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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B60J
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B60J
管理番号 1336405
審判番号 訂正2017-390081  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-08-15 
確定日 2017-12-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3904214号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3904214号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3904214号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成15年9月2日に特許出願され、平成19年1月19日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成28年12月26日に訂正審判が請求され、これに対し平成29年3月14日付けで訂正を認める旨の審決がなされ(平成29年3月24日確定)、さらにその後、平成29年8月15日に本件訂正審判が請求されたものであり、平成29年9月12日付けで審判請求書の請求の理由について手続補正がされている。

第2 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、特許第3904214号の明細書および特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部が訂正箇所。)。
訂正事項1
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲および図面(以下、「本件明細書等」という。なお、平成29年3月24日に確定した平成29年3月14日付けの、訂正認容審決により本件明細書等の特許請求の範囲は訂正されている。)の特許請求の範囲の請求項1に、「前記ヒンジ基部材は、前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される固定部と、ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される連結部とを有すると共に、」とあるのを、「前記ヒンジ基部材は、前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される固定部と、ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される上方向に突出した板状の連結部とを有すると共に、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2から請求項5も同様に訂正する)。
訂正事項2
本件明細書等の特許請求の範囲の請求項1に、「前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の前記連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され、」とあるのを、「前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2から請求項5も同様に訂正する)。
訂正事項3
本件明細書等の特許請求の範囲の請求項3に、「前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの側面部に取り付けられる」とあるのを、「前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの左右の側面部に取り付けられる」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項5も同様に訂正する)。
訂正事項4
本件明細書等の明細書の段落【0010】を、以下のとおり訂正する。
「前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両の後部構造は、車体のルーフパネルとサイドフレームの接続部分に前記車体の前後方向に形成されたモヒカン溝部を有すると共に、前記車体の後部に設置されたテールゲートをヒンジ手段で取り付けた車両の後部構造であって、前記ヒンジ手段は、前記モヒカン溝部に取り付けられるヒンジ基部材と、前記ヒンジ基部材に回動可能に取り付けられる前記テールゲートに取り付けられるゲートヒンジ部材と、を備え、前記ヒンジ基部材は、前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される固定部と、ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される上方向に突出した板状の連結部とを有すると共に、前記モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するカバー部材によって覆われ、前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の前記連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され、前記カバー部材は、前記テールゲートを回動させて開放したときに、前記ゲートヒンジ部材が入る切欠部を後端部に有し、前記テールゲートの上端のパーティングは、前記ヒンジピンから後方側に離れた位置に配置されていることを特徴とする。」
訂正事項5
本件明細書等の明細書の段落【0014】を、以下のとおり訂正する。
「請求項3に記載の車両の後部構造は、請求項2に記載の車両の後部構造であって、前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの左右の側面部に取り付けられることを特徴とする。」
訂正事項6
本件明細書等の明細書の段落【0015】を、以下のとおり訂正する。
「請求項3に記載の発明によれば、ゲートヒンジ部材は、テールゲートの左右の側面部に取り付けられることにより、ゲートヒンジ部材の取り付け作業をテールゲートの側面で行うことができるため、ゲートヒンジ部材の取り付け箇所が作業者に良く視認できるようになる。このため、ゲートヒンジ部材の取り付け作業は、締め付けボルトの設置位置を調整しながら容易に行うことができるので、取り付けの作業性を向上させることができる。
また、ゲートヒンジ部材とテールゲートとの固定部には、テールゲートの開閉時にゲートヒンジ部材がテールゲートから剥離する方向ではなく、せん断方向に力が加わるため、ボルト締めなどの手段によって大きな固定強度を得ることが可能となる。ヒンジ手段は、使用頻度がかなり高い部品であるが、それに耐えることができる強度と耐久性を備えさせることができる。」
訂正事項7
本件明細書等の明細書の段落【0020】を削除する。
訂正事項8
本件明細書等の明細書の段落【0021】を削除する。

第3 当審の判断
1.訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更について
(1)訂正事項1は、訂正後の請求項1に係る特許発明において、ヒンジ基部材の連結部が「上方向に突出した板状」であるという技術的限定を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、ヒンジ基部材が上方向に突出した板状である点は、明細書段落【0031】、【0032】、および【0048】と図4、6の記載から明らかであるといえるから、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるといえる。
そして訂正事項1により、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記連結部」の前には、ゲートヒンジ部材の前端部の連結部に関する記載が無かったので、訂正事項2によって、「連結部」が、ゲートヒンジ部材の前端部の連結部であることが初めて特定されたことを明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは明らかであり、そしてこれにより、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3は、訂正後の請求項3に係る特許発明において、ゲートヒンジ部材が、テールゲートの側面部に取り付けられことを、「左右の側面部に取り付けられる」ことと、さらに技術的に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、ゲートヒンジ部材が、テールゲートの左右の側面部に取り付けられている点は、明細書段落【0045】、あるいは図1、7に記載されているといえるから、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるといえる。
そして訂正事項3により、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4は、訂正事項1、2に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは、上記(1)(2)を踏まえて明らかであり、そしてこれにより、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5、6は、訂正事項3に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは、上記(3)を踏まえて明らかであり、そしてこれにより、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項7、8は、本件明細書等の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との間に齟齬が生じていたのを解消するためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは、明らかであり、そしてこれにより、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2.独立特許要件について
訂正事項1および訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。そこで、以下この点について検討する。

(1)訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明
訂正事項1および訂正事項3を含む訂正後の特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された以下のとおりである。
「【請求項1】
車体のルーフパネルとサイドフレームの接続部分に前記車体の前後方向に形成されたモヒカン溝部を有すると共に、前記車体の後部に設置されたテールゲートをヒンジ手段で取り付けた車両の後部構造であって、
前記ヒンジ手段は、前記モヒカン溝部に取り付けられるヒンジ基部材と、
前記ヒンジ基部材に回動可能に取り付けられる前記テールゲートに取り付けられるゲートヒンジ部材と、を備え、
前記ヒンジ基部材は、前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される固定部と、ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される上方向に突出した板状の連結部とを有すると共に、前記モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するカバー部材によって覆われ、
前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され、
前記カバー部材は、前記テールゲートを回動させて開放したときに、前記ゲートヒンジ部材が入る切欠部を後端部に有し、
前記テールゲートの上端のパーティングは、前記ヒンジピンから後方側に離れた位置に配置されていることを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの開閉方向に沿って延設され、前記テールゲートの開放時に前記カバー部材の切欠部を挿通する部分が前記テールゲートの開閉方向に沿って延設される板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの左右の側面部に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートに対して、車両の前後または高さ方向に調整可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記テールゲートを車体に固定するためのオープンステーは、前記ゲートヒンジ部材の取り付け部の近傍に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された車両の後部構造。」

(2)新規性進歩性について
ア 刊行物
本件訂正審判の請求人が提出した、本件特許の出願日の前に公開された刊行物1および刊行物2は、以下のとおりである。
刊行物1:実願昭63-156889号(実開平2-76519号)のマイクロフィルム
刊行物2:特開昭63-97782号公報
イ 刊行物1に記載の事項および発明
上記刊行物1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様である)。
(i)「本考案は自動車の後部車体構造に関し、特にガラスハッチを備えたハッチバック車の後部車体構造に関する。」(明細書部分第2ページ第1?3行)
(ii)「本考案の目的は、アウタヒンジ機構を採用しつつも自動車の外観の向上を図ることが出来、ヒンジやモールの組付性を向上し得る自動車の後部車体構造を提供することにある。」(明細書部分第5ページ第7?10行)
(iii)「自動車1の後部車体構造について説明すると、第1図に示すように、車体3の後部にはガラスハッチ4が装着されるバックドア開口部5が形成され、ルーフパネル6の左部及び右部には、ルーフパネル6とルーフサイドフレーム(第2図参照)とを溶接する為の前後方向向きの1対の溝部7(第3図参照)が形成され、溝部7にはルーフパネル6の上面と滑らかに連なる上面を有する合成樹脂製のモヒカンモール8が装着され、各溝部7の後端部とガラスハッチ4の前縁部とはアウタヒンジ機構9(第3図参照)により連結され、ガラスハッチ4の左右後端部と左右のリアピラ10の下端部とはガスステー11で夫々連結され、ガラスハッチ4はアウタヒンジ機構9及びガスステー11を介して車体3に開閉自在に連結支持されている。」(明細書部分第8ページ第1?16行)
(iv)「上記モヒカンモール8は、モール本体15とモール本体15の後端部に接着にて固着された端末ピース16とからなり、モール本体15は所定間隔おき設けられたボルト(図示略)で溝部7の底面に固着されている。
上記アウタヒンジ機構9ついて説明すると、第2図?第4図に示すように、端末ピース16の後端部内の上部には平板状の車体側ヒンジ部材17が装着され、車体側ヒンジ17の上面は外板部12の溝部7以外の部分の上面と下側近傍に位置し、車体側ヒンジ部材17の後端部には端末ピース16の後方へ突出する筒状のヒンジ部17aが形成され、車体側ヒンジ部材17の下面略中央部には端末ピース16及び溝部7の底部の外板部12部分を貫通して下方へ延びる左右1対のボルト18が固着され、端末ピース16は車体側ヒンジ部材17とともにボルト18とナット18aを介してルーフパネル6に固着されている。
上記ガラスハッチ4の前縁部には断面コ字状の合成樹脂又は金属製のモール19が車幅方向全域に亙ってガラスハッチ4の前縁部を挟持する状態で装着され、モール19はその上面が外板部12の上面と滑らかに連なるように設けられ、モール19の各溝部7に対向する位置にはハッチ側ヒンジ部材20がモール19と一体的に夫々形成され、モール19はハッチ側ヒンジ部材20において2本のボルト21とナット21aを介してガラスハッチ4に固着され、各ハッチ側ヒンジ部材20の前端略中央部には車体側ヒンジ部材17のヒンジ部17aを収容する収容部20bが切欠状に形成され、各ハッチ側ヒンジ部材20の前端部には収容部20bに臨む左右1対のヒンジ部20aが形成され、車体側ヒンジ部材17とハッチ側ヒンジ部材20とは両ヒンジ部17a・20aに挿通された左右方向向きのピン部材22を介して回動自在に連結されている。」(明細書部分第9ページ第7行?第11ページ第2行)
(v)「<第2変形例>
第7図・第8図に示すように、末端ピース16を省略してモヒカンモール8Bが溝部7の後端部まで設けられ、モヒカンモール8Bの後端上部には外板部12の上面と滑らかに連なる上面を有する車体側ヒンジ部材26が設けられ、車体側ヒンジ部材26の後端部には左右1対のヒンジ部26aが形成され、車体側ヒンジ部材26の前部26aが形成され、車体側ヒンジ部材26の前部内にはモヒカンモール8B及び溝部7の底部を貫通して下方へ延びるボルト18Bの頭部が固着され、モヒカンモール8Bの後端部は車体側ヒンジ部材26とともに溝部7の底部にボルト18Bとナット18aで固着される。
ガラスハッチ4の下面前縁部の各溝部7に対向する位置にはハッチ側ヒンジ部材27が2本のボルト21Bとナット21aで固着され、ハッチ側ヒンジ部材27の前端略中央部には車体側ヒンジ部材26のヒンジ部26a間に延びるヒンジ部27aが形成され、両ヒンジ部26a・27aには左右方向向きのピン部材22Bが挿通され、ガラスハッチ4は車体側ヒンジ部材26及びハッチ側ヒンジ部材27を介してピン部材22Bを中心に開閉可能に車体3に連結支持され、閉じた状態でその上面がルーフパネル6の上面に滑らかに一致するように連なっている。尚、上記車体側ヒンジ部材26とハッチ側ヒンジ部材27とピン部材22Bとでアウタヒンジ機構9Bが構成される。」(明細書部分第15ページ第1行?第16ページ第8行)
(vi)「上記第2変形例に係る後部車体構造によれば、前記と同様に、インナヒンジ機構の場合のように段部13を湾曲状に形成する必要がないので、湾曲状に成形するためのプレス工程を省略してルーフパネル6の加工性を向上出来、ヒンジ機構9Bが外板部12の上面外に突出せず、車体側ヒンジ部材26の上面と外板部12の上面とが同一面であり、また外板部12の上面とガラスハッチ4の上面とがフラッシュ・サーフェイスとなっているので、自動車1の外観を向上出来とともに空力特性を向上出来、ヒンジ機構9Bを上下方向にコンパクトに構成して車室を広く出来、モヒカンモール8Bと車体側ヒンジ部材26の組付性を向上出来る。」(明細書部分第16ページ第9行?第17ページ第2行)

以上より、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。ここで、引用発明は、主に、刊行物1の<第2変形例>に基づいて認定している。

「ルーフパネル6の左部及び右部に、ルーフパネル6とルーフサイドフレームとを溶接する為の前後方向向きの1対の溝部7が形成されると共に、車体3の後部にはアウタヒンジ機構9Bにより連結されたガラスハッチ4が装着されている自動車1の後部車体構造であって、
溝部7にはルーフパネル6の上面と滑らかに連なる上面を有するモヒカンモール8Bが溝部7の後端部まで設けられ、
アウタヒンジ機構9Bは車体側ヒンジ部材26とハッチ側ヒンジ部材27とピン部材22Bとで構成されるものであって、
モヒカンモール8Bの後端上部にはルーフパネル6の外板部12の上面と滑らかに連なる上面を有する車体側ヒンジ部材26が設けられ、車体側ヒンジ部材26の後端部には左右1対のヒンジ部26aが形成され、
ガラスハッチ4の下面前縁部の各溝部7に対向する位置にはハッチ側ヒンジ部材27が固着され、ハッチ側ヒンジ部材27の前端略中央部には車体側ヒンジ部材26のヒンジ部26a間に延びるヒンジ部27aが形成され、両ヒンジ部26a・27aには左右方向向きのピン部材22Bが挿通され、ガラスハッチ4は車体側ヒンジ部材26及びハッチ側ヒンジ部材27を介してピン部材22Bを中心に開閉可能に車体3に連結支持されているものである、
自動車1の後部車体構造。」

ウ 刊行物2に記載の事項
上記刊行物2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(i)「本発明は自動車のバツクドアヒンジ取付部構造に関する。」(第1ページ左下欄第15?16行)
(ii)「第1?4図において、1はバツクドアを示し、このバツクドア1の上端部にはバツクドアヒンジ10を装着してある。
このバツクドアヒンジ10は、バツクドア1の上端部に固定した可動アーム11と、この可動アーム11に軸支した固定アーム12とからなつていて、該固定アーム12には一対のボルト挿通孔13を形成してある。
車体パネル、例えばルーフパネル2の車体後部の開口部5寄りの両側部には、前記バツクドアヒンジ10の固定アーム12を受容する凹部3を形成してある。この凹部3には前記固定アーム12を取付けるベースブラケツト14を装着してある。ベースブラケツト14の底部は有段成形してあつて、この底部に一対のスタツドボルト16を突設してあり、周縁のフランジ15を前記凹部3上に形成したシート部18上にビス19固定して取付けてある。バツクドア1は、前記バツクドアヒンジ10の固定アーム12をベースブラケツト14の底部に収容し、ボルト挿通孔13にスタツドボルト16を挿通して車外側でナツト20締結して取付けてある。そして、この固定アーム12は、ベースブラケツト14と共に樹脂製のヒンジキヤツプ21で被覆してある。このヒンジキヤツプ21は、ベースブラケツト14のフランジ15前端部に立上がり形成したフツク係着部17に、ヒンジキヤツプ21の前端部裏面に一体成形したフツク22を挿入,係合すると共に、後端部より下方に曲折成形したフランジ23を、前記開口部5の側縁、具体的には前記ベースブラケツト14のフランジ15後縁より下方に曲折成形した脚部15aにビス27固定して取付けてある。このビス27固定作業はバツクドア1を第1図鎖線で示すように開蓋にした状態で車体後方より行われ、バツクドア1を閉蓋した状態ではビス27の取外しを行えないようになつている。ヒンジキヤツプ21の後端部には前述のようにフランジ23を下方に曲折成形してあるため、該フランジ23には、バツクドアヒンジ10の可動アーム11の回動を許容する一対のスリツト24を形成してある。また、該ヒンジキヤツプ21のバツクドア側の縁部、つまり、後端部のフランジ23の曲折成形基部には、バツクドア1のヒンジ側の縁部、つまり、上縁のヘミング部1aに近接するリブ25を延設してある。また、このフランジ23の下縁には車体後部の開口部5周縁に装着したバツクドアオープニングフイニツシヤ28の上縁を押えるリブ26を一体成形してある。」(第2ページ右上欄第13行?同ページ右下欄第18行)

エ 対比
本件特許発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「自動車1」および「後部車体構造」は、それぞれ本件特許発明1の「車両」および「後部構造」に相当する。
(イ)引用発明の「ルーフパネル6」、「ルーフサイドフレーム6」および「溝部7」は、それぞれ本件特許発明1の「ルーフパネル」、「サイドフレーム」および「モヒカン溝部」に相当する。したがって、引用発明の「ルーフパネル6の左部及び右部に、ルーフパネル6とルーフサイドフレームとを溶接する為の前後方向向きの1対の溝部7」は、技術的、機能的にみて本件特許発明1の「車体のルーフパネルとサイドフレームの接続部分に前記車体の前後方向に形成されたモヒカン溝部」に相当する。
引用発明の「車体3」、「アウタヒンジ機構9B」および「ガラスハッチ4」は、それぞれ本件特許発明1の「車体」、「ヒンジ手段」および「テールゲート」に相当する。したがって、技術的、機能的にみて、引用発明の「車体3の後部にはアウタヒンジ機構9により連結されたガラスハッチ4が装着されている」は、本件特許発明1の「前記車体の後部に設置されたテールゲートをヒンジ手段で取り付けた」に相当する。
(ウ)引用発明の「アウタヒンジ機構9B」は、「モヒカンモール8Bの後端上部には外板部12の上面と滑らかに連なる上面を有する車体側ヒンジ部材26が設けられ、車体側ヒンジ部材26の後端部には左右1対のヒンジ部26aが形成され、
ガラスハッチ4の下面前縁部の各溝部7に対向する位置にはハッチ側ヒンジ部材27が2本のボルト21Bとナット21aで固着され、ハッチ側ヒンジ部材27の前端略中央部には車体側ヒンジ部材26のヒンジ部26a間に延びるヒンジ部27aが形成され、両ヒンジ部26a・27aには左右方向向きのピン部材22Bが挿通され、ガラスハッチ4は車体側ヒンジ部材26及びハッチ側ヒンジ部材27を介してピン部材22Bを中心に開閉可能に車体3に連結支持されているものである」から、溝部7にモヒカンモール8Bを介して装着された車体側ヒンジ部材26と、この車体側ヒンジ部材26の後端部に形成されたヒンジ部26aに開閉自在、すなわち、回動自在に連結されたガラスハッチ4の下面前縁部に固着されたハッチ側ヒンジ部材27とを備えているといえる。したがって、引用発明の「車体側ヒンジ部材26」と「車体側ヒンジ部材26の後端部」に形成された「左右1対のヒンジ部26a」の両者で本件特許発明1の「ヒンジ基部材」に相当する構成となし、また、引用発明の「ハッチ側ヒンジ部材27」は、本件特許発明1の「ゲートヒンジ部材」に相当する。
よって、引用発明の「アウタヒンジ機構9B」は、本件特許発明1の「前記ヒンジ手段は、前記モヒカン溝部に取り付けられるヒンジ基部材と、
前記ヒンジ基部材に回動可能に取り付けられる前記テールゲートに取り付けられるゲートヒンジ部材と、を備え」に相当する構成を有しているといえる。
(エ)上記(ウ)を踏まえると、引用発明の「車体側ヒンジ部材26」は本件特許発明1のヒンジ基部材の「固定部」相当する。そして、引用発明の「車体側ヒンジ部材26」は、「ルーフパネル6の左部及び右部に、ルーフパネル6とルーフサイドフレームとを溶接する為の前後方向向きの1対の溝部7」に「溝部7の後端部まで設けられ」た「モヒカンモール8B」の「後端上部に」「外板部12の上面と滑らかに連なる上面を有するよう」設けられているものであるから、引用発明の「モヒカンモール8Bの後端上部には外板部12の上面と滑らかに連なる上面を有する車体側ヒンジ部材26が設けられ」ることは、本件特許発明1の「前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される固定部」との対比において、「前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端部に固定される固定部」の限度で共通するといえる。
(オ)上記(ウ)を踏まえると、引用発明の「左右1対のヒンジ部26a」は、本件特許発明1のヒンジ基部材の「連結部」に相当する。また、引用発明の「ピン部材22B」は、本件特許発明1の「ヒンジピン」に相当する。
そして、引用発明は、「両ヒンジ部26a・27aには左右方向向きのピン部材22Bが挿通され、ガラスハッチ4は車体側ヒンジ部材26及びハッチ側ヒンジ部材27を介してピン部材22Bを中心に開閉可能に車体3に連結支持されている」から、引用発明の「車体側ヒンジ部材26の後端部には左右1対のヒンジ部26aが形成され」ることは、本件特許発明1の「ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される上方向に突出した板状の連結部を有する」との対比において、「ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される連結部を有する」との限度で共通するといえる。
(カ)引用発明の「ハッチ側ヒンジ部材27の前端略中央部には車体側ヒンジ部材26のヒンジ部26a間に延びるヒンジ部27aが形成され」ているから、機能的、構造的にみて、引用発明の「ヒンジ部27a」は、本件特許発明1の「ゲートヒンジ部材」の「前端部側の連結部」に相当する。
したがって、引用発明の「両ヒンジ部26a・27aには左右方向向きのピン部材22Bが挿通され、ガラスハッチ4は車体側ヒンジ部材26及びハッチ側ヒンジ部材27を介してピン部材22Bを中心に開閉可能に車体3に連結支持されている」ことによって、本件特許発明1の「前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され」るに相当する構成を成しているともいえる。
(キ)引用発明の「車体側ヒンジ部材26」は「モヒカンモール8Bの後端上部に」設けられ、かつ、「車体側ヒンジ部材26の後端部には左右1対のヒンジ部26aが形成され」ている。その一方で、引用発明の「ハッチ側ヒンジ部材27」は「ガラスハッチ4の下面前縁部に固着され」、かつ、「ハッチ側ヒンジ部材27の前端略中央部には車体側ヒンジ部材26のヒンジ部26a間に延びるヒンジ部27aが形成され」ている。そして、「両ヒンジ部26a・27aには左右方向向きのピン部材22Bが挿通され、ガラスハッチ4は車体側ヒンジ部材26及びハッチ側ヒンジ部材27を介してピン部材22Bを中心に開閉可能に車体3に連結支持されている」。
引用発明の上記構成を踏まえると、引用発明は、本件特許発明1のパーティングに相当するといえるガラスハッチ4の前端部より前方にピン部材22Bが存在する、つまり、ガラスハッチ4の前端部が、ピン部材22Bから後方側に離れた位置に配置されているものといえる(刊行物1の第7図および第8図)。
よって、引用発明は「モヒカンモール8Bの後端上部には外板部12の上面と滑らかに連なる上面を有する車体側ヒンジ部材26が設けられ、車体側ヒンジ部材26の後端部には左右1対のヒンジ部26aが形成され、
ガラスハッチ4の下面前縁部の各溝部7に対向する位置にはハッチ側ヒンジ部材27が固着され、ハッチ側ヒンジ部材27の前端略中央部には車体側ヒンジ部材26のヒンジ部26a間に延びるヒンジ部27aが形成され、両ヒンジ部26a・27aには左右方向向きのピン部材22Bが挿通され、ガラスハッチ4は車体側ヒンジ部材26及びハッチ側ヒンジ部材27を介してピン部材22Bを中心に開閉可能に車体3に連結支持されている」ことによって、本件特許発明1の「前記テールゲートの上端のパーティングは、前記ヒンジピンから後方側に離れた位置に配置されている」に相当する構成を有するものといえる。
(ク)上記(ア)?(キ)より、本件特許発明1と引用発明との一致点および相違点は次のとおりとなる。
<一致点>
「車体のルーフパネルとサイドフレームの接続部分に前記車体の前後方向に形成されたモヒカン溝部を有すると共に、前記車体の後部に設置されたテールゲートをヒンジ手段で取り付けた車両の後部構造であって、
前記ヒンジ手段は、前記モヒカン溝部に取り付けられるヒンジ基部材と、
前記ヒンジ基部材に回動可能に取り付けられる前記テールゲートに取り付けられるゲートヒンジ部材と、を備え、
前記ヒンジ基部材は、前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端部に固定される固定部と、ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される連結部とを有すると共に、前記モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するカバー部材によって覆われ、
前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され、
前記テールゲートの上端のパーティングは、前記ヒンジピンから後方側に離れた位置に配置されている車両の後部構造。」
<相違点1>
ヒンジ基部材の配置に関し、本件特許発明1の「ヒンジ基部材」の「固定部」が、「前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される」ものであるのに対し、引用発明の「車体側ヒンジ部材26」は、「モヒカンモール8Bの後端上部に」「ルーフパネル6の外板部12の上面と滑らかに連なる上面を有する」ように設けられている、つまり、モヒカンモール8Bを介してではあるものの、溝部7の後端部に固定されているといえるが、溝部7の底部に固定されるものではない点。
<相違点2>
ヒンジ基部材の構造に関し、本件特許発明1の「ヒンジ基部材」の「連結部」が、「ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される上方向に突出した板状の連結部」であるのに対し、引用発明の「左右1対のヒンジ部26a」は「車体側ヒンジ部材26の後端部に」設けられている、つまり、ハッチ側ヒンジ部材27が回動自在に連結されているものの、上方向に突出した板状ではない点。
<相違点3>
本件特許発明1においては、「前記ヒンジ基部材は、」「前記モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するカバー部材によって覆われ、」「前記カバー部材は、前記テールゲートを回動させて開放したときに、前記ゲートヒンジ部材が入る切欠部を後端部に有し」ているのに対し、引用発明は「車体側ヒンジ部材26」と「左右1対のヒンジ部26a」を覆う部材を備えていない点。

オ 判断
上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用発明の「車体側ヒンジ部材26」は、その上面が、「モヒカンモール8Bの後端上部に」「ルーフパネル6の外板部12の上面と滑らかに連なる」ように設けられていることにより、「ヒンジ機構9Bが外板部12の上面外に突出せず、車体側ヒンジ部材26の上面と外板部12の上面とが同一面であり、また外板部12の上面とガラスハッチ4の上面とがフラッシュ・サーフェイスとなっているので、自動車1の外観を向上出来とともに(原文ママ)空力特性を向上出来」ることを目的とするものであるところ(刊行物1の明細書部分第16ページ第5?19行)、車体側ヒンジ部材26を溝部7の底部に固定すると、車体側ヒンジ部材の上面とルーフ上面とを略同一高にすることが出来ず、引用発明の目的を達し得なくなる。
また、引用発明の「車体側ヒンジ部材26」は、「モヒカンモール8Bの後端上部に」設けられており、車体側ヒンジ部材26をモヒカンモール8Bを介して両者を同時に溝部7の底部に固着することにより(刊行物1の明細書部分第15ページ第8?14行)、「モヒカンモール8Bと車体側ヒンジ部材26の組付性を向上出来る。」ものでもある(刊行物1の明細書部分第16ページ第20行?第17ページ第2行)。したがって、引用発明は、モヒカンモール8Bを省略して、車体側ヒンジ部材26を溝部7の底部に固定することを意図しているものとはいえない。
よって、引用発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成となすことは、当業者といえど容易に想到し得ない。
ところで、刊行物2には、ベースブラケツト14を介してではあるもののバツクドアヒンジ10(本件特許発明1の「ヒンジ手段」に相当する)の固定アーム12(本件特許発明1の「固定部」相当する)が、ルーフパネル2の左右一対の凹部3の底部に装着される構成(以下、「刊行物2の技術事項1」という。)が記載されているといえる。
しかしながら、刊行物2の技術事項1の「ルーフパネル2の左右一対の凹部3」は、バツクドアヒンジ10の固定アーム12を受容するためにわざわざ設けられたものと解されるから(刊行物2の第2ページ左下欄第1?4行)、本件特許発明1の「モヒカン溝部」に相当するとはいえない。したがって、刊行物2に、本件特許発明1の、「ヒンジ基部材」の「固定部」が、「前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の」「底部に固定される」構成が記載ないし示唆されているとはいえない。
よって、引用発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成となすことは、当業者といえども、刊行物2の技術事項1に基づいて容易に想到し得たものではない。
(イ)相違点2について
上記(ア)で述べたように、引用発明は、「ヒンジ機構9Bが外板部12の上面外に突出せず、車体側ヒンジ部材26の上面と外板部12の上面とが同一面であり、また外板部12の上面とガラスハッチ4の上面とがフラッシュ・サーフェイスとなっているので、自動車1の外観を向上出来とともに(原文ママ)空力特性を向上出来、ヒンジ機構9Bを上下方向にコンパクトに構成して車室を広く出来」ることを目的とするものである(刊行物1の明細書部分第16ページ第13?20行)。
そして、引用発明において、左右1対のヒンジ部26aを、上方向に突出した形状とすることは、当該目的を達成するためには通常採用する形状とはいえないから、引用発明において、相違点2に係る本件特許発明1の構成となすことは、当業者といえども、引用発明に基づいて容易に想到し得ない。
(ウ)相違点3について
刊行物2には、バツクドアヒンジ10の固定アーム12が、ベースブラケツト14と共に樹脂製のヒンジキヤツプ21で被覆され、このヒンジキヤツプ21には、バツクドアヒンジ10の可動アーム11の回動を許容する一対のスリツト24が形成されている技術事項(以下、「刊行物2の技術事項2」という。)も記載されている。
ここで、刊行物2の技術事項2の「バツクドアヒンジ10の固定アーム12」、「バツクドアヒンジ10の可動アーム11」、「ヒンジキヤツプ21」および「スリツト24」は、それぞれ、本件特許発明1の「ヒンジ基部材」、「ゲートヒンジ部材」、「カバー部材」および「切欠部」に相当するといえるから、刊行物2の技術事項2は、本件特許発明1の「前記ヒンジ基部材は、」「カバー部材によって覆われ、」「前記カバー部材は、前記テールゲートを回動させて開放したときに、前記ゲートヒンジ部材が入る切欠部を後端部に有し」ているに相当する構成であるともいえる。
しかしながら、刊行物2の技術事項2のヒンジキヤツプ21は、モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するものではないので、引用発明に刊行物2の技術事項2を適用する前提を欠く。
仮に、刊行物2の技術事項2を引用発明に適用しうるとしても、上記(ア)で述べたように、引用発明の「車体側ヒンジ部材26」は、その上面が、「モヒカンモール8Bの後端上部に」「ルーフパネル6の外板部12の上面と滑らかに連なる」ように設けられていることにより、「ヒンジ機構9Bが外板部12の上面外に突出せず、車体側ヒンジ部材26の上面と外板部12の上面とが同一面であり、また外板部12の上面とガラスハッチ4の上面とがフラッシュ・サーフェイスとなっているので、自動車1の外観を向上出来とともに(原文ママ)空力特性を向上出来」るという目的を達成しているものであるから(刊行物1の明細書部分第16ページ第13?19行)、その「車体側ヒンジ部材26」(本件特許発明1の「ヒンジ基部材」に相当する)を、刊行物2の技術事項2を適用し、さらに、カバー部材で覆うような構成とする必要がない。
したがって、引用発明において、相違点3に係る本件特許発明1の構成を成すことは、当業者といえども、刊行物2の技術事項2に基づいて容易に想到し得ない。
(エ)小括
以上のとおりであるので、本件特許発明1は、刊行物1および刊行物2に記載された発明ではないし、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、さらに、刊行物1に記載された発明および刊行物2の記載事項1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
本件特許発明2?5は、それぞれ本件特許発明1を減縮したものであるから、本件特許発明1と同様に、刊行物1および刊行物2に記載された発明ではないし、刊行物1および刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、本件特許発明1?5について、他に、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
したがって、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができる。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正のうち、訂正事項1および訂正事項3は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合し、訂正事項2、訂正事項4、訂正事項5、訂正事項6、訂正事項7および訂正事項8は、いずれも特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両の後部構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のルーフパネルとサイドフレームの接続部分に車体の前後方向に延設されたモヒカン溝部を有する所謂モヒカンルーフの車両においてテールゲートを設置するための車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からワンボックスカーやステーションワゴンなどのRV車には、車両の後部に荷物を容易に積載できるようにするためにヒンジ構造でなる跳ね上げ式のテールゲートが設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図9は、従来の車両の後部構造を示す図面で、テールゲートを閉めたときの状態を示す要部断面図である。
図9に示すように、車体100のルーフ部101の後部102には、ヒンジ200を介してテールゲート300が回動自在に設置されている。そのルーフ部101とテールゲート300との間には、テールゲート300を枢支するヒンジ200の回転中心となるヒンジピン230が配設されている。そのヒンジ200は、ルーフ部101に固定されるヒンジ基部材210と、テールゲート300に固定されるゲートヒンジ部材220とから構成されている。ヒンジ200は、車体100の後部102に形成されたゲート開口部103の上部の左右両側に設置されて、テールゲート300を跳ね上げ式に開閉できるように回動自在に支持されている。
【0004】
ヒンジ基部材210は、側面視して略L字型の金属板部材であって、基端側の固定部211が車体100のゲート開口部103の上部104に溶接ボルト401でしっかりと取り付けられ、先端側の連結部212がヒンジピン230によってゲートヒンジ部材220に回動自在に連結されている。固定部211は、ルーフ部101の天井面105から高さL2下がった平らな上部104に固定されている。
【0005】
ゲートヒンジ部材220は、基端側の固定部221がテールゲート300の上部301に形成された略垂直な取り付け面302にゲート取り付けボルト501によって固定され、先端側の連結部222がヒンジピン230によってヒンジ基部材210に回動自在に連結されている。
【特許文献1】特開2001-105867号公報(段落0021?段落0022、図11及び図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テールゲート300は、このテールゲート300を開くと、ヒンジピン230を中心に矢印A方向に回動する。このとき、テールゲート300の上端のパーティング303とゲートヒンジ部材220も一体となって回動し、パーティング303は、矢印A方向に回転してヒンジ基部材210の固定部211に近接する。
このため、ゲートヒンジ部材220を支えているヒンジ基部材210は、パーティング303がルーフ部101に当接することを回避するために、腕の長さL1を長くしてヒンジピン230を高い位置に配置しなければならない。ヒンジ基部材210の腕の長さL1を長くしたことにより、車体100は、固定部211を設けた上部104の設置面から天井面105までの長さL2を長くして、テールゲート300のパーティング303の回転軌跡を避けるためにルーフ部101の形状を設定する必要がある。
これに伴って、車体100は、ゲート開口部103の上端から天井面105までの厚さT1が厚くなり、ゲート開口部103の上方向の高さH1が規制されて、ゲート開口部103全体の面積が狭くなる。これにより、ゲート開口部103は、高さH1が低いため、大きな荷物を荷物室へ出し入れするときに作業が行い難くなる。また、作業者は、ゲート開口部103の内側上端が低いため、作業中に頭部がゲート開口部103の縁の接触するおそれもあった。
【0007】
また、テールゲート300を車体100に取り付ける場合、テールゲート300は、ゲート取り付けボルト501を挿通する貫通穴223を上下方向に長い長孔とすることにより、矢印Bの上下方向の取り付け位置を調整することができる。
しかしながら、テールゲート300の取り付け位置を矢印Cの前後方向に調整する場合、ヒンジ200の固定部211は、テールゲート300ががたつかないようにリベット401でしっかりと固定されるため、車体100のルーフ部101を改修するか、またはヒンジ200の形状を変更しなければならない。このため、テールゲート300は、矢印Cの前後方向に取り付け位置を調整することが困難であった。
【0008】
また、テールゲート300と車体100との間には、オープンステー(図示せず)が設置されている。オープンステーは、一端がそれぞれテールゲート300の両側に支持され、他端がそれぞれ車体100のゲート開口部103の車幅方向の両端に支持されている。そして、ゲート開口部103の車幅方向の端部に設けられるテールゲート300と車体100との間に介在されるオープンステー(図示せず)の取り付け位置と、ヒンジ200とは、テールゲート300の車幅方向でオフセットしている。
したがって、オープンステー(図示せず)の反力によりテールゲート300が歪むように変形することがあった。このテールゲート300の変形が組み立て寸法に影響を及ぼし、寸法調整のための構成・作業時間がかかるという問題点があった。
【0009】
本発明の課題は、テールゲートのヒンジ手段に関し、テールゲートのゲート開口部の上下方向の寸法を大きく取ることができる車両の後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両の後部構造は、車体のルーフパネルとサイドフレームの接続部分に前記車体の前後方向に形成されたモヒカン溝部を有すると共に、前記車体の後部に設置されたテールゲートをヒンジ手段で取り付けた車両の後部構造であって、前記ヒンジ手段は、前記モヒカン溝部に取り付けられるヒンジ基部材と、前記ヒンジ基部材に回動可能に取り付けられる前記テールゲートに取り付けられるゲートヒンジ部材と、を備え、前記ヒンジ基部材は、前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される固定部と、ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される上方向に突出した板状の連結部とを有すると共に、前記モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するカバー部材によって覆われ、前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され、前記カバー部材は、前記テールゲートを回動させて開放したときに、前記ゲートヒンジ部材が入る切欠部を後端部に有し、前記テールゲートの上端のパーティングは、前記ヒンジピンから後方側に離れた位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、ヒンジ手段は、モヒカン溝部にヒンジ基部材を設けることにより、テールゲートのパーティングの回転軌跡を車体のルーフパネルと干渉しないように構成することができる。このため、テールゲートによって開閉されるゲート開口部の上下方向の寸法を大きくすることができる。
また、ヒンジ手段は、車体のルーフ部の左右端部に配設されたモヒカン溝部に設けられることにより、テールゲートの支持間隔を大きくすることができるため、テールゲートの取り付け強度を高くすることができる。
【0012】
請求項2に記載の車両の後部構造は、請求項1に記載の車両の後部構造であって、前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの開閉方向に沿って延設され、前記テールゲートの開放時に前記カバー部材の切欠部を挿通する部分が前記テールゲートの開閉方向に沿って延設される板状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ゲートヒンジ部材には、テールゲートの開閉方向に沿って延設されることにより、テールゲートの開閉時に、延在する面方向にせん断力が作用するため、ゲートヒンジ部材の外形及び板厚が小さい部材を利用することができるようになる。したがって、ゲートヒンジ部材を薄型化及び小型化して、軽量化とコストダウンを図ることができる。また、ゲートヒンジ部材は、テールゲートに薄くコンパクトな状態で取り付けることができることにより、そのテールゲートから室内側に出っ張らずに取り付けることができるため、見栄えがよく、かつゲート開口部の車幅方向の大きさを大きくすることができる。このため、荷物室への荷物の積み降ろし作業が行い易くなる。
【0014】
請求項3に記載の車両の後部構造は、請求項2に記載の車両の後部構造であって、前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの左右の側面部に取り付けられることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ゲートヒンジ部材は、テールゲートの左右の側面部に取り付けられることにより、ゲートヒンジ部材の取り付け作業をテールゲートの側面で行うことができるため、ゲートヒンジ部材の取り付け箇所が作業者に良く視認できるようになる。このため、ゲートヒンジ部材の取り付け作業は、締め付けボルトの設置位置を調整しながら容易に行うことができるので、取り付けの作業性を向上させることができる。
また、ゲートヒンジ部材とテールゲートとの固定部には、テールゲートの開閉時にゲートヒンジ部材がテールゲートから剥離する方向ではなく、せん断方向に力が加わるため、ボルト締めなどの手段によって大きな固定強度を得ることが可能となる。ヒンジ手段は、使用頻度がかなり高い部品であるが、それに耐えることができる強度と耐久性を備えさせることができる。
【0016】
請求項4に記載の車両の後部構造は、請求項2に記載の車両の後部構造であって、前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートに対して、車両の前後または高さ方向に調整可能に設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ゲートヒンジ部材は、テールゲートに対して、車両の前後または高さ方向に調整可能に設けられることにより、テールゲートを車体に組み付けるときに、テールゲートの取り付け位置の誤差のバラツキを調整することができる。このため、テールゲートは、所望位置に正確に取り付けることが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の車両の後部構造は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両の後部構造であって、前記テールゲートを車体に固定するためのオープンステーは、前記ゲートヒンジ部材の取り付け部の近傍に設けられることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、オープンステーが、ゲートヒンジ部材の取り付け部の近傍に設けられることにより、オープンステーの取り付け位置とヒンジ手段とのオフセット量を小さくすることができる。これにより、テールゲートが開閉時にオープンステーとゲートヒンジ部材とによって加わるモーメントが小さくなるため、テールゲートの変形を極力防ぐことができる。
【0020】(削除)
【0021】(削除)
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車両の後部構造によれば、ヒンジ手段は、モヒカン溝部にヒンジ基部材を設けたことにより、テールゲートの回転軌跡を車体のルーフパネルと干渉しないように構成することができるため、テールゲートによって開閉されるゲート開口部の上下方向の寸法を大きくすることができる。
ヒンジ手段は、テールゲートの開閉方向に沿って延設されたゲートヒンジ部材を備え、そのゲートヒンジ部材がテールゲートの側面部に取り付けられることにより、ゲートヒンジ部材を薄型化して、ゲート開口部を車幅方向に大きくすることができる。このため、荷物室への荷物の積み降ろし作業を行い易くすることができる。そして、ゲートヒンジ部材は、取り付け作業をテールゲートの側面で行うことができることにより、取り付け箇所の視認性が良くなるため、取り付けの作業性を向上させることができる。
また、ヒンジ手段は、車体のルーフ部の左右端部に配設されたモヒカン溝部に設けられることにより、テールゲートの左右の支持間隔を大きくすることができるため、テールゲートの取り付け強度を高くすることができる。
ゲートヒンジ部材は、テールゲートの開閉時に、延在する面方向にせん断力が作用するため、ゲートヒンジ部材の外形及び板厚が小さい部材を利用することができるようになる。したがって、ゲートヒンジ部材を薄型化して、軽量化とコストダウンを図ることができる。
また、ヒンジ基部材は、モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するカバー部材によって覆われることにより、ゲートヒンジ基部を隠して、カバー部材をルーフモールの形状に合わせて配設することができるため、走行中の風切り音を減少させると共に、外観性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1?図8を参照して、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、車両の後部の分解斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、テールゲートの取り付け状態を示す拡大要部側面図である。図3は、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、ヒンジカバーを離脱させたときのテールゲートの取り付け状態を示す拡大要部斜視図である。図4は、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、テールゲートの取り付け状態を示す要部拡大断面図である。図5は、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、ヒンジの拡大平面図である。図6は、図4の矢視X-X線方向断面図である。図7は、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、ヒンジ基部材のカバーの設置状態を示す拡大要部斜視図である。図8は、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、テールゲートの中央部上端の構造を示す要部拡大断面図である。
なお、本発明の実施の形態では、「前」は車両の進行方向側、「後」は車両の後退方向側、「上」は鉛直上方側、「下」は鉛直下方側、「左右」は車幅方向側とする。
【0024】
図1に示すように、車両1は、例えば、ワンボックスカーやステーションワゴンやハッチバックなどであり、車体2の後部2aにはヒンジ構造でなる跳ね上げ式のテールゲート3が設けられている。
【0025】
車体2の後部2aには、後面側にテールゲート3によって開閉されるゲート開口部2dが形成され、そのゲート開口部2dに上部左右両端にヒンジ4と、ヒンジカバー5とが備えられている。
車体2の後部2aの車室内には、荷物室2hが形成され、テールゲート3を開けることにより、荷物の積み降ろしができるようになっている。
【0026】
ルーフ部2bは、車体2の天井部分であって、中央部分に配置されたルーフパネルRと、このルーフパネルRの車幅方向の左右両端部側にそれぞれ設置されたサイドフレームSとから構成されている。そのルーフパネルRの左右側端辺とサイドフレームSの上端辺とは、溶接手段によって接合されている。その接合箇所は、車体2のルーフ部2bの車幅方向の左右両端部から前後方向に延設された断面が上方に開口する略コ字状の接合溝からなる所謂モヒカン溝部2cが形成されている。
【0027】
モヒカン溝部2cは、ルーフ部2bの前端のフロントガラス(図示せず)の縁から後端のゲート開口部2dの縁まで車両1の前後方向に沿って形成されている。モヒカン溝部2cの車幅方向の幅は、車体2の後部2aで拡開されて、その拡開した後端底部2gには車体2とテールゲート3とを回動自在に支持するヒンジ4が設置され、ヒンジカバー5で覆って見えないようにしている。後端底部2gには、ヒンジ4が設置される後部2a側に前記ヒンジカバー5が嵌装され、そのヒンジカバー5より前方にルーフモール6が連続して嵌装されている。
なお、モヒカン溝部2cの後端底部2gは、特許請求の範囲に記載された「取り付け部」に相当する。
【0028】
ゲート開口部2dの内周縁のフランジ2fには、図8に示すように、テールゲート3を閉めたときの衝撃を緩衝する緩衝部材、雨水の浸入を防止する防水材、空気や音の侵入を防止するための密閉材としてのウェザーストリップWが設置されている。ゲート開口部2dの下側中央には、テールゲート3に設置されたロック部33が噛み合うストライカ21が設置されている。
なお、前記ウェザーストリップWは、合成ゴムまたは発泡樹脂材によって形成されている。
また、車体2の後部2aのルーフパネルRの内側には、車幅方向に延設されるリアルーフレールアッパ11とリアルーフレールロア12とが重ねて設置されている(図8参照)。
【0029】
テールゲート3は、ゲート開口部2dを開閉するためのバックドアであり、圧延鋼板からなるアウタパネル31とインナパネル32とをヘミング加工して形成されている。
テールゲート3の車幅方向の左右上端部の側面部3aには、図1に示すように、ヒンジ基部材41にヒンジピン43によって回動自在に取り付けられたゲートヒンジ部材42と、ゲート開口部2dの右の縁に回動自在に設置されたオープンステー7が取り付けられている。テールゲート3には、運転中に車両1の後方を視認できるようにするための窓ガラス34が設置されている。
【0030】
図8に示すように、テールゲート3の上部3cには、テールゲート3に設置されるストップランプなどのランプ類(図示せず)に接続するためのケーブルやワイパウォッシャノズルWNに接続するためのパイプを嵌通させるためのグロメットGが設置されている。また、テールゲート3の上部3cは、リヤスポイラ(図示せず)なども設置できるように、前後方向に比較的長く厚みがあるように形成されている。
【0031】
図4に示すように、ヒンジ4は、テールゲート3を車体2のゲート開口部2dの上端部を中心として跳ね上げ式に開閉するために設置される蝶番であり、例えば、鋼板プレス製品からなる。ヒンジ4は、車体2のモヒカン溝部2cに固定されるヒンジ基部材41と、テールゲート3に取り付けられるゲートヒンジ部材42と、ヒンジ基部材41とゲートヒンジ部材42とを回動自在に連結するためのヒンジピン43とから構成されている。
なお、ヒンジ4は、特許請求の範囲に記載の「ヒンジ手段」に相当する。
【0032】
図3及び図6に示すように、ヒンジ基部材41は、後方から見て略L字型形状をした金属製厚板材からなる。そのヒンジ基部材41は、車体2側(基端側)の固定部41aが車体2のゲート開口部2dの上部2iに車体用固定具8,8でしっかりと取り付けられ、先端側の連結部41b(図6参照)がヒンジピン43によってゲートヒンジ部材42に回動自在に連結されている。固定部41aは、ルーフ部2bの天井面2kから高さL4下がったモヒカン溝部2cの後端底部2gに固定されている。ヒンジ基部材41は、モヒカン溝部2cに設けられるルーフモール6(図1参照)に連続するヒンジカバー5によって覆われている。
車体用固定具8,8は、ヒンジ基部材41をしっかりと車体2に固定するための部材であって、例えば、溶接ボルトからなる。なお、車体用固定具8,8は、リベットなどであってもよい。
【0033】
図4に示すように、ゲートヒンジ部材42は、側面視して略く字型形状をした金属製厚平板材からなる。ゲートヒンジ部材42は、テールゲート3の開閉方向(矢印D,E方向)及びテールゲート3の側面部3aに沿って延設される。ゲートヒンジ部材42は、図4に示すように、前端部にヒンジピン43を挿通するための貫通孔42cと、後端部及び中央部に穿設された固定用ボルトBOを取り付けるための貫通孔42d,42eと、この貫通孔42dと貫通孔42eとの間に穿設されて治具(図示せず)を仮止めする仮止め用ボルト(図示せず)が取り付けられる貫通孔42f,42gとを有する。ゲートヒンジ部材42は、前端部側の連結部42bがヒンジピン43によってヒンジ基部材41に回動自在に設置されると共に、後端部側の固定部42aがテールゲート3の側面部3aを図4に示すように、上下前後方向(矢印H,I,J,K方向)に位置を調整して取り付けることができるように構成されている。
前記テールゲート3は、連結部42bをヒンジピン43に連結した状態のゲートヒンジ部材42によって、車体2に対して車両1の前後(矢印H,I)または高さ方向(矢印J,K方向)に調整可能に設けられている。
【0034】
ヒンジピン43は、例えば、ヒンジ基部材41とゲートヒンジ部材42とを回動自在に連結するためのリベット形状の金属軸部材からなる。ヒンジピン43は、図6に示すように、ヒンジ4に注油を不要にするために、含油樹脂や含油焼結金属などからなるブッシュ44を嵌合してメンテナンスフリーにしている。
【0035】
ヒンジカバー5は、図1に示すように、ヒンジ基部材41の上部を覆うものであり、モヒカン溝部2cの後端部の形状に合わせて形成された板状の合成樹脂により形成されている。ヒンジカバー5は、図7に示すように、前端部に形成された係合部5aと、下面に形成されたクリップCL設置用のブラケット部5b(図4参照)と、下面の複数箇所に形成された補強用のリブ5dと、後端部中央に形成された切欠部5cとを一体形成している。そのヒンジカバー5は、図7に示すように、係合部5aをルーフモール6の後端部に挟み込み、図4に示すように、クリップCLをヒンジ基部材41の上面に固着されたカバー固定具10に嵌着することにより、車体2側に固定されている。ヒンジカバー5は、後端部中央に、テールゲート3を矢印D方向に回動させて開放したときに、ゲートヒンジ部材42の回動を可能にさせるための切欠部5cを形成している。
なお、ヒンジカバー5は、特許請求の範囲に記載の「カバー部材」に相当する。
また、前記カバー固定具10は、例えば、台形をした平板材からなるブラケットであり、クリップCLが係合する貫通穴が穿設されている。
【0036】
オープンステー7は、図1に示すように、テールゲート3の開閉時に、跳ね上げ式のテールゲート3の重量とバランスを取って開閉できるように車体2に固定するためのガススプリングからなる。オープンステー7は、車体2のゲート開口部2dの右端部に回動自在に取り付けられるピストンロッド71と、このピストンロッド71に対して弾性的に進退して、テールゲート3に回動自在に取り付けられるチューブシリンダ72とから構成されている。このオープンステー7は、車体2に固定されたヒンジ基部材41の取り付け部(後端底部2g)の近傍に設けられている。
【0037】
次に、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造の組み付け手順を説明する。
図1に示すように、テールゲート3を車体2の後部2aに取り付ける場合、まず、ヒンジ基部材41とゲートヒンジ部材42とを、ヒンジピン43によって連結されたヒンジ4を車体用固定具8によってモヒカン溝部2cの後端底部2gに取り付ける。
【0038】
次に、ルーフモール6を接着剤などによってモヒカン溝部2cに固定する。そのルーフモール6の後端には、ヒンジカバー5の係合部5aを嵌合させて(図7参照)、ヒンジカバー5の下面に取り付けたクリップCLをカバー固定具10に圧入して、ヒンジカバー5を車体2に固定されたヒンジ基部材41を覆うように固定する(図4参照)。ルーフパネルRとサイドフレームSとを接合する従来からあるモヒカン溝部2cは、ヒンジ4及びヒンジカバー5の取り付け箇所として有効利用することができる。このため、車体2の後部2aの上方部位の形状を制約することなく設定できる。
【0039】
ヒンジカバー5は、図7に示すように、前端に形成された係合部5aをルーフモール6の後端に係合し、図4に示すように、下面に取り付けたクリップCLをヒンジ基部材41に固定されたカバー固定具10に押し込むことにより、ワンタッチで取り付けることができる。
【0040】
ヒンジ基部材41は、図1に示すように、ヒンジカバー5で覆って露出することを防止すると共に、ルーフモール6に合わせて車体2の前後方向に配置し、かつルーフモール6の上面とヒンジカバー5の上面とを面一にすることにより、ルーフモール6などの周辺部品との外観に合わせたデザイン形状にすることができるため、美観性を向上させることができる。
【0041】
次に、図1に示すように、ゲート開口部2dの右の上側の縁に、オープンステー7のピストンロッド71を回動自在に設置する。そして、治具(図示せず)をテールゲート3に取り付けて、オープンステー7のチューブシリンダ72をテールゲート3の側面部3aに回動自在に取り付ける。
【0042】
次に、図4に示すように、テールゲート3を矢印Dの方向に開けた状態で、仮止め用ボルト(図示せず)をゲートヒンジ部材42の貫通孔42f,42gに挿通してテールゲート3に螺合し、このテールゲート3をヒンジ4に仮止めする。ヒンジ4をテールゲート3に仮止めした状態では、治具(図示せず)を上下前後(矢印H,I,J,K方向)に移動させると、テールゲート3も同じ方向に移動する。
【0043】
そして、テールゲート3の固定ボルトBOを貫通孔42e,42fに挿入して、調整可能範囲DA,DA内を矢印H,I,J,Kの上下前後の方向に取り付け位置を調整し、テールゲート3をヒンジ4の所望位置に位置合わせして、固定ボルトBOをしっかりと締め付けて本締めする。
【0044】
そして、それぞれの仮止め用ボルト(図示せず)を貫通孔42f,42gから抜き取り、治具を外す。その結果、テールゲート3は、ゲート開口部2dやヒンジ4に対して決められた状態で固定される。このように貫通孔42e,42fの位置調整のみで、テールゲート3を車体2のゲート開口部2d及びヒンジ4に対する位置調整ができるため、位置調整作業の工数が少なく、作業を簡素化することができる。
【0045】
テールゲート3を固定ボルトBOによってヒンジ4に取り付ける作業は、テールゲート3を開けた状態で、テールゲート3の側面部3aの方向から行われることにより、固定ボルトBOによるゲートヒンジ部材42の取り付け箇所が視認できるため、作業が行い易い。
また、テールゲート3をヒンジ4に取り付け・取り外しする作業は、作業の邪魔になる部材がない側面部3aの方向から行われることにより、その作業を無理なく行うことができる。
ヒンジ4,4は、ゲートヒンジ部材42がテールゲート3の左右の側面部3a,3aに設置されることにより、左の側面部3aのヒンジ4と右の側面部3aとの間の支持スパンが広くなるため、ヒンジ4,4によるテールゲート3の保持力及び剛性を向上させることができる。
さらに、ヒンジ4,4は、平板状のゲートヒンジ部材42,42がテールゲート3の側面部3a,3aに取り付けられることにより、ヒンジ4,4による車幅方向の占有が少ないため、ゲート開口部2dの車幅方向の長さL6(図1参照)が制約されることがない。このため、ゲート開口部2dは、車幅方向の長さL6(図1参照)を長くして、面積を広くし、荷物の積み降ろし作業をし易くすることができる。
【0046】
また、図1に示すように、ゲートヒンジ部材42は、ヒンジ基部材41をルーフ部2b上のモヒカン溝部2c上に設置し、ゲートヒンジ部材42をテールゲート3の側面部3aに設置したことにより、ヒンジ基部材41とゲートヒンジ部材42が荷物室2hに露出していない。このため、荷物室2h内は、外観が向上されると共に、ゲート開口部2dの広さと荷物室2hの空間とを広げることができる。したがって、ゲート開口部2dから荷物室2hへの荷物の積み降ろし作業をし易くすることができる。
【0047】
次に、本発明の実施の形態に係る車両の後部構造の作用を説明する。
テールゲート3を開けると、図1に示すように、テールゲート3及びゲートヒンジ部材42は、ルーフ部2bとテールゲート3との間に配置されたヒンジピン43を中心として矢印D方向に一体となって回動して開く。このとき、テールゲート3は、オープンステー7によって、ゆっくりと開放される。
【0048】
そして、図4に示すように、テールゲート3の上端のパーティング3bもヒンジピン43を中心に矢印M方向に回動する。このとき、パーティング3bは、ヒンジピン43から後方側に距離L5離れた位置に配置されていることにより、回動軌跡がルーフ部2bの天井面2k(図6参照)上になるため、車体2と全く干渉しないで回動する。このため、車体2のモヒカン溝部2cの後端底部2gから上方向に突出したヒンジ基部材41の腕の長さL3を短くすることが可能となる。したがって、後端底部2gから天井面2k(図6参照)までの高さL4も短くすることができ、ヒンジ4をヒンジ車体2の後部2aに設置するための設置用溝をモヒカン溝部2cのような浅い溝でも設置可能になる。そして、車体2の後部2aは、デザインやゲート開口部2dの寸法の設定に自由度が生まれ、余裕を持った設定が可能となる。
【0049】
図1に示すように、テールゲート3は、ヒンジ4とオープンステー7とが比較的近傍に設置されていることにより、テールゲート3に開閉時にヒンジ4とオープンステー7とにモーメントや捩れ変位が加わったとしても、テールゲート3が受けるモーメントが少ないため、歪むことがない。
【0050】
図3に示すように、テールゲート3を矢印E方向に回動して、ゲート開口部2dを閉める。このとき、ゲートヒンジ部材42は、ゲートヒンジ部材42の表裏面の延在方向(せん断方向)に回動して、テールゲート3の回動方向に略一致していることにより、テールゲート3の開閉による力がゲートヒンジ部材42の表裏の面方向にかかる。このため、ヒンジ4は、テールゲート3の開閉方向に対して強度があり、剛性が大幅に向上されて、ゲートヒンジ部材42を小型化することができる。
【0051】
なお、本発明に係る車両の後部構造は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、車両の後部の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、テールゲートの取り付け状態を示す拡大要部側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、ヒンジカバーを離脱させたときのテールゲートの取り付け状態を示す拡大要部斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、テールゲートの取り付け状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、ヒンジの拡大平面図である。
【図6】図4の矢視X-X線方向断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、ヒンジ基部材のカバーの設置状態を示す拡大要部斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る車両の後部構造を示す図で、テールゲートの中央部上端の構造を示す要部拡大断面図である。
【図9】従来の車両の後部構造を示す図で、テールゲートを閉めたときの状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 車体
2a 後部
2c モヒカン溝部
2d ゲート開口部
2g 後端底部(取り付け部)
3 テールゲート
3a 側面部
4 ヒンジ(ヒンジ手段)
5 ヒンジカバー(カバー部材)
6 ルーフモール
7 オープンステー
41 ヒンジ基部材
42 ゲートヒンジ部材
R ルーフパネル
S サイドフレーム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のルーフパネルとサイドフレームの接続部分に前記車体の前後方向に形成されたモヒカン溝部を有すると共に、前記車体の後部に設置されたテールゲートをヒンジ手段で取り付けた車両の後部構造であって、
前記ヒンジ手段は、前記モヒカン溝部に取り付けられるヒンジ基部材と、
前記ヒンジ基部材に回動可能に取り付けられる前記テールゲートに取り付けられるゲートヒンジ部材と、を備え、
前記ヒンジ基部材は、前記車体のルーフ部の上側に形成された前記モヒカン溝部の後端底部に固定される固定部と、ヒンジピンによって前記ゲートヒンジ部材が回動自在に連結される上方向に突出した板状の連結部とを有すると共に、前記モヒカン溝部に設けられるルーフモールに連続するカバー部材によって覆われ、
前記ゲートヒンジ部材は、前端部側の連結部が、前記モヒカン溝部内に配置された前記ヒンジ基部材に回動自在に軸支され、
前記カバー部材は、前記テールゲートを回動させて開放したときに、前記ゲートヒンジ部材が入る切欠部を後端部に有し、
前記テールゲートの上端のパーティングは、前記ヒンジピンから後方側に離れた位置に配置されていることを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの開閉方向に沿って延設され、前記テールゲートの開放時に前記カバー部材の切欠部を挿通する部分が前記テールゲートの開閉方向に沿って延設される板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートの左右の側面部に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記ゲートヒンジ部材は、前記テールゲートに対して、車両の前後または高さ方向に調整可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記テールゲートを車体に固定するためのオープンステーは、前記ゲートヒンジ部材の取り付け部の近傍に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された車両の後部構造。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-11-07 
結審通知日 2017-11-09 
審決日 2017-12-07 
出願番号 特願2003-309919(P2003-309919)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (B60J)
P 1 41・ 851- Y (B60J)
最終処分 成立  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
尾崎 和寛
登録日 2007-01-19 
登録番号 特許第3904214号(P3904214)
発明の名称 車両の後部構造  
代理人 芝 哲央  
代理人 星野 寛明  
代理人 正林 真之  
代理人 芝 哲央  
代理人 正林 真之  
代理人 星野 寛明  
復代理人 林 浩  
復代理人 小菅 一弘  
復代理人 小菅 一弘  
復代理人 林 浩  
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