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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1336744
審判番号 不服2015-19180  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-23 
確定日 2018-01-26 
事件の表示 特願2012-529939「制御された照明を用いた微小藻類の発酵」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 3月24日国際公開、WO2011/035166、平成25年 2月14日国内公表、特表2013-505024〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22(2010)年9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年9月18日 米国(US),2010年6月29日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、主な経緯は次のとおりである。

平成26年12月 2日付け 拒絶理由通知書
平成27年 5月11日 意見書・手続補正書
平成27年 6月19日付け 拒絶査定
平成27年10月23日 審判請求書・手続補正書
平成27年12月10日 手続補正書(方式)

第2 本願発明

本願請求項1?19に係る発明は、平成27年10月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。そのうち、本願請求項18に係る発明(以下、「本願発明18」という)は、以下のとおりのものである。

「【請求項18】
物質を製造する方法であって:
前記物質を産生する能力を有する微小藻類の提供;
培地中での前記微小藻類の培養であって、前記培地は炭素源を含む、培養;
前記微小藻類への5μmol光子m^(-2)s^(-1)以下の低放射照度光の適用;および、
前記微小藻類にその乾燥細胞重量の少なくとも10%を前記物質として蓄積させること、
を含む、方法。」

第3 引用例の記載事項

1.引用例1
原査定の拒絶理由で引用文献1として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、Appl.Microbiol.Biotechnol.,2008,Vol.78,p.29-36(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。
なお、翻訳は当審によるものである。
また、下線は当審にて付記したものである。以下、同様である。

(1-a)「マイクロバイオディーゼルの生産のためのバイオリアクターにおける微小藻類クロレラ プロトセコイデスの高密度発酵」(タイトル)

(1-b)「寒天上の発酵をベースとしたマイクロバイオディーゼルの生産は、クロレラ プロトセコイデスの高細胞密度の発酵及び効率的なエステル交換プロセスによって実現された。5-lバイオリアクターにおいて達成された細胞密度は、予備的な及び改善された流加培養の方策を実行することによって、それぞれ184時間で16.8g l^(-1)及び51.2g l^(-1)であった。脂質含量は、5-lバイオリアクターにおいて、回分、初代及び改善された流加培養からの細胞乾燥重量の57.8, 55.2及び50.3%であった。エステル交換が固定化されたリパーゼによって触媒され、変換率は98%にまで達した。クロレラからのバイオディーゼルの性質は従来のディーゼル燃料に匹敵するものであり、バイオディーゼルの米国基準に適合する。要するに、クロレラの高密度発酵及び酵素的エステル交換プロセスを含むアプローチが提起され、バイオディーゼル生産のための期待できる代替手段であることが判明した。」(要約)

(1-c)「菌株と培地
微小藻類クロレラ プロトセコイデスはテキサス大学の藻の培養コレクションから快く提供された(オースチン、テキサス、米国)。基本培養培地の構成(Wuら1992)は、次のとおり:KH_(2)PO_(4) 0.7g l^(-1), K_(2)HPO_(4) 0.3g l^(-1), MgSO_(4)・7H_(2)O 0.3g l^(-1), FeSO_(4)・7H_(2)O 3mg l^(-1), グリシン0.1g l^(-1), ビタミンB1 0.01mg l^(-1), A5微量ミネラル溶液 1ml l^(-1)。異なる濃度のグルコースが、特定の実験計画の要件にしたがって基本培地の中に添加された。発酵培地は、4g l^(-1)の酵母抽出物と15-30g l^(-1)のグルコースを基本培地にパルスすることによって変更した。」(30頁左欄24?35行目)

(1-d)「クロレラ プロトセコイデスの振盪フラスコ培養
クロレラは、1.5%寒天プレートからのコロニー又は指数関数的に成長している種培養物を用いることによって、28℃で200rpmで振盪フラスコにおいて従属栄養条件下で培養された。弱い光(5μmol m^(-2)s^(-1))もまた採用された。」(30頁下から5?1行目)

第4 引用例1に記載された発明

上記記載事項(1-b)より、脂質をバイオディーゼルとして用いるための生産する以上、引用例1には、脂質を製造する方法が記載されていることは明らかであり、このことを踏まえて上記(1-a)?(1-d)の下線部分を整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。

「脂質を製造する方法であって、
微小藻類クロレラ プロトセコイデスを提供すること、
グルコースが添加された培地で培養すること、
弱い光(5μmol m^(-2)s^(-1))もまた採用すること、
細胞乾燥重量の57.8, 55.2及び50.3%の脂質を含むこと、
を含む、方法。」

第5 対比

本願発明18と引用発明を対比すると、
引用発明の「脂質を製造する方法であって」は、本願発明18の「物質を製造する方法であって」に相当し、
引用発明の「微小藻類クロレラ プロトセコイデスを提供すること」は、本願発明18の「前記物質を産生する能力を有する微小藻類の提供」に相当し、
引用発明の「グルコースが添加された培地で培養すること」は、本願発明18の「培地中での前記微小藻類の培養であって、前記培地は炭素源を含む、培養」に相当し、
引用発明の「細胞乾燥重量の57.8, 55.2及び50.3%の脂質を含むこと」は、本願発明18の「前記微小藻類にその乾燥細胞重量の少なくとも10%を前記物質として蓄積させること」に相当する。

そうすると両者は
「物質を製造する方法であって:
前記物質を産生する能力を有する微小藻類の提供;
培地中での前記微小藻類の培養であって、前記培地は炭素源を含む、培養;および、
前記微小藻類にその乾燥細胞重量の少なくとも10%を前記物質として蓄積させること、
を含む、方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
本願発明18は「前記微小藻類への5μmol光子m^(-2)s^(-1)以下の低放射照度光の適用」を含むのに対して、引用発明は「弱い光(5μmol m^(-2)s^(-1))もまた採用すること」を含み、5μmol光子m^(-2)s^(-1)以下という特定を有しない点。

第6 当審の判断

上記相違点について検討する。

引用例1には、弱い光として5μmol m^(-2)s^(-1)という放射照度が具体的に記載されているのであるから、引用発明において、5μmol m^(-2)s^(-1)の近傍の放射照度を適用することは当業者であれば容易になし得るものであるし、放射照度が低放射照度であることや、5μmol m^(-2)s^(-1)以下に設定することも当業者であれば適宜なし得ることに過ぎない。

そして、本願発明18の効果についても、引用例1の記載から格別顕著な効果を奏しているものとも認められない。

したがって、本願発明18は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものである。

第7 結び

以上のとおりであるから、本願請求項18に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-14 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-10-03 
出願番号 特願2012-529939(P2012-529939)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 巌名和 大輔  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 三原 健治
佐々木 秀次
発明の名称 制御された照明を用いた微小藻類の発酵  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  

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