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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W |
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管理番号 | 1336445 |
審判番号 | 不服2016-11208 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-26 |
確定日 | 2018-01-11 |
事件の表示 | 特願2014-244978「アドホックネットワーク,ユーザノード,管理サーバ,通信方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 5日出願公開,特開2015- 43637〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2012年(平成24年)4月5日(国内優先権主張 平成23年4月6日)を国際出願日とする出願である特願2013-508927号の一部を,平成26年12月3日に新たな特許出願としたものであって,平成27年9月18日付けで拒絶理由が通知され,同年11月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成28年4月22日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年7月26日に拒絶査定不服審判が請求され,同時に手続補正がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [結論] 平成28年7月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本願発明と補正後の発明 平成28年7月26日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成27年11月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された 「所定のサーバにそれぞれデータを送信する複数のユーザノードによって構成されたアドホックネットワークであって, 前記ユーザノードの少なくとも1つが, 外部ネットワークを介して前記所定のサーバに接続する手段と, 他のユーザノードに対して,ゲートウェイとして,前記アドホックネットワークに参加したことを広告する手段と,を備え, 前記ユーザノードが,前記アドホックネットワーク内のゲートウェイとして,他のユーザノードから受信したデータを前記所定のサーバに送信するアドホックネットワーク。」 という発明(以下,「本願発明」という。)を, 「所定のサーバにそれぞれデータを送信する複数のスマートメータを含んで構成されたアドホックネットワークであって, 前記スマートメータの少なくとも1つが, 外部ネットワークを介して前記所定のサーバに接続する手段と, 他のスマートメータに対して,ゲートウェイとして,前記アドホックネットワークに参加したことを広告する手段と,を備え, 前記スマートメータが,前記アドホックネットワーク内のゲートウェイとして,他のスマートメータから受信したデータを前記所定のサーバに送信するアドホックネットワーク。」 という発明(以下,「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 ([当審注]:下線部は補正箇所を示す。) 2 補正の適否 (1)新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件 請求項7についての上記補正は,本願発明の「ユーザノード」を「スマートメータ」に限定して特許請求の範囲を減縮するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。請求項1?6,8,9についての補正も同様であり,請求項10は削除されたものと認められる。 そして,これらの補正は,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。 (2)独立特許要件 請求項7についての上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,本件補正後の請求項7に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。 ア 補正後の発明 補正後の発明は,上記「1 本願発明と補正後の発明」の項の「補正後の発明」のとおりのものと認める。 イ 引用発明等 [引用発明] 原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-157838号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。([当審注]:摘記中の下線部は当審が付した。) (ア)「【技術分野】 【0001】 この発明は,複数の移動通信装置により構成されるアドホックネットワークを備えた通信システム等に関する。 【背景技術】 【0002】 従来,IETF(Internet Engineering Task Force)におけるNEMO(Network Mobility)では,移動ネットワーク内にモバイルルータをおくことによって,移動ネットワークのハンドオーバー時に位置登録をする方法が規定されている(たとえば,下記非特許文献1)。また,IETF MANEMO(MANET(Mobile Ad-hoc Network) for NEMO)では,NEMO対応の複数のモバイルルータがアドホックネットワークを構成した場合のモバイルルータ間の無線マルチホップ通信について開示されている(たとえば,下記非特許文献2及び3)。 (中略) 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら,例えば上記非特許文献1は,ゲートウェイとなるモバイルルータのネットワークへの接続制御について開示したものであり,また上記非特許文献2及び3は,ゲートウェイとなるモバイルルータとアドホックネットワークを構成する各モバイルルータの経路制御について開示したものであり,ゲートウェイの選出方法等について開示したものはなかった。 【0005】 この発明は,上記に鑑みてなされたものであって,小規模の移動ネットワークのモバイルルータや単体の移動IP端末からなる移動通信装置を複数リンクさせてマルチホップ通信を行うアドホックネットワークが,外部の固定ネットワークに接続する場合において,アドホックネットワークが固定ネットワークと接続するためのゲートウェイを効率的に選出可能なアドホックネットワークを含む通信システム等を提供することを目的とする。 (中略) 【発明の効果】 【0007】 この発明では,特別なノードを必要とせず,アドホックネットワークを構成するモバイルルータ等からなる各移動通信装置の自律分散制御により,外部ネットワークとの間のゲートウェイとなる移動通信装置の選出と変更を実現できる。」 (イ)「【0009】 図1はこの発明の一実施の形態によるアドホックネットワークを含む通信システムの構成の一例を示す図である。図1の通信システムは,移動ネットワークであるアドホックネットワーク1及び固定ネットワークである外部ネットワーク2を備えている。 【0010】 アドホックネットワーク1は,移動ネットワーク1A,1B,1C,1Dを備え,移動ネットワーク1A?1Dは,有線リンク又は無線リンクで接続されたアドホックネットワークを構成している。 【0011】 移動ネットワーク1A?1Dは,それぞれモバイルルータ(MR)11?14と,これらのMRの下に,モバイルネットワークプリフィックス(MNP)21?24で管理される移動ネットワーク内端末(MN)31?34を備える。 【0012】 外部ネットワーク2(たとえば,インターネットやコアネットワーク)は,固定ネットワークであって,アクセスルータ(AR)41?43,HA(ホームエージェント)51と,アドホックネットワーク1内の端末MN31?34の対向ノードとなるCN(Correspond Node)6を備えている。 【0013】 また,移動ネットワーク1AのMR11及び,移動ネットワーク1CのMR13は,無線リンクによって,それぞれAR41,AR42及び,AR43と接続されている。 【0014】 このような移動ネットワーク1A?1Dは,具体的には,列車の複数台の車両ごとにモバイルルータが設置され連なって移動する,自動車,船舶や航空機などにモバイルルータが搭載され一体となって移動する,といった使用が想定される。 【0015】 図10は図1等の各モバイルルータ(MR)11?14の構成の一例を示す図である。MRは,1以上の有線又は無線のインタフェース70-m(m=1,2,…n)と,パケット制御部71とパケット転送処理部72とを備えている。パケット制御部71は,経路制御部73,ゲートウェイ制御部74を,パケット転送処理部72は,パケット転送部76,経路制御テーブル77を,それぞれ備える。 【0016】 パケット制御部71の経路制御部73は,基本的には自身配下の移動ネットワーク内のMN間の通常のデータ通信の通信経路を管理するが,この点に関してはこの発明に関しては特に関係しないため説明は省略する。ゲートウェイ制御部74は,後述するゲートウェイの優先度または,第2のネットワークとの無線リンクのロス率,遅延,受信信号強度,帯域などの無線リンク情報の管理および,それらの情報を搭載したゲートウェイ通知パケット(GWO:GateWay Option)のフラッディングを行うとともに,受信したゲートウェイ通知パケット内のゲートウェイの優先度または,第2のネットワークとの無線リンクのロス率,遅延,受信信号強度,帯域などの無線リンク情報と例えばメモリ(図示省略)に記憶しておいた自身の情報を比較し,ゲートウェイの選出および変更を行う。 【0017】 このゲートウェイ制御部74は,自身がアドホックネットワーク1におけるゲートウェイとなったことで,ルータ広告(RA:Router Advertisement)を拡張したゲートウェイ通知パケット(GWO)を,アドホックネットワーク1内の隣接ノードにブロードキャスト又はマルチキャストする。ゲートウェイ通知パケット(GWO)を受信した隣接ノードでは,ゲートウェイ制御部74で重複チェックをするとともに,さらに,隣接ノードにブロードキャストまたはマルチキャストし,これを繰り返すことにより,アドホックネットワーク1内でゲートウェイ通知パケット(GWO)がフラッディングされる。 【0018】 GWOはアドホックネットワーク1内でフラッディングされて全てのMRに伝達され,MR11?14の各ゲートウェイ制御部74は,GWOからアドホックネットワーク1内のゲートウェイの情報を得て,ゲートウェイになること,ゲートウェイの継続,取り止め等の判断を行う。」 (ウ)「【0022】 次に,メッセージフォーマットについて図11を用いて説明する。図11は上述のゲートウェイ通知パケット(GWO)のフォーマットの一例を説明するための図であり,(a)はデータ構成を示し,(b)は(a)の各データ(パラメータ)のビット数,値,内容を示した表を示す。このフォーマットは,ルータ広告(RA:Router Advertisement)のオプション(option)フォーマットにおける,ゲートウェイ通知パケット(GWO)として,新たなフォーマットを定義したものである。 【0023】 フォーマットのタイプ「Type」として,新たに未使用の値(例えば”210”)を定義する。8オクテット単位のオプション長「Length」,ゲートウェイとして動作しているかを示すフラグ「I」(ゲートウェイビット),モバイルルータがホームネットワークに接続されているか否かを示すフラグ「H」,バッテリ動作をしているかを示すフラグ「B」,GWOの新鮮さを表し,ゲートウェイが送信の度に+1インクリメントして送信する「Sequence Number(シーケンス番号)」,ゲートウェイ又は情報の有効期限を示す「GW Lifetime(GWライフタイム)」,ゲートウェイの優先度である「GW Preference(ゲートウェイ優先度)」を有する。 【0024】 さらに,ゲートウェイ通知パケットの送信元のゲートウェイのIPアドレス(又はID情報)である「Gateway Address(ゲートウェイアドレス)」,ゲートウェイとアクセスルータとの無線リンクの品質コストを示し,ルータ広告などの制御パケットあるいはユーザパケットの受信率(ロス率),あるいは受信信号レベル(受信信号強度)等の無線リンク品質や遅延等が定義される「Uniform Path Metric」,無線リンクの帯域幅を示す「BandWidth」を有する。 【0025】 つぎに,図1のように構成された通信システムの特にアドホックネットワークにおけるゲートウェイ選出とゲートウェイ変更の処理全体を説明する。図12は図1のアドホックネットワーク1のモバイルルータMR11?14と外部ネットワーク2のアクセスルータAR41,AR43の間でのゲートウェイ選出とゲートウェイ変更時の動作シーケンスの一例を説明するタイムテーブルである。 (中略) 【0027】 まず,MR11とAR41との無線リンク,及びMR13とAR43との無線リンクが確立された場合,又はリンク状態が所定品質以上で接続可能な場合,MR11とMR13はそれぞれアドホックネットワーク1におけるゲートウェイ(GW)となり(図12ではMR13が先にGWになっている),それぞれゲートウェイを示す「I」ビットを立てたゲートウェイ通知パケットGWO(MR11)とGWO(MR13)を送信する。 【0028】 なお,リンク状態の品質とは,後述するように外部ネットワーク2との無線リンクのロス率,遅延,受信信号強度,帯域を含む無線リンク情報の少なくとも1つが予め定められた所定の品質以上であることを示す。またMRは,ゲートウェイである間,周期的又は無線リンク情報の変化時にGWOを送信(フラッディング)する。ゲートウェイを取り止めた場合には,ゲートウェイを示す「I」ビットを立てずにGWOをフラッディングするか,又は自MRのためのGWOのフラッディングは行わない。また,全てのMRは,他のMRからのGWOをそれ以外のMR(送信元を除いた隣接する全てのMR)に,シーケンス番号(Sequence Number)をインクリメントして転送する。また重複したGWOは廃棄する。」 (エ)「【0073】 なお,アドホックネットワークは1ホップのホップ通信を行うものでもマルチポップ通信を行うものであってもよい。 【0074】 以上説明したように,上記実施の形態では,複数のモバイルルータによってアドホックネットワークが構成される場合に,外部ネットワークとの間のゲートウェイとなるモバイルルータがゲートウェイ通知パケットを送信することにより,各モバイルルータがゲートウェイの継続,取りやめ,または,新たにゲートウェイトなることを判断することにより,ゲートウェイの選出と変更を行うこととした。これにより,特別なノードを必要とせず,各モバイルルータの自律分散制御により,ゲートウェイの選出と変更を実現できる。 【0075】 なお,上記実施の形態では,モバイルルータが移動ネットワークであるアドホックネットワークを構成する場合について説明したが,モバイルルータの代わりにワイヤレスルータ,移動IP端末または無線基地局がネットワークを構成する場合であっても上記実施の形態の処理が適用可能であり,同様の効果を得ることができる。」 上記(ア)の【0001】,【0005】,上記(エ)の【0075】,上記図2の記載によれば,複数のモバイルルータ又は移動IP端末を含んで構成されたアドホックネットワークが見て取れる。そして,上記(ア)の【0005】,上記(イ)の【0012】,【0015】,上記(ウ)の【0024】,上記(エ)の【0073】,上記図2の記載によれば,モバイルルータ又は移動IP端末と対向ノードとの間でアドホックネットワーク及び外部ネットワークを介してユーザパケット等が転送されると解するのが自然である。 したがって,引用例には「対向ノードにそれぞれユーザパケットを送信する複数のモバイルルータ又は移動IP端末を含んで構成されたアドホックネットワーク」が記載されていると認められる。 上記(イ)の【0013】,【0015】,【0017】,【0018】,上記(ウ)の【0027】,上記図2の記載によれば,ゲートウェイとなるMR11,MR13は,外部ネットワークのアクセスルータAR41,43に接続することにより,外部ネットワークを介して対向ノードに接続しているといえ,そのための手段を備えていることは明らかである。 また,上記(イ)の【0016】?【0018】,上記(ウ)の【0022】,【0024】,【0027】,【0028】,上記図10の記載によれば,ゲートウェイとなるモバイルルータMR11,MR13は,他のモバイルルータ又は移動IP端末に対して,無線リンクの品質コスト等が所定の条件を満たした場合に,自身がゲートウェイとなることを示すビットを立てたゲートウェイ通知パケットGWOを通知するものであり,ゲートウェイ制御部74はそのための手段といえる。そして,当該ゲートウェイ通知パケットGWOはルータ広告のオプションであるから,当該「通知する」ことは「広告する」ことといえる。 そして,上記(エ)の【0075】の記載によれば,ゲートウェイとなる移動IP端末においても,モバイルルータMR11,MR13と同様に,上述の手段を備えて同様の動作を為すものと解するのが自然である。 したがって,引用例には「前記モバイルルータ又は移動IP端末のうち少なくとも1つが,外部ネットワークを介して前記対向ノードに接続する手段と,他のモバイルルータ又は移動IP端末に対して,ゲートウェイとなることを広告する手段と,を備える」ことが記載されていると認められる。 上記(ア)の【0005】,上記(エ)の【0073】の記載によれば,アドホックネットワークはマルチホップ通信を行うものを含み,対向ノードCNは,アドホックネットワーク1内の端末MN31?34の対向ノードであることに鑑みれば,「前記モバイルルータ又は移動IP端末が,前記アドホックネットワーク内のゲートウェイとして,前記他のモバイルルータ又は移動IP端末から受信したデータを前記対向ノードに送信する」といえる。 以上を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「対向ノードにそれぞれユーザパケットを送信する複数のモバイルルータ又は移動IP端末を含んで構成されたアドホックネットワークであって, 前記モバイルルータ又は移動IP端末のうち少なくとも1つが, 外部ネットワークを介して前記対向ノードに接続する手段と, 他のモバイルルータ又は移動IP端末に対して,ゲートウェイとなることを広告する手段と,を備え, 前記モバイルルータ又は移動IP端末が,前記アドホックネットワーク内のゲートウェイとして,前記他のモバイルルータ又は移動IP端末から受信したデータを前記対向ノードに送信するアドホックネットワーク。」 [周知技術] 本願の優先日前に刊行された文献である 松井進,「アドホックネットワークの新展開」,電子情報通信学会技術研究報告 無線通信システム,2010年10月20日,vol.110,no.251,RCS2010-119 には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (オ)「 」(80,81ページ) 同じく本願の優先日前に刊行された文献である 原田博司,「スマートユーティリティネットワーク?概要および標準化動向?」,電子情報通信学会技術研究報告 ソフトウェア無線,2010年10月20日,Vol.110,No.252,SR2010-48 には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (カ)「2.スマートユーティリティネットワーク SUNとは,電気/ガス/水道等の各種メータにSUNデバイスをつけたスマートメータを利用し,各メータで取得した情報をメッシュネットワーク(もしくはアドホックネットワーク)と広域ネットワーク(WAN),有線ネットワークを利用して収集するとともに,収集した結果をもとに,地図データ等との連携を行うことにより,データの整理,および,各種メータのコントロールをネットワーク側から行う双方向ネットワークである。」(57ページ右欄) 同じく本願の優先日前に公表された特表2010-531599号公報には,図面とともに以下の事項が記載されている。 (キ)「【0002】 今後数年間で,電力のための配電網を運営する公共事業会社は,自分たちの電気機械式のフェラーリスメータ(Ferraris meter)のほとんど又はすべてを,遠隔的に読み出されることができるいわゆる「スマートメータ」で置き換え始めるであろう。これらのメータと通信するためのいくつかの方法が存在するが,特に,1つがこのタスクに理想的に適しており,すなわち電力線通信又はPLCである。PLCは2つの主な利点を有する。PLCは,LVネットワークのオペレータ自体の管理下にあり,PLCは,メータが低電圧ネットワークに分岐して配置されるときに,メータが通信プラットフォームに自動的に接続されるような「プラグアンドプレイ」動作を得る手段である。世界中での経験から,多くの雑音及び歪みが住宅及び建物内のあらゆる種類の電気製品によって発生されるので,PLC通信は,いくぶん信頼性が低く,多くの場合,1日に数時間の間中断されるという結果が示されている。さらに,PLCモデムによって外部のケーブル又は電線に注入されるHF電力は,顧客へのLV接続,及びLV変電所の電力変圧器で見られる非常に低く,かつ変化するインピーダンスによって,厳しく制限される。 (中略) 【0025】 図2に示したシステムはさらに,予め与えられたエンドユーザ15のスマートメータ17の1つ(又はそれ以上)が,遠隔通信ネットワーク2へのゲートウェイとして機能するPLCモデム18を有するという点で図1のシステムと異なる。これは,図1のシステムの第1のゲートウェイ6がまた存在することを排除しないが,そのゲートウェイが除外されてもよい。複数のゲートウェイ6,16の存在は,ゲートウェイの機能が,必要であれば,一方のゲートウェイから他方のゲートウェイに転送されてもよいことを意味する。」 上記(オ)?(キ),上記図2の記載によれば,「複数のスマートメータがアドホックネットワークを構成し,各スマートメータは,自身で測定したデータを,アドホックネットワークや外部ネットワークを介して,所定のサーバに送信する。」こと及び「スマートメータが,外部ネットワークへのゲートウェイとして機能する手段を有する。」ことは,当該技術分野における周知技術であると認められる。 ウ 対比・判断 補正後の発明と引用発明とを対比すると, 本願明細書の【0022】の「このようなユーザノードは,スマートメータと呼ばれる計器が内蔵された専用品であってもよいし,あるいは,既存のメータにデータを授受可能なモバイル無線ルータのようなものであってもよい。」との記載を参酌すると,本願発明の「複数のスマートメータ」と,引用発明の「複数のモバイルルータ又は移動IP端末」とは,ともに「複数の通信ノード」といえる点で共通する。 そして,本願発明の「所定のサーバにそれぞれデータを送信する」ことと,引用発明の「対向ノードにそれぞれユーザパケットを送信する」ことは,ともに「所定のノードにそれぞれデータを送信する」する点で共通する。 引用発明の「モバイルルータ又は移動IP端末」はアドホックネットワークに参加するものといえるから,「ゲートウェイとなることを広告」することを,「ゲートウェイとして,前記アドホックネットワークに参加したことを広告する」と称することは任意である。 本願発明と引用発明とは,下記の相違点は別として,「前記通信ノードが,前記アドホックネットワーク内のゲートウェイとして,前記他の通信ノードから受信したデータを前記所定のノードに送信する」点で差異は無い。 以上を総合すると,補正後の発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。 (一致点) 「所定のノードにそれぞれデータを送信する複数の通信ノードを含んで構成されたアドホックネットワークであって, 前記通信ノードの少なくとも1つが, 外部ネットワークを介して前記所定のノードに接続する手段と, 他の通信ノードに対して,ゲートウェイとして,前記アドホックネットワークに参加したことを広告する手段と,を備え, 前記通信ノードが,前記アドホックネットワーク内のゲートウェイとして,前記他の通信ノードから受信したデータを前記所定のノードに送信するアドホックネットワーク。」 (相違点) 一致点の「通信ノード」,「所定のノード」に関して,本願発明はそれぞれ「スマートメータ」,「所定のサーバ」であるのに対し,引用発明は「モバイルルータ又は移動IP端末」,「対向ノード」である点。 以下,上記相違点について検討する。 上記イの[周知技術]の項で述べたとおり,「複数のスマートメータがアドホックネットワークを構成し,各スマートメータは,自身で測定したデータを,アドホックネットワークや外部ネットワークを介して,所定のサーバに送信する。」こと及び「スマートメータが,外部ネットワークへのゲートウェイとして機能する手段を有する。」ことは,当該技術分野における周知技術であることに鑑みれば,引用発明の「モバイルルータ又は移動IP端末」,「対向ノード」を,「スマートメータ」,「スマートメータの計測データを収集する収集サーバである「所定のサーバ」」とすることは,格別困難なことではなく,当業者が容易に想到し得ることである。 そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 3 結語 したがって,本件補正は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年7月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願発明は,上記「第2 補正の却下の決定」の項中の「1 本願発明と補正後の発明」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。 2 引用発明等 引用発明及び周知技術は,上記「第2 補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ 引用発明等」の項で認定したとおりである。 3 対比・判断 そこで,本願発明と引用発明とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 補正の却下の決定」の項中の「2 補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ 対比・判断」の項で検討したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-01 |
結審通知日 | 2017-11-07 |
審決日 | 2017-11-27 |
出願番号 | 特願2014-244978(P2014-244978) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 東 昌秋 |
特許庁審判長 |
北岡 浩 |
特許庁審判官 |
菅原 道晴 松永 稔 |
発明の名称 | アドホックネットワーク、ユーザノード、管理サーバ、通信方法およびプログラム |
代理人 | 加藤 朝道 |