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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C04B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C04B |
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管理番号 | 1336168 |
異議申立番号 | 異議2016-701171 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-12-22 |
確定日 | 2017-12-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5948334号発明「界面活性剤被覆半水石膏およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5948334号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第5948334号の請求項1?6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5948334号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、2012年8月21日(優先権主張、2011年9月8日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成28年6月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人高橋昌嗣により特許異議の申立てがされ、平成29年3月21日付けで取消理由が通知され、平成29年5月22日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年6月29日付けで意見書が提出され、平成29年7月13日付けで取消理由が通知され、平成29年9月14日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年11月10日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成29年9月14日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、本件訂正請求により、平成29年5月22日付けの訂正(以下、「先の訂正」という。)の請求は取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載された「0.01?1重量部」を、「0.25?1重量部」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に記載された「該界面活性剤被覆半水石膏を300℃まで加熱したとき」を、「該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱したとき」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に記載された「40重量%以上である」を、「40重量%以上且つ半水石膏に対し0.2重量%以上でありそして上記界面活性剤がポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種である」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2に記載された「0.1?0.6重量部」を、「0.25?0.6重量部」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3に記載された「上記界面活性剤が、ポリオキシアルキレンの硫酸エステル、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、グリセリンの脂肪酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種である、」を、 「上記ポリオキシアルキレンの硫酸エステルが下記式(S1) R^(1)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-SO_(3)^(-)M^(+) (S1) (上記式(S1)において、R^(1)は炭素数12?18のアルキル基であり、M^(+)はアルカリ金属イオンまたは第3級アンモニウムイオンであり、mは2?30の整数である。) で表される界面活性剤であり、上記ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤が下記式(S2) R^(2)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-H (S2) (上記式(S2)において、R^(2)は炭素数12?18のアルキル基またはフェニル基であり、nは2?30の整数である。) で表される界面活性剤である、」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0003】の下から2パラグラフ目、段落【0005】の1パラグラフ目及び9パラグラフ目に記載された「0.01?1重量部」を、「0.25?1重量部」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0003】の下から2パラグラフ目に記載された「該界面活性剤被覆半水石膏を300℃まで加熱したとき」を、「該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱したとき」に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0003】の下から2パラグラフ目に記載された「40重量%以上である」を、「40重量%以上且つ半水石膏に対し0.2重量%以上でありそして上記界面活性剤がポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種である」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の段落【0005】の2パラグラフ目に記載された「例えばポリオキシアルキレンの硫酸エステル、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、グリセリンの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤などを挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種であることができる。」を、「ポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤のうちから選択される少なくとも1種である。」に訂正する。 (10)訂正事項10 明細書の段落【0005】の4及び5パラグラフ目の「上記高級脂肪酸のアルカリ金属塩のうちの高級脂肪酸部分の炭素数は、・・・グリセリンモノステアリン酸エステルなどを挙げることができる。」との記載を削除する。 (11)訂正事項11 明細書の段落【0005】の9パラグラフ目に記載された「0.1?0.6重量部」を、「0.25?0.6重量部」に訂正する。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1及び4について ア 訂正事項1は、請求項1に記載された「界面活性剤」の「被覆量」を「0.01?1重量部」から「0.25?1重量部」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項4は、請求項2に記載された「界面活性剤」の「被覆量」を「0.1?0.6重量部」から「0.25?0.6重量部」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項1及び4に関連する記載として、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0005】の実施例1には、「界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量は0.25重量%」であることが記載されているから、訂正事項1及び4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項1及び4は、「界面活性剤」の「被覆量」を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2は、請求項1に記載された「界面活性剤被覆半水石膏」を「加熱したとき」の条件について、「パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】には、「界面活性剤被覆半水石膏を300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合」を求めるための「熱重量分析の条件」として、「昇温速度:20℃/分」、「パージガス種類:空気」及び「パージガス流速:100ml(STP)/分」とすることが記載されているから、訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項2は、「界面活性剤被覆半水石膏」を「加熱したとき」の条件を特定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について ア 訂正事項3は、請求項1に記載された「300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合」を「半水石膏に対し0.2重量%以上」に限定し、さらに、「界面活性剤被覆半水石膏」の「界面活性剤」を「ポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種である」ことに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項3に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】の実施例1には、「界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量は0.25重量%」であることが記載され、また、【表1】の「実施例1」には、被覆量が0.25重量%であり、300℃までの残存割合が80%であることが記載されて、界面活性剤の残存割合を半水石膏に対して0.2重量%(=0.25重量%×0.80)であることは記載されている。また、段落【0005】には、「本発明の界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の種類としては、例えばポリオキシアルキレンの硫酸エステル、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、グリセリンの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤などを挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種であることができる。」と記載されている。 よって、訂正事項3は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項3は、「界面活性剤」及びその「残存割合」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項5について ア 訂正事項5は、請求項3に記載された「界面活性剤」を、 「R^(1)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-SO_(3)^(-)M^(+) (S1) (上記式(S1)において、R^(1)は炭素数12?18のアルキル基であり、M^(+)はアルカリ金属イオンまたは第3級アンモニウムイオンであり、mは2?30の整数である。)」で表される「ポリオキシアルキレンの硫酸エステル」、及び、「R^(2)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-H (S2) (上記式(S2)において、R^(2)は炭素数12?18のアルキル基またはフェニル基であり、nは2?30の整数である。)」で表される「ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項5に関連する記載として、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0005】には、「上記ポリオキシアルキレンの硫酸エステルとしては、ポリオキシエチレンの硫酸エステルが好ましく、例えば下記式(S1) R^(1)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-SO_(3)^(-)M^(+) (S1) (上記式(S1)において、R^(1)は炭素数12?18のアルキル基であり、M^(+)はアルカリ金属イオンまたは第3級アンモニウムイオンであり、mは2?30の整数である。)」及び「上記ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤が好ましく、例えば下記式(S2) R^(2)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-H (S2) (上記式(S2)において、R^(2)は炭素数12?18のアルキル基またはフェニル基であり、nは2?30の整数である。)」と記載されているから、訂正事項5は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、新規事項の追加に該当しない。 ウ 訂正事項5は、「ポリオキシアルキレンの硫酸エステル」及び「ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項6?11について 訂正事項6?11は、訂正事項1?5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるための訂正であるから、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 そして、訂正事項6?11は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 (5)一群の請求項について 訂正前の請求項2?6が、訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正事項1?5の特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1?6について請求されたものである。また、訂正事項6?11の明細書の訂正は、この一群の請求項の全てについて請求されたものである。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1?6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 半水石膏100重量部に対して0.25?1重量部の被覆量で界面活性剤が被覆している界面活性剤被覆半水石膏であって、 該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上且つ半水石膏に対し0.2重量%以上でありそして上記界面活性剤がポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、前記界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項2】 上記界面活性剤の被覆量が半水石膏100重量部に対して0.25?0.6重量部である、請求項1に記載の界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項3】 上記ポリオキシアルキレンの硫酸エステルが下記式(S1) R^(1)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-SO_(3)^(-)M^(+) (S1) (上記式(S1)において、R^(1)は炭素数12?18のアルキル基であり、M^(+)はアルカリ金属イオンまたは第3級アンモニウムイオンであり、mは2?30の整数である。) で表される界面活性剤であり、上記ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤が下記式(S2) R^(2)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-H (S2) (上記式(S2)において、R^(2)は炭素数12?18のアルキル基またはフェニル基であり、nは2?30の整数である。) で表される界面活性剤である、請求項1または2に記載の界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項4】 累積細孔容積が0.5mL/g以下である、請求項1または2に記載の界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項5】 請求項1に記載の界面活性剤被覆半水石膏の製造方法であって、 少なくとも二水石膏と界面活性剤とを含有する組成物を110?200℃で加熱する工程を経ることを特徴とする、前記方法。 【請求項6】 上記二水石膏が、天然石膏、排煙脱硫石膏および晶析工程を経た回収二水石膏よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の方法。 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1?6に係る特許に対して、特許異議申立人の申立理由を全て採用し、平成29年3月21日付けの取消理由1?3を通知した。また、先の訂正後の請求項1?6に係る特許に対して、平成29年6月29日付けの意見書の特許異議申立人の主張を踏まえて、平成29年3月21日付けの取消理由4を通知した。そして、これら取消理由1?4の要旨は次のとおりである。 (1)取消理由1 請求項1、2及び5に係る発明は、甲第1号証(米国特許第2460267号明細書)に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、請求項1?6に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証(米国特許第1995963号明細書)及び甲第3号証(特開2010-13304号公報)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (2)取消理由2 請求項1に記載された「該界面活性剤被覆半水石膏を300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上であること」との発明特定事項は、「300℃まで加熱」することの測定条件が特定されていないため、一定の特性を示しているといえないから、請求項1に係る発明は明確でない。よって、請求項1?6に係る発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (3)取消理由3 請求項1?6に係る発明は、界面活性剤の種類、及び、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合を測定するための昇温条件である昇温速度が特定されていないため、発明の詳細な説明に記載され、当業者が「半水石膏と水とを混合して石膏スラリーとした後、型枠への流し込み作業のために十分な程度に長い誘導時間と、作業効率の観点から十分に短い硬化時間とが両立された半水石膏を提供する」(段落【0003】)との課題を解決できると認識できる範囲のものといえない。よって、請求項1?6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (4)取消理由4 請求項1?6に係る発明は、半水石膏に強い吸着力で被覆した界面活性剤の量、及び、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合を測定するための昇温条件であるパージガス雰囲気やパージガス流速が特定されていないため、発明の詳細な説明に記載され、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものといえない。よって、請求項1?6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3 甲号証について (1)甲第1号証(米国特許第2460267号明細書)の記載事項 甲第1号証には、以下の事項が記載されている。 ア 「A process of producing plaster of Paris comprising mixing ground gypsum with water and substantially one part per thousand of a water-soluble salt of a water-insoluble fatty acid having in its molecule only one carboxyl group, heating the mixture thus obtained with agitation in a closed vessel at a temperature between 125℃. and 160℃. until the gypsum is converted into plaster of Paris consisting mainly of hemihydrate crystals of squat shape, the proportion of water being sufficient to maintain a liquid phase throughout the treatment.」(請求項1、当審仮訳「粉砕石膏と、処理の間液相を維持するのに十分な水と、実質的に0.1%の、分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸の水溶性塩とを混合し、得られた混合物を密閉容器中、撹拌しながら125℃?160℃の温度で、石膏が不規則な形状の半水水和物を主成分とする焼石膏となるまで加熱する半水石膏の製造方法。」) イ 「Examples of fatty acids which I have used with very good results are palmitic acid, linoleic acid, ricinoleic acid, sulphoricinoleic acid. glycocholic acid and lauroglycoholic acid, each of these contains a single carboxyl group.」(第1頁右欄第9?13行、当審仮訳「良い結果が得られた脂肪酸の例としては、パルミチン酸、リノール酸、リシノール酸、スルホリシノール酸、グリココール酸およびラウログリココール酸が挙げられ、これらはそれぞれ1つのカルボキシル基を含有する。」) ウ 「The quantity of catalyst required for producing good results is generally not more than 0.1% by weight of the gypsum, and may be substantially less.」(第1頁右欄第14?17行、当審仮訳「良い結果が得られるための触媒の必要な量は通常、石膏に対して0.1重量%を超えず、実質的に少なくてよい。」) (2)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、上記(1)アによれば、粉砕石膏と、十分な水と、分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸の水溶性塩の混合物を、密閉容器中125℃?160℃の温度で加熱することで製造した半水石膏が記載されているといえ、上記(1)ウによれば、1個しか有しない水不溶性脂肪酸は、石膏に対して0.1重量%以下で含有しているといえる。 これら記載を整理すると、甲第1号証には、「粉砕石膏と、十分な水と、分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸の水溶性塩を石膏に対して1重量%以下で混合した混合物を、密閉容器中125℃?160℃の温度で加熱して得られた半水石膏」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 4 取消理由に対する当審の判断 (1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号及び第2項)について ア 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は「半水石膏」である点で一致しているが、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件発明1の「半水石膏」は、「界面活性剤被覆半水石膏」であって、「半水石膏100重量部に対して0.25?1重量部の被覆量で界面活性剤が被覆している」のに対して、甲1発明の「半水石膏」は、その製造工程で「分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸の水溶性塩」を混合することを特定しているものの、「分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸の水溶性塩」が「半水石膏」を被覆していることは明らかでない点。 (相違点2) 本件発明1の「界面活性剤」は、「該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上且つ半水石膏に対して0.2重量%以上」であるのに対して、甲1発明は、そのような特定がなされていない点。 (相違点3) 本件発明1の「界面活性剤」は、「ポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種である」のに対して、甲1発明は、「分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸の水溶性塩」である点。 そして、上記相違点のうち、少なくとも相違点3は、「界面活性剤」の種類が異なるから、実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に記載する発明に該当しない。 次に、本件発明1が甲第1証に記載された発明及び甲第1?3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるかを検討する。 上記相違点3について検討すると、甲第1号証には、上記3(1)イのとおり、「分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸」として「パルミチン酸、リノール酸、リシノール酸、スルホリシノール酸、グリココール酸およびラウログリココール酸」の脂肪酸は例示されているものの、「ポリオキシアルキレンの硫酸エステル」あるいは「ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤」を使用することは記載も示唆もなされていない。 また、甲第2号証及び甲第3号証にも、「界面活性剤被覆半水石膏」の「界面活性剤」として、「ポリオキシアルキレンの硫酸エステル」あるいは「ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤」を使用することは記載も示唆もなされていない。 そうしてみると、甲1発明において、「分子中にカルボキシル基を1個しか有しない水不溶性脂肪酸の水溶性塩」に代えて、「ポリオキシアルキレンの硫酸エステル」あるいは「ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤」を使用することは、甲第1?3号証に記載された技術的事項を参酌しても当業者が容易に想到し得るものでない。 したがって、相違点1及び2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1証に記載された発明及び甲第1?3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえず、その特許が特許法第29条第2項の規定を違反しているといえない。 イ 本件発明2?6について 本件発明2?6は、本件発明1を減縮するものである。 したがって、本件発明2及び5は、上記アでの検討と同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に記載する発明に該当しない。 また、本件発明2?6は、上記アでの検討と同様に、甲第1証に記載された発明及び甲第1?3号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえず、その特許が特許法第29条第2項の規定を違反しているといえない。 (2)取消理由2(特許法第36条第6項第2号)について 本件発明1の「該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上且つ半水石膏に対して0.2重量%以上であ」るとの発明特定事項は、「界面活性剤の残存割合」を測定するための条件が特定され、「界面活性剤被覆半水石膏」の一定の特性を示しているといえるから、本件発明1は明確である。 本件発明1を引用する本件発明2?6に対しても同様である。 したがって、本件発明1?6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。 (3)取消理由3及び4(特許法第36条第6項第1号)について ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0003】の記載からみて、発明の解決しようとする課題は、「半水石膏と水とを混合して石膏スラリーとした後、型枠への流し込み作業のために十分な程度に長い誘導時間と、作業効率の観点から十分に短い硬化時間とが両立された半水石膏を提供する」ことといえる。 そして、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明であるというためには、本件発明1が、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであること、すなわち、本件発明1によって、十分な程度に長い誘導時間と、十分に短い硬化時間とが両立された半水石膏を提供できることを、発明の詳細な説明の記載により当業者が認識できる範囲のものであることを要する。 そこで検討するに、発明の詳細な説明の実施例には、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合を、「使用装置:セイコーインスツル(株)製、TG/DTA6300 昇温速度:20℃/分 パージガス種類:空気 パージガス流速:100mL(STP)/分」(段落【0006】)の条件の熱重量分析で測定することが記載されるとともに、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを0.25重量%で被覆した界面活性剤被覆半水石膏であって、300℃で加熱した場合の界面活性剤の残存割合が80%(半水石膏に対する残存量は0.25重量%×0.8=0.2重量%)である界面活性剤被覆半水石膏(実施例1)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを0.52重量%で被覆した界面活性剤被覆半水石膏であって、同残存割合が86%(半水石膏に対する残存量は0.52重量%×0.86=0.45重量%)である界面活性剤被覆半水石膏(実施例2)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを0.48重量%で被覆した界面活性剤被覆半水石膏であって、同残存割合が81%(半水石膏に対する残存量は0.48重量%×0.81=0.39重量%)である界面活性剤被覆半水石膏(実施例3)、及び、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテルを0.57重量%で被覆した界面活性剤被覆半水石膏であって、同残存割合が85%(半水石膏に対する残存量は0.57重量%×0.85=0.48重量%)である界面活性剤被覆半水石膏(実施例4)が記載され、界面活性剤を被覆しない半水石膏(比較例1,2)、及び、300℃で加熱した場合の残存割合が40%未満(半水石膏に対する残存量が0.2重量%未満)の界面活性剤被覆半水石膏(比較例3,4)と比較して、誘導時間と硬化時間が両立した半水石膏となることが記載されている。 また、化学構造が類似した化合物は、類似の性質を示すとの技術常識を考慮すると、「ポリオキシエチレン」鎖を有する「ポリオキシアルキレンの硫酸エステル」あるいは「ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤」は、実施例に記載された「ポリオキシエチレンラウリルエーテル」、「ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム」及び「ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル」と類似の性質を有していると認識できる。 そして、このような「ポリオキシアルキレンの硫酸エステル」あるいは「ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤」の被覆量が「半水石膏100重量部に対して0.25?1重量部」であって、実施例に記載された測定条件である「該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱」したときの「界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上且つ半水石膏に対して0.2重量%以上」であるとの実施例と同様な熱的性質を有していれば、実施例と同様な効果を奏すると認識できる範囲といえる。 そうしてみると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明といえるし、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 本件発明1を引用する本件発明2?6に対しても同様である。 したがって、本件発明1?6は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 イ 特許異議申立人は、実施例で挙げられたポリオキシエチレンラウリルエーテル等の具体的な化合物のどのような構造により、誘導時間と硬化時間を両立させるとの効果が得られるかについて、本件特許明細書に言及されておらず、実施例で挙げられた化合物と構造等が異なる他のポリオキシアルキレンの硫酸エステル及びポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤が同様な効果を奏することは明らかでないから、本件発明1で規定するポリオキシアルキレンの硫酸エステル及びポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤にまで拡張又は一般化できない旨を主張する(平成29年11月10日付け意見書の第3頁第10行?第4頁第15行)。 しかしながら、上記アで検討したとおり、化学構造が類似した化合物は、類似の性質を示すとの技術常識を考慮すると、「ポリオキシエチレン」鎖を有するポリオキシアルキレンの硫酸エステルあるいはポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤が、実施例のポリオキシエチレンラウリルエーテル等の化合物と類似の性質を有していると認識できるし、更に、このようなポリオキシアルキレンの硫酸エステルあるいはポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤を半水石膏に被覆した場合の熱的性質が、実施例と同程度であれば、その効果についても実施例と同程度となると当業者であれば当然に認識できるものである。 よって、異議申立人の主張は採用できない。 5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 界面活性剤被覆半水石膏およびその製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、界面活性剤被覆半水石膏およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、半水石膏の表面に界面活性剤が強く吸着し、界面活性剤を添加することの効果が最大限に発揮される界面活性剤被覆半水石膏およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 半水石膏は、これを水と混合して半水石膏スラリーにすると水和して二水石膏として容易に硬化するため、石膏ボード、医学用ギブスなどの原料として広く用いられている。 半水石膏を水と混合すると、有意の誘導期間を経た後、発熱を伴って水和反応が始まり、徐々に硬化する。誘導期間の長さおよび水和反応の終了までに要する時間の長さは、原料である半水石膏の粒径、水との混合比、添加剤の有無などによって区々である。例えば試薬の半水石膏と水とを1:2の割合(重量比)で混合して実験室的に水和反応を行った場合には、誘導期間が十数分程度、水和反応が終了するまで1時間から2時間程度である。 水和の反応速度が速いほど、硬化時間が短くなって生産効率が向上するため、半水石膏の硬化は水和反応促進剤を添加して行われるのが通常である。前記水和反応促進剤としては、例えば硫酸のアルカリ金属塩が用いられている。 水和反応促進剤を配合した半水石膏スラリーは、誘導期間および硬化時間の双方が短縮される。つまり、硬化時間を短くするために水和反応促進剤を添加すると、硬化時間とともに誘導期間が連動して短縮されてしまうため、型枠への流し込み作業のために十分な程度に長い誘導時間と、作業効率の観点から十分に短い硬化時間とを両立することは、原理的に不可能である。さらに公知の水和反応促進剤は、ごく微量だけ添加してもその効果は発現せず、ある一定量を添加した場合に急激に効果が発現する。そのため、水和反応促進剤の添加量を変量することによって、誘導期間を、例えば5?10分程度に調整することは、現実には極めて困難である。 ところで、半水石膏を硬化する際には、初期スラリーの流動性を確保するために一定量の水を加える必要がある。このとき、スラリー中の水の割合と、硬化物が完全に乾燥するまでの時間とが相関することは周知である。硬化物から蒸発除去すべき水の量が5重量%異なれば工程コストが大きく異なる。従って、スラリー中の水の割合をできるだけ少なくすることが要請される。しかしながら、スラリー中の水量を低減するとスラリーの流動性が損なわれることから、スラリー中の水量の低減には限界がある。 このように、型枠への流し込み作業の便宜の点で好適な数分程度の誘導期間と、作業効率の向上のために好適な数十分程度の短い硬化時間とを示し、さらにスラリー中の水量を減じても高い流動性を示す半水石膏は、従来知られていない。 【発明の概要】 【0003】 本発明は上記の事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、半水石膏と水とを混合して石膏スラリーとした後、型枠への流し込み作業のために十分な程度に長い誘導時間と、作業効率の観点から十分に短い硬化時間とが両立された半水石膏を提供することにある。 本発明の別の目的は、スラリー中の水の割合を低減しても十分な流動性を有するスラリーを与える半水石膏を提供することにある。 本発明のさらに別の目的は、上記のような半水石膏の製造方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、使用される界面活性剤の少なくとも一定の割合が、半水石膏表面上に強く吸着することによって、界面活性剤の効果が最大限に発揮されて、石膏スラリーの流動性および硬化挙動に良い影響を及ぼすことを見出して、本発明に到達した。 すなわち本発明の上記目的は、第1に、 半水石膏100重量部に対して0.25?1重量部の被覆量で界面活性剤が被覆している界面活性剤被覆半水石膏であって、 該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上且つ半水石膏に対し0.2重量%以上でありそして上記界面活性剤がポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、前記界面活性剤被覆半水石膏によって達成される。 本発明の上記目的は、第2に、 少なくとも二水石膏と界面活性剤とを含有する組成物を、110?200℃で加熱する工程を経る、上記界面活性剤被覆半水石膏の製造方法によって達成される。 【図面の簡単な説明】 【0004】 図1は、比較例1で測定した水和発熱速度の経時変化を示すグラフである。 【発明を実施するための形態】 【0005】 <界面活性剤被覆半水石膏> 本発明の界面活性剤被覆半水石膏は、 半水石膏100重量部に対して0.25?1重量部の被覆量で界面活性剤が被覆している界面活性剤被覆半水石膏であって、 被覆した界面活性剤のうちの少なくとも一定の割合は、半水石膏表面上に強く吸着している。 本発明の界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の種類としては、ポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤のうちから選択される少なくとも1種である。 上記ポリオキシアルキレンの硫酸エステルとしては、ポリオキシエチレンの硫酸エステルが好ましく、例えば下記式(S1) R^(1)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-SO_(3)^(-)M^(+) (S1) (上記式(S1)において、R^(1)は炭素数12?18のアルキル基であり、M^(+)はアルカリ金属イオンまたは第3級アンモニウムイオンであり、mは2?30の整数である。) で表される界面活性剤を挙げることができる。上記アルカリ金属イオンとしてはナトリウムイオンが、上記第3級アンモニウムイオンとしてはN^(+)H(CH_(2)CH_(2)OH)_(3)が、それぞれ好ましい。上記式(S1)で表される界面活性剤の例としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどを挙げることができる。これら化合物におけるアルキル基としては、例えばラウリル基、ステアリル基、オレイル基などを挙げることができる。このようなポリオキシアルキレンの硫酸エステルの市販品としては、例えば花王(株)製のエマール20C、エマールE-27C、エマール270J、エマール20CM、エマールD-3-D、エマールD-4-D、エマール20T、ラテムルE-118B、ラテムルE-150、ラテムルWX、レベノールWXなどを挙げることができる。 上記ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系非イオン性界面活性剤が好ましく、例えば下記式(S2) R^(2)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-H (S2) (上記式(S2)において、R^(2)は炭素数12?18のアルキル基またはフェニル基であり、nは2?30の整数である。) で表される界面活性剤を挙げることができる。このような界面活性剤の例としては、例えばポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノセチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどを挙げることができる。このようなポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば花王(株)製のエマルゲン102KG、エマルゲン103、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン130K、エマルゲン147、エマルゲン150、エマルゲン210P、エマルゲン220、エマルゲン306P、エマルゲン320P、エマルゲン350、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409PV、エマルゲン420、エマルゲン430、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709、エマルゲン1108、エマルゲン1118S-70、エマルゲン1135S-70、エマルゲン1150S-60、エマルゲン4085、エマルゲン2020G-HA、エマルゲン2025Gなどを挙げることができる。 半水石膏に被覆した上記のような界面活性剤のうちの少なくとも一定の割合が半水石膏表面に強く吸着しているとは、界面活性剤被覆半水石膏を300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上である場合である。この要件は、熱重量分析(TG/DTA)によって調べることができる。 界面活性剤被覆半水石膏の温度を徐々に上げて行くと、250℃程度から界面活性剤の脱離が始まり、温度上昇とともに吸着力の弱い界面活性剤から順に脱離し、1,000℃程度で脱離がほぼ終了する。本発明者らの検討によると、このとき、250?300℃までに脱離する吸着力の弱い界面活性剤と、300℃以上で脱離する吸着力の強い界面活性剤とでは、界面活性剤の効果の発現の質ないし程度が異なることが明らかとなった。すなわち、界面活性剤被覆半水石膏において、吸着力の強い界面活性剤が一定量以上被覆している場合に、本発明の所期する効果が発現することが分かったのである。 そこで、界面活性剤被覆半水石膏について熱重量分析を行い、TGチャートから求めた250?1,000℃の重量減少率R1から界面活性剤の被覆量を知ることができ、そして 上記TGチャートにおける250?300℃の重量減少率R2を求め、このR2値および上記のR1値を下記数式(1)に代入することにより、界面活性剤被覆半水石膏を300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合を知ることができる。 残存割合(%)={(R1-R2)÷R1}×100 (1) 界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量は、半水石膏(界面活性剤を含まない量)100重量部に対して、0.25?1重量部であるが、この値は0.25?0.6重量部であることが好ましい。 界面活性剤被覆半水石膏を300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合は40重量%以上であるが、この値は50?80重量%であることが好ましい。 R1値およびR2値を求めるための熱重量分析の条件は、例えば以下のように設定することができる。 昇温速度:20℃/分 パージガス種類:空気 パージガス流速:100mL(STP)/分 本発明の界面活性剤被覆半水石膏は、その累積細孔容積が0.5mL/g以下であることが好ましい。界面活性剤被覆半水石膏の累積細孔容積が上記の範囲であることにより、半水石膏スラリー中の水の割合を少なくしても高い流動性を示すから、硬化物の良好な物性と高い作業効率とを両立することができ、好ましい。界面活性剤被覆半水石膏の累積細孔容積は小さいほど好ましく、より好ましくは0.45mL/g以下であり、さらに好ましくは0.4mL/g以下である。一方で、この値を極めて小さい値にしようとすると、原料の半水石膏の製造コストが過大となる。また、累積細孔容積を過度に小さくしても、物性と作業性とのバランスが無制限に向上するものではない。従って、界面活性剤被覆半水石膏の累積細孔容積の下限値は、0.3mL/g程度とすれば十分である。 界面活性剤被覆半水石膏の累積細孔容積は、市販の水銀圧入式細孔分布測定装置を用いて測定することができる。 <界面活性剤被覆半水石膏の製造方法> 上記のような本発明の界面活性剤被覆半水石膏は、例えば、少なくとも二水石膏と界面活性剤とを含有する組成物を、110?200℃で加熱する工程を経る方法によって製造することができる。 本発明の界面活性剤被覆半水石膏の原料として用いることのできる二水石膏としては、天然石膏および副生石膏(排煙脱硫石膏)の双方ともを用いることができるほか、廃石膏ボードなどから回収された二水石膏を用いることも可能である。 しかしながら本発明の界面活性剤被覆半水石膏の製造方法においては、廃石膏ボードから回収し、ボード原紙などの異物を除去した後の二水石膏をそのまま用いることは好ましくない。すなわち、廃石膏ボードからの回収二水石膏はその累積細孔容積が大きく、この累積細孔容積は界面活性剤被覆半水石膏にもほぼそのまま維持される。従って本発明の製造方法の原料として回収二水石膏をそのまま用いると、スラリーとしたときの流動性に劣る界面活性剤被覆半水石膏となってしまう。流動性の問題を克服しようとスラリー中の水量を増加すると、得られる硬化物から水を乾燥除去する時間が過大となることとなり、好ましくない。 従って、本発明の界面活性剤被覆半水石膏の原料として廃石膏ボードからの回収二水石膏を用いる場合には、これを焼成して一旦半水石膏とした後、水に溶解し、下記の好ましい粒径および累積細孔容積を有する二水石膏として再結晶させる晶析工程を経たものを使用することが好ましい。 本発明の界面活性剤被覆半水石膏の原料として使用される二水石膏の平均粒径(D50)は、10?100μmであることが好ましく、20?60μmであることがより好ましい。本発明の界面活性剤被覆半水石膏の原料として使用される二水石膏の累積細孔容積は、0.5mL/g以下であることが好ましく、0.1?0.4mL/gであることがより好ましく、さらに0.2?0.3mL/gであることが好ましい。 少なくとも、上記のような二水石膏と界面活性剤とを含有する組成物は、例えば実質的に粉体状の二水石膏および界面活性剤のみからなるドライなものであってもよく、あるいは二水石膏および界面活性剤のほかに適当な液状媒体をさらに含有するケークであってもよい。 前者のドライな組成物は、例えば粉体状の二水石膏に、界面活性剤を噴霧する方法により製造することができる。 このドライな組成物においては、噴霧した界面活性剤のすべてが組成物中に残存することとなるため、界面活性剤の噴霧量は、得られる界面活性剤被覆半水石膏における所望の界面活性剤の割合から、加熱脱水によって減少する結晶水の重量割合を考慮して計算した値と等しい量とすることができる。 界面活性剤の噴霧は、二水石膏を撹拌しながら行うことが好ましい。このような撹拌下の噴霧は、粉体の表面処理を目的とした公知の適当な混錬機を用いて行うことができる。界面活性剤を噴霧する際の二水石膏の温度としては、好ましくは10?80℃であり、より好ましくは20?60℃である、噴霧終了後、好ましくは1?30分、より好ましくは5?10分程度撹拌を継続することが好ましい。 一方、後者の二水石膏、界面活性剤および液状媒体を含有するケーク状組成物は、二水石膏、界面活性剤および過剰の液状媒体を含有するスラリーから、過剰の液状媒体を分離することにより、製造することができる。 ここで使用される液状媒体としては、例えば水および有機溶媒を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。この有機溶媒としては水溶性有機溶媒が好ましく、具体的には例えばメタノール、エタノール、アセトンなどを挙げることができる。これらのうち、使用する界面活性剤のHLB値に応じて、水および有機溶媒のうちから適宜に選択して使用することが好ましい。使用する界面活性剤に適する液状媒体の選択は、当業者にとっては容易である。スラリー中の二水石膏の濃度としては、5?50重量%とすることが好ましく、20?40重量%とすることがより好ましい。 ケーク状の組成物においては、使用した界面活性剤のすべてが組成物中に残存する訳ではなく、その一部は液状媒体中に溶解したままろ過により排出されることとなる。従ってケークの場合、得られる界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の割合から加熱脱水によって減少する結晶水の重量割合を考慮して計算した値だけ使用したのでは、所望値よりも少ない割合の界面活性剤を有する界面活性剤被覆半水石膏しか得られない結果となる。このことを勘案すれば、ケークの場合における界面活性剤の使用割合としては、二水石膏の100重量部に対して、0.1?10重量部とすることが好ましく、1?5重量部とすることがより好ましい。 ケークを得るためのスラリーの調製は撹拌下に行うことが好ましい。スラリーの調製温度は好ましくは10?60℃、より好ましくは20?40℃であり、撹拌時間は好ましくは1分以上であり、より好ましくは3?30分であり、さらに5?10分とすることが好ましい。 このようにして得たスラリーから過剰の液状媒体を分離することにより、ケークを得ることができる。スラリーから過剰の液状媒体を分離するには、例えばロータリースクリーン、ドラムフィルター、ディスクフィルター、ヌッチェフィルター、フィルタープレス、スクリュウプレス、チューブプレスなどのろ別装置;スクリュウデカンター、スクリーンデカンターなどの遠心分離機などにより、液状媒体と分離する方法を採用することができる。 本発明の方法における組成物として後述の加熱工程に供するためのケークは、その固形分濃度が80重量%以上であることが好ましい。 次いで、好ましくはドライまたはケーク状の組成物を、110?200℃で加熱する工程を経ることにより、本発明の界面活性剤被覆半水石膏を得ることができる。加熱温度としては、120?160℃とすることが好ましい。加熱時間は10?120分とすることが好ましく、20?60分とすることがより好ましい。 このようにして、本発明の界面活性剤被覆半水石膏を得ることができる。 <界面活性剤被覆半水石膏の特徴> 上記のようにして得られた本発明の界面活性剤被覆半水石膏は、水と混合して石膏スラリーとした後、型枠への流し込み作業を余裕を持って行うことができる程度の長い誘導期間を有するとともに、該誘導期間が終了した後は速やかに硬化するから、作業性に極めて優れる。また、本発明の界面活性剤被覆半水石膏は流動性に優れるから、石膏スラリーとする際の水の使用量を低減することができ、このことによって向上された強度の硬化物を得ることができる。 本発明の界面活性剤被覆半水石膏と後述の好ましい割合の水とを混合して得られた石膏スラリーは、水和反応が立ち上がるまでの誘導期間T1が5?15分であり、さらには5?10分とすることができる。また、水和反応促進度の指標となる水和発熱速度が最大になるまでの時間T2を、15?45分とすることができ、さらには20?40分とすることができる。 このように長い誘導期間と短い水和時間とを示す半水石膏は、従来知られていない。 【実施例】 【0006】 以下の実施例および比較例において、二水石膏としては、和光純薬工業(株)の特級試薬を用いた。 実施例および比較例において得られた石膏の評価方法は、以下のとおりである。 (1)界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量 製造した界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量は、以下の条件で熱重量分析(TG)を測定し、得られたTGチャートから求めた250?1,000℃の重量減少率R1を用いて計算により求めた。 使用装置:セイコーインスツル(株)製、TG/DTA6300 昇温速度:20℃/分 パージガス種類:空気 パージガス流速:100mL(STP)/分 (2)300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合 上記(1)で得たTGチャートから、250?300℃の重量減少率R2を求め、この値および上記(1)で得た250?1,000℃の重量減少率R1を上記数式(1)に代入し、計算により求めた。 (3)累積細孔容積 石膏の累積細孔容積は、マイクロメリティックス社製の水銀圧入式細孔分布測定装置「AutoPore IVシリーズ」を用いて測定した。 (4)水和発熱速度 水和発熱速度は、各実施例および比較例で得られた、界面活性剤で被覆された、またはされていない半水石膏1gと水または水溶液2mLとを混合したものを試料とし、(株)東京理工製の双子型伝導微少熱量計を用いて測定した。 測定例として、後述の比較例1で測定した発熱速度-時間曲線を図1に示した。水和発熱速度が大きいほど、水和反応が活発に進行していると判断できる。水和発熱反応速度が立ち上がるまでの時間をT1とし、これを誘導期間の指標とした。また、水和発熱速度が最大になるまでの時間をT2とし、これを水和促進度の指標とした。 比較例1(界面活性剤で被覆されていない半水石膏の例) 二水石膏を120℃の乾燥機中で2時間加熱することにより、半水石膏を得た。得られた半水石膏について測定したT1は12分であり、T2は52分であった。 比較例2(水和反応促進剤として硫酸ナトリウムを添加した従来技術の例) 二水石膏を120℃の乾燥機中で2時間加熱して半水石膏とした。この半水石膏1gおよび濃度0.1mol/Lの硫酸ナトリウム水溶液2mLを混合して測定したT1は1分であり、T2は16分であった。 実施例1(本発明の方法による場合の例) 界面活性剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、エマルゲン108(有効成分約100重量%))1mLを水100mLに溶解した水溶液中に、二水石膏50gを投入し、10分間撹拌した後、ADVANTEC製のNo.5Aろ紙を用いて真空ろ過して二水石膏ケーキを得た。この二水石膏ケーキを120℃の乾燥機中で2時間加熱することにより、界面活性剤被覆半水石膏を得た。 この界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量は0.25重量%であり、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合は80重量%であった。また、この界面活性剤被覆半水石膏の水和発熱速度を測定したところ、T1が8分であり、T2が27分であった。 実施例2(本発明の方法による場合の例) 上記実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、エマルゲン108(有効成分約100重量%))の使用量を5mLとしたほかは実施例1と同様に操作することにより、界面活性剤被覆半水石膏を得た。 この界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量、界面活性剤の残存割合、T1およびT2を、表1にそれぞれ示した。 実施例3(本発明の方法による場合の例) 上記実施例1において、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの代わりにポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王(株)製、エマール20C(有効成分約25重量%))20mLを使用したほかは実施例1と同様に操作することにより、界面活性剤被覆半水石膏を得た。 この界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量、界面活性剤の残存割合、T1およびT2を、表1にそれぞれ示した。 実施例4(本発明の方法による場合の例) 界面活性剤としてのポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル(和光純薬工業(株))5mLをエタノール100mLに溶解した溶液中に、二水石膏50gを投入し、10分間撹拌した後、ADVANTEC製のNo.5Aろ紙を用いて真空ろ過して二水石膏ケーキを得た。この二水石膏ケーキを120℃の乾燥機中で2時間加熱することにより、界面活性剤被覆半水石膏を得た。 この界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量、界面活性剤の残存割合、T1およびT2を、表1にそれぞれ示した。 比較例3(半水石膏と界面活性剤とを接触した場合の例1) 界面活性剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、エマルゲン108)5mLをエタノール100mLに溶解した溶液中に、比較例1で得た半水石膏40gを投入し、10分間撹拌した後、ADVANTEC製のNo.5Aろ紙を用いて真空ろ過して半水石膏ケーキを得た。得られた半水石膏ケーキを、室温(25℃)、常圧下に24時間静置してエタノールを除去することにより、界面活性剤被覆半水石膏を得た。 この界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量、界面活性剤の残存割合、T1およびT2を、表1にそれぞれ示した。 比較例4(半水石膏と界面活性剤とを接触した場合の例2) 界面活性剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製、エマルゲン108)5mLをエタノール100mLに溶解した溶液中に、比較例1で得た半水石膏40gを投入し、10分間撹拌した後、ADVANTEC製のNo.5Aろ紙を用いて真空ろ過して半水石膏ケーキを得た。得られた半水石膏ケーキを、室温(25℃)、常圧下に24時間静置してエタノールを除去した後、さらに120℃の乾燥機中で2時間加熱することにより、界面活性剤被覆半水石膏を得た。 この界面活性剤被覆半水石膏における界面活性剤の被覆量、界面活性剤の残存割合、T1およびT2を、表1にそれぞれ示した。 【表1】 以下の実施例および比較例では、半水石膏を水と混合してスラリーとした場合の流動性について調べた。 半水石膏スラリーの流動性は、以下の方法によって測定したフロー値を140mmとするために必要であった水の割合(混水量、半水石膏100gに対する水の量(mL))として評価した。 半水石膏スラリーのフロー値が140mmであれば、当該半水石膏スラリーは良好な流動性を有し、例えば40×40×160mm成形体の型に容易に流し込むことができることから、このフロー値を基準とした。 (5)フロー値の測定方法 界面活性剤で被覆された、またはされていない半水石膏の100gに、水(比較例6においては0.1mol/L硫酸ナトリウム水溶液)を加えて15秒間混合撹拌した後のスラリーを、板ガラス上に置いた内径50mm、高さ51mmの塩化ビニル製パイプ(内容積100mL)に充填した。その直後に上記塩化ビニル製パイプを引き上げ、充填されていたスラリーが板ガラス上に広がって静止した後、スラリーの直径を、互いに直交する2つの方向について測定し、その平均値をフロー値とした。 実施例5 上記実施例2で得た界面活性剤被覆半水石膏について、フロー値を140mmとするために必要であった水の割合を調べた。結果は表2に混水量として示した。 比較例5 上記比較例1で得た半水石膏について、フロー値を140mmとするために必要であった水の割合を調べた。結果は表2に混水量として示した。 比較例6 上記比較例1で得た水和反応促進剤被覆半水石膏について、水の代わりに0.1mol/L硫酸ナトリウム水溶液を用いてフロー値140mmとするために必要であった水溶液の割合を調べた。結果は表2に混水量として示した。 半水石膏スラリーが硬化するとき、スラリー中に含有される半水石膏は二水石膏となる。このときに結晶水として硬化物中に取り込まれる水の量は、半水石膏100gあたり18.6mLと計算される。従って、フロー値が140mmであるスラリーから得られた硬化物から蒸発除去すべき水の量は、下記表2に示した混水量の値から各18.6mLを減じた値となる。この値も表2に合わせて示した。 【表2】 従来技術で実際に使用されている半水石膏は、上記比較例6(比較例1)のような水和反応促進剤で被覆された半水石膏であるから、これを基準として本発明(実施例5)の水量削減効果を計算すると、次のようになる。 比較例6の硬化物から蒸発除去すべき水の量は86.4gであるのに対して、実施例5の硬化物から蒸発除去すべき水の量は75.4gに過ぎないから、その減少分(%)は{1-(75.4÷86.4)}×100=12.7重量%と計算できる。 背景技術の項で述べたとおり、硬化物から蒸発除去すべき水の量が5重量%異なれば工程コストが大きく異なる。従って使用水量を12重量%以上も削減可能な本発明の技術は、製造コストを大きく削減することを可能とするものである。 発明の効果 本発明の界面活性剤被覆半水石膏は、これを水と混合して石膏スラリーとした後に、長い誘導時間と短い硬化時間とが両立されている。そのため、型枠への流し込み作業を余裕を持って行うことができるとともに、流し込み作業が終了した後は速やかに硬化するから、硬化作業の効率が極めて高いものとなる。 また、本発明の界面活性剤被覆半水石膏は、通常よりも少ない量の水によって石膏スラリーとした場合でも十分に高い流動性を有するから、より短い時間で効率よく硬化物を形成することができる。 さらに、本発明の界面活性剤被覆半水石膏の製造方法によると、上記のような有利な特徴を有する本発明の界面活性剤被覆半水石膏を、簡易な方法で製造することができる。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 半水石膏100重量部に対して0.25?1重量部の被覆量で界面活性剤が被覆している界面活性剤被覆半水石膏であって、 該界面活性剤被覆半水石膏を、パージガスを空気とし、パージガス流速100ml(STP)/分且つ昇温速度20℃/分で、300℃まで加熱したときの界面活性剤の残存割合が加熱前の40重量%以上且つ半水石膏に対し0.2重量%以上でありそして上記界面活性剤がポリオキシアルキレンの硫酸エステルおよびポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、前記界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項2】 上記界面活性剤の被覆量が半水石膏100重量部に対して0.25?0.6重量部である、請求項1に記載の界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項3】 上記ポリオキシアルキレンの硫酸エステルが下記式(S1) R^(1)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(m)-SO_(3)^(-)M^(+) (S1) (上記式(S1)において、R^(1)は炭素数12?18のアルキル基であり、M^(+)はアルカリ金属イオンまたは第3級アンモニウムイオンであり、mは2?30の整数である。) で表される界面活性剤であり、上記ポリオキシアルキレン系非イオン性界面活性剤が下記式(S2) R^(2)O-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-H (S2) (上記式(S2)において、R^(2)は炭素数12?18のアルキル基またはフェニル基であり、nは2?30の整数である。) で表される界面活性剤である、請求項1または2に記載の界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項4】 累積細孔容積が0.5mL/g以下である、請求項1または2に記載の界面活性剤被覆半水石膏。 【請求項5】 請求項1に記載の界面活性剤被覆半水石膏の製造方法であって、 少なくとも二水石膏と界面活性剤とを含有する組成物を110?200℃で加熱する工程を経ることを特徴とする、前記方法。 【請求項6】 上記二水石膏が、天然石膏、排煙脱硫石膏および晶析工程を経た回収二水石膏よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-11-28 |
出願番号 | 特願2013-532540(P2013-532540) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C04B)
P 1 651・ 121- YAA (C04B) P 1 651・ 113- YAA (C04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 粟野 正明 |
特許庁審判長 |
大橋 賢一 |
特許庁審判官 |
瀧口 博史 宮澤 尚之 |
登録日 | 2016-06-10 |
登録番号 | 特許第5948334号(P5948334) |
権利者 | 株式会社トクヤマ |
発明の名称 | 界面活性剤被覆半水石膏およびその製造方法 |
代理人 | 白石 泰三 |
代理人 | 大島 正孝 |
代理人 | 白石 泰三 |
代理人 | 大島 正孝 |