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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65G
管理番号 1337063
異議申立番号 異議2017-700934  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-29 
確定日 2018-01-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6113249号発明「ピッキングシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6113249号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6113249号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成20年7月4日(優先権主張平成20年5月19日)に出願した特願2008-175446号の一部を平成26年3月10日に新たな特許出願とした特願2014-46519号の一部を更に平成27年10月28日に新たな特許出願としたものであって、平成29年3月24日にその特許権が設定登録され、その後、その特許に対し、平成29年9月29日に特許異議申立人橋詰隆により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6113249号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4]という。)は、それぞれ、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
物品が保管される複数の保管部を有する保管棚と、
前記保管部からピッキングされた物品を前記保管棚に沿って搬送する第1搬送手段と、
この第1搬送手段と平行に配設され、前記保管部からピッキングされた物品を前記保管棚に沿って搬送する第2搬送手段と、
前記第1搬送手段および前記第2搬送手段をそれぞれ個別に制御する制御手段と、
作業者に対してピッキングすべき物品が保管されている前記保管部を指示する保管側指示手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1搬送手段の駆動時に、前記保管側指示手段を制御してこの保管側指示手段に指示を行わせ、
前記第1搬送手段にて物品が搬送されている間に、前記第2搬送手段に関して、作業者が前記制御手段による制御に基づく前記保管側指示手段の指示に従ってピッキング作業をするピッキングシステムであって、
前記保管棚は、複数のゾーンにて構成され、
前記各ゾーンは、複数の前記保管部にて構成され、
前記第1搬送手段および前記第2搬送手段の各々は、前記各ゾーンごとに対応してそれぞれ別駆動で個別に制御される複数の分割コンベヤにて構成されている
ことを特徴とするピッキングシステム。
【請求項2】
空の集品容器を搬送する容器供給用搬送手段と、
この容器供給用搬送手段に接続された第1分岐搬送手段および第2分岐搬送手段とを備え、
前記第1分岐搬送手段は、第1搬送手段に接続され、
前記第2分岐搬送手段は、第2搬送手段に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載のピッキングシステム。
【請求項3】
物品は、保管容器に複数収容された状態で保管部に保管され、
空の保管容器を搬送する保管容器搬送手段を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載のピッキングシステム。
【請求項4】
第2搬送手段は、第1搬送手段側に向って下り傾斜状の搬送面を有し、
保管容器搬送手段は、前記第2搬送手段の上方にこの第2搬送手段と平行に配設されている
ことを特徴とする請求項3記載のピッキングシステム。」

第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(以下、「甲1」ないし「甲6」という。)を提出し、次の申立理由を主張している。

1.各甲号証
甲1:特開2002-356209号公報
甲2:特開2006-36407号公報
甲3:特公平3-29691号公報
甲4:特公平4-27123号公報
甲5:特開平7-172518号公報
甲6:特開2003-137409号公報

2.申立理由
本件発明1は、甲1ないし甲4に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明2は、甲1ないし甲5に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3及び本件発明4は、甲1ないし甲6に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

第4 甲1ないし甲6の記載
1.甲1の記載
甲1には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1)「【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の仕分け設備の一例である、仕分け棚からラインを移動する容器へ物品を仕分けるピッキング設備のついて図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態におけるピッキング設備の要部配置図である。」(段落【0016】)

(2)「【0017】ピッキング設備は、基本的に、ピッキングされる物品が保管されるストレージラインAと、物品の注文があった店舗(仕分け先の一例)毎に、ピッキングされた物品を収納する集品容器(容器の一例)を順送りしていく集品ライン(容器を移動させるラインの一例)Bから構成されている。
『ストレージラインA』まず、ストレージラインAについて説明する。ストレージラインAは基本的に、ピッキング棚(仕分け棚の一例)1とこのピッキング棚1に取り付けられる、ピッキング表示手段であるピッキング表示器(仕分け表示手段の一例)2から構成されている。
「ピッキング棚1」ピッキング棚1は、図2および図3に示すように、流動棚から形成され、前方に傾斜している複数段(図では4段)のラック(段)3を有し、各ラック3にはそれぞれ、物品4を収納した収納容器5を格納する物品収納用の複数の区画収納空間6が形成され、各区画収納空間6毎にローラコンベヤ7が設けられ、各ローラコンベヤ7の前端にはストッパ8が設けられている。・・・後略・・・」(段落【0017】)

(3)「【0018】このピッキング棚1には所定の複数(図では4段5列)の区画収納空間6からなる間口Mが形成され、さらにピッキング棚1には、集品ラインBの上流側から順にピッキング作業を行う一人あるいは二人の作業員Hが処理する複数の区画収納空間6からなる仕分けエリアSが設定されている。本実施の形態では、1つの間口Mで1つの仕分けエリアSを形成している。
「ピッキング表示器2」ピッキング棚1のラック3毎に、その前面に、図4(a)に示すように、電源ライン9と信号ライン10からなる表示器レール11が敷設され、各区画収納空間6毎に、表示器レール11上に、表示器レール11から電源が供給され、信号の送受信を行う前記ピッキング表示器2がスライド・移動自在に取り付けられている。ピッキング表示器2は、ピックアップする物品4の数量を示す3桁のディジタル表示器12とチャイム13から形成されている。
・・・中略・・・
「ピッキングコンベヤ(集品コンベヤ)21」ピッキングコンベヤ21は、ピッキング棚1の前面に沿って配置されており、平行な2列の集品容器20を同時に移動可能なように搬送面を広くしたローラ駆動のコンベヤ24から形成され、仕分けエリアS毎に、列毎にグループ化された複数(図1では4個)の集品容器20を、タクト毎に下流の仕分けエリアSへ搬送可能な構成とされている。またピッキングコンベヤ21のピッキング棚1側の側面に沿って床面に作業者H用のステップ31が設けられている。
・・・後略・・・」(段落【0018】)

(4)「【0019】本ピッキング設備の制御ブロック図を図6に示す。51は上位のコンピュータ(図示せず)より出荷情報として、店舗別に、複数の「ピッキングする物品の情報およびピッキングする物品の数量(以下、ピック数と略す)」からなる作業データが入力される制御用コンピュータ(制御手段の一例;詳細は後述する)であり、この制御用コンピュータ51に、上記ラベル26を発行するオートラベラー61とコンピュータからなるコントローラ52(詳細は後述する)が接続されている。オートラベラー61は集品ラインBへ集品容器20を投入する最上流位置に、2列の集品容器20にそれぞれ対応して設置される。
【0020】前記コントローラ52に、コンベヤ24が接続され、さらに高速インターフェイス53および表示器レール11の信号ライン10を介して、各仕分けエリアSに対応した、ピッキング表示器2、間口表示器14、および指示表示器22が接続され、さらにアンテナ(図示せず)を介してバーコードリーダ19が接続されている。またピッキング表示器2、間口表示器14、および指示表示器22に対して表示器レール11の電源ライン9を介して高速インターフェイス53より電力が供給されている。
【0021】またコントローラ52に、ピッキング棚1の区画収納空間6の配列のデータ、各区画収納空間6に格納された物品4のデータ、各区画収納空間6のプレート17と区画収納空間6に格納された物品4のラベル14に印刷されたバーコードのデータ、仕分けエリアS毎の区画収納空間6のデータが予め格納される。
・・・中略・・・
[コントローラ52]コントローラ52の制御ブロックを図7に示す。
【0022】コントローラ52には、予め格納された、ピッキング棚1の区画収納空間6の配列のデータおよび仕分けエリアSの区画収納空間6のデータに基づいて、集品ラインBの上流側より、仕分けエリアS毎にエリアブロックが形成されている。このエリアブロックは、仕分けエリアSのバーコードリーダ19、間口表示器14、および指示表示器22に対応する仕分けエリア店舗制御メモリ55と、各区画収納空間6のピッキング表示器2に対応したピック数制御メモリ56から構成されている。」(段落【0019】ないし【0022】)

(5)「【0031】これにより、集品容器20のビニール袋25へラベル26が貼り付けられ、2列で、かつグループ単位でコンベヤ24へ投入される。コントローラ52は、まずコンベヤ24を駆動して、2グループの集品容器20を仕分けエリアSへ搬送させる。続いて、集品容器20の店舗の作業データおよび各区画収納空間6の配列データに基づいて、各仕分けエリアSで1列目Xで最も下流に位置する集品容器20(子箱20B)に対してピッキング作業を行うピッキング間口表示器14を点灯し、ピッキング表示器2にピッキングする物品4の数量を表示させる。また前記1列目Xで最も下流に位置する集品容器20の指示表示器22を点灯させる。
【0032】作業者Hは、間口表示器14が点灯され、ピッキング表示器2に数量が表示された区画収納空間6より、前記数量の物品4をピッキングし、バーコードリーダ19によりこの物品4のバーコードラベル16を読み取り、指示表示器22が点灯した集品容器20のビニール袋25内へ投入する{図5(a)参照}。
【0033】コントローラ52は、入力したバーコードがピッキングされる物品4のバーコードかを確認し、ピック数の一致を確認すると、この区画収納空間6をピッキング終了と判断し、その区画収納空間6のピッキング表示器2の表示を消去させる。ピック数が多いと、チャイム13を鳴動させ、ピッキング表示器2の表示を復活させる。さらに、この区画収納空間6のピッキング終了により間口表示器14の点灯を見直し、間口Mにピッキングする区画収納空間6がなくなると間口表示器14を消灯させる。
【0034】作業者Hは、ピッキング表示器2の表示が消えたことで、正しく物品4をピッキングしたことを確認し、次のピッキング表示器2に数量が表示された他の区画収納空間6より、前記数量の物品4をピッキングし、バーコードリーダ19によりこの物品4のバーコードラベル16を読み取り、指示表示器22が点灯した集品容器20へ投入する。もしピック数が不足すると、ピッキング表示器2の表示が消えないので、物品4を確認して不足の物品4をピッキングしてラベル14のバーコードをバーコードリーダ19により読み込ませる。また多すぎるとチャイム13が鳴動するので、ピッキング表示器2の表示を確認して、多い分を区画収納空間6へ戻し、再度この区画収納空間6の全ての物品4のラベル14のバーコードをバーコードリーダ19により読み込ませる。」(段落【0031】ないし【0034】)

(6)「【0038】コントローラ52は、8個の集品容器20へのピッキングが終了すると、この仕分けエリアSのピッキング作業が全て終了したと判断する。そして、全ての仕分けエリアSのピッキング作業が全て終了すると、コンベヤ24を駆動させて、8個の集品容器20を下流の仕分けエリアSへ移動させ、次のピッキング作業を開始させる。」(段落【0038】)

(7)「【0048】また本実施の形態では、ピッキングコンベヤ21を2列の集品容器20を1平面上で移動させる(1列の)コンベヤ24としているが、2列(複数列)のコンベヤにより構成してもよく、さらに図10に示すように、ピッキングコンベヤ21を搬送面の高さが異なる2段(複数段)のコンベヤ24A,24Bにより構成するようにしてもよい。このとき、2列目の集品容器20がコンベヤ24Bにより搬送され、このコンベヤ24Bの上方に2列目の指示表示器22が配置される。なお、2列のコンベヤ、また2台のコンベヤ24A,24Bを1台のモータ(同一駆動源の一例)で駆動し、同期して集品容器20を移動させるようにしている。
【0049】また図10では、異なる平面に2段(複数段)のコンベヤ24A,24Bを配置しているが、図11に示すように、同一平面に、すなわち上下2段(複数段)にコンベヤ24A,24Bを配置してもよい。また上方に配置する2列目のコンベヤ24Bの向きをピッキング棚1側へ傾けて、容器20へ物品4を投入しやすく、あるいは容器20より物品4をピッキングしやすくするようにすることもできる(このとき、コンベヤ24Bには容器20がずれ落ちないようにガイドを設ける)。」(段落【0048】及び【0049】)

(8)上記(3)ないし(7)及び図面の記載より分かること
ア 上記(3)、(6)、(7)及び図10の記載によれば、コンベヤ24Aは、区画収納空間6からピッキングされた物品4をピッキング棚1に沿って搬送し、コンベヤ24Bは、コンベヤ24Aと平行に設けられ、区画収納空間6からピッキングされた物品4をピッキング棚1に沿って搬送することが分かる。

イ 上記(3)ないし(5)、図1及び図2の記載によれば、ピッキング表示器2は、区画収納空間6毎に設けられ、作業者Hに対してピッキングすべき物品4の数量を表示し、コントローラ52は、ピッキング表示器2に物品4の数量を表示させ、作業者Hがコントローラ52による制御に基づくピッキング表示器2の物品4の数量に従ってピッキング作業をすることが分かる。

ウ 上記(3)及び図3の記載によれば、ピッキング棚1には、複数の仕分けエリアSが設定され、仕分けエリアSは、複数の区画収納空間6からなることが分かる。

エ 上記(3)及び(5)の記載によれば、コンベヤ24A及びコンベヤ24Bの各々は、仕分けエリアS毎に対応して制御されることが分かる。

(9)甲1発明
上記(1)ないし(8)を総合すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「物品4が保管される複数の区画収納空間6を有するピッキング棚1と、
区画収納空間6からピッキングされた物品4をピッキング棚1に沿って搬送するコンベヤ24Aと、
コンベヤ24Aと平行に設けられ、区画収納空間6からピッキングされた物品4をピッキング棚1に沿って搬送するコンベヤ24Bと、
コンベヤ24A及びコンベヤ24Bを同期して制御するコントローラ52と、
区画収納空間6毎に設けられ、作業者Hに対してピッキングすべき物品4の数量を表示するピッキング表示器2とを備え、
コントローラ52は、ピッキング表示器2に物品4の数量を表示させ、
作業者Hがコントローラ52による制御に基づくピッキング表示器2の物品4の数量に従ってピッキング作業をするピッキング設備であって、
ピッキング棚1には、複数の仕分けエリアSが設定され、
仕分けエリアSは、複数の区画収納空間6からなり、
コンベヤ24A及びコンベヤ24Bの各々は、仕分けエリアS毎に対応して制御され、
物品4は、収納容器5に複数収納された状態で区画収納空間6に保管され、
コンベヤ24Bの向きをピッキング棚1側に傾ける、
ピッキング設備。」

2.甲2の記載
甲2には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1)「【0027】
各アソーティングライン21,22は、上段と下段がそれぞれ独立して動作し、上段のアソーティングライン21aと下段のアソーティングライン21bが交互に搬送動作を行うことができる。同様に、上段のアソーティングライン22aと下段のアソーティングライン22bも、交互に搬送動作を行う。これら各アソーティングライン21a,22a,21b,22bには、各作業者Pの両側一定範囲に、各作業者Pがアソーティングを行うための複数の配分間口が設定されており、各配分間口には、空のコンテナ24が配置される。」(段落【0027】)

(2)「【0032】
図8は、図7のアソーティングラインの一部を拡大した説明図である。図8に示すように、各アソーティングライン21,22において、商品Sが収納されたトートトレイ15が作業者Pの前に搬送されると、作業者Pは、トートトレイ15に付されているバーコード(図示しない)をスキャナ(図示しない)でスキャニングする。
【0033】
バーコードをスキャニングにすることにより、作業者Pの前に配置された表示器(図示しない)には、スキャニングによって得られた情報に基づき、作業者Pに知らせるための商品Sの配分指示情報が表示される。作業者Pは、表示器の配分指示情報を見て、指定された各コンテナ24に商品Sを配分仕分けする間口配分作業を行う。この間口配分作業を行うに際し、作業者Pは、上段と下段で交互に、即ち、上段のアソーティングライン21aと下段のアソーティングライン21b、或いは上段のアソーティングライン22aと下段のアソーティングライン22bで交互に作業する。
【0034】
つまり、トートトレイ15により商品Sが送られて来ると、作業者Pは、先ず、下段のアソーティングライン21b(或いは、22b)の間口配分作業を行う。下段のアソーティングライン21b(或いは、22b)での配分作業が終了した作業者Pは、次に、上段のアソーティングライン21a(或いは、22a)の間口配分作業を行う。
【0035】
下段のアソーティングライン21b(或いは、22b)における1バッチ分の配分作業が終了すると、終了と共に下段のアソーティングライン21b(或いは、22b)が搬送作動し、商品Sのアソーティングが行われた商品積み込み済みのコンテナ24を出荷エリアへと送り出す。同時に、下段のアソーティングライン21b(或いは、22b)の搬送作動によって、各作業者Pの前には空のコンテナ24が運ばれてくる。
【0036】
続いて、上段のアソーティングライン21a(或いは、22a)の間口配分作業を終えた作業者Pは、既に、新たな空のコンテナ24が運ばれている下段のアソーティングライン21b(或いは、22b)の間口配分作業を行う。」(段落【0032】ないし【0036】)

(3)上記(2)の記載より分かること
上記(2)の段落【0033】ないし【0035】の記載によれば、下段のアソーティングライン21bにおける1バッチ分の間口配分作業の終了後、下段のアソーティングライン21bにて該間口配分作業済みの商品Sが積まれたコンテナ24が搬送されている間に、上段のアソーティングライン21aに関して、作業者Pは表示器の配分指示情報に従って間口配分作業を行うことが分かる。

(4)甲2技術
上記(1)ないし(3)を総合すると、甲2には次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。

「上段のアソーティングライン21aと下段のアソーティングライン21bがそれぞれ独立して動作し、トートトレイ15に付されているバーコードをスキャニングすることにより、表示器に商品Sの配分指示情報を表示させ、下段のアソーティングライン21bにおける1バッチ分の間口配分作業の終了後、下段のアソーティングライン21bにて該間口配分作業済みの商品Sが積まれたコンテナ24が搬送されている間に、上段のアソーティングライン21aに関して、作業者Pは表示器の配分指示情報に従って間口配分作業を行う技術。」

3.甲3の記載
甲3には、第4ページ右欄第32行ないし38行及び第1図等の記載からみて、次の技術が記載されている。

「各ブロックに対応して搬送コンベヤを分割し、この各コンベヤを独立に駆動制御する技術。」

4.甲4の記載
甲4には、特許請求の範囲及び第1図等の記載からみて、次の技術が記載されている。

「搬送ラインAが、複数個のゾーンa1,a,a10に区画され、複数個のゾーンa1,a,a10夫々に対応し、かつ、個別に駆動停止自在なコンベヤ部分3aを備える技術。」

5.甲5の記載
甲5には、段落【0009】、【0010】、【0017】及び図1等の記載からみて、次の技術が記載されている。

「親箱3を供給するコンベヤ5は、途中で2つに分岐し、分岐したコンベヤは、それぞれ、コンベヤ9に合流する技術。」

6.甲6の記載
甲6には、段落【0025】及び図2等の記載からみて、次の技術が記載されている。

「空の収納容器5を搬送する空容器返却用コンベヤ32が、ピッキングコンベヤ26の上方にこのピッキングコンベヤ26と平行に配置される技術。」

第5 判断
1.本件発明1について
甲1発明における「物品4」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件発明1における「物品」に相当し、以下同様に、「区画収納空間6」は「保管部」に、「ピッキング棚1」は「保管棚」に、「コンベヤ24A」は「第1搬送手段」に、「コンベヤ24B」は「第2搬送手段」に、「作業者H」は「作業者」に、「ピッキング設備」は「ピッキングシステム」に、「仕分けエリアS」は「ゾーン」に、「ピッキング棚1には、複数の仕分けエリアSが設定され」ることは「保管棚は、複数のゾーンにて構成され」ることに、「仕分けエリアSは、複数の区画収納空間6からな」ることは「各ゾーンは、複数の保管部にて構成され」ることに、それぞれ相当する。
甲1発明における「区画収納空間6毎に設けられ、作業者Hに対してピッキングすべき物品4の数量を表示するピッキング表示器2」は、ピッキングすべき物品4が保管されている区画収納空間6に設けられたピッキング表示器2に、ピッキングすべき物品4の数量を表示するものであるから、作業者Hに対してピッキングすべき物品4が保管されている区画収納空間6を指示するものといえ、本件発明1における「作業者に対してピッキングすべき物品が保管されている保管部を指示する保管側指示手段」に相当する。
また、甲1発明における「コンベヤ24Aおよびコンベヤ24Bを同期して制御するコントローラ52」と、本件発明1における「第1搬送手段および第2搬送手段をそれぞれ個別に制御する制御手段」とは、「第1搬送手段および第2搬送手段を制御する制御手段」という限りにおいて一致する。

してみると、両者は、
「物品が保管される複数の保管部を有する保管棚と、
前記保管部からピッキングされた物品を前記保管棚に沿って搬送する第1搬送手段と、
この第1搬送手段と平行に配設され、前記保管部からピッキングされた物品を前記保管棚に沿って搬送する第2搬送手段と、
前記第1搬送手段および前記第2搬送手段を制御する制御手段と、
作業者に対してピッキングすべき物品が保管されている前記保管部を指示する保管側指示手段とを備えるピッキングシステムであって、
前記保管棚は、複数のゾーンにて構成され、
前記各ゾーンは、複数の前記保管部にて構成されている
ピッキングシステム。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件発明1では、制御手段は、第1搬送手段および第2搬送手段を「それぞれ個別に」制御するものであって、「第1搬送手段の駆動時に、保管側指示手段を制御してこの保管側指示手段に指示を行わせ、前記第1搬送手段にて物品が搬送されている間に、第2搬送手段に関して、作業者が前記制御手段による制御に基づく前記保管側指示手段の指示に従ってピッキング作業をする」のに対し、
甲1発明では、コントローラ52は、コンベヤ24Aおよびコンベヤ24Bを同期して制御するものであって、ピッキング表示器2に指示を行わせ、作業者Hがコントローラ52による制御に基づくピッキング表示器2の物品4の数量に従ってピッキング作業をする点(以下、「相違点1」という。)。

(相違点2)
本件発明1は、「第1搬送手段および第2搬送手段の各々は、各ゾーンごとに対応してそれぞれ別駆動で個別に制御される複数の分割コンベヤにて構成されている」のに対し、
甲1発明は、かかる構成を有していない点(以下、「相違点2」という。)。

ここで、上記相違点1について検討する。
甲2技術の上段のアソーティングライン21aと下段のアソーティングライン21bは、それぞれ独立して動作するものであるから、「それぞれ個別」に制御するものといえるが、トートトレイ15に付されているバーコードをスキャニングすることにより、表示器に商品Sの配分指示情報を表示させるものであって、下段のアソーティングライン21bの駆動時に表示器を制御して、該表示器に商品Sの配分指示情報を表示させるものではない。
そうすると、甲2技術は、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項のうち、「制御手段は、第1搬送手段の駆動時に、保管側指示手段を制御してこの保管側指示手段に指示を行わせ」るという事項を、構成として有していない。
また、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項については、甲3ないし甲6にも、開示や示唆はなく、本願の優先日前の周知技術ともいえず、当業者にとって設計的事項でもない。

よって、本件発明1は、相違点2を検討するまでもなく、甲1発明、甲2技術及び甲3ないし甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本件発明2ないし4について

本件発明2ないし4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、それぞれ、本件発明1と同様に、甲1発明、甲2技術及び甲3ないし甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-04 
出願番号 特願2015-211786(P2015-211786)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大谷 光司前田 仁  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 西山 智宏
八木 誠
登録日 2017-03-24 
登録番号 特許第6113249号(P6113249)
権利者 オークラ輸送機株式会社
発明の名称 ピッキングシステム  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 山田 哲也  

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