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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C04B
管理番号 1337081
異議申立番号 異議2017-701079  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-16 
確定日 2018-02-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6128422号発明「セメント用硬化促進剤およびセメント組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6128422号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6128422号は、平成25年 2月 7日に出願された特願2013-22280号について、平成29年 4月21日に設定登録がされたものであり、その後、その請求項1?4に係る特許に対し、特許異議申立人 天野 景昭により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明の認定

上記特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのもの(以下、請求項ごとに「本件特許発明1」?「本件特許発明4」という。)と認められる。

【請求項1】
ニッケルを200ppm以上15000ppm以下含む炭酸リチウム粉末であって、使用済みリチウムイオン電池由来の高濃度リチウム溶液を原材料とした炭酸リチウム粉末が備えられているセメント用硬化促進剤。
【請求項2】
前記炭酸リチウム粉末の平均粒子径が5μm以上100μm以下である請求項1に記載のセメント用硬化促進剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセメント用硬化促進剤が含まれているセメント組成物。
【請求項4】
速硬性セメントが含まれている請求項3に記載のセメント組成物。

第3 申立理由の概要

特許異議申立人は、上記特許は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない(以下、「申立理由1」という)特許出願に対してされたものであり、また、証拠として下記甲第1?8号証(以下、「甲1」?「甲8」という。)を提出し、上記特許に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反(以下、「申立理由2」という)するものだから、その特許は取り消すべきものである旨主張している。

甲1:金井豊,アタカマ塩湖におけるリチウムの採取と利用,地質ニュース,670号,第49?52頁,2010年6月号
甲2:特開2012-92004号公報
甲3:Javed I. Bhatty,Role of Minor Elements in Cement Manufacture and Use,PCA Research and Development Bulletin RD109T,第1?26頁,Portland Cement Association,1995
甲4:特開昭58-115052号公報
甲5:特開2005-75712号公報
甲6:V.S.Ramachandran,CONCRETE ADMIXTURES HANDBOOK Properties,Science,and Technology,第106?107頁,NOYES PUBLICATIONS,1984
甲7:Peter C.Hewlett,LEA’S CHEMISTRY OF CEMENT AND CONCRETE,第747?749頁,Arnold,1998
甲8:A.M.Paillere,Application of Admixtures in Concrete,第37?39頁,E&FN SPON,1995

第4 申立理由1について

1.実施可能要件違反について

特許異議申立人は、本件特許発明1の「ニッケルを200ppm以上15000ppm以下含む炭酸リチウム粉末であって、使用済みリチウムイオン電池由来の高濃度リチウム溶液を原材料とした炭酸リチウム粉末」について、「使用済みリチウムイオン電池」から、どのような方法によって、「ニッケルを200ppm以上15000ppm以下含む炭酸リチウム粉末」を回収したかについて、全く記載されていないことから、本件特許明細書の記載は、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2?4について、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしていない旨主張している(特許異議申立書第18頁第17?27行)。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0039】には、「セメント用硬化促進剤として、以下の方法で調整したものを用いた。まず、使用済みリチウムイオン電池を廃棄処理する際に発生する高濃度リチウム溶液から得られた炭酸リチウム粉末を回収し、回収バッチごとにニッケル含有量を測定した。・・・測定後、異なるニッケル含有量の回収バッチの炭酸リチウム粉末を表1に示す各濃度になるように混合して調整して、実施例1乃至11、比較例1及び2のセメント用硬化促進剤とした。」ことが記載されており、使用済みリチウムイオン電池から得られる種々のニッケル含有量の炭酸リチウム粉末を混合し調整することによって、ニッケルを200ppm以上15000ppm以下含む炭酸リチウム粉末を回収することが理解できる。
してみれば、本件特許明細書は、発明の詳細な説明において、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
したがって、本件特許明細書の記載は、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2?4について、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしている。

2.サポート要件違反について

特許異議申立人は、本件特許発明1は、ニッケル及びリチウム以外の成分の種類及び量が特定されておらず、ニッケルが水溶性と非水溶性のいずれであるかも特定されていないところ、本件特許明細書には、ニッケル及びリチウム以外の成分として、ナトリウム、カルシウム等の他の成分の量が如何なるものや、ニッケルが水溶性と非水溶性のいずれであっても本件特許発明1の効果が得られることが記載されていないことから、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2?4は、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たしていない旨主張している(特許異議申立書第18頁末行?第19頁第23行)。
しかしながら、本件特許明細書には、本件特許発明1?4の具体例が記載されており、炭酸リチウムのニッケル含有量が所定範囲内である使用済みリチウムイオン電池由来の高濃度リチウム溶液を原料とした炭酸リチウム粉末であれば、ナトリウムやカリウム等が含まれていても硬化時間が早く、圧縮強度も高い効果が得られることを当業者が高い蓋然性をもって理解できる。
また、本件特許明細書の段落【0039】には、ニッケル含有量の測定として、炭酸リチウム粉末を10%硝酸水溶液に溶解したものを試料とすることが記載されていることから、本件特許発明のニッケルは、硝酸水溶液によって溶解する難溶性(非水溶性)のものであり、ニッケルが非水溶性であっても、本件特許発明1の効果があることが理解できる。
してみれば、当該具体例から、本件特許発明1?4の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるといえる。
したがって、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2?4は、特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たしている。

3.明確性要件違反について

特許異議申立人は、本件特許発明1の「高濃度リチウム溶液」について、「高濃度」が如何なる濃度を意味するのかが不明であるから、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2?4は、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件に違反する旨主張している(特許異議申立書第19頁第25行?第20頁第2行)。
しかしながら、「高濃度リチウム溶液」における「高濃度」とは、使用済みリチウムイオン電池から回収して得られるリチウム溶液程度の濃度を意味していることは明らかであるから、本件特許発明1?4が不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2?4は、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たしている。

4.まとめ

以上のとおりであるから、請求項1?4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号並びに第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

第5 申立理由2について

1.引用発明の認定
甲1には、以下の事項が記載されている。

(甲1-1)
「最後に炭酸ナトリウムを加えて炭酸リチウムの沈殿を作り(溶解度は0.24gLi/100g溶液とかなり小さい),結晶・粉砕・粒度調整などを経て製品としている」(第50頁右欄第20?23行)

(甲1-2)
「炭酸リチウム・硫酸リチウム・水酸化リチウムなどは,セメントを早く固める添加材,セメントベースの接着材などの建設産業での利用もある」(第51頁第6?10行)

甲1-1から甲1-2の記載によれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「結晶・粉砕・粒度調整などを経て製品とされた炭酸リチウム粉末であるセメントを早く固める添加剤」

2.対比・判断

本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、本件特許発明1では、「炭酸リチウム粉末」が、「ニッケルを200ppm以上15000ppm以下含み」「使用済みリチウムイオン電池由来の高濃度リチウム溶液を原材料とした」ものであるのに対し、甲1発明では、炭酸リチウムにおけるニッケル含有量が明らかでなく、使用済みリチウムイオン電池由来の高濃度リチウム溶液を原材料としていない点で、少なくとも両者は相違する。
上記の点について検討する。
甲2の請求項1には、「粗製炭酸リチウムを純水に溶解し、水溶液中の不溶物を濾過し、その濾液を炭酸リチウムが析出する温度以上まで加熱して炭酸リチウムを再結晶させ、該炭酸リチウムを温水で洗浄することを特徴とする炭酸リチウムの精製方法」が記載され、段落【0007】には、「また、リチウムイオン2次電池のリサイクルプロセスにおいて、リチウムを炭酸リチウムとして回収する際に、炭酸リチウム中のナトリウムやカルシウム濃度が高くなるため、この回収炭酸リチウムはそのままではリチウムイオン2次電池の正極材原料として使用できないという問題が起きている。」と記載され、段落【0014】には、「本発明の対象粗製炭酸リチウムは、その製造方法、不純物の濃度・種類によらず、精製しようとする炭酸リチウム全てが対象である。例えばその不純物には、Niでは、300から500mass ppm・・・その他Cu,Zn,Pb,Cr,K等の不純物が存在する。」と記載されている。
してみれば、甲2には、Niを300から500massppm含むような粗製炭酸リチウムを精製することが記載されていると認められるものの、甲2に記載された粗製炭酸リチウムが使用済みリチウムイオン電池由来の高濃度リチウム溶液を原材料としているか否かは明らかではないし、甲1発明において、甲2に記載された粗製炭酸リチウムを精製せずに用いる動機付けもない。
また、甲3?8にも、ニッケルを200ppm以上15000ppm以下含む、使用済みリチウムイオン電池由来の高濃度リチウム溶液を原材料とした炭酸リチウムをセメント用硬化促進剤に用いることについての記載や示唆がない。
よって、上記相違点に係る点は当業者が容易になしえたものでなく、本件特許発明1及びこれに従属する本件特許発明2?4は、甲1?8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、申立人は、甲1発明に代えて、甲5に記載された発明を用いた場合について、本件特許発明1が進歩性を有しない旨主張しているものの、甲1発明を甲5に記載された発明に代えたとしても、上記と同様に判断されるものである。

第6 むすび

したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-30 
出願番号 特願2013-22280(P2013-22280)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C04B)
P 1 651・ 121- Y (C04B)
P 1 651・ 537- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡田 隆介  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 山崎 直也
大橋 賢一
登録日 2017-04-21 
登録番号 特許第6128422号(P6128422)
権利者 住友大阪セメント株式会社
発明の名称 セメント用硬化促進剤およびセメント組成物  
代理人 日東 伸二  
代理人 山本 裕  
代理人 中谷 寛昭  
代理人 藤本 昇  
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