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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L |
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管理番号 | 1337085 |
異議申立番号 | 異議2017-701109 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-11-24 |
確定日 | 2018-02-13 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6134672号発明「発光素子が実装されるプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物、その硬化物、その硬化物を有するプリント配線板、及びその硬化物からなる発光素子用反射板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6134672号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6134672号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成20年12月1日(優先権主張 平成19年11月30日)を出願日とする特許出願(特願2008-306241号)の一部を平成22年8月25日に新たな特許出願(特願2010-188617号)とし、さらにその一部を平成26年3月10日に新たな特許出願(特願2014-46897号)としたものであって、平成29年4月28日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数7)がされ、その後、その特許に対し、同年11月24日付け(受理日:同年11月27日)で特許異議申立人 津崎 愛美(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタン、及び(B-2)光硬化性樹脂を含有する白色ソルダーレジスト組成物(但し、エポキシ系熱硬化性化合物を含有しない)であって、発光素子が実装されたプリント配線板においてエレクトロルミネセンス又は発光ダイオード用反射板として用いられる白色ソルダーレジスト組成物。 【請求項2】 (A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタンの配合率が、(B-2)光硬化性樹脂100質量部に対して、30?600質量部である、請求項1に記載の白色ソルダーレジスト組成物。 【請求項3】 (B-2)光硬化性樹脂が、エチレン性不飽和結合を有する化合物である、請求項1又は2に記載の白色ソルダーレジスト組成物。 【請求項4】 (C)光重合開始剤を含有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の白色ソルダーレジスト組成物。 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の白色ソルダーレジスト組成物の硬化物からなるエレクトロルミネセンス又は発光ダイオード用反射板を有するプリント配線板。 【請求項6】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の白色ソルダーレジスト組成物の硬化物からなるエレクトロルミネセンス用反射板。 【請求項7】 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の白色ソルダーレジスト組成物の硬化物からなる発光ダイオード用反射板。」 第3 特許異議申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠方法として、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである以下の甲第1ないし8号証を提出し、おおむね次の取消理由(以下、順に「取消理由1」ないし「取消理由4」という。)を主張している。 1 取消理由1(進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである甲第1ないし5号証に記載された発明(甲第1号証が主引用例である。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由2(サポート要件) 甲第6ないし8号証に記載されているように、シリコーン樹脂はそもそも酸化チタンのような薬品に対しても安定である。したがって、光硬化性樹脂が光に極めて安定なシリコーン樹脂である場合には、塩素法と硫酸法とによるルチル型酸化チタンの比較において、光に対する硬化物の安定性の差は、エチレン性不飽和結合を有する化合物等の光硬化性樹脂を用いた耐熱性及び耐光性よりも、極僅かである。 よって、本件特許発明1、その従属項又は引用項である本件特許発明2ないし7は、本件公報の実施例のように黄変し易いエチレン性不飽和結合を有する化合物のような光硬化性樹脂という例示があるのみで、このうち実施例で示された特定の硬化性樹脂のみが硫酸法による酸化チタンよりも塩素法による酸化チタンの方が樹脂の劣化の抑制効果に優れるという本件公報の段落番号0018の効果を実証できているに過ぎず、光硬化性樹脂であるシリコーン樹脂のように熱のみならず光に対しても極めて安定で耐薬品性に優れた硬化物について、塩素法で製造された酸化チタンによる耐光性が明細書によってサポートされていないから、実施例に記載の光硬化性樹脂以外の樹脂について、実施例に記載の光硬化性樹脂と同等かそれ以上の効果を示すことが発明の詳細な説明に記載されていない。 したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 3 取消理由3(明確性) 本件特許発明1の白色ソルダーレジスト組成物は、効果の有無に関わらずあらゆる光硬化性樹脂を含有するものであって、エチレン性不飽和結合を有する化合物のような光硬化性樹脂のうち実施例で示された以外の如何なる光硬化性樹脂か特定されておらず、しかもエポキシ系熱硬化性化合物を含有しないと特定されているだけで他の熱硬化性化合物(熱で黄変し易い熱硬化性化合物例えば甲第1号証に記載のポリイソシアナ-ト類、又はメラミン樹脂類など)を包含し得るため、極めて黄変性の高い硬化膜となる白色ソルダーレジスト組成物や、塩素法または硫酸法ルチル型酸化チタンの共存に関わらず熱や光に対しもともと安定なシリコーン樹脂含有の白色ソルダーレジスト組成物を含み得るものである。 本件特許発明1は、エポキシ系熱硬化性化合物を含有せず、極僅かでも光硬化性樹脂を単に含有さえすればよいというものであるから、このようなものまで本件特許発明1の技術的範囲に包含され得るというのは、不当に広過ぎ、明確性に欠くから到底許容されるものではない。 したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 4 取消理由4(実施可能要件) 発明の詳細な説明に、実施例のように極限られた種類の光硬化性樹脂の硬化物だけが、硫酸法ではなく塩素法によるルチル型酸化チタンで、熱や光に対し安定性である旨、実証されているに過ぎず、広範な光硬化性樹脂の内で実施例で示した光硬化性樹脂以外の如何なる樹脂がその効果を奏するか、過度な試行錯誤を行わなければならないから、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 甲第1号証:特開2000-169511号公報 甲第2号証:特開2002-60615号公報 甲第3号証:特開2007-249148号公報 甲第4号証:特開2007-108242号公報 甲第5号証:特開2000-169557号公報 甲第6号証:特開2003-215322号公報 甲第7号証:実用プラスチック事典(株式会社産業調査会 事典出版センター、1993年9月20日初版第2刷発行)第286ないし287ページ、及び第297ページ 甲第8号証:岩波 理化学辞典第4版(株式会社岩波書店、1989年12月15日第4版第4刷発行)第622ページ 第4 特許異議申立理由についての判断 1 甲第1ないし8号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明 (1)甲第1号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明 ア 甲第1号証に記載された事項 甲第1号証には、次の記載がある。 ・「【特許請求の範囲】 ・・・ 【請求項2】 (A)エチレン性不飽和の光重合性化合物の少なくとも1種及び(B)請求項1記載の光開始剤混合物を含む光重合性組成物。 ・・・ 【請求項5】 エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の光重合の方法であって、請求項2記載の組成物に、200?600nmの波長範囲の光を照射する方法。」 ・「【0061】不飽和化合物は、非-光重合性フィルム-形成性成分との混合物中で用いることもできる。それらは、例えば物理的に乾燥されているか、有機溶媒、例えばニトロセルロ-ス又はセルロ-スアセトブチラ-ト中のその溶液であることができるが、それらは、化学的又は熱的な硬化樹脂、例えばポリイソシアナ-ト類、ポリエポキシド類又はメラミン樹脂類であることもできる。熱硬化性樹脂の付随的用途は、いわゆるハイブッリドシステムでの使用に重要であり、それは、第一工程で光重合され、第二工程での熱後処理により架橋される。」 ・「【0071】したがって、本発明は、成分(D)として、ヒドロキシフェニル-s-トリアジン類、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾ-ル類及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジン類に基づく立体障害アミン類のクラスからのUV吸収剤、並びに/又は顔料、特に白色顔料を含む光重合性組成物にも関する。」 ・「【0078】組成物は、着色剤及び/又は白色若しくは着色顔料を含むこともできる。意図する用途により、無機及び有機無機顔料の両方を用いることができ、特に好適なものは白色顔料、例えばチタニウムジオキシド、特にルチルタイプのものである。そのような添加剤は、当業者に知られている;いくつかの例は、例えばルチル又はアナタ-ゼタイプのようなチタニウムジオキシド顔料類、カ-ボンブラック、亜鉛白のような酸化亜鉛類、酸化鉄イエロ-、酸化鉄レッドのような酸化鉄類、クロミウムイエロ-、クロミウムグリ-ン、ニッケルチタニウムイエロ-、ウルトラマリンブル-、コバルトブル-、ビスマスバナダ-ト、カドミウムイエロ-及びカドミウムレッドである。有機顔料類の例は、モノ-又はビス-アゾ顔料、及びまたそれらの鉄錯体類、フタロシアニン顔料類、多環顔料類、例えばペリレン、アントラキノン、チオインジゴ、キナクリドン又はトリフェニルメタン顔料類、及びまたジケトピロ-ル、イソインドリノン、例えばテトラクロロイソインドリノン、イソインドリン、ジオキサジン、ベンズイミダゾロン及びキノフタロン顔料類である。顔料類は、それら自体又は混合物で用いられることができる。意図する用途により、顔料類は、当技術での慣用の量、例えば全重量に基づいて、1?60重量%、又は10?30重量%で配合物に加えられる。」 ・「【0094】光重合性組成物は、種々の目的、例えば印刷インキ(例えばスクリーン印刷、オフセット印刷及びフレキソ印刷のため)として、透明ラッカーとして、白色表面被覆配合物(例えば、木材又は金属のための)として、被覆材料(とりわけ、紙、木材、金属又はプラスチックスのための)として、構造物及び道路をマークするための日光硬化性ペイントとして、写真再生産方法のために、ホログラフィ記録材料のために、画像記録方法又は有機溶媒を用いるか若しくは水性アルカリ媒体を用いて現像することができる版面のために、スクリーン印刷のためのマスクの製造のために、歯科充填化合物として、接着剤として、圧感受性接着剤として、ラミネート樹脂として、エッチング又はパーマネントレジスト、及び電気回路のはんだ遮蔽として、塊硬化による三次元製品の製造(透明成形物でのUV硬化)において、又は立体リソグラフィ方法において、例えばUS 4 575 330に記載されているように、複合材料(例えば、ガラス繊維及び他の賦形剤を含むことができるスチレンポリエステル類)及び他の厚層複合材の製造において、電気成分の被覆又は封止において、又は光学繊維の被覆において用いることができる。」 ・「【0103】溶液は、基質に既知の被覆方法の手段により、例えば回転-被覆、液浸、ナイフ被覆、カーテン鋳込、刷毛塗り又は噴霧、特に吹付けにより、特に静電噴霧及び逆回転被覆により、基質に一様に塗布される。仮の柔軟な支持材に光感受性層を塗布し、次いで目的の基質、例えば銅-被覆回路基板を被覆し、薄層化により層を移すこともできる。 【0104】本発明の組成物は、好適には、被覆、特に表面被覆、例えば白色表面被覆で用いられる。本発明は、したがって、また、(A)エチレン性不飽和の光重合性化合物の少なくとも1種、特にアクリラート; (B)上記の通りの光開始剤の組み合わせ、(C)場合により更なる光開始剤類、(D)白色顔料、特に二酸化チタン、及び場合による更なる添加剤類を含む白色表面被覆配合物に関する。 【0105】塗布される量(層厚さ)及び基質の特性(層の支持)は、使用の所望の分野に依存する。層厚さの範囲は、約0.1から10mmを超えるまでの値を含む。 【0106】本発明の感光性の組成物は、また、例えば、非常に高い光感受性を有し、膨潤しないで水性-アルカリ媒体中で現像することができるネガティブレジストとして用いられる。それらは、エレクトロニクスのためのホトレジスト(電気レジスト(galvano resist)、蝕刻レジスト(etch resist)、溶融レジスト(solder resist))、版面、例えばオフセット版面又はスクリーン印刷ブロックの製造、成形品の蝕刻での用途又は集積回路の製造でのミクロレジストとして適切である。したがって、可能な支持材及び被覆された基質を製造する条件は、多様である。写真情報記録のためには、例えばポリエステル箔、酢酸セルロース又はプラスチック被覆紙が、オフセット印刷ブロックのためには特別に処理されたアルミニウムが、印刷回路の製造のためには銅メッキ箔、及び集積回路のためにはシリコンウエハースが用いられる。写真材料及びオフセット印刷ブロックの層厚さは、一般的に約0.5μm?10mmであり、印刷回路では0.4μm?約2mmである。」 ・「【0117】また、複合材料を製造する成形品の光硬化において本発明の光開始剤の組み合わせの使用は、また興味がある。複合材料は、自己支持型マトリックス材料、例えば編まれたガラス繊維、又は別のものとして例えば、植物繊維(K.P.Mieck、T. Reussmann in Kunststoffe 85(1995),366-370参照)からなり、それらは光硬化性配合物で含浸させられている。本発明の組み合わせを用いて製造された複合材料で調製されている成形品は、高度な機械的安定度及び耐性を有する。本発明の光開始剤の組み合わせは、また、例えばEP 7086に記載されているように、成形品、含浸物及び被覆物での光硬化剤としても用いられる。このような物質は、例えば薄層樹脂であり、そこにおいて高い要求は、硬化活性、及び黄変に対する耐性及び繊維強化成形材料、例えば平面又は縦長又は横長の波型光パネルの点で達成されている。」 ・「【0118】画像化方法及び情報担体の光学的調製のための光硬化性組成物の使用も重要である。その適用のために、既に上記したように、支持材に塗布された層(湿式又は乾式)は、フォトマスクを使用してUV又は可視光で照射され、層の非曝露部分は、溶媒(=現像剤)での処理により除去される。光硬化性層は、また、電着方法でメタルに塗布されることができる。曝露した領域は、架橋された-ポリマー性であり、したがって、不溶性で、支持材上に残る。適切に着色されたとき、可視性の画像が形成される。担体が金属化された層であるとき、曝露及び現像の後、金属は、非曝露領域を蝕刻で取り除くか又は電流を流すことにより補強される。このような方法で、印刷された電子回路及びホトレジストを製造することができる。」 ・「【0130】実施例5: 白色表面被覆配合物の調製及び硬化 UV-硬化性白色被覆は、 ポリエステルアクリラートオリゴマー(^(RTM)EBECRYL 830, UCB, Belgium):67.5部 ヘキサンジオールジアクリラート: 5.0部 トリメチロールプロパントリアクリラート: 2.5部 及び ルチルチタニウムジオキシド(^(RTM)R-TC2, Tioxide, France): 25.0部を一緒に混合することにより調製した。試験すべき光開始剤混合物は、それぞれ2%の濃度で配合物に組み入れた。」 イ 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証に記載された事項、特に実施例5に関する記載を整理すると、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「ポリエステルアクリラートオリゴマー(^(RTM)EBECRYL 830, UCB, Belgium):67.5部 ヘキサンジオールジアクリラート: 5.0部 トリメチロールプロパントリアクリラート: 2.5部 及び ルチルチタニウムジオキシド(^(RTM)R-TC2, Tioxide, France): 25.0部を一緒に混合することにより調製し、さらに光開始剤混合物を2%の濃度で組み入れた白色表面被覆配合物。」 (2)甲第2号証に記載された事項 甲第2号証には、次の記載がある。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は高反射性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された反射板にに関する。」 ・「【0032】 (B)酸化チタン(B成分) ○1(当審注:○1は○付き数字の1である。)酸化チタン:RTC-2;タイオキサイド社製、結晶系=ルチル、製造法=塩素法、主要処理剤=アルミナ・シリカ・ジメチルポリシロキサン(以下Ti-1と称す)」 (3)甲第3号証に記載された事項 甲第3号証には、次の記載がある。 ・「【0001】 本願発明は、感光性熱硬化性樹脂組成物、並びにレジスト膜被覆平滑化プリント配線基板及びその製造法に関する。より詳しくは、本願発明は、プリント配線基板、特にLED(就中、大型液晶バックライトLED等)用プリント配線基板、LED照明用プリント配線板、自動車用LEDヘッドライト用プリント配線板、紫外線(UV)LED用プリント配線板、及び高放熱性プリント配線板等のソルダーレジスト、層間絶縁材、半導体パッケージの再配線層等に有用な感光性熱硬化性樹脂組成物、並びにそのレジスト膜にて被覆された平滑化プリント配線基板及びその製造法に関する。」 ・「【0013】 上記事情に鑑み、本願発明は、HAST耐性及び耐金メッキ性等に優れた硬化物を与える感光性熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。特に、本願発明は、上記の優れた諸特性に加え更に、光の反射率のみならず光沢性にも優れ、その結果、ダイオードの発光をより一層、有効利用することができるLEDプリント配線基板用ソルダーレジスト膜を与えることができる感光性熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。」 ・「【0016】 にて表されるエポキシ樹脂と、加水分解性アルコキシシランとを脱アルコール反応させて得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂、 【0017】 [II]分子中にエチレン性不飽和基及び2個以上のカルボキシル基を有し、固形分酸価(mgKOH/g)50?150の不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、 [III]希釈剤、 [IV]光重合開始剤、及び [V]硬化密着性付与剤 【0018】 を含有し、成分[I]と成分[II]との含有重量比が2/100?50/100であり、且つ成分[I]と成分[II]との合量100重量部に対しそれぞれ、成分[III]を5?500重量部、成分[IV]を0.1?30重量部、及び成分[V]を0.1?20重量部含有することを特徴とする感光性熱硬化性樹脂組成物を提供する。」 ・「【0150】 特に、本願発明に係る感光性熱硬化性樹脂組成物をLED用プリント配線基板等の白色ソルダーレジストインキとして調製する場合は、着色剤として白顔料を加えるのが好ましい。白顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸塩、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、窒化チタン、フッ化セリウム、酸化セリウム等が挙げられるが、着色力と無毒性という点から酸化チタンが好ましい。白顔料の平均粒径としては、例えば0.01?1.0(特に0.1?0.5)μmが好ましい。」 (4)甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、次の記載がある。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (メタ)アクリル系重合体:2?50質量部、(メタ)アクリル酸イソボルニル:30?97質量%含む(メタ)アクリル系単量体:98?50質量部の(メタ)アクリル系混合物に、熱ラジカル重合開始剤:0.1?5質量部、架橋剤:0.1?20質量部、分子量500以上の可塑剤:1?20質量部、酸化チタン顔料:40?120質量部が配合され、粘度:1?100Pa・sに調整された熱重合型アクリル塗料からなる重合型アクリル系組成物を支持体上に塗布し、成膜された塗膜であり、JIS Z8722による色調測定での全反射率が94%以上、正反射光を除去した拡散反射率が91%以上であることを特徴とする液晶バックライト反射板用白色シート。」 ・「【0005】 また、液晶ディスプレイ画面の背面にある反射板は、蛍光管やLEDからの照明光で照射されるので、照明光に微量ながらも含まれている紫外線で常時照射される。発泡樹脂で反射率を高めた反射材や反射フィルムでは、紫外線の遮蔽にも有効な酸化チタン顔料等の顔料添加がないため、樹脂自体が紫外線によって劣化し、時間が経過するに従い、塗膜の変色が進行し、全反射、拡散反射が低下する。」 ・「【0007】 本発明の白色シートは、1層コートである。この塗膜は、熱重合型アクリル塗料を重合硬化することにより成膜され、100μm以上の厚膜化が容易で、紫外線照射下でも劣化し難く、液晶バックライト反射材として好適な高反射率を呈する。」 ・「【0014】 (メタ)アクリル系単量体の重合には、過酸化物系、アゾ系等の熱ラジカル重合開始剤が使用可能であるが、過酸化物系熱重合開始剤の使用が好ましい。」 ・「【0025】 このアクリル混合物には、反射率の向上に有効な酸化チタン顔料を配合する。」 ・「【0026】 不純物:0.1質量%以下の酸化チタン顔料は、好ましくは塩素法で作られたルチル型酸化チタンをアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、有機物等で表面処理することにより用意できる。」 ・「【0027】 アクリル系混合物に対する酸化チタン顔料の配合割合は、アクリル系混合物100質量部に対して40?120質量部の範囲で選定される。」 ・「【0030】 -塗料組成物の調製- アクリル酸2-エチルヘキシル(2-EHA):95質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-HEA):5質量部を配合した重量平均分子量:5×105のコポリマーをアクリル系重合体Aとした。アクリル系重合体A、2-EHA、2-HEA、アクリル酸イソボルニル(大阪有機化学工業製)を配合してアクリル系混合物とし、さらにヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアネート架橋剤(TPA100:旭化成ケミカルズ製)、有機過酸化物(パーオクタO:日本油脂製)、可塑剤、酸化チタン顔料を種々の割合で添加することにより複数の塗料組成物を用意した。」 (5)甲第5号証に記載された事項 甲第5号証には、次の記載がある。 ・「【0019】また、本発明の半導体封止装置は、上述の成形材料を用いてオプトデバイスなど半導体チップを封止することにより容易に製造することができる。封止を行う半導体チップとしては、例えば光源、検出、受動などオプトデバイスのほか、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等で特に限定されるものではない。」 ・「【0020】 【作用】本発明においてエポキシ樹脂のカチオン重合系をバインダーとし、充填剤として、塩素法により製造された酸化チタン充填剤との組合せを採用し、前述のようにして充填剤および熱硬化性の樹脂を使用することにより、熱硬化性に優れ、かつ保存安定性に優れ、充填性や作業性がよく、硬化物が熱や光によってあまり変化せず、かつ成形に適したエポキシ樹脂組成物が得られたものである。この樹脂組成物を使用することにより、優れた電子部品、半導体装置が得られる。」 (6)甲第6号証に記載された事項 甲第6号証には、次の記載がある。 ・「【0008】 【発明が解決しようとする課題】バインダー成分としてアクリル樹脂を含有するカラーフィルター用光硬化性樹脂組成物は、加熱工程において黄変を生じやすいと言う欠点がある。」 (7)甲第7号証に記載された事項 甲第7号証には、次の記載がある。 ・「(3)シリコーンの市場 シリコーンの特徴は耐熱性、耐候性、耐酸化安定性、対候性・・・など他の材料にはない優位性を持っている。」(第286ないし287ページ) ・「(2)製品名と構造、性質 シリコーンレジン・・・は・・・フィラーを添加して耐熱性塗料、耐候性塗料としたり・・・変性レジンが電気絶縁ワニスとして用いられている。」(第297ページ) (6)甲第8号証 甲第8号証には、次の記載がある。 ・「シリコーン ・・・シリコーンの物性は・・・耐薬品性・・・にすぐれている.」(第622ページ) 2 取消理由1(進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「ルチルチタニウムジオキシド(^(RTM)R-TC2, Tioxide, France)」は、その機能、構成又は技術的意義並びに甲第2号証に記載された事項からみて、本件特許発明1における「(A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタン」に相当し、以下同様に、「ポリエステルアクリラートオリゴマー(^(RTM)EBECRYL 830, UCB, Belgium)」、「ヘキサンジオールジアクリラート」及び「トリメチロールプロパントリアクリラート」は「(B-2)光硬化性樹脂」に相当する。 また、甲1発明における「白色表面被覆配合物」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1における「白色ソルダーレジスト組成物(但し、エポキシ系熱硬化性化合物を含有しない)」及び「発光素子が実装されたプリント配線板においてエレクトロルミネセンス又は発光ダイオード用反射板として用いられる白色ソルダーレジスト組成物」と、「白色」の「組成物(但し、エポキシ系熱硬化性化合物を含有しない)」という限りにおいて一致する。 したがって、両者は、次の点で一致する。 「(A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタン、及び(B-2)光硬化性樹脂を含有する白色の組成物(但し、エポキシ系熱硬化性化合物を含有しない)。」 そして、少なくとも次の点で相違する。 <相違点> 「白色の組成物(但し、エポキシ系ネル硬化性化合物を含有しない)」に関して、本件特許発明1においては、「白色ソルダーレジスト組成物」及び「発光素子が実装されたプリント配線板においてエレクトロルミネセンス又は発光ダイオード用反射板として用いられる白色ソルダーレジスト組成物」であるのに対し、甲1発明においては、「白色表面被覆配合物」である点。 イ 判断 甲第1号証に記載された事項からみて、甲1発明は、発光素子を設けることを前提とした部材の表面を被覆するためのものではなく、当然、「反射板」の製造に使用するものではない。 そして、甲第2ないし5号証にも、甲1発明における「白色表面被覆配合物」を、「反射板」の製造に使用すること及び「ソルダーレジスト」として使用することは記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明において、甲第2ないし5号証に記載された事項に基づいて、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、本件特許発明1は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2ないし7について 本件特許発明2ないし7は、請求項1を引用し、請求項1に記載された発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし5号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)取消理由1(進歩性)についてのむすび よって、取消理由1は理由がない。 3 取消理由2(サポート要件) 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 ・「【0006】 本発明の目的は、反射率が高く、且つ経時による反射率の低下並びに劣化による着色の抑制された白色硬化性樹脂組成物であって、LED等の発光素子が実装されるプリント配線板に絶縁層、特にソルダーレジストとして用いられた場合に、長期間にわたってLED等の光を効率よく利用することができる白色硬化性樹脂組成物を提供すること、並びに前記白色硬化性樹脂組成物からなり、高反射率で、且つ経時による反射率の低下、及び劣化による黄変などの着色の抑制されたLEDやEL等の発光素子用反射板を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、白色顔料として塩素法により製造されたルチル型酸化チタンを使用することにより、同じルチル型酸化チタンでも硫酸法により製造されたルチル型酸化チタンを使用した場合に比し、特に熱による樹脂の劣化(黄変)の抑制効果が顕著となり、高反射率を長期間にわたり達成することができることを見出した。」 ・「【0015】 本発明の白色硬化性樹脂組成物は、(A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタン、及び(B)硬化性樹脂を含有する。 【0016】 本発明では、白色顔料として、(A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタンを用いることを特徴としている。同じ酸化チタンであるアナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度が高く、白色顔料としてよく使用される。しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、特にLEDから照射される光により、絶縁性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、酸化チタンの光活性に起因する光による樹脂の劣化(黄変)が顕著に抑制され、光に対して優れた安定性を示す。 【0017】 また、ELやLEDなどの発光素子用反射板として本発明の白色硬化性樹脂組成物を用いる場合、経時による反射率の低下、並びに劣化による着色が抑制され、長期にわたり高反射率を保持することができる。 【0018】 そして、同じルチル型酸化チタンでも、塩素法により製造されたルチル型酸化チタンは、硫酸法により製造されたルチル型酸化チタンに比し、特に熱による樹脂の劣化(黄変)の抑制効果に極めて優れており、本発明において白色顔料として用いられる。すなわち、ルチル型酸化チタンの製造法には、硫酸法と塩素法の2種類あり、硫酸法は、イルメナイト鉱石やチタンスラグを原料とし、これを濃硫酸に溶解して鉄分を硫酸鉄として分離し、溶液を加水分解することにより水酸化物の沈殿物を得、これを高温で焼成してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。一方、塩素法は、合成ルチルや天然ルチルを原料とし、これを約1000℃の高温で塩素ガスとカーボンに反応させて四塩化チタンを合成し、これを酸化してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。本発明者等による鋭意研究の結果、いずれの製造法により製造されたルチル型酸化チタンも、光及び熱に対し優れた安定性を示し、LED等が実装されたプリント配線板の絶縁層において高反射率を長期にわたり維持することができるが、特に塩素法により製造されたものは、硫酸法で製造されたものよりも更に熱による樹脂の劣化の抑制効果に優れ、本発明における白色顔料としてより好適であることが見出された。」 ・「【0050】 次に実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことはもとよりである。 表1-1及び表1-2に従って各成分を3本ロールミルで混練し、各硬化性樹脂組成物(組成物例1乃至12)を得た。尚、組成物例1乃至6は熱硬化性樹脂組成物であり、組成物例7乃至12は光硬化性樹脂組成物である。また、表中の数字は、質量部を表す。 【表1-1】 【0051】 【表1-2】 【0052】 性能評価: (塗膜特性評価基板の作製) [組成物例1?6] 硬化性樹脂組成物例1?6を、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、これを150℃で60分間加熱し、硬化させて試験片を得た。 【0053】 [組成物例7?12] 硬化性樹脂組成物例7?12を、銅ベタのFR-4基板上にスクリーン印刷により乾燥塗膜が約20μmとなるようにパターン印刷し、メタルハライドランプにて350nmの波長で2J/cm2の積算光量を照射し、硬化させて試験片を得た。 得られた試験片に対して以下のように特性を評価した。 【0054】 (1)耐光性 各試験片について、ミノルタ製色彩色差計CR-400を用い、XYZ表色系のY値の初期値とL*a*b*表色系のL*、a*、b*の初期値を測定した。その後、各試験片をUVコンベア炉(出力150W/cm、メタルはライドランプ コールドミラー)で150J/cm^(2)の光を照射して加速劣化させ、再度、ミノルタ製色彩色差計CR-400で各数値を測定しY値の変化とΔE*abで評価した。その結果を、目視による変色の評価結果と共に表2-1及び表2-2に示す。 【0055】 (2)耐熱性 各試験片について、ミノルタ製色彩色差計CR-400を用い、XYZ表色系のY値の初期値とL*a*b*表色系のL*、a*、b*の初期値を測定した。その後、各試験片を150℃の熱風循環式乾燥炉に50時間放置して加速劣化させ、再度、ミノルタ製色彩色差計CR-400で各数値を測定しY値の変化とΔE*abで評価した。その結果を、目視による変色の評価結果と共に表2-1及び表2-2に示す。 【表2-1】 【0056】 【表2-2】 【0057】 Y値は、XYZ表色系のYの値であり、数値が大きいほど高い反射率を示す。ΔE*abは、L*a*b*表色系において初期値と加速劣化後の差を算出したもので、数値が大きいほど、変色が大きいことを示す。ΔE*abの計算式は以下の通りである。 【0058】 ΔE*ab=((L*2-L*1)2+(a*2-a*1)2+(b*2-b*1)2)0.5 式中、L*1、a*1、b*1は、各々L*、a*、b*の初期値を表し、L*2、a*2、b*2は、各々加速劣化後のL*、a*、b*の値を表す。 【0059】 目視評価の判定基準は以下の通りである。 ○:まったく変色がない。 △:少し変色がある。 ×:変色がある。」 ・「【0067】 表2-1、表2-2、表3-1、及び表3-2に示された結果から明らかなように、本発明の白色硬化性樹脂組成物は、プリント配線板用絶縁層に一般的に要求される諸特性を満たしつつ、光及び熱による加速劣化後も、高反射率を維持し、変色も抑制されていることがわかる。アナターゼ型酸化チタンを用いた場合に比べ、耐光性及び耐熱性において本発明が顕著に改善されているのは勿論のこと、特に、硫酸法によるルチル型酸化チタンを用いた場合に比し耐熱性が更に改善されている。」 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記のとおりの記載があり、それによると、本件特許発明1の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「反射率が高く、且つ経時による反射率の低下並びに劣化による着色の抑制された白色硬化性樹脂組成物であって、LED等の発光素子が実装されるプリント配線板に絶縁層、特にソルダーレジストとして用いられた場合に、長期間にわたってLED等の光を効率よく利用することができる白色硬化性樹脂組成物を提供すること」である(本件特許明細書の【0006】)。 そして、本件特許明細書の【0009】、【0016】ないし【0018】、【0050】ないし【0059】及び【0067】には、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂のいずれの場合であっても、「塩素法により製造されたルチル型酸化チタン」を含有させることによって、「アナターゼ型酸化チタン」や「硫酸法で製造された」「ルチル型酸化チタン」を含有させたものよりも、「反射率が高く、且つ経時による反射率の低下並びに劣化による着色の抑制された白色硬化性樹脂組成物」が得られることが、具体的な実施例によって示されている。 そうすると、発明の課題の解決には、「塩素法により製造されたルチル型酸化チタン」を含有させることに技術的意味があり、硬化性樹脂の種類の影響は少ない又は多少の影響があるとしても、硬化性樹脂であれば、その硬化性樹脂の種類に応じて、ある程度の効果を奏するものと、当業者は理解する。また、エチレン性不飽和結合を有する化合物のような光硬化性樹脂で効果がある場合に、それ以外の光硬化性樹脂では全く効果がないという技術常識もない。 したがって、本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が本件特許発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるというべきであり、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし7についても同様である。 よって、取消理由2は理由がない。 4 取消理由3(明確性) 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不等に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 請求項1に記載された「(B-2)光硬化性樹脂を含有する白色ソルダーレジスト組成物(但し、エポキシ系熱硬化性化合物を含有しない)」という記載は、それ自体極めて明確である。 したがって、光硬化性樹脂として、極めて黄変性の高い硬化膜となる白色ソルダーレジスト組成物や、塩素法または硫酸法ルチル型酸化チタンの共存に関わらず熱や光に対しもともと安定なシリコーン樹脂含有の白色ソルダーレジスト組成物を含み得るとしても、また、エポキシ系熱硬化性化合物を含有せず、極僅かでも光硬化性樹脂を単に含有さえすればよいというものであるとしても、第三者の利益が不等に害されるほどに不明確であるとはいえない。 また、本件特許発明1の技術的範囲が不当に広過ぎるとしても、そのことは明確性の要件違反の理由にはならない。 よって、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載は、明確性の要件に適合する。 また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし7についても同様である。 よって、取消理由3は理由がない。 5 取消理由4(実施可能要件)について 物の発明について、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物の生産、使用をすることができる程度の記載を要する。 そこで、検討する。 上記第4 3の記載によると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の発明特定事項である「(A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタン」、「(B-2)光硬化性樹脂」、「発光素子」、「プリント配線板」、「エレクトロルミネセンス又は発光ダイオード用反射板」等について、それぞれ、どのようなものであり、また、「(A)塩素法により製造されたルチル型酸化チタン」及び「(B-2)光硬化性樹脂」については 、どの程度の量使用するか明確かつ十分に記載されているといえる。 そして、上記第4 3のとおり、発明の課題の解決には、「塩素法により製造されたルチル型酸化チタン」を含有させることに技術的意味があり、硬化性樹脂の種類の影響は少ない又は多少の影響があるとしても、硬化性樹脂であれば、その硬化性樹脂の種類に応じて、ある程度の効果を奏するものと、当業者は理解するものであり、本件特許明細書の実施例と同程度以上の効果を必ずしも要求されるものではないから、その実施に過度の試行錯誤が要するとはいえない。 したがって、本件特許発明1について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識とに基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物の生産、使用をすることができる程度の記載があるといえ、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 また、請求項1を引用する本件特許発明2ないし7についても同様である。 よって、取消理由4は理由がない。 第5 結語 したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-02-02 |
出願番号 | 特願2014-46897(P2014-46897) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08L)
P 1 651・ 537- Y (C08L) P 1 651・ 536- Y (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 河野 隆一朗、細井 龍史、新留 豊 |
特許庁審判長 |
岡崎 美穂 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 井上 猛 |
登録日 | 2017-04-28 |
登録番号 | 特許第6134672号(P6134672) |
権利者 | 太陽ホールディングス株式会社 |
発明の名称 | 発光素子が実装されるプリント配線板用白色硬化性樹脂組成物、その硬化物、その硬化物を有するプリント配線板、及びその硬化物からなる発光素子用反射板 |
代理人 | 伊東 秀明 |
代理人 | 渡辺 望稔 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 三橋 史生 |