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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1336597
審判番号 不服2017-1738  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-06 
確定日 2018-02-13 
事件の表示 特願2012- 88397「半導体素子、半導体基板、感放射線性樹脂組成物、保護膜および表示素子」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-219173、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年4月9日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 1月 9日 審査請求
平成28年 1月18日 拒絶理由通知
平成28年 2月12日 意見書・手続補正
平成28年 7月12日 拒絶理由通知(最後)
平成28年 9月 1日 意見書
平成29年 1月19日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 2月 6日 審判請求・手続補正
平成29年 4月24日 上申書
平成29年 9月29日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成29年10月26日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は,当審補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
基板と,
前記基板上に配置された複数のゲート配線と複数のデータ配線とを備え,
前記複数のゲート配線と前記複数のデータ配線との交差部分に構成されるマトリクス状の画素内に,半導体層と,前記半導体層の第1面に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する半導体素子が配置されており,
前記半導体層は,インジウム(In),亜鉛(Zn)および錫(Sn)のうちの少なくとも1種を含んで構成された酸化物を用いて形成されたものであり,
前記半導体層と,前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に保護膜を有し,
前記保護膜は, 樹脂と, キノンジアジド化合物およびインデンカルボン酸
とを含むことを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記樹脂は,カルボキシル基を有するアクリル樹脂,ポリイミド樹脂,ポリシロキサンおよびノボラック樹脂から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記保護膜にはスルーホールが設けられ,
前記半導体層の第1面と前記電極との接続は,該スルーホールを介して行われるよう構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記半導体層の第2面にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と,
前記第1面に設けられたソース電極およびドレイン電極,
とを有してボトムゲート型半導体素子を構成することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記半導体層は,酸化亜鉛(ZnO),酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO),酸化亜鉛錫(ZTO)および酸化インジウム亜鉛(IZO)のうちの少なくとも1種を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の半導体基板。」

第3 原査定の理由の概要
(当審注:下記「請求項6ないし10」は,それぞれ「本願発明1ないし5」に対応する。左の請求項以外に係る部分は省略した。下記第4において同じ。)
理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項6,7,10
・引用文献1
・備考
引用文献1([請求項1],[0026]-[0036],[0193]参照。)には,
酸化物半導体からなる半導体層11と,
半導体層11の第1面に設けられた半導体層接触絶縁層からなるゲート絶縁層14と,
半導体層11の第1面に,ゲート絶縁層14を介して設けられたゲート電極13Gと,
を有する薄膜トランジスタであって,
半導体層接触絶縁層が,感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成された感光性ポリイミド絶縁層であり,
感光性ポリイミド樹脂組成物が,感光性成分としてナフトキノンジアジド化合物を添加したアルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド樹脂組成物であり,
酸化物半導体として,酸化亜鉛(ZnO),InGaZnO系,InZnO系などを用いる薄膜トランジスタ,
の発明が記載されている。
ここで,引用文献1に記載された発明の「半導体層11の第1面に,ゲート絶縁層14を介して設けられたゲート電極13G」は,請求項1,6に係る発明の「半導体層の第1面に設けられた電極」に相当する。
また,引用文献1に記載された発明の「半導体層接触絶縁層からなるゲート絶縁層14」は,半導体層11とゲート電極13Gとの間に設けられるから,請求項6に係る発明の「前記半導体層と前記電極との間」に設けられた「保護膜」に相当する。
さらに,引用文献1([0029],図3参照。)には,薄膜トランジスタとして,半導体層接触絶縁層をゲート絶縁層に用いたトップゲート-トップコンタクト型の薄膜トランジスタ,および,半導体層接触絶縁層をゲート絶縁層に用いたボトムゲート-トップコンタクト型の薄膜トランジスタが記載されている。
また,引用文献1([0271]参照。)には,薄膜トランジスタの用途として,液晶表示ディスプレイ装置,有機ELディスプレイ装置等のディスプレイ装置が記載されている。
なお,出願人は,意見書において,本願発明は「半導体層の作製⇒本発明の保護膜形成⇒ソース電極,ドレイン電極作製」の順となっているのに対し,引用文献1では,「半導体層作製⇒ソース電極,ドレイン電極作製⇒酸化物薄膜⇒全体を覆う保護膜の作製」となっており,この製造方法では,半導体層と電極との間に保護膜が配置されることがない旨主張する。
しかしながら,少なくとも請求項6の記載からは,半導体層と保護膜の間に電極が設けられた構造が把握できるのみであるから,請求項1,6に係る発明は,保護膜の上面に半導体層が形成された構造や,保護膜がパッシベーション膜だけでなくゲート絶縁膜である場合や,電極がソース電極,ドレイン電極だけでなくゲート電極である場合をも,発明の技術的範囲に含むと認められる。
よって,出願人の主張は当を得ていない。
●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項7
・引用文献1-4
・備考
引用文献2([0145]参照。)に記載されているように,感光剤にキノンジアジド化合物を有する有機絶縁膜において,ベースポリマーとしてアクリル樹脂を適用することは周知技術である。
引用文献3([要約]参照。)に記載されているように,感光剤にキノンジアジド化合物を有する有機絶縁膜において,ベースポリマーとしてポリシロキサンを適用することは周知技術である。
引用文献4([0069]参照。)に記載されているように,感光剤にキノンジアジド化合物を有する有機絶縁膜において,ベースポリマーとしてノボラック樹脂を適用することは周知技術である。
・請求項8-10
・引用文献1-5
・備考
引用文献1([0029],図2(b),図3(b)参照。)には,ゲート絶縁層14およびパッシベーション層15に,上記半導体層接触絶縁層を適用した薄膜トランジスタが記載されている。
そして,引用文献5(図4参照。)には,ボトムゲート-トップコンタクト型の薄膜トランジスタにおいて,半導体層を覆うパッシベーション膜にスルーホールを設け,半導体層に接続されたソース電極及びドレイン電極を設けた構造が記載されているから,引用文献1に記載された発明において,パッシベーション層15にスルーホールを設けてソース電極及びドレイン電極を設け,ソース電極及びドレイン電極が設けられる半導体層11の上面を第1面とし,ゲート電極が設けられる半導体層11の下面を第2面とすることは,当業者が容易になし得たことである。
<引用文献等一覧>
引用文献1 特開2011-222788号公報
引用文献2 特開平09-152625号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3 特開2007-193318号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4 特開2007-134687号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5 特開2000-349301号公報

第4 当審拒絶理由の概要
理由1 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項6ないし10について
本願発明の課題は,酸化物半導体を用いた半導体の場合,紫外線領域等に吸収を有することがあり,外部からの光の影響により特性が悪化してしまうという問題に関するもの(本願明細書段落0008-0010)であり,これに対する課題解決手段は,基板の一方の面に設けられた半導体素子の「半導体層と,ソース電極及びドレイン電極との間に」キノンジアジド化合物を含む保護膜を用いることで,「液晶表示素子等に求められる透明性と遮光性のバランスを好適に制御する」というもので,具体的には,キノンジアジド化合物が,露光されると分子構造が変化しインデンカルボン酸になるという特性を利用し,保護膜を形成後,透明性に不具合が生じた場合,保護膜に光を照射するだけで透明性の調整を行うことが可能であるというもので,上記透明性と遮光性のバランスを考えれば,保護膜には,樹脂とともに,キノンジアジド化合物およびインデンカルボン酸が含まれることになるというもの(本願明細書段落0040,0041,0057-0059)である。 しかし,請求項6には「樹脂と,キノンジアジド化合物とを含む感放射線性樹脂組成物を用いて製造されたものであり,前記樹脂と,前記キノンジアジド化合物およびインデンカルボン酸のうちの少なくとも一方とを含む」と記載されているから,最終物質としてキノンジアジド化合物のみ又はインデンカルボン酸のみを含むものが記載されており,これでは透光性と遮光性のバランスが図られないから,請求項6に係る発明において前記課題解決手段が反映されていない。
また,請求項6には「前記半導体層と前記電極との間に保護膜を有し」とだけ記載されており,半導体層に対して,透明性と遮光性のバランスが図られるような保護膜の位置が十分に特定されていないから,この点においても,前記課題解決手段が反映されていない。
請求項6を引用して記載した他の請求項についても同様である。
理由2 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項6ないし10について
請求項6は,物の発明であるが,「樹脂と,キノンジアジド化合物とを含む感放射線性樹脂組成物を用いて製造されたもの」との記載は,製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため,当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
ここで,物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号,平成24年(受)第2658号)。
しかしながら,本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく,当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
したがって,請求項6及び請求項6を引用して記載した他の請求項に係る発明は明確でない。
理由3 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
引 用 文 献 等 一 覧
引用文献1 特開2011-222788号公報
引用文献2 特開平09-152625号公報
引用文献A 特開2001-312051号公報
引用文献3 特開2007-193318号公報
引用文献4 特開2007-134687号公報

・請求項6について
・引用文献等 1,2
・備考
引用文献1(段落0271)には液晶表示ディスプレイのTFTアレイ基板として用いることが記載されており,引用文献2(段落0079-0084,図1)には,液晶表示装置におけるアクティブマトリックス基板が記載されているので,引用文献1のTFTアレイ基板として,引用文献2に記載のアクティブマトリックス基板を用いることは,当業者が容易になし得ることである。
・請求項7ないし10について
・引用文献等 1,2,A,3,4

第5 引用文献
1 引用文献1の記載
(1)引用文献1
引用文献1には,図面とともに,次の記載がある。(下線は当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便なプロセスで製造可能であり、スイッチング特性に優れた薄膜トランジスタ基板に関するものである。」
イ 「【0029】
・・・
また、図3(b)に例示するTFT基板20は、ボトムゲート型のコプレーナ型構造を有するTFTを備えており、フレキシブル基板10の密着層3上に形成されたゲート電極13Gと、ゲート電極13G上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたゲート絶縁層14と、上記ゲート絶縁層14上に形成された酸化物半導体層11と、上記酸化物半導体層11上に形成されたソース電極12Sおよびドレイン電極12Dと、酸化物半導体層11上に、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたパッシベーション層15と、を有している。
また、図1および図3(a)に例示されるトップゲート型TFTにおける半導体層接触絶縁層はゲート絶縁層であり、図2および図3(b)に例示されるボトムゲート型TFTにおける半導体層接触絶縁層はゲート絶縁層およびパッシベーション層(図2)であり、この例においては、これら全ての半導体層接触絶縁層が上記感光性ポリイミド絶縁層である。」
ウ 「【0035】
(i)感光性ポリイミド樹脂組成物
本発明に用いられる感光性ポリイミド樹脂組成物は、所望の絶縁性を有する感光性ポリイミド絶縁層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、a)ポリイミド成分、b)感光性成分、c)溶媒、d)その他を含むものを挙げることができる。
【0036】
具体的には、ポリイミド成分であるポリアミック酸のカルボキシル基に、感光性成分として上記ポリイミド成分にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、さらに光ラジカル開始剤を混合した溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分であるポリアミック酸やその部分エステル化物に、感光性成分としてナフトキノンジアジド化合物を添加したアルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分である酸架橋性の置換基を導入したポリイミドもしくはポリイミド前駆体に、感光性成分として光酸発生剤を添加したネガ型の感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分である酸分解性の置換基を導入したポリイミドもしくはポリイミド前駆体に、感光性成分として光酸発生剤を添加したポジ型の感光性ポリイミド樹脂組成物、ポリイミド成分であるポリアミック酸に、感光性成分として光酸発生剤を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物あるいは、ポリイミド成分であるポリアミック酸に、感光性成分としてニフェジピン系化合物等を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物ならびに、ポリイミド成分であるポリアミック酸に感光性成分として光塩基発生剤を添加したアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。」
エ 「【0183】
(ii)感光性ポリイミド絶縁層
本発明に用いられる感光性ポリイミド絶縁層は、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたものである。
【0184】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層は、上記半導体層接触絶縁層の少なくとも一つであれば良く、既に説明した図1?3に示すように、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層や、ボトムゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、パッシベーション層として用いられるものである。
本発明においては、なかでも、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型TFTにおけるゲート絶縁層およびパッシベーション層の少なくとも一方、として少なくとも用いられることが好ましく、特に、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型TFTにおけるパッシベーション層として少なくとも用いられることが好ましく、なかでも特に、上記半導体層接触絶縁層のうち、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層、または、ボトムゲート型TFTにおけるゲート絶縁層およびパッシベーション層の両者として少なくとも用いられることが好ましく、さらに好ましくは、上記半導体層接触絶縁層の全てとして用いられることが好ましい。上記ゲート絶縁層およびパッシベーション層は、上記半導体層接触絶縁層のなかでも酸化物半導体層との接触面積が広く、上記半導体層接触絶縁層からのアウトガスの影響を受け易いものである。このため、これらの半導体層接触絶縁層を感光性ポリイミド絶縁層とすることにより、上記酸化物半導体層をより不純物の少ないものとすることができ、本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。また、簡便なプロセスとすることができるからである。
また、トップゲート型TFTにおけるゲート絶縁層およびボトムゲート型TFTにおけるパッシベーション層は、通常、上記酸化物半導体層を覆うように形成されるものである。このため、上記感光性ポリイミド樹脂組成物がポリイミド前駆体を含む場合、上記感光性ポリイミド絶縁層は、上記酸化物半導体層の形成後に上記感光性ポリイミド樹脂組成物を塗布し、次いで、イミド化されることにより形成される。したがって、上記酸化物半導体層の水蒸気アニール処理を別途実施することなく、イミド化と同時に上記酸化物半導体層の水蒸気アニール処理を行うことができ、簡便にスイッチング特性により優れたものとすることができるからである。
さらに、上記半導体層接触絶縁層の全てを上記感光性ポリイミド絶縁層とすることにより、本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。
【0185】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層は絶縁性を備えるものである。具体的には、上記感光性ポリイミド絶縁層の体積抵抗は、1.0×10^(9)Ω・m以上であることが好ましく、なかでも、1.0×10^(10)Ω・m以上であることがより好ましく、特に、1.0×10^(11)Ω・m以上であることが好ましい。
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0186】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層の膜厚としては、用いられる半導体層接触絶縁層に応じて適宜設定されるものであり、一般的な半導体層接触絶縁層と同様とすることができる。
【0187】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層は、少なくとも上記ポリイミド樹脂を含むものであるが、アウトガス発生量を所望の範囲内とできる範囲において、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、増感剤等の添加剤や、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料等を含むものであっても良い。
【0188】
本発明の感光性ポリイミド絶縁層に含まれるポリイミド樹脂のイミド化率としては、所望の絶縁性、耐熱性、低アウトガス性等の特性を発揮できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、90%以上であることが好ましく、なかでも、95%以上であることが好ましく、特に100%、すなわち、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を含まないものであることが好ましい。上記イミド化率が上記範囲であることにより、耐熱性、低アウトガス性に特に優れたものとすることができるからである。
【0189】
本発明における感光性ポリイミド絶縁層の形成方法としては、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、フォトリソグラフィー法、印刷法等を用いることができる。
フォトリソグラフィー法としては、例えば、上記感光性ポリイミド樹脂組成物を上記基板上に塗布することにより感光性ポリイミド樹脂膜を形成した後、マスクを介したパターン露光、および現像を行う方法を挙げることができる。
上記塗布方法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法を用いることができる。
また、印刷法としては、グラビア印刷やフレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法など公知の印刷技術を用いた方法を例示することができる。
【0190】
また、上記感光性ポリイミド樹脂組成物が、上記ポリイミド成分としてポリイミド前駆体を含む場合には、上記ポリイミド前駆体のイミド化が行われる。
上記ポリイミド前駆体をイミド化する方法としては、上記ポリイミド前駆体に含まれるポリアミック酸を脱水閉環反応によりイミド化できる方法であれば特に限定されるものではないが、通常、アニール処理(加熱処理)を用いる方法を用いることができる。
このようなアニール温度(加熱温度)としては、用いるポリイミド前駆体の種類や、本発明のTFT基板を構成する部材の耐熱性等を考慮して適宜設定されるものであるが、通常、200℃?500℃の範囲内で行われ、なかでも、250℃?400℃の範囲内であることが好ましく、特に、上記ポリイミド前駆体の硬化後の物性および低アウトガス性の観点からは280℃?400℃の範囲内であることが好ましい。上述した温度範囲であることによりイミド化を十分に進行させることができ、他の部材の熱劣化を抑制することができるからである。
【0191】
本発明において、上記イミド化を行うタイミングとしては、上記感光性ポリイミド絶縁層を安定的に形成できるものであれば特に限定されるものではないが、上記酸化物半導体層が形成された後であること、すなわち、上記感光性ポリイミド絶縁層が、上記ポリイミド前駆体を含む感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されるものである場合、上記酸化物半導体層の形成後に上記ポリイミド前駆体をイミド化して形成されるものであることが好ましい。上記酸化物半導体の水蒸気アニール処理を同時に行うことができるからである。
したがって、上記感光性ポリイミド絶縁層上に上記酸化物半導体層が形成される場合には、上記感光性ポリイミド絶縁層の塗膜をパターニングし、イミド化前または後のプロセスに耐えられるように、上記ポリイミド前駆体の一部をイミド化(部分イミド化)した後に上記酸化物半導体層を形成し、その後、残りのポリイミド前駆体のイミド化を行い、その際に副生する水を用いて、上記酸化物半導体層の水蒸気アニールを行うことが好ましい。
【0192】
(b)半導体層接触絶縁層
本発明に用いられる半導体層接触絶縁層は、少なくとも一つが上記感光性ポリイミド絶縁層であれば良い。
本発明においては、他の上記半導体層接触絶縁層が、上記感光性ポリイミド絶縁層以外の他の絶縁層であっても良い。
このような他の絶縁層としては、所望の絶縁性能を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なTFTにおける絶縁層と同様のものを用いることができ、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の絶縁性無機材料や、上記絶縁性有機材料を用いてなるものを挙げることができる。
【0193】
(2)酸化物半導体層
本発明に用いられる酸化物半導体層は、酸化物半導体からなるものである。
このような酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム亜鉛(Mg_(x)Zn_(1-x)O)、酸化カドミウム亜鉛(Cd_(x)Zn_(1-x)O)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In_(2)O_(3))、酸化ガリウム(Ga_(2)O_(3))、酸化スズ(SnO_(2))、酸化マグネシウム(MgO)、酸化タングステン(WO)、InGaZnO系、InGaSnO系、InGaZnMgO系、InAlZnO系、InFeZnO系、InGaO系、ZnGaO系、InZnO系を用いることができる。」
オ 「【0271】
本発明のTFT基板の用途としては、TFT方式を用いるディスプレイ装置のTFTアレイ基板として用いることができ、なかでも、優れたスイッチング特性が要求されるTFTアレイ基板に用いられることが好ましい。
このようなディスプレイ装置としては例えば、液晶表示ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置、電子ペーパー等を挙げることができる。また、ディスプレイ装置以外には、RFIDなどの回路、およびセンサーを例示することができる。」
カ 図3(b)には,酸化物半導体層11と,ソース電極12Sとドレイン電極12Dとの間にパッシベーション層15があるもの,と認められる。
(2)引用発明
引用文献1に記載された「感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて形成されたパッシベーション層」(前記(1)イ)は,具体的には,「ポリイミド成分であるポリアミック酸やその部分エステル化物に、感光性成分としてナフトキノンジアジド化合物を添加したアルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド樹脂組成物」(前記(1)ウ【0036】)を用いて,「マスクを介したパターン露光,および現像を行う方法」(前記(1)エ【0189】)で形成されるから,ポジ型としてパターン露光および現像を経て残った部分は,感光性成分としてのナフトキノンジアジド化合物を含んでおり一方露光により生じるインデンカルボン酸はアルカリ現像により脱落するから含まれておらず,この残った部分がパッシベーション層となるものである。よって,引用文献1には,ポリイミド樹脂とナフトキノンジアジド化合物を含みインデンカルボン酸を含まないパッシベーション層が記載されていると認められる。
すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「TFT基板であって,TFTを備えており,フレキシブル基板と,酸化物半導体層と,上記酸化物半導体層上に形成されたソース電極およびドレイン電極と,酸化物半導体層上にパッシベーション層とを有し,前記パッシベーション層はポリイミド樹脂とナフトキノンジアジド化合物を含みインデンカルボン酸を含まないもので,前記酸化物半導体層は酸化亜鉛からなるものであること。」
2 引用文献2の記載
引用文献2には,図面とともに,次の記載がある。
(1)「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0079】(実施形態1)図1は、本発明の実施形態1の透過型液晶表示装置におけるアクティブマトリクス基板の1画素部分の構成を示す平面図である。
【0080】図1において、アクティブマトリクス基板には、複数の画素電極21がマトリクス状に設けられており、これらの画素電極21の周囲を通り、互いに直交差するように、走査信号を供給するための各ゲート配線22と表示信号を供給するためのソース配線23が設けられている。これらのゲート配線22とソース配線23はその一部が画素電極21の外周部分とオーバーラップしている。また、これらのゲート配線22とソース配線23の交差部分において、画素電極21に接続されるスイッチング素子としてのTFT24が設けられている。このTFT24のゲート電極にはゲート配線22が接続され、ゲート電極に入力される信号によってTFT24が駆動制御される。また、TFT24のソース電極にはソース配線23が接続され、TFT24のソース電極にデータ信号が入力される。さらに、TFT24のドレイン電極は、接続電極25さらにコンタクトホール26を介して画素電極21と接続されるとともに、接続電極25を介して付加容量の一方の電極である付加容量電極25aと接続されている。この付加容量の他方の電極である付加容量対向電極27は共通配線(図16の6)に接続されている。」
(2)「【0145】ポジ型感光性アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料が好ましい。この樹脂はグリシジル基を含むので、加熱によって架橋(硬化)することができる。硬化後の物性として、誘電率:約3.4程度、400nm?800nmの波長範囲の光に対する透過率:90%以上が得られる。また、i線(365nm)の紫外線を照射することより、短時間で脱色することができる。また、パターニングには、i線以外の紫外線を用いることができる。本実施形態で使用した、感光性アクリル系樹脂の耐熱温度は概ね280℃なので、約250℃?280℃以下の温度条件で、層間絶縁膜形成後の画素電極の形成等のプロセスを行うことによって、層間絶縁膜の劣化は抑制できる。
【0146】上述の透明度の高い感光性透明アクリル樹脂による層間絶縁膜68の形成工程を、以下にさらに詳しく説明する。
【0147】この層間絶縁膜68の形成工程は、まず、感光性透明アクリル樹脂材料を含んだ溶液を基板上にスピン塗布し、プリベーキング、パターン露光、アルカリ現像、純水洗浄の順に一連の通常のフォトパターニング工程と同様に行う。
【0148】即ち、層間絶縁膜68を感光性透明アクリル樹脂を含んだ溶液をスピン塗布法により、3μmの膜厚に形成する。この場合、粘度29.0cpのアクリル樹脂をスピン回転数900?1100rpmで塗布する。そうすることにより、画素電極が平坦化されて従来のような段差が無くなって液晶の配向不良が抑制され、表示品位が向上する。続いて、基板を約100℃に加熱して感光性透明アクリル樹脂の溶媒(乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)の乾燥を行った。続いて、この感光性透明アクリル樹脂に対して所望のパターンに従って露光を行い、アルカリ性の溶液(テトラメチルアンモニウムヒドロオキサイド;以下TMAHという)などにより現像処理を行った。このアルカリ性の溶液により、露光された部分がエッチングされ、層間絶縁膜68を貫通するコンタクトホール56を形成することができた。現像液(TMAHの場合)の濃度は0.1?1.0mol%が好ましい。その濃度が1.0mol%以上であると、露光しない部分の感光性透明アクリル樹脂の膜厚の減少量が大きく、膜厚の制御が難しくなる。現像液の濃度が2.4mol%と高濃度で使用すると、現像のヌキの部分にアクリル樹脂の変質物が残さとして残り、コンタクト不良が生じる。また、濃度が0.1mol%より低いと、現像液を循環して繰り返し使用する方式の現像装置では濃度の変動が大きいために濃度制御が難しくなる。
【0149】さらに、純水により基板表面に残った現像液を洗浄する。このように感光性透明アクリル樹脂はスピン塗布法により形成できるので、数μmの膜厚であってもスピンコーターの回転速度と感光性透明アクリル樹脂の粘度を適度に選ぶことにより容易に膜厚を均一に形成することが可能である。また、コンタクトホール部のテーパ形状は、パターン露光時の露光量と現像液濃度、現像時間を適度に選ぶことにより緩やかな形状を得ることができる。
【0150】現像後、感光性透明アクリル樹脂に使用する感光剤の種類(例えばナフトキノンジアジト系感光剤、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤)や量によっては、樹脂が着色して見えることがある。そのため、基板全面に露光を行い、樹脂に含まれる着色している不要な感光剤を完全に反応させて、可視領域での光吸収をなくし、アクリル樹脂の透明化を図る。感光剤としてナフトキシジアジド系ポジ型感光剤または/およびナフトキノンジアジド系感光剤などを含む。ここで、アクリル樹脂の膜厚を3μm塗布した後、透過光の波長(nm)に対する、表面を露光した場合の露光前後の透過率の変化を図11に示している。図11からも解るように、例えば透過光の波長400nmにおいて、紫外光などの光を照射しなかった場合、その透過率が65パーセントであったものが、光照射後にはその透過率が90パーセント以上に改善されている。この場合、露光は基板の前面から行うが、裏面からの露光を併用することにより短時間でこの処理を完了することができ、装置スループットの向上に寄与することができる。」
3 引用文献3の記載
引用文献3には,図面とともに次の記載がある。
「【要約】
【課題】熱硬化中に発生するパターンだれを抑制し、熱硬化工程後において高解像度、高耐熱性、高透明性の特性を有する、TFT基板用平坦化膜、層間絶縁膜、あるいは光導波路のコアやクラッド材の形成に用いられる高感度の感光性シロキサン組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリシロキサン、(b)キノンジアジド化合物、(c)溶剤を含有する感光性シロキサン組成物であって、(a)ポリシロキサンは、少なくとも(a’)プリベーク後のポリマーが2.38wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液に不溶であるポリシロキサンを含有している感光性シロキサン組成物。」
4 引用文献4の記載
引用文献4には,図面とともに,次の記載がある。
「【0069】
ゲート絶縁膜203の材料としては、感光材を含む組成物を用いればよく、例えば、ノボラック樹脂と感光材であるナフトキノンジアジド化合物からなるポジ型レジスト、またはベース樹脂、ジフェニルシランジオール及び酸発生材などを、溶媒に溶解又は分散させたものからなるネガ型レジストを用いる。溶媒としては、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶材などを用いる。溶媒の濃度は、レジストの種類などに応じて適宜設定するとよい。」
5 引用文献5の記載
引用文献5には,図面とともに,次の記載がある。
「【0016】即ち、上記構成は、図1に示すように第1の層間絶縁膜111及び前記第1の金属層112に設けられたコンタクトホールの底部で前記薄膜トランジスタのソース領域105と前記第2の金属層114が接し、第1の層間絶縁膜111及び前記第1の金属層113に設けられたコンタクトホールの底部で前記薄膜トランジスタのドレイン領域106と前記第2の金属層115が接していることを特徴としている。」
6 引用文献Aの記載
引用文献Aには,図面とともに,次の記載がある。
(1)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、(a)アルカリ水溶液可溶性のポリイミド前駆体又はポリイミド、(b)光により酸を発生する化合物、及び、(c)分子中にアルコキシメチル基とフェノール性水酸基とを有する化合物を含有してなる感光性重合体組成物に関する。」
(2)「【0015】
【発明の実施の形態】本発明における(a)成分は、現像液として用いられるアルカリ水溶液に可溶性であることが必要であるため、アルカリ水溶液に可溶性のポリイミド前駆体又はポリイミドから選択される重合体である。そのために、前記重合体は分子中に酸性基を有することが好ましい。本発明における重合体の種類は、耐熱性に優れ、半導体装置や多層配線板の層間絶縁膜や表面保護膜として優れた特性を示すため、ポリイミド、又は、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド等のポリイミド前駆体から選択される。」
(3)「【0038】本発明に使用される(b)成分である光により酸を発生する化合物は、感光剤であり、酸を発生させ、光の照射部のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有するものである。その種類としては、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられ、特に制限はないが、o-キノンジアジド化合物が感度が高く好ましいものとして挙げられる。」

第6 判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「フレキシブル基板」は,本願発明1の「基板」を満たす。
イ 引用発明の「酸化物半導体層」「前記酸化物半導体層は酸化亜鉛からなるもの」は,本願発明1の「半導体層」「前記半導体層は,インジウム(In),亜鉛(Zn)および錫(Sn)のうちの少なくとも1種を含んで構成された酸化物を用いて形成されたもの」を満たす。
ウ 引用発明の「上記酸化物半導体層上に形成されたソース電極およびドレイン電極」は,本願発明1の「前記半導体層の第1面に接して設けられたソース電極及びドレイン電極」に相当する。
エ 引用発明の「TFT」は,本願発明1の「半導体素子」を満たす。
オ 引用発明の「酸化物半導体層上にパッシベーション層とを有し」は,前記第5の1(1)カを考慮すると,本願発明1の「前記半導体層と,前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に保護膜を有する」に相当する。
カ 引用発明の「TFT基板」は,下記相違点1および2を除いて,本願発明1の「半導体基板」に相当する。
キ すると,本願発明1と引用発明とは,下記クの点で一致し,下記ケの点で相違する。
ク 一致点
「基板と,
半導体層と,前記半導体層の第1面に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する半導体素子が配置されており,
前記半導体層は,インジウム(In),亜鉛(Zn)および錫(Sn)のうちの少なくとも1種を含んで構成された酸化物を用いて形成されたものであり,
前記半導体層と,前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に保護膜を有する
ことを特徴とする半導体基板。」
ケ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1においては「前記基板上に配置された複数のゲート配線と複数のデータ配線とを備え,前記複数のゲート配線と前記複数のデータ配線との交差部分に構成されるマトリクス状の画素内に」半導体素子が配置されるのに対し,引用発明においてはこのことが明示されない点。
(イ)相違点2
本願発明1においては「前記保護膜は, 樹脂と, キノンジアジド化合物およびインデンカルボン酸 とを含む」のに対し,引用発明においては「前記パッシベーション層はポリイミド樹脂とナフトキノンジアジド化合物を含みインデンカルボン酸を含まない」点。
(2)相違点についての検討
相違点2について検討すると,相違点2に係る構成について,いずれの引用文献にも記載も示唆もない。
そして,本願発明1は,相違点2に係る構成を有することにより,「液晶表示素子等に求められる透明性と遮光性のバランスを好適に制御することができる」(本願明細書段落【0058】)という有利な効果を奏するものである。
(3)まとめ
してみると,本願発明1は,引用文献1ないし5および引用文献Aに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし5は,本願発明1を引用するものであり,本願発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから,前記1と同様の理由により,引用文献1ないし5及び引用文献Aに記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 特許請求の範囲の記載不備について
当審補正によって,当審補正前の請求項6に記載された「樹脂と,キノンジアジド化合物とを含む感放射線性樹脂組成物を用いて製造されたものであり,前記樹脂と,前記キノンジアジド化合物およびインデンカルボン酸のうちの少なくとも一方とを含む」及び「前記半導体層と前記電極との間に保護膜を有し」は,それぞれ「 樹脂と, キノンジアジド化合物およびインデンカルボン酸 とを含む」及び「前記半導体層と,前記ソース電極及び前記ドレイン電極との間に保護膜を有し」に補正されて請求項1となった。
よって,請求項1及びこれを引用して記載した請求項2ないし5について,その発明は発明の詳細な説明に記載されたものとなり,その記載は明確なものとなった。

第7 原査定の理由についての判断
当審補正により,補正後の請求項1ないし5は,「前記保護膜は, 樹脂と, キノンジアジド化合物およびインデンカルボン酸 とを含む」という発明特定事項を有するものとなった。当該発明特定事項は,原査定における引用文献1ないし5には記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1ないし5は,引用文献1に記載された発明ではないし,また,当業者であっても,引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものでもない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-29 
出願番号 特願2012-88397(P2012-88397)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 加藤 浩一
深沢 正志
発明の名称 半導体素子、半導体基板、感放射線性樹脂組成物、保護膜および表示素子  
代理人 仲野 孝雅  
代理人 関口 正夫  
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