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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1336543
審判番号 不服2016-16327  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-01 
確定日 2018-02-13 
事件の表示 特願2013-534965「相互接続された空隙を有する低屈折率拡散体要素」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日国際公開,WO2012/054319,平成26年 1月 9日国内公表,特表2014-500519,請求項の数(3)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 手続の経緯
特願2013-534965号(優先権主張 2010年10月20日 米国)は,2011年(平成23年)10月14日を国際出願日とする出願(以下,「本件出願」という。)であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成26年10月14日差出:手続補正書
平成27年 7月 2日付け:拒絶理由通知書
平成27年10月 7日差出:意見書,手続補正書
平成28年 3月 7日付け:拒絶理由通知書
平成28年 6月14日差出:意見書
平成28年 7月 1日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。))
平成28年11月 1日差出:審判請求書,手続補正書
平成29年 8月22日付け:拒絶理由通知書(以下,この拒絶理由通知書の拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
平成29年11月16日差出:意見書,誤訳訂正書(以下,この誤訳訂正書による補正を「本件補正」という。)

第2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は,平成28年11月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項3に係る発明は,以下の引用例1に記載された発明,並びに,引用例2?4に記載された周知の技術に基づいて,その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献等一覧
1.特開2001-278637号公報
2.特開2007-119310号公報
3.特開2007-283293号公報
4.特表2009-526727号公報

第3 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項3に係る発明は,平成29年11月16日付け誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明1」といい,同様に請求項2?請求項3に係る発明をそれぞれ「本願発明2」?「本願発明3」という。)。なお,下線は当合議体が付したものであり,補正箇所を示す。
「 光学拡散体層であって,
ポリマー結合剤と,
前記ポリマー結合剤中に分散された複数の金属酸化物粒子と,
複数の相互接続された空隙と,
前記ポリマー結合剤中に分散された複数のヘーズ生成粒子と,を含み,
前記複数の金属酸化物粒子が,表面処理されたヒュームドシリカを含み,
前記光学拡散体層が1.3以下の有効屈折率及び少なくとも40%の光学ヘーズを有する,光学拡散体層。」

なお,本願発明2?本願発明3の概要は以下のとおりである。
本願発明2は,光学要素上に,本願発明1の光学拡散体層を配設した光学物品である。
本願発明3は,光学要素上に,第1の低屈折率層及び第2の低屈折率層をこの順に配設した光学物品であって,前記第1の低屈折率層が,本願発明1の発明特定事項を,その一部を減縮した上で,全て具備している,光学物品である。

第4 引用例
1 引用例1
(1)引用例1の記載
本件出願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布され,当審拒絶理由において引用例1として引用された刊行物である特開2001-278637号公報(以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリカ微粒子およびバインダーからなる低反射膜をガラス基体上に形成した低反射ガラス物品において,前記低反射膜は前記シリカ微粒子と前記バインダーを重量比で60:40?95:5の割合でそれぞれ含有し,そして前記低反射膜は,(1)平均粒径が40?1000nmの非凝集シリカ微粒子および平均一次粒径が10?100nmの鎖状凝集シリカ微粒子の少なくとも一方からなる原料微粒子,(2)加水分解可能な金属化合物,(3)水,および(4)溶媒を混合し,そして前記加水分解可能な金属化合物を前記原料微粒子の存在下で加水分解して調製されたコーティング液を前記ガラス基体上に被覆し,加熱処理することにより形成されたものであることを特徴とする低反射ガラス物品。
【請求項2】 前記加水分解可能な金属化合物はケイ素アルコキシド,アルミニウムアルコキシド,チタンアルコキシド,ジルコニウムアルコキシドおよびタンタルアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属アルコキシドであり,前記バインダーは前記金属化合物の金属の酸化物である請求項1に記載の低反射ガラス物品。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,車両用のガラス窓,建築用窓,ショーウインドウ,ディスプレイ,太陽電池用ガラス基板,太陽熱温水器用ガラス板,光学ガラス部品などの低反射ガラス物品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガラス基体の可視光反射率の低減には,ガラス基体上に膜を付与することによる低反射化が広く知られている。
・・・(略)・・・
【0003】一方,ガラス上に1層の膜を設けて,反射を低減する方法としては,例えば特開昭63-193101号公報には,ガラス体の表面上に,SiO_(2)の微粒子を添加したSi(OR)_(4)(Rはアルキル基)のアルコール溶液を塗布後乾燥し,ガラス体表面上にSiO_(2)微粒子及びこれを被覆するSiO_(2)薄膜を付着させてなる反射防止膜が開示されている。
【0004】特開昭62-17044号公報には,5?100nmの粒径を有するコロイダルシリカにテトラエトキシシランのような金属アルコレートを,コロイダルシリカ1モルに対し金属アルコレート1モルの割合で混合し,アルコールなどの有機溶媒に溶解した混合液を加水分解し部分縮合させたゾル溶液を光学素子表面にコーティングし,熱処理した反射防止膜が開示されている。
【0005】また,特開平11-292568号公報には,鎖状のシリカ微粒子およびそれに対し5?30重量%のシリカを含有する,110?250nmの厚みの低反射膜を被覆した可視光低反射ガラスが開示されている。
【0006】これらの1層の低屈折率層による低反射膜は,Optical Engineering Vol.21No.6,(1982)Page 1039?に記載されているように,反射率の入射角依存性が小さいこと,反射率の波長依存性が小さいことにより低反射の波長帯域が広いことが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】膜を積層する2層膜以上の構成からなる被覆膜をガラス基体に施す方法は,確実に可視光を低反射化できる方法であるが,干渉条件を満たすように膜厚を厳密に規定する必要があり,またコーティング回数が2回以上必要となることから,製造コストが高く好ましくない。また,前記二層膜以上の膜は反射率の入射角依存性が強くなるので,設計した入射角度以外では反射率は必ずしも低くない。この点では屈折率の低い1層による低反射膜をガラス基体に施す方が上述のように低反射の波長帯域が広い。
【0008】前記特開昭62-17044号公報および前記特開昭63-193101号公報に開示されている反射防止膜では,得られる反射防止性能は十分ではない。また,前記特開平11-292568号公報に開示されている可視光低反射ガラスは,低い反射率を実現した単層の低反射膜であるが,往復摩耗試験のような表面を擦るような評価では膜強度が十分であるが,テーバー摩耗試験のようなさらに厳しい耐摩耗性試験では,膜強度が不十分という問題点があった。また,油汚れが付着した場合には,乾布及び湿布で拭いて汚れが取れず,反射率が上昇する問題があった。
【0009】本発明は,単層で,低い反射率を有し,耐摩耗試験などを満足する強い膜強度を有し,しかも汚れ除去性に優れた,可視光または赤外光の低反射膜を提供することを目的とする。」

ウ 「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は,シリカ微粒子およびバインダーからなる低反射膜をガラス基体上に形成した低反射ガラス物品において,前記低反射膜は前記シリカ微粒子と前記バインダーを重量比で60:40?95:5の割合でそれぞれ含有し,そして前記低反射膜は,(1)平均粒径が40?1000nmの非凝集シリカ微粒子および平均一次粒径が10?100nmの鎖状凝集シリカ微粒子の少なくとも一方からなる原料微粒子,(2)加水分解可能な金属化合物,(3)水,および(4)溶媒を混合し,そして前記加水分解可能な金属化合物を前記原料微粒子の存在下で加水分解して調製されたコーティング液を前記ガラス基体上に被覆し,加熱処理することにより形成されたものであることを特徴とする低反射ガラス物品である。
【0011】本発明において用いられるシリカ微粒子はいかなる製法で作られたものでも良く,ゾルゲル法によりシリコンアルコキシドをアンモニア等の塩基性触媒下で反応させて合成されたシリカ微粒子や,珪酸ソーダなどを原料としたコロイダルシリカ,気相で合成されるヒュームドシリカなどが例示される。シリカ微粒子の粒径により,得られる低反射膜の構造は大きく変化する。シリカ微粒子の粒径が小さ過ぎると,低反射膜内の粒子間に生成する空孔の大きさが小さくなって毛管力が増し,付着した汚れが取れにくくなったり,空気中の水分や有機物が徐々に前記空孔に入り込むため反射率が経時的に上昇する。またシリカ微粒子同士およびシリカ微粒子とガラス基体との接着に用いられるバインダーの量は後述のようにその上限が定められいるので,シリカ微粒子の粒径が小さ過ぎると,微粒子の表面積が相対的に大きくなり,その表面と反応するバインダー量が不足することになり,結果として膜の密着力が弱くなる。また,シリカ微粒子径(一次粒径)が小さ過ぎると,形成される膜表面の凹凸粗さの値または膜内部空隙率(シリカ微粒子の間の空間でバインダーが埋められていない空間の,膜体積に対する割合)は小さくなり見かけの屈折率は上昇する。従って,(1)低反射膜の汚れが取れやすくするために,(2)膜強度を高めるために,そして(3)見かけの屈折率を,低反射膜が被覆されるガラス基体の屈折率(約1.5)の平方根値(約1.22)に近くなるように,下げるために,シリカ微粒子(屈折率約1.45)の一次粒径の平均値が40nm以上であることが望ましく,50nm以上であることがより好ましい。またシリカ微粒子の粒径が大きすぎると,光の散乱が激しくなり,またガラス基体との密着性も弱くなる。透視性が要求される用途,すなわち,ヘイズ率が低いこと,例えば1%以下のヘイズ率,が望まれる用途,例えば車両,建築の窓では,シリカ微粒子の平均粒径は500nm以下が好ましく,300nm以下がより好ましい。最も好ましいシリカ微粒子の平均粒径は,50?200nmであり,さらには70?160nmが最も良い。
【0012】一方,透視性を必要とせず,しかもそれほど強い膜強度を必要としない用途,例えば,太陽電池用のガラス基板では,反射率を下げることにより透過率を上げることが重要である。また,前記ガラス基板に近接して設けるシリコン膜内での太陽光の吸収効率を上げるためには,シリコン膜に入射した太陽光のシリコン膜中での光路長を長くすることが有利となる。低反射膜を通過する光は直進透過光と拡散透過光に分けることができ,直進透過光の量に対する拡散透過光の量が増大するとヘイズ率が増大する。全光線透過率が同一(従って反射率が同一)である低反射膜で比較した場合,上記の光路長を長くするには,低反射膜を通過した後の光のうち,拡散透過光の量を大きくなるような低反射膜,すなわちヘイズ率が大きい低反射膜例えば10?80%のヘイズ率を有する低反射膜が好ましい。この大きなヘイズ率の低反射膜には,100nm?1000nmの平均粒径を有するシリカ微粒子を使用することが好ましい。
・・・(略)・・・
【0017】低反射膜を形成するためのコーティング液の調製は,シリカ微粒子の存在下で加水分解可能な金属化合物の加水分解を行うことによりなされ,それにより得られる膜の機械的強度が格段に向上する。シリカ微粒子の存在下で前記金属化合物を加水分解する本発明の場合には,加水分解により生じた生成物と微粒子表面に存在するシラノールとの縮合反応が加水分解とほぼ同時に起こり,従って(1)微粒子の表面の反応性がバインダー成分との縮合反応により向上し,(2)さらにその縮合反応が進むことによりシリカ微粒子表面がバインダーで被覆されていくので,バインダーがシリカ微粒子とガラス基体との接着性向上に有効に利用される。他方,微粒子が存在しない状態で前記金属化合物の加水分解を行うと,加水分解生成物同士での縮合反応によりバインダー成分は高分子化する。この高分子化したバインダー成分とシリカ微粒子を混合してコーティング液の調製を行った場合には,(1)バインダー成分とシリカ微粒子間の縮合反応はほとんど生じないので,微粒子表面の反応性は乏しく,そして(2)シリカ微粒子表面がほとんどバインダーで被覆されていない。従って,ガラスとシリカ微粒子との接着性を前者と同様に高めようとすると,より多くのバインダー成分を必要とする。
・・・(略)・・・
【0019】図2(膜B)では,膜表面に隣り合って並んだ数個のシリカ微粒子の表面を覆った,かなりの厚みの膜状付着物の存在が確認できる。この膜状付着物はテトラエトキシシランから由来するバインダー成分と思われるので,図2(膜B)では,微粒子同士および微粒子と基体との接着のために有効に働くべきバイダー量が,上記の膜状付着物のために,減少していると思われる。もし接着のために有効に働くべきバイダー量を増加させるためにテトラエトキシシラン配合量を増加させると,微粒子同士の間の空隙および微粒子と基体表面との間の空隙が減少して膜の見かけ屈折率が大きくなり,反射率を低くすることが困難となる。
【0020】図1(膜A)ではこのような膜状付着物はほとんど見えないかまたは存在せず,バインダー成分のすべてが各シリカ微粒子の表面を均一に覆っていて,バインダーが微粒子同士および微粒子と基体との接着のために有効に働いていると推測される。膜Aの調製方法を行えば,膜強度を維持したままバインダー成分の含有量を減らすことが可能となり,膜の見かけ屈折率を小さくすることができ,結果として膜強度の維持と膜の反射率の低減を両立させ得ることになる。膜Aの方法によれば,予め加水分解したバインダーにシリカ微粒子を混合したコーティング液を使用した膜Bの場合に比べて,バインダー量を半分に減らしても同等の膜強度が得られる。ここで,膜強度の判定基準はJIS-R3212,およびJIS-R3221で規定されるテーバー摩耗試験で,CS-10Fの回転ホイルを使用し,500g荷重で1000回転(JIS-R3212)または500g荷重で200回転(JIS-R3221)での膜の残存の有無およびテーバー摩耗試験前後のヘイズ率を測定した結果から判定したものである。
【0021】本発明におけるバインダーは金属酸化物からなり,ケイ素酸化物,アルミニウム酸化物,チタン酸化物,ジルコニウム酸化物およびタンタル酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属酸化物が好ましく用いられる。低反射膜を形成するシリカ微粒子とバインダーの重量比は60:40?95:5の範囲である。バインダーの量がこの範囲よりも多いと,微粒子がバインダーに埋まり,微粒子による凹凸粗さ値または膜内の空隙率が小さくなるので反射防止効果が小さくなる。また,バインダー量がこれよりも少ないと,微粒子とガラス基体間及び微粒子間の密着力が低下し,膜の機械的強度が弱くなる。反射率と膜強度とのバランスを考えれば,シリカ微粒子とバインダーの重量比は,より好ましくは65:35?85:15である。バインダーはシリカ微粒子の全表面に被覆されていることが好ましく,その被覆厚みは1?100nmでかつ前記シリカ微粒子の平均粒径の2?9%であることが好ましい。
【0022】バインダー原料となる加水分解可能な金属化合物としては,Si,Al,Ti,Zr,Taの金属アルコキシドが膜の強度や化学的安定性などから好適である。これらの金属アルコキシドの中で,シリコンテトラアルコキシド,アルミニウムトリアルコキシド,チタンテトラアルコキシドおよびジルコニウムテトラアルコキシド,特にメトキシド,エトキシド,プロポキシドおよびブトキシドが好ましく用いられる。特にバインダー成分の含有量を多くした膜では,バインダー成分の屈折率が反射率に影響を与えることになるので,屈折率の小さいシリコンアルコキシド,特にシリコンテトラアルコキシドまたはそのオリゴマーが最も好適である。また,バインダー成分はこれら金属アルコキシドの中から複数混合したものを使用しても構わない。金属アルコキシド以外でも,加水分解によりM(OH)_(n)の反応生成物が得られれば限定されず,例えば,金属のハロゲン化物や,イソシアネート基,アシルオキシ基,アミノキシ基などを有する金属化合物が例示される。また,例えば,シリコンアルコキシドの一種であるR^(1)_(n)M(OR^(2))_(4-n)で表される化合物(Mはケイ素原子,R^(1)はアルキル基,アミノ基,エポキシ基,フェニル基,メタクリロキシ基など有機官能基,R^(2) は例えばアルキル基,nは1?3の整数)もバインダー原料として使用できる。上記のR^(1)_(n)M(OR^(2))_(4-n)で表される化合物を用いると,コーティング後のゲル膜に有機残基が残るので,バインダー原料全てにこれを使用すれば,熱処理後,有機残基部がナノメートル程度の微細孔となり,この微細孔径が小さいことで毛管力が増し,付着した汚れが除去しにくくなったり,汚れや水などが微細孔に入り込み反射率の経時変化を引き起こすなど問題が生じ,また膜強度も弱くなるので,前記R^(1)_(n)M(OR^(2))_(4-n)で表される化合物は,多量に使用しない方が好ましく,例えば金属酸化物に換算して,バインダー総量に対して50重量%以内に制限される。
・・・(略)・・・
【0024】一方,太陽電池用ガラス板では,太陽光のエネルギーを有効に利用するために,前記ガラス板に近接して設ける多結晶シリコン,単結晶シリコン,アモルファスシリコンなどの膜中を多重反射させて光路長を長くするようにすれば,入射した光を効率的に利用できるので変換効率は向上する。このためには,前述のように,拡散透過光の量が大きくなるような低反射膜,すなわちヘイズ率の大きな低反射膜が最も良い。
【0025】反射率を低下させ拡散透過させる太陽電池用ガラス板は全光線透過率(直進透過光および拡散透過光の合計の透過率)を増やすこととシリコン中の光路長を長くすることに有効でありヘイズ率が10%以上でその効果は顕著にみられる。80%を超えるヘイズ率となると,反射率の低下(透過率の増加)効果がほぼ無くなる。従って本発明の太陽電池用ガラス板は10?80%のヘイズ率を有することが好ましい。しかし,高い全光線透過率よりも,拡散光の光量の増加が望まれる場合や正反射光の低減(反射像の映り込みの防止)などの外観が重要な場合はヘイズ率が80%を超えてもよい。なお,大きな膜強度が要求される場合には,太陽電池用ガラス板のヘイズ率は30%以下の範囲が目安となる。反射防止性能と光の拡散透過性を両立させる方法としては,低反射膜用コーティング液に用いる非凝集シリカ微粒子として,平均粒径が異なる2種の微粒子,すなわち,(1)平均粒径が40?200nmの第1の非凝集シリカ微粒子 70?95重量%,および(2)200nmを超え3000nm以下でかつ前記第1の非凝集シリカ微粒子の平均粒径よりも少なくとも100nm大きい平均粒径を有する第2の非凝集シリカ微粒子 5?30重量%を使用することがあげられる。この非凝集シリカ微粒子を使用して得られる低反射膜において,平均粒径が40nm?200nmの微粒子を膜上部からみた占有面積が30?90%となり,平均粒径が200nm?3000nmの微粒子の占有面積が50%以下,より好ましくは1%以上30%以下となる。ここで,占有面積とは,ガラス面を垂直方向からみて,膜の単位面積あたりの微粒子が存在し占有している面積を指す。微粒子が重なっている場合は,最上部にある微粒子の面積で占有面積を求める。基体上の全ての表面部分が微粒子に占有されている必要は無い。前者の微粒子占有部分では反射防止性能が得られ,後者の微粒子占有部分では光の拡散透過性能が得られる。このようにして反射率を低く保ちながらヘイズ率を30%まで大きくすることができる。
【0026】粒径がそろった非凝集微粒子をガラス基体上に一段に並べた場合,微粒子の粒径とヘイズ率の関係を示すと,微粒子の含有量を80重量%,バインダー量20重量%として,粒径が200nmのみの微粒子で形成された膜ではヘイズ率は10%程度,300nmのみでは20%程度,500nmのみでは55%程度,粒径が700nmの微粒子では70%となる。粒径が900nm以上の微粒子では,70%を超えるヘイズ率となる。
【0027】低反射の効果があればあるほど自動車用では安全性が向上し,太陽電池基板では利用できる光のエネルギーが増すので,反射率は低い方が好ましく,膜面からの反射率は2%以下であり,より好ましくは1%以下,さらに好ましくは0.7%以下である。
【0028】低反射膜の構造としては,表面にバインダーが被覆されたシリカ微粒子(以下単に微粒子ということがある)がガラス基体の表面をほぼ全て覆うような形状を有していることが膜の反射率を低減させるのに最も良い。全く同じ粒径の微粒子を最密充填してガラス基体上に一層敷き詰めた場合,その微粒子の上部からみた占有面積は理論的には約90%である。微粒子を一層のみ形成させた低反射膜では,その占有面積は,50%以上,より好ましくは70%以上であることが低反射性能を得るのに好ましい。この占有面積が50%未満ではガラス基体表面が露出していることによりそのガラスと空気の屈折率差による反射が強く出てくるので,反射の低減ができない。微粒子がガラス上面に一層のみ配列した低反射膜の構造でもよく,多段に微粒子が積層した構造でも良い。1層でも,多段に積層したものでも,微粒子径に応じた空孔が,ガラス基体と微粒子との間隙または微粒子同士の間の隙間に形成され,この空孔が見かけ上の屈折率を低減させるのに有効となる。膜の真上から膜を電子顕微鏡で観察して,膜の最表面に平面的に並んでいる微粒子,及び,最表面の微粒子より下側に位置し,最表面の微粒子の隙間から僅かでも観察できる微粒子の総数は,原料微粒子として40?500nmの平均粒径を有する非凝集シリカ微粒子を使用した場合,1μm×1μmの正方形の面積中に30?3000個でありこれらの微粒子は40?500nmの平均粒径を有することが好ましい。上記総数はより好ましくは100個以上1000個以下である。また,原料微粒子として100?1000nmの平均粒径を有する非凝集シリカ微粒子を使用した場合,前記微粒子の総数は,10μm×10μmの正方形の面積の中に10?50000個であり,これらの微粒子は100?1000nmの平均粒径を有することが好ましい。上記総数はより好ましくは20個以上25000個以下である。この微粒子密度は微粒子の大きさに依存し,微粒子径が大きければ数は小さくなり,微粒子径が小さければ数は多くなる。微粒子が単独にガラス基板上に担持されるよりも,微粒子が密に存在し互いにバインダーを介して接触し結合した構造が膜強度を高める点からも望ましい。例えば,微粒子の平均粒径がDnmである場合,10μm×10μmの正方形の膜に真上から電子顕微鏡で観察される微粒子の数は5,000,000/D^(2)?10,000,000/D^(2)個が好ましい。」

エ 「【0066】次に太陽電池用ガラス板への応用に関する実施例(実施例6?10)を記載する。
[実施例6]第1のシリカ微粒子分散液(平均粒径50nm,固形分20%,前記の日産化学製「スノーテックスOL」,)32.0gと第2のシリカ微粒子分散液(平均粒径300nm,粒径の標準偏差1.1,長軸長さと短軸長さの比の平均値1.02,固形分20%,日本触媒製「シーホスターKE-W30」)8.0gを固形分比で4:1の割合として混合してシリカ微粒子分散液(平均粒径50nm,第1のシリカ微粒子平均粒径とほぼ等しい)40.0gを得た。これに,さらにエタノール52.6g,3モル/Lの塩酸0.5g,テトラエトキシシラン6.9gを添加し,12時間反応させ,コーティング液を調製した。ソーダ石灰珪酸塩ガラス組成を有し無着色透明(クリア)の4.0mm厚みのフロートガラス基板(可視光線透過率Ya=88.5%),全光線透過率=88.5%,日射透過率Tg=79.6%,紫外線透過率Tuviso=52.0%,可視光反射率7.7%,Hunter表色系の透過色L=94.3-,a=-1.7,b=0.2,反射色L=27.8,a=-0.5,b=-0.6)の表面に,上記コーティング液をスピンコート法により塗布し,さらに500℃の電気炉に10分間保持することによりヘイズ率が5.1%を有する低反射膜(平均膜厚250nm)が被覆された低反射ガラス板が得られた。
【0067】[実施例7]シリカ微粒子分散液(平均粒径550nm,粒径の標準偏差1.1,長軸長さと短軸長さの比の平均値1.02,固形分20%,日本触媒製「KE-W50」)40gを撹拌しながら,それにエチルセロソルブ 52.1g,濃塩酸1g,テトラエトキシシラン6.9gを順次添加し,240分間撹拌しながら反応させてゾルを得た。このゾル3gにエチルセロソルブ3g,ヘキシレングリコール4gを加えて希釈し,固形分3重量%のコーティング液を作成した。
【0068】実施例4と同じ組成および厚みのフロートガラス基板の片面に上記コーティング液を用いてスピンコーティングにより成膜し,さらに700℃の電気炉に2分間入れることによりヘイズ率が51.7%を有する低反射膜(平均膜厚560nm)が被覆された低反射ガラス板が得られた。なお電気炉内加熱による最高到達温度で630℃であった。
【0069】[実施例8]シリカ微粒子分散液(平均粒径740nm,粒径の標準偏差1.1,長軸長さと短軸長さの比の平均値1.02,固形分20%,日本触媒製「KE-E70」)40gを撹拌しながら,それにエチルセロソルブ 52.1g,濃塩酸1g,テトラエトキシシラン6.9gを順次添加し,240分間撹拌しながら反応させた。このゾル6gにヘキシレングリコール4gを加えて希釈し,固形分6%のコーティング液を作成した。実施例7と同じ組成および厚みのフロートガラス基板の片面にスピンコーティングにより成膜し,さらに700℃の電気炉に2分間入れることによりヘイズ率が69.5%を有する低反射膜(平均膜厚750nm)が被覆された低反射ガラス板が得られた。
【0070】[実施例9]シリカ微粒子分散液(平均粒径300nm,固形分20%,前記の日本触媒製「KE-W30」)35gを撹拌しながら,それにエチルセロソルブ 52.1g,濃塩酸1g,テトラエトキシシラン10.4gを順次添加し,300分間撹拌しながら反応させた。このゾル3gにヘキシレングリコール4gを加えて希釈し,固形分3%のコーティング液を作成した。実施例7と同じ組成および厚みのフロートガラス基板の片面にスピンコーティングにより成膜し,さらに700℃の電気炉に2分間入れることによりヘイズ率が18.2%を有する低反射膜(平均膜厚320nm)が被覆された低反射ガラス板が得られた。
【0071】[実施例10]実施例4で使用した微粒子含有加水分解液(平均粒径110nm)16g,実施例7で使用した微粒子含有加水分解液(平均粒径550nm)24g,エチルセロソルブ20g,ヘキシレングリコール40gを混合し,コーティング液とした。実施例6で使用したと同じガラス基板の表面に,上記コーティング液をグラビアコーティング法により塗布し,さらに500℃の電気炉に10分間保持することによりヘイズ率が27.2%を有する低反射膜(平均膜厚570nm)が被覆された低反射ガラス板が得られた。
【0072】実施例6?10の低反射ガラスの反射率,反射色調は,2ヶ月後に再度測定しても変化が無く,測定値は全て測定器の誤差範囲内にあった。
【0073】上記実施例6?10における,シリカ微粒子の形態(非凝集微粒子か鎖状凝集微粒子かの区別,および2種の微粒子を混合した場合は「混合」の表記),シリカ微粒子の寸法(平均粒径),膜中のバインダー含有量(重量%),シリカ微粒子含有量(重量%),最終膜厚(平均膜厚),コーティング液の調製における,シリカ微粒子の存在下でのシリコンアルコキシドの加水分解の有無(「存在下加水分解」の有無),膜の上部から膜を電子顕微鏡で観察して膜面積100平方μm(10μm×10μm)中の微粒子の数(微粒子密度),および基体のガラス板の種類(色と厚み(mm))と,得られた低反射ガラス板についての膜面反射率1および2,反射色調a/b,汚れ除去性,初期のヘイズ率(%),初期の全光線透過率(%)および,堅牢度試験(500g/cm^(2)荷重で1000回往復)後のヘイズ率(%)全光線透過率(%)の評価結果は表3に示す。なお,反射色調から計算した反射光彩度の値[(a^(2)+b^(2))^(1/2)]は,いずれの実施例も4以下であった。表3の記載から,実施例6?8,および10においては,得られた低反射ガラス板はガラス基板の全光線透過率よりも高い全光線透過率を有しており,実施例9においては得られた低反射ガラス板はガラス板基体の全光線透過率とほぼ等しい全光線透過率を有していることがわかる。実施例6?10の低反射ガラスはヘイズ率が大きく,自動車,建築などの窓ガラスとしてはあまり適しないが,太陽電池用基板用ガラス板および太陽熱温水器用ガラス板として好適に使用することができる。
【0074】
【表3】


【0075】実施例6?10では,堅牢度試験前後の膜面反射率1,2および反射色調の変化は分光光度計の測定誤差範囲内であり,光学的な厚みの変化は無いと判断できた。堅牢度試験後に,ヘイズ率は若干上昇しているが,全光線透過率はほとんど変化せず,従って微粒子による光の散乱により生じる拡散透過光の減少は無いことから,強固にガラス基板に微粒子が密着していることがわかる。」

オ 「【0089】
【発明の効果】本発明によれば,シリカ微粒子存在下で加水分解可能な金属化合物を加水分解して得られるコーティグ液を使用し,そして,比較的大きなシリカ微粒子を使用するか,または,シリカ微粒子と前記バインダーを特定の割合で使用することにより,格段に低い反射率および高い膜強度が得られ,汚れ除去性も向上し,反射率の経時変化もない。
【0090】また本発明によれば,ガラス基体を軟化点以上に加熱した場合でも,膜の収縮によるガラスの反りの発生が全くない。これは,主に収縮量がほぼ無いシリカ微粒子が膜を構成しているので,膜とガラスとの結合が少なくなり,微粒子間の接触も少なくなるためである。特に共加水分解により得られた膜では,シリカ微粒子の表面にバインダー濃度が高くなり,バインダーがガラス基体表面上で膜を形成しないのでバインダーの収縮力がガラスに作用しにくいと考えられる。従って,例えば自動車用のガラスのような曲面形状に成形する場合でも,膜の無いガラスと同様な加工が行え,製造コストを低減できる。また,太陽電池用基板や建築用窓のような用途においても,膜強度を向上させるために高い加熱処理を行ってもガラスの平坦性が維持できるので好適である。
【0091】更に本発明によれば,低反射ガラスの最表面を凹凸形状にしたことにより,二酸化珪素が持つ親水性が向上し,付着水蒸気による曇りが生じにくいガラス表面となる。水滴が付着しても,その接触角は小さく,非常に親水性の表面となるので,ほこりなどの汚れが容易に洗い流せる。水滴が残りにくいので,表面に水跡などの汚れが生じにくい防汚性を有する。
【0092】さらに,本発明による単層の低反射膜は,多層膜に比べ,製造コストが安くなるばかりでなく,その反射性能においても,広い波長領域で反射率が低く,入射角に対する反射率の上昇が小さく,且つ反射光の彩度が小さいという利点を有する。このような性能は,特に自動車用窓や太陽電池用ガラス板には有用なものである。また,反射の低下は透過率を増加させるので光を他のエネルギーに変換する太陽電池用ガラスには好適であり,使用するガラス基体の全光線透過率と等しいかまたはそれよりも高い全光線透過率,特に88%以上の全光線透過率を有する低反射ガラス物品が得られる。」

カ 「【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の低反射膜の構造を示す電子顕微鏡写真。
【図2】 比較例の低反射膜の構造を示す電子顕微鏡写真。
・・・(略)・・・
【図1】


【図2】




(2)引用発明
引用例1には,請求項1に記載された発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 シリカ微粒子およびバインダーからなる低反射膜をガラス基体上に形成した低反射ガラス物品において,前記低反射膜は前記シリカ微粒子と前記バインダーを重量比で60:40?95:5の割合でそれぞれ含有し,そして前記低反射膜は,(1)平均粒径が40?1000nmの非凝集シリカ微粒子および平均一次粒径が10?100nmの鎖状凝集シリカ微粒子の少なくとも一方からなる原料微粒子,(2)加水分解可能な金属化合物,(3)水,および(4)溶媒を混合し,そして前記加水分解可能な金属化合物を前記原料微粒子の存在下で加水分解して調製されたコーティング液を前記ガラス基体上に被覆し,加熱処理することにより形成されたものであることを特徴とする低反射ガラス物品。」

2 引用例2?4の記載事項
(1)引用例2の記載
本件出願の優先日前に頒布され,当審拒絶理由において引用例2として引用された刊行物である特開2007-119310号公報(以下「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,無機微粒子,該無機微粒子が安定して分散している分散液,およびそれを含むコーティング組成物に関する。更に,該コーティング組成物から形成された光学フィルム,特に反射防止フィルム,これを用いた偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤,外装塗料,ハードコート,反射防止膜などに有機材料や無機材料を配合して,耐擦傷性,硬化物の強度,接触した他の素材との密着などを向上させることが検討されている。
無機材料と有機材料を配合する際には,無機材料が不要な凝集を起こさないことが必要である。一般に行われる方法の1つは,無機材料を有機材料に親和性のある溶媒中に分散した後に有機材料と混合して被膜を形成する方法である。安定した性能を得るためには,無機材料が溶媒中に安定して分散されていることが重要である。具体的には,無機材料表面の親疎水性や立体障害性の制御が重要であり,無機微粒子においては,アルコキシシランを用いて表面処理することが知られている。例えば,「顔料分散技術 表面処理と分散剤の使い方および分散性評価」(技術情報協会編 1999年発行)にはシランカップリング剤を用い無機粒子を有機溶媒に分散する方法についての記載がある。しかしながら分散液の安定性という意味では未だ不十分なレベルであった。
【0003】
また,特に重合硬化系の有機材料と無機粒子の組み合わせにおいては,重合基を含有するアルコキシシランおよび/またはその加水分解縮合物が注目されている。例えば,特許文献1(特開平9-169847号公報)には,特定のポリアルコキシポリシロキサンと重合性シランカップリング剤との併用が提案されているが,ポリアルコキシポリシロキサンと重合性シランカップリング剤との反応が不十分であり,重合性基の導入率が低いために,硬化物の耐擦過性や強度は十分ではない。特許文献2(特開平9-40909号公報)には,有機官能基を含むアルコキシシランとテトラアルコキシシランとの部分共加水分解縮合物が報告されているが,液の保存性は十分なものではなかった。上記の様に,これまでの技術では,被膜の耐擦傷性や強度,液の保存安定性の点で不十分で,更なる改良が求められていた。
・・・(略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は,溶媒中の分散性が改良された無機微粒子,該無機微粒子が分散された分散液,およびそれを含むコーティング組成物を提供することにある。
また,本発明のさらなる目的は,十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性の向上した光学フィルム,特に反射防止フィルム,これを用いた偏光板および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は,鋭意検討の結果,以下の構成の無機微粒子,分散液,コーティング組成物,光学フィルム,偏光板および画像表示装置により本発明の上記目的が達成されることを見出した。
1)少なくともSi(ケイ素)原子を含む無機微粒子において,該無機微粒子表面が一般式(I)で表される化合物を用いて表面処理されてなり,固体NMRを用いて特徴付けられる該無機微粒子の表面シラノ-ル基残存率Z1が0.45以上0.60以下であることを特徴とする無機微粒子。
一般式(I)
(R^(10))_(m)-Si(X)_(4-m)
(式中,R^(10)は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1?3の整数を表す。)
・・・(略)・・・
5)前記無機微粒子が中空状のシリカ微粒子であることを特徴とする上記1)?4)のいずれかに記載の無機微粒子。
・・・(略)・・・
11)前記塗布し硬化させてなる層が,低屈折率層を形成することを特徴とする上記10)に記載の光学フィルム。
・・・(略)・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明の無機微粒子は,分散安定性に優れた分散液を提供することができる。本発明の無機微粒子と被膜形成組成物を含んでなるコーティング組成物から形成される光学フィルムは,ヘイズが少なく膜の耐傷性に優れている。更に,本発明の光学フィルム,とくに反射防止フィルム,あるいは本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板を備えたディスプレイ装置は,外光の映り込みや背景の映りこみが少なく,極めて視認性が高い。」

(2)引用例3の記載
本件出願の優先日前に頒布され,当審拒絶理由において引用例3として引用された刊行物である特開2007-283293号公報(以下「引用例3」という。)には,以下の事項が記載されている。
「【0022】
以下に,本発明の製造方法で製造される積層体の好ましい層構成について述べる。
1)低屈折率層/ハードコート層構成
低屈折率層の主要構成素材としては,含フッ素ポリマー又は低屈折率粒子が好ましい。含フッ素ポリマーは,上記(A)相溶性低下の観点,上記(B)拡散抑止の観点,から質量平均分子量は,5,000?500,000が好ましく,更に好ましくは5,000?300,000,最も好ましくは10,000?100,000である。また,上記(C)の観点から,低表面自由エネルギーを与えることができる含フッ素ポリマーが好ましく,更に好ましくはC_(3)F_(7)以上の炭素原子数を有するパーフルオロ炭化水素基を有することが好ましい。また,フッ素ポリマーはポリジメチルシロキサンに代表されるポリシロキサンの部分構造を有することが好ましい。分子構造の詳細については,後述のフッ素ポリマーの頁で述べる。該構成において,ハードコート層形成成分と化学結合を形成しうる官能基を有する含フッ素ポリマーは,低屈折率層の固形分に対して30?99質量%が好ましく,40?95質量%が更に好ましい。また,該含フッ素ポリマー以外に非含フッ素のハードコート層形成成分と化学結合を形成しうる官能基を有する化合物を含むこともできるが,該フッ素ポリマーより含率が低いことが好ましく,1?30質量%が好ましい。
低屈折率粒子を用いる場合には,(B)の拡散抑止の観点から,粒子のサイズは大きい方が好ましく,30?150nm,更に好ましくは35?80nmである。また,(C)の観点から,低表面自由エネルギーを与えることができるよう低屈折率粒子を表面処理することが好ましく,アルキル基又は含フッ素アルキル基を含んだ化合物を用いた化合物で表面処理することが好ましい。より詳細には,後述の<低屈折率粒子>および(表面処理剤)の頁で粒子と表面処理について述べる。」
・・・(略)・・・
【0239】
<低屈折率粒子>
低屈折率層に含有させる無機粒子は,低屈折率であることが望ましく,フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。低屈折率層に用い,他層と同時に塗設する場合には,拡散性を低下させるために,平均粒子サイズは30?150nmが好ましく,35?80nmが更に好ましい。
これら粒子のなかでも特に,屈折率,分散安定性,コストの点でシリカ微粒子が好ましい。
シリカ微粒子の平均粒径は,低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく,より好ましくは35%以上80%以下,更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち,低屈折率層の厚みが100nmであれば,シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく,より好ましくは35nm以上80nm以下,更に好ましくは,40nm以上60nm以下である。
ここで,無機粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
・・・(略)・・・
【0243】
<中空シリカ粒子>
屈折率をより低下させる目的のためには,中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0244】
中空のシリカ微粒子は屈折率が1.15?1.40が好ましく,更に好ましくは1.17?1.35,最もに好ましくは1.17?1.30である。
・・・(略)・・・
【0253】
(表面処理剤)
本発明で使用する無機粒子は,分散液中あるいは塗布液中で,分散安定化を図るために,あるいはバインダー成分との親和性,結合性を高めるために,プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理,界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。
・・・(略)・・・
【0257】
無機粒子がシリカである場合,カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては,アルコキシメタル化合物(例,チタンカップリング剤,シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも,シランカップリング処理が特に有効である。
上記カップリング剤は,低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが,該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は,表面処理前に,媒体中に予め分散されていることが,表面処理の負荷軽減のために好ましい。
本発明において,上記低屈折率粒子,高屈折率粒子,導電性粒子は,該粒子含有層を上層として2層以上同時に塗布することができる。該粒子は前述の2層混合抑止の観点(C)から,低表面自由エネルギーを与えることができるよう低屈折率粒子を表面処理することが好ましい。アルキル基又は含フッ素アルキル基を含んだ化合物を用いて表面処理することが好ましい。」

(2)引用例4の記載
本件出願の優先日前に頒布され,当審拒絶理由において引用例4として引用された刊行物である特表2009-526727号公報(以下「引用例4」という。)には,以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は,反射防止コーティングに関し,一実施態様において反射防止ガラスプレートに関する。また,本発明は,その使用,方法,物品,および組成物に関する。
・・・(略)・・・
【0023】
反射防止コーティングは約1.1?約1.4の屈折率を有することが好ましい。より好ましくはコーティングは約1.15?約1.3の屈折率を有する。さらにより好ましくはコーティングは約1.2?約1.25の屈折率を有する。
・・・(略)・・・
【0028】
本発明のコーティングは概してコーティング中にボイドを示し,それによってナノ多孔性構造を有する。ボイドは反射防止性質を得るのを助ける。概して,コーティングは,約20体積%以上のボイド率を含む。ボイド率はここで,基本的に周囲空気を充填された粒子/バインダー間の空隙として定義される。好ましくはボイドは約30体積%以上を示し,さらにより好ましくはボイドは約40体積%以上を示し;最も好ましくは,ボイドは約50体積%以上を示す。概して,コーティングはコーティング中に約90%以下のボイドを示し,別の実施態様において約80体積%以下,さらに別の実施態様において約70体積%以下を示す。
・・・(略)・・・
【0038】
本発明において使用されたコーティングはナノサイズの粒子と,バインダーと溶剤とを含む。
【0039】
適した粒子の例は,フッ化リチウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム,フッ化マグネシウム,二酸化チタン,酸化ジルコニウム,アンチモンドープ酸化スズ,酸化スズ,酸化アルミニウム,および二酸化ケイ素を含む粒子である。好ましくは二酸化ケイ素を含む粒子,最も好ましくは,少なくとも90重量%の二酸化ケイ素からなる粒子が用いられる。
・・・(略)・・・
【0047】
コーティングはバインダーを含み,それは,主な機能として,粒子をガラスプレートに付着および接着した状態に維持しなければならない。好ましくは,バインダーは粒子および基材と共有結合を形成する。この目的のために,バインダーは(硬化する前)概して,
アルキルまたはアルコキシ基を有する無機化合物を含有するが,他の化合物が同様に適している場合がある。さらに,バインダーは好ましくはそれ自体重合して連続したポリマー網目を形成する。
・・・(略)・・・
【0071】
[節A]
反応性無機バインダー(アルコキシシラン)をシリカ粒子(タイプIPA-ST-UP)の表面上にグラフトし,次に予備加水分解バインダー(混合物B,表2を参照)と混合するか,または粒子(タイプMT-ST)を予備加水分解バインダーと直接に混合するかいずれかを実施することによって,コーティング調合物を調製した。
【0072】
アルコキシシラン,水および酢酸を溶剤に添加することによって,予備加水分解アルコキシシランバインダーを製造した。室温において72時間後,混合物を所望の濃度に溶剤で希釈し,塩酸を添加して1のpHを得た(混合物B)。
・・・(略)・・・
【0074】
アルコキシシランを溶剤中の酸化物粒子の懸濁液に添加することによって,反応性無機バインダーの前駆体基をウォーム状シリカナノ粒子上にグラフトした。表3は,使用された化学物質の量を示す。攪拌した後,水を混合物に添加し,混合物を80℃に加熱し,4時間,そこに保持した。冷却後に,混合物を所望の濃度に溶剤で希釈した。この時点で所定量の混合物Bを反応混合物に添加し,浸漬方法に適した所望の最終調合物を得る(実施例の調合物1)。
【0075】
予備加水分解バインダー(混合物B)および水を溶剤中の球状酸化物粒子の懸濁液に添加することによって,球状ナノシリカ粒子に基づいた実施例の調合物2を調製した。この時点で得られた混合物を,基材に適用するために所望の濃度に溶剤で希釈した。
・・・(略)・・・
【0077】
[A2:基材上の無機ARコーティングまたはフィルムの作製]
以下の手順によって調合物1および2の薄いフィルムをガラススライド上に作製した。ガラスプレートを洗浄および十分に乾燥させて,浸漬コーティングプロセスのためにそれを準備した。次に,ガラススライドを調合物1または2のいずれかに沈めた。それを所定の速度で調合物から取り出し,このようにコーティング調合物の薄い液体層をガラスプレート上に付着させた。溶剤の蒸発後に,乾燥された無機コーティングを450℃において4時間炉内で硬化させ,完全な硬化を確実にした。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比すると,以下のとおりとなる。
ア ポリマー結合剤
引用発明の「バインダー」は,その語義から,本願発明1の「結合剤」に対応付けられるものである。

イ 金属酸化物粒子
引用発明の「低反射膜」は,「シリカ微粒子およびバインダーからなる」。ここで,技術常識を踏まえれば,「シリカ微粒子」は,「バインダー」中に分散されているものと解される。そして,「シリカ微粒子」は,金属酸化物粒子の一種である。また,本願発明1は,「前記複数の金属酸化物粒子が,表面処理されたヒュームドシリカを含」むから,本願発明1の「金属酸化物粒子」と引用発明の「シリカ微粒子」は,シリカを含む点で共通する。
また,引用発明は,「前記低反射膜は前記シリカ微粒子と前記バインダーを重量比で60:40?95:5の割合でそれぞれ含有し」,シリカ微粒子は,「平均粒径が40?1000nmの非凝集シリカ微粒子および平均一次粒径が10?100nmの鎖状凝集シリカ微粒子の少なくとも一方からなる原料微粒子」からなる。そうしてみると,引用発明の「低反射膜」には,「シリカ微粒子」が複数存在することは明らかである。

ウ 光学拡散体層
引用発明の「低反射膜」は,「ガラス基体上に形成」されたものである。すなわち,ガラス基体にかさねて形成されたものであるから,「層」と呼ぶことができるものである。また,「低反射」膜であるから,光学的な機能を有するものである。したがって,本願発明1の「光学拡散体層」と,引用発明の「低反射膜」は,光学層である点で共通する。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
上記(1)を踏まえると,本願発明1と引用発明は,次の構成で一致する。
「 光学層であって,
結合剤と,
前記結合剤中に分散された複数の金属酸化物粒子と,を含み,
前記複数の金属酸化物粒子が,シリカを含む,
光学拡散体層。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明とは,以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は,「ポリマー」結合剤を含むのに対して,引用発明の「低反射膜」は,バインダーを有するものの,当該バインダーがポリマーであるとは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1は,「複数の相互接続された空隙」を含むのに対して,引用発明の「低反射膜」は,これが明らかでない点。

(相違点3)
本願発明は,「光学拡散体層」であり,「前記ポリマー結合剤中に分散された複数のヘーズ生成粒子」を含み,「少なくとも40%の光学ヘーズを有する」のに対して,引用発明の「低反射膜」は,ヘーズ生成粒子を含むことは特定されてなく,また,その光学ヘーズが明らかでない点。

(相違点4)
本願発明は,「前記複数の金属酸化物粒子が,表面処理されたヒュームドシリカを含」むのに対して,引用発明は,「シリカ微粒子」を含むものの,表面処理されたヒュームドシリカを含むとは,特定されていない点。

(相違点5)
本願発明は,「前記光学拡散体層が1.3以下の有効屈折率」を有するのに対して,引用発明の「低反射膜」は,有効屈折率が明らかでない点。

(3)相違点についての判断
上記相違点1を判断する。
ア 引用発明は,「シリカ微粒子およびバインダーからなる低反射膜をガラス基体上に形成した低反射ガラス物品」であり,「前記低反射膜は,(1)平均粒径が40?1000nmの非凝集シリカ微粒子および平均一次粒径が10?100nmの鎖状凝集シリカ微粒子の少なくとも一方からなる原料微粒子,(2)加水分解可能な金属化合物,(3)水,および(4)溶媒を混合し,そして前記加水分解可能な金属化合物を前記原料微粒子の存在下で加水分解して調製されたコーティング液を前記ガラス基体上に被覆し,加熱処理することにより形成されたものである」。そうしてみると,引用発明の「バインダー」は,加水分解可能な金属化合物を,シリカ微粒子の存在下で加水分解した上で,加熱処理することにより形成されるものと解される。このようにしてなる引用発明の「バインダー」が,ポリマーでないことは,明らかである。

イ 上記アに記したように,本願発明1と引用発明とは,シリカ微粒子が分散される結合剤の材料において相違することが明らかである。そこで,引用発明において,上記アで指摘したような材料に替えて,ポリマー結合剤によってバインダーを構成することが,本件出願の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるか,検討する。

ウ 引用例1には,「単層で,低い反射率を有し,耐摩耗試験などを満足する強い膜強度を有」する「可視光または赤外光の低反射膜を提供することを目的とする。」と記載されている(段落【0009】)。そして,当該課題を解決する手段として,引用発明の低反射膜が記載され(段落【0010】)。また,当該低反射膜を構成する材料及び形成方法の作用として,加水分解により生じた生成物と,シリカ微粒子表面のシラノールとの縮合反応が加水分解とほぼ同時に起こることにより,微粒子の表面の反応性が向上した上で,微粒子表面がバインダーで被覆されていくため,バインダーがシリカ微粒子とガラス基体との接着性向上に有効に利用されることが記載され(段落【0017】),引用発明の低反射膜が,前記作用により,膜強度を維持したままバインダー成分の含有量を減らすことが可能となり,膜の見かけ屈折率を小さくすることができ,結果として膜強度の維持と膜の反射率の低減を両立させ得ることが記載されている(段落【0020】)。
そうしてみると,引用発明は,低い反射率と強い膜強度の両立という目的のために,バインダーの材料として加水分解可能な金属化合物を選択し,シリカ微粒子の存在下で,金属化合物を加水分解するという方法を採用したものといえる。

エ 引用例2及び引用例3には,シリカ微粒子を表面処理した上で,ポリマー結合剤中に分散させた低屈折率層が記載されている。引用発明と,引用例2及び引用例3に記載されるような技術とは,シリカ微粒子を膜中に分散させることにより,屈折率を低減させる点で一致する。しかし,引用発明において,引用例2及び引用例3に記載されるようなポリマー結合剤を適用することは,上記ウで説示した引用発明の目的に反することになる。したがって,このような技術を引用発明に適用することを阻害する事情があるといえ,当業者であれば,このような適用を想到することが,容易であるとはいえない。

オ 以上ア?エから,上記相違点2?相違点5について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2?本願発明3について
本願発明2は本願発明1の構成を全て有し,また,本願発明3は本願発明1の構成を一部減縮する形で全て有するから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,並びに,引用例2?4に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の概要
原査定は,平成27年10月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項3に係る発明は,以下の引用文献1又は引用文献2に記載された発明,並びに,引用文献3?12に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
すなわち,引用文献1又は引用文献2に記載された,バインダ及び拡散性を付与するための粒子が含まれる光学的拡散フィルムにおいて,その空気界面における反射を低減するために,金属酸化物微粒子及び空隙を含むことにより,その実質的な屈折率(「有効屈折率」)を1.3以下とする周知の技術思想(引用文献3?引用文献6を参照。),並びに,有効屈折率を低減するためにヒュームドシリカを用いる周知の事項(引用文献7?引用文献8を参照。)を適用することは,当業者が容易に想到し得たことであり,また,引用文献1又は引用文献2に記載された発明において,ヘーズを40%以上とすることも,当業者が容易になし得たことである(引用文献9?引用文献12を参照。),というものである。)

引用文献等一覧
1.特開2007-094369号公報
2.特開2008-081551号公報
3.特開昭60-059250号公報
4.特開2008-233776号公報
5.特開2005-352121号公報
6.特開2006-251163号公報
7.特表2009-540390号公報
8.特開2002-365403号公報
9.特開2010-139933号公報
10.特開2010-082985号公報
11.特開2010-230816号公報
12.特開2010-224251号公報

2 原査定についての判断
引用文献1及び引用文献2には,それらが開示する光学的拡散フィルムにおいて,反射を低減させることや,屈折率を低くするという課題は記載されていない。また,低い屈折率と高い光拡散性の両方を1つの層で実現することが,優先日において周知の技術であったともいえない。そうすると,引用文献3?引用文献6に記載されるような周知の技術思想が存在するとしても,引用文献1又は引用文献2に記載された発明において,当該周知の技術思想を適用することを,当業者が容易に発明できたということはできない。
したがって,本願発明1?本願発明3が,引用文献1又は引用文献2に記載された発明,並びに,引用文献3?12に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたということはできない。
よって,原査定を維持することはできない。

第7 まとめ
以上の通り,本願発明1?本願発明3は,当業者が,引用例1に記載された発明,あるいは,引用文献1又は引用文献2に記載された発明,並びに,引用例2?4及び引用文献3?12に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-29 
出願番号 特願2013-534965(P2013-534965)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 佐藤 秀樹
宮澤 浩
発明の名称 相互接続された空隙を有する低屈折率拡散体要素  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 高橋 正俊  
代理人 石田 敬  

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