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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G05D 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 G05D |
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管理番号 | 1336584 |
審判番号 | 不服2016-16588 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-07 |
確定日 | 2018-02-13 |
事件の表示 | 特願2015-500107「搬送台車、搬送台車の駆動制御方法、及び搬送台車の駆動制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月21日国際公開,WO2014/125719,請求項の数(11)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 経緯 本願は,平成25年12月13日(優先権主張平成25年2月15日)を国際出願日とする特許出願であって,平成28年2月22日付けの拒絶理由通知に応答して,平成28年4月1日に意見書,手続補正書が提出されたが,平成28年8月12日付けで拒絶査定がなされたものであり,平成28年11月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に,手続補正書が提出されたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年11月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1-13の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。) 「 【請求項1】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成する指令位置生成部と、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出する許容値算出部と、 前記指令位置が前記許容値算出部により算出された前記所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定部と、 前記許容値判定部により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を変更する指令位置変更部と、を備え、 前記指令位置変更部は、前記指令位置を前記所定の許容値または該所定の許容値を超えない範囲内の所定位置に変更することを特徴とする搬送台車。 【請求項2】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成する指令位置生成部と、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出する許容値算出部と、 前記指令位置が前記許容値算出部により算出された前記所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定部と、 前記許容値判定部により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を変更する指令位置変更部と、を備え、 前記指令位置変更部は、前記指令位置を前記現在位置よりも進めるように変更することを特徴とする搬送台車。 【請求項3】 前記指令位置変更部は、前記指令位置を前記所定の許容値または該所定の許容値を超えない範囲内の所定位置に変更することを特徴とする請求項2に記載の搬送台車。 【請求項4】 前記指令位置変更部は、前記指令位置を、前記現在位置と指令速度で進む量とを加え許容誤差を差し引いて算出される値に変更することを特徴とする請求項1または請求項3に記載の搬送台車。 【請求項5】 現在位置を検出する位置検出部を備え、 前記許容値算出部は、前記位置検出部から出力された前記現在位置に基づいて前記所定の許容値を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の搬送台車。 【請求項6】 前記指令位置変更部は、前記指令位置を、前記現在位置と指令速度で進む量とを加えて算出される値に変更することを特徴とする請求項5に記載の搬送台車。 【請求項7】 前記指令位置生成部は、所定の周期で前記指令位置を生成し、 前記許容値算出部は、前記指令位置の生成と同期して前記現在位置を取得することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送台車。 【請求項8】 前記所定の許容値は、前記所定の周期の1周期の間に移動する量を含んで設定されることを特徴とする請求項7に記載の搬送台車。 【請求項9】 前記指令位置変更部は、前記指令位置生成部が指令位置を生成するタイミングで前記指令位置を変更することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の搬送台車。 【請求項10】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成し、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出し、 前記指令位置が前記所定の許容値を超えたか否かを判定し、 前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を前記所定の許容値または該所定の許容値を超えない範囲内の所定位置に変更することを特徴とする搬送台車の駆動制御方法。 【請求項11】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成する指令位置生成処理と、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出する許容値算出処理と、 前記指令位置が前記許容値算出処理により算出された前記所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定処理と、 前記許容値判定処理により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を前記所定の許容値または該所定の許容値を超えない範囲内の所定位置に変更する指令位置変更処理と、を実行させることを特徴とする搬送台車の駆動制御プログラム。 【請求項12】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成し、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出し、 前記指令位置が前記所定の許容値を超えたか否かを判定し、 前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を前記現在位置よりも進めるように変更することを特徴とする搬送台車の駆動制御方法。 【請求項13】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成する指令位置生成処理と、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出する許容値算出処理と、 前記指令位置が前記許容値算出処理により算出された前記所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定処理と、 前記許容値判定処理により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を前記現在位置よりも進めるように変更する指令位置変更処理と、を実行させることを特徴とする搬送台車の駆動制御プログラム。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の平成28年4月1日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-11の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成する指令位置生成部と、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出する許容値算出部と、 前記指令位置が前記許容値算出部により算出された前記所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定部と、 前記許容値判定部により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を変更する指令位置変更部と、を備えることを特徴とする搬送台車。 【請求項2】 前記指令位置変更部は、前記指令位置を進めるように変更することを特徴とする請求項1に記載の搬送台車。 【請求項3】 現在位置を検出する位置検出部を備え、 前記許容値算出部は、前記位置検出部から出力された前記現在位置に基づいて前記所定の許容値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送台車。 【請求項4】 前記指令位置変更部は、前記指令位置を、前記現在位置と指令速度で進む量とを加えて算出される値に変更することを特徴とする請求項3に記載の搬送台車。 【請求項5】 前記指令位置変更部は、前記指令位置が前記所定の許容値または該所定の許容値を超えない範囲内の所定位置に変更することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の搬送台車。 【請求項6】 前記指令位置変更部は、前記指令位置を、前記現在位置と指令速度で進む量とを加え許容誤差を差し引いて算出される値に変更することを特徴とする請求項5に記載の搬送台車。 【請求項7】 前記指令位置生成部は、所定の周期で前記指令位置を生成し、 前記許容値算出部は、前記指令位置の生成と同期して前記現在位置を取得することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送台車。 【請求項8】 前記所定の許容値は、前記所定の周期の1周期の間に移動する量を含んで設定されることを特徴とする請求項7に記載の搬送台車。 【請求項9】 前記指令位置変更部は、前記指令位置生成部が指令位置を生成するタイミングで前記指令位置を変更することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の搬送台車。 【請求項10】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成し、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出し、 前記指令位置が前記所定の許容値を超えたか否かを判定し、 前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を変更することを特徴とする搬送台車の駆動制御方法。 【請求項11】 サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置を生成する指令位置生成処理と、 現在位置に基づいて所定の許容値を算出する許容値算出処理と、 前記指令位置が前記許容値算出処理により算出された前記所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定処理と、 前記許容値判定処理により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に、前記指令位置を変更する指令位置変更処理と、を実行させることを特徴とする搬送台車の駆動制御プログラム。」 2 補正の適否(特許法第17条の2第5項について) 本件補正により特許請求の範囲に記載した請求項の数は,補正前の11から補正後の13に増加していることが明らかである。 ところで,拒絶査定不服審判の請求と同時にする補正は,特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とするものに限られ,その目的に該当する限り,請求項の数は減少こそすれ,増加することは通常考えにくい。 ただし,同法同条同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,結果として外形上請求項の数を増加させるものになるとしても,その補正の内容が, i)複数の先行する請求項をまとめて引用した形式を改め,結果的に引用請求項数が減少することにより限定的減縮を果たしたとする補正や, ii)補正前に択一的な発明特定事項の記載とされた一の請求項を,その択一的な発明特定事項をそれぞれ限定して複数の請求項に変更することにより限定的減縮を果たしたとする補正, のいずれかに該当する場合には,適法とされる余地が考えられるため,本件補正の前後でどのような内容上の変化が発生したのかについて検討する。 補正前の本件の特許請求の範囲には,請求項1-9に,「搬送台車」を対象とした発明が記載され,同じく請求項10に,「搬送台車の駆動制御方法」を対象とした発明が記載され,同じく請求項11に,「搬送台車の駆動制御プログラム」を対象とした発明が記載されている。 本件補正後の特許請求の範囲には,請求項1-9に,「搬送台車」を対象とした発明が記載され,同じく請求項10及び12に,「搬送台車の駆動制御方法」を対象とした発明が記載され,同じく請求項11及び13に,「搬送台車の駆動制御プログラム」を対象とした発明が記載されている。 そうすると,本件補正により「搬送台車の駆動制御方法」を対象とした発明と,「搬送台車の駆動制御プログラム」を対象とした発明に対して請求項数の外形的増加が発生していると認められるので,当該箇所の補正の内容が,上記i),ii)に該当するか否かについて検討を進める。 ア 「搬送台車の駆動制御方法」を対象とした発明の補正について 「搬送台車の駆動制御方法」を対象とした発明は,補正前の請求項10であり,当該請求項10は先行する請求項を引用しない独立した請求項であるから,上記i)には該当しない。 また,補正前の請求項10は上記1.(2)に記載したとおりであり,択一的な発明特定事項の記載もされていないことから,上記ii)にも該当しない。 イ 「搬送台車の駆動制御プログラム」を対象とした発明の補正について 「搬送台車の駆動制御プログラム」を対象とした発明は,補正前の請求項11であり,当該請求項11は先行する請求項を引用しない独立した請求項であるから,上記i)には該当しない。 また,補正前の請求項11は上記1.(2)に記載したとおりであり,択一的な発明特定事項の記載もされていないことから,上記ii)にも該当しない。 そうすると,本件補正は,少なくとも補正前の請求項10に係る発明に対して本件補正により補正後の請求項10及び12とする事項,補正前の請求項11に係る発明に対して本件補正により補正後の請求項11及び13とする事項を含む補正であり,この双方は特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでないと認められる。 3 補正の却下の決定についてのまとめ 以上のことから,本件補正は,特許法第17条の2第5項各号の規定のいずれにも適合するものではないので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 原査定の概要 本願請求項1-11に係る発明は,引用文献1(国際公開第2012/111193号)及び引用文献2(特開2001-56711号公報)に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 本願発明 本件補正は,上記「第2」のとおり,却下された。 したがって,本願請求項1-11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は,平成28年4月1日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明である。 本願発明1-11は,上記「第1 1.(2)」に記載したとおりのものである。 第5 引用文献,引用発明等 1.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には,以下の記載がある(下線は当審付与。)。 ア 「[0025] 図2に、行先P1の発生までのブロック図を示す。上位コントローラ4は、不定期に行先P0を搬送台車2に通信し、搬送台車2は例えば1サイクル毎に現在位置と現在速度などの状態を上位コントローラ4へ報告する。通信ユニット6は他の搬送台車2との間で、現在位置,現在速度,行先などのデータを交換し、地上設備34などとの間で、物品の受け渡し、走行規制などに関するインターロック等の信号を交換する。・・・」 イ 「[0026] 図3の44は加減速制御ユニットで、加速度制限ユニット46から最大加速度及び最大減速度を制約条件として入力され、速度制限ユニット48から最大速度を制約条件として入力される。加減速制御ユニット44は、前回出力した中間目標位置P2と行先P1との誤差とにより、次のサイクルでの中間目標位置P2を出力する。・・・」 ウ「[0027] 加減速制御ユニット44は、最大加速度,最大減速度,最大速度などの制約条件を記憶する。これらの制約条件は加速度制限ユニット46及び速度制限ユニット48から入力され、かつ可変である。加速度制限ユニット46は電源コントローラ26からの信号により消費電力を制限し、これは最大加速度を制限することである。また応力センサからの信号により最大加速度と最大減速度とを制限し、振動センサからの信号により例えば最大加速度の変化分と最大減速度の変化分とを制限する。速度制限ユニット48は例えば上位コントローラ4からの指令等により、最大速度を変更する。即ち搬送量が少なく、高速で搬送する必要がない場合には最大速度を小さくする。これ以外に汚染を避けるべき物品の付近で最大速度を小さくする、また自動倉庫の両端付近では搬送台車2が巻き上げる風が棚内の物品に逆流しやすいので最大速度を小さく制限する。さらに軌道の状態により最大速度、最大加速度、最大減速度を制限する。これ以外に他の搬送台車との相対速度により、最大速度を制限する。なお同じ事項に異なる制約条件が複数入力された場合、最も厳しい制約条件が有効となる。」 エ 「[0031] ローパスフィルタ52からのサーボ位置指令P4を誤差増幅器54へ入力する。誤差増幅器54への他方の入力は位置センサ12で求めた走行方向位置で、サーボ位置指令P4と搬送台車2の実際の位置との誤差を解消するように、サーボ系10を動作させて図示しない走行用のサーボモータを制御する。」 そうすると,引用文献1には,次の各発明(以下「引用発明1」,「引用発明2」,「引用発明3」という。)が記載されている [引用発明1] 「サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための中間目標位置を生成する加減速制御ユニット中の中間目標位置を生成するものと, 前回出力した中間目標位置と行先との誤差に基づいて所定の中間目標位置を算出するものを備える搬送台車。」 [引用発明2] 「サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための中間目標位置を生成し, 前回出力した中間目標位置と行先との誤差に基づいて所定の中間目標位置を算出する手段を備える搬送台車の駆動制御方法。」 [引用発明3] 「サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための中間目標位置を生成する加減速制御ユニット中の中間目標位置を生成する処理と, 前回出力した中間目標位置と行先との誤差に基づいて所定の位置を算出する加減速制御ユニット中の処理を備える搬送台車の駆動制御プログラム。」 2.引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には,以下の記載がある(下線は当審付与。)。 ア 「【0022】・・・この実施の形態では、前記サーボモータ23にトルク制限電流が供給されたときは、前記指令位置設定部43から指令位置制御部42を介して前記サーボモータ駆動部41へ供給される位置指令値の更新が停止される。」 イ 「【0033】たとえば、サーボモータ23の速度曲線を示す図4のF点で製品がつまったためサーボモータ23が回転できなくなると、図6の様に出力トルクが大きくなる。サーボモータ23が指令通り回転しないため、出力トルクが大きくなる。やがて、図5のようにH点で、トルクリミットにかかる。 【0034】トルクリミットにかかっても、従来技術では、位置指令は関係なく進められるが、この発明では位置指令値の分配は一時停止される。 【0035】やがて、図4のG点で、詰まっていた製品が外れ、サーボモータ23が回転できる様になると、従来技術では、図4のずれDの位置誤差があるため、図4に点線で示すように、一時的に高速で動いてしまう。 【0036】しかし、この発明では位置指令を進ませないため、ずれDがない。そのため、高速でサーボモータが回転することなく、通常の制御に復帰する事ができる。」 ウ 「【0043】一方、この可動金型17が固定金型13に向けて移動しているときに例えば製品が両者の間に挟まってしまった場合には、可動金型17の移動が停止してしまう。可動金型17と固定金型13との間にまだ大きな距離が残っている場合には、サーボモータ23に供給される速度指令も大きく供給電流も大きいので、図5に示すようにH時点で大きなトルクが発生する。このトルクが図6のリミット値を超えていると、トルクリミットがオンとなり、ステップS6からステップS7へ移行せずに処理は終了される。 【0044】この時、図4のFの時点ではサーボモータ23がロックされて、速度がゼロとなり、位置指令値は破線で示す従来とは異なり、その時点Fで位置司令値の更新は行われず、停止される。モータトルクも図5に示したように一定に保持され、過大電流が流れることはなく、その時の電流が一定時間保持される。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「中間目標位置」,「加減速制御ユニット中の中間目標位置を生成するもの」,「誤差」,「加減速制御ユニット中の誤差を算出するもの」は,本願発明1の「指令位置」,「指令位置生成部」,「許容値」,「許容値算出部」にそれぞれ相当する。 したがって,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置(中間目標位置)を生成する指令位置生成部(加減速制御ユニット中の中間目標位置を生成するもの)と, 現在位置に基づいて所定の許容値(誤差)を算出する許容値算出部(加減速制御ユニット中の誤差を算出するもの)を備える搬送台車。」(括弧内が引用発明1の用語。) [相違点] 本願発明1では,指令位置が許容値算出部により算出された所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定部と,前記許容値判定部により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に,前記指令位置を変更する指令位置変更部を備えているのに対して,引用発明1では,許容値(誤差)を超えたか否かを判定しておらず,指令位置変更部に相当するものを備えていない点。 (2) 相違点についての判断 ア 相違点について検討する。 引用文献2には,「指令位置(位置指令値)が許容値算出部(指令位置設定部)により算出された所定の許容値(リミット値)を超えたか否かを判定する許容値判定部(トルクリミット)と,前記許容値判定部(トルクリミット)により前記指令位置(位置指令値)が前記所定の許容値(リミット値)を超えたと判定された場合に,前記指令位置(位置指令値)を変更する指令位置変更部(指令位置設定部中の位置指令値の更新を止めるもの)を備えている」電動射出成形機の位置制御装置が記載されている(括弧内は引用文献2中の用語)。 引用発明1は「搬送台車」であり,引用文献2は「電動射出成形機」であるから,技術分野が相違する。また,引用文献2における,電動射出成形機における製品が可動金型17と固定金型13の間に挟まってしまった場合に,可動金型17の移動が停止して位置指令値(指令位置)がリミット値(許容値)を超えることから,位置指令値の更新を止めるという制御手段を,引用発明1における,搬送台車という,全く異なるものの位置の制御手段に適用するという動機がない。 イ まとめ したがって,本願発明1は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2-9について 本願発明2-9は,本願発明1を引用する発明であり,本願発明1と同一の特定事項を含むものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 3.本願発明10について (1) 対比 本願発明10と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「中間目標位置」,「誤差」,「加減速制御ユニット中の誤差を算出するもの」は,本願発明10の「指令位置」,「許容値」,「許容値を算出」するものにそれぞれ相当する。 したがって,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置(中間目標位置)を生成し, 現在位置に基づいて所定の許容値(誤差)を算出するもの(加減速制御ユニット中の誤差を算出するもの)を備える搬送台車の駆動制御方法。」(括弧内が引用発明2の用語。) [相違点] 本願発明10では,指令位置が所定の許容値を超えたか否かを判定し,前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に,前記指令位置を変更するのに対して,引用発明2では,許容値(誤差)を超えたか否かを判定していないことに加えて,指令位置変更を行うとされていない点。 (2) 相違点についての判断 ア 相違点について検討する。 引用文献2には,「指令位置(位置指令値)が所定の許容値(リミット値)を超えたか否かを判定し,前記指令位置(位置指令値)が前記所定の許容値(リミット値)を超えたと判定された場合に,前記指令位置(位置指令値)を変更する電動射出成形機の位置制御方法が記載されている(括弧内は引用文献2中の用語)。 引用発明2は「搬送台車」であり,引用文献2は「電動射出成形機」であるから,技術分野が相違する。また,引用文献2における,電動射出成形機における製品が可動金型17と固定金型13の間に挟まってしまった場合に,可動金型17の移動が停止して位置指令値(指令位置)がリミット値(許容値)を超えることから,位置指令値の更新を止めるという制御手段を,引用発明2における,搬送台車という,全く異なるものの位置の制御手段に適用するという動機がない。 イ まとめ したがって,本願発明10は,当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 4.本願発明11について (1) 対比 本願発明11と引用発明3とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明3の「中間目標位置」,「加減速制御ユニット中の中間目標位置を生成する手段」,「誤差」,「加減速制御ユニット中の誤差を算出する手段」は,本願発明1の「指令位置」,「指令位置生成処理」,「許容値」,「許容値算出処理」にそれぞれ相当する。 したがって,両者の一致点,相違点は以下のとおりであるといえる。 [一致点] 「サーボモータを駆動して目標位置まで移動するための指令位置(中間目標位置)を生成する指令位置生成処理(加減速制御ユニット中の中間目標位置を生成する手段)と, 現在位置に基づいて所定の許容値(誤差)を算出する許容値算出処理(加減速制御ユニット中の誤差を算出する手段)を備える搬送台車の駆動制御プログラム。」(括弧内が引用発明3の用語。) [相違点] 本願発明11では,指令位置が許容値算出処理により算出された所定の許容値を超えたか否かを判定する許容値判定処理と,前記許容値判定処理により前記指令位置が前記所定の許容値を超えたと判定された場合に,前記指令位置を変更する指令位置変更処理を備えているのに対して,引用発明3では,許容値(誤差)を超えたか否かを判定していない上,指令位置変更処理を行うとしていない点。 (2) 相違点についての判断 ア 相違点について検討する。 引用文献2には,「指令位置(位置指令値)が許容値算出処理(指令位置設定部での処理)により算出された所定の許容値(リミット値)を超えたか否かを判定する許容値判定処理(トルクリミットでの処理)と,前記許容値判定処理(トルクリミットでの処理)により前記指令位置(位置指令値)が前記所定の許容値(リミット値)を超えたと判定された場合に,前記指令位置(位置指令値)を変更する指令位置変更処理(指令位置設定部中の位置指令値の更新を止める処理)を備えている」電動射出成形機の位置制御するものが記載されている(括弧内は引用文献2中の用語)。 引用発明3は「搬送台車」であり,引用文献2は「電動射出成形機」であるから,技術分野が相違する。また,引用文献2における,電動射出成形機における製品が可動金型17と固定金型13の間に挟まってしまった場合に,可動金型17の移動が停止して位置指令値(指令位置)がリミット値(許容値)を超えることから,位置指令値の更新を止めるという制御手段を,引用発明3における,搬送台車という,全く異なるものの位置の制御手段に適用するという動機がない。 イ まとめ したがって,本願発明11は,当業者が引用発明3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり,本願発明1-11は,当業者が引用発明1-3及び引用文献2記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-01-31 |
出願番号 | 特願2015-500107(P2015-500107) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G05D)
P 1 8・ 561- WY (G05D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 後藤 健志 |
特許庁審判長 |
西村 泰英 |
特許庁審判官 |
近藤 裕之 平岩 正一 |
発明の名称 | 搬送台車、搬送台車の駆動制御方法、及び搬送台車の駆動制御プログラム |
代理人 | 西 和哉 |