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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04B
審判 一部申し立て 特174条1項  E04B
審判 一部申し立て 2項進歩性  E04B
管理番号 1336198
異議申立番号 異議2017-700629  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-21 
確定日 2018-01-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6047139号発明「内張断熱パネル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6047139号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6047139号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成24年9月13日(優先権主張平成23年9月16日、平成24年4月9日)に出願した特願2012-201123号の一部を平成26年12月3日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月25日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人松本薫生(以下「申立人」という。)より請求項1、2に対して特許異議の申立てがされ、平成29年9月15日付けで取消理由が通知され(発送日:同年9月22日)、同年11月20日に意見書の提出がされたものである。

第2 特許異議の申立てについて
1 請求項1、2に係る発明
請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された、以下のとおりのものである。

本件発明1
「【請求項1】
既存建物の既存壁の室内側から取り付ける内張断熱パネルであって、
上下に長い長方形状の厚さが9.5mmの石膏ボードからなる内装下地材と、両面に不織布からなる面材が積層された厚さが20mm又は25mmのフェノール樹脂発泡体からなり、前記内装下地材と同一寸法の長方形状である断熱材とが、あらかじめ接着剤で積層された積層体(ただし、接着剤が塗布された部分と接着剤が塗布されていない部分とが混在しているものを除く)とされており、前記断熱材は、透湿率が0.00072g/m・h・mmHg以下でかつ熱伝導率が0.040W/m・K以下でかつ熱抵抗値が0.30m2・K/W以上であり、
前記積層体は、既存壁の既存内装下地材上に内装側から積層することを特徴とする内張断熱パネル。」

本件発明2
「【請求項2】
内装下地材と断熱材との間に防湿層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の内張断熱パネル。」

2 取消理由の概要
平成29年9月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件の請求項2に係る特許は、特許請求の範囲の請求項2の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものである。
(3)平成28年8月22日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件の請求項1、2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものである。

3 甲各号証の記載
甲第1号証:CD-ROM 耐火 防火 構造・材料、認定番号 準不燃(個)第2685号、新日本法規出版株式会社、2001年6月、2001年6月版(第13版)、920-241?920-246頁
甲第2号証:自由提案型優良住宅部品認定基準 断熱改修用内装パネル(壁・天井)ユニット(BL-bs)、一般財団法人ベターリビング、2011年3月4日、表紙、目次、p.1-7、解説p.1
甲第3号証:建築防火防災法規の解説、新日本法規出版株式会社、平成2年10月11日発行、表紙、p.12、13、144-146、裏付
甲第4号証:日本工業規格 せっこうボード製品 JIS A 6901、日本規格協会、平成6年2月1日、表紙、p.1-11、p.13-17
甲第5号証:環境の保全に寄与する自由提案型優良住宅部品(BL-bs部品)「断熱改修用内装パネルユニット」の認定、一般財団法人ベターリビング、2011年4月22日、インターネット<URL:http://www.cbl.or.jp/info/291.html>
甲第6号証:特許第3523196号公報
甲第7号証:特開平9-111902号公報
甲第8号証:特開2002-161590号公報
甲第9号証:特開2005-42447号公報
甲第10号証:特開2005-330694号公報
甲第11号証:日本工業規格 発泡プラスチック保温材 JIS A 9511、日本規格協会、平成18年11月20日、表紙、裏表紙、目次、まえがき、p.1-28、裏付
甲第12号証:特開2000-136580号公報
甲第13号証:CD-ROM 耐火 防火 構造・材料、認定番号 準不燃(個)第2647号、新日本法規出版株式会社、2001年6月、2001年6月版(第13版)、920-59?920-63頁
甲第14号証:「フェノバボード」を構成材とする断熱リフォーム用壁パネルの開発について、積水化学工業株式会社、2011年10月13日、インターネット<URL:https://www.sekisui.co.jp/print/newspr11/1220171_7093.html>
甲第15号証:ウッドワン 内装用断熱改修パネル「あったかべ」、株式会社ナカガワ、2012年1月26日、インターネット<URL:http://www.kk-nakagawa.co.jp/item/2012/01/post-1.html>
甲第16号証:カタログ「高断熱壁耐火構造認定「フェノバ」耐火断熱ウォール工法」、積水化学工業株式会社、2009年7月

(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「品目名 フェノールフォーム裏張り石膏ボード」(920-241頁)
(イ)「1.主たる用途 建築物の壁又は天井」(920-241頁)
(ウ)「3.製品の形状、寸法等
(3)厚さt(mm) 29土2、34±2
(4)大きさ(mm) 910(±3)×1,820(±5)」(920-241頁)
(エ)「5.構成(組成)、断面図(単位 mm)
(1)基材:石膏ボード 厚さ 9mm、
(2)裏張り材:フェノールフォーム
(3)裏打ち材:石綿紙 厚さ0.25mm」(920-241?920-242頁)
(オ)「7.標準施工図(単位 mm)」(920-244頁)
(カ)「準不燃材料」(920-246頁)
(キ)標準施工図から、石膏ボードとフェノールフォームとが同一寸法であり、長方形状であることが看て取れる。

イ 甲第1号証に記載された発明の認定
甲第1号証には、上記アを踏まえると、申立人が主張するとおり、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「910(±3)mm×1、820(±5)mmの長方形状の厚さ9mmの石膏ボードと、厚さ0.25mmの石綿紙が片面に積層されたフェノールフォームからなり、石膏ボードと同一寸法の長方形状のフェノールフォームとが、あらかじめ積層された厚さ29±2mm又は34±2mmのフェノールフォーム裏張り石膏ボード」

(2)甲第13号証について
ア 甲第13号証の記載事項
甲第13号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「品目名 フェノールフォーム裏張り石膏ボード」(920-59頁)
(イ)「1.主たる用途 建築物の天井又は壁」(920-59頁)
(ウ)「3.製品の形状,寸法等
(3)厚さt(mm) 30士2、35±2
(4)幅(mm) 455・606・910・1,000・1,210
(5)長さ(mm) 910・1,000・1,210・1,820・2,000・2,120・2,425・2,730」(920-59頁)
(エ)「5.構成(組成),断面図
表面材 石膏ボード・・・厚さ9mm
裏面材 片面ガラスペーパー張フェノールフォーム」(920-59頁)
(オ)「7.標準施工図(単位 mm)」(920-61頁)
(カ)「準不燃材料」(920-63頁)
(キ)標準施工図から、石膏ボードとフェノールフォームとが同一寸法であり、長方形状であることが看て取れる。

イ 甲第13号証に記載された発明の認定
甲第13号証には、上記アを踏まえると、申立人が主張するとおり、次の発明(以下「甲13発明」という。)が記載されていると認められる。

「455?1210mm×910?2730mmの長方形状の厚さ9mmの石膏ボードと、ガラスペーパーが片面に積層されたフェノールフォームからなり、石膏ボードと同一寸法の長方形状のフェノールフォームとが、あらかじめ積層された厚さ30±2mm又は35±2mmのフェノールフォーム裏張り石膏ボード」

(3)甲第14号証について
ア 甲第14号証の記載事項
甲第14号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「「フェノバボード」を構成材とする断熱リフォーム用壁パネルの開発について」(1頁1行)
(イ)「本商品は、既存住宅の内側から施工することで、居住しながら断熱リフォームを行うことができるのが特徴」(1頁6?7行)
(ウ)「部屋の内側から施工できる「フェノバパネルWO」を開発しました。建築用としては最高クラスの断熱材である「フェノバボード」と・・・」(1頁14?15行)
(エ)「断熱材と石こうボードを一体化したパネル状」(1頁20行)
(オ)「必要な部屋だけ内側から増し貼りすることで断熱性能を向上」(1頁25行)
(カ)「<3.ベターリビング認定品>
・財団法人ベターリビングよりBL認定(環境保全に寄与する優良住宅部品の認定)を取得しています。」(1頁30-31行)
(キ)「商品寸法:厚み24.5mm×幅910mm×長さ1820mm」(1頁35行)

イ 甲第14号証に記載された発明の認定
甲第14号証には、上記アを踏まえると、申立人が主張するとおり、次の発明(以下「甲14発明」という。)が記載されていると認められる。

「既存住宅の内側から増し貼りできる、上下に長い長方形状の石膏ボードと、断熱材であるフェノバボードとを予め一体化した、BL認定を取得した断熱リフォーム用壁パネル(フェノバパネルWO)」

(4)甲第2号証について
甲第2号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。

「既存壁に増し貼りされる、壁パネルユニットにおけるパネル面材として準不燃材料を用いること」

(5)甲第3号証について
甲第3号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

「既存建物の壁の室内に面する部分の仕上げに準不燃材料を用いること」

(6)甲第4号証について
甲第4号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

「建物の壁等に用いる仕上げ材のせっこうボード製品において、石膏ボードの厚さを9.0mmから9.5mmとすること」

(7)甲第5号証について
甲第5号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。

「既存住宅の壁面に部屋内から増し貼りする、断熱材と厚さ9.5mmのせっこうボード表面材とを一体的に成形したせっこうボードタイプの断熱改修用内装パネルユニット」

(8)甲第6号証について
甲第6号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。

「両面に不織布からなる面材を積層した断熱板用フェノール樹脂発泡体積層板」

(9)甲第7号証について
甲第7号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。

「フェノールフォームである発泡プラスチック系断熱材と石膏ボードとが、接着剤を用いて、予め全面にわたって接着された断熱内装壁パネル」

(10)甲第8号証について
甲第8号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。

「合板等の構造材と、断熱材としてのフェノールフォームとが、予め全面にわたって接着剤で接着された断熱パネル」

(11)甲第9号証について
甲第9号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲9技術」という。)が記載されていると認められる。

「断熱材層の表面に接着材が全面に存在して、断熱材層と厚み5?20mmの石膏ボードであるボード材料とが、予め貼り付けられてなる断熱構造」

(12)甲第10号証について
甲第10号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲10技術」という。)が記載されていると認められる。

「断熱材と合板等とを接着剤で貼り合わせた断熱パネルにおいて、断熱材と面材との接着面積を100%とすることで断熱材と面材との接着剥離強度をあげることができること」

(13)甲第11号証について
甲第11号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲11技術」という。)が記載されていると認められる。

「不織布面材間で発泡させた面材付きの保温板であって、厚さ25mm、透湿率0.00072g/m・h・mmHg以下、熱伝導率0.022W/m・K以下、熱抵抗値1.14m^(2)・K/W以上であるフェノールフォーム保温材」

(14)甲第12号証について
甲第12号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲12技術」という。)が記載されていると認められる。

「室内側面部材と断熱材との間に防湿フィルムを設けること」

(15)甲第15号証について
甲第15号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲15技術」という。)が記載されていると認められる。

「石膏ボードと、断熱材とを予め一体化した、BL認定を取得した、フェノバパネルWOと同一品である内装用断熱改修パネル」

(16)甲第16号証について
甲第16号証には、申立人が主張するとおり、次の技術事項(以下「甲16技術」という。)が記載されていると認められる。

「厚さ20mm又は25mm、透湿率0.0003g/m・h・mmHg、熱伝導率0.019W/m・K、熱抵抗値1.05m^(2)・K/W又は1.32m^(2)・K/Wであるフェノールフォーム断熱材(フェノバボード)」

4 取消理由の特許法第29条第2項について
(1)甲第1号証を主引例として
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明は、少なくとも以下の相違点1で相違する。

<相違点1>
「フェノール樹脂発泡体」について、本件発明1が「両面に不織布からなる面材が積層された」「フェノール樹脂発泡体」であるのに対し、甲1発明は「石綿紙が片面に積層されたフェノールフォーム」である点。

(イ)判断
相違点1について検討するに、甲第6号証には相違点1に係る「両面に不織布からなる面材を積層した断熱板用フェノール樹脂発泡体積層板」が記載されているものの、当該「断熱板用フェノール樹脂発泡体積層板」を他の下地材にどのように積層するかについては記載されていない。
また、甲1発明の「フェノールフォーム」は片面のみに「石綿紙」が積層されているものであり、さらに甲第1号証には「石膏ボード」と「フェノールフォーム」との間に紙、布等の介在物(面材)が存在するとは記載されておらず、そのような片面のみに「石綿紙」が積層された「フェノールフォーム」に代えて、上記したように他の下地材との関係について明示されていない「両面に不織布からなる面材を積層した断熱板用フェノール樹脂発泡体積層板」を採用する動機付けはないというべきである。
申立人は、申立書において「建築用断熱材料として両面に不織布からなる面材を積層した断熱材としてのフェノール樹脂発泡体を用いることは周知の技術である。甲1発明の建築物の壁を主たる用途とするフェノールフォーム裏張り石膏ボードにおいて、断熱材を両面に不織布からなる面材が積層された周知のフェノール樹脂発泡体とすることは、当業者が適宜なし得たことである。」(申立書25頁下から2行?26頁5行)と主張するが、上記したように甲6技術を甲1発明に適用する動機付けはないというべきであり、当該主張は採用できない。
また、その他の証拠である甲第2号証?甲第5号証、甲第7号証?甲第12号証、甲第15号証、甲第16号証には、相違点1に係る構成は開示されていない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(ウ)小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証?甲第12号証、甲第15号証、甲第16号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア(イ)参照)により、甲1発明及び甲第2号証?甲第12号証、甲第15号証、甲第16号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)甲第13号証を主引例として
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲13発明の対比
本件発明1と甲13発明は、少なくとも以下の相違点2で相違する。

<相違点2>
「フェノール樹脂発泡体」について、本件発明1が「両面に不織布からなる面材が積層された」「フェノール樹脂発泡体」であるのに対し、甲13発明は「ガラスペーパーが片面に積層されたフェノールフォーム」である点。

(イ)判断
相違点2について検討するに、相違点2は上記相違点1と実質的に同様であるから、上記(1)ア(イ)と同様の理由により、甲13発明において、相違点2に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(ウ)小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲13発明及び甲第2号証?甲第12号証、甲第15号証、甲第16号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア(イ)参照)により、甲13発明及び甲第2号証?甲第12号証、甲第15号証、甲第16号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)甲第14号証を主引例として
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲14発明の対比
本件発明1と甲14発明は、少なくとも以下の相違点3で相違する。

<相違点3>
断熱材について、本件発明1が「両面に不織布からなる面材が積層された」「フェノール樹脂発泡体」であるのに対し、甲14発明はそのような構成を有しない点。

(イ)判断
相違点3について検討するに、相違点3は上記相違点1と実質的に同様であるから、上記(1)ア(イ)と同様の理由により、甲14発明において、相違点3に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(ウ)小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲14発明及び甲第2号証?甲第12号証、甲第15号証、甲第16号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア(イ)参照)により、甲14発明及び甲第2号証?甲第12号証、甲第15号証、甲第16号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ
したがって、本件発明1、2は、甲第1号証?甲第16号証に記載された発明・事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

5 取消理由の特許法第36条第6項第2項について
申立人は、申立書において本件請求項2に関して、「本件特許発明1の内張断熱パネルは、内装下地材と断熱材とがあらかじめ接着剤で積層された積層体(ただし、接着剤が塗布された部分と接着剤が塗布されていない部分とが混在しているものを除く)であり、内装下地材と断熱材とは接着剤が塗布されていない部分がないように接着剤で積層された積層体である。してみると、本件特許発明2の「内装下地材と断熱材との間に防湿層が設けられていること」とは、防湿層がどのように設けられているか不明瞭である。」と主張している(申立書37頁14行?21行)。
本件請求項2には「内装下地材と断熱材との間に防湿層が設けられている」と記載されており、本件請求項1には「前記内装下地材と同一寸法の長方形状である断熱材とが、あらかじめ接着剤で積層された」と記載されていることから、接着剤で積層される内装下地材と断熱材の間に防湿層が設けられることを意味していると解することができ、不明瞭であるというほどではない。
したがって、請求項2に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が不明瞭ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

6 取消理由の特許法第17条の2第3項について
申立人は、申立書において、
「平成28年8月22日付けの手続補正書では、補正前の請求項1に「(ただし、接着剤が塗布された部分と接着剤が塗布されていない部分とが混在しているものを除く)」を追加する補正(以下、「補正A」という。)をしている。
しかしながら、出願当初の明細書には、内装下地材と断熱材との間の接着剤について、「断熱材の内装下地材への固定は、タッカー、ビス、くぎ、ネジなどの固定具による機械式固定、接着剤・テープなどによる接着式固定などの適宜な手段で行われる。」と記載されるに留まり(段落0014)、接着剤の塗布部分と非塗布部分の混在の有無については何ら記載されていない。すなわち、上記のように、実質的に、接着剤が非塗布部分なく塗布されることを特定する補正は、当初明細書等に明示的に記載された事項に基づくとはいえず、また、当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項ともいえない。
また、補正Aは、所謂「除くクレーム」とする補正を意図していたとも考えられる。ここで、「除くクレーム」は、補正により除外した後のクレームが、新たな技術的事項を導入するものである場合には、その補正は許されない。特許権者は、・・・接着剤が塗布された部分を特定したことによって得られる効果1?4が補正Aにより奏されることを主張しており、補正Aにより、補正前の請求項1に係る発明とは異なる効果が得られることは明白である。してみると、補正Aにより、当初明細書等の開示を超える新たな技術上の意義が追加されたことは明らかである。
したがって、積層体が「接着剤が塗布された部分と接着剤が塗布されていない部分とが混在しているものを除く」ものであることを特定する補正は、新たな技術的事項を導入するものであり、新規事項を追加する補正であるから、許されない。」と主張している(申立書37頁下から3行?39頁4行)。
上記補正に関して、内装下地材と断熱材を接着剤で積層する場合には、全面で接着すること、つまり「接着剤が塗布された部分と接着剤が塗布されていない部分とが混在しているものを除く」ように接着することは、きわめて一般的な接着手段であり、本件出願当初の明細書、図面において、全面で接着することを故意に排除するような記載がないことから見れば、「接着剤が塗布された部分と接着剤が塗布されていない部分とが混在しているものを除く」ことは当初の明細書、図面に記載されているに等しい事項ということができ、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。
したがって、平成28年8月22日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、本件の請求項1、2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対しされたものではない。

第3 むすび
以上のとおりであるから、平成29年9月15日付け取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-11 
出願番号 特願2014-245166(P2014-245166)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (E04B)
P 1 652・ 537- Y (E04B)
P 1 652・ 55- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 五十幡 直子土屋 真理子小池 俊次佐藤 美紗子  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 小野 忠悦
井上 博之
登録日 2016-11-25 
登録番号 特許第6047139号(P6047139)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 内張断熱パネル  
代理人 田口 昌浩  
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