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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01G
管理番号 1336190
異議申立番号 異議2017-700973  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-12 
確定日 2018-01-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第6112118号発明「Li-Ni複合酸化物粒子粉末並びに非水電解質二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6112118号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6112118号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年10月15日(優先権主張 平成24年10月17日)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月24日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人歌代豊(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
特許第6112118号の請求項1?5の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」?「本件特許発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、独立項である本件特許発明1は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
組成がLi_(x)(Ni_(y)Co_(2(1-y)/5)Mn_(3(1-y)/5))_(1-z)M_(z)O_(2)(1.00≦x≦1.10、0.65<y<0.82、0≦z≦0.05、MはAl、Zr、Mgから選ばれる少なくとも一種の元素)であって、X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下であることを特徴とするLi-Ni複合酸化物粒子粉末。」

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、次の甲第1号証?甲第4号証(以下「甲1」?「甲4」という。)を提出し、請求項1?5に係る特許について、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法第113条第2号の規定に該当し、また、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものであると主張している。
甲1:国際公開第2010/113583号
甲2:国際公開第2011/108595号
甲3:特開2010-64944号公報
甲4:特許5672442号公報

そして、その具体的理由を整理すると、以下のとおりである。
1 申立理由1
本件特許発明1?5は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。

2 申立理由2
本件特許発明1?5は、甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する発明である。

3 申立理由3
本件特許発明1は、甲1、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項に違反して特許された発明であるとされ、具体的には、本件特許発明1と甲1に記載された発明とを対比して、判断している。

4 申立理由4
本件特許発明1は、甲2、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項に違反して特許された発明であるとされ、具体的には、本件特許発明1と甲2に記載された発明とを対比して、判断している。

5 申立理由5
本件特許発明2?5は、甲1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるあるから、特許法第29条第2項に違反して特許された発明であるとされ、具体的には、本件特許発明2?5と甲1又は甲2に記載された発明とを対比して、判断している。

6 申立理由6
申立理由6は、本件特許発明1及びそれを引用する本件特許発明2?5について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていないことを理由としたものであり、要すれば、以下のとおりである。
本件特許発明1で「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下」と特定されているが、発明の詳細な説明において具体的に実施され効果が確認されているのは実施例1?16であり、その積の最小値は916.5(実施例11)で、その積の最大値は1271.6(実施例8)である。そして、リチウムサイトのメタル席占有率(%)と結晶子サイズ(nm)の積が「700以上、1400以下」には、メタル席占有率(%)と結晶子サイズが様々な大きさの場合も含むものであるから、実施例1?16に開示された内容(最小値が916.5、最大値が1271.6)から、「700以上、1400以下」の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、本件特許発明1はサポート要件を満たしておらず、それを引用する本件特許発明2?5もサポート要件を満たしていないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第4 甲号証の記載事項
1 甲1について
(1)甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。
(甲1ア)「技術分野
[0001]本発明はリチウムイオン電池用の正極活物質に関する。更に、本発明は前記正極活物質の特性評価方法に関する。」

(甲1イ)「実施例
[0046]以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
[0047]No.1?26
市販の炭酸リチウムを表1に記載の重量で純水3.2Lに懸濁させて炭酸リチウム懸濁液を調製した。次いで、塩化ニッケル、塩化マンガン、塩化コバルトの水和物をNi:Mn:Coを表1に記載の各組成比で、Ni、Mn及びCoの合計モル数が14モルになるように純水に溶解し、総量4.8Lに調整した溶液を調製した。上記懸濁液に、当該溶液を1.6L/hrで投入し、炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ニッケル、炭酸マンガンおよび炭酸コバルトの混合物)を得た。
この炭酸塩を、フィルタープレスで固液分離し、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄した後、乾燥した。この複合炭酸塩を300mm角のこう鉢に3kg充填し、125Lの容積の炉を用いて、表1に記載の温度まで2時間かけて昇温し、前記表に記載の時間保持した後、室温まで冷却し(ただし、500℃までの冷却時間は4時間以上とした)酸化物を得た。これを粉砕して正極活物質とした。この際、昇温開始から冷却終了まで、No.1?No.8では空気を10L/minで、No.9?26では酸素を10L/minで流した。」

(甲1ウ)表1として、以下の表が記載されている。
[表1]


(2)甲1発明について
ア 成分組成について
上記表1のNo.20?25からして、組成がLi_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.10、2.21≦z≦2.35)であるリチウムニッケル複合酸化物が記載されている。

イ 甲1発明
上記アを踏まえれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「組成がLi_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.10、2.21≦z≦2.35)であるリチウムニッケル複合酸化物の粉砕物。」

2 甲2について
(1)甲2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。
(甲2ア)「技術分野
[0001]本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池に関する。」

(甲2イ)「実施例
[0023]以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
[0024](実施例1?26)
まず、表1に記載の投入量の炭酸リチウムを純水3.2リットルに懸濁させた後、金属塩溶液を4.8リットル投入した。ここで、金属塩溶液は、各金属の硝酸塩の水和物を、各金属が表1に記載の組成比になるように調整し、また全金属モル数が14モルになるように調整した。
なお、炭酸リチウムの懸濁量は、製品(リチウムイオン二次電池正極材料、すなわち正極活物質)をLi_(x)(Ni_(y)M_(1-y))O_(z)でxが表1の値となる量であって、それぞれ次式で算出されたものである。
W(g)=73.9×14×(1+0.5X)×A
上記式において、「A」は、析出反応として必要な量の他に、ろ過後の原料に残留する炭酸リチウム以外のリチウム化合物によるリチウムの量をあらかじめ懸濁量から引いておくために掛ける数値である。「A」は、硝酸塩や酢酸塩のように、リチウム塩が焼成原料として反応する場合は0.9であり、硫酸塩や塩化物のように、リチウム塩が焼成原料として反応しない場合は1.0である。
この処理により溶液中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出したが、この析出物を、フィルタープレスを使用して濾別した。
続いて、析出物を乾燥してリチウム含有炭酸塩(リチウムイオン電池正極材用前駆体)を得た。
次に、焼成容器を準備し、この焼成容器内にリチウム含有炭酸塩を充填した。次に、焼成容器を空気雰囲気炉に入れて、800?860℃まで4時間で昇温させ、次いで当該保持温度で12?30時間保持した後、3時間で放冷して酸化物を得た。次に、得られた酸化物を解砕し、リチウムイオン二次電池正極材の粉末を得た。
[0025](実施例27)
実施例27として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、金属塩を塩化物とし、リチウム含有炭酸塩を析出させた後、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、濾過する以外は、実施例1?26と同様の処理を行った。
[0026](実施例28)
実施例28として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、金属塩を硫酸塩とし、リチウム含有炭酸塩を析出させた後、飽和炭酸リチウム溶液で洗浄し、濾過する以外は、実施例1?26と同様の処理を行った。
[0027](実施例29)
実施例29として、原料の各金属を表1に示すような組成とし、焼成を大気圧下ではなく120KPaの加圧下で行った以外は、実施例1?26と同様の処理を行った。」

(甲2ウ)表1として、以下の表が記載されている。
[表1]


(2)甲2発明について
ア 成分組成について
上記摘記(甲2イ)の式(W(g)=73.9×14×(1+0.5X)×A)におけるAとして、実施例9?11及び29では硝酸塩であるから0.9を、実施例27では塩化物であるから1.0を、実施例28では硫酸塩であるから1.0を代入し、Wとして各々上記表1のLi_(2)Co_(3)(g)を代入すると、Li_(x)(Ni_(y)M_(1-y))O_(z)におけるxの値は実施例9?11では1.00、実施例12では1.02、実施例13では1.04、実施例27?29では1.00となる。
してみれば、上記表1の実施例から、組成がLi_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.04)であるリチウムニッケル複合酸化物が記載されている。

イ 甲2発明
上記アを踏まえれば、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「組成がLi_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.04)であるリチウムニッケル複合酸化物粉末。」

3 甲3について
(1)甲3には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。
(甲3ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解質二次電池用正極活物質に適したリチウムニッケル複合酸化物及びそれを用いた非水系電解質二次電池に関するものである。」

(甲3イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
上記問題を解決するため、本発明者らは種々研究を進めた結果、以下の知見を得るに至った。
化合物の化学量論性は、X線回折のリートベルト解析(例えば、R.A.Young,ed.,“The Rietveld Method”,Oxford University Press(1992))における化合物の各イオンの席占有率を指標として用いることで評価可能であり、六方晶系の化合物の場合には、3a、3b、6cサイトにおいて、LiNiO_(2)が完全な化学量論組成の場合には3aサイトはLi、3bサイトはNi、6cサイトはOが、それぞれ100%の席占有率を示す。
【0029】
即ち、3aサイトのLiイオンの席占有率が97%以上であるようなリチウムニッケル複合酸化物は化学量論性に優れ、二次電池用活物質に対する指標として、このLi席占有率を考慮した場合、Liは脱離、挿入が可能なためLi欠損が生じても結晶の完全性が維持でき、従って、現実的には3aサイトの非リチウムイオンの混入率をもって化学量論性或いは結晶の完全性を示すと考えられる。」

(甲3ウ)「【0037】
更に、正極活物質の粉末が、小さな一次粒子が集合して二次粒子を形成している場合、個々の一次粒子をある程度成長させることによって二次粒子内部の一次粒子どうしの間に細かな隙間を形成することができ、それによって、その隙間に電解液がしみ込んで二次粒子内部まで電解液を介してLiイオンを供給することが可能となる。その結果、二次粒子全体にLiイオンが拡散する速度が速くなり、不可逆容量が低減するものである。
その場合の一次粒子の成長具合は、X線回折図形の003ピークから計算される結晶子径で判断することが可能で、結晶子径が73?200nmの範囲にあれば、充填性及び充放電特性を両立させる正極活物質が得られる。」

(甲3エ)「【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
各実施例及び比較例の正極活物質Li_(x)Ni_((1-y-z))Co_(y)M_(z)O_(2)の組成、未反応リチウム除去処理前の比表面積及びX線回折パターンのリートベルト解析から得られたLi主体層のLi席占有率、更に未反応リチウム除去処理を施した後の比表面積並びにX線回折パターンのリートベルト解析から得られたLi主体層のLi席占有率を表1に示す。
【0056】
各実施例及び比較例の正極活物質を用いて図1に示すような2032型のコイン電池10を作製し、電池評価を行った。
正極活物質粉末70質量%にアセチレンブラック20質量%及びPTFE10質量%を混合し、ここから150mgを取り出してペレットを作製し正極3とした。負極1にはリチウム金属を用い、電解液には1MのLiClO_(4)を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液(富山薬品工業製)を、セパレータ2に含浸して用い、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で作製した。図1において、4はガスケット、5は負極缶、6は正極缶、7は集電体である。
【0057】
この作製したコイン電池を24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm^(2)としてカットオフ電圧4.3Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。この方法で得られた初期充放電容量、不可逆容量を表2に示す。
【0058】
(実施例1)
x=1、y=0.15、z=0.03となるように、Niの15at%をCoに、3at%をAlに置換したLiNi_(0.82)Co_(0.15)Al_(0.03)O_(2)を合成するために、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸アルミニウムの混合物を、Ni、Co、Alのモル比が82:15:3になるよう適宜溶解させ、原料水溶液を作製した。
次に、この原料水溶液にアルカリ水溶液を注いで、共沈法でNi_(0.82)Co_(0.15)Al_(0.03)(OH)_(2)で固溶してなる金属複合水酸化物を得た。この得られた複合水酸化物の沈殿をろ過後、さらに水洗・ろ過し、大気雰囲気中で乾燥させ、更に電気炉を用いて700℃で10時間熱処理し、Ni、Co、Alのモル比が82:15:3で固溶してなる金属複合酸化物を得た。
【0059】
この金属複合酸化物と、市販の水酸化リチウム一水和物(FMC社製)とを、Liと金属元素(Ni+Co+Al)のモル比[Li/Ni+Co+M]が1.00となるように混合した後、混合機(不二パウダル社製スパルタンリューザー)を用いて十分混合し、ステンレス製の匣鉢を用い、昇温速度2°C/min、酸素雰囲気中で450℃、5時間保持した後、続けて750℃で20時間焼成し、室温まで炉冷して、焼成物である中間生成体を得て、これを解砕、分級した後、BET法を用いて粉末の比表面積を測定した。
次に、未反応リチウムの除去処理として、中間生成体と同じ重量の純水を加えて室温で30分撹拌し、未反応リチウムの除去を行い、これをろ過、真空乾燥してリチウムニッケル複合酸化物を得た。得られたリチウムニッケル複合酸化物を、BET法を用いて比表面積を測定した。
【0060】
この中間生成体をSEM観察したところ、一次粒子の平均粒径が0.2μmであり、これら一次粒子が複数集合して球状の二次粒子となっていることが確認された。又CuのKα線を用いたX線回折で分析したところ、六方晶型層状構造を有した所望の正極活物質であることが確認できた。この粉末X線回折パターンのリートベルト解析から、3aサイトのLiの席占有率を求めた。・・・」

(甲3オ)表1及び表2として、以下の表が記載されている。
【表1】

【表2】


(2)甲3発明について
ア 表1及び表2について
甲3に記載されている発明を認定するにあたり、まず、表2について検討する。上記表2を参照するに、「初期放電容量」が「初期充電容量」より大きくなっており、放電容量が充電容量より大きいということは、自然法則にも反することであり、技術的に正当なものではない。また、表1についても、甲3に記載されている技術においては、摘記(甲3ウ)に記載されているとおり、結晶子径[nm]は200nm以下でなければならないところ、表1の実施例の結晶子径は、それよりいずれも1桁大きく200nmを上回るものしか記載されていないことから、表1は、甲3に記載されている技術を表すものとして正しく記載されているものとはいえない。
この点、表2において「初期放電容量」と「初期充電容量」は互いに逆に記載されたものと解すれば技術的に正当なものとなり、また、表1における結晶子径は、単位をオングストロームとした時の値を記載されたもの、すなわち、nmの単位としては一桁下げた数値として解すれば、甲3に記載されている技術と整合するものである。
なお、甲3は、特許出願の公開公報であるが、甲3の特許出願は、上記表1及び表2について技術的に正しく補正された上で特許権の設定登録がなされ、その特許公報の表1及び表2は、以下のように記載されている。
【表1】

【表2】


以上のことから、摘記(甲3オ)の表1の結晶子径[nm]の値は、一桁下げた数値として、表2の「初期放電容量」と「初期充電容量」とは互いに逆に記載されたものとして解することが相当である。

イ リチウムサイトのメタル席占有率(%)と結晶子サイズ(nm)の積について
上記表1のLi席占有率[%]は、摘記(甲3オ)からしてX線回折のリートベルト解析から得られるものであり、また、リチウムサイトのメタル席占有率(%)は、100からLi席占有率[%]の値を引いたものとなる。
してみると、表1の実施例8について、リチウムサイトのメタル席占有率(%)と結晶子サイズ(nm)の積を計算すると、実施例8:1.6(%)×88(nm)=141である。

ウ 成分組成について
上記表1の実施例8から、組成がLi_(1.05)Ni_(0.82)Co_(0.15)Mn_(0.03)O_(2)であるリチウムニッケル複合酸化物粒子粉末が記載されている。

エ 甲3発明
上記ア?ウを踏まえれば、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。
「組成がLi_(1.05)Ni_(0.82)Co_(0.15)Mn_(0.03)O_(2)であるリチウムニッケル複合酸化物であって、X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とX線回折図形の003ピークから計算される結晶子サイズ(nm)の積が141であるリチウムニッケル複合酸化物粒子粉末。」

4 甲4について
(1)甲4には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した
(甲4ア)「【0091】
実施例1
<ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の製造>
ドラフトチューブ、バッフル、羽根型攪拌機を具備した有効容積10Lの反応器内に、イオン交換水を8L張り、十分な攪拌をしながら、温度を40℃に調整し、pH=12.0となるように4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。またアンモニア濃度が0.80mol/lとなるように4mol/lのアンモニア水溶液を滴下した。1.5mol/lの硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸マンガン混合水溶液を、平均で0.08mol/(l・hr)の供給速度とし、連続的に反応器に供給した。同時にpH=12、アンモニア濃度が0.8mol/lとなるように4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液、4mol/lのアンモニア水溶液を連続的に供給した。速やかに生成したニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子スラリーの一部を連続的に反応器中段(反応液底部から50%の部分)から抜き出し、0.4Lの濃縮器で濃縮された濃縮スラリーを反応器中の反応スラリーの旋回流と同方向に戻し、目標平均粒子径まで成長させた。その時の反応器内のニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子濃度は4mol/lであった。
【0092】
反応後、取り出した懸濁液を、フィルタープレスを用いて水洗を行った後、150℃で12時間乾燥を行い、ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子(ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子)を得た。・・・
【0093】
実施例2?8
組成、反応温度、pH、反応濃度を種々変化させた以外は前記実施例1と同様にしてニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を得た。」

(甲4イ)「【0103】
実施例9
<正極活物質の製造>
実施例1で得られたニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末とリチウム化合物とを、リチウム/(コバルト+ニッケル+マンガン)のモル比が1.05となるように所定量を十分混合し、混合粉を大気中で、950℃で10時間焼成してリチウム複合酸化物粒子粉末を得た。・・・
【0110】
実施例10?16、比較例5、6
ニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末の種類、リチウム/(コバルト+ニッケル+マンガン)のモル比及び焼成温度を種々変化させた以外は実施例9と同様にして、リチウム複合酸化物粒子粉末を得た。
【0111】
このときの製造条件、得られたリチウム複合酸化物粒子粉末の複合諸特性、及び電池特性を表3に示す。」

(甲4ウ)表3として、以下の表が記載されている。
【表3】


(2)甲4発明について
ア 成分組成について
上記表3の実施例9?12からして、組成がLi_(X)Ni_(0.49)Co_(0.20)Mn_(0.31)O_(z)(1.01≦x≦1.05)であるリチウム複合酸化物粒子粉末が記載されている。ここで、Ni、Co及びMnのモル比率は、上記表3のNi、Co、Mnのmol%の値を有効数字を2桁として四捨五入したものである。

イ 甲4発明
上記アを踏まえれば、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。
「硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸マンガン混合水溶液を連続的に反応器に供給し、同時にアンモニア濃度が0.8mol/lとなるように4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液、4mol/lのアンモニア水溶液を連続的に供給し、生成したニッケル・コバルト・マンガン系化合物粒子粉末を水洗、乾燥を行いニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子を得て、
ニッケル・コバルト・マンガン複合水酸化物粒子とリチウム化合物とを十分混合し、混合粉を大気中で焼成して、リチウム複合酸化物粒子粉末が得られた、
組成がLi_(x)Ni_(0.49)Co_(0.20)Mn_(0.31)O_(z)(1.01≦x≦1.05)であるリチウム複合酸化物粒子粉末。」

第5 申立理由についての判断
1 申立理由1について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)甲3発明の「組成がLi_(1.05)Ni_(0.82)Co_(0.15)Mn_(0.03)O_(2)であるリチウムニッケル複合酸化物」におけるCoとMnのモル比率は5:1で、本件特許発明1の「組成がLi_(x)(Ni_(y)Co_(2(1-y)/5)Mn_(3(1-y)/5))_(1-z)M_(z)O_(2)(1.00≦x≦1.10、0.65<y<0.82、0≦z≦0.05、MはAl、Zr、Mgから選ばれる少なくとも一種の元素)」におけるCoとMnのモル比率である2:3と異なるものであるから、組成の点において両者は異なるものである。

(イ)してみれば、本件特許発明1と甲3発明とは、
(一致点)
「Li-Ni複合酸化物粒子粉末。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
組成について、本件特許発明1が「Li_(x)(Ni_(y)Co_(2(1-y)/5)Mn_(3(1-y)/5))_(1-z)M_(z)O_(2)(1.00≦x≦1.10、0.65<y<0.82、0≦z≦0.05、MはAl、Zr、Mgから選ばれる少なくとも一種の元素)」でCoとMnのモル比率である2:3であるのに対し、甲3発明は「Li_(1.05)Ni_(0.82)Co_(0.15)Mn_(0.03)O_(2)」でCoとMnのモル比率は5:1である点。

(相違点2)
本件特許発明1では「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下」であるのに対し、甲3発明では、「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とX線回折図形の003ピークから計算される結晶子サイズ(nm)の積が141」である点。

イ 判断
相違点1は、組成が重複せず異なることから、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、相違点2について検討するまでもなく、甲3発明ではない。

(2)本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、いずれも、本件特許発明1を引用してさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明ではない。

(3)まとめ
本件特許発明1?5は、甲3発明ではなく、上記第3の申立理由1によっては、請求項1?5に係る特許は取り消せない。

2 申立理由2について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「組成がLi_(x)Ni_(0.49)Co_(0.20)Mn_(0.31)O_(z)(1.01≦x≦1.05)であるリチウム複合酸化物粒子粉末」におけるCoとMnのモル比率は約2:3で、本件特許発明1の「組成がLi_(x)(Ni_(y)Co_(2(1-y)/5)Mn_(3(1-y)/5))_(1-z)M_(z)O_(2)(1.00≦x≦1.10、0.65<y<0.82、0≦z≦0.05、MはAl、Zr、Mgから選ばれる少なくとも一種の元素)」におけるCoとMnのモル比率である2:3と同じといえるものの、甲4発明のNiのモル比率が0.49であるのに対し、本件特許発明1のNiのモル比率は、yが0.65<y<0.82でy(1-z)は約0.62(0.65×0.95)超え0.82(0.82×1)未満であり、両者は重複していないことから、組成の点において両者は異なるものである。

(イ)してみれば、本件特許発明1と甲1発明とは、
(一致点)
「Li-Ni複合酸化物粒子粉末。」
の点で一致し、以下の点で相違する

(相違点1)
組成について、本件特許発明1が「Li_(x)(Ni_(y)Co_(2(1-y)/5)Mn_(3(1-y)/5))_(1-z)M_(z)O_(2)(1.00≦x≦1.10、0.65<y<0.82、0≦z≦0.05、MはAl、Zr、Mgから選ばれる少なくとも一種の元素)」でNiのモル比率のy(1-z)は約0.62超え0.82未満であるのに対し、甲4発明は「Li_(x)Ni_(0.49)C_(0.2)Mn_(0.31)O_(z)(1.01≦x≦1.05)」でNiのモル比率が0.49である点。

(相違点2)
本件特許発明1では「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下」であるのに対し、甲4発明では、それについて特定されていない点。

イ 判断
相違点1は、組成が重複せず異なることから、実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は、相違点2について検討するまでもなく、上記相違点1で相違するため、甲4発明ではない。

(2)本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、いずれも、本件特許発明1を引用してさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲4発明ではない。

(3)まとめ
本件特許発明1?5は、甲4発明ではなく、上記第3の申立理由2によっては、請求項1?5に係る特許は取り消せない。

3 申立理由3について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「リチウムニッケル複合酸化物の粉砕物」は、粉砕物が粒子粉末といえることから、本件特許発明1の「Li-Ni複合酸化物粒子粉末」に相当する。
そして、甲1発明の「Li_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.10、2.21≦z≦2.35)」と本件特許発明1「Li_(x)(Ni_(y)Co_(2(1-y)/5)Mn_(3(1-y)/5))_(1-z)M_(z)O_(2)(1.00≦x≦1.10、0.65<y<0.82、0≦z≦0.05、MはAl、Zr、Mgから選ばれる少なくとも一種の元素)」とは、「Li_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.10)」の点で共通しているといえる。

(イ)してみれば、本件特許発明1と甲1発明とは、
(一致点)
「組成がLi_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.10)であるLi-Ni複合酸化物粒子粉末。」
の点で一致し、以下の点で相違する

(相違点1)
酸素のモル比率zが、本件特許発明1では「2」であるのに対し、甲1発明では「2.21≦z≦2.35」である点。

(相違点2)
本件特許発明1では「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下」であるのに対し、甲1発明では、それについて特定されていない点。

イ 判断
(ア)相違点2について
請求人の提出した甲1?甲4において、リチウムサイトのメタル席占有率、結晶子サイズについて言及のあるのは甲3のみである。
そこで、甲3について検討するに、甲3には上記第4の3(1)に摘記した事項が記載されており、それより、X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とX線回折図形の003ピークから計算される結晶子サイズ(nm)の積を、第4の3(2)ア及びイで説示した実施例8以外についても計算すると、実施例1:372、実施例2:288、実施例3:189、実施例4:134、実施例5:106、実施例6:102、実施例7:133であり、「700以上、1400以下」の範囲から逸脱している。
さらに、甲3には、リチウムニッケル複合酸化物粒子粉末の特性(初期放電容量、初回充放電効率)を「リチウムサイトののメタル席占有率(%)」と「結晶子サイズ(nm)」の「積」で制御するという技術思想が開示されていないことから、甲1発明に甲3の記載事項を適用する動機付けはなく、そして、適用したとしても、X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が「700以上、1400以下」であるという範囲が導出されるものではない。

(イ)効果について
本件特許発明1は、下記の5の表2に記載されているように、「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下」としたことにより、初期放電容量を高くすると同時に、初回の充放電効率が高くできるという、当業者が予期し得ない効果が得られたものである。

ウ 小括
したがって、本件特許発明1は、相違点1について検討するまでもなく、相違点2の点で、甲1発明及び甲3、甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものでもない。
加えて、上記1及び2で説示したとおり、甲3発明及び甲4発明は、本件特許発明1と組成の点で相違し、かつ、「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下」とした点が導出されないのであるから、本件特許発明1は、甲3発明又は甲4発明に基づいても、当業者が容易に発明することができたものではない。

(2)本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、いずれも、本件特許発明1を引用してさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲1、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)まとめ
本件特許発明1?5は、甲1、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものともいえないことから、上記第3の申立理由3によっては、請求項1?5に係る特許は取り消せない。

4 申立理由4について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「リチウムニッケル複合酸化物粉末」は、本件特許発明1の「Li-Ni複合酸化物粒子粉末」に相当する。
そして、甲2発明の「Li_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.04)」と本件特許発明1「Li_(x)(Ni_(y)Co_(2(1-y)/5)Mn_(3(1-y)/5))_(1-z)M_(z)O_(2)(1.00≦x≦1.10、0.65<y<0.82、0≦z≦0.05、MはAl、Zr、Mgから選ばれる少なくとも一種の元素)」とは、「Li_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.04)」の点で共通しているといえる。

(イ)してみれば、本件特許発明1と甲2発明とは、
(一致点)
「組成がLi_(x)Ni_(0.75)Co_(0.10)Mn_(0.15)O_(z)(1.00≦x≦1.04)であるLi-Ni複合酸化物粒子粉末。」
の点で一致し、以下の点で相違する

(相違点1)
酸素のモル比率zが、本件特許発明1では「2」であるのに対し、甲2発明では不明である点。

(相違点2)
本件特許発明1では「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が700以上、1400以下」であるのに対し、甲2発明では、それについて特定されていない点。

イ 判断
(ア)相違点2について
相違点2についての判断は、上記3のイ(ア)で説示したとおりであり、甲3には、リチウムニッケル複合酸化物粒子粉末の特性(初期放電容量、初回充放電効率)を「リチウムサイトのメタル席占有率(%)」と「結晶子サイズ(nm)」の「積」で制御するという技術思想が開示されていないことから、甲2発明に甲3の記載事項を適用する動機付けはなく、そして、適用したとしても、X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積が「700以上、1400以下」であるという範囲が導出されるものではない。

(イ)効果について
本件特許発明1の効果についても、上記3のイ(イ)で説示したとおりである。

ウ 小括
したがって、本件特許発明1は、相違点1について検討するまでもなく、相違点2の点で、甲2発明及び甲3、甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
加えて、本件特許発明1は、甲3発明又は甲4発明に基づいても、当業者が容易に発明することができたものではないことは、上記3(1)ウで説示したとおりである。

(2)本件特許発明2?5について
本件特許発明2?5は、いずれも、本件特許発明1を引用してさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲2、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)まとめ
本件特許発明1?5は、甲2、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものともいえないことから、上記第3の申立理由4によっては、請求項1?5に係る特許は取り消せない。

5 申立理由5
上記3及び4で説示したとおり、本件特許発明1は、甲1、甲3及び甲4に記載された発明に基づいても、甲2、甲3及び甲4に記載された発明に基づいても、当業者が容易に発明することができたものともいえないことから、本件特許発明1は、甲1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく、そして、本件特許発明2?5は、いずれも、本件特許発明1を引用してさらに限定した発明であるから、甲1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、上記第3の申立理由5によっては、請求項1?5に係る特許は取り消せない。

6 申立理由6について
本件特許明細書の実施例1?16及び比較例1?14の結果が示されたものが、以下の表2である
【表2】


これを参照するに、実施例1?16においては、「X線回折のリートベルト解析から得られるリチウムサイトのメタル席占有率(%)とリートベルト解析から得られる結晶子サイズ(nm)の積」(以下「積」という)が全て「700以上、1400以下」を満たしており、初期放電容量(mAh/g)が191.1?208.3であり、初回の充放電効率(%)が93.2?94.6となっているのに対し、700未満である比較例1、5及び9(積:418.9?532.5)の初期放電容量は188.7?192.9で、初回の充放電効率は86.2?88.5であり、また、1400を超える比較例2、6及び10(積:1606.0?1696.5)の初期放電容量は184.3?194.5で、初回の充放電効率は86.3?89.9である。これから、上記積が「700以上、1400以下」を満たすものにおいて、初期放電容量と初回の充放電効率との両方が相対的に高い値となっており、700未満あるいは1400を超えるものにおいては、「700以上、1400以下」を満たすものに比べて初期放電容量と初回の充放電効率との両方が相対的に低い値になっている。
してみれば、初期放電容量と初回の充放電効率との両方が高い値となるという点において、積が「700以上、1400以下」の範囲で十分にサポートされているものといえる。そして、積が「700以上、1400以下」であることと、本件特許発明1で特定される組成であることと相まって、本件特許発明1の「非水電解質二次電池の正極活物質として用いた場合に、放電容量が高く、初回の充放電効率に優れるLi-Ni複合酸化物粒子粉末を得ることを技術的課題とする」(【0014】)課題を解決できるものである。
よって、本件特許発明1及びそれを引用する本件特許発明2?5は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないことから、上記第3の申立理由6によっては、請求項1?5に係る特許は取り消せない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許が、特許法第113条第2号又は同条第4号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-12-27 
出願番号 特願2014-542140(P2014-542140)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C01G)
P 1 651・ 121- Y (C01G)
P 1 651・ 537- Y (C01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浅野 昭粟野 正明村岡 一磨  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 山本 雄一
三崎 仁
登録日 2017-03-24 
登録番号 特許第6112118号(P6112118)
権利者 戸田工業株式会社
発明の名称 Li-Ni複合酸化物粒子粉末並びに非水電解質二次電池  
代理人 岡田 数彦  
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