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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1336888
審判番号 不服2016-14122  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-21 
確定日 2018-01-30 
事件の表示 特願2013-539268「顔および目をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日国際公開、WO2012/066097、平成25年11月28日国内公表、特表2013-542970〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、2011年(平成23年)11月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年11月17日、フランス(FR)、2010年11月23日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成27年7月24日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月14日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され、同年5月18日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して、同年9月21日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたので、特許法162条所定の審査がされた結果、同年11月9日付けで同法164条3項の規定による報告がされたものである。

第2 補正却下の決定

[結論]
平成28年9月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.平成28年9月21日付けの手続補正の内容
平成28年9月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の全文を変更する補正事項からなるものであるところ、特許請求の範囲全体の記載のうち、本件補正前の請求項1及び本件補正後の請求項1の記載を掲記すると、それぞれ以下のとおりである。

<本件補正前>(平成28年1月14日の手続補正書)
【請求項1】
生理学的に許容される媒体中に、
(i)1.6以上の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料と、
(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラーと
を含む、ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物であって、艶消しフィラー(ii)の総含量が組成物の総重量に対して4重量%以下であることを特徴とする化粧用組成物。

<本件補正後>(下線は補正箇所。)
【請求項1】
生理学的に許容される媒体中に、
(i)1.6以上の屈折率および30μm未満且つ500nmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料と、
(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率および30μm未満且つ1μmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラーと
を含む、ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物であって、艶消しフィラー(ii)の総含量が組成物の総重量に対して4重量%以下であり、前記組成物の総重量に対して0.1重量%以下の含量の酸化鉄を含むことを特徴とする化粧用組成物。

2.本件補正の目的
本件補正前の請求項1と本件補正後の請求項1との対比において、本件補正は、請求項1の化粧用組成物に含まれる(i)の顔料の体積径の下限値について「且つ500nmより大きい」と特定し、(ii)の艶消しフィラーの体積径の下限値について「且つ1μmより大きい」と特定するとともに、請求項1の化粧用組成物について「組成物の総重量に対して0.1重量%以下の含量の酸化鉄を含む」と特定することで、補正前の発明特定事項を限定するものである。そして、本件補正の前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は変わらない。
よって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認める。
なお、本件補正は、いわゆる新規事項を追加するものではないと判断される。

3.独立特許要件の有無について
上記2.のとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、要するに、本件補正が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するものであるか(いわゆる独立特許要件違反の有無)について検討するところ、以下説示のとおり、本件補正は当該要件に違反すると判断される。
すなわち、本願補正発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない(なお、引用文献1は、原査定の理由で引用された「引用文献1」と同じである)。

・引用文献1 特開2005-298482号公報

4.本願補正発明
本願補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。

「生理学的に許容される媒体中に、
(i)1.6以上の屈折率および30μm未満且つ500nmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料と、
(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率および30μm未満且つ1μmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラーと
を含む、ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物であって、艶消しフィラー(ii)の総含量が組成物の総重量に対して4重量%以下であり、前記組成物の総重量に対して0.1重量%以下の含量の酸化鉄を含むことを特徴とする化粧用組成物。」

5.本願補正発明が特許を受けることができない理由
(1)引用文献の記載事項
引用文献1には、以下の事項(1-1)?(1-5)が記載されている。(なお、下線は当審による。)

(1-1)「【請求項1】
次の成分(A)?(F);
(A)揮発性シリコーン油 5?30質量%
(B)水性成分 5?70質量%
(C)白色顔料 1?15質量%
(D)光輝性粉体 0.1?10質量%
(E)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物 1?15質量%
(F)着色顔料 0.1?15質量%
を含有することを特徴とする目元用油中水型コンシーラー。」
(1-2)「【0001】
本発明は、目元用油中水型コンシーラーに関し、更に詳細には・・・を特定量含有し、清涼感、化粧膜の自然さに優れ、目の周りのくまやくすみをカバーする効果が高く、化粧もちに優れた目の周りに専用に使用する目元用油中水型コンシーラーに関する。」
(1-3)「【0015】
成分(E)は、重合物単独で用いても良いが、低粘度シリコーンと混合して用いても良い。このような混合物は、市販品として、KSG-15(部分架橋型メチルポリシロキサン5部とデカメチルシクロペンタシロキサン95部)、KSG-16(部分架橋型メチルポリシロキサン20?30部とメチルポリシロキサン70?80部)、KSG-18(部分架橋型メチルフェニルポリシロキサン10?20部とメチルフェニルポリシロキサン80?90部)(何れも、信越化学工業社製)等が挙げられ、これらより1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
成分(E)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物の配合量は、1?15%が好ましく、2?10%が特に好ましい。成分(E)をこの範囲で含有すると、くすみやくまをぼかして目立たなくさせる効果に優れた自然な化粧膜を得ることができる。」
(1-4)「【0018】
本発明品の目元用油中水型コンシーラーには成分(F)として着色する目的で着色顔料が配合される。具体的には、黒酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、タール系色素等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。・・・。
【0019】
また、成分(F)の着色顔料の配合量は、特に限定されないが、0.1?15%が好ましい。この範囲内であれば、白色顔料の白さを解消し、自然な化粧膜を得ることができる。
着色顔料によって着色された目元専用油中水型コンシーラーの色は特に制約されるものではないが目元の肌色に近い色調、若しくは目元の肌色よりも多少明るい色調が白色顔料により白くなり過ぎるのを抑え、自然な化粧膜を得るという観点からより好ましい。」
(1-5)「【0029】
実施例1?6、比較例1?10:目元用油中水型リキッドコンシーラー
表1に示す組成の目元用油中水型リキッドコンシーラーを以下の製造方法にて調製し、「清涼感」、「化粧膜の自然さ」、「くすみカバー効果」、「化粧もち」の各項目について、以下の評価方法により評価を行い、結果を併せて表1に示した。
【0030】
【表1】

【0031】
注1:KSG-16(信越化学工業社製)
注2:シリコン KF-995(信越化学工業社製)
注3:ABIL EM-90(ゴールドシュミット社製)
注4:TIPAQUE CR-50(石原産業社製)
注5:MICRO TITANIUM DIOXIDE MT-500SA
(テイカ社製)
注6:チミロンスーパーシーン MP-1001(メルク社製)
注7:タロックスレッドR516L(チタン工業社製)
注8:タロックスイエローレモン(チタン工業社製)
注9:タロックスブラックBL-100(チタン工業社製)
注10:サンスフェアNP-100(旭硝子社製)」
(なお、上記【表1】中の数値は質量%を意味するものと解される(段落【0007】参照)。)

(2)引用発明の認定
上記記載事項(1-1)及び(1-5)の実施例3によると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「以下の組成を有する目元用油中水型リキッドコンシーラー。

セレシンワックス 1.5質量%
トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 5質量%
部分架橋型メチルポリシロキサン重合物(KSG-16) 1.5質量%
ジメチルポリシロキサン(20cs) 1質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 18.5質量%
レシチン 0.3質量%
セスキオレイン酸ソルビタン 0.5質量%
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 3質量%
酸化チタン 1質量%
雲母チタン(チミロンスーパーシーン MP-1001) 0.5質量%
マイカ 1質量%
ベンガラ 0.2質量%
黄酸化鉄 0.5質量%
黒酸化鉄 0.15質量%
球状シリカ 3質量%
エタノール 5質量%
精製水 残量
防腐剤 適量
香料 適量」

(3)対比
以下、本願補正発明と引用発明1とを対比する。

ア.顔料(i)について
引用発明1には、雲母チタン(チミロンスーパーシーン MP-1001)が0.5質量%配合されている。
ここで、特表2007-518748号公報(拒絶理由通知及び拒絶査定における引用文献3)によると、チミロンスーパーシーン MP-1001の屈折率は少なくとも約1.8であり(段落【0025】参照)、その粒径は5?20μmである(段落【0027】参照)。また、以下の参考文献1によると、チミロンスーパーシーン MP-1001は二酸化チタンで被覆された雲母であって(SECTION3参照)、白色の粉末である(SECTION9参照)。さらに、雲母は「鉱物」の一種である。
したがって、引用発明1における「雲母チタン(チミロンスーパーシーン MP-1001)」は、本願補正発明における「(i)1.6以上の屈折率および30μm未満且つ500nmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料」に相当するものである。

参考文献1:SAFETY DATA SHEET(Timiron(登録商標) Supersheen MP-1001)、online、米国、EMD Performance Materials、インターネット<http://www.emd-performance-materials.com/merck-ppf/detailRequest?unit=CHEM&owner=MDA&productNo=117201&language=Z8&country=US&docType=MSD&source=GDS&docId=/mda/chemicals/msds/z8-US/117201_SDS_US_Z8.PDF>

イ.艶消しフィラー(ii)について
引用発明1には、部分架橋型メチルポリシロキサン重合物として、KSG-16が1.5質量%配合されている。
ここで、引用文献1には、「KSG-16(部分架橋型メチルポリシロキサン20?30部とメチルポリシロキサン70?80部)」と記載されているから(上記記載事項(1-3)参照)、引用発明1の部分架橋型メチルポリシロキサン重合物(KSG-16)には、20?30部の割合で「部分架橋型メチルポリシロキサン」が配合されているといえる。そして、以下の参考文献2によると、KSG-16に配合されている「部分架橋型メチルポリシロキサン」は、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーであって、体積平均粒径が約5μmの粉体であるから(段落[0058]参照)、本願補正発明でいうところの「30μm未満且つ1μmより大きい体積径を有する」とされる「シリコーン樹脂粉末」であるといえる。
また、以下の参考文献3によると、この粉体の屈折率は、1.2から1.45の範囲であるから(請求項1、4及び段落【0039】参照)、この粉体は、「2以下の屈折率」を有するものである。
次に、上記粉体が本願補正発明でいうところの「艶消しフィラー」といえるかについて検討すると、本願明細書【0063】段落には、艶消し性質は正反射と拡散反射の比Rによって評価される指標であり、R値は、艶消し効果が大きいほど比例して小さくなることが記載されている。そして、一般に、拡散反射率が高く、正反射率が低い粉末は、ソフトフォーカス効果、すなわちぼかし効果を有していることが知られているから(必要であれば、以下参考文献4の第34頁左欄第9行?右欄第14行参照)、本願補正発明における「艶消し」は、「ソフトフォーカス」や「ぼかし」と同等の効果を意味を有するものと解される。他方、引用文献1においては、成分(E)が、くすみやくまをぼかして目立たなくさせる効果を有することが記載されている(上記記載事項(1-3)参照)。ここで、引用文献1には、成分(E)として用いる「部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物」は、低粘度シリコーンと混合して用いてもよいことが記載されており、その具体例として「KSG-16(部分架橋型メチルポリシロキサン20?30部とメチルポリシロキサン70?80部)」が挙げられている(上記記載事項(1-3)参照)。そうすると、引用発明1において、実質的に成分(E)として用いられているのは、KSG-16中に20?30部配合されている「部分架橋型メチルポリシロキサン」の粉体であることは明らかであり、この粉体は「くすみやくまをぼかして目立たなくさせる効果」を有するものであるといえる。よって、引用発明1のKSG-16中に配合されている上記粉体は、本願補正発明でいうところの「艶消しフィラー」といえるものである。
さらに、本願発明1には、KSG-16が1.5質量%配合されているところ、引用発明1における「質量%」は、本願発明1における「重量%」と同義であると解することができるから、引用発明1のKSG-16中に配合されている上記粉体の総含量は「組成物の総重量に対して4重量%以下」であるといえる。
そうすると、引用発明1において、KSG-16中に20?30部配合されている粉体である「部分架橋型メチルポリシロキサン」は、本願補正発明において「総含量が組成物の総重量に対して4重量%以下」であるとされる、「(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率および30μm未満且つ1μmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラー」に相当するものである。

参考文献2:国際公開第2013/065643号
参考文献3:特開2005-194277号公報
参考文献4:フレグランスジャーナル、2005年、Vol.33、No.9、p.33-38

ウ.その他について
引用発明1における「精製水」及び「目元用油中水型リキッドコンシーラー」はそれぞれ、本願補正発明における「生理学的に許容される媒体」及び「ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物」に相当する。
また、引用発明1においては、上述した成分以外に、セレシンワックスなどの成分が配合されているが、本願発明1においては、「生理学的に許容される媒体」、「顔料(i)」、「艶消しフィラー(ii)」及び「酸化鉄」以外の成分に関する規定はなく、他の成分を含む場合が包含されるから、この点は相違点とはならない。

エ.相違点
上記ア?ウにおける検討を踏まえると、本願補正発明と引用発明1とは次の点で一致し、次の点で相違すると認められる。

<一致点>
「生理学的に許容される媒体中に、
(i)1.6以上の屈折率および30μm未満且つ500nmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料と、
(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率および30μm未満且つ1μmより大きい体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラーと
を含む、ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物であって、艶消しフィラー(ii)の総含量が組成物の総重量に対して4重量%以下である化粧用組成物。」

<相違点>
本願補正発明においては、「組成物の総重量に対して0.1重量%以下の含量の酸化鉄を含む」ことが特定されているのに対し、引用発明1においては、0.85質量%の酸化鉄(=0.2質量%(ベンガラ)+0.5質量%(黄酸化鉄)+0.15質量%(黒酸化鉄))が含まれている点。

(4)相違点についての判断
引用文献1には、酸化鉄を成分(F)(着色顔料)として配合し得ること、成分(F)の配合量は0.1?15質量%が好ましいこと、及び、目元の肌色に近い色調、若しくは目元の肌色よりも多少明るい色調が白色顔料により白くなり過ぎるのを抑え、自然な化粧膜を得るために成分(F)を配合し得ること、が記載されている(上記記載事項(1-4)参照)。
そうすると、引用発明1において、化粧用組成物の色調を所望のものとするために、成分(F)の配合量を適宜調整することは当業者の通常の創作能力の発揮であって、その際に、成分(F)の合計値が0.1?15質量%となる範囲内で、着色顔料の一つであるにすぎない酸化鉄を0.1重量%以下の量で配合することも、当業者が適宜なし得た事項である。

(5)効果について
本願補正発明の効果について、本願明細書には、「本発明の組成物を目の周りの領域に塗布すると、自然な「素肌」外観を維持しながら、くまおよび局所的美的欠陥の視認性を有意に減少させることが可能になる。」(段落【0165】参照)と記載されている。
他方、引用発明1の効果について、引用文献1には、「化粧膜の自然さに優れ、目の周りのくまやくすみをカバーする効果が高く」と記載されるとともに(上記記載事項(1-2)参照)、引用発明1を用いた実施例において、「化粧膜の自然さ」及び「くすみカバー効果」がいずれも「◎」であることが示されている(上記記載事項(1-5)参照)。
そうすると、本願補正発明による効果は、引用発明1において奏される効果と実質的に同等であって、本願補正発明によって、引用文献1及び技術常識から予測し難い格別な効果が奏されるとは認められない。

(6)小括
上記検討のとおり、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.まとめ
以上、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成28年1月14日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1及び2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、次のとおりである。(なお、本願発明2は、本件補正によって変更されておらず、仮に本件補正が却下されなかったとしても同じ内容である。)

<本願発明1>
「生理学的に許容される媒体中に、
(i)1.6以上の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料と、
(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラーと
を含む、ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物であって、艶消しフィラー(ii)の総含量が組成物の総重量に対して4重量%以下であることを特徴とする化粧用組成物。」

<本願発明2>
「生理学的に許容される媒体中に、
(i)1.6以上の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料と、
(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラーと
を含む、ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物であって、以下の光学的性質:
本明細書に記載するプロトコルに従って測定される、
-25<ΔC<-2(Cは彩度である)
5<ΔL<30(Lは輝度である)
50 を有することを特徴とする化粧用組成物。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、要するに、以下の理由A及びBを含むものである。

理由A:本願発明1は、本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。(理由2)
理由B:本願発明2は、本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。(理由3)

・引用文献1 特開2005-298482号公報
・引用文献3 特表2007-518748号公報

3.理由Aについて
(1)引用文献の記載事項
引用文献1の記載事項は、上記第2の5.(1)にて摘記のとおりである。

(2)引用発明の認定
引用発明1は、上記第2の5.(2)にて認定のとおりである。

(3)対比
本願発明1は、本願補正発明との比較において、(i)の顔料の体積径について「且つ500nmより大きい」との発明特定事項、(ii)の艶消しフィラーの体積径について「且つ1μmより大きい」との発明特定事項、及び、化粧用組成物について「組成物の総重量に対して0.1重量%以下の含量の酸化鉄を含む」との発明特定事項、を有しないものである(上記第2の2.参照)。
そして、上記第2の5.(3)にて検討のとおり、本願補正発明と引用発明1は、組成物中の酸化鉄の含有量以外の点では一致するものであるところ、上述のとおり、本願発明1には、酸化鉄の含有量に関する発明特定事項が存在しないから、本願発明1と引用発明1には相違点が存在しないこととなる。
よって、本願発明1と引用発明1とは同一である。

(4)小括
そうすると、本願発明1は引用文献1に記載された発明であるといえる。

4.理由Bについて
(1)引用文献の記載事項
引用文献3には、以下の事項(3-1)?(3-8)が記載されている。(なお、下線は当審による。)

(3-1)「【請求項1】
(i)架橋シリコーンエラストマー、
(ii)平均粒度300nm未満の酸化亜鉛または酸化ジルコニウム、
(iii)10,000から30,000nmの平均粒度を有している小円板形光反射性無機材料粒子、および
(iv)化粧品に許容される担体系
を含む化粧組成物。」
(3-2)「【0001】
本発明は皮膚の見掛けを改善する組成物、特に、皮膚の自然な見掛けを維持しながらも毛穴などの欠陥及び皮膚の不均一な色調を良好に隠蔽する組成物に関する。」
(3-3)「【0004】
艶消効果で皮膚の欠陥を隠蔽することが望まれると同時に、健康な皮膚の透明感(radiance)を得ることも望まれている。過度に不透明な化粧被膜はペイント状塗膜で皮膚を隠蔽する。欠陥は隠れるが透明感がない。光透過が十分に阻止されないときは逆の現象が生じる。この場合には皮膚が、その色艶は健康的であるが美的には喜ばれない表面状態となり、色があらわになる。」
(3-4)「【0010】
(架橋シリコーンエラストマー)
本発明の1つの成分は架橋シリコーン(オルガノポリシロキサン)エラストマーである。・・・
・・・
【0015】
ジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー及びジメチコーンクロスポリマーは、Dow Corning(9040、9041、9045、9506 及び9509)、General Electric(SFE 839),Shin Etsu(KSG-15、16、18[ジメチコーン/フェニルビニルジメチコーンクロスポリマー])、及び、Grant Industries(Gransil^(TM)系材料)、のような多様な供給業者から入手可能であり、ラウリルジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマーはShin Etsuによって供給されている(例えば、KSG-31、KSG-32、KSG-41、KSG-42、KSG-43及びKSG-44)。
【0016】
その他の適当な市販のシリコーンエラストマー粉末は、Shin-EtsuからKSP-100、KSP-101、KSP-102、KSP-103、KSP-104、KSP-105として販売されているビニルジメチコーン/メチコーンシルセスキオキサンクロスポリマー、及び、Shin-EtsuからそれぞれKSP-200及びKSP-300として販売されているフルオロアルキル基またはフェニル基を含有しているハイブリッドシリコーン粉末である。」
(3-5)「【0017】
本発明の架橋シリコーンエラストマーは、化粧組成物の約0.01-約30重量%の範囲、好ましくは約0.1-約10重量%の範囲、最適には約0.5-約2重量%の範囲の濃度で存在し得る。これらの重量値は、Dow Corning製品9040及び9045のような市販の“エラストマー”シリコーンに見出されるシクロメチコーンのような溶媒を除外した値である。例えば、9040及び9045中の架橋シリコーンエラストマーの量は12-13重量%の範囲である。
【0018】
最も好ましいシリコーンエラストマーは、(体積基準で球形粒子として計算して)シクロメチコーン膨潤エラストマー粒度D5を有している9045であり、この粒度は平均約38ミクロンで、約25-55ミクロンの範囲である。」
(3-6)「【実施例1】
【0070】
一連の配合組成についてそれらの光学特性を調べた。これらを以下の表Iに示す。
【0071】
【表2】


(3-7)「【0072】
(光学測定値)
不透明度は、媒体またはフィルムに垂直に照射された透過光ビームの減衰強度を表す尺度である。直射ビームの減衰が大きいほど、不透明度が高い。光ビームの減衰には二重の原因がある。A)初期光のあるものはフィルム/媒体から反射される。これによってフィルム/媒体は極めて隠蔽力の大きい純白/不透明な見掛けに成る。顔料銘柄のTiO_(2)を配合物に使用するとこの効果が得られる。B)光のあるものは、直進ビーム軌道から逸れながらもフィルム/媒体を透過する。その結果として、フィルム/媒体が透明から半透明に変わり、“ぼかした”像を作成する。これを表す別の用語がソフトフォーカスである。
【0073】
手順:ドローダウンバーを使用してプラスチックのオーバーヘッド透明シートに配合物の3mil(76.2μm)フィルムを塗布(またはドローダウン)する。フィルムを室温で2時間乾燥させる。被覆されたオーバーヘッド透明シートを取り出し、Instrument Systemsゴニオ分光光度計に配置する。被覆された透明シートに垂直な直線内に光源とデテクタとを配列する。光源(本文中に報告したすべての透過強度値の基準として使用する209,000,000Watt-nm/cm^(2)に設定)を点灯し、透過光強度を測定する。デテクタを直接透過法線から10、30、40、50度移動させて更に測定する。これらの値は、ソフトフォーカス光散乱の程度を示す。光源及びデテクタの位置を変える以外は不透明度/ソフトフォーカス光散乱と同様にして製品の反射率即ち“放射束”を測定する。デテクタは法線/垂線の一方側に30度、光源は他方側に20度の位置に配置する。強度減衰の程度を測定するために、強度の値を被覆されないオーバーヘッド透明シートの値に比較する。これらの2つの値の差が減衰の程度即ち不透明度である。」
(3-8)「【0074】
結果:組成物の光学特性に対するいくつかの成分の効果を、これらの成分を除いた配合物を試験することによって評価した。結果を表IIに示す。
【0075】
【表3】

【0076】
サンプル1は本発明の好ましい実施態様である。この配合組成の場合、すべての角度の透過強度(不透明度)及び反射強度は、ソフトフォーカス及び透明感の双方を得るために必要なパラメーターの範囲内に維持されていた。シリコーンエラストマー(Dow Corning 9o45)に代えてサンプル2のシクロペンタシロキサン(Dow Corning)を使用すると、4つの角度の透過強度が適格範囲から逸脱した。・・・。」

(2)引用発明の認定
上記記載事項(3-1)、(3-2)及び(3-6)のサンプル1によると、引用文献3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「以下の組成を有する、皮膚の見掛けを改善する化粧組成物。

Polysorbate 40 1.62重量%
セチルアルコール 1.55重量%
グリセリンモノステアレート 0.78重量%
リノール酸 0.10重量%
ステアリン酸 0.25重量%
コレステロール 0.20重量%
グリセリン 9.00重量%
エチルヘキシルサリチレート 2.00重量%
エチルエキシルメトキシシンナメート 4.00重量%
ジメチコーン 1.00重量%
配合助剤 0.50重量%
シリコーンエラストマー(Dow Corning 9045)
20.00重量%
タウレートコポリマー 0.80重量%
酸化亜鉛(Z-Cote(登録商標) HP1分散液(65% ZnO)) 3.08重量%
ポリメチルメタクリレート 0.50重量%
マイカ 0.50重量%
TiO_(2)被覆マイカ 1.00重量%
水 53.12重量%」

(3)対比
以下、本願発明2と引用発明3とを対比する。

ア.顔料(i)について
引用発明3には、酸化亜鉛(Z-Cote(登録商標) HP1分散液(65% ZnO))が3.08重量%配合されている。
ここで、上記記載事項(3-1)によると、酸化亜鉛は成分(ii)として配合されているから、その平均粒度は300nm未満であり、また、以下の参考文献5によると、酸化亜鉛の屈折率はおよそ1.9である(右欄第5?6行)。
したがって、引用発明3における「酸化亜鉛(Z-Cote(登録商標) HP1分散液(65% ZnO))」は、本願発明2における「(i)1.6以上の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料」に相当するものである。

参考文献5:フレグランスジャーナル、1993年、Vol.32、No.12、p.133

イ.艶消しフィラー(ii)について
引用発明3には、シリコーンエラストマー(Dow Corning 9045)が20.00重量%配合されている。
ここで、引用文献3には、Dow Corning 9045が、架橋シリコーンエラストマーを12-13%含有していること、及び当該エラストマーの粒度が平均約38ミクロンであること、が記載されている(上記記載事項(3-5)参照)。よって、引用発明3のシリコーンエラストマー(Dow Corning 9045)に含有されている架橋シリコーンエラストマー粒子は、本願発明2でいうところの「シリコーン樹脂粉末」であるといえる。
また、この粒子は、上記第2の5.(3)イ.で指摘したKSG-16中に含まれている「部分架橋型メチルポリシロキサン」の粉体と同じ架橋シリコーンエラストマーであり、当該粉体の屈折率(1.2?1.45)と同程度の屈折率を有する蓋然性が高いので、「2以下の屈折率」を有するものであると認められる。
次に、上記粒子が本願発明2でいうところの「艶消しフィラー」といえるかについて検討すると、引用文献3には、【表2】に示されたサンプル1(引用発明3)の架橋シリコーンエラストマー(Dow Corning 9045)に代えてシクロペンタシロキサンを使用した場合(サンプル2)に、4つの角度の透過強度が適格範囲から逸脱したことが記載されており、具体的には、透過角度0度、30度、40度、50度の4つの角度において、適格範囲から逸脱することが示されている(上記記載事項(3-8)参照)。ここで、引用文献3の段落【0073】の「デテクタを直接透過法線から10、30、40、50度移動させて更に測定する。これらの値は、ソフトフォーカス光散乱の程度を示す。」(上記記載事項(3-7)参照)との記載を考慮すると、架橋シリコーンエラストマー粒子を含むサンプル1(引用発明3)ではソフトフォーカス光散乱が適格範囲内であるのに対し、架橋シリコーンエラストマー粒子を含まないサンプル2では、ソフトフォーカス光散乱が適格範囲から外れているといえるから、引用発明3において、架橋シリコーンエラストマー粒子は、化粧組成物のソフトフォーカス効果に寄与する成分であることが理解できる。他方、上記第2の5.(3)イ.にて本願補正発明の「艶消し」について述べたことと同様に、本願発明2における「艶消し」もまた、「ソフトフォーカス」や「ぼかし」と同等の効果を意味を有するものと解されるから、引用発明3における上記架橋シリコーンエラストマー粒子は、本願発明2でいうところの「艶消しフィラー」といえるものである。
そうすると、引用発明3において、Dow Corning 9045中に12-13%含有されている架橋シリコーンエラストマー粒子は、本願発明2における「(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラー」に相当するものである。

ウ.その他について
引用発明3における「水」及び「皮膚の見掛けを改善する化粧組成物」はそれぞれ、本願発明2における「生理学的に許容される媒体」及び「ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物」に相当する。
また、引用発明3においては、上述した成分以外に、Polysorbate 40などの成分が配合されているが、本願発明2においては、「生理学的に許容される媒体」、「顔料(i)」、「艶消しフィラー(ii)」以外の成分に関する規定はなく、他の成分を含む場合が包含されるから、この点は相違点とはならない。

エ.相違点
上記ア?ウにおける検討を踏まえると、本願発明2と引用発明3とは次の点で一致し、次の点で相違すると認められる。

<一致点>
「生理学的に許容される媒体中に、
(i)1.6以上の屈折率および30μm未満の体積径を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状、無機または有機の白色粒子の形態の少なくとも1種の顔料であって、酸化チタン、酸化亜鉛、任意選択により分散したオキシ塩化ビスマス、不溶性バリウム塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、石膏、鉱物、動物もしくは植物起源の天然粉末、白亜粉末、石膏粉末、アラバスター粉末もしくは亜セレン酸塩粉末、卵殻もしくは甲殻類粉末、植物象牙、およびこれらの混合物から選択される顔料と、
(ii)前記顔料(i)とは異なる、2以下の屈折率を有する、多孔性または非多孔性、球状または非球状の粒子の形態の少なくとも1種の艶消しフィラーであって、
- シリカの多孔性微粒子、
- シリコーン樹脂粉末、
- シリコーンの中空半球状粒子、
- シリコーン樹脂でコーティングされた架橋エラストマーオルガノポリシロキサン粉末、
- 真珠岩、
- およびこれらの混合物
から選択される艶消しフィラーと
を含む、ケラチン物質をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物」

<相違点>
相違点1:艶消しフィラー(ii)について、本願発明2においては、「30μm未満の体積径を有する」ことが特定されているのに対し、引用発明3では、粒度が平均約38ミクロンの粒子が用いられている点。
相違点2:本願発明2においては、化粧料用組成物が、以下の光学的性質を有することが特定されているのに対し、引用発明3においては、そのことが特定されていない点。
「本明細書に記載するプロトコルに従って測定される、
25<ΔC<-2(Cは彩度である)
5<ΔL<30(Lは輝度である)
50
(4)相違点についての判断
ア.相違点1について
引用文献3には、(i)成分の「架橋シリコーンエラストマー」として、Dow Corning 9045のみならず、例えばKSP-100、KSP-101、KSP-105、KSP-300などのシリコーンエラストマー粉末を使用し得ることが記載されている(上記記載事項(3-4)参照)。
そして、以下の参考文献6によると、上述したシリコーンエラストマー粉末は、いずれも30μm未満の平均粒径を有するものである(第14頁参照)。(なお、前述した参考文献3によると、これらの粉末の屈折率は、1.2から1.45の範囲である(請求項1、4及び段落【0040】?【0041】参照)。)
よって、引用発明3において、(i)成分の「架橋シリコーンエラストマー」として、Dow Corning 9045に代えて、引用文献3に例示された、KSP-100等の平均粒径が30μm未満のシリコーン樹脂粉末を用いることは、当業者が容易になし得た事項である。

参考文献6:信越化学工業株式会社、化粧品用シリコーン オリジナル原料、online、日本、信越化学工業株式会社。2010年6月、8頁、インターネット<URL:http://sz.tipsun.com/www.silicone.jp/j/catalog/pdf/pc_original_j.pdf>
(拒絶査定時の引用文献6)

イ.相違点2について
皮膚に適用するメイクアップ化粧料において、その色調が重要であることは当業者に自明の事項であり、色調を表現するに当たり、彩度や輝度は、文献を挙げるまでもなく慣用のパラメータであるから、引用発明3において、化粧組成物を塗布する前後の彩度や輝度の変化の程度を所望の範囲に設定することは、当業者が適宜なし得た事項である。
また、引用文献3には、発明の解決すべき課題として、「艶消効果で皮膚の欠陥を隠蔽することが望まれると同時に、健康な皮膚の透明感(radiance)を得ることも望まれている。」と記載されているから(上記記載事項(3-3)参照)、引用発明3において、「健康な皮膚の透明感」を得るために、化粧組成物の透明度を所望の範囲に設定することも、当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。
(そもそも、以下(5)に示すとおり、引用発明3は、本願発明2と同様の効果を奏するものであるから、本願発明2と同等の光学的性質を有している蓋然性も高い。)

(5)効果について
本願発明2の効果について、本願明細書には、「本発明の組成物を目の周りの領域に塗布すると、自然な「素肌」外観を維持しながら、くまおよび局所的美的欠陥の視認性を有意に減少させることが可能になる。」(段落【0165】参照)と記載されている。
他方、引用発明3の効果について、引用文献3には、「本発明は皮膚の見掛けを改善する組成物、特に、皮膚の自然な見掛けを維持しながらも毛穴などの欠陥及び皮膚の不均一な色調を良好に隠蔽する組成物に関する。」(上記記載事項(3-2)参照)と記載されるとともに、引用発明3を用いた実施例において、「ソフトフォーカス及び透明感の双方を得るために必要なパラメーターの範囲内に維持されていた。」ことが示されている(上記記載事項(3-8)参照)。
そうすると、本願発明2による効果は、引用発明3において奏される効果と実質的に同等であって、本願発明2によって、引用文献3及び技術常識から予測し難い格別な効果が奏されるとは認められない。

(6)小括
上記のとおり、本願発明2は、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、本願発明2は本件補正によって変更されていないのであるから、本願発明2についてのこのような進歩性に係る判断は、上記第2における本件補正の却下決定の当否に何ら左右されないことを、念のため付言しておく。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない。
また、本願発明2は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、
本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-31 
結審通知日 2017-09-04 
審決日 2017-09-19 
出願番号 特願2013-539268(P2013-539268)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 駒木 亮一森井 隆信山本 吾一  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 安川 聡
関 美祝
発明の名称 顔および目をケアおよび/またはメイクアップするための化粧用組成物  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
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