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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1336517
審判番号 不服2016-17524  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-24 
確定日 2018-02-13 
事件の表示 特願2013-511565「有機電子装置を調製するための配合物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 1日国際公開、WO2011/147523、平成25年 8月22日国内公表、特表2013-533606、請求項の数(39)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年(2011年)4月28日(パリ条約による優先権主張 欧州特許庁受理 2010年5月27日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 4月25日 審査請求
平成27年 8月28日 拒絶理由通知
平成28年 2月23日 意見書・手続補正
平成28年 7月19日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成28年11月24日 審判請求・手続補正
平成29年 9月12日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成29年12月18日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1ないし39に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明39」という。)は,それぞれ当審補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし39に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
有機電子(OE:organic electronic)装置を調製する方法であって,
a)フィルムまたは層を形成するために,1種類以上の有機半導体化合物(OSC:organic semiconducting compound)と,1種類以上の有機溶媒とを含む配合物であって,前記配合物は25℃において2.23?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有し,前記有機溶媒の沸点は最高で400℃であることを特徴とする配合物を基板上に堆積する工程と,
b)前記有機溶媒(1種類または多種類)を除去する工程と
を含む方法であって,
グラビア印刷またはフレキソ印刷により,前記配合物が塗工されることを特徴とする方法。
【請求項2】
有機電子(OE:organic electronic)装置を調製する方法であって,
a)フィルムまたは層を形成するために,1種類以上の有機半導体化合物(OSC:organic semiconducting compound)と,1種類以上の有機溶媒とを含む配合物であって,前記配合物は25℃において2.23?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有し,前記有機溶媒の沸点は最高で400℃であり,前記有機溶媒はシクロアルキル基を有する芳香族炭化水素化合物および芳香族アルコキシ化合物より選択されることを特徴とする配合物を基板上に堆積する工程と,
b)前記有機溶媒(1種類または多種類)を除去する工程と
を含む方法であって,
グラビア印刷またはフレキソ印刷により,前記配合物が塗工されることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記配合物は,溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記配合物は,22mN/m?50mN/mの範囲内の表面張力を含むことを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は,17.0?23.2MPa^(0.5)の範囲内のH_(d),0.2?12.5MPa^(0.5)の範囲内のH_(p)および0.0?20.0MPa^(0.5)の範囲内のH_(h)のハンセン溶解度パラメータを含むことを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は,17.0?23.2MPa^(0.5)の範囲内のH_(d),0.2?10.5MPa^(0.5)の範囲内のH_(p)および0.0?5.0MPa^(0.5)の範囲内のH_(h)のハンセン溶解度パラメータを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機溶媒は,1種類以上の芳香族および/またはヘテロ芳香族化合物を含むことを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶媒は,1種類以上の芳香族炭化水素化合物を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記芳香族炭化水素化合物は,シクロアルキル基を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記芳香族炭化水素化合物は,1?8個の炭素原子を有するアルキル基を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記有機溶媒または溶媒ブレンドは,炭化水素芳香族化合物の混合物であることを特徴とする請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒は,少なくとも130℃の沸点を含むことを特徴とする請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒は異なる沸点を有する化合物の混合物であり,最低の沸点を有する化合物の沸点は,最高の沸点を有する化合物の沸点より少なくとも10℃低いことを特徴とする請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機溶媒は異なる沸点を有する化合物の混合物であり,最低の沸点を有する化合物の沸点は,最高の沸点を有する化合物の沸点より最大で100℃低いことを特徴とする請求項1?13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記配合物は,少なくとも80重量%の前記有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1?14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒は,少なくとも1.5の分配率logPを含むことを特徴とする請求項1?15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記配合物は,少なくとも1種類の不活性バインダーを含むことを特徴とする請求項1?16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記不活性バインダーは,スチレンモノマーおよび/またはオレフィンより誘導される繰返単位を含むポリマーであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記不活性バインダーは,スチレンモノマーおよび/またはオレフィンより誘導される繰返単位を少なくとも80重量%含むポリマーであることを特徴とする請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記不活性バインダーは,少なくとも200,000g/molの重量平均分子量を有するポリマーであることを特徴とする請求項17?19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
有機半導体化合物は,有機発光材料および/または電荷輸送材料であることを特徴とする請求項1?20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
有機半導体化合物は,5000g/mol以下の分子量を有することを特徴とする請求項1?21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
有機半導体化合物は,以下の式から選択される化合物であることを特徴とする請求項1?22のいずれか1項に記載の方法。
【化1】


(式中,
nは1より大きい整数であり,
Rは,それぞれの出現において同一または異なって,H,F,Cl,Br,I,CN,直鎖状,分岐状または環状で1?40個のC原子を有するアルキル基(ただし,1個以上のC原子は,O-および/またはS-原子がそれぞれ互いに直接連結しないようにして,O,S,O-CO,CO-O,O-CO-O,CR^(0)=CR^(0)またはC≡Cで置き換えられていてもよく,ただし,1個以上のH原子は,F,Cl,Br,IまたはCNで置き換えられていてもよい。)を表すか,または,4?20個の環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基(該基は無置換であるか,1個以上の非芳香族基R^(S)で置換されている。)を表し,ただし,また,1個以上の基Rは,互いと共に,および/または,基Rが連結されている環と共に,単環状または多環状の脂肪族または芳香族環系を形成していてもよく,
R^(S)は,それぞれの出現において同一または異なって,F,Cl,Br,I,CN,Sn(R^(00))_(3),Si(R^(00))_(3)またはB(R^(00))_(2),直鎖状,分岐状または環状で1?25個のC原子を有するアルキル基(ただし,1個以上のC原子は,O-および/またはS-原子がそれぞれ互いに直接連結しないようにして,O,S,O-CO,CO-O,O-CO-O,CR^(0)=CR^(0),C≡Cで置き換えられていてもよく,ただし,1個以上のH原子は,F,Cl,Br,IまたはCNで置き換えられていてもよい。)を表すか,または,R^(S)は,4?20個の環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基(該基は無置換であるか,1個以上の非芳香族基R^(S)で置換されている。)を表し,ただし,また,1個以上の基R^(S)は,互いと共に,および/または,Rと共に,環系を形成していてもよく,
R^(0)は,それぞれの出現において同一または異なって,H,F,Cl,CN,1?12個のC原子を有するアルキル,または,4?10個の環原子を有するアリールまたはヘテロアリールを表し,
R^(00)は,それぞれの出現において同一または異なって,H,1?20個のC原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素基を表し,ただし,また,2個の基R^(00)は,それらが連結されているヘテロ原子(Sn,SiまたはB)と共に環を形成していてもよく,
rは,0,1,2,3または4であり,
sは,0,1,2,3,4または5である。)
【請求項24】
nは,10?1,000の整数であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
有機半導体化合物は,以下の式の化合物であることを特徴とする請求項1?22のいずれか1項に記載の方法。
【化2】


(式中,R^(1),R^(2),R^(3),R^(4),R^(7),R^(8),R^(9),R^(10),R^(15),R^(16),R^(17)は,それぞれ独立に,同一または異なって,それぞれ独立に,H;置換されていてもよいC_(1)?C_(40)のカルビルまたはヒドロカルビル基;置換されていてもよいC_(1)?C_(40)のアルコキシ基;置換されていてもよいC_(6)?C_(40)のアリールオキシ基;置換されていてもよいC_(7)?C_(40)のアルキルアリールオキシ基;置換されていてもよいC_(2)?C_(40)のアルコキシカルボニル基;置換されていてもよいC_(7)?C_(40)のアリールオキシカルボニル基;シアノ基(-CN);カルバモイル基(-C(=O)NH_(2));ハロホルミル基(-C(=O)-X,式中,Xはハロゲン原子を表す。);ホルミル基(-C(=O)-H);イソシアノ基;イソシアネート基;チオシアネート基またはチオイソシアネート基;置換されていてもよいアミノ基;ヒドロキシ基;ニトロ基;CF_(3)基;ハロ基(Cl,Br,F);置換されていてもよいシリル基を表し;および,Aは,ケイ素またはゲルマニウムを表し,および,
式中,組R^(1)およびR^(2),R^(2)およびR^(3),R^(3)およびR^(4),R^(7)およびR^(8),R^(8)およびR^(9),R^(9)およびR^(10),R^(15)およびR^(16),および,R^(16)およびR^(17)は,それぞれ,独立に,互いに架橋されてC_(4)?C_(40)の飽和または不飽和環を形成していてもよく,その飽和または不飽和環には,酸素原子,硫黄原子,または,式-N(R^(a))-(式中,R^(a)は,水素原子または炭化水素基である。)の基が介在していてもよく,また置換されていてもよく,および
式中,ポリアセン骨格の1個以上の炭素原子は,N,P,As,O,S,SeおよびTeより選択されるヘテロ原子によって置換されていてもよい。)
【請求項26】
有機半導体化合物は,以下の式の化合物であることを特徴とする請求項1?22のいずれか1項に記載の方法。
【化3】


(式中,
Y^(1)およびY^(2)の一方は-CH=または=CH-を表し,他方は-X-を表し,
Y^(3)およびY^(4)の一方は-CH=または=CH-を表し,他方は-X-を表し,
Xは,-O-,-S-,-Se-または-NR’’’-であり,
R’は,H,F,Cl,Br,I,CN,直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ(該基は,1?20個のC原子を有し,フッ素化またはペルフルオロ化されていてもよい。),6?30個のC原子を有するフッ素化またはペルフルオロ化されていてもよいアリール,または,CO_(2)R””(式中,R””は,H,1?20個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキル,または,2?30個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアリールである。)であり,
R”は,複数出現する場合は互いに独立に,1?20個のC原子を有する環状,直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ,または,2?30個のC原子を有するアリールであり,それらは全てフッ素化またはペルフルオロ化されていてもよく,
R’’’は,H,または,1?10個のC原子を有する環状,直鎖状または分岐状のアルキルであり,
mは,0または1であり,
oは,0または1である。)
【請求項27】
R”は,複数出現する場合は互いに独立に,1?8個のC原子を有する環状,直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ,または,2?30個のC原子を有するアリールであり,それらは全てフッ素化またはペルフルオロ化されていてもよいことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
有機半導体化合物は,光を発し,加えて,38より大きい原子番号を有する少なくとも1個の原子を含有する有機リン光性化合物であることを特徴とする請求項1?22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
リン光性化合物は,式(1)?(4)の化合物であることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【化4】


(式中,
DCyは,それぞれの出現において同一または異なって,少なくとも1個のドナー原子,カルベンの形態の炭素またはリンを含有する環状基であり,これらを介して該環状基は金属に結合されており,これらは1個以上の置換基R^(18)を有していてもよく;基DCyおよびCCyは,共有結合を介して互いに連結されており;
CCyは,それぞれの出現において同一または異なって,炭素原子を含有する環状基であり,該炭素原子を介して該環状基は金属に結合されており,該炭素原子は順次に1個以上の置換基R^(18)を有していてもよく;
Aは,それぞれの出現において同一または異なって,モノアニオン性の二座キレート配位子であり;
R^(18)は,それぞれの出現において同一または異なって,F,Cl,Br,I,NO_(2),CN,1?20個の炭素原子を有する直鎖状,分岐状または環状のアルキルまたはアルコキシ基(ただし,1個以上の隣接していないCH_(2)基は,-O-,-S-,-NR^(19)-,-CONR^(19)-,-CO-O-,-C=O-,-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよく,ただし,1個以上の水素原子は,Fで置き換えられていてもよい。),または,4?14個の炭素原子を有し,1個以上の非芳香族R^(18)基で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基であり,複数の置換基R^(18)は,同一の環上または2個の異なる環上のいずれかにおいて,共に順次に単環または多環の脂肪族または芳香族の環系を形成していてもよく;および
R^(19)は,それぞれの出現において同一または異なって,1?20個の炭素原子を有する直鎖状,分岐状または環状のアルキルまたはアルコキシ基(ここで,1個以上の隣接していないCH_(2)基は,-O-,-S-,-CO-O-,-C=O-,-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられていてもよく,ただし,1個以上の水素原子は,Fで置き換えられていてもよい。),または,4?14個の炭素原子を有し,1個以上の非芳香族R^(18)基で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基である。)
【請求項30】
・ドナー原子は,窒素であり,
・二座キレート配位子は,ジケトナート配位子である
ことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
配合物は,ホスト材料を含むことを特徴とする請求項1?30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
配合物は,0.1?5重量%の有機半導体化合物を含むことを特徴とする請求項1?31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記不活性バインダーに対する前記半導体化合物の重量比は,5:1?1:1の範囲内であることを特徴とする請求項17?32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
配合物は,少なくとも1種類の湿潤剤を含むことを特徴とする請求項1?33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記湿潤剤は揮発性であり,前記半導体化合物とは化学的に反応できないことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
印刷装置のセルエッチングは,4cm^(3)/m^(2)?18cm^(3)/m^(2)の範囲内であることを特徴とする請求項1?35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
印刷速度は,100m/分以下であることを特徴とする請求項1?36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
配合物が塗工される表面は,25?130mNm^(-1)の範囲内の表面エネルギーを含むことを特徴とする請求項1?37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
溶媒の蒸発は,溶媒の沸点未満で達成されることを特徴とする請求項1?38のいずれか1項に記載の方法。」

第3 原査定の理由の概要
(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1-4,8-13,16,17,22,26-28,33,35,40
・引用文献1
引用文献1(31-33ページの表1参照。)には,
有機半導体化合物と有機溶媒とを含む配合物において,
有機溶媒として,25℃において0.5?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有し,かつ沸点が400℃未満である有機溶媒である,o-キシレン,テトラリン又はデカリンを適用することが記載されている。
また,引用文献1(14ページ11-16行)には,配合物をフレキソ印刷,グラビア印刷に使用することが記載されている。
請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると,前者は後者に比して「配合物は25℃において15mPa秒未満の粘度」である特定する点で相違する。
しかしながら,配合物の粘度は印刷方式に応じて適宜調節されるべきものであるところ,引用文献1に記載された発明は,有機溶媒として,25℃において0.5?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有するo-キシレン,テトラリン又はデカリンを用いるから,配合物をフレキソ印刷,グラビア印刷により塗布するにあたり,配合物の粘度を上記範囲とすることは当業者が容易になし得たことである。
また,引用文献1(26ページ18行-27ページ2行参照。)には,バインダ,湿潤剤等を配合することが記載されている。
また,引用文献1(19,21ページ参照。)には,請求項26-28に記載の有機半導体化合物が記載されている。
・請求項5-7,14,15,18-21,23,34,36-39
・引用文献1
引用文献1に記載された発明において,配合物の特性,配合物に含有する各種材料等は,当業者が適宜選択できたものである。
・請求項24,25
・引用文献1-3
引用文献2([0023]参照。),引用文献3(請求項2,6参照。)には,請求項24,25に記載の有機半導体化合物が記載されており,引用文献1に記載された発明において,これら化合物を適用することは,当業者が容易になし得たことである。
・請求項29-32
・引用文献1,4
引用文献4(請求項11参照。)には,請求項29-31に記載の発光材料が記載されており,有機半導体材料と当該発光材料を混合させることは,当業者が容易になし得たことである。
<引用文献等一覧>
1.国際公開第2009/109273号
2.特開2007-258724号公報
3.特表2009-536981号公報
4.特表2006-523740号公報

第4 当審拒絶理由の概要
(当審注。当審補正により削除された請求項に係る部分は省略した。)
1 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1-40について
本願の発明の詳細な説明(段落0216-0329)には,フレキソ印刷においては,粘度が最低で1.6cPの配合物を用い,グラビア印刷においては,粘度が最低で2.23cPの配合物を用いて,OFET装置を調製することしか記載されていない。
したがって,請求項1及び2に記載された方法のうち,1.6mPa秒未満の粘度を有しフレキソ印刷による方法,2.23mPa秒未満の粘度を有しグラビア印刷による方法,又は,0.5?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有し,ドクターブレードコーティング,ローラー印刷,リバースローラー印刷,若しくはウェブ印刷による方法は,いずれも発明の詳細な説明に記載されていない。
なお,本願の発明の詳細な説明(段落0020)には,配合物は0.5?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有することが好ましい旨記載されているが,この範囲がいかなる印刷方法において好ましいのか不明であり,またこの範囲の全域において有機電子装置を調製することができるのかどうかも不明である。
請求項1及び2を引用して記載した他の請求項についても同様である。
2 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1-40について
請求項1及び2に記載された「ローラー印刷」及び「リバースローラ印刷」は,確立された用語ではなく,その内容が不明である。
請求項1及び2を引用して記載した他の請求項についても同様である。

第5 引用文献
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1
引用文献1には,図面とともに,次の記載がある。(訳は,当該国際出願に対応する特表2011-515835号公報による。)(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「Field of the Invention

The invention relates to a process for preparing a formulation comprising an organic semiconductor (OSC) and one or more organic solvents, to novel formulations obtained by this process, to their use as coating or printing inks for the preparation of organic electronic (OE) devices, especially organic field effect transistors (OFET) and organic photovoltaic (OPV) cells, to a process for preparing OE devices using the novel formulations, and to OE devices prepared from such a process or from the novel formulations.」(1頁3-12行)
(訳:技術分野
本発明は,有機半導体(OSC:organic semiconductor)および1種類以上の有機溶媒を含む配合物の調製方法と,この方法によって得られる新規な配合物と,有機電子(OE:organic electronic)デバイス,特に,有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)および有機光起電力(OPV:organic photovoltaic)セルを製造するためのコーティングまたは印刷インキとしての該配合物の使用と,該新規な配合物を使用するOEデバイスの製造方法と,そのような方法または新規な配合物から製造されるOEデバイスとに関する。)
イ 「Background and Prior Art

When preparing OE devices, like OFETs or OPV cells, or organic light- emitting devices, like organic light-emitting diodes (OLED), in particular flexible devices, usually coating or printing techniques are used to apply the layer of the OSC material. Printing formulations that have hitherto been used in prior art for the preparation of OE devices are usually solution based, comprise aromatic or aliphatic organic solvents and tend to have low viscosities. While this approach serves well for spin coating and ink jet printing (IJP) fabrication methods, recently there has been a growing interest in using traditional printing technologies, like flexographic or gravure printing, to fabricate devices. This requires different types of formulations, in particular with respect to the choice of the solvents and optional additives like viscosity enhancers.

Many printing processes use formulations having a medium viscosity (typically from 10 to 1000 cP), including inks for flexographic and gravure printing, but also for hot jetting IJP, electrostatic IJP, soft lithography and variants thereof, or micro-stamping. However, for printing an OSC material efficiently there are several limitations.
(中略)
A low viscosity (<10 cP) is often required e.g for spin coating and standard IJP techniques, whereas a high viscosity (>1000 cP) is usually required for example for screen printing, offset lithographic printing etc.」(1頁14行-2頁24行)
(訳:背景技術
OFETまたはOPVセルなどのOEデバイス,または,有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)などの有機発光デバイス,特に,フレキシブルデバイスを製造する際,OSC材料の層を塗工するために,通常,コーティングまたは印刷技術を使用する。OEデバイスの製造のために先行技術においてこれまで使用されてきた印刷配合物は,通常,溶液系であり,芳香族または脂肪族有機溶媒を含み,低粘度を有する傾向がある。この手法はスピンコートおよびインクジェット印刷(IJP:ink jet printing)製造方法に対しては良好に機能するが,最近,デバイスを製造するために,フレキソ印刷またはグラビア印刷などの従来の印刷技術を使用することに対する関心が高まっている。このため,特に,溶媒および粘度上昇剤などの任意成分である添加剤の選択に関して,異なるタイプの配合物が必要とされている。
多くの印刷方法が,フレキソ印刷およびグラビア印刷用のインクのみならず,ホットジェットIJP,静電IJP,ソフトリソグラフィーおよびそれらの変法,またはマイクロスタンプ用のインクを含む,中程度の粘度(典型的には,10?1000cP)を有する配合物を使用する。しかしながら,OSC材料を効率的に印刷するためには,幾つかの制限がある。
(中略)
例えば,スピンコートおよび標準的なIJP技術のためには,多くの場合,低粘度(10cP未満)が必要とされ,一方,例えば,スクリーン印刷,オフセットリソグラフ印刷などのためには,通常,高粘度(1000cPより高い)が必要とされる。)
ウ 「Summary of the Invention

The invention relates to a method of preparing an OSC formulation, comprising the step of dissolving an organic semiconducting (OSC) compound in a solvent or in a solvent blend comprising two or more solvents, wherein the solvents are selected such that they fulfil the following conditions: the partition ratio log P of the solvent, or the weighted average of the partition ratio (log P)_(w) of the solvent blend, without any additives, is > 1.5, the viscosity of the solvent or the solvent blend, without any additives, is > 10 cP at 25℃, and the boiling temperature of the solvent, or in case of a solvent blend the boiling temperature of the highest boiling solvent of the solvent blend, without any additives, is < 400℃at a pressure of 1 Torr.
(中略)
The invention further relates to a process of preparing an organic electronic (OE) device, comprising the steps of
a) depositing a formulation as described above and below onto a substrate,
b) removing the solvent(s), for example by evaporation.」(6頁10-7頁14行)
(訳:発明の概要
本発明は,OSC配合物を調製する方法であって,有機半導体(OSC:organic semiconducting)化合物を溶媒,または2種類以上の溶媒を含む溶媒混合物に溶解する工程を含み,該溶媒が以下の条件:添加剤を全く含まない該溶媒の分配率logP,または,該溶媒混合物の分配率の重量平均(logP)_(w)が1.5より大きいこと,および添加剤を全く含まない該溶媒または該溶媒混合物の粘度が25℃において10cPより高いこと,および添加剤を全く含まない該溶媒の沸点,または,溶媒混合物の場合は該溶媒混合物中で最も沸点が高い溶媒の沸点が1Torrの圧力において400℃より低いこと,を満たすように溶媒を選択することを特徴とする方法に関する。
(中略)
本発明は,更に,有機電子(OE:organic electronic)デバイスを製造する方法であって,
a)基板上に,上および下で記載される通りの配合物を堆積する工程と,
b)例えば,蒸発によって,溶媒を除去する工程と
を含む方法に関する。)
エ 「The formulation or ink according to the present invention can be used to apply functional materials like OSC compounds to a substrate or onto a device by coating or printing methods like flexographic printing, gravure printing, ink jet printing, micro-contact printing, soft lithography, stamping etc. Most preferably the inks are used in flexographic, gravure or ink jet printing.」(14頁11-16行)
(訳:本発明による配合物またはインクを使用して,フレキソ印刷,グラビア印刷,インクジェット印刷,マイクロ密着印刷,ソフトリソグラフィー,スタンプなどのコーティングまたは印刷方法によって,基板またはデバイスに,OSC化合物などの機能性材料を塗工することができる。最も好ましくは,フレキソ印刷,グラビア印刷またはインクジェット印刷において本発明のインクを使用する。)
オ 「Example 1

Formulations of the organic semiconducting compound A are prepared in the solvents and solvent blends according to the present invention as shown in Table 1. The solvents and solvent blends in Table 1 have a calculated log P or (log P)_(w) of < 1.5 and do all readily dissolve compound A in a concentration of > 0.1 wt.%.
(中略)
Table 1


(中略)

(中略)

(中略)

^(1)) at 25°C, unless stated otherwise
^(2)) for single sovents
^(3)) for solvent blends」(30頁31行-33頁4行)
(訳: <例1>
有機半導体化合物Aの配合物を,表1に示される通りの本発明による溶媒および溶媒混合物中で調製する。表1の溶媒および溶媒混合物は,logPまたは(logP)_(w)の計算値が1.5未満であり,全て0.1重量%を超える濃度で化合物Aを容易に溶解する。
(中略)
表1

(中略)

(中略)

(中略)

^(1)) 他に明言しない限り25℃において
^(2)) 単一溶媒の場合
^(3)) ブレンドの場合)
(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機電子デバイスを製造する方法であって,
a)基板上に,有機半導体化合物を溶媒に溶解して調整した配合物で溶媒の粘度が25℃において10cPより高いこと,及び溶媒の沸点が1Torrの圧力において400℃より低いこと,を少なくとも満たす配合物を堆積する工程と,
b)例えば,蒸発によって,溶媒を除去する工程と
を含む方法であって,
フレキソ印刷,グラビア印刷によって,塗工することができ,
溶媒はo-キシレン,テトラリン又はデカリンを用いること。」
2 引用文献2の記載
引用文献2には,図面とともに,次の記載がある。
「【0015】
有機半導性配合体に関する本発明の好ましい態様は,
- 配合体は均質な溶液で,つまり分相していない,例えば分散,エマルジョン,ミニエマルジョン,マイクロエマルジョンまたはミセル溶液でない。
- 界面活性剤が単量または小分子化合物である。
- 界面活性剤が電子受容基を含まない。
- 界面活性剤が,クロロシラン,シラザンなど活性基質との共有結合または安定吸着(stable adsorption)成果物を形成できる頭部基を含み,およびさらにアルキル,フッ化アルキルまたはシロキサン基から選択した尾基を含む疎水性界面活性剤から選択される。
- 界面活性剤がシラン類またはシラザン類から選択される。
- 界面活性剤の濃度が10^(-5)から5%までである。
- 配合体がポリマー類から選択される1つまたは2つ以上の有機半導性化合物を含む。
- 半導性化合物がp型有機半導体である。
【0016】
- 半導性化合物が,任意に置換されたチオフェン,任意に置換されたセレノフェン,3-アルキルチオフェン,任意に置換された[3,2-b]-チエノチオフェン,任意に置換された[2,3-b]-チエノチオフェンおよび任意に置換されたジチエノチオフェンから選択した1つまたは2つ以上のユニットを含むポリマーまたはコポリマーから選択される。
- 有機半導性化合物の濃度は,0.1から10%である。
- 有機溶媒が,好ましくは6Mpa^(1/2)より小さいハンセン(Hansen)溶解度への極性寄与を有する[定義および測定については,Charles M. Hansenによる"Hansen Solubility parameters: A User's Handbook"(CRC Press 1999; ISBN 0 849 31525 5)を参照のこと。]非極性溶媒から選択される。
- 有機溶媒が,非アルコール溶媒から選択される。
- 有機溶媒が脂肪族および芳香族炭化水素類,ハロゲン化脂肪族および芳香族炭化水素類から選択される。
ことを特徴とする有機半導性配合体に関する。
(中略)
【0019】
限定なしで,ポリアルキルチオフェン類,ポリチフェン類,ポリフルオレン類,ポリフェニルアミン類および該共重合体類,オリゴマー類およびペンタセンまたは他のポリアセン類などの小分子類,または他の縮合環化合物類を含む全ての既知の半導性材料は,原則として本発明による配合体での使用に適する。
【0020】
特に適合し好ましい材料は電荷運搬特性を有する,特に好ましくは共役πシステムを有するポリマー類である。例えばポリフェニレンビニレン(PPV),ポリアリレンビニレン(PAV),ポリパラフェニレン(PPP),ポリピリジン(PPy),ポリピリジンビニレン(PPyV),ポリチオフェン(PT),ポリアルキルチオフェン(PAT),ポリフルオレン(PF),ポリスピロビフルオレン(PSF),ポリピロール,ポリビニルカルバゾール,ポリトリアリールアミン,ポリアセチレン,硫化ポリフェニレン,ポリチエニレンビニレン,ポリイソチアナフテン,ポリアズレン,ポリフラン,ポリアニリン,ポリセレノフェン,ポリインデノフルオレン,,それらの置換または非置換の全て,または上記の混合物,ブレンド,統計上のまたは定義された共重合体,またはブロック共重合体である。
(中略)
【0022】
特に好ましいのは,任意に置換されたチオフェン,任意に置換されたセレノフェン,3-アルキルチオフェン,任意に置換された[3,2-b]-チエノ-チオフェン,任意に置換された[2,3-b]-チエノチオフェンおよび任意に置換されたジチエノチオフェンから選択された1つまたは2つ以上のユニットを含むポリマーおよび共重合体であり,例えば,WO 2005/014691 A2,WO 2005/111045 A1,EP 1 279 689 A2,EP 1 279 691 A1,EP 1 284 276 A1,EP 1 398 336 A1,EP 1 411 563 A2,EP 1 439 590 A2,EP 1 477 504 A1およびEP 1 510 535 A1で開示されている。非常に好ましくは,以下の化学式のポリマーである。」
3 引用文献3の記載
引用文献3には,図面とともに,次の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は,インデノフルオレン単位若しくはその誘導体を含むポリマー,それらを含む有機半導体(OSC)材料,電子若しくは電気光学素子でのそれらの使用及び前記ポリマー若しくは材料を含む素子に関する。」
(2)「【0102】
インクジェト印刷による本発明によるポリマーを堆積するための好ましい溶媒は,1以上の置換基中の炭素原子の合計数が少なくとも3個である1以上の置換基により置換されたベンゼン環を有するベンゼン誘導体を含む。例えば,ベンゼン誘導体は,1個のプロピル基若しくは3個のメチル基で置換され得るが,何れの場合でも,合計で少なくとも3個の炭素原子が存在する。このような溶媒は,インクジェット流体がポリマーを有する溶媒を含むように形成されることを可能とし,噴霧中のジェットの閉塞と成分の分離を減少し又は防止する。溶媒は,次の例のリストより選択されるものを含み得る。ドデシルベンゼン,1-メチル-4-tert-ブチルベンゼン,テルピネオール,リモネン,イソデュレン,テルピノレン,シメネン,ジエチルベンゼン。溶媒は,2以上の溶媒の組み合わせである溶媒混合物であってもよく,各溶媒は,好ましくは,>100℃,より好ましくは,>140℃の沸点を有する。このような溶媒は,堆積された層中の膜の形成をも向上し,層中の欠陥を減少する。
【0103】
(溶媒,結合剤及び半導体化合物の混合物である)インクジェット流体は,好ましくは,20℃で1?100mPa・sの,より好ましくは,1?50mPa・sの,最も好ましくは,1?30mPa・sの粘度を有する。」
4 引用文献4の記載
引用文献4には,図面とともに,次の記載がある。
「【0080】
実施例
1.マトリックス材料Aの合成:
以下の合成は,別段に述べた場合を除き,保護ガス雰囲気下,乾燥溶媒中で行った。反応物[シアン化銅(I),塩化アセチル,N-メチルピロリジノン(NMP)]をALDRICHから購入した。2-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン,2,7-ジブロモ-9,9’-スピロビフルオレン(J. Peiら,J. Org. Chem. 2002, 67(14), 4924-4936)および9,9’-スピロビフルオレン-2,2’-ジカルボニル塩化物(V.A. Monteroら,Tetrahedron Lett. 1991, 32(39), 5309-5312)を文献の方法で調製した。」

第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「有機電子デバイスを製造する方法」は,本願発明1の「有機電子(OE:organic electronic)装置を調製する方法」に相当する。
イ 引用発明の「a)基板上に,有機半導体化合物を溶媒に溶解して調整した配合物で溶媒の粘度が25℃において10cPより高いこと,及び溶媒の沸点が1Torrの圧力において400℃より低いこと,を少なくとも満たす配合物を堆積する工程」と,本願発明1の「a)フィルムまたは層を形成するために,1種類以上の有機半導体化合物(OSC:organic semiconducting compound)と,1種類以上の有機溶媒とを含む配合物であって,前記配合物は25℃において2.23?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有し,前記有機溶媒の沸点は最高で400℃であることを特徴とする配合物を基板上に堆積する工程」とは,引用発明において「フレキソ印刷,グラビア印刷によって,塗工する」から層が形成されるもので,「溶媒はo-キシレン,テトラリン又はデカリンを用いる」から有機溶媒を用いるものであることを考慮すると,両者は「a)フィルムまたは層を形成するために,1種類以上の有機半導体化合物(OSC:organic semiconducting compound)と,1種類以上の有機溶媒とを含む配合物であって,前記有機溶媒の沸点は最高で400℃であることを特徴とする配合物を基板上に堆積する工程」という点で共通するが,下記相違点1で相違する。
ウ 引用発明の「b)例えば,蒸発によって,溶媒を除去する工程」は,本願発明1の「b)前記有機溶媒(1種類または多種類)を除去する工程」に相当する。
エ 引用発明の「フレキソ印刷,グラビア印刷によって,塗工すること」は,本願発明1の「グラビア印刷またはフレキソ印刷により,前記配合物が塗工されること」に相当する。
オ すると,本願発明1と引用発明とは,下記カの点で一致するが,下記キの点で相違する。
カ 一致点
「有機電子(OE:organic electronic)装置を調製する方法であって,
a)フィルムまたは層を形成するために,1種類以上の有機半導体化合物(OSC:organic semiconducting compound)と,1種類以上の有機溶媒とを含む配合物であって,前記有機溶媒の沸点は最高で400℃であることを特徴とする配合物を基板上に堆積する工程と,
b)前記有機溶媒(1種類または多種類)を除去する工程と
を含む方法であって,
グラビア印刷またはフレキソ印刷により,前記配合物が塗工されることを特徴とする方法。」
キ 相違点
本願発明1においては「前記配合物は25℃において2.23?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有」するのに対し,引用発明においては配合物の粘度が規定されておらず「溶媒の粘度が25℃において10cPより高い」ものである点。(「相違点1」という。)
(2)相違点についての判断
相違点1に係る構成について,引用文献2ないし4には記載も示唆もない。なお,引用文献3には「インクジェット流体」の粘度について記載されているが,「グラビア印刷またはフレキソ印刷」を前提とする引用発明に採用する動機付けがない。
引用発明は,スピンコートやインクジェット印刷には低粘度が必要とされ,一方スクリーン印刷,オフセットリソグラフ印刷などのためには,高粘度が必要とされる(前記第5の1(1)イ)という認識の下で,フレキソ印刷やグラビア印刷に好適なインクの溶媒の粘度として「25℃において10cPより高い」とするものであるから,この教示に反してフレキソ印刷やグラビア印刷のインクの溶媒の粘度を変更し,さらにインクすなわち配合物自体の粘度を2.23?9.5mPa秒の範囲内とすることは,当業者にとって困難である。
そして,本願発明1は,相違点1に係る構成を有することにより,「配合物は、低コストで容易な印刷プロセスを可能とする」(本願明細書段落【0006】)という有利な効果を奏するものである。
(3)まとめ
したがって,本願発明1は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2について
(1)本願発明2と引用発明との対比
前記1(1)アないしエと同様であるから,本願発明2と引用発明は下記アの点で一致するが,下記イの点で相違する。
ア 一致点
「有機電子(OE:organic electronic)装置を調製する方法であって,
a)フィルムまたは層を形成するために,1種類以上の有機半導体化合物(OSC:organic semiconducting compound)と,1種類以上の有機溶媒とを含む配合物であって,前記有機溶媒の沸点は最高で400℃であることを特徴とする配合物を基板上に堆積する工程と,
b)前記有機溶媒(1種類または多種類)を除去する工程と
を含む方法であって,
グラビア印刷またはフレキソ印刷により,前記配合物が塗工されることを特徴とする方法。」
イ 相違点
(ア)本願発明2においては「前記配合物は25℃において2.23?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有」するのに対し,引用発明においては配合物の粘度が規定されておらず,「溶媒の粘度が25℃において10cPより高い」ものである点。(「相違点2」という。)
(イ)本願発明2においては「前記有機溶媒はシクロアルキル基を有する芳香族炭化水素化合物および芳香族アルコキシ化合物より選択される」のに対し,引用発明においてはそうではない点。(「相違点3」という。)
(2)相違点についての判断
相違点2に係る構成について,引用文献2ないし4には記載も示唆もない。なお,引用文献3には「インクジェット流体」の粘度について記載されているが,「グラビア印刷またはフレキソ印刷」を前提とする引用発明に採用する動機付けがない。
引用発明は,スピンコートやインクジェット印刷には低粘度が必要とされ,一方スクリーン印刷,オフセットリソグラフ印刷などのためには,高粘度が必要とされる(前記第5の1(1)イ)という認識の下で,フレキソ印刷やグラビア印刷に好適なインクの溶媒の粘度として「25℃において10cPより高い」とするものであるから,この教示に反してフレキソ印刷やグラビア印刷のインクの溶媒の粘度を変更し,さらにインクすなわち配合物自体の粘度を2.23?9.5mPa秒の範囲内とすることは,当業者にとって困難である。
そして,本願発明2は,相違点2に係る構成を有することにより,「配合物は、低コストで容易な印刷プロセスを可能とする」(本願明細書段落【0006】)という有利な効果を奏するものである。
(3)まとめ
したがって,本願発明2は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 本願発明3ないし39について
本願発明3ないし39は,本願発明1又は2を引用するものであり,本願発明1又は2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1又は2と同様の理由により,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
4 特許請求の範囲の記載要件について
当審補正によって補正後の特許請求の範囲の請求項1及び2は,いずれも「2.23?9.5mPa秒の範囲内の粘度を有し」及び「グラビア印刷またはフレキソ印刷により」という発明特定事項を含むこととなった。
よって,請求項1及び2,及びこれを引用して記載した請求項3ないし39の記載は明確になり,その発明は発明の詳細な説明に記載されたものとなった。

第7 原査定の理由についての判断
前記第6のとおり,本願発明1ないし39は,引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-29 
出願番号 特願2013-511565(P2013-511565)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 大嶋 洋一
深沢 正志
発明の名称 有機電子装置を調製するための配合物および方法  
代理人 小野 暁子  
代理人 伊藤 克博  
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