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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q |
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管理番号 | 1336448 |
審判番号 | 不服2016-16341 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-01 |
確定日 | 2018-01-11 |
事件の表示 | 特願2012- 1776「無線通信装置および無線通信装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月10日出願公開、特開2013- 9298〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年1月10日(国内優先権主張 平成23年5月26日)の出願であって、その手続の経緯は概略以下の通りである。 平成27年 1月 6日 :手続補正書の提出 平成27年 8月26日付け:拒絶理由の通知 平成27年10月23日 :意見書、手続補正書の提出 平成28年 2月 3日付け:拒絶理由の通知 平成28年 4月 7日 :意見書、手続補正書の提出 平成28年 8月 8日付け:拒絶査定 平成28年11月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 補正の却下の決定 [結論] 平成28年11月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本願発明と補正後発明 平成28年11月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成28年4月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「無線通信を利用して所望の接続先に接続して前記接続先から所望のコンテンツを取得するための接続要求を即時に行うか、通信環境が所定条件を満たすタイミングで前記接続要求を行うかを選択するユーザ操作を受け付ける操作受付部と、 設定された閾値に基づいて前記通信環境が前記所定条件を満たすと判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部と を具備する無線通信装置。」(以下、「本願発明」という。) を、 「無線通信を利用して所望の接続先に接続して前記接続先から所望のコンテンツを取得するための接続要求を即時に行うか、通信環境が所定条件を満たすタイミングで前記接続要求を行うかを選択するユーザ操作を受け付ける操作受付部と、 前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部と を具備する無線通信装置。」(以下、「補正後発明」という。) に変更することを含むものである。([当審注]:下線部は補正箇所を示す。) 2 補正の適否 請求項1についての上記補正は、本願発明の「設定された閾値に基づいて前記通信環境が前記所定条件を満たすと判断し」について、「前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断し」とするものである。 請求人は審判請求書にて、上記補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とすると主張しているので、まず補正の目的要件について検討する。 (1)補正の目的要件 補正後発明は、「設定された閾値に基づいて」との発明特定事項が存在しない。このため、「設定された閾値」に基づくことなく検出した「通信環境」が「所定条件」との比較によって「所定条件を満たすか否かを判断」することを含むことになるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とはいえない。 したがって、上記補正は特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 また、上記補正は、明らかに、請求項の削除を目的とするものではなく、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。 請求項19についての補正も同様である。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)独立特許要件 上記(1)のとおり、本件補正は却下すべきものであるが、更に進めて独立特許要件についても以下に判断を示す。 ア.補正後発明 補正後発明は、上記「1 本願発明と補正後発明」の「補正後発明」のとおりと認める。 イ.引用発明等 [引用発明] 原査定の拒絶の理由に引用された特表2005-521336号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。([当審注]:以下、下線は当審で付した。) (ア)「【請求項12】 エアインタフェース(204)上で無線の音声およびデータ通信が可能な移動無線通信端末(101)であって、前記端末(101)が、タスクを処理するための処理手段および前記タスクをタイミングどおりに実行するためのタイミング手段(203)を含み、前記端末(101)が、そのようなタスクの各々に関連する命令およびデータを記憶するためのメモリ手段(201)を含み、前記端末(101)が、遅延可能なタスクに関する受信した命令を前記メモリ手段(201)内の待ち行列に記憶し、充電デバイス(102)に結合されるまで待ち、次に、前記タスクを実行することを特徴とする移動無線通信端末(101)。 【請求項13】 遅延可能なタスクに関する記憶された命令の少なくとも一部が、前記端末のユーザ・インタフェース(202)を介してもともとはユーザから受信されたことを特徴とする、請求項12に記載の移動無線通信端末。」 (イ)「【0018】 遅延可能なバックグラウンド動作の例は、以下の通りである。 ・インターネット・ページ、音楽、ゲーム、写真などのコンテンツのダウンロードおよび先取り(プリキャッシング) ・個別化および推奨アプリケーションに関連するユーザのプロファイルおよび好みの計算 ・定期的なウイルス・スキャン ・ファイル圧縮によるメモリまたはディスク空間/フラッシュ・メモリの節減 ・ファイルの断片化防止のための記憶されたファイルの組織化とその結果としての端末の電力節減および高速化。」 (ウ)「【0022】 図1および図2を参照すると、本発明の概念に含まれる基本要素は、トランシーバ(204)、タイマ機能付き処理ユニット(203)、プログラム/データ・メモリ(201)、ユーザ・インタフェース(202)などの構成要素を含む移動端末(101)と、端末を収容し、そのバッテリ・コネクタと接続し、バッテリ(205)または上記端末(101)のバッテリを充電するように適合された充電デバイス(102)である。必須の電源(207)に加えて、「インテリジェント」充電器は、メモリ(209)、または端末(101)と充電器(102)との間で双方向データ接続(206,208)を用いて端末(101)から送信される情報を一時的に記憶または処理する処理装置(210)さえ含むことができる。通常、充電器(102)は家庭または自動車の電源コンセント(図示せず)に接続される。 ・・・略・・・ 【0024】 移動端末(101)は、とりわけ、音楽再生機能を備え、ユーザはインターネットを介して音楽データ・ファイルを移動端末(101)に配信するようにオーダしている。音楽ファイル形式は、例えば、人気があるMP3フォーマット、または移動端末が処理できる他の任意のフォーマットである。MP3音楽ファイルを受信するのに必要な電力量はきわめて大きい。音楽を1分間聴くのに約1MBのデータが必要なので、移動端末(101)のユーザは、本発明によれば、端末(101)がバッテリ充電器(102)に接続されている間に音楽をダウンロードして、消費電力が大きいバックグラウンド動作の処理を最適化したいと考える。また、ユーザがこの特定の音楽を今すぐに聴く時間がないかそれを望まない時には、ファイルを、例えば、24時間以内に移動端末(101)に配信するようにオーダしている。この遅延ダウンロードはバックグラウンド・ダウンロードと呼ばれる。 【0025】 図3のフローチャートによれば、本発明のプロセスはオーディオ・ファイル・ダウンロード・オーダ(301)を出したユーザによって開始される。移動端末(101)は、ユーザ(302)によって即時ダウンロードとバックグラウンド・ダウンロードのどちらが要求されているのかを確認する。ユーザがバックグラウンド・ダウンロードのデフォルトの最大時間として24時間を有すると仮定する。この場合、特定の時間は指定されず、端末(101)は、コマンドをデフォルトのバックグラウンド・ダウンロード・コマンドとして識別し、通常動作を想定して、端末(101)がバッテリ充電器(102)に接続されている時に、このダウンロード・タスクをそのコマンド・スタックに入れるか、処理ユニット(203)によって後で実行されるメモリ(201)内のタスク(303)の同様の待ち行列に入れる。さらに、ユーザがその不規則なライフスタイルなどが理由で充電完了前に充電を中止しようとする場合、バッテリ(102)がフル充電されるまでタスクの実行を延期することが有利である。いずれにせよ、動作は、例えば、先入れ先出し(FIFO)方式、または所定の優先順位に従って待ち行列から取り出すことができる。コマンドおよびオペランドのスタックはシステム・プログラマの一般的な能力の範囲内であり、この機能についてはここでは詳細に説明する必要はない。」 (エ)「【図3】」 当該技術分野の技術常識を勘案して考慮すると、引用文献1の上記各記載及び図面から以下のことが把握できる。 上記(ア)の【請求項12】及び上記(ウ)【0022】の記載によれば、移動端末は、エアインタフェース上で無線の音声およびデータ通信が可能であって、処理手段及びタイミング手段、具体的にはタイマ機能付き処理ユニットによりタスクを実行する移動無線通信端末といえる。 上記(ア)の【請求項12】、上記(ウ)【0022】及び(エ)【図3】の記載によれば、タイマ機能付き処理ユニットは、充電デバイスに結合されたという条件を満たすタイミングでタスクを実行するといえる。 上記(ウ)の【0025】の記載によれば、移動無線通信端末は、ユーザのオーディオ・ファイル・ダウンロード・オーダを受け付けて、即時ダウンロードとバックグラウンド・ダウンロードのどちらが要求されているかを確認している。 ここで、上記(ウ)の【0024】の記載によれば、バックグラウンド・ダウンロードとは、ユーザが特定の音楽を今すぐに聴く時間がないかそれを望まないときに行われる遅延ダウンロードのことである。 そして、ダウンロードはユーザが出したオーディオ・ファイル・ダウンロード・オーダによって開始される旨の【0024】及び【0025】の記載を考慮すると、「即時ダウンロード」とは、「ユーザからのダウンロードに関する命令を受け付けた後、即時に行う」ダウンロードのことであって、「遅延ダウンロード」とは、ユーザが特定の音楽を今すぐに聴く時間がないかそれを望まないときに行われる、「即時に行われる必要のない」ダウンロードのことであると解される。 上記(ア)の【請求項13】の記載によれば、移動無線通信端末は、ユーザからタスクに関する命令を受信するユーザ・インタフェースを具備するといえる。 ここで、上記(エ)【図3】の[301]に、「タスク:オーディオ・ファイルのダウンロード」と記載されていること、上記(イ)の【0018】の記載からダウンロードされる音楽等は「コンテンツ」といえること、を考慮すると、「オーディオ・ファイル・ダウンロード・オーダ」とは、「コンテンツのダウンロード」というタスクに関する命令を意味すると解される。 以上を総合すると,引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「エアインタフェース上で無線の音声およびデータ通信が可能な移動無線通信端末であって、 即時ダウンロードと遅延ダウンロードのどちらかを要求するコンテンツのダウンロードというタスクに関する命令をユーザから受信するユーザ・インタフェースと、 充電デバイスに結合されたという条件を満たすタイミングでコンテンツのダウンロードというタスクを実行するタイマ機能付き処理ユニットと、 を具備する移動無線通信端末。」 [周知技術] 特開2002-300649号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 (オ)「【0009】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、端末における基地局からの信号の受信状態に基づいて端末側で下りデータ通信速度を予測し、前記予測下りデータ通信速度を前記基地局へ通知することにより、前記基地局が前記予測下りデータ通信速度でデータを通信するデータ通信方式を採用する携帯通信端末において、ダウンロードを希望するデータの情報をダウンロード予約情報として記憶する記憶手段と、前記予測下りデータ通信速度、又は所定の期間における前記予測下りデータ通信速度から算出される平均予測下りデータ通信速度が予め設定されているデータ通信開始閾値以上であるかを判断する判断手段と、前記予測した下りデータ通信速度、又は前記平均予測下りデータ通信速度が前記閾値以上であった場合に、前記ダウンロード予約情報として予約されているデータのダウンロードを開始するダウンロード開始手段とを具備することを特徴とする携帯通信端末を提供する。 【0010】このような構成によれば、携帯通信端末利用者はダウンロードしたいデータ量が比較的大きくダウンロードに時間がかかりそうな場合、ダウンロードしたいデータ量はそれ程多くはないが受信状態が悪くダウンロードに時間がかかりそうな場合、すぐには必要のないデータをダウンロードする場合等に、ダウンロードを希望するデータの情報(例えば、接続先アドレス等)と、そのデータをダウンロードする際の希望下り方向のデータ通信速度を予め携帯通信端末に設定する。かかる操作が行われると、当該携帯通信端末は、入力されたこれらの情報をダウンロード予約情報として記憶する。そして、携帯通信端末における基地局信号の受信状態が、利用者の移動等により改善され、予め設定されたデータ通信開始閾値以上となった場合に、自動的にデータダウンロードを開始する。 【0011】このように、通信状態が良好であるときに予約したデータのダウンロードが動的に行われるため、利用者はデータのダウンロードに自己の時間を束縛されることなく、ダウンロード終了を待つストレスから開放される。・・・略・・・」 特開2010-109771号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 (カ)「【請求項1】 基地局により指定された通信システムを利用して無線通信によりデータをダウンロードする無線通信装置であって、 前記無線通信の待ち受け中に、利用可能な通信システムからのデータ受信品質に係る指標を算出する算出手段と、 前記指標に対応したスループットの予測値を予め記憶しておく記憶手段と、 前記ダウンロードの指示がなされると、前記算出手段により算出された指標に基づいて、前記記憶手段に記憶されたスループットの予測値を参照し、当該予測値が所定の閾値以上の場合には、前記ダウンロードを実行し、当該予測値が所定の閾値未満の場合には、前記ダウンロードを保留する制御を行う制御手段と、を備える無線通信装置。」 (キ)「【0020】 図2は、本実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。携帯電話機1は、表示部21と、CPU30と、通信制御部31と、アンテナ32と、音声制御部33と、マイク12と、レシーバ22と、キー入力部11と、メモリ34と、を備える。 ・・・略・・・ 【0026】 このようにして、現在の携帯電話機(無線通信装置)は、複数の周波数帯(バンドクラス)に対応している。そして、各バンドクラス内には多数の周波数チャネルが存在しており、これらの周波数チャネルは基地局とのネゴシエーションにより決定され、決定された周波数チャネルにより携帯電話機(無線通信装置)は待ち受けを行う。 ・・・略・・・ 【0029】 その後、ユーザからの操作入力や、設定時間の到来等に応じて、データのダウンロードが要求されると、受信先の基地局、バンドクラス、周波数チャネルごとに記憶された指標に基づいて、スループット率の予測値を求める。この予測値を所定の閾値と比較することにより、ダウンロードを行うか否かを判断する(処理の詳細は後述する)。」 (ク)「【0050】 図7は、本実施形態に係るCPU30の処理の流れを示すフローチャートである。 【0051】 ステップS1では、CPU30は、待ち受け中の基地局、バンドクラス、および周波数チャネルについて、受信電界強度を測定し、所定時間内の平均値を記録する。 【0052】 ステップS2では、CPU30は、待ち受け中(ステップS1と同一)の基地局、バンドクラス、および周波数チャネルについて、ハンドオフ間隔を測定し、所定時間内の平均値を記録する。 【0053】 ステップS3では、CPU30は、待ち受け中(ステップS1およびステップS2と同一)の基地局、バンドクラス、および周波数チャネルについて、最大パス遅延時間を測定し、所定時間内の平均値を記録する。 ・・・略・・・ 【0058】 ステップS7?S9ではそれぞれ、CPU30は、基地局から指定された周波数チャネルに関して、ステップS1?S3にて記録した待ち受け中の平均受信電界強度、平均ハンドオフ間隔、および最大パス遅延時間を読み出す。 【0059】 ステップS10では、CPU30は、ステップS7?S9にて読み出した値に基づいて、予測値(図6)を参照する。CPU30は、適宜、補間処理を行って、基地局から指定された周波数チャネルにおけるスループット率の予測値を算出する。」 上記(オ)?(ク)の記載を総合すれば、周知例1及び2に示される「即時でないダウンロードを行うに際し、通信端末が存在する基地局エリアの通信環境を検出し、閾値及び当該通信環境に基づいて当該通信環境が閾値以上である否かを判断し、即時でないダウンロードを開始すること。」(以下、「周知技術」という。)という技術は、本件優先日前に既に周知であると認められる。 ウ.対比・判断 以下、補正後発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「移動無線通信端末」は、補正後発明の「無線通信装置」に対応する。 (イ)引用発明の「命令をユーザから受信するユーザ・インタフェース」は、補正後発明の「ユーザ操作を受け付ける操作受付部」に対応する。 ここで、(i)引用発明が「エアインターフェース上で無線の音声及びデータ通信が可能な移動無線通信端末」であること、(ii)「ダウンロード」が、接続先であるコンテンツ提供元に接続し、所望のコンテンツを取得する処理であること、及び、コンテンツ提供元に接続する際に接続要求を含む通信手順を経ることは技術常識であること、を踏まえると、引用発明の「コンテンツのダウンロードというタスク」は、補正後発明の「無線通信を利用して所望の接続先に接続して前記接続先から所望のコンテンツを取得するための接続要求」「を行う」ことに相当する。 そして、引用発明の「即時ダウンロード」「を要求するコンテンツのダウンロードというタスクに関する命令をユーザから受信する」ことは、補正後発明の「無線通信を利用して所望の接続先に接続して前記接続先から所望のコンテンツを取得するための接続要求を即時に行う」こと「を選択するユーザ操作を受け付ける」ことに相当する。 また、引用発明の「遅延ダウンロード」は、「充電デバイスに結合されたという条件を満たすタイミング」で実行されるものであるから、補正後発明の「通信環境が所定条件を満たすタイミングで前記接続要求を行うかを選択するユーザ操作を受け付ける」ことと、引用発明の「遅延ダウンロード」「を要求するコンテンツのダウンロードというタスクに関する命令をユーザから受信する」こととは、下記の相違点は別として、「所定条件を満たすタイミングで前記接続要求を行う」こと「を選択するユーザ操作を受け付ける」点で共通している。 (ウ)引用発明の「タイマ機能付き処理ユニット」は、「コンテンツのダウンロードというタスクを実行する」ものであり、ユーザにより選択される「即時ダウンロード」及び「遅延ダウンロード」をそれぞれのタイミングで行うものであるから、「選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部」といえる。 ここで、補正後発明の「前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部」は、本願明細書の全開示内容に照らせば、「通信環境が所定条件を満たすタイミングで前記接続要求を行う」こと「を選択するユーザ操作を受け付け」た場合にのみ、「前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断」することを包含するものと解される。 そして、上記(イ)の点を踏まえると、補正後発明の「前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部」と、引用発明の「充電デバイスに結合されたという条件を満たすタイミングでコンテンツのダウンロードというタスクを実行するタイマ機能付き処理ユニット」とは、下記の相違点は別として「前記所定条件を満たすか否かを判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部」である点で共通している。 以上を総合すると、補正後発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。 [一致点] 「無線通信を利用して所望の接続先に接続して前記接続先から所望のコンテンツを取得するための接続要求を即時に行うか、所定条件を満たすタイミングで前記接続要求を行うかを選択するユーザ操作を受け付ける操作受付部と、 前記所定条件を満たすか否かを判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部と を具備する無線通信装置。」 [相違点] 一致点の「所定の条件」に関して、補正後発明は「通信環境」に係る条件であり、一致点の「前記所定条件を満たすか否かを判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行う」に関して、補正後発明は「前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行う」のに対し、引用発明は、それぞれ「充電デバイスに結合されたという条件」であり、「充電デバイスに結合されたという条件を満たすタイミングでコンテンツのダウンロードというタスクを実行する」ものである点。 エ.当審の判断 (ア)相違点について 上記「イ.引用発明等」にて周知技術として示したように、「即時でないダウンロードを行うに際し、通信端末が存在する基地局エリアの通信環境を検出し、閾値及び当該通信環境に基づいて当該通信環境が閾値以上であるか否かを判断し、即時でないダウンロードを開始すること」は、本件優先日前に既に周知である。 してみれば、「所定の条件」として「充電デバイスに結合されたという条件」の代わりに「通信環境」に係る条件を採用し、「前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断し」てダウンロードに係る接続要求を行うようにすることは、格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。 (イ)作用効果について そして、補正後発明の作用効果についても、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 (ウ)小括 以上のとおり、補正後発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。 よって、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年11月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2 補正の却下の決定 1 本願発明と補正後発明」の「本願発明」のとおりのものと認める。 2 引用発明等 引用発明及び周知技術は,上記「第2 補正の却下の決定 2 補正の適否 (2)独立特許要件 イ.引用発明等」で認定したとおりである。 3 対比・判断 以下、本願発明と引用発明とを対比する。 まず、本願発明は、補正後発明の「前記ユーザ操作が受け付けられた後の自身の無線通信装置が存在するエリアの通信環境を検出して当該検出した通信環境に基づいて前記所定条件を満たすか否かを判断」する点について、「設定された閾値に基づいて前記通信環境が前記所定条件を満たすと判断」すると特定されている点で相違し、他の構成は同じである。 そうすると、上記「第2 補正の却下の決定 2 補正の適否 (2)独立特許要件 ウ.対比・判断」での検討を踏まえて、一致点、相違点は以下のとおりとなる。 [一致点] 「無線通信を利用して所望の接続先に接続して前記接続先から所望のコンテンツを取得するための接続要求を即時に行うか、所定条件を満たすタイミングで前記接続要求を行うかを選択するユーザ操作を受け付ける操作受付部と、 前記所定条件を満たすと判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行うように制御する制御部と を具備する無線通信装置。」 [相違点] 一致点の「所定条件」に関し、本願発明は「通信環境」に係る条件であり、一致点の「前記所定条件を満たすと判断し、前記選択されたタイミングで前記接続要求を行う」に関して、本願発明は「設定された閾値に基づいて前記通信環境が前記所定条件を満たすと判断する」のに対し、引用発明は、それぞれ「充電デバイスに結合されたという条件」であり、「充電デバイスに結合されたという条件を満たすタイミングでコンテンツのダウンロードというタスクを実行する」ものである点。 4 当審の判断 (ア)相違点について 上記「第2 補正の却下の決定 2 補正の適否 (2)独立特許要件 イ.引用発明等」にて示したように、「即時でないダウンロードを行うに際し、通信端末が存在する基地局エリアの通信環境を検出し、閾値及び当該通信環境に基づいて当該通信環境が閾値以上である否かを判断し、即時でないダウンロードを開始すること」は、本件優先日前の周知技術である。 してみれば、「所定の条件」として「充電デバイスに結合されたという条件」の代わりに「通信環境」に係る条件を採用し、閾値を基づいて判断することは、格別困難なことではなく、当業者が適宜なし得ることである。 (イ)作用効果について そして、本願発明の作用効果についても、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-13 |
結審通知日 | 2017-11-14 |
審決日 | 2017-11-28 |
出願番号 | 特願2012-1776(P2012-1776) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松野 吉宏 |
特許庁審判長 |
菅原 道晴 |
特許庁審判官 |
山本 章裕 古市 徹 |
発明の名称 | 無線通信装置および無線通信装置の制御方法 |
代理人 | 丸島 敏一 |