色反応を利用した熱発色性組成物である。この結着剤は,印刷法,コーティング法等により膜厚4μm?20μm程度に設けることができる。可逆性記録層の上にロイコ化合物,顕減色剤がブリードアウトするのを防ぐ中間層を設けてもよい。」 「【0032】本発明における保護層(4)は,可逆性記録層を保護する役割を果たすものであり,印刷法,コーティング法等により,膜厚0.2?20μmに設けることができる。使用される樹脂としては,例えば,アクリル系樹脂,ウレタン系樹脂,塩化ビニル系樹脂-酢酸ビニル共重合樹脂,ポリエステル系樹脂,メラミン系樹脂,エポキシ系樹脂,ポリスチレン系樹脂,ポリイミド系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂,紫外線又は電子線硬化樹脂を単独或いは混合して用いられる。」 「【0043】<実施例2> (可逆性記録媒体の作製)図2に示す本発明による可逆性記録媒体の一実施例の断面図を用いて詳しく説明する。厚み25μmの光透過度80%以上の透明ポリエチレンテレフタレートフィルムから成る透明支持体(1)に可逆性記録層塗料をバーコート法にて10μm塗布し,更に可逆性記録層塗料の樹脂のみを中間層として3μm塗布し,可逆性記録層(3)を設けた。この層上に保護層塗料をグラビア印刷法にて5μm塗布し,保護層(4)を設け可逆性記録フィルム(11)を作製した。得られた可逆性記録フィルム(11)の透明支持体(1)の裏面に接着層塗料をグラビア印刷法にて10μm塗布し,接着層(5)を設けた。 【0044】一方,厚み188μmの白色ポリエチレンテレフタレートフィルムから成る支持体(2)にスクリーン印刷法にて膜厚3μmの印刷層(6)を設け印刷フィルム(12)を作製した。得られた印刷フィルム(12)の裏面に接着層塗料をグラビア印刷法にて10μm塗布し,接着層(5)を設けた。更に,透明支持体,および支持体に接着層塗料をグラビア印刷法にて10μm塗布し,接着層を設けた。 【0045】接着層を設けた,これら可逆性記録フィルム,印刷フィルム,厚み85μmのPET-Gから成るコアシート,支持体,透明支持体を順次積層し,当業者に公知な熱プレス法を用いて,プレス温度130℃にて一体化し可逆性記録媒体(20)を得た。得られた可逆性記録媒体の可逆性記録層はサーマルヘッド(京セラ製薄膜ヘッド,8dot/mm,1000Ω)を用いて,印加エネルギー0.4mJ/dotで印字が可能であった。さらに約90℃の熱板(ホットスタンプ:セラミック製,面積1.0cm×2.5cm)を9.8mPaで1秒間押し当てることにより印字データの消去が可能であった。この印字消去の特性は印刷層及び支持体の影響を受けず安定していた。 【0046】<実施例3>図3に示す本発明による可逆性記録媒体の他の例の断面図を用いて詳しく説明する。上記,実施例2に示したコアシート(7)は予め120μmのPET-Gを用い,電子記録部(8)として厚み100μmの非接触型ICインレットを用い,それぞれ積層して作製した。実施例2で作製した,接着層を設けた可逆性記録フィルム,印刷フィルム,コアシート,支持体,透明支持体をそれぞれ積層し,当業者に公知な熱プレス法を用いて,プレス温度130℃にて一体化し可逆性記録媒体(30)を得た。 」 上記記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「支持体(2)上に印刷層(6)を設けた印刷フィルム(12)の印刷層面側に,透明支持体(1)の表面上に可逆性記録層(3),保護層(4)を設けた可逆性記録フィルム(11)を,その透明支持体(1)の裏面側を向けて接着層(5)を介して一体化した可逆性記録シート(10)を(【0014】),コアシート(7)の片面上に,その支持体(2)側を向けて配し,また,コアシート(7)の他面上に,印刷フィルム(12)を構成する支持体(2)と同一の基材及び可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と同一の基材を積層し,これらを接着層(5)を介して一体化したものであって(【0015】), 透明支持体(1)は,耐熱性,引っ張り強度等に優れた強靱なプラスチックフィルム(例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム,ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム,ポリイミド(PI)フィルム,ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム等)が使用でき,好ましくは8.5μmから250μm前後の厚みが用いられ(【0020】), 可逆性記録層(3)は,少なくともロイコ化合物,該ロイコ化合物と反応して発色または消色させる顕減色剤,樹脂バインダーよりなる結着剤で構成したものであり,バインダー中に分散されたロイコ化合物と顕減色剤の可逆的な発色反応を利用した熱発色性組成物であり(【0022】), 保護層(4)は,公知の熱可塑性樹脂,紫外線又は電子線硬化樹脂(例えば,アクリル系樹脂,ウレタン系樹脂,塩化ビニル系樹脂-酢酸ビニル共重合樹脂,ポリエステル系樹脂,メラミン系樹脂,エポキシ系樹脂,ポリスチレン系樹脂,ポリイミド系樹脂等)を単独或いは混合して用いられ(【0032】), コアシート(7)は,120μmのPET-Gを用い,電子記録部(8)として厚み100μmの非接触型ICインレットを用い,それぞれ積層したものである,可逆性記録媒体(30)(【0019】,【0046】)。」 2.引用文献2について また,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0048】の記載からみて,当該引用文献2には,「可逆性感熱記録層2上に紫外線硬化型樹脂で構成される保護層8を設ける」という技術的事項が記載されていると認められる。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)引用発明との対比・判断 ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 (ア)引用発明の「保護層(4)」は,本願発明1の「保護層」に相当する。 (イ)引用発明の「可逆性記録層(3)」は,「熱発色性組成物」であるから,本願発明1の「可逆性感熱記録層」に相当する。 (ウ)引用発明では,「コアシート(7)」の片面上に「透明支持体(1)」を含む「可逆性記録フィルム(11)」が配され,他面上に「可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と同一の基材」が積層されており,これら「透明支持体(1)」,「可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と同一の基材」は,それぞれ本願発明1の「表基材」,「裏基材」に相当する。 そして,引用発明では,「透明支持体(1)」として「ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム」が使用できる。そうすると,引用発明の「透明支持体(1)」及び「可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と同一の基材」と本願発明1の「表基材」及び「裏基材」とは,いずれも「透明ポリエチレンテレフタレート基材」である点で共通している。 (エ)インレットがICチップとアンテナとからなるという技術常識に鑑みれば,引用発明の「非接触型ICインレット」が「非接触ICチップ」を含むことは明らかである。また,引用発明の「コアシート(7)」は,「PET-G」と「電子記録部(8)」としての「非接触型ICインレット」とを積層したものである。 そうすると,引用発明の「非接触ICインレット」,「PET-G」は,それぞれ本願発明1の「ICチップを含むインレット」,「コア基材」に相当し,引用発明の「コアシート(7)」と本願発明1の「コアシート」とは,「ICチップを含むインレットにコア基材を積層して成」る点で共通している。 (オ)引用発明において,「非接触ICインレット」を含む「可逆性記録媒体(30)」は,本願発明1の「非接触IC記録媒体」に相当する。 そして,引用発明では,「保護層(4)」,「可逆性記録層(3)」,「透明支持体(1)」,「コアシート(7)」,「可逆性記録フィルム(11)を構成する透明支持体(1)と同一の基材」が積層されているから,引用発明と本願発明1とは,「積層されている保護層,可逆性感熱記録層,表基材,コアシート及び裏基材を含む非接触IC記録媒体」という点で共通している。 (カ)引用発明では,「支持体(2)上に印刷層(6)を設けた印刷フィルム(12)の印刷層面側に,透明支持体(1)の表面上に可逆性記録層(3),保護層(4)を設けた可逆性記録フィルム(11)を,その透明支持体(1)の裏面側を向けて接着層(5)を介して一体化した可逆性記録シート(10)」が,「コアシート(7)の片面上に,その支持体(2)側を向けて配」されており,「印刷層(6)」は,「コアシート(7)」と「透明支持体(1)」との間に位置して積層されているといえるから,引用発明と本願発明1とは,「前記コアシートと前記表基材は前記印刷層を介して積層されている」という点で一致している。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「積層されている保護層,可逆性感熱記録層,表基材,コアシート及び裏基材を含む非接触IC記録媒体であって, 前記保護層は,紫外線硬化性樹脂で形成されており, 前記表基材及び裏基材は,透明ポリエチレンテレフタレート基材であり, 前記コアシートは,ICチップを含むインレットにコア基材を積層させて成り, 前記コアシートと前記表基材は前記印刷層を介して積層されている, 非接触IC記録媒体。」 (相違点) (相違点1)本願発明1の「非接触IC記録媒体」は,「680μm?840μmの厚さを有する」のに対して,引用発明では,「可逆性記録媒体(20)」の厚さが特定されていない点。 (相違点2)一致点の「前記表基材及び裏基材は,透明ポリエチレンテレフタレート基材であり」に関して,本願発明1の「表基材及び裏基材」は,「3.0%以下のヘイズ値及び75μm?125μmの厚さを有する透明ポリエチレンテレフタレート基材であ」るのに対して,引用発明では,「透明支持体(1)」のヘイズ値は特定されておらず,また,厚みは「好ましくは8.5μmから250μm前後」である点。 (相違点3)一致点の「前記コアシートは,ICチップを含むインレットにコア基材を積層させて成り」に関して,本願発明1の「コアシート」は,「ICチップを含むインレットの表裏にコア基材を,接着層を有さずに積層させて成」るのに対して,引用発明では,「コアシート(7)」が「非接触型ICインレット」の「表裏」に「PET-G」を積層させて成るか否か,及び,接着層を有するか否かが不明な点。 (相違点4)本願発明1は,「前記コアシートの前記表基材側表面には,印刷層が印刷されて」いるのに対して,引用発明では,「印刷フィルム(12)」を構成する「支持体(2)」上に「印刷層(6)」が設けられている点。 イ 判断 事案に鑑み,まず上記相違点4について検討する。 引用発明は,「支持体(2)上に印刷層(6)を設けた印刷フィルム(12)の印刷層面側に,透明支持体(1)の表面上に可逆性記録層(3),保護層(4)を設けた可逆性記録フィルム(11)を,その透明支持体(1)の裏面側を向けて接着層(5)を介して一体化した可逆性記録シート(10)」を含むものであるところ,この「支持体(2)上に印刷層(6)を設けた印刷フィルム(12)」の採用に代えて,「コアシート(7)」の「透明支持体(1)(可逆性記録フィルム(11))」側表面に印刷層を印刷して形成することは,上記引用文献1-2には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明1は,相違点1-3を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2について (1)引用発明との対比・判断 ア 対比 本願発明2と引用発明との一致点及び相違点1-3は,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点1-3と同一である。 (相違点4)本願発明2は,「前記表基材の前記コアシート側表面には,印刷層が印刷されて」いるのに対して,引用発明では,「印刷フィルム(12)」を構成する「支持体(2)」上に「印刷層(6)」が設けられている点。 イ 判断 事案に鑑み,まず上記相違点4について検討する。 引用発明は,「支持体(2)上に印刷層(6)を設けた印刷フィルム(12)の印刷層面側に,透明支持体(1)の表面上に可逆性記録層(3),保護層(4)を設けた可逆性記録フィルム(11)を,その透明支持体(1)の裏面側を向けて接着層(5)を介して一体化した可逆性記録シート(10)」を含むものであるところ,この「支持体(2)上に印刷層(6)を設けた印刷フィルム(12)」の採用に代えて,「可逆性記録フィルム(11)」を構成する「透明支持体(1)」の「コアシート(7)」側表面に印刷層を印刷して形成することは,上記引用文献1-2には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。 したがって,本願発明2は,相違点1-3を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定について 理由(特許法第29条第2項)について 本願発明1は,「前記コアシートの前記表基材側表面には,印刷層が印刷されて」いるという事項,本願発明2は,「前記表基材の前記コアシート側表面には,印刷層が印刷されて」いるという事項を有しており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-01-09 |
出願番号 | 特願2013-79737(P2013-79737) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06K)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 梅沢 俊 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
松田 岳士 山澤 宏 |
発明の名称 | 可逆性感熱記録媒体 |
代理人 | 胡田 尚則 |
代理人 | 出野 知 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三間 俊介 |
代理人 | 古賀 哲次 |