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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1336579
審判番号 不服2016-13671  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-12 
確定日 2018-01-17 
事件の表示 特願2013-547624「バイオキネマティック入力を用いるユーザ識別」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月 5日国際公開、WO2012/092297、平成26年 2月 3日国内公表、特表2014-502763〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2011年12月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年12月29日(以下,「優先日」という。),米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年12月5日付けで審査請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成27年11月20日付けの拒絶理由通知に対して平成28年3月1日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成28年4月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成28年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成28年10月7日付けで特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

第2 平成28年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成28年9月12日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
(下線は,補正の個所を示すものとして審判請求人が付したものである。)

「 【請求項1】
コンピューティング装置であって,
定義済の識別ジェスチャ中,一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータを含む,前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力を受け取るように構成されているセンサを含むマルチタッチセンスディスプレイと,
前記コンピューティング装置のプロセッサによって実行されるユーザ識別モジュールであって,前記センサから前記バイオキネマティック入力を受け取るように構成され,前記複数の指のタッチの相対的な位置および/または前記複数のタッチの前記位置の相対的な変化率を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納されたユーザテンプレートと比較し,一致していると決定された場合,前記ユーザが成功裏に識別されたという表示を前記ディスプレイ上に表示するようにさらに構成され,前記格納されたユーザテンプレートは前記ユーザに関連する前のバイオキネマティックデータから抽出されたユーザ識別特徴から生成され,前記ユーザ識別特徴は少なくとも前記ユーザの手の輪郭を含む,ユーザ識別モジュールと
を備えることを特徴とするコンピューティング装置。
【請求項2】
前記センサは,容量性マルチタッチセンサであることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項3】
前記定義済の識別ジェスチャの前記複数の指のタッチは,少なくとも1つの手のひらのタッチを含み,前記定義済の識別ジェスチャは,手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャであることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項4】
前記ユーザ識別モジュールは,前記手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャ中の前記少なくとも1つの手のひらのタッチに対する前記複数の指のタッチの前記相対的な位置および/または前記位置の変化率を測定し,また,これら測定された相対的な位置および/または変化率を,前記格納されたユーザテンプレートと比較して,一致するかどうかを決定するようにさらに構成されていることを特徴とする請求項3に記載のコンピューティング装置。
【請求項5】
携帯電話,タブレットコンピューティング装置,ラップトップコンピュータ,パーソナルコンピュータ,デスクトップコンピュータ,卓上コンピュータまたはキオスクコンピュータからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項6】
前記ユーザ識別モジュールは,ユーザ認証動作の間,前記コンピューティング装置で実行され,前記ユーザ認証動作は,前記コンピューティング装置のユーザセッションに対して,前記ユーザのログインの間に実施され,前記表示は,ユーザログイン動作が成功した後,前記ディスプレイに出力されるメッセージである,または前記表示は,前記ユーザに対して表示されているログインスクリーンの停止であり,前記コンピューティング装置のプログラムまたはファイルまたはオペレーティングシステムに対するアクセスが許諾されることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項7】
コンピュータ化されたユーザ識別方法であって,
コンピューティング装置のマルチタッチセンスディスプレイを介して,一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチを含む識別ジェスチャの,前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力を受け取るステップと,
前記バイオキネマティック入力中の前記識別ジェスチャの少なくとも一部分の間の前記複数の指のタッチの相対的な位置及び/または前記位置の相対的な変化率を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納されたユーザテンプレートと比較するステップであって,前記格納されたユーザテンプレートは前記ユーザに関連する前のバイオキネマティックデータから抽出されるユーザ識別特徴から生成され,前記ユーザ識別特徴は少なくとも前記ユーザの手の輪郭を含む,ステップと,
前記比較するステップによって一致していると決定された場合,前記ユーザが成功裏に識別されたという表示を前記ディスプレイ上に表示するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記識別ジェスチャの前記複数の指のタッチは,少なくとも1つの手のひらのタッチを含み,前記識別ジェスチャは,手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
比較するステップの前に,前記手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャ中の前記少なくとも1つの手のひらのタッチに対する前記複数の指のタッチの前記相対的な位置および/または前記位置の変化率を測定するステップをさらに含み,
比較するステップは,前記手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャ中の前記少なくとも1つの手のひらのタッチに対する前記複数の指のタッチの前記相対的な位置および/または前記位置の変化率を比較するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
受け取るステップ,比較するステップおよび表示するステップは,前記コンピューティング装置でユーザ認証動作の間に実施され,前記ユーザ認証動作は,前記コンピューティング装置のユーザセッションに対して,前記ユーザのログインの間,実施され,前記表示は,ユーザログインの動作が成功した後,前記ディスプレイに出力されるメッセージである,または前記表示は,前記ユーザに対して表示されているログインスクリーンの停止であり,前記コンピューティング装置のプログラムまたはファイルまたはオペレーティングシステムに対するアクセスが,許諾されることをさらに特徴とする請求項7に記載の方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
コンピューティング装置であって,
定義済の識別ジェスチャ中,一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータを含むバイオキネマティック入力を受け取るように構成されているセンサを含むマルチタッチセンスディスプレイと,
前記コンピューティング装置のプロセッサによって実行されるユーザ識別モジュールであって,前記センサから前記バイオキネマティック入力を受け取るように構成され,前記複数の指のタッチの相対的な位置および/または前記複数のタッチの前記位置の相対的な変化率を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納されたユーザテンプレートと比較し,一致していると決定された場合,前記ユーザが成功裏に識別されたという表示を前記ディスプレイ上に表示するようにさらに構成され,前記格納されたユーザテンプレートは前記ユーザに関連する前のバイオキネマティックデータから抽出されたユーザ識別特徴から生成され,前記ユーザ識別特徴は少なくとも前記ユーザの手の輪郭を含む,ユーザ識別モジュールと
を備えることを特徴とするコンピューティング装置。
【請求項2】
前記センサは,容量性マルチタッチセンサであることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項3】
前記定義済の識別ジェスチャの前記複数の指のタッチは,少なくとも1つの手のひらのタッチを含み,前記定義済の識別ジェスチャは,手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャであることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項4】
前記ユーザ識別モジュールは,前記手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャ中の前記少なくとも1つの手のひらのタッチに対する前記複数の指のタッチの前記相対的な位置および/または前記位置の変化率を測定し,また,これら測定された相対的な位置および/または変化率を,前記格納されたユーザテンプレートと比較して,一致するかどうかを決定するようにさらに構成されていることを特徴とする請求項3に記載のコンピューティング装置。
【請求項5】
携帯電話,タブレットコンピューティング装置,ラップトップコンピュータ,パーソナルコンピュータ,デスクトップコンピュータ,卓上コンピュータまたはキオスクコンピュータからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項6】
前記ユーザ識別モジュールは,ユーザ認証動作の間,前記コンピューティング装置で実行され,前記ユーザ認証動作は,前記コンピューティング装置のユーザセッションに対して,前記ユーザのログインの間に実施され,前記表示は,ユーザログイン動作が成功した後,前記ディスプレイに出力されるメッセージである,または前記表示は,前記ユーザに対して表示されているログインスクリーンの停止であり,前記コンピューティング装置のプログラムまたはファイルまたはオペレーティングシステムに対するアクセスが許諾されることを特徴とする請求項1に記載のコンピューティング装置。
【請求項7】
コンピュータ化されたユーザ識別方法であって,
コンピューティング装置のマルチタッチセンスディスプレイを介して,一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチを含む識別ジェスチャのユーザバイオキネマティック入力を受け取るステップと,
前記バイオキネマティック入力中の前記識別ジェスチャの少なくとも一部分の間の前記複数の指のタッチの相対的な位置及び/または前記位置の相対的な変化率を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納されたユーザテンプレートと比較するステップであって,前記格納されたユーザテンプレートは前記ユーザに関連する前のバイオキネマティックデータから抽出されるユーザ識別特徴から生成され,前記ユーザ識別特徴は少なくとも前記ユーザの手の輪郭を含む,ステップと,
前記比較するステップによって一致していると決定された場合,前記ユーザが成功裏に識別されたという表示を前記ディスプレイ上に表示するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記識別ジェスチャの前記複数の指のタッチは,少なくとも1つの手のひらのタッチを含み,前記識別ジェスチャは,手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
比較するステップの前に,前記手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャ中の前記少なくとも1つの手のひらのタッチに対する前記複数の指のタッチの前記相対的な位置および/または前記位置の変化率を測定するステップをさらに含み,
比較するステップは,前記手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャ中の前記少なくとも1つの手のひらのタッチに対する前記複数の指のタッチの前記相対的な位置および/または前記位置の変化率を比較するステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
受け取るステップ,比較するステップおよび表示するステップは,前記コンピューティング装置でユーザ認証動作の間に実施され,前記ユーザ認証動作は,前記コンピューティング装置のユーザセッションに対して,前記ユーザのログインの間,実施され,前記表示は,ユーザログインの動作が成功した後,前記ディスプレイに出力されるメッセージである,または前記表示は,前記ユーザに対して表示されているログインスクリーンの停止であり,前記コンピューティング装置のプログラムまたはファイルまたはオペレーティングシステムに対するアクセスが,許諾されることをさらに特徴とする請求項7に記載の方法。」

2 補正の適否
(1)本件補正は,次の補正事項を含むものである。
補正事項1:補正前の請求項1の「ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータを含むバイオキネマティック入力」を補正後の請求項1の「ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータを含む,前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力」とする補正。

補正事項2:補正前の請求項7の「ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチを含む識別ジェスチャのユーザバイオキネマティック入力」を補正後の請求項7の「ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチを含む識別ジェスチャの,前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力」とする補正。

上記補正事項について検討する。

補正事項1は,補正前の「バイオキネマティック入力」を,補正後の「前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力」に限定するものであるから,補正前の発明特定事項を限定的に減縮するものである。

補正事項2は,補正前の「ユーザバイオキネマティック入力」を補正後の「前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力」に限定するものであるから,補正前の発明特定事項を限定的に減縮するものである。

以上で検討したとおり,請求項1に係る上記補正事項1は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「バイオキネマティック入力」について,上記のとおり限定的に減縮するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また,請求項7に係る上記補正事項2は,補正前の請求項7に記載した発明を特定するために必要な事項である「ユーザバイオキネマティック入力」について,上記のとおり限定的に減縮するものであって,補正前の請求項7に記載された発明と補正後の請求項7に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本件補正発明
本件補正発明は,上記「1 補正の内容」の「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(3)引用例
(3-1)引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である,米国特許出願公開第2010/0225443号明細書(2010年9月9日出願公開。以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加したものである。)

A 「For user authentication, finger touch information from a user is accepted via a touch sensitive element, the finger touch information including at least a time series of finger touch samples that define a trace of the user's signature, and each of the finger touch samples including centroid coordinates and non-centroid information, the non-centroid information including at least one of (A) a shape of the finger touch sample, (B) a size of the finger touch sample, (C) an orientation of the finger touch sample, and (D) characteristics of a multi-touch finger touch sample. A similarity of such finger touch samples with previously entered and stored finger touch samples is determined and compared with a threshold for purposes of user authentication.」(ABSTRACT)
(当審仮訳:ユーザ認証のために,ユーザからタッチセンシティブ要素によって指タッチ情報が受け入れられ,指タッチ情報は少なくともユーザの署名のトレースを定義する指タッチサンプルの時系列を含み,また,指タッチサンプルのおのおのは,重心座標と非重心情報とを含み,非重心情報は,少なくとも,(A)指タッチサンプルの形,(B)指タッチサンプルのサイズ,(C)指タッチサンプルの向き,及び(D)マルチタッチの指タッチサンプルの特徴を含む。そのような指タッチサンプルと以前に入力され,記憶された指タッチサンプルとの類似性が決定され,ユーザ署名の目的のための閾値と比較される。)

B 「[0003] Embodiments consistent with the present invention relate to user authentication for devices with touch sensitive elements, such as touch sensitive display screens for example.」
(当審仮訳:[0003]本発明と一致する実施形態は,例えばタッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素を有する装置のためのユーザ認証に関連している。)

C 「[0015]・・・FIG. 4C illustrates an example of user authentication using information from samples of a time series of a multi-touch “pinch” signature gesture. ・・・
(途中省略)
[0017] FIG. 7 is a flowchart of a method for authenticating a user on a system based on signature recognition utilizing a time series sequence of finger touch information samples from a touch sensitive element in a manner consistent with the present invention.」
(当審仮訳:[0015]・・・図4Cは,マルチタッチの“つまみ”署名ジェスチャの時系列のサンプルからの情報を用いてユーザ認証する例を示している。・・・
(途中省略)
[0017]図7は,本発明と一致する方法で,タッチセンシティブ要素からの指タッチ情報サンプルの時系列シーケンスを利用した署名認識に基づいてシステムでユーザを認証するための方法のフローチャートである。)

D 「[0024] Referring to FIG. 1 , embodiments consistent with the present invention may be implemented using program instructions stored on one or more storage device 120 (e.g., non-volatile storage) executed by one or more processors 110 (e.g., general purpose microprocessors, and/or application specific circuits) in a device 100 . The device 100 also includes memory 130 (e.g., working RAM), input/output interfaces 140 coupled with one or more input devices 142 and output devices 144 . These elements may exchange data via one or more buses and/or networks 180 . The input devices 142 include a touch sensitive element, such as a touch screen, a touch input device, and/or acceleration detecting means. The output devices 144 may include a speaker, a display (which may be a touch sensitive display), etc.・・・」
(当審仮訳:[0024]図1を参照すると,本発明と一致する実施形態は,装置100の1つ以上の記憶装置120(例えば,不揮発性記憶装置)に記憶され,1つ以上のプロセッサ110(例えば,汎用のマイクロプロセッサ,及び/または特定用途向けの回路)で実行されるプログラム命令を用いて実施されるかもしれない。装置100は,メモリ130(例えば,作業用RAM),1つ以上の入力装置142及び出力装置144に結合される入出力インタフェース140も含む。これらの構成要素は,1つ以上のバス及び/またはネットワーク180を介してデータをやり取りするかもしれない。入力装置142は,タッチスクリーンのようなタッチセンシティブ要素,タッチ入力装置,及び/または加速度検出手段を含む。出力装置144は,スピーカー,ディスプレイ(タッチセンシティブディスプレイであるかもしれない)などを含むかもしれない。・・・)

E 「[0025] The device 100 may be programmed to perform various user authentication functions (described below) using such collected information in a manner consistent with the present invention.・・・」
(当審仮訳:[0025]装置100は,本発明と一致する方法で集められるような情報を用いたさまざまなユーザ認証機能(以下で説明される)を実行するようにプログラムされているかもしれない。・・・)

F 「[0030] In an exemplary method consistent with the present invention, finger touch information (e.g., a time series of finger touches) is accepted from a user via a touch sensitive surface, the finger touch information including at least a time series of finger touch centroid coordinates that define a trace of the user's signature, as well as finger touch information in addition to the centroid coordinates (e.g., an area of the finger touch sample, a shape of the finger touch sample, an orientation of the finger touch sample, a multi-touch sample, characteristics of a multi-touch sample, etc.). (See Block 710 of FIG. 7 .) A similarity is then determined between the accepted finger touch information and stored information previously provided by the user (e.g., during a registration phase described below). (See Block 720 of FIG. 7 .) Finally, the user is authenticated based on at least the determined similarity (e.g., with respect to a stored or determined threshold). (See Block 730 of FIG. 7 .)」
(当審仮訳:[0030]本発明と一致する代表的な方法において,指タッチ情報(例えば,指タッチの時系列)はタッチセンシティブ表面を介してユーザから受け入れられ,ここで,指タッチ情報は,少なくとも,ユーザ署名のトレースを定義する指タッチ重心座標の時系列と,重心座標に加えて,指タッチ情報(例えば,指タッチサンプルの領域,指タッチサンプルの形,指タッチサンプルの向き,マルチタッチサンプル,マルチタッチサンプルの特徴など)も含む。(図7のブロック710を参照。)それから,受け入れられた指タッチ情報と,以前に(例えば,以下に述べられる登録段階の間に)ユーザによって提供されて記憶された情報との間の類似性が決定される。(図7のブロック720を参照。)最後に,ユーザは,少なくとも(例えば,記憶された,または決定された閾値に関して)決定された類似性に基づいて認証される。(図7のブロック730を参照。))

G 「[0033] §4.2.1 Registration Phase
[0034] The proposed authentication scheme has two phases. In the first phase, called the “registration” phase, a user creates an account on a device and enters, one or more times, the signature with their finger(s) on a touch sensitive element of the device. In the registration phase, user “signature”data is recorded as time series containing the coordinates of signature drawing. (See, e.g., FIGS. 4A-4D ). Note in FIG. 4B , each of the centroids of the samples at times t 1 -t 5 are depicted by an “x”. However, non-centroid information such as the entire area, orientation and shape of the touch screen surface contacted by the user's fingertip(s) are obtained. For example, although the samples at times t 1 and t 5 are both circular in shape, they have different sizes. Note also that the oval samples at times t 2 -t 4 have different orientations. Also, the samples at times t 3 and t 4 are multi-touch samples (since more than one fingertip is touching the touch sensitive element simultaneously). Multi-touch samples may include characteristics such as number of discrete touch areas, relative orientations of each discrete touch area, collective orientation of the discrete touch areas, distance(s) between discrete touch areas, etc. FIG. 4C illustrates a multi-touch “pinching” signature in which a user's thumb and two fingers are brought together. Touches captured at a first time are depicted with cross-hatching, touches captured at a second time are depicted with hatching, and touches captured at a third time are depicted with no hatching. A multi-touch “spreading” (as opposed to pinching) signature may be similarly entered and captured. FIG. 4D illustrates a multi-touch “twist” signature in which a user's thumb and two fingers are collectively rotated with a counter-clockwise wrist twist. Touches captured at a first time are depicted with cross-hatching, touches captured at a second time are depicted with hatching, and touches captured at a third time are depicted with no hatching. (Note that the thumb is lifted off from the touch sensitive element at the end of the twist signature.) As should be appreciated from the foregoing, additional information related to physical characteristics of the user's fingertip(s) (and perhaps finger, hand, wrist, etc) may be captured-not just the centroid x,y coordinates of finger touch samples.
(途中省略)
[0038] When user signature and biometric information is captured, it is stored in a database, either as raw data, or in a post processed form. For user authentication, several features can be extracted from the signature and these features can be stored in the system as an alternative to store raw data of signature and biometrics. Based on application requirements, one of these data recording approaches can be preferred in the registration phase.」
(当審仮訳:[0033]§4.2.1 登録段階
[0034]提案された認証方式には2つの段階がある。“登録”段階と呼ばれる第1の段階において,ユーザは装置上でアカウントを作成し,1回又はそれ以上の回数,装置のタッチセンシティブ要素上で指を用いた署名を入力する。登録段階で,ユーザ“署名”データは,署名描画の座標を含む時系列として記録される。(例えば,図4A-4D参照)。図4Bをみると,時刻t1-t5におけるサンプルのそれぞれの重心が“x”で示されている。しかしながら,ユーザの指先によって接触されたタッチスクリーン表面の全体の領域,向き,及び形状のような非重心情報が得られる。例えば,時刻t1とt5のサンプルは共に円形であるが,それらは異なったサイズを有している。同じく,時刻t2 - t4の楕円形のサンプルは,異なる向きであることに注意されたい。同じく,時刻t3とt4のサンプルは,(1以上の指先が同時にタッチセンシティブ要素に触れているため)マルチタッチサンプルである。マルチタッチサンプルは,分離したタッチ領域の数,分離したタッチ領域それぞれの相対的な向き,分離したタッチ領域の集合の向き,分離したタッチ領域の間の距離などのような特徴を含むかもしれない。図4Cは,ユーザの親指と2本の指が一緒に集められるマルチタッチの“つまみ”署名を示している。最初に取り込まれたタッチがクロスハッチングで描かれ,2番目に取り込まれたタッチがハッチングで描かれ,そして3番目に取り込まれたタッチがハッチングなしで描かれている。マルチタッチの“伸展”(つまみとは反対の)署名が,同様に入力されて取り込まれるかもしれない。図4Dは,反時計回りの手首のひねりで,ユーザの親指と2本の指がまとまって回転するマルチタッチの “ひねり”署名を示している。最初に取り込まれたタッチがクロスハッチングで描かれ,2番目に取り込まれたタッチがハッチングで描かれ,そして3番目に取り込まれたタッチがハッチングなしで描かれている。(ひねり署名の最後では,親指がタッチセンシティブ要素から持ち上げられていることに注意されたい。)上記から理解されるように,指タッチサンプルの重心のx,y座標だけでなく,ユーザの指先(そして多分,指,手,手首など)の身体的特徴に関連する追加の情報が取り込まれるかもしれない。
(途中省略)
[0038]ユーザー署名とバイオメトリック情報が取り込まれるとき,それは,生データとして,あるいは後処理された形式で,データベースに記憶される。ユーザ認証のために,いくつかの特徴が署名から抽出されることができ,そしてこれらの特徴は,署名とバイオメトリクスの生データを記憶する代わりとして,システムに記憶されることができる。アプリケーションの要求に基づいて,登録段階において,これらのデータ記録アプローチの1つが好まれることがある。)

H 「[0044] §4.2.2 Authentication Phase
[0045] In the second phase, referred to as the “authentication” phase, a user is asked to enter their signature over the touch sensitive panel. Once the signature information and/or other user biometric information are captured, they are compared with the user data recorded and stored during the registration phase. To compare the current data entry with the stored one in the system, a similarity metric is computed. If the similarity metric is above a predefined threshold the user is authenticated. Otherwise, the user is rejected. ・・・
[0046] At the time of verification, the entered signature is compared against the data stored during the registration phase. (Recall, e.g., Block 720 of FIG. 7 .) The user is granted access to the device and/or applications or services residing on the device or accessed via the device depending on the similarity between the accepted information of a time series of finger touch samples (including centroid and non-centroid information) received via the touch sensitive element and corresponding information from the registration phase.」
(当審仮訳:[0044]§4.2.2 認証段階
[0045]“認証”段階と呼ばれる第2の段階において,ユーザは,タッチセンシティブパネル上で彼らの署名を入力するように求められる。いったん署名情報及び/または他のユーザバイオメトリック情報が獲得されると,それらは登録段階の間に記録されて保管されたユーザデータと比較される。現在のデータ入力をシステムに保管されたものと比較するために,類似性の基準値が計算される。もし類似性の基準値が予め定められた閾値以上であれば,ユーザは認証される。さもなければ,ユーザーは拒絶される。・・・
[0046]検証時,入力された署名は,登録段階の間に記憶されたデータと比較される。(例えば,図7のブロック720を想起されたい。)ユーザは,タッチセンシティブ要素によって受け取られた指タッチサンプルの時系列の受け入れられた情報(重心及び非重心情報を含む)と,登録段階からの対応する情報との間の類似性に応じて,装置及び/または装置上に存在するか,あるいは装置によってアクセスされるアプリケーションまたはサービスへのアクセスが許容される。)

I 「図4C



ここで,上記引用例1に記載されている事項について検討する。

ア 上記Dの「本発明と一致する実施形態は,装置100の1つ以上の記憶装置120(例えば,不揮発性記憶装置)に記憶され,1つ以上のプロセッサ110(例えば,汎用のマイクロプロセッサ,及び/または特定用途向けの回路)で実行されるプログラム命令を用いて実施されるかもしれない。装置100は,メモリ130(例えば,作業用RAM),1つ以上の入力装置142及び出力装置144に結合される入出力インタフェース140も含む。」旨の記載から,
装置100は,記憶装置120,プロセッサ110,作業用RAM130,入力装置142及び出力装置144を備えることが読み取れるから,
引用例1には,“プロセッサ,作業用RAM,記憶装置,入力装置及び出力装置を備える装置100”が記載されているものと認められる。

イ 上記Cの「図4Cは,マルチタッチの“つまみ”署名ジェスチャの時系列のサンプルからの情報を用いてユーザ認証する例を示している。」旨の記載,上記Gの「“登録”段階と呼ばれる第1の段階において,ユーザは装置上でアカウントを作成し,1回又はそれ以上の回数,装置のタッチセンシティブ要素上で指を用いた署名を入力する。登録段階で,ユーザ“署名”データは,署名描画の座標を含む時系列として記録される。(例えば,図4A-4D参照)。」旨の記載から,
“登録段階”において,ユーザが,装置のタッチセンシティブ要素上で,“マルチタッチのつまみ署名ジェスチャ”によって署名を入力すると,“ユーザ署名データ”が記録されることが読み取れる。ここで,上記Gの「図4Cは,ユーザの親指と2本の指が一緒に集められるマルチタッチの“つまみ”署名を示している。」旨の記載からすると,“マルチタッチのつまみ署名ジェスチャ”は,ユーザが“親指と2本の指を一緒に集める”という動作をすることと“予め決められ”ているから,引用例1の“マルチタッチのつまみ署名ジェスチャ”は,“予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャ”であるということができる。
また,装置100が,ユーザ署名データを記録する“記録手段”を備えていることは明らかである。
そうすると,引用例1には,装置100は,“登録段階において,予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャによって署名を入力すると,ユーザ署名データを記録する記録手段”を“備え”ることが記載されているものと認められる。

ウ 上記Bの「本発明と一致する実施形態は,例えばタッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素を有する装置のためのユーザ認証に関連している。」旨の記載,上記Dの「装置100は,・・・1つ以上の入力装置142及び出力装置144に結合される入出力インタフェース140も含む。・・・入力装置142は,タッチスクリーンのようなタッチセンシティブ要素,タッチ入力装置,及び/または加速度検出手段を含む。」旨の記載から,
装置100は,“タッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素”を“備え”ることが読み取れる。

エ 上記Aの「ユーザ認証のために,ユーザからタッチセンシティブ要素によって指タッチ情報が受け入れられ」る旨の記載,上記Hの「“認証”段階と呼ばれる第2の段階において,ユーザは,タッチセンシティブパネル上で彼らの署名を入力するように求められる。」旨の記載から,
“認証段階”において,ユーザがタッチセンシティブ要素上で署名を入力すると,“指タッチ情報”が“受け入れ”られることが読み取れる。
また,上記Gの「図4Cは,ユーザの親指と2本の指が一緒に集められるマルチタッチの“つまみ”署名を示している。」旨の記載から,
“マルチタッチの署名ジェスチャ”が,“複数の指を用いた”ものであることは明らかである。
また,“認証段階”において入力される署名ジェスチャは,“登録段階”において記録されたユーザ署名データに対応する署名ジェスチャであるから,上記「イ」での検討から,認証段階において入力される署名ジェスチャもまた,“予め決められた”署名ジェスチャであるといえる。

オ 上記「ウ」及び「エ」の検討から,引用例1には,装置100は,“認証段階において,ユーザがタッチセンシティブ要素上で複数の指を用いた予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャによって署名を入力すると指タッチ情報を受け入れるように構成されているタッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素”を“備え”ることが記載されているものと認められる。

カ 上記Eの「装置100は,・・・さまざまなユーザ認証機能(以下で説明される)を実行するようにプログラムされている」旨の記載,上記Dの「本発明と一致する実施形態は,装置100の1つ以上の記憶装置120(例えば,不揮発性記憶装置)に記憶され,1つ以上のプロセッサ110(例えば,汎用のマイクロプロセッサ,及び/または特定用途向けの回路)で実行されるプログラム命令を用いて実施されるかもしれない。」旨の記載から,
引用例1の装置100は,“装置100のプロセッサによって実行されてユーザ認証機能を実行するプログラム”を“備え”ることが読み取れる。
そして,上記Cの「図7は,本発明と一致する方法で,タッチセンシティブ要素からの指タッチ情報サンプルの時系列シーケンスを利用した署名認識に基づいてシステムでユーザを認証するための方法のフローチャートである。」旨の記載から,図7に示される「ユーザを認証するための方法」が,前記“ユーザ認証機能を実行するプログラム”によって実行されることは明らかである。
そうすると,上記Fの「本発明と一致する代表的な方法において,指タッチ情報(例えば,指タッチの時系列)はタッチセンシティブ表面を介してユーザから受け入れられ,・・・それから,受け入れられた指タッチ情報と,以前に(例えば,以下に述べられる登録段階の間に)ユーザによって提供されて記憶された情報との間の類似性が決定される。(図7のブロック720を参照。)」旨の記載,上記Hの「“認証”段階と呼ばれる第2の段階において,・・・署名情報及び/または他のユーザバイオメトリック情報が獲得されると,それらは登録段階の間に記録されて保管されたユーザデータと比較される。」旨の記載から,
前記“ユーザ認証機能を実行するプログラム”が,“認証段階において受け入れられた指タッチ情報と,登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報とを比較して両者の間の類似性を決定する”ことが読み取れる。ここで,前記“ユーザ認証機能を実行するプログラム”が,“認証段階において受け入れられた指タッチ情報”と,“登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報”とを比較するために,タッチセンシティブ要素から“指タッチ情報”を“受け取る”ように構成されていることは明らかである。
また,上記Fの「最後に,ユーザは,少なくとも(例えば,記憶された,または決定された閾値に関して)決定された類似性に基づいて認証される。(図7のブロック730を参照。)」旨の記載から,
前記“ユーザ認証機能を実行するプログラム”が,“決定された類似性に基づいてユーザを認証する”ことが読み取れる。
してみれば,引用例1には,装置100は,“装置100のプロセッサによって実行されてユーザ認証機能を実行するプログラムであって,タッチセンシティブ要素から指タッチ情報を受け取るように構成され,認証段階において受け取られた前記指タッチ情報と,登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報とを比較して両者の間の類似性を決定し,決定された類似性に基づいてユーザを認証するように構成されたプログラム”を“備え”ることが記載されているものと認められる。

キ 上記Fの「指タッチ情報は,少なくとも,ユーザ署名のトレースを定義する指タッチ重心座標の時系列と,重心座標に加えて,指タッチ情報(例えば,・・・マルチタッチサンプル,マルチタッチサンプルの特徴など)も含む。(図7のブロック710を参照。)」旨の記載から,
“指タッチ情報がマルチタッチサンプル,及びマルチタッチサンプルの特徴を含”むことが読み取れる。
また,上記Gの「時刻t3とt4のサンプルは,(1以上の指先が同時にタッチセンシティブ要素に触れているため)マルチタッチサンプルである。・・・図4Cは,ユーザの親指と2本の指が一緒に集められるマルチタッチの“つまみ”署名を示している。最初に取り込まれたタッチがクロスハッチングで描かれ,2番目に取り込まれたタッチがハッチングで描かれ,そして3番目に取り込まれたタッチがハッチングなしで描かれている。」旨の記載,及び上記Iで引用した図4Cの記載から,
「マルチタッチの“つまみ”署名」によって取り込まれるマルチタッチサンプルが,“複数の指のタッチされた位置を表すデータ”を含む“時系列”データであることは明らかである。
また,上記Gの「マルチタッチサンプルは,・・・分離したタッチ領域それぞれの相対的な向き,分離したタッチ領域の集合の向き,分離したタッチ領域の間の距離などのような特徴を含む」旨の記載から,
“マルチタッチサンプルは,分離したタッチ領域それぞれの相対的な向き,分離したタッチ領域の集合の向き,分離したタッチ領域の間の距離などの特徴を含む”ことが読み取れる。
そうすると,引用例1には,“指タッチ情報は,マルチタッチサンプルを含み,前記マルチタッチサンプルは,分離したタッチ領域それぞれの相対的な向き,分離したタッチ領域の集合の向き,分離したタッチ領域の間の距離などの特徴を含み,また,前記マルチタッチサンプルは,複数の指のタッチされた位置を表すデータを含む時系列データである”ことが記載されているものと認められる。

上記「ア」?「キ」の検討から,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プロセッサ,作業用RAM,記憶装置,入力装置及び出力装置を備える装置100であって,
登録段階において,予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャによって署名を入力すると,ユーザ署名データを記録する記録手段と,
認証段階において,ユーザがタッチセンシティブ要素上で複数の指を用いた予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャによって署名を入力すると,指タッチ情報を受け入れるように構成されているタッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素と,
装置100のプロセッサによって実行されてユーザ認証機能を実行するプログラムであって,タッチセンシティブ要素から指タッチ情報を受け取るように構成され,前記認証段階において受け取られた前記指タッチ情報と,前記登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報とを比較して両者の間の類似性を決定し,決定された類似性に基づいてユーザを認証するように構成されたプログラムとを備え,
前記指タッチ情報は,マルチタッチサンプルを含み,前記マルチタッチサンプルは,分離したタッチ領域それぞれの相対的な向き,分離したタッチ領域の集合の向き,分離したタッチ領域の間の距離などの特徴を含み,また,前記マルチタッチサンプルは,複数の指のタッチされた位置を表すデータを含む時系列データである,
装置100。」

(3-2)引用例2
原査定の拒絶査定で引用された,本願の優先日前に頒布された刊行物である,米国特許出願公開第2002/0089413号明細書(2002年7月11日出願公開。以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加したものである。)

J 「[0023] In position 1 , the hand 10 is held as a flat hand 10 with spread fingers 11 . On the basis of the scanning data obtained in this position, hand recognition is carried out, characteristic features being extracted from the contour 12 of the hand 10 via a segmentation operation. These features are compared with features recorded in a learning phase for the hands of different persons to be authenticated and, if there is sufficient agreement, a person is provisionally authenticated. 」
(当審仮訳:[0023]1の位置において,手10は,伸ばした指11を有する平らな手10のまま維持される。この位置で得られた走査データに基づいて,分割操作によって手10の輪郭12から特有の特徴が抽出され,手の認識が実行される。これらの特徴は,学習段階で記録された,認証されるべき様々な人々の手の特徴と比較され,そして,もし十分な一致があれば,人が仮に認証される。)

(3-3)参考文献1
本願の優先日前に頒布された刊行物である,特開2010-108074号公報(2010年5月13日出願公開。以下,「参考文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加したものである。)

K 「【0002】
生体認証はパスワードやICカードなどに基づく認証と比べて,偽造が困難であり,忘れることもないといった利点を持つ。生体認証では,登録時にユーザ(以後,登録ユーザと呼ぶ)から生体情報を取得し,そこから特徴量と呼ばれる情報を抽出して登録する。この登録情報を登録テンプレートという。認証時には,ユーザ(以後,認証ユーザと呼ぶ)の生体情報から抽出した特徴量と登録テンプレートを照合し,出力された照合スコア(ここでは認証ユーザの特徴量と登録テンプレートとの距離とする)とシステムがあらかじめ設定しておいた認証閾値とを比較することで認証を行なう。」

(3-4)参考文献2
本願の優先日前に頒布された刊行物である,国際公開第2007/108397号(2007年9月27日出願公開。以下,「参考文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加したものである。)

L 「[0006]
しかし,パスワードは盗用される恐れがあるので,パスワードの代わりに,ユーザの身体的特徴に基づいた生体情報(バイオメトリクスデータ)を用いる個人認証方法が,昨今良く使われている。バイオメトリクスデータには,人間の身体的特徴としての指紋,顔,網膜,虹彩,掌紋,静脈パターン等のような情報の他,声紋,筆跡のように長年にわたって変化しない行動属性が含まれ,多種類のものが存在する。
(途中省略)
[0008]
まず,S101において,ユーザがセンサ25に指を当てる。するとユーザの指紋画像がスキャンされて,クライアント端末1の個人識別情報生成手段9において,指紋画像からの特徴点や形状の抽出などの処理が行われ,特徴量や特徴パラメータ(以下,「ユーザ識別情報」という)の抽出が行われる。あらかじめ当該利用者から採取した指紋画像を特徴量,特徴パラメータなどで表現したテンプレート43が個人識別情報記憶手段44に記録されている。S102において,個人識別情報照合判定手段45にテンプレート43とユーザ識別情報26とが入力されて照合され,一致するかどうかの判定がなされる。個人識別情報照合判定手段45からはその認証結果が出力され,ユーザが本人であることが確認できた場合のみ,S103において,クライアント端末の記憶装置の中にあるユーザの秘密鍵19を利用することが許可され,秘密鍵記憶手段6のロックが解除されて前記秘密鍵19が読み出されることになる。」

(3-5)参考文献3
本願の優先日前に頒布された刊行物である,特開2010-268989号公報(2010年12月2日出願公開。以下,「参考文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加したものである。)

M 「【0040】
照合結果が「合致」であれば(S27,Yes),個人認証成立と判定し,その認識結果を出力し(S28),当該認証に係るセキュリティ解除を行う(29)。例えば,セキュリティが端末のロックであれば,そのロック解除を行う。このときの認識結果の出力は認識が正しく行われた旨をメッセージ表示したり,音や音声,振動等で出力するものである。照合結果が「非合致」であれば(S27,No),個人認証不成立と判定し,所定の非合致処理を行う(S30)。この所定の非合致処理は,例えば,認識が正しく行われなかった旨やリトライの指示をメッセージ表示したり,音や音声,振動等で出力するものである。音や振動の場合にはステップS28とS30では出力態様を異ならせる。」

(3-6)参考文献4
本願の優先日前に頒布された刊行物である,特開2006-121557号公報(2006年5月11日出願公開。以下,「参考文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審において付加したものである。)

N 「【0061】
ステップ412では,利用許可処理を行う。具体的には,例えばタッチパネル20に,ユーザ認証が成功した旨及び複合機10の利用を許可する旨のメッセージを表示させる等の処理を行い,複合機10の各種機能を利用するための操作をタッチパネル20によって実行可能な状態とする。」

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「装置100」は,プロセッサ,作業用RAM,記憶装置,入力装置及び出力装置を備えた“コンピュータ”であるから,引用発明の「装置100」と本件補正発明の「コンピューティング装置」とは,共に「コンピューティング装置」である点で一致する。

イ 引用発明の「タッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素」は,「マルチタッチの署名ジェスチャによって署名を入力すると指タッチ情報を受け入れる」ものであるから,引用発明の「タッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素」は,「マルチタッチの署名ジェスチャ」を感知するための“センサ”を“含む”ものであるということができるので,引用発明の「タッチセンシティブディスプレイスクリーン」が本件補正発明の「センサを含むマルチタッチセンスディスプレイ」に対応する。

ウ 引用発明の「マルチタッチの署名ジェスチャ」は,ユーザを認証,すなわち,“識別”するための“ジェスチャ”であるから,本件補正発明の「識別ジェスチャ」に相当する。
そして,本件補正発明において,識別ジェスチャが「定義済」であるとは,上記「第2 平成28年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「1 補正の内容」の「(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載」で引用した【請求項3】に「前記定義済の識別ジェスチャの前記複数の指のタッチは,少なくとも1つの手のひらのタッチを含み,前記定義済の識別ジェスチャは,手のひらと握りこぶしの間の移行のジェスチャである」と記載されていることからみて,識別ジェスチャにおける複数の指や手の動作が“予め決められている”ことを意味すると解されることから,引用発明の“予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャ”が本件補正発明の「定義済の識別ジェスチャ」に相当する。

エ 引用発明の「指タッチ情報」が含む「マルチタッチサンプル」は,「複数の指のタッチされた位置を表すデータを含む時系列データ」であるから,本件補正発明の「一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータ」に相当し,当該「マルチタッチサンプル」は,「ユーザが・・・予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャによって署名を入力」している間に受け入れられるものであるから,「予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャ」“中”に“検出”されるものといえる。
また,引用発明の「指タッチ情報」は,タッチセンシティブ要素上での“指の動き”によって入力される点で本件補正発明の「バイオキネマティック入力」に相当するものであり,また,前記「指タッチ情報」は,“ユーザ毎に固有の署名ジェスチャ”から得られる,“ユーザ毎に固有の情報”である点で,「ユーザに固有」の情報であるといえる。

オ 上記「イ」?「エ」の検討から,引用発明の「認証段階において,ユーザがタッチセンシティブ要素上で複数の指を用いた予め決められたマルチタッチの署名ジェスチャによって署名を入力すると指タッチ情報を受け入れるように構成されているタッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素」が本件補正発明の「定義済の識別ジェスチャ中,一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータを含む,前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力を受け取るように構成されているセンサを含むマルチタッチセンスディスプレイ」に相当する。

カ 引用発明の「プロセッサ」が本件補正発明の「プロセッサ」に相当し,引用発明の「ユーザ認証機能を実行するプログラム」は,ユーザを識別する“ユーザ識別機能”を有しているといえるので,引用発明の「装置100のプロセッサによって実行されてユーザ認証機能を実行するプログラム」と本件補正発明の「コンピューティング装置のプロセッサによって実行されるユーザ識別モジュール」とは,「コンピューティング装置のプロセッサによって実行されるユーザ識別機能プログラム」である点で共通する。

キ 上記「イ」の検討から,引用発明の「タッチセンシティブディスプレイスクリーンのようなタッチセンシティブ要素」は,「マルチタッチの署名ジェスチャ」を感知するための“センサ”を“含む”ものであるといえるので,引用発明の「タッチセンシティブ要素から指タッチ情報を受け取るように構成される」ことが,本件補正発明の「センサからバイオキネマティック入力を受け取るように構成される」ことに相当する。

ク 引用発明の「前記認証段階において受け取られた前記指タッチ情報と,前記登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報とを比較」すること(前者)と,本件補正発明の「前記複数の指のタッチの相対的な位置および/または前記複数のタッチの前記位置の相対的な変化率を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納されたユーザテンプレートと比較」すること(後者)とを対比すると,
前者の「前記登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報」は,“ユーザに関して確認された”情報であるといえ,当該情報は,登録段階の間に,「マルチタッチの署名ジェスチャ」によって入力された情報であって,“バイオキネマティック”によって入力された「バイオキネマティックデータ」であるといえるので,後者の「ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータ」に相当し,
前者の「前記登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報」は,登録段階の間に「1回」記録されると,その後の認証段階で,「受け取られた指タッチ情報」と比較される「基準データ」として利用される点で,後者の「ユーザテンプレート」に対応し,
前者の「指タッチ情報」に含まれるマルチタッチサンプルが含む「分離したタッチ領域それぞれの相対的な向き,分離したタッチ領域の集合の向き,分離したタッチ領域の間の距離などの特徴」が後者の「複数の指のタッチの相対的な位置」に相当し,
前者では,「前記認証段階において受け取られた前記指タッチ情報と,前記登録段階の間にユーザによって提供されて記憶された情報とを比較」する際に,「指タッチ情報」に含まれるマルチタッチサンプルが含む「分離したタッチ領域それぞれの相対的な向き,分離したタッチ領域の集合の向き,分離したタッチ領域の間の距離などの特徴」を「比較」していることは明らかである。
そうすると,前者と後者とは,
「複数の指のタッチの相対的な位置を,ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納された基準データと比較」する点で共通する。
なお,後者では,「前記複数の指のタッチの相対的な位置および/または前記複数のタッチの前記位置の相対的な変化率を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納されたユーザテンプレートと比較」すると記載されていて,「前記複数の指のタッチの相対的な位置」または「前記複数のタッチの前記位置の相対的な変化率」のいずれか一方のみを「ユーザテンプレートと比較する」構成を包含していることから,前者が,「前記複数のタッチの前記位置の相対的な変化率」を「ユーザテンプレートと比較する」構成を含んでいないとしても,後記する相違点の認定のとおり,この点は相違点とはならない。

ケ 引用発明の「決定された類似性に基づいてユーザを認証する」ことは,類似性があると決定されることであるから,本件補正発明の(比較の結果が)「一致していると決定され」ることに相当する。

上記「ア」?「ケ」の検討から,本件補正発明と引用発明とは,

「コンピューティング装置であって,
定義済の識別ジェスチャ中,一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータを含む,前記ユーザに固有のバイオキネマティック入力を受け取るように構成されているセンサを含むマルチタッチセンスディスプレイと,
前記コンピューティング装置のプロセッサによって実行されるユーザ識別機能プログラムであって,前記センサから前記バイオキネマティック入力を受け取るように構成され,前記複数の指のタッチの相対的な位置を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納された基準データと比較し,一致していると決定されるように構成される,ユーザ識別機能プログラムと
を備えるコンピューティング装置。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
“ユーザ識別機能プログラム”が,
本件補正発明では,「ユーザ識別モジュール」の構成であるのに対して,引用発明では,プログラムがモジュールの構成であるとの特定はなされていない点。

[相違点2]
複数の指のタッチの相対的な位置と比較される“基準データ”が,
本件補正発明では,「ユーザテンプレート」であるのに対して,引用発明では,「ユーザテンプレート」であるとは特定されていない点。

[相違点3]
複数の指のタッチの相対的な位置と基準データとの比較の結果,一致していると決定された場合に,本件補正発明では,「前記ユーザが成功裏に識別されたという表示を前記ディスプレイ上に表示するように構成され」ているのに対して,引用発明は,そのような表示をすることについて特定されていない点。

[相違点4]
本件補正発明では,「前記格納されたユーザテンプレートは,前記ユーザに関連する前のバイオキネマティックデータから抽出されたユーザ識別特徴から生成されたものである」と特定されているのに対して,引用発明は,そのように特定されていない点。

[相違点5]
“ユーザ識別特徴”に関して,
本件補正発明では,「ユーザ識別特徴は少なくとも前記ユーザの手の輪郭を含む」と特定されているのに対して,引用発明は,そのように特定されていない点。

(5)当審の判断
上記各相違点について検討する。

ア 相違点1について
プログラムをモジュールで構成することは,当該技術分野における周知技術であるから,引用発明において,ユーザ識別機能プログラムを適宜モジュールで構成してユーザ識別モジュールとすること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2及び相違点4について
ユーザの生体情報を用いてユーザを認証する生体認証システムにおいて,登録時にユーザから生体情報を取得し,そこから特徴量と呼ばれる情報を抽出してテンプレートとして登録しておき,認証時には,ユーザの生体情報から抽出した特徴量とテンプレートとを照合して認証を行なうことは,上記「(3-3)K」に「生体認証では,登録時にユーザ(以後,登録ユーザと呼ぶ)から生体情報を取得し,そこから特徴量と呼ばれる情報を抽出して登録する。この登録情報を登録テンプレートという。認証時には,ユーザ(以後,認証ユーザと呼ぶ)の生体情報から抽出した特徴量と登録テンプレートを照合し,出力された照合スコア(ここでは認証ユーザの特徴量と登録テンプレートとの距離とする)とシステムがあらかじめ設定しておいた認証閾値とを比較することで認証を行なう。」と記載され,上記「(3-4)L」に「ユーザの身体的特徴に基づいた生体情報(バイオメトリクスデータ)を用いる個人認証方法が,昨今良く使われている。・・・まず,S101において,ユーザがセンサ25に指を当てる。するとユーザの指紋画像がスキャンされて,クライアント端末1の個人識別情報生成手段9において,指紋画像からの特徴点や形状の抽出などの処理が行われ,特徴量や特徴パラメータ(以下,「ユーザ識別情報」という)の抽出が行われる。あらかじめ当該利用者から採取した指紋画像を特徴量,特徴パラメータなどで表現したテンプレート43が個人識別情報記憶手段44に記録されている。S102において,個人識別情報照合判定手段45にテンプレート43とユーザ識別情報26とが入力されて照合され,一致するかどうかの判定がなされる。」と記載されているように,本願の優先日前に既に周知技術であったものと認められる。
そして,引用例1には,上記「(3-1)G」に「ユーザ認証のために,いくつかの特徴が署名から抽出されることができ,そしてこれらの特徴は,署名とバイオメトリクスの生データを記憶する代わりとして,システムに記憶されることができる。」旨が記載されており,入力された署名データの生データを記憶する代わりに特徴を抽出して記憶することも示唆されていることから,引用発明に上記周知技術を適用して,複数の指のタッチの相対的な位置と比較される基準データをユーザテンプレートとすること,また,当該ユーザテンプレートを,ユーザに関連する前のバイオキネマティックデータから抽出されたユーザ識別特徴から生成されたものとすること,すなわち,上記相違点2及び相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
ユーザ認証が成功したことを当該ユーザに通知するために所定の表示を行うことは,例えば上記「(3-5)M」に「照合結果が「合致」であれば(S27,Yes),個人認証成立と判定し,その認識結果を出力し(S28),当該認証に係るセキュリティ解除を行う(29)。例えば,セキュリティが端末のロックであれば,そのロック解除を行う。このときの認識結果の出力は認識が正しく行われた旨をメッセージ表示したり,音や音声,振動等で出力するものである。」と記載され,上記「(3-6)N」に「タッチパネル20に,ユーザ認証が成功した旨及び複合機10の利用を許可する旨のメッセージを表示させる等の処理を行い」と記載されているように,本願の優先日前に既に周知技術であったものと認められる。
そして,「決定された類似性に基づいてユーザを認証する」ように構成される引用発明に上記周知技術を適用することに格別の困難性は認められないことから,ユーザが認証された場合,前記ユーザが成功裏に識別されたという表示をディスプレイ上に表示するように構成すること,すなわち,上記相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

エ 相違点5について
上記「(3-1)G」の「上記から理解されるように,指タッチサンプルの重心のx,y座標だけでなく,ユーザの指先(そして多分,指,手,手首など)の身体的特徴に関連する追加の情報が取り込まれるかもしれない。」旨の記載によれば,引用例1には,指タッチサンプルの重心のx,y座標だけでなく,ユーザの指先以外の“身体的特徴”も併せてユーザの認証に利用することが示唆されており,また,上記「(3-2)J」に「1の位置において,手10は,伸ばした指11を有する平らな手10のまま維持される。この位置で得られた走査データに基づいて,分割操作によって手10の輪郭12から特有の特徴が抽出され,手の認識が実行される。これらの特徴は,学習段階で記録された,認証されるべき様々な人々の手の特徴と比較され,そして,もし十分な一致があれば,人が仮に認証される。」旨が記載されているように,ユーザの手の輪郭を用いてユーザ認証を行うことは,本願の優先日前に既に周知技術であったものと認められることから,引用発明において,認証に利用するユーザの身体的特徴として,例えば上記「(3-2)J」に記載された手の輪郭の情報を用いることにより,ユーザ識別特徴が少なくとも前記ユーザの手の輪郭を含むように構成すること,すなわち,上記相違点5に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

オ そして,本件補正発明の作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

カ よって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)本件補正についてのむすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年9月12日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成28年3月1日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本願発明」という。)

「 【請求項1】
コンピューティング装置であって,
定義済の識別ジェスチャ中,一連の連続する時間間隔のそれぞれで,ユーザの複数の指によって行われる対応する複数の指のタッチのそれぞれの検出された位置を表すデータを含むバイオキネマティック入力を受け取るように構成されているセンサを含むマルチタッチセンスディスプレイと,
前記コンピューティング装置のプロセッサによって実行されるユーザ識別モジュールであって,前記センサから前記バイオキネマティック入力を受け取るように構成され,前記複数の指のタッチの相対的な位置および/または前記複数のタッチの前記位置の相対的な変化率を,前記ユーザに関して確認されたバイオキネマティックデータの格納されたユーザテンプレートと比較し,一致していると決定された場合,前記ユーザが成功裏に識別されたという表示を前記ディスプレイ上に表示するようにさらに構成され,前記格納されたユーザテンプレートは前記ユーザに関連する前のバイオキネマティックデータから抽出されたユーザ識別特徴から生成され,前記ユーザ識別特徴は少なくとも前記ユーザの手の輪郭を含む,ユーザ識別モジュールと
を備えることを特徴とするコンピューティング装置。」

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2,及び参考文献1?4には,上記「第2 平成28年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「[理由]」の「2 補正の適否」の「(3)引用例」に記載したとおりの事項が記載されている。

3 対比・判断
本願発明は,上記「第2 平成28年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「[理由]」で検討した本件補正発明から,「バイオキネマティック入力」に関する「前記ユーザに固有の」との限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,更に構成を限定したものに相当する本件補正発明が上記「第2 平成28年9月12日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「[理由]」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-17 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-05 
出願番号 特願2013-547624(P2013-547624)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 誠  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 須田 勝巳
佐久 聖子
発明の名称 バイオキネマティック入力を用いるユーザ識別  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
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