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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B64C
管理番号 1337078
異議申立番号 異議2017-701014  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-24 
確定日 2018-02-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6123032号発明「支援された離陸」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6123032号の請求項1ないし29に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6123032号の請求項1?29に係る特許についての出願は、2014年3月27日を国際出願日とする出願であって、平成29年4月7日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人日高賢治より特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6123032号の請求項1?29に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明29」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?29に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
可動物体の支援された離陸の方法において、
前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式で、前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップと、
プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップと、
前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記可動物体が、垂直に離陸または着陸の少なくとも一方ができる航空機である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の積分制御方式は、前記可動物体の垂直方向及び横方向の両方で積分値がデフォルト値に設定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記デフォルト値が、ゼロである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記可動物体の前記高度を増加させる命令を受け取るステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記命令が、遠隔の端末によって提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記可動物体の前記高度を増加させる前記命令を受け取る前に、前記アクチュエータを始動させる命令を受け取るステップと、前記アクチュエータをアイドルモードに置くステップと、をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記高度を増加させる前記命令が所定の値を超えないとき、前記アクチュエータがアイドルモードになるまで前記アクチュエータへの前記出力を減少させるステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の制御方式が、第2の積分制御方式である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の積分制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップが、垂直の方向の積分制御を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力の程度に基づいて前記離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップが、前記アクチュエータへの前記出力の前記程度が所定の出力値を超えるときに、前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたと判定することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記可動物体が、前記離陸閾値を満たしたかどうかを判定することが、前記可動物体の測定された高度、速度もしくは加速度、またはアクチュエータから測定された出力に基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記可動物体が、前記離陸閾値を満たしたかどうかを判定することが、前記可動物体の外部の源から受け取られた信号に依存しない、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(1)前記アクチュエータへの前記出力が第1の所定の出力値よりも大きく、かつ垂直方向の前記可動物体の加速度が所定の加速度値を超えるとき、または(2)前記アクチュエータへの前記出力が第2の所定の出力値よりも大きいとき、前記離陸閾値が満たされる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の所定の出力値が、前記第1の所定の出力値と異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の所定の出力値が、前記第1の所定の出力値よりも大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
可動物体の支援された離陸のためのシステムにおいて、
前記可動物体のアクチュエータであって、前記アクチュエータへの出力が前記可動物体の高度の増加をもたらすアクチュエータと、
前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、かつ(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用して、前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサと、を備える、
ことを特徴とする、システム。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記可動物体に搭載されている、
ことを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、前記可動物体から分離した外部のデバイス上に設けられている、ことを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記可動物体が、垂直に離陸または着陸の少なくとも一方ができる航空機である、
ことを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記可動物体が、無人航空機である、
ことを特徴とする、請求項17から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記無人航空機が、回転翼機である、
ことを特徴とする、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記アクチュエータが、前記可動物体の推進ユニットを駆動するモーターである、
ことを特徴とする、請求項17から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の積分制御方式は、前記可動物体の垂直方向及び横方向の両方で積分値がデフォルト値に設定される、
ことを特徴とする、請求項17から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記デフォルト値が、ゼロである、
ことを特徴とする、請求項17から24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記第2の制御方式が、垂直方向の積分制御を含む第2の積分制御方式である、ことを特徴とする、請求項17から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
次の条件:(1)前記アクチュエータへの出力が第1の所定の出力値よりも大きく、かつ垂直方向の前記可動物体の加速度が所定の加速度値を超えるとき、または(2)前記アクチュエータへの前記出力が第2の所定の出力値よりも大きい、のうちの1つ以上が満たされるとき、前記離陸閾値が満たされる、
ことを特徴とする、請求項17から26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記可動物体の高度を増加させる命令を受け取る受信機をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項17から27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記プロセッサが、前記可動物体の外部の源から受け取る信号に依存せずに、前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたかどうかを判定する、
ことを特徴とする、請求項17から28のいずれか一項に記載のシステム。」

第3 申立理由の概要
1 特許異議申立人の主張の概要
(1)本件発明1?2、4?16は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術的事項(甲第2?4号証に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

(2)本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術的事項(甲第2?4、8、9号証に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

(3)本件発明17?18、20?22、25?29は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術的事項(甲第2?4号証に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

(4)本件発明19は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術的事項(甲第2?7号証に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

(5)本件発明23は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術的事項(甲第2?6号証に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

(6)本件発明24は、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術的事項(甲第2?4、8、9号証に記載された事項)に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

上記(1)?(6)によれば、本件発明1?29は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである旨主張している。

2 特許異議申立人が提出した証拠方法
(1)甲第1号証
特開2004-130852号公報

(2)甲第2号証
Jeffrey Bender, Joseph G.Irwin III, Mark S.Spano, Mark Schwerke、「MH-47G Digital AFCS Evolution」
American Helicopter Society 67^(th) Annual Forum、2011年5月

(3)甲第3号証
特開2007-331426号公報

(4)甲第4号証
特開平10-246780号公報

(5)甲第5号証
永田貴久、野中謙一郎、「地表付近でのSMCによるRCヘリコプタの高度制御実験」
第51回自動制御連合講演会、2008年11月
第403?406ページ

(6)甲第6号証
辛振玉、藤原大悟、羽沢健作、野波健蔵、「ラジコンヘリコプタの姿勢制御・ホバリング制御」
日本機械学会論文集(C編)、68巻、675号、2002年
第148?155ページ

(7)甲第7号証
廣谷和之、鈴木智、中澤大輔、野波健蔵、「小型無人ヘリコプタの回転数および高度制御」、第51回自動制御連合講演会、2008年11月
第391?396ページ

(8)甲第8号証
「機械工学便覧 デザイン編 β6 制御システム」
社団法人日本機械学会、2006年4月10日発行
第31?32ページ

(9)甲第9号証
「自動車制御ハンドブック基礎編」(第1版第2刷)
社団法人計測自動制御学会、1992年11月30日発行
第130?131ページ

第4 各甲号証の記載事項
1 甲第1号証
本件特許の国際出願日前に頒布された甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。また、以下「1a」?「1f」の記載事項は、それぞれ「記載事項(1a)」?「記載事項(1f)」という。)。

(1a)「【請求項1】
地上からの操縦指令を必要とせずに自律的に飛行を行う無人ヘリコプタにおいて、
フィードバックされた高度と高度指令との偏差、及び、フィードバックされた上昇率と上昇率指令との偏差に基づいてコレクティブピッチ舵角を指令する高度制御手段と、
水平面の位置に関し、フィードバックされた位置と位置指令との偏差、及び、フィードバックされた速度と速度指令との偏差に基づいて位置制御を行う位置制御手段と、
フィードバックされた姿勢角と姿勢角指令との偏差に基づいて機体の姿勢制御を行う姿勢制御手段と、
地上からの離陸開始指令を受けて、前記高度制御手段による高度制御を行わずにコレクティブピッチ舵角を増加させながら機体を離陸させて第1の高度まで上昇させた後に、前記高度制御手段による高度制御を開始する離陸手段と、
を備えることを特徴とする無人ヘリコプタ。
【請求項2】
前記離陸手段は、
前記第1の高度まで機体を上昇させる際に、前記位置制御と前記姿勢制御とを抑制することを特徴とする請求項1に記載の無人ヘリコプタ。」

(1b)「【請求項6】
高度制御を行わずに上昇率を増加させながら第1の高度まで上昇する第1上昇工程と、
前記第1の高度から高度制御を行いながら上昇する第2上昇工程と、
を備えることを特徴とする無人ヘリコプタの離陸方法。
【請求項7】
前記第1上昇工程で、水平面の機体の位置制御と、機体の姿勢制御と、を抑制することを特徴とする請求項6に記載の無人ヘリコプタの離陸方法。」

(1c)「【0036】
本実施の形態においては、本発明に係る無人ヘリコプタを備えた飛行制御システムについて説明する。まず、図1及び図2を用いて、本実施の形態に係る飛行制御システム1の構成を説明する。図1は、飛行制御システム1の構成を説明するためのブロック図であり、図2は、飛行制御システム1における無人ヘリコプタ20の構成を説明するための概要構成図である。
【0037】
本実施の形態に係る飛行制御システム1は、地上に設置された基地局10や無線操縦装置14から構成される地上システムと、無人ヘリコプタ20と、を備えており、無線操縦装置14から送信された所定の制御指令に基づいて無人ヘリコプタ20を運転制御するものである。
【0038】
基地局10は、図1に示すように、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信する基地局側GPS受信機11と、GPS受信状況を表示するモニタを備えるパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)12と、GPSのディファレンシャル情報を無人ヘリコプタ20に送信する基地局側無線伝送装置13と、を備えている。また、無線操縦装置14は、操作員により入力された離陸指令等の制御指令を、無人ヘリコプタ20に送信するものである。
【0039】
無人ヘリコプタ20は、図1及び図2に示すように、地上からの制御指令や予め記憶された制御指令に基づいて機体のロータ等を駆動制御して自律飛行させる飛行制御装置21、GPS衛星からの信号を受信して機体の位置、速度、高度等を検出する機体側GPS受信機22、機体の姿勢角や角速度を検出する慣性センサ23、機体の磁方位を検出する磁方位センサ24、基地局側無線伝送装置13から送信されたGPSのディファレンシャル情報を受信する機体側無線伝送装置25、無線操縦装置14から送信された離陸開始指令等を受信する指令受信機26、エンジン27、ロータ28、警告灯29、等を備えている。
【0040】
飛行制御装置21は、演算処理回路、飛行制御に必要な各種制御プログラム、各種情報を記憶するメモリ、等を備えたマイクロコンピュータであり、エンジン27を駆動制御することによりロータ28を回転させ、上向きの推力を発生させて機体の上昇・降下を実現させる。
【0041】
また、飛行制御装置21には、図1に示すように、機体側GPS受信機22、慣性センサ23、磁方位センサ24及び指令受信機26が接続されている。飛行制御装置21は、これら機体側GPS受信機22や慣性センサ23や磁方位センサ24によって検出された各種データに基づいて、ロータ28のコレクティブピッチ舵角やサイクリックピッチ舵角を制御して、所定の飛行制御を実現させる。」

(1d)「【0045】
<高度制御について>
まず、高度制御について説明する。飛行制御装置21のメモリには、高度制御を実現させる高度制御プログラムが記憶されている。飛行制御装置21の演算処理回路が高度制御プログラムを実行すると、機体側GPS受信機22によって検出されフィードバックされた機体の高度と高度指令との偏差(高度偏差)と、この高度偏差の積分値と、フィードバックされた機体の高度変化率と高度変化率指令との偏差と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されることにより、機体のコレクティブピッチ舵角指令が算出される。コレクティブピッチ舵角指令は、本発明における舵角指令である。
【0046】
そして、このコレクティブピッチ舵角指令に基づいて舵角駆動用アクチュエータでコレクティブピッチ舵角を制御することにより、機体の高度制御を行うことができる。すなわち、飛行制御装置21の高度制御プログラム及び演算処理回路は、本発明における高度制御手段である。
【0047】
本実施の形態においては、図3に示すように、予め設定した高度変化率指令を積分器で積分して高度指令を算出することにより、連続的で滑らかな高度制御を実現している。また、本実施の形態における高度変化率指令は、離陸時においては一定値、自律飛行時においては所定の飛行パターンデータで設定された値、着陸時には高度データに従って段階的に減少するような値、に設定している。なお、離陸時及び着陸時における高度変化率指令の設定については、後に詳述する。
【0048】
<位置制御及び姿勢制御について>
次に、位置制御及び姿勢制御について説明する。飛行制御装置21のメモリには、位置制御を実現させる位置制御プログラムが記憶されている。飛行制御装置21の演算処理回路が位置制御プログラムを実行すると、機体側GPS受信機22によって検出されフィードバックされた機体の位置と目標位置との偏差(位置偏差)と、この位置偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されることにより、地球座標系の速度指令が算出される。そして、この地球座標系の速度指令が機体座標系の速度指令に座標変換され、フィードバックされた機体の速度とこの機体座標系の速度指令との偏差に所定のゲインが掛けられて、機体の姿勢角指令(ピッチ角指令及びロール角指令)が算出される。なお、磁方位センサ24によって検出された機体の方位角は、地球座標から機体座標への座標変換に用いられる。
【0049】
また、飛行制御装置21のメモリには、姿勢制御を実現させる姿勢制御プログラムが記憶されている。飛行制御装置21の演算処理回路が姿勢制御プログラムを実行すると、慣性センサ23によって検出されフィードバックされた機体の姿勢角(ピッチ角及びロール角)と、位置制御プログラムにより算出された姿勢角指令と、の偏差(姿勢角偏差)と、この姿勢角偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されたものから、フィードバックされた機体の姿勢角速度が減算されて、機体のサイクリックピッチ舵角指令が算出される。
【0050】
そして、このサイクリックピッチ舵角指令に基づいて舵角駆動用アクチュエータで縦サイクリックピッチ舵角及び横サイクリックピッチ舵角を制御することにより、機体の位置制御及び姿勢制御を行うことができる。すなわち、飛行制御装置21の位置制御プログラム、姿勢制御プログラム及び演算処理回路は、本発明における位置制御手段及び姿勢制御手段である。」

(1e)「【0053】
<自動離陸制御について>
まず、自動離陸制御について説明する。飛行制御装置21のメモリには、所定の自動離陸動作を実現させる離陸制御プログラムが記憶されている。飛行制御装置21の演算処理回路は、無線操縦装置14からの離陸開始指令を受信した場合に、離陸制御プログラムを実行する。離陸制御プログラムは、コレクティブピッチ舵角指令を一定の割合で増加させることにより、上昇率(高度変化率)を増加させながら機体を離陸させ、所定の安全高度まで機体を上昇させるものである。
【0054】
安全高度とは、本発明における第1の高度であって、機体が地面から完全に離隔して通常の高度制御則が適用可能となる高度をいう。安全高度は、機体の重量、気象条件、接地条件等に応じて適宜設定することができ、本実施の形態においては、ディファレンシャルGPS(高度及び位置計測手段)により確実に計測でき、また十分に低い「数10cm」を安全高度としている。また、離陸制御プログラムによるコレクティブピッチ舵角指令の増加率は、機体の重量や気象条件に応じて適宜設定することができる。
【0055】
かかる離陸制御プログラムの実行により、機体を離陸させるとともに、上昇率を一定の割合で増加させながら機体を安全高度まで上昇させることができるので、機体を地面から迅速に離隔させることができる。この結果、機体の姿勢を安定させるまでの不安定な状態が地面近傍で一定時間存続するのを回避することができ、離陸時の安全性を確保できる。
【0056】
また、離陸制御プログラムは、安全高度まで機体が上昇する間、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を一時的に抑制するものである。具体的には、離陸制御プログラムの実行により、図3の位置制御則の(図示されていない)積分器への入力をゼロに設定するとともに、図3の姿勢制御則の(図示されていない)積分器への入力をゼロに設定する。
【0057】
かかる離陸制御プログラムの実行により、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理が一時的に抑制されるので、接地状態で脚と地面との摩擦により機体が拘束されて姿勢角指令に追随できない場合に、過大な制御指令が出力されて機体が転倒したりするのを阻止することができる。
【0058】
以上説明した飛行制御装置21の離陸制御プログラム及び演算処理回路は、本発明における離陸手段である。また、離陸制御プログラムの実行により、上昇率を一定の割合で増加させながら機体を離陸させ、安全高度まで機体を上昇させる工程は、本発明における第1上昇工程である。
【0059】
機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21の演算処理回路は、高度制御プログラムを起動させて処理を開始させるとともに、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ、高度制御、位置制御及び姿勢制御を行う(図4参照)。
【0060】
高度制御プログラム起動の際には、機体が安全高度に到達した時点におけるコレクティブ舵角指令の値を、図3の高度制御則の(図示されていない)積分器の初期値とする。また、本実施の形態においては、図3の高度制御則における高度変化率指令(上昇率指令)を一定としている。さらに、図3に示した積分器により高度変化率指令を積分して高度指令を算出するが、この積分器の初期値を安全高度(数10cm)としている。
【0061】
高度制御プログラムの実行により、機体を所定の目標上昇高度まで上昇させる(図4参照)。目標上昇高度は、飛行パターンに応じて適宜設定することができる。高度制御プログラムの実行により、機体を目標上昇高度まで上昇させる工程は、本発明における第2上昇工程である。なお、機体を安全高度から目標上昇高度まで上昇させる際には、離陸開始指令を受信した時点における機体の水平面位置を保持するように、位置制御を行う。
【0062】
高度制御プログラムの実行により機体が目標上昇高度に到達したら、一定時間ホバーを行った後、予め飛行制御装置21のメモリに記憶された飛行パターンデータに従って自律飛行を開始する。」

(1f)甲第1号証には以下の図が示されている。


また、上記記載事項及び図示内容によれば、以下の事項が認められる。
(1g)コレクティブピッチ舵角指令により高度を上昇させる際にはロータの回転数を保つようエンジンへの出力を増加させることが技術常識である。当該技術常識を踏まえて段落【0053】の「飛行制御装置21の演算処理回路は、無線操縦装置14からの離陸開始指令を受信した場合に、離陸制御プログラムを実行する。離陸制御プログラムは、コレクティブピッチ舵角指令を一定の割合で増加させることにより、上昇率(高度変化率)を増加させながら機体を離陸させ、所定の安全高度まで機体を上昇させるものである。」(記載事項(1e))という記載を参照すると、離陸方法が、エンジン21への出力を増加させるステップを含むことは明らかである。
また、コレクティブピッチ舵角指令により高度を制御する際にはロータの回転数を保つようエンジンへの出力を調整することが技術常識である。当該技術常識を踏まえて段落【0046】の「コレクティブピッチ舵角指令に基づいて舵角駆動用アクチュエータでコレクティブピッチ舵角を制御することにより、機体の高度制御を行うことができる。」(記載事項(1d))という記載を参照すると、離陸方法が、エンジン21への出力を増加させるステップを含むことは明らかである。

(1h)【請求項7】の「前記第1上昇工程で、水平面の機体の位置制御と、機体の姿勢制御と、を抑制する」(記載事項(1b))という記載及び段落【0056】の「位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を・・・抑制するものである。・・・位置制御則の・・・積分器への入力をゼロに設定するとともに、・・・姿勢制御則の・・・積分器への入力をゼロに設定する。」(記載事項(1d))という記載を参照すると、位置制御則の積分器への入力をゼロに設定するとともに、姿勢制御則の積分器への入力をゼロに設定することは、水平面の機体の位置制御と、機体の姿勢制御と、を抑制することの具体的な態様であることは明らかである。

以上の記載事項(1b)?(1f)及び認定事項(1g)、(1h)を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「高度制御を行わずに上昇率を増加させながら第1の高度まで上昇する第1上昇工程と、
前記第1の高度から高度制御を行いながら上昇する第2上昇工程と、
を備える無人ヘリコプタ20の離陸方法であって、
前記第1上昇工程で、水平面の機体の位置制御と、機体の姿勢制御と、を抑制し、
上記無人ヘリコプタ20は、飛行制御装置21、GPS衛星からの信号を受信して機体の位置、速度、高度等を検出する機体側GPS受信機22、エンジン27を備え、
上記飛行制御装置21は、マイクロコンピュータであり、エンジン27を駆動制御することによりロータ28を回転させ、上向きの推力を発生させて機体の上昇・降下を実現させ、
上記飛行制御装置21が位置制御プログラムを実行すると、機体側GPS受信機22によって検出されフィードバックされた機体の位置と目標位置との偏差(位置偏差)と、この位置偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されることにより、地球座標系の速度指令が算出され、この地球座標系の速度指令が機体座標系の速度指令に座標変換され、フィードバックされた機体の速度とこの機体座標系の速度指令との偏差に所定のゲインが掛けられて、機体の姿勢角指令(ピッチ角指令及びロール角指令)が算出され、
上記飛行制御装置21が姿勢制御プログラムを実行すると、慣性センサ23によって検出されフィードバックされた機体の姿勢角(ピッチ角及びロール角)と、位置制御プログラムにより算出された姿勢角指令と、の偏差(姿勢角偏差)と、この姿勢角偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されたものから、フィードバックされた機体の姿勢角速度が減算されて、機体のサイクリックピッチ舵角指令が算出され、
サイクリックピッチ舵角指令に基づいて舵角駆動用アクチュエータで縦サイクリックピッチ舵角及び横サイクリックピッチ舵角を制御することにより、機体の位置制御及び姿勢制御を行い、
安全高度は、第1の高度であって、機体が地面から完全に離隔して通常の高度制御則が適用可能となる高度をいい、
機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21は、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ、高度制御、位置制御及び姿勢制御を行い、
上記離陸方法は、エンジン21への出力を増加させるステップ及びエンジン21への出力を制御するステップを含み、
上記水平面の機体の位置制御と、機体の姿勢制御と、を抑制することは、位置制御則の積分器への入力をゼロに設定するとともに、姿勢制御則の積分器への入力をゼロに設定することである、
無人ヘリコプタの離陸方法。」

また、記載事項(1a)、(1c)?(1f)及び認定事項(1h)を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「地上からの操縦指令を必要とせずに自律的に飛行を行う無人ヘリコプタ20において、
フィードバックされた高度と高度指令との偏差、及び、フィードバックされた上昇率と上昇率指令との偏差に基づいてコレクティブピッチ舵角を指令する高度制御手段と、
水平面の位置に関し、フィードバックされた位置と位置指令との偏差、及び、フィードバックされた速度と速度指令との偏差に基づいて位置制御を行う位置制御手段と、
フィードバックされた姿勢角と姿勢角指令との偏差に基づいて機体の姿勢制御を行う姿勢制御手段と、
地上からの離陸開始指令を受けて、前記高度制御手段による高度制御を行わずにコレクティブピッチ舵角を増加させながら機体を離陸させて第1の高度まで上昇させた後に、前記高度制御手段による高度制御を開始する離陸手段と、
を備える無人ヘリコプタであって、
前記離陸手段は、
前記第1の高度まで機体を上昇させる際に、前記位置制御と前記姿勢制御とを抑制し、
上記無人ヘリコプタ20は、飛行制御装置21、GPS衛星からの信号を受信して機体の位置、速度、高度等を検出する機体側GPS受信機22、エンジン27を備え、
上記飛行制御装置21は、マイクロコンピュータであり、エンジン27を駆動制御することによりロータ28を回転させ、上向きの推力を発生させて機体の上昇・降下を実現させ、
上記飛行制御装置21が位置制御プログラムを実行すると、機体側GPS受信機22によって検出されフィードバックされた機体の位置と目標位置との偏差(位置偏差)と、この位置偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されることにより、地球座標系の速度指令が算出され、この地球座標系の速度指令が機体座標系の速度指令に座標変換され、フィードバックされた機体の速度とこの機体座標系の速度指令との偏差に所定のゲインが掛けられて、機体の姿勢角指令(ピッチ角指令及びロール角指令)が算出され、
上記飛行制御装置21が姿勢制御プログラムを実行すると、慣性センサ23によって検出されフィードバックされた機体の姿勢角(ピッチ角及びロール角)と、位置制御プログラムにより算出された姿勢角指令と、の偏差(姿勢角偏差)と、この姿勢角偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されたものから、フィードバックされた機体の姿勢角速度が減算されて、機体のサイクリックピッチ舵角指令が算出され、
サイクリックピッチ舵角指令に基づいて舵角駆動用アクチュエータで縦サイクリックピッチ舵角及び横サイクリックピッチ舵角を制御することにより、機体の位置制御及び姿勢制御を行い、
安全高度は、第1の高度であって、機体が地面から完全に離隔して通常の高度制御則が適用可能となる高度をいい、
機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21は、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ、高度制御、位置制御及び姿勢制御を行い、
上記水平面の機体の位置制御と、機体の姿勢制御と、を抑制することは、位置制御則の積分器への入力をゼロに設定するとともに、姿勢制御則の積分器への入力をゼロに設定することである、
無人ヘリコプタを備えた飛行制御システム。」

2 甲第2号証
本件特許の国際出願日前に頒布された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(2a)7枚目(以下「第7ページ」という。以下同様。)左欄第1行?第23行。
「The MH-47G DAFCS has four pilot-selectable modes that are accessed using a 4-way switch on the collective grip. Figure 8 shows the labeling of ALT, PSN, VEL, and OFF. The selector is clicked once to select a mode. Clicking OFF deselects all modes. Holding an individual selector for more than 1 second individually deselects only that mode. The new grip functionality is a departure from the CH-47F, which uses on/off toggles. The on/off toggling using the same switch means the pilot must know his current state to know what he is selecting. The MH-47G grip switch is easier to use because each action serves only one purpose. Pilots can memorize sequences of button presses to enter a desired state.
The selectable modes consist of two horizontal modes and two vertical modes. Each selectable mode has an armed state and an active state. Selectable modes may be armed at any time but only activate in appropriate regimes based on criteria including ground contact, forward groundspeed, and the trim-release switches. Modes are automatically disarmed and cannot be re-armed if faults are detected which would affect normal operation.」

当審訳
「MH-47G DAFCSは4つのパイロットが選択可能なモードを有しており、それはコレクティブグリップ上の4方向スイッチを使用してアクセスされる。図8はALT、PSN、VEL、OFFのラベル付けを示している。セレクタはモードを選択するために一度クリックされる。OFFをクリックすると全てのモードが非選択となる。個別のセレクタを1秒以上保持するとそのモードのみを個別に非選択にする。新しいグリップの機能はon/offトグルを使用するCH-47Fから発展している。on/offトグルは同じスイッチを使うので、パイロットは、彼が何を選択しているかを知るために、彼の現在の状態を知らなければならない。MH-47Gのグリップスイッチは各アクションが1つだけの目的に合うので、より使いやすい。パイロットは希望の状態を入力するためにボタンを押す順番を記憶することができる。
選択できるモードは2つの水平モードと2つの垂直モードからなる。選択できる各モードは武装状態とアクティブ状態を有する。選択できるモードはいつでも武装させられるが、着陸、前進対地速度、トリム解除スイッチを含む基準に基づく適当な体制の時のみアクティブにできる。通常オペレーションに影響する欠陥が検知された場合、モードは自動的に武装解除され、再武装はできない。」

(2b)第7ページ右欄第7行?第21行
「The CH-47F mode selectors are labeled TRC and PH, and they only affect those control law functions. Unlike the CH-47F, the MH-47G horizontal modes are defined by pilot task instead of by function. The VEL button selects the velocity mode for pacing other vehicles. The PSN button selects the position mode for hover operations over fixed ground positons. Defining the selectable modes by task is more meaningful to pilots, so it is easier to train, comprehend, and employ. It also allows design engineers to assign multiple control law functions to each mode button for operational simplicity, reduced selector count, reduced testing matrices, and design flexibility as system requirements evolve concurrent with emerging technology.」

当審訳
「CH-47FのモードセレクタはTRC及びPHとラベル付けされ、それらはそれらの制御則のみに影響していた。CH-47Fとは異なり、MH-47Gの水平モードは、機能によらずパイロットのタスクによって定義されている。VELボタンは、他の乗り物を先導するための速度モードを選択する。PSNボタンは、固定された地点の上をホバリングするための位置モードを選択する。選択可能なモードをタスクにより定義することは、パイロットがより簡単に訓練し、理解し、使用できるのでより意味がある。それはまた、エンジニアが、オペレーションの単純化、減少されたセレクターカウント、減少された試験マトリックス、技術の出現にともなうシステム要件の発展に合わせた設計の柔軟性のために多数の制御則機能を各モードボタンに割り当てて設計できるようにする。」

(2c)第7ページ右欄第22行?第8ページ左欄第10行
「The velocity mode is used for pacing other land, sea, and air vehicles in both hover and forward-flight speed regimes. The velocity mode is useful for maneuvering within a landing zone at night, recovering to a friendly ship, assaulting an unfriendly vessel, interdicting wheeled vehicles, station keeping in a formation, and aerial refueling behind a C-130 tanker. Simulation and flight testing of control-laws do not place enough emphasis on formation flight, though military rotorcraft operate in groups more often than alone. Control law development tends to focus on the lead aircraft, which typically is flown by the most experienced pilot. The less-experienced pilots are typically working harder to follow the flight lead.」

当審訳
「速度モードは、他の陸、海、空の乗り物を、ホバリング及び前進飛行速度の体制で先導するために使用される。速度モードは、夜間の着陸ゾーン内、友軍船舶への回収、敵軍船舶への強襲、車両の阻止、編隊における状態保持、C-130給油機からの空中給油における操縦に役立つ。制御則のシミュレーション及び飛行試験は飛行フォーメーションに重きを置いていないが、軍用回転翼機は単独よりもグループで運用される。制御則の開発はおおむね最も経験を積んだパイロットが務めることになる先導機に焦点をあてる傾向がある。経験の少ないパイロットはおおむね先導機に追従することに労力を要する。」

(2d)第8ページ左欄第11行?右欄第2行
「As depicted in Figure 9, the velocity mode is inertially referenced below 40 kts forward groundspeed and air-referenced above 40 kts. Hysteresis between 35-45 kts prevents mode toggling. Below 40 kts, the linear-acceleration-command, velocity-hold (LACVH) response type allows the pilot to set a ground speed and ground track with the control stick, then relax force to hold condition. For pedal turns, automatic velocity-transfer and trim-transfer allow the pilot to separately and easily control heading without inducing a change in groundspeed or ground-track. While tracking up a runway centerline in LACVH mode with the control stick in detent, a 360 degree pedal turn yields deviations off the runway centerline less than the width of the fuselage and speed held within one knot. TRC replaces LACVH below 3 kts for simplified hover capture. For small, precise repositioning tasks, TRC remains active up to 5 kts unless the pilot makes a large amplitude input. In the lateral axis, limited-ACAH replaces LACVH above 40 kts and the sensitivity changes to approximately 8 degrees per inch up to 0.7 inches.」

当審訳
「図9に描写されているように、速度モードは、前進対地速度40ノット以下及び対気速度40ノット以上では慣性的に参照される。35ノットから45ノットの間のヒステリシスによってモードが交互に切り替わることを防止する。40ノット以下では、直線加速コマンド、すなわち速度保持(LACVH)応答型によって、パイロットは操縦桿による対地速度及び地上追尾ができ、そして力を抜いて条件を維持できる。ペダルターンでは、自動的な速度変更及びトリム変更によって、パイロットは地上速度又は地上追尾における変化を誘発することなしに分離して容易に先導制御できる。操縦桿をデテントにしてLACVHモードで滑走路のセンターラインを追尾する間、360度ペダルターンは、滑走路のセンターラインからの逸脱を機体幅以下に、速度の逸脱を1ノット以内に抑える。3ノット以下では、単純化されたホバリング確立のためTRCがLACVHを置き換える。小さな、精密な応答タスクのため、TRCは、パイロットが大きな増幅された入力をしない限り、5ノットまで維持される。横軸では、40ノット以上で制限されたACHAHがLACVHを置き換え、感度は0.7インチまでおよそ8度/インチに変化する。」

(2e)甲第2号証には以下の図が示されている。


3 甲第3号証
本件特許の国際出願日前に頒布された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(3a)「【0010】
また、自律飛行制御装置2200は、離陸制御時において、ヘリコプタ機体の脚が地面に拘束されない程度、すなわち、地面から完全に離隔する安全高度(以下、安全高度と記載する)を第1の目標高度として設定し、また、ヘリコプタ機体が自律飛行を開始する点(以下、自律飛行開始点と記載する)を第2の目標高度として設定している。そして、自律飛行制御装置2200で実行する離陸制御プログラムは、離陸開始点から第1の目標高度(安全高度)までの制御と、第1の目標高度(安全高度)から第2の目標高度(自律飛行開始点)までの制御とに分け、それぞれの制御で用いる制御部の構成や値について変更や抑制等しており、第1の目標高度(安全高度)の検出に従って切り換わる。」

(3b)「【0020】
以上のように構成された自律飛行制御装置の離陸制御プログラムを実行したときの離陸制御時の制御について図26を用いて説明する。はじめに、離陸制御時の鉛直方向制御を説明する。自律飛行制御装置2200は、地上操作員からの離陸指令を受信すると、エンジンを始動し、離陸制御プログラムを実行する。離陸制御プログラムは、機体が離陸開始点から第1の目標高度(安全高度)まで上昇する間、高度制御部2211を用いずに鉛直方向制御を行う(ステップ261a)。具体的には、離陸制御プログラムは、高度制御部2211を用いず、一定の割合で増加する鉛直速度制御値を鉛直方向制御値として与えることによって、舵角駆動用アクチュエータがコレクティブピッチ舵角を制御し、機体を上昇させる(ステップ262a)。そして、ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが、第1の目標高度(安全高度)を検出すると(ステップ263a)、実行中の離陸制御プログラムは、機体が第1の目標高度(安全高度)から第2の目標高度(自律飛行開始点)まで上昇する間、高度制御部2211を用いて鉛直方向制御を行う(ステップステップ264a)。具体的には、離陸制御プログラムは、現在の高度、所定の鉛直速度目標値、鉛直速度目標値を積分して算出する高度目標値、及び現在の鉛直速度を基に算出する鉛直速度制御値を鉛直方向制御値として出力し、これに従って舵角駆動用アクチュエータがコレクティブピッチ舵角を制御し、機体を上昇させる(ステップ265a)。その後、ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが、第2の目標高度(自律飛行開始点)を検出すると(ステップ266a)、自律飛行制御装置2200は、離陸制御プログラムを終了して一定時間ホバー飛行を行った後、プログラム格納部2230で管理している自律飛行制御プログラムを実行し、自律飛行制御装置2200内の各種制御部の構成を用いて所定の飛行パターンデータに基づいた自律飛行を行う。」

(3c)「【0067】
具体的には、鉛直速度制御部112は、「ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが検出する現在の鉛直速度」と「着陸制御時に用いる所定の鉛直速度目標値」との偏差を積分し(ステップ102a)、また、「着陸制御時に用いる所定の鉛直速度目標値」に到達するよう、ヘリコプタ機体の動特性を基にした鉛直速度を制御する鉛直速度制御モデル式を用いてゲインを決定し、「鉛直速度偏差」及び「鉛直速度偏差積分値」に決定したゲインをかけた後に加算することにより「鉛直速度制御値」を算出する(ステップ103a)。そして、算出する「鉛直速度制御値」が「着陸制御時の鉛直速度に関する制限値(表1参照)」を超えているか否かについての判定処理を行い、超えている場合には、算出する「鉛直速度制御値」と「鉛直速度に関する制限値」との偏差を算出し、アンチワインドアップ処理に用いるフィードバックゲインをかけてフィードバックし、一方、超えていない場合には、算出する「鉛直速度制御値」を鉛直方向制御値として出力するアンチワインドアップ処理を行う(ステップ104a)。すなわち、鉛直速度制御部112で算出する「鉛直速度制御値」が過大となっても、「着陸制御時の鉛直速度に関する制限値」以上の「鉛直速度制御値」が鉛直方向制御値として出力されることはないので、安定した状態で機体を下降させることができる。上記ステップ101aからステップ104aの処理を繰り返し行い、鉛直方向制御値に従って舵角駆動用アクチュエータがコレクティブピッチ舵角を制御して機体の鉛直方向を制御することにより、機体は着陸開始点から着陸点まで安定した状態で下降する。そして、ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが着陸点を検出すると、自律飛行制御装置100は、着陸制御プログラムの実行を終了する(ステップ105a)。」

(3d)甲第3号証には以下の図が示されている。


4 甲第4号証
本件特許の国際出願日前に頒布された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(4a)「【請求項1】 レーダにより得られる航空機の時系列座標データに基づいて空港面上での前記航空機の位置及び移動方向を示すベクトル標識を画面表示する空港面レーダ監視装置において、
航空機の前記時系列座標データに対して、当該航空機の予定移動路から離脱するデータ揺らぎに関する抑制を強調した平滑化を行って、前記位置及び移動方向を表す表示用平滑化データを決定する空港面上表示用平滑化手段を備えたことを特徴とする空港面レーダ監視装置。」

(4b)「【請求項4】 レーダにより得られる前記航空機の時系列座標データに対して、等方的な平滑化を行って航空機の追尾を行う追尾用平滑化手段と、
前記航空機の速度に基づいて当該航空機が離陸したと判定する離陸判定手段と、 離陸が判定された場合、前記位置及び移動方向を決定する平滑化手段を、前記空港面上表示用平滑化手段から前記追尾用平滑化手段に切り替える平滑化切替手段と、
を有したことを特徴とする請求項1記載の空港面レーダ監視装置。」

(4c)甲第4号証には以下の図が示されている。


第5 当審の判断
1 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明1を対比する。

(ア)本件特許の願書に添付した明細書の段落【0088】の「可動物体は乗り物であり得る。適切な乗り物は、水上乗り物、航空機、宇宙船、または、地上車を含み得る。例えば、航空機は固定翼機(例えば、飛行機、グライダー)、回転翼航空機(例えば、ヘリコプター、回転翼機)、固定翼と回転翼の両方を有する航空機、またはどちらも有さない航空機(例えば、小型飛行船、熱気球)であり得る。」という記載を参照すると、本件発明1の「可動物体」はヘリコプターを含むものである。
したがって、引用発明1の「無人ヘリコプタ20」は、本件発明1の「可動物体」に相当する。

(イ)上記(ア)を踏まえると、引用発明1の「無人ヘリコプタ20の離陸方法」は、その意味、機能または条件若しくはステップからみて、本件発明1の「可動物体の支援された離陸の方法」に相当する。

(ウ)引用発明1の「エンジン27」は「ロータ28を回転させ、上向きの推力を発生させて機体の上昇・降下を実現させ」るものであるから、その意味、機能または構造からみて、本件発明1の「前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータ」に相当する。

(エ)上記(ウ)を踏まえると、引用発明1の「エンジン21への出力を増加させるステップ」は、本件発明1の「前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式で、前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」と、「前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」の限度で一致する。

(オ)引用発明1の「第1の高度」は、「機体が地面から完全に離隔して通常の高度制御則が適用可能となる高度」であるから、引用発明1の「第1の高度」は、その意味からみて、本件発明1の「離陸閾値」に相当する。

(カ)引用発明1の「飛行制御装置21」は「マイクロコンピュータ」であるところ、上記(オ)を踏まえると、引用発明1の「機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21は、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ」ることは、本件発明1の「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップ」と、「プロセッサを用いて、前記可動物体が、離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップ」の限度で一致する。

(キ)上記(ウ)を踏まえると、引用発明1の「エンジン21への出力を制御するステップ」は、本件発明1の「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」と、「前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」の限度で一致する。

以上のことから、本件発明1と引用発明1とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
<一致点>
「可動物体の支援された離陸の方法において、
前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップと、
プロセッサを用いて、前記可動物体が、離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップと、
前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップと、を含む、方法。」

<相違点1>
「前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」に関し、
本件発明1は、「前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式」であるのに対し、
引用発明1は、そのように特定されていない点。

<相違点2>
「プロセッサを用いて、前記可動物体が、離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップ」及び「前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」に関し、
本件発明1は、「前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて」判定し、「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用」するのに対し、
引用発明1は、そのように特定されていない点。

イ 判断
<相違点1について>
(ア)上記相違点1に係る本件発明1の構成は、「前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」において、「前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式」でアクチュエータへの出力を増加させるというものである。
上記「第4 1」で述べたとおり、甲第1号証には、「位置制御則の積分器への入力をゼロに設定するとともに、姿勢制御則の積分器への入力をゼロに設定する」ことで「前記第1の高度まで機体を上昇させる際に、前記位置制御と前記姿勢制御とを抑制」することが記載されているといえる。
しかし、上記「入力をゼロに設定する」対象は位置制御則及び姿勢制御則の積分器である。ここで、甲第1号証の段落【0048】?【0050】の「飛行制御装置21・・・が位置制御プログラムを実行すると、機体側GPS受信機22によって検出されフィードバックされた機体の位置と目標位置との偏差(位置偏差)と、この位置偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されることにより、地球座標系の速度指令が算出される。そして、この地球座標系の速度指令が機体座標系の速度指令に座標変換され、フィードバックされた機体の速度とこの機体座標系の速度指令との偏差に所定のゲインが掛けられて、機体の姿勢角指令(ピッチ角指令及びロール角指令)が算出される。・・・飛行制御装置21・・・が姿勢制御プログラムを実行すると、慣性センサ23によって検出されフィードバックされた機体の姿勢角(ピッチ角及びロール角)と、位置制御プログラムにより算出された姿勢角指令と、の偏差(姿勢角偏差)と、この姿勢角偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されたものから、フィードバックされた機体の姿勢角速度が減算されて、機体のサイクリックピッチ舵角指令が算出される。・・・サイクリックピッチ舵角指令に基づいて舵角駆動用アクチュエータで縦サイクリックピッチ舵角及び横サイクリックピッチ舵角を制御することにより、機体の位置制御及び姿勢制御を行う」(記載事項(1d))という記載を参照すると、位置制御則及び姿勢制御則は、縦サイクリックピッチ舵角及び横サイクリックピッチ舵角を制御する舵角駆動用アクチュエータの制御に適用されるものである。
そうすると、「入力をゼロに設定する」積分器は、エンジン27(本件発明1の「前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータ」に相当。上記「ア(ウ)」を参照。)に適用されるものではないから、当該制御方式は「前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」におけるものではない。さらに、甲第1号証には、エンジン27に関する積分制御方式は一切記載されていないから、甲第1号証の他の記載を併せて参照しても、引用発明1が「前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式で、前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」を備えると理解することはできないし、引用発明1において「前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式で、前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」を備えることを当業者が容易に想到し得るともいえない。

(イ)特許異議申立人は、甲第1号証の段落【0056】の「離陸制御プログラムは、安全高度まで機体が上昇する間、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を一時的に抑制するものである。具体的には、離陸制御プログラムの実行により、図3の位置制御則の(図示されていない)積分器への入力をゼロに設定するとともに、図3の姿勢制御則の(図示されていない)積分器への入力をゼロに設定する。」(記載事項(1e))という記載等を根拠として、甲第1号証に記載された発明(以下「甲1発明」という。)は「離陸時に位置制御及び姿勢制御の積分器への入力をゼロにすることで可動物体の縦方向及び横方向で積分値をデフォルト値に設定する積分制御方式にて、可動物体の高度の増加をもたらすようにアクチュエータ(エンジン)への出力を増加させる」ものであるから、「前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式で、前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」を備える点で、甲1発明と本件発明1とは一致している、旨主張している(特許異議申立書第18ページ第25?32行及び第22ページ第19?23行。以下「主張A」という。)。しかしながら、上記(ア)で述べたとおり、甲第1号証に「前記可動物体のアクチュエータへの出力であって、前記可動物体の高度の増加をもたらす、前記アクチュエータへの前記出力を増加させるステップ」を備えることが記載されているとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張Aは採用できない。

<相違点2について>
(ウ)上記相違点2に係る本件発明1の構成は、「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップと、前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」というものである。
上記「第4 1」で述べたとおり、甲第1号証には、「機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21は、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ」、「機体側GPS受信機22によって検出されフィードバックされた機体の位置と目標位置との偏差(位置偏差)と、この位置偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されることにより、地球座標系の速度指令が算出され、この地球座標系の速度指令が機体座標系の速度指令に座標変換され、フィードバックされた機体の速度とこの機体座標系の速度指令との偏差に所定のゲインが掛けられて、機体の姿勢角指令(ピッチ角指令及びロール角指令)が算出され」、「慣性センサ23によって検出されフィードバックされた機体の姿勢角(ピッチ角及びロール角)と、位置制御プログラムにより算出された姿勢角指令と、の偏差(姿勢角偏差)と、この姿勢角偏差の積分値と、が算出され、これら算出値に所定のゲインが掛けられて加算されたものから、フィードバックされた機体の姿勢角速度が減算されて、機体のサイクリックピッチ舵角指令が算出され、サイクリックピッチ舵角指令に基づいて舵角駆動用アクチュエータで縦サイクリックピッチ舵角及び横サイクリックピッチ舵角を制御することにより、機体の位置制御及び姿勢制御を行」うことが記載されているといえる。
しかし、上記(ア)で述べたとおり、これら位置制御則及び姿勢制御則は、縦サイクリックピッチ舵角及び横サイクリックピッチ舵角を制御する舵角駆動用アクチュエータの制御に適用されるものであって、エンジン27に適用されるものではないから、当該制御方式は「前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」におけるものではない。さらに、甲第1号証には、エンジン27に関する制御方式は一切記載されていないから、甲第1号証の他の記載を併せて参照しても、引用発明1が「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」を備えると当業者が理解することはできないし、引用発明1において「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」を備えることを当業者が容易に想到し得るともいえない。

(エ)特許異議申立人は、甲第1号証の段落【0059】の「機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21の演算処理回路は、高度制御プログラムを起動させて処理を開始させるとともに、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ、高度制御、位置制御及び姿勢制御を行う」(記載事項(1e))という記載等を根拠として、甲1発明は「可動物体が離陸閾値を満たしているとき、積分器への入力をゼロにして一時的に抑制されていた位置・姿勢制御を再開させた第2の積分制御方式を使用して、アクチュエータ(エンジン)への出力が制御される」ものであるから、「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」を備える点で、甲1発明と本件発明1とは一致している、旨主張し(特許異議申立書第18ページ第33行?第19ページ第10行及び第22ページ末行?第23ページ第4行。以下「主張B」という。)、主張Bを前提として、甲第2号証の第8ページの図9及びその直下の段落には、可動物体において速度によって離陸の状態を判断して制御を切り替えることが、甲第3号証の段落【0020】及び段落【0067】には、GPS情報に基づいて可動物体の速度を求めること及びGPS情報に基づいて離陸閾値の判定が行われることが、甲第4号証の請求項4には、離陸閾値判定が可動物体の速度に基づいて行われることがそれぞれ開示されており、離陸閾値の判定を可動物体の速度に基づいて行うことは周知といえるから、甲1発明において「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップ」という構成を得ることは、容易に想到し得るものである、旨主張する(特許異議申立書第19ページ第23?25行、第20ページ第24?28行、第21ページ第1?4行及び第23ページ第14?25行。以下「主張C」という。)ので、以下検討する。

(オ)まず、上記主張Bについて検討する。
上記(ウ)で述べたとおり、甲第1号証に「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」を備えることが記載されているとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張Bは採用できない。

(カ)次に、上記主張Cについて検討する。
a 甲第2号証の「MH-47G DAFCSは4つのパイロットが選択可能なモードを有し」(記載事項(2a))という記載、「CH-47FのモードセレクタはTRC及びPHとラベル付けされ、それらはそれらの制御則のみに影響していた。CH-47Fとは異なり、MH-47Gの水平モードは、機能によらずパイロットのタスクによって定義されている。VELボタンは、他の乗り物を先導するための速度モードを選択する。・・・エンジニアが、オペレーションの単純化、減少されたセレクターカウント、減少された試験マトリックス、技術の出現にともなうシステム要件の発展に合わせた設計の柔軟性のために多数の制御則機能を各モードボタンに割り当てて設計できる」(記載事項(2b))という記載、「速度モードは、他の陸、海、空の乗り物を、ホバリング及び前進飛行速度の体制で先導するために使用される。速度モードは、夜間の着陸ゾーン内、友軍船舶への回収、敵軍船舶への強襲、車両の阻止、編隊における状態保持、C-130給油機からの空中給油における操縦に役立つ。」(記載事項(2c)という記載及び「速度モードは、前進対地速度40ノット以下及び対気速度40ノット以上では慣性的に参照される。35ノットから45ノットの間のヒステリシスによってモードが交互に切り替わることを防止する。40ノット以下では、直線加速コマンド、すなわち速度保持(LACVH)応答型によって、パイロットは操縦桿による対地速度及び地上追尾ができ、そして力を抜いて条件を維持できる。ペダルターンでは、自動的な速度変更及びトリム変更によって、パイロットは地上速度又は地上追尾における変化を誘発することなしに分離して容易に先導制御できる。操縦桿をデテントにしてLACVHモードで滑走路のセンターラインを追尾する間、360度ペダルターンは、滑走路のセンターラインからの逸脱を機体幅以下に、速度の逸脱を1ノット以内に抑える。3ノット以下では、単純化されたホバリング確立のためTRCがLACVHを置き換える。小さな、精密な応答タスクのため、TRCは、パイロットが大きな増幅された入力をしない限り、5ノットまで維持される。横軸では、40ノット以上で制限されたACHAHがLACVHを置き換え、感度は0.7インチまでおよそ8度/インチに変化する。」(記載事項(2d))という記載を参照すると、甲第2号証には、パイロットが操縦する際のモードを選択可能なMH-47G DAFCSにおいて、ホバリング及び前進飛行速度の体制で先導するために使用される速度モードにおける制御則を、前進対地速度及び対気速度40ノット又は3ノットを閾値として速度に基づいて切り替えることが記載されているといえる。
しかし、甲第2号証に記載された技術的事項における「閾値」は離陸に関するものではないから、甲第2号証に、上記「パイロットがMH-47Gを操縦する際の制御則を、ホバリング及び前進飛行速度の体制で先導するために使用される速度モードにおいて、前進対地速度及び対気速度40ノット又は3ノットを閾値として速度に基づいて切り替えること」が記載されているとしても、「離陸閾値を満たしたかどうかを判定」していない点で、相違点2に係る本件発明1の「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定する」こととは異なる。そうすると、引用発明1に甲第2号証に記載された技術的事項を適用しても、「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップと、前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」という構成には至らない。

b 甲第3号証の段落【0020】の「離陸制御プログラムは、高度制御部2211を用いず、一定の割合で増加する鉛直速度制御値を鉛直方向制御値として与えることによって、舵角駆動用アクチュエータがコレクティブピッチ舵角を制御し、機体を上昇させる(ステップ262a)。そして、ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが、第1の目標高度(安全高度)を検出すると(ステップ263a)、実行中の離陸制御プログラムは、機体が第1の目標高度(安全高度)から第2の目標高度(自律飛行開始点)まで上昇する間、高度制御部2211を用いて鉛直方向制御を行う(ステップステップ264a)。具体的には、離陸制御プログラムは、現在の高度、所定の鉛直速度目標値、鉛直速度目標値を積分して算出する高度目標値、及び現在の鉛直速度を基に算出する鉛直速度制御値を鉛直方向制御値として出力し、これに従って舵角駆動用アクチュエータがコレクティブピッチ舵角を制御し、機体を上昇させる(ステップ265a)。その後、ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが、第2の目標高度(自律飛行開始点)を検出すると(ステップ266a)、自律飛行制御装置2200は、離陸制御プログラムを終了して一定時間ホバー飛行を行った後、プログラム格納部2230で管理している自律飛行制御プログラムを実行し、自律飛行制御装置2200内の各種制御部の構成を用いて所定の飛行パターンデータに基づいた自律飛行を行う。」(記載事項(3b))という記載及び段落【0067】の「鉛直速度制御部112は、『ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが検出する現在の鉛直速度』と『着陸制御時に用いる所定の鉛直速度目標値』との偏差を積分し(ステップ102a)、また、『着陸制御時に用いる所定の鉛直速度目標値』に到達するよう、ヘリコプタ機体の動特性を基にした鉛直速度を制御する鉛直速度制御モデル式を用いてゲインを決定し、『鉛直速度偏差』及び『鉛直速度偏差積分値』に決定したゲインをかけた後に加算することにより『鉛直速度制御値』を算出する(ステップ103a)。」(記載事項(3c))という記載を参照すると、甲第3号証には、ヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが検出する第1の目標高度(安全高度)を閾値として、離陸制御プログラムが高度制御部2211を用いるように切り替えること及びヘリコプタ機体に搭載しているGPSセンサが、現在の鉛直速度を検出することが記載されているといえる。
しかし、甲第3号証の段落【0010】の「自律飛行制御装置2200は、離陸制御時において、ヘリコプタ機体の脚が地面に拘束されない程度、すなわち、地面から完全に離隔する安全高度(以下、安全高度と記載する)を第1の目標高度として設定」する(記載事項(3a))という記載を参照すると、甲第3号証に記載された技術的事項における閾値は、高度であって速度ではないから、甲第3号証に、第1の目標高度(安全高度)が速度であることや鉛直速度を閾値とすることは記載されていない。
したがって、甲第3号証に上記「GPS情報に基づいて可動物体の速度を求めること及びGPS情報に基づいて離陸閾値の判定が行われること」が記載されているとしても、可動物体が離陸閾値を満たしたかどうかを判定することが「前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づ」くものではない点で、相違点2に係る本件発明1の「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定する」こととは異なる。そうすると、引用発明1に甲第3号証に記載された技術的事項を適用しても、「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップと、前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」という構成には至らない。

c 甲第4号証の【請求項1】の「レーダにより得られる航空機の時系列座標データに基づいて空港面上での前記航空機の位置及び移動方向を示すベクトル標識を画面表示する空港面レーダ監視装置において、航空機の前記時系列座標データに対して、当該航空機の予定移動路から離脱するデータ揺らぎに関する抑制を強調した平滑化を行って、前記位置及び移動方向を表す表示用平滑化データを決定する空港面上表示用平滑化手段を備えた・・・空港面レーダ監視装置。」(記載事項(4a))という記載及び【請求項4】の「レーダにより得られる前記航空機の時系列座標データに対して、等方的な平滑化を行って航空機の追尾を行う追尾用平滑化手段と、前記航空機の速度に基づいて当該航空機が離陸したと判定する離陸判定手段と、 離陸が判定された場合、前記位置及び移動方向を決定する平滑化手段を、前記空港面上表示用平滑化手段から前記追尾用平滑化手段に切り替える平滑化切替手段と、を有した・・・空港面レーダ監視装置。」(記載事項(4b))を参照すると、甲第4号証には、空港面レーダ監視装置において、航空機の速度に基づいて当該航空機が離陸したと判定する離陸判定手段と、離陸が判定された場合、空港面上表示用平滑化手段から追尾用平滑化手段に切り替えることが記載されているといえる。
しかし、甲第4号証に記載された技術的事項における「航空機の速度に基づいて当該航空機が離陸したと判定する」ことは、「空港面レーダ監視装置」に関するものであるから、甲第4号証に、上記「空港面レーダ監視装置において、航空機の速度に基づいて当該航空機が離陸したと判定する離陸判定手段と、離陸が判定された場合、空港面上表示用平滑化手段から追尾用平滑化手段に切り替えること」が記載されているとしても、「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御する」ものではない点で、相違点2に係る本件発明1の「離陸閾値を満たしたかどうかを判定」し、「前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御」することとは異なる。そうすると、引用発明1に甲第4号証に記載された技術的事項を適用しても、「プロセッサを用いて、前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定するステップと、前記可動物体が前記離陸閾値を満たしているとき、第2の制御方式を使用して前記アクチュエータへの前記出力を制御するステップ」という構成には至らない。

したがって、特許異議申立人の上記主張Cは採用できない。

(キ)以上より、引用発明1(甲第1号証に記載された発明)及び周知の技術的事項(甲第2?第4号証に記載された技術的事項)を根拠に、上記相違点1?2に係る本件発明1の構成が容易に想到できたものということはできない。

2 本件発明2?16について
本件発明2?16は、本件発明1を直接的又は間接的に引用し、少なくとも本件発明1の構成を更に限定して発明を特定するものであって、上記1のとおり、本件発明1が当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明2?16は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

3 本件発明17について
ア 対比
本件発明17と引用発明2を対比する。

(ア)上記「1 ア(ア)」を踏まえると、引用発明2の「無人ヘリコプタ20」は、本件発明17の「可動物体」に相当する。

(イ)引用発明2の「前記高度制御手段による高度制御を行わずにコレクティブピッチ舵角を増加させながら機体を離陸させて第1の高度まで上昇させた後に、前記高度制御手段による高度制御を開始する離陸手段」を備えた「無人ヘリコプタを備えた飛行制御システム」は、その意味、機能または構造からみて、本件発明17の「可動物体の支援された離陸のためのシステム」に相当する。

(ウ)上記「1 ア(ウ)」を踏まえると、引用発明2の「エンジン27」は、本件発明17の「前記可動物体のアクチュエータであって、前記アクチュエータへの出力が前記可動物体の高度の増加をもたらすアクチュエータ」に相当する。

(エ)引用発明2の「第1の高度」は、「機体が地面から完全に離隔して通常の高度制御則が適用可能となる高度」であるから、引用発明2の「第1の高度」は、その意味からみて、本件発明17の「離陸閾値」に相当する。

(オ)上記「1 ア(カ)」及び上記(ウ)を踏まえると、引用発明2の「エンジン27を駆動制御することによりロータ28を回転させ、上向きの推力を発生させて機体の上昇・降下を実現させ」る「マイクロコンピュータであ」る「飛行制御装置21」を備え、「機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21は、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ、高度制御、位置制御及び姿勢制御を行」うことは、本件発明17の「前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、かつ(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用して、前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」を備えることと、「前記可動物体が、離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、制御方式を使用して、前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」を備える限度で一致する。

以上のことから、本件発明17と引用発明2とは以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。
<一致点>
「可動物体の支援された離陸のためのシステムにおいて、
前記可動物体のアクチュエータであって、前記アクチュエータへの出力が前記可動物体の高度の増加をもたらすアクチュエータと、
前記可動物体が、離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、かつ制御方式を使用して、前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサと、を備える、
システム。」

<相違点3>
「前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」に関し、
本件発明17は、「前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、かつ(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用」するのに対し、
引用発明2は、そのように特定されていない点。

イ 判断
(ア)上記相違点3に係る本件発明17の構成は、「前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、かつ(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用して、前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」というものである。
上記「1 イ(ア)」及び「1 イ(ウ)」を踏まえると、甲第1号証には、エンジン27に関する積分制御方式及び制御方式は一切記載されていないから、引用発明2の「前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」が「(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用」すると理解することはできないし、引用発明2において「前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」が「(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用」することを当業者が容易に想到し得るともいえない。

(イ)特許異議申立人は、甲第1号証の段落【0056】の「離陸制御プログラムは、安全高度まで機体が上昇する間、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を一時的に抑制するものである。具体的には、離陸制御プログラムの実行により、図3の位置制御則の(図示されていない)積分器への入力をゼロに設定するとともに、図3の姿勢制御則の(図示されていない)積分器への入力をゼロに設定する。」という記載及び段落【0059】の「機体が安全高度に到達したことが機体側GPS受信機22によって計測されると、飛行制御装置21の演算処理回路は、高度制御プログラムを起動させて処理を開始させるとともに、位置制御プログラム及び姿勢制御プログラムによる処理を再開させ、高度制御、位置制御及び姿勢制御を行う」(いずれも記載事項(1e))という記載等を根拠として、甲1発明は「プロセッサは、可動物体が離陸閾値を満たしていないときに位置制御及び姿勢制御の積分器への入力をゼロにすることで可動物体の縦方向及び横方向で積分値をデフォルト値に設定する積分制御方式を使用」し、「離陸閾値を満たしたとき、積分器への入力をゼロにして一時的に抑制されていた位置・姿勢制御を再開させた第2の積分制御方式を使用して、アクチュエータ(エンジン)への出力を制御する」ものであるから、「前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」が「(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用」する点で、甲1発明と本件発明17とは一致している、旨主張し(特許異議申立書第18ページ第25?32行、第18ページ第33行?第19ページ第10行、第24ページ第12?16行及び第24ページ第18?22行。以下「主張D」という。)、主張Dを前提として、上記「1 イ」における主張Cと同様に、離陸閾値の判定を可動物体の速度に基づいて行うことは周知といえるから、甲1発明において「前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、かつ(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用して、前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」という構成を得ることは、容易に想到し得るものである、旨主張する(特許異議申立書第19ページ第23?25行、第20ページ第24?28行、第21ページ第1?4行、第23ページ第14?25行及び第25ページ第3?5行。以下「主張E」という。)ので、以下検討する。

(ウ)まず、主張Dについて検討する。
上記(ア)で述べたとおり、甲第1号証に「(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用」する「前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」を備えることが記載されているとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張Dは採用できない。

(エ)次に、上記主張Eについて検討する。
上記「1 イ(カ)」で述べたとおり、甲第2?4号証に記載された技術的事項は、相違点3に係る本件発明17構成の「前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」が「前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定」することとは異なる。そうすると、引用発明2に甲第2?4号証に記載された技術的事項を適用しても、「前記可動物体が、前記アクチュエータへの前記出力、前記アクチュエータから測定された前記出力、または前記可動物体の速度もしくは加速度に基づいて離陸閾値を満たしたかどうかを判定し、かつ(1)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしていないときに前記可動物体の垂直方向及び横方向の少なくとも一方で積分値がデフォルト値に設定された第1の積分制御方式を使用し、また(2)前記可動物体が前記離陸閾値を満たしたときに第2の制御方式を使用」する「前記アクチュエータへの前記出力を制御する信号を生成するプロセッサ」という構成には至らない。
したがって、特許異議申立人の上記主張Eは採用できない。

(オ)以上より、引用発明2(甲第1号証に記載された発明)及び周知の技術的事項(甲第2?第4号証に記載された技術的事項)を根拠に、上記相違点3に係る本件発明17の構成が容易に想到できたものということはできない。

4 本件発明18?29について
本件発明18?29は、本件発明17を直接的又は間接的に引用し、少なくとも本件発明17の構成を更に限定して発明を特定するものであって、上記3のとおり、本件発明17が当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明18?29は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし29に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないことから、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-24 
出願番号 特願2016-538106(P2016-538106)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B64C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前原 義明  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
中田 善邦
登録日 2017-04-07 
登録番号 特許第6123032号(P6123032)
権利者 エスゼット ディージェイアイ テクノロジー カンパニー リミテッド
発明の名称 支援された離陸  
代理人 江口 昭彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 阿部 豊隆  
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