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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A41B
審判 一部申し立て 2項進歩性  A41B
管理番号 1336184
異議申立番号 異議2017-701041  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-09 
確定日 2018-01-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6124225号発明「伸縮シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6124225号の請求項1、2、5及び6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6124225号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成27年9月30日に特許出願され、平成29年4月14日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1、2、5及び6に係る特許に対し、特許異議申立人村戸良至(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1、2、5及び6の特許に係る発明(以下、「本件発明1、2、5及び6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、5及び6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、本件発明5、6は、請求項3、4の特許に係る発明(以下、「本件発明3、4」という。)も引用しているため、併せて示す。
「【請求項1】
伸縮可能な伸縮シートを製造する方法において、
伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、伸縮可能な弾性フィルムを伸長状態で介在させる供給工程と、
この供給工程において、前記第1シート層と前記第2シート層との間に前記弾性フィルムを伸長状態で介在させた状態で、前記第1シート層及び前記第2シート層の外方から、熱溶融装置によって間隔を空けた多数の接合部領域に熱溶融エネルギーを与え、前記弾性フィルムを溶融し、前記第1シート層及び前記第2シート層を、直接又は弾性フィルムを介して多数の接合部で接合する接合工程と、
を含み、
前記熱溶融装置は、アンビルロールと超音波ホーンとを有し、前記アンビルロールはその外表面にロール長方向及び外周方向に間隔を空けた多数の突部が形成され、
前記アンビルロールに対向して対向ロールが配置され、
前記対向ロールは、前記アンビルロールとでニップ段を構成するニップロールであり、
前記弾性フィルムは対向ロールを巡らせた後、前記ニップ段を通しながら、前記アンビルロールを巡らせ、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行うことを特徴とする伸縮シートの製造方法。
【請求項2】
前記ニップ段と、前記弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離が250mm以下である請求項1記載の伸縮シートの製造方法。
【請求項3】
伸縮可能な伸縮シートを製造する方法において、
伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、伸縮可能な弾性フィルムを伸長状態で介在させる供給工程と、
この供給工程において、前記第1シート層と前記第2シート層との間に前記弾性フィルムを伸長状態で介在させた状態で、前記第1シート層及び前記第2シート層の外方から、熱溶融装置によって間隔を空けた多数の接合部領域に熱溶融エネルギーを与え、前記弾性フィルムを溶融し、前記第1シート層及び前記第2シート層を、直接又は弾性フィルムを介して多数の接合部で接合する接合工程と、
を含み、
前記熱溶融装置は、アンビルロールと超音波ホーンとを有し、前記アンビルロールは、クラウンロールであり、その外表面にロール長方向及び外周方向に間隔を空けた多数の突部が形成され、
前記アンビルロールに対向して対向ロールが配置され、
前記弾性フィルムは対向ロールを巡らせた後、前記アンビルロールを巡らせ、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行うことを特徴とする伸縮シートの製造方法。
【請求項4】
伸縮可能な伸縮シートを製造する方法において、
伸縮性を有しない第1シート層と、伸縮性を有しない第2シート層との間に、伸縮可能な弾性フィルムを伸長状態で介在させる供給工程と、
この供給工程において、前記第1シート層と前記第2シート層との間に前記弾性フィルムを伸長状態で介在させた状態で、前記第1シート層及び前記第2シート層の外方から、熱溶融装置によって間隔を空けた多数の接合部領域に熱溶融エネルギーを与え、前記弾性フィルムを溶融し、前記第1シート層及び前記第2シート層を、直接又は弾性フィルムを介して多数の接合部で接合する接合工程と、
を含み、
前記熱溶融装置は、アンビルロールと超音波ホーンとを有し、前記アンビルロールはその外表面にロール長方向及び外周方向に間隔を空けた多数の突部が形成され、
前記アンビルロールを展開状態で見たとき、単位面積内に含まれる前記突部の群の総和面積が占める突部面積率が、少なくともロール長方向に異なっており、
前記アンビルロールに対向して対向ロールが配置され、
前記弾性フィルムは対向ロールを巡らせた後、前記アンビルロールを巡らせ、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行うことを特徴とする伸縮シートの製造方法。
【請求項5】
前記接合工程において、
前記接合部においては孔が形成されておらず、前記接合部と前記弾性フィルムとの、少なくとも前記伸長方向の境界部分に貫通孔を形成するとともに、前記第1シート層及び前記第2シート層は残存させる請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の伸縮シートの製造方法。
【請求項6】
前記突部の配置は千鳥状である請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の伸縮シートの製造方法。」

3.申立理由の概要
申立人は、甲第1号証?甲第4号証(以下、「甲1」?「甲4」という。)を提出し、以下の取消理由により、本件発明1、2、5及び6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)特許法第29条第2項の規定に係る取消理由(以下、「理由1」という。)
ア.本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2、3に例示される周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ.本件発明5は、甲1に記載された発明、甲2、3に例示される周知の技術的事項、及び甲4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ.本件発明6は、甲1に記載された発明及び甲2、3に例示される周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

刊行物
甲1:国際公開第2014/025849号(対訳文として、甲1のパテントファミリーである特表2015-529581号公報を採用した。)
甲2:特開2013-231249号公報
甲3:米国特許第4259399号明細書(対訳文は、当審において作成した。)
甲4:米国特許第6572595号明細書(対訳文は、当審において作成した。)

(2)特許法第36条第6項第2号の規定に係る取消理由(以下、「理由2」という。)
ア.請求項1の「前記アンビルロールに対向して対向ロールが配置され、前記対向ロールは、前記アンビルロールとでニップ段を構成するニップロールであり、」との記載によって、請求項1の記載自体が不明確となる結果、本件発明1、2、5及び6が不明確である。

イ.請求項2の「前記ニップ段と、前記弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離が250mm以下である」との記載によって、請求項2の記載自体が不明確となる結果、本件発明2が不明確である。

4.甲1?甲4の記載事項
(1)甲1
甲1には、以下の記載がある。(下線は、当審で付与。)
ア.「本発明は、多層フィルム及び少なくとも1つのウェブ層を含む伸張可能なウェブ積層体の作製方法に関する。本発明は更に、例えばおむつ、トレーニングパンツ、成人用失禁用具、ブーティ及び衣類などのパーソナルケア物品における、そのような伸張可能なウェブ積層体の使用に関する。」(1頁6?9行)
イ.「弾性フィルムは一般に、身体の形状に対してパーソナルケア物品をより良く形づくるために物品に組み込まれる。弾性フィルムは例えば、おむつのウエスト領域及び脚領域、トレーニングパンツのサイドパネル、並びに使い捨てガウンのカフに使用することができる。1つ又は複数のウェブ層(例えば不織布層)を弾性フィルムに適用して、より布地に近いものにすることが一般的である。典型的には、不織布層が延伸状態の弾性フィルムに接合される。弾性フィルムが復元できるようになると、不織布層がギャザー又はシャーリングを形成し、その延伸方向での伸張可能な不織布積層体を形成する。」(1頁12?18行)
ウ.「多層フィルムは一般に、スキン層の弾性変形限界を超えて多層フィルムの少なくとも一部分を延伸させ、かつ、そのスキン層をエラストマー性コア層と共に復元させることにより、第1方向に活性化され、その第1方向に弾性である多層フィルムを形成する。この活性化された多層フィルムは次に、第1方向に実質的に垂直な(すなわち、90°±5°)第2方向に、スキン層の変形限界を超えて延伸される。多層フィルムが延伸状態であるときに、少なくとも1つのウェブ層が、この多層フィルムに接着される。多層フィルムは次に復元されて、伸張可能なウェブ積層体を形成する。」(3頁36?4頁4行)
エ.「一実施形態において、異周速ロール16、18、20は、配置される下流に行くに従い、次第に高速で作動し、ロール20は最も高速であり、ロール16は最も低速である。この速度は、あるロールから次のロールへと直線的に増加してよく、又は非直線的に増加してもよい。別の一実施形態において、速度ロール16、18、20は脈動してもよい。例えば、ロール18は、ロール16及び20よりも遅い速度で作動してよく、これによってフィルムは、延伸と復元のシーケンスを通過することになる。隣接する速度ロール16、18、20の間の距離は、同じであっても異なっていてもよい。ロール16、18、20の間の水平隙間は、フィルムの厚さよりも大きくなければならない。3つの異周速ロール16、18、20が図3に示されているが、2つ以上の異周速ロールを使用できることが理解されよう。」(10頁23?31行)
オ.「ウェブ層22は、ガイドロール26によって、装置10内の多層フィルム12の一方の側へ供給される。ウェブ層24は、ガイドロール28、30によって、装置内の多層フィルム12の反対側へ供給される。いくつかの実施形態において、ウェブ層22、24は、多層フィルム12の一部分のみに適用される。他の実施形態において、ウェブ層22、24は多層フィルム12と同一の広がりを持つ。更に他の実施形態において、ウェブ層22、24は多層フィルム12よりもCD方向に幅広である。ウェブ層22、24は同じ組成であってよく、また異なる組成であってもよい。ウェブ層22、24のCD方向の幅は、同じであっても異なっていてもよい。」(10頁32?38行)
カ.「層22、12、24は次に、超音波溶接(又は結合)を用いて一緒に積層される。超音波溶接は一般に、例えば、超音波ホーン36とパターン付きロール(例えばアンビルロール)34との間に層22、12、24を通すことによって実施されるプロセスを指す。そのような結合方法は当該技術分野において既知である。例えば、静止ホーンとパターン付き回転アンビルロールを使用する超音波溶接は、米国特許第3,844,869号「Apparatus for Ultrasonic Welding of Sheet Materials」(Rust Jr.);及び同第4,259,399号「Ultrasonic Nonwoven Bonding」(Hill)に記述されている。更に、回転ホーンをパターン付き回転アンビルロールと共に使用する超音波溶接は、米国特許第5,096,532号「Ultrasonic Rotary Horn」(Neuwirthら);同第5,110,403号「High Efficiency Ultrasonic Rotary Horn」(Ehlert);及び同第5,817,199号「Methods and Apparatus for a Full Width Ultrasonic Bonding Device」(Brenneckeら)に記述されている。もちろん、他の任意の超音波溶接技法も、本発明に使用することができる。」(11頁1?11行)
キ.「いくつかの実施形態において、パターン付きロール34と異周速ロール20は同じ速度で作動する。別の実施形態において、パターン付きロール34と異周速ロール20は異なる速度で作動し、ここにおいて、パターン付きロール34は異周速ロール16、18、20の延長として働く。」(11頁12?14行)
ク.「Fig.3



上記の摘記事項(特に上記下線部)により、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「多層フィルム及び少なくとも1つのウェブ層を含む伸張可能なウェブ積層体の作製方法において、
1つ又は複数のウェブ層は不織布層で、ウェブ層が延伸状態の弾性フィルムに接合されるものであって、
ウェブ層22は、ガイドロール26によって、装置10内の多層フィルム12の一方の側へ供給され、ウェブ層24は、ガイドロール28、30によって、装置内の多層フィルム12の反対側へ供給され、
ガイドロール30は、パターン付きロール(例えばアンビルロール)34に接しており、
パターン付きロール(例えばアンビルロール)34とロール20は異なる速度で作動し、ここにおいて、パターン付きロール(例えばアンビルロール)34はロール16、18、20の延長として働き、
超音波ホーン36とパターン付きロール(例えばアンビルロール)34との間にウェブ層22、多層フィルム12、ウェブ層24を通すことによって超音波溶接を用いて一緒に積層される、
多層フィルム及び少なくとも1つのウェブ層を含む伸張可能なウェブ積層体の作製方法。」

(2)甲2
甲2には、以下の記載がある。
ケ.「【0010】
第2の発明は、前記複合シートの製造方法において、前記弾性シートを構成する弾性ウェブを第1巻出しロールによって搬送する工程と、前記弾性ウェブをニップロールを介してソニックホーンおよびこれに対向するアンビルを有する超音波装置へ搬送する工程と、前記非弾性シートを構成する非弾性ウェブを第2巻出しロールによって前記超音波装置へと搬送する工程と、前記弾性ウェブと前記非弾性ウェブとを、前記超音波装置によって接合する工程とを含む。前記アンビルの周面には、回転方向および軸方向へそれぞれ離間する多数の凸部が設けられ、前記弾性ウェブは、前記周面に接触して搬送されるとともに、前記アンビルの回転速度は、前記ニップロールの回転速度よりも速くされることを特徴とする。」
コ.「【0034】
延伸加工された弾性ウェブ31は、超音波装置40に搬送される。超音波装置40は、ソニックホーン41およびロール状のアンビル42を含む。アンビル42の周面には、千鳥模様を描くように複数の凸部43が形成される。図8を参照すれば、凸部43は、アンビル42の周面全域に多数形成され、直径約0.8mm、高さ約1.0mmとされる。回転方向Rへ隣接する凸部43のピッチP1は約6.1mmであり、これに交差する軸方向Sへ隣接する凸部43のピッチP2は約6.0mmである。ピッチとは、一方の凸部43の中心から他方の凸部43の中心までの寸法をいう。弾性ウェブ31は、アンビル42の周面に接触して抱きつくように搬送される。アンビル42の回転速度は約100m/minである。」
サ.「【0035】
超音波装置40の上流には、弾性ウェブ31を搬送する一対の第3ニップロール44が配置され、下流には一対の第4ニップロール45が配置される。第3ニップロール44の速度は約54.5m/minであり、第4ニップロール45の速度は約100m/minである。弾性ウェブ31は第3ニップロール44から超音波装置40を介して第4ニップロール45へと搬送されるが、これらの回転速度の相違により、弾性ウェブ31は、特に第3ニップロール44およびアンビル42の間で機械方向MDに伸長されながら搬送される。このように弾性ウェブ31が機械方向MDに伸長されると、機械方向MDに交差する方向の寸法が小さくされ、いわゆる幅入りが起こる。しかし、アンビル42の周面には複数の凸部43が形成されるから、凸部43に弾性ウェブ31の繊維が引っ掛かり幅入りを抑制することができる。」
シ.図8には、アンビル43に複数の凸部43が設けられている点が、図示されている。

(3)甲3
甲3には、アンビルロールに複数の突部を設けた点が記載されている(図3a、図3b、図4a、図4b)。

(4)甲4
甲4には、以下の記載がある。
「・・・超音波接着処理を用いてトップシート16とバックシート18とを伸長可能部材46を通して接着する。・・・・その結果、2つの不織層は接着するが、それらが弾性部材46のポリマー材料を閉じ込める。さらに、弾性部材46を通して膨れた又は形成された孔は接着部位よりも大きく、2つの不織層は孔の中央を通って互いに接着する。」(12欄45行?67行)

5.判断
事案に鑑み、まず理由2について検討する。
(1)理由2について
ア.請求項1、2、5及び6の記載について
請求項1には「前記アンビルロールに対向して対向ロールが配置され、前記対向ロールは、前記アンビルロールとでニップ段を構成するニップロールであり、」と記載されている。この記載から、「前記対向ロール」は、アンビルロールに圧接しているニップロールであることがわかる。よって、「対向ロール」は、「アンビルロールに対向して配置され、」かつ「アンビルロールに圧接している」ニップロールであるから、対向ロールの位置関係はアンビルロールに対して明確である。また、上記記載から、「ニップ段」は、「前記アンビルロール」と対向ロールである「ニップロール」とで構成される「ニップする部分」を指すことがわかる。「ニップ段」をそう理解すると、明細書の段落【0017】の「ニップ段と、弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離が250mm未満であることが望ましい。」と、明細書の段落【0040】の「・・・図9に示す例において、弾性フィルム30の対向ロール63との接線から、アンビルロール60を離れる位置までの距離は250mm以下にすることが望ましい。・・・」とは整合がとれているといえる。
したがって、請求項1の「前記アンビルロールに対向して対向ロールが配置され、前記対向ロールは、前記アンビルロールとでニップ段を構成するニップロールであり、」との記載は不明確とはいえず、本件発明1が不明確であるとはいえない。
本件発明1を引用する本件発明2、5及び6も、同様な理由により、不明確であるとはいえない。

イ.請求項2の記載について
請求項2には「前記ニップ段と、前記弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離が250mm以下である」と記載されている。上記ア.で述べたように、請求項1の記載より、「ニップ段」は、「前記アンビルロール」と対向ロールである「ニップロール」とで構成される「ニップする部分」を指すことがわかる。「ニップ段」をそう理解すると、請求項2の「前記ニップ段と、前記弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離が250mm以下である」とは、「『前記アンビルロール』と対向ロールである『ニップロール』とで構成される『ニップする部分』と、前記弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離が250mm以下である」と理解でき、明細書の段落【0040】の「・・・図9に示す例において、弾性フィルム30の対向ロール63との接線から、アンビルロール60を離れる位置までの距離は250mm以下にすることが望ましい。・・・」とも、図9を参照すれば、整合がとれているといえる。
したがって、請求項2の「前記ニップ段と、前記弾性フィルムが前記アンビルロールから離れる位置との間の距離が250mm以下である」との記載は不明確とはいえず、本件発明2が不明確であるとはいえない。

ウ.小括
したがって、本件発明1、2、5及び6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、理由2によって、取り消されるべきものとすることはできない。

(2)理由1について
ア.本件発明1
甲1発明と本件発明を対比する。
上記(1)ア.で述べたように、本件発明1の「対向ロール」は、「アンビルロールに対向して配置され、」かつ「アンビルロールに圧接している」ニップロールであるから、甲1発明の「ガイドロール30」が本件発明1の「対向ロール」に相当し、甲1発明の「ロール20」は、パターン付きロール(例えばアンビルロール)34に接していないので、本件発明1の「対向ロール」に相当しない。
そうすると、甲1発明と本件発明は、少なくとも以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1は、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行うのに対して、甲1発明では、パターン付きロール(例えばアンビルロール)34の周速をガイドロール30の周速より速くするかどうか不明である点。

相違点1を検討する。
甲1には、ガイドロール30に関しては、上記摘記事項オに「ウェブ層22は、ガイドロール26によって、装置10内の多層フィルム12の一方の側へ供給される。ウェブ層24は、ガイドロール28、30によって、装置内の多層フィルム12の反対側へ供給される。・・・」と記載されるだけであり、パターン付きロール(例えばアンビルロール)34の周速をガイドロール30の周速より速くする記載や示唆はない。
また、甲2?甲4にも、上記相違点1に係る構成は記載や示唆はされていない。なお、甲2の図7にニップロール44はアンビル42に接触していない点が図示されているので、甲2のニップロールは、本件発明1の対向ロールに相当しないので、甲2の【0010】の「・・・前記弾性ウェブは、前記周面に接触して搬送されるとともに、前記アンビルの回転速度は、前記ニップロールの回転速度よりも速くされることを特徴とする。」との記載は、上記相違点1に係る構成を示唆するものではない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、駆動回転するアンビルロールの周速を対向ロールの周速より速くすることにより、弾性フィルムを伸長するとともに、アンビルロールの突部の群と超音波ホーンとにより接合を行い、ネックインを抑制して資材コストを低減することが可能な伸縮シートの製造方法となる(本件特許明細書【0030】、【0037】参照)という効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2、3に例示される周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件発明5
本件発明5は、本件発明1、本件発明3、本件発明4のいずれかを引用しているが、本件発明3及び本件発明4も、本件発明1と同様に、「前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行う」という発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明5と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
(相違点5)
本件発明5は、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行うのに対して、甲1発明では、パターン付きロール(例えばアンビルロール)34の周速をガイドロール30の周速より速くするかどうか不明である点。

相違点5を検討する。
相違点5に係る本件発明5の構成は、上記ア.の相違点1に係る本件発明1の構成と同じである。よって、上記ア.の相違点1について述べた理由と同様の理由により、本件発明5は、甲1発明、甲2、3に例示される周知の技術的事項及び甲4記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ.本件発明6
本件発明6は、本件発明1、本件発明3、本件発明4のいずれかを引用しているが、本件発明3及び本件発明4も、本件発明1と同様に、「前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行う」という発明特定事項を含むものである。
そうすると、本件発明6と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
(相違点6)
本件発明6は、前記アンビルロールの周速を前記対向ロールの周速より速くすることにより前記弾性フィルムを伸長するとともに、前記アンビルロールの突部の群と前記超音波ホーンとにより接合を行うのに対して、甲1発明では、パターン付きロール(例えばアンビルロール)34の周速をガイドロール30の周速より速くするかどうか不明である点。

相違点6を検討する。
相違点6に係る本件発明6の構成は、上記ア.の相違点1に係る本件発明1の構成と同じである。よって、上記ア.の相違点1について述べた理由と同様の理由により、本件発明6は、甲1発明及び甲2、3に例示される周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ.小括
したがって、本件発明1、2、5及び6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、理由1によって、取り消されるべきものとすることはできない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、2、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-12-25 
出願番号 特願2015-195461(P2015-195461)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (A41B)
P 1 652・ 121- Y (A41B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北村 龍平  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 蓮井 雅之
渡邊 豊英
登録日 2017-04-14 
登録番号 特許第6124225号(P6124225)
権利者 大王製紙株式会社
発明の名称 伸縮シートの製造方法  
代理人 永井 義久  
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