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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F25B
管理番号 1337075
異議申立番号 異議2017-700868  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-13 
確定日 2018-02-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6095628号発明「空気調和機用消音器及びその消音器を備えた空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6095628号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6095628号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成26年10月20日に特許出願され、平成29年2月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、本件特許の請求項1ないし6に係る特許について、平成29年9月13日に特許異議申立人川股くみ子により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年10月31日付けで取消理由を通知し、平成29年12月26日付けで意見書が提出されたものである。

2 本件発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3 取消理由の概要
当審において、請求項1ないし6に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次の刊行物により、「本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。」とするものである。
(1)特開2011-12869号公報(以下、「甲第1号証」という。)
(2)実公昭49-32329号公報(以下、「甲第2号証」という。)

なお、前記取消理由は特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由と同様であり、取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由はない。

4 各刊行物の記載
(1)甲第1号証について
甲第1号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「マフラ本体と、該マフラ本体の入口側に設けられた入口側小径部と、前記マフラ本体の出口側に設けられた出口側小径部と、前記入口側小径部に接続される入口側接続配管と、前記出口側小径部に接続される出口側接続配管とを備え、前記入口側接続配管は、前記入口側小径部を介して前記マフラ本体の内部まで挿入された入口側内管を有し、該内管の先端部が前記マフラ本体の長手方向の中心面の近傍に位置している、圧縮機の吐出側に設けたマフラ。」

(2)甲第2号証について
甲第2号証には、次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認める。
「密閉型電動圧縮機の冷媒吸入室4に連結管5,6により連結され、冷媒を消音器7に運ぶ吸入管8を備えた消音器7において、吸入管8の消音器7内に挿し込んだ端部には細径部8′を形成する技術。」

5 判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点A」という。)で相違する。
[相違点A]
本件発明1は、「挿入管部は、前記先端側の部分の内径が、上流側の部分の内径よりも小さい」のに対して、甲1発明は、「入口側内管」がそのように構成されていない点。

イ 相違点Aの検討
甲1発明において、甲2技術を適用することについて検討すると、甲1発明に係るマフラは、騒音の原因となる圧縮機の吐出工程において励起されるガス圧力脈動を低減すべく、圧縮機の吐出側に設けられるところ、甲2技術は、吸入管8から吸い込まれる冷媒を減圧し、消音器7内に吐出された冷媒を膨張気化させ、冷媒吸入室4に気化冷媒のみが吸い込まれるようにして、吸入弁の破損事故を皆無とするとともに、吸入管8の固有振動数を変化させて、消音効果に好ましい結果を与えるものであって、圧縮機の吸入側に設けられる消音器を前提とした技術であるから、甲1発明に甲2技術を適用する動機付けはない。
また、仮に甲1発明に甲2技術を適用して、甲1発明の入口側内管の端部を、甲2技術により固有振動数を変化させるべく径を変えるとしても、甲第1号証には、図2のもののように、上部接続配管12の内管(縮管部)12a全体の径を変えることが示唆されているにすぎないから、必ずしも上記相違点Aに係る本件発明1の発明特定事項を構成し得るとはいえない。
そうすると、甲2技術を考慮しても、甲1発明において、上記相違点Aに係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。

ウ 効果について
そして、本件発明1は、上記相違点Aに係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る願書に添付された明細書に記載された「本発明に係る空気調和機用消音器によれば、入口配管の先端部を前記消音器本体の入口から出口までの長さの中央部に位置させ、入口配管の先端部側の内径を当該先端部側より上流側の入口配管の内径に対し細くすることにより、消音器本体のサイズを大きくすることなく、消音効果を維持しながら、冷媒の圧力損失を従来技術よりも小さく抑えることが出来る。」(段落【0011】)という所期の効果を奏するものである。

エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点(以下、「相違点B」という。)で相違する。
[相違点B]
本件発明2は、「挿入管部は、前記消音器本体の入口側に位置する挿入管上部と、前記消音器本体の出口側に位置する挿入管下部とを有し、前記挿入管下部は、前記挿入管上部より内径が細い」のに対して、甲1発明は、「入口側内管」がそのように構成されていない点。

イ 相違点Bの検討
上記(1)イの相違点Aの検討を踏まえると、同様の理由により、甲1発明において、上記相違点Bに係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。

ウ 効果について
本件発明2は、上記相違点Bに係る本件発明2の発明特定事項を備えることにより、上記(1)ウに記載した所期の効果と同様の効果を奏するものである。

エ 小括
したがって、本件発明2は、甲1発明及び甲2技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(3)本件発明3ないし6について
本件発明3ないし5は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであり、本件発明6は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。
したがって、上記(1)及び(2)の検討を踏まえると、本件発明3ないし6は、甲1発明及び甲2技術に基き、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、請求項3ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

6 むすび
したがって、請求項1ないし6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由(特許異議の申立ての理由)によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-22 
出願番号 特願2014-213880(P2014-213880)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F25B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
槙原 進
登録日 2017-02-24 
登録番号 特許第6095628号(P6095628)
権利者 三菱電機株式会社
発明の名称 空気調和機用消音器及びその消音器を備えた空気調和機  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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