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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特174条1項  F21S
審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
管理番号 1336995
異議申立番号 異議2017-700006  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-05 
確定日 2017-12-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5950141号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5950141号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第5950141号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5950141号の請求項1および2に係る特許についての出願は、平成27年6月8日に特許出願され(出願遡及日平成23年1月11日)、平成28年6月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 西村太一、および、梯七枝により、それぞれ特許異議の申立てがされ、平成29年4月11日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年6月16日に意見書の提出および訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があったものである。なお、本件訂正請求に対して,両特許異議申立人に対して意見書の提出を求めたところ、両特許異議申立人から意見書の提出はなかった。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所である)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の記載を、「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体と;実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設されたサークル上の基板と;前記開口部を中心とする円周上に複数列前記基板に実装された発光素子と;前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;を具備することを特徴とする照明器具。」に訂正する。
また、特許請求の範囲の請求項2の記載を、「前記拡散部材に対して所定の距離を有するように前記本体に着脱可能に取付けられるカバー部材を有していることを特徴とする請求項1記載の照明器具。」に訂正する。
イ 訂正事項2
明細書の段落【0008】の記載を、「本発明の実施形態による照明器具は、器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体と;実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設されたサークル上の基板と;前記開口部を中心とする円周上に複数列前記基板に実装された発光素子と;前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;を備えている」に訂正する。
ウ 訂正事項3
訂正前の明細書の段落【0015】の「全体としル状に」という記載を、「全体として略サークル状に」に訂正する。
エ 訂正事項4
訂正前の明細書の段落【0023】の「基板21の全面を覆うように配設されている。」という記載を、「基板21の実装面側の全面を覆うよう、基板21の実装面側に重ね合わせられるように配設されている。」に訂正する。
オ 訂正事項5
訂正前の明細書の段落【0025】の「基板21の全面が覆われるようになっている」という記載を、「基板21の実装面側の全面が覆われるようになっている。」に訂正する。
カ 訂正事項6
訂正前の明細書の段落【0028】の「拡散部材3には、平坦部33が形成されていて基板21の全面を覆うようになっているので」という記載を、「拡散部材3には、平坦部33が形成されていて基板21の実装面側の全面を覆うようになっているので」に訂正する。
キ 訂正事項7
訂正前の明細書の段落【0032】の「基板21の全面が本体1に接触する場合に限らない」という記載を「基板21の裏面側の全面が本体1に接触する場合に限らない」に訂正する。
ク 訂正事項8
訂正前の明細書の段落【0045】の「器具本体を」という記載を、「本体1を」に訂正する。
ケ 訂正事項9
訂正前の明細書の段落【0052】の「拡散部材3は、基板21の全面を覆うようになっているので」という記載を、「拡散部材3は、基板21の実装面側の全面を覆うようになっているので」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無および特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 上記(1)アの訂正のうち、訂正前の請求項1の「開口部を有する器具本体と」および「器具本体の内周方向及び外周方向に」を、それぞれ「開口部を有する本体と」および「前記本体の内周方向及び外周方向」とする訂正は、訂正前の請求項1に係る「器具本体」が、明細書との関係で不明瞭であったものを、明細書での「本体1」と用語を統一することにより明瞭にするものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。そして、「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する」のが、本体であることは、例えば、明細書段落【0013】?【0014】、【図1】?【図4】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、また、この訂正によりカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 上記(1)アの訂正のうち、訂正前の請求項1の「前記発光素子に対向して断面形状が突状部として形成されているとともに」を、「前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに」とする訂正は、訂正前の請求項1に係る「レンズ部材としての拡散部材」について、「発光素子に対向して断面形状が突状部として形成されている」を、「発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されている」という点を技術的に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるといえる。そして、この訂正に係る訂正事項は、明細書段落【0023】?【0024】、【図5】、【図7】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、また、この訂正によりカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 上記(1)アの訂正のうち、訂正前の請求項1の「前記基板の全面が覆われるように前記基板の前面側に重ね合わされるように」を、「前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように」とする訂正は、訂正前の請求項1の記載において、「レンズ部材としての拡散部材」を「基板の前面側に重ね合わされるように配設」することにより「基板の全面が覆われる」とされとのように、「基板の全面」のとらえ方によっては(前面、後面、側面の全部の面を含む場合)、技術的に整合しない記載であったものを、「レンズ部材としての拡散部材」を「基板の実装面側に重ね合わされるように配設」することにより「基板の実装面側の全面を覆う」ものという、技術的に整合する記載とするものであるといえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。そして、この訂正に係る訂正事項は、明細書の段落【0052】、【図4】、【図5】、【図7】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、また、この訂正によりカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
エ 上記(1)アの訂正のうち、請求項2についての訂正は、上記(1)アの訂正のうち、訂正前の請求項1の「開口部を有する器具本体と」および「器具本体の内周方向及び外周方向に」を、それぞれ「開口部を有する本体と」および「前記本体の内周方向及び外周方向」とする訂正に連動するものである。よって、上記アと同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえ、新規事項の追加に該当せず、また、この訂正によりカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
オ 上記(1)イ、エ、オ、カ、クおよびケの訂正は、上記(1)アの訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載に整合しない部分が生じるのを解消することを目的とする訂正であるといえ、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。そして、上記(1)アの訂正による訂正事項については、上記ア?エで述べたように、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、上記(1)イ、エ、オ、カ、クおよびケの訂正による訂正事項も同様に新規事項追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
カ 上記(1)ウの訂正は、訂正前の「全体としル状に」という、誤記であることが明らかな記載を、「全体として略サークル状に」と訂正するものであるから、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであるといえる。そして、基板が全体として略サークル状に形成されていることは、明細書の段落【0015】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
キ 上記(1)キの訂正は、基板21と本体1との面接触が、基板21の裏面側の全面においてなされることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。そして、この訂正に係る訂正事項は、明細書の段落【0031】に記載されているから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ク 上記(1)アの訂正は、一群の請求項1、2に対してなされたものである。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第3項に適合する。
また、上記(1)イ?ケの訂正は、一群の請求項1、2に関係する明細書の訂正である。したがって、訂正事項2?9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項に適合する。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項および同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1および2に係る発明(以下、「本件発明1」および「本件発明2」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1および2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明1
「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体と;
実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設されたサークル状の基板と;
前記開口部を中心とする円周上に複数列前記基板に実装された発光素子と;
前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」
本件発明2
「前記拡散部材に対して所定の距離を有するように前記本体に着脱可能に取り付けられるカバー部材を有していることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1および2に係る特許に対して平成29年4月11日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
ア 請求項1および2に係る特許は、下記(ア)?(エ)の点で、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法第113条第4項に該当し取り消されるべきものである。
(ア)本件明細書の段落【0015】の「全体としてル状」との文言で規定しようとする形状、構造が不明。
(イ)本件明細書の段落【0008】および【0045】の「器具本体」の構造が不明。
(ウ)本件明細書の段落【0008】の「突状部」の構造が不明。
(エ)本件明細書の【0008】、【0023】、【0025】、【0028】、【0032】および【0052】の「基板の全面」との文言でいうところの「全面」とは基板のどの部分なのか不明。
イ 請求項1および2に係る特許は、下記(ア)および(イ)の点で、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法第113条第4項に該当し取り消されるべきものである。
(ア)請求項1の「器具本体」および「突状部」について、明細書で使用されている用語と統一されていないため、請求項1に係る発明と発明の詳細な説明に記載された事項の対応関係が不明瞭である。
(イ)請求項1の「レンズ部材としての拡散部材」について、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていない。
ウ 請求項1および2に係る特許は、下記(ア)の点で、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法第113条第4項に該当し取り消されるべきものである。
(ア)請求項1の「基板の全面」が不明瞭。

(3)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法第36条第4項第1号について
上記2.(1)イ?ケの訂正により、本件特許明細書(訂正請求書に添付された訂正明細書)の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分記載されているものであることとなった。
(イ)特許法第36条第6項第1号について
上記2.(1)ア、イ、エ?カ、クおよびケの訂正により、本件特許の特許請求の範囲(訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲)の記載は、本件発明1および2が発明の詳細な説明に記載したものであることとなった。
(ウ)特許法第36条第6項第2号について
上記2.(1)ア、イ、エ、オ、カ、キおよびケの訂正により、本件発明1および2は明確であることとなった。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許異議申立人 西村太一は、上記取消理由通知において採用した特許異議申立理由(特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6項第1号および第2号)とともに、下記刊行物1?刊行物8(異議申立書中では、それぞれ甲第1号証?甲第8号証)を提出し、刊行物1を主たる引用例その他の刊行物2?8を従たる引用例として、本件特許の特許請求の範囲の請求項1および2に係る発明の特許は、刊行物1?8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張しているので、以下この点について検討する。

a 各刊行物
刊行物1:特開2008-124008号公報
刊行物2:特開2002-367406号公報
刊行物3:特開2008-139708号公報
刊行物4:特開2010-67367号公報
刊行物5:特開2010-192347号公報
刊行物6:特開平10-83148号公報
刊行物7:実用新案登録第3154761号公報
刊行物8:特開2010-49830号公報

b 刊行物1に記載の事項および発明
上記刊行物1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
(i)「【0001】
本発明は、LEDユニット、LEDユニットの製造方法、及びLEDユニットを用いた天井用照明器具に関し、詳しくは環状または略C状を成すLEDユニットに画期的な実用性及び経済性をもたらすものである。」
(ii)「【0007】
まず、図1と図2に示す天井用照明器具について説明する。この照明器具は、天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と、好ましくは第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4と、第二本体3の上方空間に収められ例えば第一本体1の下面に設けられた、LEDユニット4のための点灯制御回路部5と、第一本体1の外周部付近において取り付けられLEDユニット4が覆われる透光性材料(例えば合成樹脂)などによるグローブ6とを備えている。
【0008】
第一本体1、第二本体3の材質としては例えば、鉄、アルミなどを用いる。第一本体1、第二本体3の少なくとも下面側は例えば白色の塗装膜・樹脂コーティング膜・セラミック膜などの薄膜が形成されて光反射性を有し、光反射率を例えば90%以上としている。LEDユニット4の発熱は第一本体1及び第二本体3に放熱されてLEDユニット4の温度上昇を抑えている。第一本体1の下面周部には図示されないグローブ支持具などを設けており、これに対してグローブ6が着脱可能に支持される。第二本体3の略中央には孔7が形成される。第一本体1は第二本体3よりも大径を成し、その略中央には孔8が形成されるとともに孔8の近辺は外周側部分よりも低く形成された段差状を成している。また、第二本体3には点灯制御回路部5から突設されたリモコン信号受信部9が貫通されている。なお、リモコン信号受信部9が第二本体3の上面側に配置され、第二本体3にはリモコン信号受信部9に対応する孔を形成してもよいし、さらに、その孔にリモコン信号が通過可能な樹脂板などを装着しておいてもよい。
【0009】
第一本体1及び第二本体3を含む本体は、その略中央部に天井Cへの取り付け機構が設けられ、LEDユニット4は、その本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものである。次に、その取り付け機構について述べる。天井Cには引掛ローゼット10が固定されており、引掛ローゼット10に対して本照明器具が取り付けられている。引掛ローゼット10はその下端に鍔状の係止部11があるタイプを例示している。第一本体1の中央付近の前記段差状部下面には例えば環状を成す被取付具12が固定され、その略逆L状の被係止部13がその背面側のバネ14により中心孔方向に付勢されて、被係止部13の先端下面が係止部11の上面に係止されることにより、本照明器具が天井Cにいわゆる直付け状態で取り付けられている。」
(iii)「【0012】
次に、LEDユニット4について図3?図7を参照して説明する。LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えている。これらのLEDエレメント23は、隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されているが、少なくとも一箇所において、その電気的接続のループが途切れている。そして、この途切れた箇所は一対の外部端子25、26に電気的接続され、かつ、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成されている。・・・」
(iv)「【0021】
次に、図12は本発明の他の実施形態を示し、透光性部材27の先端側を凸の湾曲状としており、透光性部材27の使用量を節約できる。・・・」
(v)「【0023】
以上の実施形態のLEDユニット4では、LEDチップ21は青色光、紫色光、または紫外光などを発光し、透光性部材27には前記青色光、紫色光、または紫外光などを可視光に変換するYAG蛍光体などの蛍光体、あるいは光の三原色に変換する蛍光体などが含まれるものなどが利用できる。・・・」
(vi)「【0027】
図21?図23は本発明のさらに他の実施形態を示し、それらのLEDユニット4においては、各LEDエレメント23は二重の略環状または略C状に配置され、一つのLEDユニット4によりさらに高光束を得ることができる。」
以上の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「天井Cに固定された引掛ローゼット10に対して取り付けられている天井用照明器具であって、
天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と、第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4とを備え、
第二本体3の略中央には孔7が形成されるとともに、第一本体1の略中央には孔8が形成され、
第一本体1及び第二本体3を含む本体は、その略中央部に天井Cへの取り付け機構が設けられ、
LEDユニット4は、本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものであり、
LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、
これらのLEDエレメント23は、隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されており、
各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成されており、
透光性部材27の先端側は凸の湾曲状としており、
透光性部材27には青色光、紫色光、または紫外光などを可視光に変換するYAG蛍光体などの蛍光体、あるいは光の三原色に変換する蛍光体などが含まれる、
天井用照明器具。」

c 対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
(a)引用発明1の「天井用照明器具」は、本件発明1の「照明器具」に相当する。
そして、引用発明1の「照明器具」は「天井C」に取り付けられているから、引用発明1の「天井C」は、本件発明1の「器具取付面」に相当する。
(b)引用発明1の「引掛ローゼット10」は、機能的にみて、本件発明1の「配線器具」に相当する。
(c)引用発明1の「照明器具」は、「天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と」「を備え」、その、「第二本体3の略中央には孔7が形成されるとともに、第一本体1の略中央には孔8が形成され」、「第一本体1及び第二本体3を含む本体は、その略中央部に天井Cへの取り付け機構が設けられ」ているから、引用発明1の「第一本体1及び第二本体3を含む本体」の略中央には孔7、8が形成され、「天井Cへの取付機構が設けられ」ているといえる。したがって、引用発明1の「第一本体1及び第二本体3を含む本体」は、本件発明1の「本体」に相当し、引用発明の「孔7」および「孔8」は、両者で本件発明1の「開口部」に相当する。
(d)上記(a)?(c)より、引用発明1の「天井Cに固定された引掛ローゼット10に対して取り付けられている照明器具であって」、「天井C側に設けられ本体を構成する金属製の第一本体1と、第一本体1の下面にビス2などの取付手段で取り付けられ本体を構成する金属製の第二本体3と」「を備え」、「第二本体3の略中央には孔7が形成されるとともに、第一本体1の略中央には孔8が形成され、第一本体1及び第二本体3を含む本体は、その略中央部に天井Cへの取り付け機構が設けられ」ているとの構成で、本件発明1の「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体と」「を具備する」に相当する構成を成す。
(e)引用発明1の「金属板22」および「LEDチップ21」は、それぞれ本件発明1の「基板」および「発光素子」に相当する。
引用発明1の「LEDユニット4」は、「第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられた」ものであり、「本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものであり」、「LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、これらのLEDエレメント23は、隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されて」 ているものである。したがって、引用発明1の「金属板22」は「LEDチップ21」を実装する実装面が下面側、すなわち、前面側に向けられて、本体の略中央に形成された孔7、8の周囲に略環状(サークル状)に配設されているといえるとともに、引用発明1の「LEDチップ21」は、本体の略中央に形成された孔7、8を中心とする円周上に金属板22に実装されているといえる。
したがって、引用発明1の「第二本体3の下面に接してビス2などの取付手段で取り付けられたLEDユニット4とを備え」、「LEDユニット4は、本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものであり、LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、これらのLEDエレメント23は、隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されて」いるとの構成は、本件発明1の「実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設されたサークル状の基板と;前記開口部を中心とする円周上に複数列前記基板に実装された発光素子と;」「を具備する」との構成との対比において、「実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設された基板と;前記開口部を中心とする円周上に前記基板に実装された発光素子と;」「を具備する」との限度で共通する。
(f)引用発明の1「透光性部材27の先端側は凸の湾曲状として」いるものであり、LEDチップ21から発せられた光を屈折させる作用を成すことは明らかであるから、レンズ部材であるといえる。また、引用発明1の「透光性部材27には青色光、紫色光、または紫外光などを可視光に変換するYAG蛍光体などの蛍光体、あるいは光の三原色に変換する蛍光体などが含まれる」から、蛍光体による光を拡散させる作用があることも明らかである。したがって、引用発明1の「透光性部材27」は、本件発明1の「レンズ部材としての拡散部材」に相当する。
また、引用発明1の「LEDユニット4は、本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものであり、LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、これらのLEDエレメント23は、隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されており、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成されて」いるものであり、かつ、「透光性部材27の凸の湾曲状として」いるから、上記(c)をも踏まえると、孔7、8を中心とする円周上に連続して形成され、LEDチップ21に対向する位置の断面形状が凸状、すなわち、突状として形成されているといえる。
さらに、引用発明1の「透光性部材27には青色光、紫色光、または紫外光などを可視光に変換するYAG蛍光体などの蛍光体、あるいは光の三原色に変換する蛍光体などが含まれる」から、引用発明1の「透光性部材27」にLEDチップ21から出射された光を、蛍光体の作用により少なくとも照明器具の内周方向及び外周方向に拡散させる作用があることは明らかである。
加えて、刊行物1の図5?7や図10?12の記載内容から、引用発明1の「透光性部材27」は、金属板22のLEDチップ21実装面側の全面が覆われるように金属板22の実装面側に重ね合わせるように配設されているといえる。
よって、引用発明1の「LEDユニット4は、本体の下面に前記取り付け機構を避けるように設けられているものであり、LEDユニット4は、LEDチップ21が支持された金属板22を含むLEDエレメント23を複数個備えており、これらのLEDエレメント23は、隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されており、各LEDエレメント23は環状を成すエポキシ樹脂その他合成樹脂などの電気絶縁性の透光性部材27に固着され、その中央部には窓孔28が形成されており、透光性部材27の先端側は凸の湾曲状としており、透光性部材27には青色光、紫色光、または紫外光などを可視光に変換するYAG蛍光体などの蛍光体、あるいは光の三原色に変換する蛍光体などが含まれる」との構成は、本件発明1の「前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;」「を具備する」との構成との対比において、「前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子に対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;」「を具備する」との限度で共通する。
(g)以上のとおりであるから、本件発明1と引用発明1の一致点および相違点は次のとおりといえる。
<一致点>
「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体と;
実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設された基板と;
前記開口部を中心とする円周上に前記基板に実装された発光素子と;
前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子に対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;
を具備する照明器具。」
<相違点1>
基板に関し、本件発明1では、「サークル状の基板」であるのに対し、引用発明1では、「隣り合う金属板22、22が互いに離間した状態で全体として略環状または略C状に配置され、各LEDエレメント23は、例えば金またはアルミなどの金属線24を用いて、所定の直列順序で電気的接続されて」いるものである点。
<相違点2>
発光素子に関し、本件発明1では、「複数列前記基板に実装され」ているのに対し、引用発明1では、「金属板22」によって「LEDチップ21が支持され」ているものである点。
<相違点3>
拡散部材に関し、本件発明1では、「複数列前記基板に実装された発光素子」「のそれぞれに対向して断面形状が突状に形成され」、かつ、「突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されて」いるものであるのに対し、引用発明1では、そのように特定されていない点。

d 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
(a)発光素子が実装された基板の実装面側に重ね合わせるように配設された拡散部材について、複数列前記基板に実装された発光素子のそれぞれに対向して断面形状が突状に形成され、かつ、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されている構成は、異議申立人 西村太一が提出したいずれの刊行物にも記載も示唆もなく、また、当業者にとって自明な構成ともいえない。
(b)刊行物1の【図21】?【図23】には、LEDチップ21を実装する金属板22からなるLEDエレメント23を二重に略環状に配置し、この二重に略円環状に配置したLEDエレメント23に透光性部材27重ね合わせるよう配設した構成が記載されているが、金属板22に対してLEDチップ21が複数列となるように実装することを示唆するものではないし、透光性部材27を二重に略円環状に配置したLEDエレメント23のそれぞれに対向して断面形状が突状となるように形成することを示唆するものでもない。
(c)刊行物2の段落【0015】?【0023】、【図2】、【図4】には、LED照明装置のリング状LED基板5の実装面に、LED6を複数列実装し、ほぼ半円形の断面形状をしたリング状拡散板3は、LED6が実装されたリング状LED基板5の実装面側に配設されており、しかも、リング状拡散板3は、平坦状の内周縁部分31および外周縁部分32を具備する構成が記載されている。しかしながら、そのリング状拡散板3は、複数列リング状基板5に実装されたLED6のそれぞれに対向して断面形状が突状に形成されるものではないし、そのことを示唆するものでもない。また、リング状拡散板3の平坦状の内周縁部分31および外周縁部分32は、リング状LED基板5の実装面側に配設されてはいるものの、リング状LED基板5に重ね合わせるように配設されるものではないし、そのことを示唆するものでもない。
(d)刊行物6の段落【0022】?【0028】、【図1】、【図5】には、ベースプレート2の表面2a上にLED線状発光体3が並べて実装され、LEDからの光を拡散させる断面が突出部4aとなる立体長方のプラスチック板4がベースプレート2の表面に重ね合わせるように配設され、プラスチック板4の両側辺部は平坦状となっている構成が記載されている。しかしながら、プラスチック板4の断面形状は、複数列前記ベースプレート2に実装されたLED線状発光体3のそれぞれに対向して断面形状が突状に形成されされるものではないし、そのことを示唆するものでもない。
(e)刊行物8のレンズ板70、160について、刊行物8は、実装基板20、120、130にLED発光装置30を複数列実装した場合、その断面形状を、そのそれぞれに対向して突状に形成することまでを示唆していない。
(f)刊行物3?5、7および8にも、相違点3に係る本願発明1の構成は記載されていないし、示唆もされていない。
なお、刊行物8のレンズ板70、160は、LED発光装置30が放射した光が光拡散シート60を通る際拡散した光を、所定の方向性を持つ光として出射する作用を成すものであるから(刊行物8の段落【0034】参照。)、本件発明1の、発光素子から出射された光を本体の内周方向及び外周方向に拡散させる「拡散部材」とは、その技術的意味において異なっているものである。
(f)したがって、引用発明において、相違点3に係る本件発明1の構成と成すことは、当業者といえど刊行物1?8に記載された事項に基づいて容易に想到し得ない。
(g)よって、その余の相違点について判断するまでもなく、本件発明1(及び本件発明1を減縮したものである本件発明2)は、刊行物1?刊行物8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

e 小括
以上のとおりであるので、特許異議申立人 西村太一の上記主張は理由がない。

(イ)特許異議申立人 梯七枝は、上記取消理由通知において採用した特許異議申立理由(特許法第36条第4項第1号、同法第36条第6項第1号および第2号)とともに、下記刊行物A?刊行物F(異議申立書中では、それぞれ甲第1号証?甲第6号証)を提出し、刊行物Aを主たる引用例その他の刊行物B?Fを従たる引用例として、本件特許出願の特許請求の範囲の請求項1および2に係る発明の特許は、刊行物A?Fに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨、および、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記発光素子に対向して断面形状が突状部として形成されている」との記載は、平成28年4月11日付け手続補正書により補正されたものであるところ、当該記載は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていないし、明細書の段落【0024】?【0026】の「突条部」以外のものを包含するものであるから、当該補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものであるから、同法113条第1号の規定により取り消されるべきものである旨主張しているので、以下、これらの点についてそれぞれ検討する。

a 特許法29条第2項について
(a) 各刊行物
刊行物A:特開2010-49830号公報
刊行物B:特開2009-283472号公報
刊行物C:特開2007-27072号公報
刊行物D:特開2002-270026号公報
刊行物E:特開2002-367406号公報
刊行物F:特開2008-139708号公報

(b) 刊行物Aに記載された発明
上記刊行物Aの【特許請求の範囲】の【請求項1】の記載からすれば、刊行物Aには、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「正面側に凹部からなる収容部を備えるとともに、裏面側には前記収容部に連続する複数のフィンが放射状に形成されている熱伝導性の筐体と、
前記収容部の底面上に配置されるLED実装用基板と、
前記LED実装用基板に実装される複数のLED発光装置と、
前記LED実装用基板上に配置されるリフレクタ板であって、正面側に向かって拡径する複数の開口部によって前記LED発光装置の各々の周囲にリフレクタ面を形成するリフレクタ板と、
前記リフレクタ板の正面側及び側面側を覆い、前記リフレクタ板を位置決めし且つ押圧した状態で前記筐体に固定されるレンズ板であって、前記開口部と同数のレンズ部を備え、各レンズ部は対応する前記開口部の上に位置するレンズ板と、
を備えるLED照明装置。」

(c) 対比
本件発明1と引用発明2を対比する。
i 引用発明2の「LED照明装置」は、本件発明1の「照明器具」に相当する。また、引用発明2の「筐体」は、本件発明1の「本体」に相当する。
ii 引用発明2の「LED照明装置」は「筐体」によって天井面へ取り付けられるものであるから(刊行物Aの段落【0022】、参照。)、引用発明2の「筐体」は、LED照明装置を取付ける天井面に取り付けられる部分を有するといえる。したがって、引用発明2の「正面側に凹部からなる収容部を備えるとともに、裏面側には前記収容部に連続する複数のフィンが放射状に形成されている熱伝導性の筐体」は、本件発明1の「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体」の対比において、「器具取付面に取り付けられる本体」との限度で共通する。
iii 引用発明2の「LED実装用基板」は、「筐体」の「正面側に」備えられた「凹部からなる収容部」の「底面上に配置される」ものであるから、LED実装面が正面側、すなわち、前面側に向けられて配設されているといえる。したがって、引用発明2の「前記収容部の底面上に配置されるLED実装用基板」は、本件発明1の「実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設されたサークル状の基板」との対比において、「実装面が前面側に向けられて配設された基板」との限度で共通する。
iv 引用発明の「LED発光装置」は、本件発明1の「発光素子」に相当する。したがって、引用発明2の「前記LED実装用基板に実装される複数のLED発光装置」は、本件発明1の「前記開口部を中心とする円周上に複数列前記基板に実装された発光素子」との対比において、「前記基板に実装された発光素子」との限度で共通する。
v 引用発明2の「レンズ板」は、「前記LED実装用基板上に配置される」「正面側に向かって拡径する複数の開口部によって前記LED発光装置の各々の周囲にリフレクタ面を形成するリフレクタ板」の「開口部と同数のレンズ部を備え、各レンズ部は対応する前記開口部の上に位置する」ものであり、しかも、「前記リフレクタ板の正面側及び側面側を覆い、前記リフレクタ板を位置決めし且つ押圧した状態で前記筐体に固定される」ものであるから、LED発光装置のそれぞれに対向してレンズ部が形成されるようにLED実装用基板の実装面側に重ね合わされるように配設されているといえる(なお、レンズ板とLED実装用基板とが重ね合わさっている点については刊行物Aの【図8】、【図9】も参照。)。そして、レンズ部の形状として刊行物Aには、断面形状が突状である凸レンズ形状が挙げられている(刊行物Aの段落【0015】参照。)
したがって、引用発明2の「前記LED実装用基板上に配置されるリフレクタ板であって、正面側に向かって拡径する複数の開口部によって前記LED発光装置の各々の周囲にリフレクタ面を形成するリフレクタ板と、前記リフレクタ板の正面側及び側面側を覆い、前記リフレクタ板を位置決めし且つ押圧した状態で前記筐体に固定されるレンズ板であって、前記開口部と同数のレンズ部を備え、各レンズ部は対応する前記開口部の上に位置するレンズ板」は、本件発明1の「前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材」との対比において、「前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材」との限度で共通する。
vi 以上のとおりであるから、本件発明1と引用発明2の一致点および相違点は次のとおりといえる。
<一致点>
「器具取付面に取り付けられる本体と;
実装面が前面側に向けられて配設された基板と;
前記基板に実装された発光素子と;
前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材と;
を具備する照明器具。」
<相違点A>
本体に関し、本件発明1は、「器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する」ものであるのに対し、引用発明2は、そのように特定されていない点。
<相違点B>
基板に関し、本件発明1は、「前記開口部周囲に配設されたサークル状の基板」であるのに対し、引用発明2では、「前記収容部の底面上に配置されるLED実装用基板」である点。
<相違点C>
レンズ部材に関し、本件発明1は、「前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材」であるのに対し、引用発明2では、「前記リフレクタ板の正面側及び側面側を覆い、前記リフレクタ板を位置決めし且つ押圧した状態で前記筐体に固定されるレンズ板であって、前記開口部と同数のレンズ部を備え、各レンズ部は対応する前記開口部の上に位置するレンズ板」である点。

(d)判断
i 相違点Aについて検討する。
照明器具において、その本体に、器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有するという構成は、本件特許出願の遡及日前に周知の構成であったといえる(刊行物B?D、参照。)。
一方、引用発明2のLED照明装置は、その実施の形態として、筐体の孔(開口部といいうる)にネジを挿通し、天井面に固定するものが記載されており(刊行物Aの段落【0032】参照。)、このことからその筐体はネジを挿通することができる程度の開口部を有しているといえる。そこで、この孔に上記周知の構成を適用し、相違点1に係る本件発明1の構成と成すことは当業者であれば容易に想到しうるか否かについて検討する。
引用発明2の孔(開口部)は、ネジを挿通し、照明器具を天井面に固定するためのものであるから、この孔(開口部)を、天井面に設置された配線器具を取付けるために利用すると、照明器具を天井面に取付けられなくなるから、引用発明2の孔(開口部)に上記周知の構成を適用しようとする動機付けがない。また、引用発明2は、ダウンライトなどの薄型のLED照明装置を提供することを目的とするものであり(刊行物Aの段落【0002】、【0004】参照。)、そのため、引用発明2のLED照明装置の取付面である天井面での配線態様として、天井面の取り付位置に配線用の小孔を穿設し、当該孔を利用して結線するという配線態様を予定し、取付態様として、筐体を筐体に設けた孔にネジを挿通し、天井面に固定するという取付態様を予定しているものであるといえる(刊行物Aの段落【0032】参照。)。ここで、従来周知の上記構成を引用発明2に適用すると、器具取付面に設置された配線器具(引掛シーリング等の嵩張る配線器具)を納めるための高さが本体に必要となり、薄型のLED照明装置を提供するするという引用発明2の目的を滅失ないし減損することとなってしまう。
したがって、引用発明2において、刊行物B?Dに記載の従来周知の構成を参考に、相違点Aに係る本件発明1の構成と成すことは当業者であっても容易に想到し得ない。
また、刊行物E、Fにおいても、引用発明2において、相違点Aに係る本件特許発明1の構成を成すことが容易に想到しうるとすべきことの示唆はない。
よって、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1(および本件発明1を減縮したものである本件発明2)は、刊行物A?刊行物Fに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ii 上記のとおり、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明1(および本件特許発明を減縮したものである本件発明2)は、刊行物A?刊行物Fに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないが、念のため、相違点Cについて検討する。
本件発明1の「拡散部材」は、「前記発光素子から出射された光を器具本体の内周方向及び外周方向に拡散させ」る作用(照明光の均斉度の向上を図る作用)をなすものであり、この作用を成すために、「前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに前記突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されて」おり、しかも、「前記基板の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設され」る、すなわち、「拡散部材」の「突状に形成されている」部分が円周上に連続して形成された突条部となっているものである(明細書の段落【0024】、【図5】および【図7】参照。)。
一方、引用発明2の照明装置は、ダウンライトに用いられるものであり(刊行物Aの段落【0001】、【0002】参照。)、このため引用発明2の「レンズ板」は、LED発光装置が放射した光を、所定の方向性を持つ光として出射する作用を成す必要があるところ(刊行物Aの段落【0034】参照。)、この作用をなすために引用発明2の「レンズ板」は、「開口部と同数のレンズ部を備え、各レンズ部は対応する前記開口部の上に位置する」という構成を採用していると解される。
このような、引用発明2の「レンズ板」において、そのレンズ部を円周上に連続して形成された突条部とすること、すなわち、引用発明2において、相違点Cに係る本件発明1の構成と成すことは引用発明2のダウンライトとしての照明装置における所定の方向性を持つ光を出射するという作用を達し得なくする虞があり、当業者であっても容易に想到し得ない。
したがって、本件発明1(および本件発明1を減縮したものである本件発明2)は、刊行物A?刊行物Fに記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

b 特許法第17条の2第3項について
本件訂正請求により、「前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されている」と訂正された。そして、拡散部材の発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されている点は、願書に最初に添付した明細書および図面の、段落【0024】、【図5】および【図7】に記載されており、また、「前記突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されて」いるとの事項によって、「拡散部材」は「前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され」るものということができるから、「突状に形成された部分」も円周上に連続して形成された「突条部」となっているといえ、明細書の段落【0024】?【0026】の「突条部」以外のものを包含するものではないといえる。
なお、この点について上記a(d)iiも参照。

(ウ)以上aおよびbより、異議申立人 梯七枝の上記各主張には理由がない。

4.むすび
したがって、請求項1および2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由および特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に請求項1および2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明器具
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光源としてLED等の発光素子を用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅用の照明器具においては、主光源に環状の蛍光ランプを用い、この環状の蛍光ランプの下方側を覆うようにカバー部材(セード)を設けて、外観形状を丸形に構成するものが普及している。
【0003】
一方、近時、LED等の発光素子の高出力化、高効率化及び普及化に伴い、光源として発光素子を用いて長寿命化が期待できる照明器具が開発されている。光源として発光素子を用いて、従来のように環状の蛍光ランプを用いた照明器具と同様な態様で照明器具を構成するには、例えば、天井面に設置された引掛けシーリングボディへの取付部の周囲に複数の発光素子を配置し、これら発光素子から出射される光を直下方向の所定の範囲に照射させる必要がある。
【0004】
このように光源として複数の発光素子を取付部の周囲に配置した場合には、従来の環状の蛍光ランプを用いた場合と同様な態様で構成でき、また、長寿命化や薄型化が期待できる照明器具を実現することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シャープ/LEDシーリングライト[平成23年1月6日検索](http://www.sharp.co.jp/corporate/news/100819-a-2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光源としてLED等の発光素子を用いると、発光素子はその出射光の指向性が強く輝度が高いため、粒々感が目立ち、輝度が均一化されにくく、照射光の均斉度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、複数の発光素子を取付部の周囲に配置したものにおいて、照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による照明器具は、器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体と;実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設されたサークル状の基板と;前記開口部を中心とする円周上に複数列前記基板に実装された発光素子と;前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る照明器具を示す斜視図である。
【図2】同照明器具を示す分解斜視図である。
【図3】同照明器具においてカバー部材及び点灯装置カバーを取外して下方から見て示す概略の平面図である。
【図4】同照明器具を示す断面図である。
【図5】図4中、A部を示す拡大図である。
【図6】同照明器具における1枚の基板を取り出して示す平面図である。
【図7】同照明器具における光源部と拡散部材とを組み合わせた状態で一部拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図7を参照して説明する。各図においてリード線等による配線接続関係は省略して示している場合がある。なお、同一部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
本実施形態の照明器具は、器具取付面に設置された配線器具としての引掛けシーリングボディに取付けられて使用される一般住宅用のものであり、基板に実装された複数の発光素子を有する光源部から放射される光によって室内の照明を行うものである。
【0013】
図1乃至図4において、照明器具は、本体1と、光源部2と、拡散部材3と、点灯装置4と、点灯装置カバー5と、取付部6と、カバー部材7とを備えている。また、器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAを備えている。このような照明器具は、丸形の円形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。
【0014】
図2乃至図5に示すように、本体1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されたシャーシであり、略中央部に、後述する取付部6を配設するための円形状の開口11が形成されている。また、光源部2が取付けられる内面側の平坦部12の外周側には、背面側へ向かう段差部13が形成されて樋状の凹部14が形成されている。さらに、本体1の背面側には、弾性部材15が設けられている。
【0015】
光源部2は、図6の参照を加えて説明するように、基板21と、この基板21に実装された複数の発光素子22とを備えている(図2においては発光素子22の図示を省略している)。基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。つまり、全体として略サークル状に形成された基板21は、4枚の分割された基板21から構成されている。
【0016】
このように分割された基板21を用いることにより、基板21の分割部で熱的収縮を吸収して基板21の変形を抑制することができる。なお、複数に分割された基板21を用いることが好ましいが、略サークル状に一体的に形成された一枚の基板を用いるようにしてもよい。
【0017】
基板21は、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂(FR-4)の平板からなり、表面側には銅箔によって配線パターンが形成されている。また、配線パターンの上、つまり、基板21の表面には反射層として作用する白色のレジスト層が施されている。なお、基板21の材料は、絶縁材とする場合には、セラミックス材料又は合成樹脂材料を適用できる。さらに、金属製とする場合は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れたベース板の一面に絶縁層が積層された金属製のベース基板を適用できる。
【0018】
発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って、つまり、取付部6を中心とする略円周上に複数列、本実施形態では、内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また、LEDパケージには、発光色が昼白色のものと電球色のものとが用いられており、これらが交互に並べられていて、各列の隣接する発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。この昼白色と電球色のLEDパッケージに流れる電流等を調整することにより調色が可能となっている。
【0019】
なお、特定の基板21(図3中、右側)には、常夜灯用の発光素子22aが実装されている。この発光素子22aには、サークル状に実装された主光源における電球色のものと同じLEDパッケージが用いられている。これにより部材の共通化が図られている。
【0020】
なお、発光素子22は、必ずしも複数列に実装する必要はない。例えば、周方向に沿って1列に実装するようにしてもよい。所望する出力に応じて発光素子22の列数や個数を適宜設定することができる。
【0021】
LEDパッケージは、概略的にはセラミックスや合成樹脂で形成された本体に配設されたLEDチップと、このLEDチップを封止するエポキシ系樹脂やシリコーン樹脂等のモールド用の透光性樹脂とから構成されている。LEDチップは、青色光を発光する青色のLEDチップである。透光性樹脂には、昼白色や電球色の光を出射できるようにするために蛍光体が混入されている。
【0022】
なお、LEDは、LEDチップを直接基板21に実装するようにしてもよく、また、砲弾型のLEDを実装するようにしてもよく、実装方式や形式は、格別限定されるものではない。
【0023】
拡散部材3は、レンズ部材であり、図7の参照を加えて説明するように、例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の絶縁性を有する透明合成樹脂からなり、強化絶縁性能を有している。そして、前記発光素子22の配置に沿って略サークル状に一体的に形成されていて、発光素子22を含めて基板21の実装面側の全面を覆うよう、基板21の実装面側に重ね合わせられるように配設されている。
【0024】
また、レンズ部材は、図5及び図7に代表して示すように、略サークル状の内周側部分と外周側部分とに発光素子22に対向して円周方向に2条の山形であって、断面形状が一定の突条部31が連続して形成されている。この突条部31の内側には、U字状の溝32が円周方向に沿って連続して形成されている。したがって、U字状の溝32は、複数の発光素子22と対向して配置されるようになっており、複数の発光素子22は、U字状の溝32内に収められて覆われている状態となっている。
【0025】
さらに、これら突条部31からは幅方向に延出する平坦部33が形成されており、これにより基板21の実装面側の全面が覆われるようになっている。
【0026】
このように構成されたレンズ部材によれば、図5に示すように複数の発光素子22から出射された光は、突条部31によって、主として円周上の内周方向及び外周方向に拡散されて放射される。すなわち、発光素子22から出射された光は、発光素子22が配置されたところのサークル状の中心を原点とする半径方向へ主として拡散して放射されるようになる。
【0027】
したがって、レンズ部材によって複数の発光素子22から出射される光による照射光の均斉度を向上することが可能となる。さらに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することができる。この場合、拡散による配光角度を120度?160度程度に設定するのが望ましい。
【0028】
また、拡散部材3には、平坦部33が形成されて基板21の実装面側の全面を覆うようになっているので、充電部が強化絶縁性能を有する拡散部材3によって覆われ保護される。
【0029】
なお、拡散部材3は、略サークル状に一体的に形成されていなくてもよい。例えば、分割された基板21に対応して、これらの基板21ごとに分割して形成するようにしてもよい。この場合には、一つの基板21に実装された複数の発光素子22ごとに連続して拡散部材3によって覆われるようになる。
【0030】
また、拡散部材3は、レンズ部材に限らず、拡散シート等を適用するようにしてもよい。
【0031】
上記のように構成された光源部2は、図4及び図5に代表して示すように、基板21が取付部6の周囲に位置して、発光素子22の実装面が前面側、すなわち、下方の照射方向に向けられて配設されている。また、基板21の裏面側が本体1の内面側の平坦部12に密着するように面接触して取付けられている。具体的には、基板21の前面側から拡散部材3が重ね合わされ、この拡散部材3を例えば、ねじS等の固定手段によって本体1に取付けることにより、基板21は、本体1と拡散部材3との間挟み込まれて押圧固定されるようになっている。つまり、1本のねじSによって基板21と拡散部材3とが共締めされている。
【0032】
したがって、基板21は、本体1と熱的に結合され、基板21からの熱が裏面側から本体1に伝導され放熱されるようになっている。なお、基板21と本体1との面接触は、基板21の裏面側の全面が本体1に接触する場合に限らない。部分的な面接触であってもよい。
【0033】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に密着するように面接触しているので、基板21の実装面側から熱が拡散部材3に伝わり、拡散部材3を経由して放熱することが可能となる。つまり、基板21の前面側からも放熱できるようになっている。
【0034】
点灯装置4は、図2乃至図4に示すように、回路基板41と、この回路基板41に実装された制御用IC、トランス、コンデンサ等の回路部品42とを備えている。回路基板41は、取付部6の周囲を囲むように略円弧状に形成されていて、アダプタA側が電気的に続されて、アダプタAを介して商用交流電源に接続されている。したがって、点灯装置4は、この交流電源を受けて直流出力を生成し、リード線を介してその直流出力を発光素子22に供給し、発光素子22を点灯制御するようになっている。
【0035】
このような点灯装置4は、取付部6と光源部2、すなわち、基板21との間に配設されている。
【0036】
点灯装置カバー5は、図2及び図4に示すように、冷間圧延鋼板等の金属材料によって略短円筒状に形成され、点灯装置4を覆うように本体1に取付けられている。側壁51は、背面側に向かって拡開するように傾斜状をなしており、前面壁52には、取付部6と対応するように開口部53が形成されている。したがって、発光素子22から出射される一部の光は、側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。また、この開口部53に周縁には背面側へ凹となる円弧状のガイド凹部54が形成されている。
【0037】
取付部6は、略円筒状に形成されたアダプタガイドであり、このアダプタガイドの中央部には、アダプタAが挿通し、係合する係合口61が設けられている。このアダプタガイドは、本体1の中央部に形成された開口11に対応して配設されている。アダプタガイドの外周部には、この外周部から突出するように基台が形成されていて、この基台には赤外線リモコン信号受信部や照度センサ等の電気的補助部品62が配設されている。
【0038】
なお、取付部6は、必ずしもアダプタガイド等と指称される部材である必要はない。例えば、本体1等に形成される開口であってもよく、要は、配線器具としての引掛けシーリングボディCbに対向し、アダプタAが係合される部材や部分を意味している。
【0039】
カバー部材7は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から略円形状に形成されており、中央部には不透光性の円形状の化粧カバー71が取付けられている。また、この化粧カバー71には、前記電気的補助部品62と対向するように略三角形状の透光性を有する受光窓72が形成されている。さらに、カバー部材7の内面側の中央寄りには、内面方向に突出する突出ピン73が形成されている。
【0040】
そして、カバー部材7は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に着脱可能に取付けられるようになっている。具体的には、カバー部材7を回動することによって、カバー部材7に設けられた図示しないカバー取付金具を本体1の外周縁部の凹部14に配設されたカバー受金具75に係合することにより取付けられる。
【0041】
このようにカバー部材7が本体1に取付けられた状態においては、主として図4に示すように、カバー部材7の内面側は、点灯装置カバー5の前面壁52に面接触するようになる。したがって、点灯装置4等から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱を促進することが可能となる。
【0042】
また、拡散部材3とカバー部材7との間の距離は、20?60mm、好ましくは30?50mmに設定されている。これにより、照射光の均斉度が良好となり、基板21の実装面側から拡散部材3に伝導された熱がカバー部材7を経由して効果的に放熱されるようになる。
【0043】
ここで、カバー部材7は、回動させて本体1に取付けられるが、受光窓72の位置を電気的補助部品62と対向するように位置合わせをする必要がある。このため、本実施形態においては、詳細な説明は省略するが、カバー部材7側に形成された突出ピン73と点灯装置カバー5に形成されたガイド凹部54とによって位置規制手段が構成されている。この位置規制手段によって受光窓72が電気的補助部品62と対向して位置されるようになり、例えば、赤外線リモコン信号受信部が赤外線リモコン送信器からの制御信号を受信できるようになる。
【0044】
アダプタAは、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに、上面側に設けられた引掛刃によって電気的かつ機械的に接続されるもので略円筒状をなし、周壁の両側には一対の係止部A1が、内蔵されたスプリングによって常時外周側へ突出するように設けられている。この係止部A1は下面側に設けられたレバーを操作することにより没入するようになっている。また、このアダプタAからは、前記点灯装置4へ接続する電源コードが導出されていて、点灯装置4とコネクタを介して接続されるようになっている(図3参照)。
【0045】
次に、照明器具の天井面Cへの取付状態について図4を参照して説明する。まず、予め天井面Cに設置されている引掛けシーリングボディCbにアダプタAが電気的かつ機械的に接続されている。この状態から取付部6としてのアダプタガイドの係合口61をアダプタAに合わせながら、アダプタAの係止部A1がアダプタガイドの係合口61に確実に係合するまで本体1を下方から手で押し上げて取付け操作を行う。そして、カバー部材7を本体1に取付ける。この取付完了状態が図4に示す状態であり、このとき、弾性部材15が天井面Cと本体1の背面側との間に密着状態で介在され、照明器具は、天井面Cに固定状態となる。
【0046】
また、照明器具を取外す場合には、カバー部材7を取外し、アダプタAに設けられているレバーを操作してアダプタAの係止部A1の係合を解くことにより取外すことができる。
【0047】
照明器具の天井面Cへの取付状態において、点灯装置4に電力が供給されると、基板21を介して発光素子22に通電され、各発光素子22が点灯する。発光素子22から出射された光は、複数の発光素子22を連続して覆う拡散部材3によって半径方向へ拡散されるとともに、前面側へ放射される。前面側へ放射された光は、カバー部材7を透過して外方へ照射される。したがって、照射光の均斉度の向上を図ることができるとともに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することが可能となる。
【0048】
また、半径方向の内周側へ向かう一部の光は、点灯装置カバー5における傾斜状の側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。
【0049】
一方、発光素子22から発生する熱は、基板21の裏面側が本体1に面接触しているため、本体1に効果的に伝導され、広い面積で放熱されるようになる。また、基板21の外周側近傍には、基板21の外周に沿って段差部13が形成されているため、この段差部13によって放熱面積を増大させることができ、本体1外周部での放熱効果を高めることが可能となる。加えて、この段差部13は、本体1の補強効果を奏することができるものとなっている。
【0050】
また、点灯装置4は、取付部6と基板21との間に配設されているため、点灯装置4は、基板21から熱的影響を受けるのを軽減される。これは、基板21の熱は、本体1の外周方向に向かって伝導し、放熱される傾向にあることに起因するものである。
【0051】
さらに、カバー部材7は、点灯装置カバー5に面接触するようになっているので、点灯装置4から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱をさせることができる。
【0052】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に面接触しているので、基板21の実装面側から拡散部材3を経由して前面側からも放熱することが可能となる。また、この場合、拡散部材3は、基板21の実装面側の全面を覆うようになっているので充電部が保護されるようになる。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、発光素子22を連続して覆う拡散部材3を設けることによって照射光の均斉度の向上を図ることが可能な照明器具を提供することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、発光素子は、LEDや有機EL等の固体発光素子が適用でき、この場合、発光素子の個数は特段限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1・・・本体、2・・・光源部、3・・・拡散部材(レンズ部材)、4・・・点灯装置、5・・・点灯装置カバー、6・・・取付部(アダプタガイド)、7・・・カバー部材、13・・・段差部、21・・・基板、22・・・発光素子(LED)、31・・・突条部、33・・・平坦部、A・・・アダプタ、C・・・器具取付面(天井面)、Cb・・・配線器具(引掛けシーリングボディ)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具取付面に設置された配線器具に取り付けられる開口部を有する本体と;
実装面が前面側に向けられて前記開口部周囲に配設されたサークル状の基板と;
前記開口部を中心とする円周上に複数列前記基板に実装された発光素子と;
前記開口部を中心とする円周上に連続して形成され、前記発光素子のそれぞれに対向する位置の断面形状が突状に形成されているとともに、突状に形成されている部分から幅方向に延出する平坦部が形成されていて、前記発光素子から出射された光を前記本体の内周方向及び外周方向に拡散させ、かつ前記基板の実装面側の全面を覆うように前記基板の実装面側に重ね合わされるように配設されたレンズ部材としての拡散部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記拡散部材に対して所定の距離を有するよう前記本体に着脱可能に取付けられるカバー部材を有していることを特徴とする請求項1記載の照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-01 
出願番号 特願2015-115733(P2015-115733)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (F21S)
P 1 651・ 536- YAA (F21S)
P 1 651・ 55- YAA (F21S)
P 1 651・ 537- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 島田 信一
尾崎 和寛
登録日 2016-06-17 
登録番号 特許第5950141号(P5950141)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 熊谷 昌俊  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 熊谷 昌俊  
代理人 河野 仁志  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 河野 仁志  

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