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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04F
管理番号 1337003
異議申立番号 異議2017-700400  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-20 
確定日 2017-12-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6013162号発明「壁面仕上げ方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6013162号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第6013162号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6013162号の請求項1に係る特許についての出願は、平成24年12月7日(優先権主張平成24年5月21日)に特許出願され、平成28年9月30日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人エスケー化研株式会社(以下「申立人」という。)より、請求項1に対して特許異議の申立てがされ、平成29年6月28日付けで取消理由(発送日同年7月4日)が通知され、その指定期間内である同年8月31日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年10月11日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(3)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
請求項1に「ウールローラーで塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。」とあるのを、「ウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。」に訂正する。
(2)訂正事項2
段落0011に「ウールローラーで塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法」とあるのを、「ウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法」に訂正する。
(3)訂正事項3
段落0023に「平坦面への塗布量は0.2?0.5kg/m^(2)となる。」とあるのを「平坦面への塗布量は0.02?0.05kg/m^(2)となる。」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、ウールローラーによる塗布状態について限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1はウールローラーによる塗布状態について限定したものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1に関して、明細書には「【0023】・・・この範囲であれば、凹部まで塗料が付着することもなく、塗布回数は1?5回で済ませることができる。」と記載されており、訂正事項1は明細書に記載されているものと認められる。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、上記訂正事項1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
本件明細書には「【0023】・・・乾燥後、色調が異なる砂壁状塗料を・・・15mm以下のウールローラーで塗布をして表面を仕上げる。このとき、平坦面への塗布量は0.2?0.5kg/m^(2)となる。・・・この範囲であれば、凹部まで塗料が付着することもなく、塗布回数は1?5回で済ませることができる。」と記載されているのに対し、実施例1?3では砂壁状塗料の塗布量に関して、それぞれ「【実施例1】【0026】・・・JR-188(アイカ工業(株)、商品名、図1の賦型ローラー、凹凸の差は略6mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m^(2)であった。凸部に質感が同じで色味が異なる塗料を塗布することで、凸部がこすれたように仕上がり、櫛引模様(図4のローラー転写模様)にさらに重厚感を付与することができた。」、「【実施例2】【0027】・・・JR-186(アイカ工業(株)、商品名、図2の賦型ローラー、凹凸の差は略0.5mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m^(2)であった。仕上がりは図5のようになった。」、「【実施例3】【0028】・・・JR-184(アイカ工業(株)、商品名、図3の賦型ローラー、凹凸の差は略5mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m^(2)であった。仕上がりは図6のようになった。」と記載されており(下線は当決定で付した。)、砂壁状塗料の塗布量に関して、段落【0023】の数値範囲(0.2?0.5kg/m^(2))と実施例1?3の数値(0.05kg/m^(2))は大きく乖離している。
ここで、訂正請求書に添付された平成29年8月28日付け実験成績証明書には、上記塗布量を0.2kg/m^(2)、0.5kg/m^(2)、0.05kg/m^(2)とした場合の仕上がり写真が掲載されており、上記本件実施例1?3にそれぞれ対応するJR-188、JR-186、JR-184の仕上がり写真と、本件実施例1?3の仕上がりをそれぞれ示す本件図4?6を見比べると、JR-188、JR-186、JR-184における塗布量が0.05kg/m^(2)である場合の仕上がり写真と本件図4?6の仕上がりがほぼ同じ仕上がりであることから、本件明細書の段落【0026】?【0028】の塗布量0.05kg/m^(2)は、本件図4?6の仕上がりとして適正な値であると解することが自然である。
一方、本件明細書の段落【0023】の塗布量0.2?0.5kg/m^(2)は、上記段落【0026】?【0028】の塗布量0.05kg/m^(2)から大きく乖離しており、更に上記したように塗布量0.05kg/m^(2)は適正な値と解されること、及び小数点が一ケタずれれば同様の数値となることから総合的に判断すると、0.2?0.5kg/m^(2)の記載は0.02?0.05kg/m^(2)の誤記であると解するのが相当である。
よって、訂正事項3は誤記の訂正を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、誤記を訂正するものであり、特許請求の範囲に影響を与えるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、誤記を訂正するものであり、新たな技術事項を生み出すものではないから、訂正事項3は明細書に記載されているものと認められる。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号?第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項?第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。

第3 当審の判断
1 訂正後の請求項1に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)

本件訂正発明
「【請求項1】
下地に、合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、0.5mm以上で6.5mm以下に凹凸形状を付与されたローラーで賦型し、乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を,15mm以下の繊維長のウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。」

2 刊行物の記載
甲第1号証:特開2010-248304号公報
甲第2号証:特開平6-346566号公報
甲第3-1号証:大塚刷毛製造株式会社、「PAINTING TOMORROW BRUSHES,ROLLERS,TOOLS & EQUIPMENTS CATALOGUE(総合カタログ)」、第8集第1版、表紙、p.117、裏表紙
甲第3-2号証:大塚刷毛製造株式会社、「PAINTING TOMORROW マルテーニュース SPRING vol.80」、2011年4月15日、表紙、p.3
甲第3-3号証:大塚刷毛製造株式会社ホームページ/トピックス/バックナンバー2011年4月、[online]、2011年4月、インターネット<http://www.maru-t.co.jp/topics/index.php?ktype=2&m=2011-04>
甲第4号証:JISハンドブック 8 建築I材料、日本規格協会、2007年1月19日、表紙、p.753、裏表紙
(甲第3号証は、当決定において三つに分割した。)

(1)取消理由通知において引用した甲第1号証には、図面とともに次の記載があり、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている(申立書3頁2行?4頁15行)。

ア 「【0013】
本発明の砂壁状塗料組成物及び改修工法は、既存塗材表面の凹凸感やテクスチャーを損なうことがなく、色替えを行なうことができると共に、砂壁状の風合いや質感を甦らせることができるという効果がある。」

イ 「【0021】
本発明の砂壁状塗料組成物は、市販のローラー刷毛によって既存の塗材の上に塗布されるが、既存塗材の凹凸感及び風合いを損なわないように、0.5kg/m^(2)?1.0kg/m^(2)で塗布することが好ましく、また砂壁状塗料組成物の適正粘度としては、30?150Pa・sが好ましく、このような粘度とするには、適当量の水を加えることで調製することが出来る。」

ウ 「【0035】
試験体作成方法
タイカボード(JISA6901チヨダウーテ社製石膏ボード商品名)にジョリパット水系シーラーJS-90(アクリルエマルション系下塗り材、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2になるように塗布・乾燥し、ジョリパットJP-100(JISA6909アクリル樹脂エマルション系薄塗り仕上げ塗材E、アイカ工業株式会社製、商品名)を1.0kg/m2になるように塗布・乾燥し、仕上げのテクスチャーとして、図1に示すような、骨材ムラや隠蔽性の差異が顕著にわかるあやめランダムカット仕上げとした。このテクスチャーは凹凸部分の段差が大きく(約1?2mm程度)、凸部分に骨材が均一に載らない場合に、ムラに見える傾向にあるためである。これに、実施例1?4及び比較例1?6までの配合の砂壁状塗料を0.4kg/m2になるように汎用ウールローラースモールローラーB(大塚刷毛株式会社製、商品名)で塗布・乾燥させた。
【0036】
あやめランダムカット仕上げの作製方法
仕上げのテクスチャーとして使用したあやめランダムカット仕上げの作製方法について示す。ジョリパットJP-100を2.0kg/m2になるよう均一に配り塗りをする。直後にあやめローラーJR-30(アイカ工業株式会社製、商品名)を横方向に転がし塗布量が均一となるようムラ切りした後、いわゆるクロス掛けをして×印をランダムに描くようローラーを転がして、パターン付けを行う。直後にヘッドカットローラーJR-26(アイカ工業株式会社製、商品名)を灯油に浸してから、表面を軽く押さえる。」

エ 甲1発明
「下地に、
合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、
あやめローラーJR-30でパターン付けし、
乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を、
汎用のウールローラーで塗布する壁面仕上げ方法。」

(2)取消理由通知において引用した甲第2号証には、申立人が主張するとおり、以下の発明(以下、それぞれ「甲2発明」という。)が記載されている(申立書5頁18行?22行)。

甲2発明
「下地に、
合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、
あやめローラーJR-30で1?5mmの凹凸面となるようにパターン付けし、
トップコート用コーティングを塗付する壁面仕上げ方法。」

(3)取消理由通知において引用した甲第3-1号証?甲第3-3号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されている(申立書6頁4行)。

甲3技術
「15mm以下の繊維長のウールローラー。」

3 取消理由通知に記載した取消理由(第29条第1項第3号第29条第2項)について
(1)対比・判断
ア 本件訂正発明について
(ア)本件訂正発明と甲1発明の対比
本件訂正発明と、甲1発明を対比すると、以下の一致点で一致し、相違点1?3で相違する。

<一致点>
「下地に、合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、凹凸形状を付与されたローラーで賦型し、乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を、ウールローラーで塗布する壁面仕上げ方法。」

<相違点1>
ローラーについて、本件訂正発明が「0.5mm以上で6.5mm以下に凹凸形状を付与された」ローラーを用いるのに対し、甲1発明がそのような特定がなされていない点。

<相違点2>
ウールローラーについて、本件訂正発明が「15mm以下の繊維長の」ウールローラーを用いるのに対し、甲1発明がそのような特定がなされていない点。

<相違点3>
本件訂正発明が「凹部まで塗料を付着させずに」塗布するのに対し、甲1発明がそのような特定がなされていない点。

(イ)判断
相違点3について検討するに、甲第1号証には、砂壁状塗料を凹部まで付着させずに塗布することを示唆する記載はなく、また、甲第1号証の
「【0037】評価方法
【0038】骨材の均一性・・・評価は下記とした。
○・・・テクスチャー凹凸部に関わらず充填材が均一に載っている状態
△・・・○と×の中間
×・・・テクスチャー凹凸部の凹部に大部分の充填材が埋まっている状態」
の記載から見て、甲第1号証では凹凸部両方に砂壁状塗料組成物である充填材が存在することが前提となっていると解され、本件訂正発明のように「凹部まで塗料を付着させずに」塗布するようにすることには阻害要因があるというべきである。
また、甲第2号証?甲第4号証において、相違点3に関する事項及び上記阻害要因に影響を与える事項は記載されていない。
申立人は、平成29年10月11日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)において「甲第1号証には、・・・「凹部まで塗料が入り込んでしまった状態」には至っておらず、「凹部まで塗料が付着していない状態」となっていることが窺われます。そうすると・・・本件特許発明は・・・新規性進歩性を有さず、取り消されるべきものです。」(申立人意見書2頁19行?3頁2行)と主張するが、上記したように甲第1号証では、段落【0038】において凹凸部両方に砂壁状塗料組成物である充填材が存在することが前提となっている記載があることから、申立人の上記主張は採用できない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明は、本件訂正発明と同一ではないし、甲1発明において相違点3に係る本件訂正発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(2)まとめ
したがって、本件訂正発明は、甲1発明と同一ではなく、その特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件訂正発明は、甲1発明及び甲第2号証?甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、平成29年6月28日付け取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
壁面仕上げ方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂エマルションを結合材とした建築用仕上塗材の壁面仕上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂エマルションを結合材とした建築用仕上塗材は凹凸模様を容易に形成でき、扱い易く、作業性が良く、特段の技能を要しないで壁面の凹凸模様を創作することができる。しかし、一色では凹凸模様の意匠の創作には限界があり、陰影感が乏しい、繊細な意匠が創作できない等の課題があり、高度な職人の技能に依存するところが多かった。
【0003】
特許文献1は、基材表面に直接またはプライマー層を介して、着色塗料で凸部を有する下塗り塗膜を形成し、次いで、該下塗り塗膜の色調と異なる色調の上塗り着色塗料で、下塗り塗膜の色調を隠ぺいし、かつ下塗り塗膜の形状が認識できるように塗装した後、該上塗り塗装塗膜が流動状態にある内に、該上塗り塗装塗膜の凸部上を擦ることで、下塗り塗膜の凸部の色調が見えることを特徴とする多色模様塗膜の形成方法が提案され,多彩模様塗膜が画一的でかつ平面的で変化に乏しいという課題の解決方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、凹凸が賦与された壁面に、意匠用塗料を塗布する工程とゴム鏝で掻き落とす工程を含む意匠性賦与方法において意匠用塗料の0.125mm膜厚の隠蔽率が、0.3?0.4であり、塗料粘度が2?25Pa・s、TI値が2.2?2.7である意匠用塗料及びその方法で、古ぼけた、落ち着いた、深みのある、色調コントラスト賦与等の壁の意匠価値が得られることを開示している。
【0005】
特許文献3は、粘度が2?25Pa・s、TI値が2.2?2.7である結合用塗料と鱗片状物質或いは金属箔片物質からなる意匠用塗料であり、鱗片状物質或いは金属箔片物質が撹拌により分散されたことを特徴とするものであり、この意匠用塗料をゴム鏝で塗布することを特徴とする意匠性賦与方法で壁全体に均質にまた意匠材料の占める比率も任意に変えられることを開示している。
【0006】
特許文献4は、炭酸カルシウム及びバインダー樹脂を含有し、水と混練され、炭酸カルシウムの累積量90%に相当する粒子直径が3?20μmの範囲内である塗料組成物を被塗装面の一部又は全部に、1回又は複数回塗りつける工程と、塗りつけられた前記塗料組成物の表面を乾燥させる工程と、塗りつけられた塗料組成物表面をコテ塗りする工程と含む塗装模様形成方法が、簡便、安全、かつ、低コストで、所望の濃淡模様等の塗装模様を現出することを開示している。
【0007】
特許文献5は、合成樹脂エマルション、充填材、顔料、成膜助剤を含む塗料組成物であり、前記充填材のうち平均粒子径1.0?40μmの充填材の重量配合部数で、平均粒子径70?500μmの充填材の重量配合部数を除した値が0.1?5.0である砂壁状塗料組成物であり、これを用いて既存の仕上塗材の上に塗布することを特徴とする改修施工方法で、既存の凹凸感のある意匠性仕上げ塗材の上に塗布することにより、独特の砂壁状の質感が損なわれることがないことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-320913号公報
【特許文献2】特開2007-175580号公報
【特許文献3】特開2007-262294号公報
【特許文献4】特開2004-211035号公報
【特許文献5】特開2010-248304号公報
【0009】
しかしながら,上記特許文献1乃至特許文献5に記載の発明では,実際の施工における凹凸の付与や模様の表現の良し悪しは,最終的には施工職人らのセンスと技能に負うところが大きく,特に凹凸表現の巾は一定の限られた範囲のものであるという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、鏝やローラー刷毛等の,塗材の施工の際に使用する施工器具とその取扱い方法を熟知した熟練の施工職人でなくても,壁面の立体的な模様を均質で、凹部と凸部が同じ質感で異なる色調にでき、賦型ローラーで得られる立体的な模様を、現物感があり落ち着いたものとすることができる壁面仕上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、下地に、合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、0.5mm以上で6.5mm以下に凹凸形状を付与されたローラーで賦型し、乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を,15mm以下の繊維長のウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法を提供し、賦型ローラーで付与した立体的な模様に現物感を付与した、落ち着きのあるものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る壁面仕上げ方法は,凹部と凸部で質感は同じで色調が異なるため、落ち着きがあり、実物感を有するものとすることができる効果がある。
【0013】
また,凹凸の付与は,予め凹凸形状を付与されたローラーを,壁面等の下地に塗付された塗材の上を転動させることにより行うため,鏝やローラー刷毛の取り扱いに知識や技能のない者でも容易に塗材に高い意匠性を有する凹凸を付与することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で使用する賦型ロ-ラー(巾方向23cm、ロール径6cm)の代用写真である。
【図2】実施例2で使用する賦型ロ-ラー(サイズは図1と同じ)の代用写真である。
【図3】実施例3で使用する賦型ロ-ラー(サイズは図1と同じ)の代用写真である。
【図4】実施例1の仕上がり状態(サイズ 45cm×60cm)の代用写真である。
【図5】実施例2の仕上がり状態(サイズ 45cm×60cm)の代用写真である。
【図6】実施例3の仕上がり状態(サイズ 45cm×60cm)の代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般的に建築用仕上塗材は,立体的な模様を容易に得ることができる。しかし、この立体的な模様だけでは新しい意匠性の付与は難しく、得られた立体的な模様に色調が異なる塗料を凸面に塗付しても壁全体では立体模様の均一性がなく、バランスの欠いた意匠付与となる。この原因は立体模様の付与を均一に行うには職人的な技能が必要なことである。また、建築用仕上塗材と凸部に塗布する塗料の質感が異なると落ち着いた雰囲気の壁面ができない。本発明はこれらの課題を解決するものであり,以下詳細に説明する。
【0016】
合成樹脂エマルション系建築用仕上げ塗材
合成樹脂エマルションを結合材とする水系塗材で、刷毛、鏝、ローラー等で容易に模様付けるもので、骨材、充填剤、増粘剤、顔料等が主配合材料で、結合材固形成分に対して250?450重量%の骨材と充填剤が配合され、塗付、乾燥後も、塗付された時の立体的な形状が目減りすることなく略維持される。増粘剤は塗付時の垂れや、刷毛、鏝、ローラー等の塗付道具の作業性に適したものとするために配合され、顔料は任意の着色を可能とする。
【0017】
上記、合成樹脂エマルションのうちアクリル樹脂エマルションが耐候性、耐汚染性、可とう性、が良い。前記アクリル樹脂エマルション系仕上塗材の市販品にジョリパットアルファJP-100、ジョリパットネオJQ-650(以上アイカ工業(株)、商品名)ベルアートSi、弾性ベルアート(以上エスケー化研(株)、商品名)、グラナダSi(菊水化学工業(株)、商品名)等がある。
【0018】
賦型ローラー
上記合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を下地等の基材に塗付後、塗付面に立体的な形状を付与するローラーで、様々な材料や機械加工されたものから転写された軟らかい弾力性を有する筒状の軟質ローラーで、シリコン樹脂製が、製造が容易等の理由で好ましい。付与される凹凸は0.5?6mmが好ましく、0.5mm未満であると仕上がり後の意匠付与ができず、6.5mmを超えると前記合成樹脂エマルション系塗材の乾燥後にクラックが発生したり,ローラーによる付与される塗材の賦型形状にばらつきが生じる。賦型ローラーの硬度はJISK7215ショアAで20?30が好ましい。この範囲であると下地等の基材が有する凹凸を賦型ローラーの変形で吸収することができ、賦型ローラーの耐久性も維持できる。また、賦型ローラーを使うことで、壁全体を職人的な技能に頼ることなく、均質に立体的な模様を付与することができる。
【0019】
本発明に係る合成樹脂エマルション系建築仕上塗材には平均粒径0.3?0.9mmの骨材を該仕上塗材に対して90?150重量%さらに配合することにより、賦型ローラーの賦型性、型離れ性が増し、好ましくなる。骨材は硅砂、寒水石、硅石粉等を上げることができる。
【0020】
合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材に、上記賦型ローラーで凹凸を付与する前に、繊維長15mm以下のウールローラーにて、賦型ローラーの塗材への凹凸の転写性を向上させるため、該賦型ローラーに転写液を塗布する。この転写液は、水系である建築用仕上塗材と相溶し、賦型ローラーとの型離れがよく、さらに下記、砂壁状塗料を賦型された塗材に塗付した際,賦型された塗材に残っている該転写液によって弾かれることがないものであり、市販品としてJT-180(アイカ工業(株)、商品名、シリコーン系水溶液)がある。70?90g/m^(2)塗布をする。
【0021】
砂壁状塗料
本発明に使用される砂壁状塗料は,通常,前記合成樹脂エマルション系仕上塗材により凹凸等の意匠性が付与された壁の当該塗材表面に塗付されるものであり、経時によって生じた汚れ等による色調の回復、色変え等を目的とする塗料である。したがって前記合成樹脂エマルション系仕上塗材のように大きな立体的な形状を付与する必要はなく、砂壁状の表面テクスチュアである外観をウールローラで凹凸全体に付与できるものである。
【0022】
また,この塗料は、合成樹脂エマルションの結合材が固形成分全体の10?20重量%、骨材及び充填剤が40?60重量%を、隠蔽性付与に酸化チタン、着色剤のために顔料が配合される。ここで骨材は平均粒子径D_(50)によって分類し、平均粒子径70?500μmのものを骨材として、平均粒子径70μm未満を充填剤とする。砂壁状外観を安定して得るために骨材の重量/充填剤重量は0.1?5.0が好ましい。また合成樹脂エマルションがアクリル樹脂であることが密着性で好ましい。この市販品にアイカジョリパットフレッシュJQ-800、JQ-810(以上 アイカ工業(株)、商品名)があり、この塗料の30℃の粘度はBH型粘度計でローターNo.6で2rpm時90Pa・s、20rpm時18、Pa・sで、TI値は略5であった。なおTI値はせん断速度(回転速度)における見掛け粘度の比である。塗膜の表面の光沢は20°の入射角で1.0、60°入射角で1.9、85°の入射角で0.2の光沢度(日本電色工業(株)ハンディ光沢計PG1にて測定)であり,砂壁状である。
【0023】
本発明の仕上げ方法は下地にプライマーやシーラー等の処理を必要に応じて行い、合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を2.5?4kg/m^(2)塗布後、転写液を塗布し、凹凸が付与されたローラーを転動させて、表面に形状を転写し、凹凸を付与する。乾燥後、色調が異なる砂壁状塗料を粘度2rpm(BH型粘度計ローター6号)で90±30Pa・s、20rpm(同前)で、18±1Pa・s TI値3?7(せん断速度比10の時のせん断応力比)に調整し、15mm以下のウールローラーで塗布をして表面を仕上げる。このとき、平坦面への塗布量は0.02?0.05kg/m^(2)となる。ウールロ-ラーの繊維長(毛丈)は3mm以上15mm以下が好ましい。この範囲であれば、凹部まで塗料が付着することもなく、塗布回数は1?5回で済ませることができる。
【0024】
意匠性賦与は合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材の色調と砂壁状塗料の色調とローラーで付与した凹凸により、形成される。好ましい塗り合わせとして、アクリル樹脂系エマルション建築用仕上塗材とアクリル樹脂エマルション系砂壁状塗料の組み合わせが、密着性、耐候性、表面膜物性が好ましい。
【0025】
以下実施例で、詳細に説明する。なお、23℃相対湿度65%で行った。
【実施例1】
【0026】
ジョリパットアルファJP-100T3001(アイカ工業(株)、商品名、T3001は色番、灰色、アクリル樹脂系仕上塗材) 20kgにJF-1(アイカ工業(株)、商品名、寒水石、平均粒径0.3mm)を15kg、JF-3(アイカ工業(株)、商品名、寒水石、平均粒径0.9mm)を15kg混合し、水を2.5kg加え、ハンドミキサーで5分程度攪拌混合した。前記塗材を、ステンレスコテを用いて3.5kg/m^(2)になるようにフラットに塗布後、JT-180を中毛ウールローラー(繊維長、毛丈13mm)で全面に塗布した。塗布量は約70g/m^(2)であった。その後約5分でJR-188(アイカ工業(株)、商品名、図1の賦型ローラー、凹凸の差は略6mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m^(2)であった。凸部に質感が同じで色味が異なる塗料を塗布することで、凸部がこすれたように仕上がり、櫛引模様(図4のローラー転写模様)にさらに重厚感を付与することができた。なお,本明細書中でいう平均粒径とは,粒子径と重量による積算分率から積算分率50%の粒子径を平均粒径として算出したものである。
【実施例2】
【0027】
ジョリパットアルファJP-100T3001(アイカ工業(株)、商品名、T3001は色番、灰色、アクリル樹脂系仕上塗材) 20kgにJF-1(アイカ工業(株)、商品名、寒水石、平均粒径0.3mm)を15kg、JF-3(アイカ工業(株)、商品名、寒水石、平均粒径0.9mm)を15kg混合し、水を2.5kg加え、ハンドミキサーで5分程度攪拌混合した。前記塗材を、ステンレスコテを用いて3.0kg/m^(2)になるようにフラットに塗布後、JT-180を中毛ウールローラー(繊維長、毛丈13mm)で全面に塗布した。塗布量は約70g/m^(2)であった。その後約5分でJR-186(アイカ工業(株)、商品名、図2の賦型ローラー、凹凸の差は略0.5mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m^(2)であった。仕上がりは図5のようになった。凸部に質感が同じで色味が異なる塗料を塗布することで、荒い樹皮を実物感を持った表現となった。
【実施例3】
【0028】
ジョリパットアルファJP-100T3001(アイカ工業(株)、商品名、T3001は色番、灰色、アクリル樹脂系仕上塗材) 20kgにJF-1(アイカ工業(株)、商品名、寒水石、平均粒径0.3mm)を15kg、JF-3(アイカ工業(株)、商品名、寒水石、平均粒径0.9mm)を15kg混合し、水を2.5kg加え、ハンドミキサーで5分程度攪拌混合した。前記塗材を、ステンレスコテを用いて3.0kg/m^(2)になるようにフラットに塗布後、JT-180を中毛ウールローラー(繊維長、毛丈13mm)で全面に塗布した。塗布量は約70g/m^(2)であった。その後約5分でJR-184(アイカ工業(株)、商品名、図3の賦型ローラー、凹凸の差は略5mm)を用いて立体模様を付けた。24時間静置後、ジョリパットフレッシュJQ-800T1000(アイカ工業(株)、商品名、T1000は色番、白色)を原液で、中毛ウールローラー(毛丈13mm)で塗布した。塗布量は0.05kg/m^(2)であった。仕上がりは図6のようになった。凸部に質感が凹部と同じで色味が凹部と異なる塗料を塗布することで、風化した石に似た表現ができた。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に、合成樹脂エマルション系建築用仕上塗材を塗付し、0.5mm以上で6.5mm以下に凹凸形状を付与されたローラーで賦型し、乾燥後色調が異なる砂壁状塗料を,15mm以下の繊維長のウールローラーで凹部まで塗料を付着させずに塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-11 
出願番号 特願2012-267800(P2012-267800)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (E04F)
P 1 651・ 121- YAA (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 津熊 哲朗  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 井上 博之
小野 忠悦
登録日 2016-09-30 
登録番号 特許第6013162号(P6013162)
権利者 アイカ工業株式会社
発明の名称 壁面仕上げ方法  
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