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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 D21F |
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管理番号 | 1337067 |
異議申立番号 | 異議2017-700941 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-10-03 |
確定日 | 2018-01-25 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6114793号発明「抄紙用織物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6114793号の請求項1?3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6114793号(以下「本件特許」という。)の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成27年9月17日の出願であって、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人株式会社日本フイルコン(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年11月29日に特許権者より上申書が提出されたものである。 2.本件発明 本件特許の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1?3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本件発明1は以下のとおりのものである。 「【請求項1】 所定の繰り返しパターンを備える抄紙用織物であって、 互いに隣接する2本を1組とする複数組の下経糸、及び前記下経糸を織り込む複数の下緯糸を有する走行面側織物層と、 互いに織り合わされた上経糸及び上緯糸を有し、前記走行面側織物層の上に重ねられた製紙面側織物層と、 前記走行面側織物層と前記製紙面側織物層とを接結する緯自接結糸とを備え、 前記下緯糸は、完全組織において、1組の前記下経糸の上を通るように織り込み、前記緯自接結糸は、連続する3本の前記下経糸を1本ずつ下、上、下と通って2回織り込む下織り込み部分と、連続する3本の前記上経糸の上を通って前記上経糸を織り込む上織り込み部分とを含むことを特徴とする抄紙用織物。」 3.申立理由の概要 申立人は、甲第1号証及び甲第2号証(以下「甲1」、「甲2」という。)を提出し、本件発明1?3は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号の規定により、本件発明1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 甲1:特表2005-524781号公報 甲2:米国特許第6267150号明細書 4.当審の判断 (1)甲1には、上部縦糸組織と底部縦糸組織とを備えている「抄紙ファブリック」(【0021】)について、 「上部縦糸組織及び上部横糸組織」は紙側層を構成し、また「底部縦糸組織及び底部横糸組織」は機械側層を構成しており(【0021】)、 「前記紙側を構成する層及び前記機械側を構成する層は、バインダ糸組織によって織合わされ」、「バインダ糸5」は、「紙側面上の製織層の一部を構成し、少なくとも1つの底部縦糸3aまたは3bの下で織合わせることによって前記層を結合する」(【0022】)と記載されている。 よって、甲1には、 「上部縦糸組織と底部縦糸組織とを備えている抄紙ファブリックにおいて、 上部縦糸組織及び上部横糸組織は紙側層を構成し、また底部縦糸組織及び底部横糸組織は機械側層を構成しており、 前記紙側層及び前記機械側層は、バインダ糸組織によって織合わされ、バインダ糸5は、紙側面上の製織層の一部を構成し、少なくとも1つの底部縦糸3aまたは3bの下で織合わせることによって前記紙側層及び前記機械側層を結合する、抄紙ファブリック」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 (2)本件発明1と甲1発明を対比すると、製紙面側織物層と走行面側織物層を結合する糸について、 本件発明1の「緯自接結糸は、連続する3本の下経糸を1本ずつ下、上、下と通って2回織り込む下織り込み部分と、連続する3本の上経糸の上を通って上経糸を織り込む上織り込み部分とを含む」のに対して、 甲1発明の「バインダ糸5は、紙側面上の製織層の一部を構成し、少なくとも1つの底部縦糸3aまたは3bの下で織合わせることによって紙側層及び機械側層を結合する」ものであるが、具体的に本件発明1の緯自接結糸のように糸を通してはいない点で、少なくとも相違する。 (3)この相違点について検討する。 甲2のFig.7を参照すると、「CMD threads(横糸)2?5」は、製紙用基布の「top layer of MD threads(上面の経糸)10?24」と「bottom layer of MD threads(底面の経糸)11?25」とを、所定の繰り返しパターンで織り、紙側層と機械側層を結合するものであることが看取できる。 しかし、これらの「CMD threads(横糸)2?5」は、上記相違点に係る「連続する3本の下経糸を1本ずつ下、上、下と通って2回織り込む下織り込み部分と、連続する3本の上経糸の上を通って上経糸を織り込む上織り込み部分とを含む」構造を備えるものではない。 申立人は、甲2(Fig.7)の符号71の糸が、「連続する3本の下経糸を1本ずつ下、上、下と通って2回織り込む下織り込み部分と、連続する3本の上経糸の上を通って上経糸を織り込む上織り込み部分とを含む」構造に該当する旨主張するが(特許異議申立書6頁13行?下から2行)、甲2(Fig.7)の「additional thread(追加の糸)70、71」は、製紙用基布の端部の「seam zone(縫い目領域)40」に配置されるものであり、走行面側織物層と製紙面側織物層を結合する、本件発明1の「緯自接結糸」や甲1発明の「バインダ糸5」に相当するものではない。そのため、甲2の「additional thread(追加の糸)70、71」が、「連続する3本の下経糸を1本ずつ下、上、下と通って2回織り込む下織り込み部分と、連続する3本の上経糸の上を通って上経糸を織り込む上織り込み部分とを含む」構造を備えるとしても、甲1発明の「バインダ糸5」の上部縦糸組織と底部縦糸組織への織り方を示唆するものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を備えることにより、「2本1組の下経糸8を下緯糸10が織り込んで形成された走行面側織物層4に対して、緯自接結糸16が、W字状に下経糸8を非連続で2回織り込むことにより、ワイヤー2の斜め方向の剛性を高めることができる。また、緯自接結糸16による上経糸12の織り込みは、上緯糸14による上経糸12の織り込みと類似しているため、接結によるろ水性の低下を抑制することができ、また、良好な平滑性が維持されて製造される紙へマークが付くことを抑制できる。」(本件特許明細書の【0024】)との効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を、直接又は間接的に含むものであるところ、上記のように、本件発明1は甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2及び3についても、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5.むすび 以上より、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-01-15 |
出願番号 | 特願2015-183729(P2015-183729) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(D21F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 長谷川 大輔 |
特許庁審判長 |
千壽 哲郎 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 門前 浩一 |
登録日 | 2017-03-24 |
登録番号 | 特許第6114793号(P6114793) |
権利者 | 日本フエルト株式会社 |
発明の名称 | 抄紙用織物 |
代理人 | 小松 純 |
代理人 | 特許業務法人 大島特許事務所 |