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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1337086
異議申立番号 異議2017-701081  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-17 
確定日 2018-02-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6127956号発明「タッチパネル用保護フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6127956号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6127956号(以下、「本件特許」という。)の請求項1-10に係る特許についての出願は、平成25年12月13日に出願され、平成29年4月21日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 増山 美紀(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件発明
本件特許の請求項1-10に係る発明(以下、「本件発明1」-「本件発明10」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
タッチパネルのタッチ面に装着されるタッチパネル用保護フィルムであって、基材フィルム上に、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層を備え、
下記スチールウール摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面における水接触角が95度以上であることを特徴とする、タッチパネル用保護フィルム。
(スチールウール摩耗性試験)
紫外線硬化性樹脂層表面をスチールウール#0000を使用し、荷重250g/cm^(2)、移動速度60mm/秒、往復移動距離120mmで1000往復させる。
【請求項2】
前記紫外線硬化性樹脂組成物が、一分子中にフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する重合性フッ素化合物を含有する、請求項1に記載のタッチパネル用保護フィルム
【請求項3】
前記紫外線硬化性樹脂組成物が、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有する、請求項1または2に記載のタッチパネル用保護フィルム
【請求項4】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物が、多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート化合物および多官能脂環式ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群の中から選ばれる少なくとも一種である、請求項3に記載のタッチパネル用保護フィルム。
【請求項5】
前記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物が4官能以上である、請求項3または4に記載のタッチパネル用保護フィルム。
【請求項6】
前記紫外線硬化性樹脂組成物が、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、該多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物とを併せて含有する、請求項1?5のいずれかに記載のタッチパネル用保護フィルム。
【請求項7】
前記紫外線硬化性樹脂層の厚みが3?8μmである、請求項1?6のいずれかに記載のタッチパネル用保護フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムと前記紫外線硬化性樹脂層との間に、厚みが0.005?0.3μmである熱硬化性樹脂層を有する、請求項1?7のいずれかに記載のタッチパネル用保護フィルム。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂層が、アクリル樹脂およびポリウレタン樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、請求項8に記載のタッチパネル用保護フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルムの紫外線硬化性樹脂層が積層された面とは反対面に、
粒子を含有するハードコート層を備え、該ハードコート層表面の水接触角が80度以下である、請求項1?9のいずれかに記載のタッチパネル用保護フィルム。」

第3.申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証-甲第6号証を提出した。
甲第1号証: 特開2013-76029号公報
甲第2号証: 特開2012-240266号公報
甲第3号証: 特開2012-233157号公報
甲第4号証: 特開2013-241569号公報
甲第5号証: 特開2010-237572号公報
甲第6号証: 特開2011-110902号公報
以下、甲第1号証-甲第6号証をそれぞれ、「刊行物1」-「刊行物6」という。

1.申立理由1(特許法第29条第2項について)
本件発明1-10は、刊行物1-6に記載された発明(以下、「刊行物1発明」-「刊行物6発明」という。)及び周知技術A(特開2011-39978号公報の段落0013及び図1、特開2013-75955号公報の段落0019及び図1に記載された、「基材の両面にハードコート層を有するハードコートフィルムの裏面側のハードコート層に、ブロッキングを防止するために粒子を添加する」技術)から当業者が容易に想到し得るものであり、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2.申立理由2(特許法第36条第4項第1号について)
(1)申立理由2の1
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、発明の詳細な説明に具体的な製造方法が記載された物以外の物(紫外線硬化性樹脂層が平均粒子径2μm以上の粒子を含有する物)について、技術常識を考慮しても、どのようにして本件発明1-10の機能・特性を満たすものを作ることができるのかを理解することができないため、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1-10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。
なお、特許異議申立書第6頁の「理由の要点」の欄の「理由2の1」中の「本件特許の特許請求の範囲(請求項1?10)の記載」は「本件特許の発明の詳細な説明の記載」の誤記と、また、特許異議申立書第43頁第23行の「本件発明1?10に係る特許請求の範囲の記載」は「本件発明1?10に係る発明の詳細な説明の記載」の誤記と認め、申立理由2の1を上記のとおり認定した。

(2)申立理由2の2
本件明細書の発明の詳細な説明の記載では、発明の詳細な説明に具体的な製造方法が記載された物以外の物(基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を有さない物)について、技術常識を考慮しても、どのようにして本件発明1-7及び10の機能・特性を満たすものを作ることができるのかを理解することができないため、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1-7及び10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。
本件明細書の詳細な説明の記載では、発明の詳細な説明に具体的な製造方法が記載された物以外の物(本件明細書の実施例で使用している特定の熱硬化性樹脂層以外の熱硬化性樹脂層を用いた物)について、技術常識を考慮しても、どのようにして本件発明8及び9の機能・特性を満たすものを作ることができるのかを理解することができないため、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明8及び9の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。
なお、特許異議申立書第7頁の「理由の要点」の欄の「理由2の2」中の「本件特許の特許請求の範囲(請求項1?10)の記載」は「本件特許の発明の詳細な説明の記載」の誤記と、また、特許異議申立書第45頁第3行の「本件発明2?10」は「本件発明2?7及び10」の誤記、特許異議申立書第45頁第22行の「本件発明1?10に係る特許請求の範囲の記載」は「本件発明1?10に係る発明の詳細な説明の記載」の誤記と認め、申立理由2の2を上記のとおり認定した。

第4.刊行物の記載、刊行物1発明
1.刊行物1には、次の記載がある。(下線は、特に着目した箇所を示す。以下、同様。)

ア.「【請求項1】
分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し且つフッ素を含有しないウレタンアクリレート(B)と、
パーフルオロポリエーテル基を含む分子鎖の両末端のそれぞれに、ウレタン結合を介して活性エネルギー線反応性基を有する第1のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)と、
パーフルオロポリエーテル基を含む分子鎖の片方の末端にウレタン結合を介して活性エネルギー線反応性基を有し且つ他方の末端には活性エネルギー線反応性基を有しない第2のフッ素含有ポリエーテル化合物(D)と、
分子内に2つ又は3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有し、且つウレタン結合及びフッ素を含有しない硬化性化合物(A)とを含み、
前記(C)成分は、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100重量部に対して、0.05?0.7重量部含まれ、
前記(D)成分は、前記(C)成分と前記(D)成分の重量比C/Dが1/5?5/2の範囲内となるように含まれているハードコート剤組成物。
【請求項2】
前記(B)成分は、前記(A)成分100重量部に対して、5?50重量部含まれている、請求項1に記載のハードコート剤組成物。
【請求項3】
前記硬化性化合物(A)は、前記硬化性化合物(A)を基準として、分子内に3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(At)65?100重量%、及び分子内に2つの活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(Ad)0?35重量%を含む、請求項1又は2に記載のハードコート剤組成物。
【請求項4】
前記第1のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)が有する活性エネルギー線反応性基、及び/又は前記第2のフッ素含有ポリエーテル化合物(D)が有する活性エネルギー線反応性基は、(メタ)アクリロイル基及びビニル基からなる群から選ばれる、請求項1?3のうちのいずれかに記載のハードコート剤組成物。

・・・中略・・・

【請求項12】
請求項1?11のうちのいずれかに記載のハードコート剤組成物の硬化物を含むハードコート層が表面に付与された物体。
【請求項13】
透明基材と、前記透明基材上のハードコート層とを含むハードコートフィルムであって、前記ハードコート層は、請求項1?11のうちのいずれかに記載のハードコート剤組成物の硬化物を含むハードコートフィルム。」

イ.「【0001】
本発明は、各種物体の表面に、透明性、防汚性、潤滑性、耐溶剤性、耐擦傷性及び耐摩耗性に優れると共に打ち抜き加工性にも優れるハードコート層を形成するために有用なハードコート剤組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、前記ハードコート剤組成物を用いて形成されたハードコート層を表面に有する物体に関する。表面にハードコート層の付与が必要とされる物体としては、光情報媒体、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及びタッチパネル、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子等が含まれる。
【0003】
特に、本発明は、前記ハードコート剤組成物を用いて形成されたハードコート層を透明基材表面に有するハードコートフィルムに関する。ハードコートフィルムは、例えば、上記したような各種表示素子の表面を保護するために用いられる。」

ウ.「【0013】
そこで、本発明の目的は、各種物体の表面に、透明性、防汚性、潤滑性、耐溶剤性、耐擦傷性及び耐摩耗性に優れると共に打ち抜き加工性にも優れるハードコート層を形成するために有用なハードコート剤組成物を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、前記ハードコート剤組成物を用いて形成されたハードコート層を表面に有する物体を提供することにある。
【0015】
特に、本発明の目的は、前記ハードコート剤組成物を用いて形成されたハードコート層を透明基材表面に有するハードコートフィルムを提供することにある。」

エ.「【0037】
硬化性化合物(A)は、(B)、(C)、(D)成分以外のものであり、分子内に2つ又は3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有し、且つウレタン結合及びフッ素を含有しない。硬化性化合物(A)は、ハードコート剤組成物における硬化性成分の主成分であり、硬化後に得られるハードコート層のマトリックスを形成するものである。
【0038】
ハードコート剤組成物は、硬化性化合物(A)として、硬化性化合物(A)を基準として、例えば、分子内に3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(At)65?100重量%、及び分子内に2つの活性エネルギー線重合性基を有する硬化性化合物(Ad)0?35重量%を含む。すなわち、2官能の硬化性化合物(Ad)は任意成分であり、含まれなくてもよい。
【0039】
活性エネルギー線硬化性化合物(At)は、分子内に3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有するので、硬化後に、それ自体でハードコート層として十分な硬度が得られる。一方、活性エネルギー線硬化性化合物(Ad)は、活性エネルギー線重合性基を分子内に2つのみしか有していないため、硬化後に、それ自体ではハードコート層として十分な硬度は得られにくい。そのため、硬化性化合物(At)を硬化性化合物(A)の主成分として用い、硬化性化合物(Ad)を用いる場合には、上記重量範囲内で用いることが好ましい。
【0040】
硬化性化合物(At)及び硬化性化合物(Ad)は、ウレタン結合及びフッ素を含有しておらず、それぞれ分子内に3つ以上の、又は分子内に2つの活性エネルギー線重合性基を有する化合物であれば、多官能モノマーもしくはオリゴマーであってもよく、特にその構造は限定されない。硬化性化合物(At)及び硬化性化合物(Ad)は、高いハードコート層の硬度を得るために、ウレタン結合及びフッ素を含有しない。硬化性化合物(At)及び硬化性化合物(Ad)が有する活性エネルギー線重合性基は、(メタ)アクリロイル基、及びビニル基の中から選択される。
【0041】
このような活性エネルギー線硬化性化合物(At)及び(Ad)のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ
(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。」

オ.「【0046】
本発明において用いるウレタンアクリレート(B)は、分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し且つフッ素を含有しない化合物である。ウレタンアクリレート(B)として、
・ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応生成物、
・ポリオールと、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応生成物、
が挙げられる。
【0047】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
前記ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート等のジイソシアネート類が挙げられる。
【0049】
前記ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジオール類;
これらジオール類と、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はジカルボン酸無水物類との反応生成物であるポリエステルポリオール;
ポリエーテルポリオール;ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0050】
本発明において好ましいウレタンアクリレート(B)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選ばれる水酸基含有(メタ)アクリレートと; ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートから選ばれるジイソシアネートとの反応生成物が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートとしてペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを用いると、分子内に2つのウレタン結合と6つの(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートPET-HDI-PETが得られる。ここで、HDIはヘキサメチレンジイソシアネートを表し、PETはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを表す。」

カ.「【0064】
前記第1のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)の具体例としては、次の化学構造式1又は2で示されるものが挙げられるが、同様に種々のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)を用いることができる。
【0065】
【化1】

【0066】
【化2】

【0067】
前記第1のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)の具体例としては、また、次の化合物
が挙げられる。
【0068】
CH_(2)=C(CH_(3))-COO-CH_(2)CH_(2)-NHCO-OCH_(2)-CF_(2)O-[CF_(2)CF_(2)O]l-[CF_(2)O]m-CF_(2)CH_(2)O-CONH-CH_(2)CH_(2)-OCO-C(CH_(3))=CH_(2)」

キ.「【0096】
また、本発明のハードコート剤組成物はさらに、必要に応じて、非重合性の希釈溶剤、有機フィラー、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤などを含んでいても差し支えない。」

ク.「【0098】
本発明のハードコート剤組成物を用いて、対象となる物体の表面にハードコート層を形成する。表面にハードコート層の付与が必要とされる物体としては、光情報媒体、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、及びタッチパネル、液晶ディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、ELディスプレー等の各種表示素子等が含まれる。
【0099】
特に、本発明のハードコート剤組成物を用いて、透明基材表面にハードコート層を有するハードコートフィルムを製造することができる。ハードコートフィルムは、例えば、上記したような各種表示素子の表面を保護するために用いられる。透明基材としては、光学用途に使用されている各種の樹脂製フィルムないしはシートが用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン、トリアセチルセルロースなどから選ばれる樹脂製フィルムないしはシートが用いられる。
【0100】
対象となる物体(あるいは透明基材)の表面上に前記ハードコート剤組成物を塗布し、未硬化のハードコート層を形成し、その後、紫外線、電子線、可視光等の活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、ハードコート層とする。
【0101】
塗布方法は、限定されることなく、スピンコート法、ディップコート法、グラビアコート法、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法等の各種塗布方法を用いるとよい。
【0102】
前記ハードコート剤組成物が非反応性希釈有機溶剤を含んでいる場合には、前記ハードコート剤組成物を塗布して未硬化のハードコート層を形成した後、非反応性有機溶剤を加熱乾燥により除去し、その後、活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、ハードコート層とする。希釈有機溶剤を用いてハードコート剤組成物を塗布して、有機溶剤を加熱乾燥により除去することにより、第1及び第2のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)及び(D)が未硬化のハードコート層の表面近傍により多く集まりやすくなり、硬化後のハードコート層の表面近傍により多くフッ素含有ポリエーテルが存在することになり、より大きな防汚性及び潤滑性向上効果が得られ易い。この際の加熱乾燥の温度としては、例えば、温度40℃以上100℃以下が好ましい。加熱乾燥の時間としては、例えば30秒以上8分以下、好ましくは1分以上5分以下、より好ましくは3分以上5分以下とする。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光などの活性エネルギー線の中から適切なものを選択して用いればよいが、好ましくは紫外線又は電子線を用いる。硬化後のハードコート層の膜厚は、目的に応じて適宜決定するとよく、一般的に0.5?20μm程度とする。」

ケ.「【0118】
[実施例1]
透明基材として、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(商品名:コスモシャインA-4300、東洋紡績(株)製)を用いた。
【0119】
(ハードコート剤の組成)
A成分:
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80重量部
B成分:
ウレタンアクリレートPET-HDI-PET 20重量部
C成分:
前記フッ素化ウレタンアクリレート2 0.05重量部
D成分:
前記フッ素化ウレタンアクリレート3 0.02重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100重量部
(非反応性希釈溶剤)
光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 5重量部
【0120】
上記透明基材の表面上に、上記組成の紫外線/電子線硬化型ハードコート剤をスピンコート法により塗布して被膜とし、大気中で60℃で3分間加熱することにより被膜内部の希釈溶剤を除去し、その後、照射強度80W/cm、ランプとの距離10cm、積算光量500mJ/cm^(2) にて紫外線を照射して、硬化後の厚さ10μmのハードコート層を形成した。
【0121】
[実施例2]
反応性基修飾コロイダルシリカE成分(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:40重量%、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾したもの)30重量部をさらに含むハードコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化後の厚さ10μmのハードコート層を形成した。
【0122】
(ハードコート剤の組成)
A成分:
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 80重量部
B成分:
ウレタンアクリレートPET-HDI-PET 20重量部
C成分:
前記フッ素化ウレタンアクリレート2 0.05重量部
D成分:
前記フッ素化ウレタンアクリレート3 0.02重量部
E成分:
反応性基修飾コロイダルシリカ(分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、不揮発分:40重量%、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾したもの) 30重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 100重量部
(非反応性希釈溶剤)
光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン) 5重量部
【0123】
[実施例3?10]
表1に示すように、C、D、E各成分の配合組成を変更したハードコート剤を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化後の厚さ10μmのハードコート層を形成した。」

コ.「【0128】
(防汚性及びその耐久性の評価:接触角)
ハードコートフィルムのハードコート表面の接触角(°)を測定した。測定液として純水又はトリオレインを用い、協和界面科学(株)製の接触角計LA-X型を用いて、それぞれ静止接触角を測定した。測定環境は、温度20℃、相対湿度60%であった。まず、初期のハードコート表面の接触角を測定した。
【0129】
次に、防汚耐久性(耐擦傷性)の評価として、耐スチールウール試験を行った。
初期のハードコート表面をスチールウール(#0000)で荷重500g/cm^(2) にて500往復擦った。その後に、上記と同条件で純水を用いて接触角を測定した。」

サ.「【0141】
【表1】



そして、上記記載事項を技術常識に照らし、下線部に着目すれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

「透明基材と、前記透明基材上のハードコート層とを含むハードコートフィルムであって、前記ハードコート層は、
分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有し且つフッ素を含有しないウレタンアクリレート(B)と、
パーフルオロポリエーテル基を含む分子鎖の両末端のそれぞれに、ウレタン結合を介して活性エネルギー線反応性基を有する第1のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)と、
パーフルオロポリエーテル基を含む分子鎖の片方の末端にウレタン結合を介して活性エネルギー線反応性基を有し且つ他方の末端には活性エネルギー線反応性基を有しない第2のフッ素含有ポリエーテル化合物(D)と、
分子内に2つ又は3つ以上の活性エネルギー線重合性基を有し、且つウレタン結合及びフッ素を含有しない硬化性化合物(A)とを含み、
前記(C)成分は、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100重量部に対して、0.05?0.7重量部含まれ、
前記(D)成分は、前記(C)成分と前記(D)成分の重量比C/Dが1/5?5/2の範囲内となるように含まれており、
前記(B)成分は、前記(A)成分100重量部に対して、5?50重量部含まれているハードコート剤組成物
の硬化物を含むハードコートフィルムであり、
また、ハードコート剤組成物はさらに、紫外線吸収剤を含んでいても差し支えないものであり、
タッチパネルの表面を保護するために用いられるハードコートフィルムであり、
透明基材としては、光学用途に使用されている各種の樹脂製フィルムが用いられ、
透明基材の表面上に前記ハードコート剤組成物を塗布し、未硬化のハードコート層を形成し、その後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、ハードコート層とする
ハードコートフィルム。」

2.刊行物2には、図面とともに、次の記載がある。
ア.「【請求項1】
基材シートと、前記基材シートの少なくとも一方の面に形成されたハードコート層とを備えたハードコートフィルムであって、
前記ハードコート層が、末端に(メタ)アクリロイル基を有するフッ素系化合物、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン系化合物、多官能(メタ)アクリルモノマー、光重合開始剤を含むハードコート層形成用組成物を活性エネルギー線で硬化した硬化物であって、
前記ハードコートフィルムを蛍光X線(XRF)解析して得られたフッ素原子およびケイ素原子のKα線のピーク強度をそれぞれaおよびbとしたとき、
0.01≦a/b≦0.5・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
を満たすハードコートフィルム。」

イ.「【0010】
本発明では、指紋や皮脂、ファンデーション等の汚れが、付着し難く、拭取りやすく、かつ目立ち難い防汚性能を有し、スチールウールで多数回擦った後でも擦過傷が入らず防汚性能が高い表面磨耗耐久性、良好な表面の指滑り性、高い撥水性、かつ低干渉縞性を有する高機能ハードコート層が得られる。」

ウ.「【0030】
本発明のハードコート層形成用組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線には、電子線、紫外線、可視光線、γ線等の電離性放射線などがある。これらの中では紫外線を用いることが好ましい。」

エ.「【0036】
本発明のハードコート層12は、1?15μm、好ましくは3?10μmの厚さに形成する。1μmを下回ると十分なハードコート性能が得られず、15μmを上回るとコスト高となる。さらに、本発明のハードコート層12は表面凹凸が0.5μm以下であることが好ましい。表面凹凸が0.5μm以上であると、ハードコート層表面の表面反射光とハードコート層/基材シート界面の界面反射光の干渉により発生する虹模様すなわち干渉縞が目立ち外観上の問題となる。
本発明のハードコート層12は、安定した防汚性を得るために、ぬれ張力試験用混合溶液(和光純薬工業株式会社製)で測定した表面エネルギーが30mN/m以下、好ましくは25.4mN/m以下となると良い。
本発明のハードコート層形成用組成物には、目的の機能を損なわない範囲で必要に応じ様々な材料を添加することが可能である。例えば、紫外線吸収剤、光安定化剤、無機および有機粒子、中空粒子、帯電防止剤など添加することができる。
以上のことは、図1のハードコート層12に限らず、本発明の図2および図3のハードコート層22および23に対しても同様に当てはめることができる。
【0037】
(積層体)
本発明の積層体の一例および他の一例を図2および図3に示す。
前記ハードコートフィルム1は、その裏面に粘着層23および33を形成することによって、タッチパネルディスプレイ等に貼付することによって表面を保護することができる積層体とすることができる。
粘着層23および33は、例えば天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、エチレン-アクリル共重合系粘着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合系粘着剤などが挙げられる。また、溶剤系、エマルジョン系、水系いずれであっても良い。なかでもタッチパネルディスプレイ等の光学用途に使用する場合は透明度、耐光性、耐久性、コスト等の観点からアクリル溶剤系の粘着剤が特に好ましい。
粘着剤には必要に応じて他の助剤が添加されても良い。他の助剤としては、増粘剤、pH調整剤、タッキファイヤ、バインダ、架橋剤、粘着性微粒子、消泡剤、防腐剤、顔料、無機充填材、安定剤、濡れ剤、湿潤剤などが挙げられる。」

オ.「【0043】
<実施例1>
基材シートとして、厚さ125μmのPETフィルム(商品名TA010、東洋紡績(株)製)を用い、この基材シート上にハードコート層形成用組成物(A)をバー塗工した。ハードコート層形成用組成物(A)は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するフッ素系化合物(商品名オプツールDAC、ダイキン工業(株)製)を1質量部、末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系化合物(A)を0.2質量部、多官能(メタ)アクリレートとして、6官能アクリレート(商品名DPHA、ダイセル・サイテック(株)製)64.1質量部、ジエチレングリコールジアクリレート(商品名SR230、サートマー社製)を27.5質量部、光重合開始剤(商品名IRGACURE184、BASF社製)を4質量部、光安定化剤(TINUVIN152、BASF社製)を4質量部、希釈溶剤として、MIBKを50.8質量部、シクロヘキサノンを50.8質量部からなる塗料である。その後、80℃60秒加熱乾燥し、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、160W/cm、ランプ高さ13cm、ベルトスピード10m/min、2pass、窒素雰囲気下で紫外線照射して厚さ10μmのハードコート層を硬化形成することによって、ハードコートフィルムを得た。
前記シリコーン化合物(A)は次のようにして得た。イソホロンジイソシアネート230部を80℃に加熱し、2-ヒドロキシエチルアクリレート120部およびハイドロキノン0.135部を空気雰囲気下で2時間かけて添加した後、80℃3時間反応させて、分子中にイソシアネート基とアクリロイル基を有する化合物(I)を得た。
次いで、片末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(商品名サイラプレーンFM-0721、チッソ社製)15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート70部、ブチルメタクリレート15部、メチルエチルケトン200部を、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃に加熱し、アゾビスイソブチロニトリル3部を加えて、80℃2時間反応させ重合した。この重合液に前記化合物(I)を205部、オクチル酸錫1部をMEK20部で溶解したものを約10分間かけて滴下し、滴下後2時間反応させ化合物(II)を得た。化合物(II)にシクロヘキサノンを添加し、シクロヘキサノンと同質量のMIBKを添加して固形分率が20%になるようにしてシリコーン化合物(A)を得た。得られたシリコーン化合物(A)のGPC(ポリスチレン換算)による質量平均分子量は20,000であった。
得られたハードコートフィルムを次に示す方法でそれぞれ評価した
【0044】
(ハードコート母材のスチールウール擦傷性(略して、母材擦傷性という。))
ハードコート層形成用組成物から、末端に(メタ)アクリロイル基を有するフッ素系化合物、末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系化合物を除いた組成物を、前記本発明のハードコートフィルムを得るのと同様の方法で、塗工、硬化させた(この硬化物をハードコート母材と言う。)。
得られたハードコート母材フィルムに、ノンキャリア両面粘着フィルム(商品名CCL/D1/T3T3、新タック化成(株))のセパレートフィルムを剥がして粘着層を転写し、粘着層を介して、鏡面光沢を持つ黒アクリル板に貼付した。ハードコート母材に#0000番のスチールウールをのせ、荷重200g/cm^(2)で、距離9cmを、150回往復して擦った。擦った後に蛍光灯等のランプにかざして、擦った部分に傷が入っていないかを観察した。傷がない場合を○、傷がある場合を×とした。

・・・中略・・・

【0048】
(接触角、転落角)
協和界面科学株式会社製の接触角測定装置(型番CA-X)を用いて、測定対象であるハードコートフィルムの表面に、2μlの純水を一滴滴下させ、10秒間経過後にCCDカメラによって得られた水滴形状の画像処理により、接触角を求めた。転落角は、接触角測定と同様に測定対象であるハードコートフィルム表面に100μlの純水を一滴滴下し、測定サンプルを傾け、液滴の後退接触角部分が動き出す時の傾斜角度を求めた。ハードコートフィルムは前述の方法で黒アクリル板に貼付したものを測定サンプルとし、測定前に除電ブロアで測定サンプルの静電気を十分除去したあとに測定を行った。接触角が100°以上であると撥水性能が高く、転落角が10°以下であると表面に乗った水が簡単流れて切れることから防水性能に優れる表面といえる。
【0049】
(擦傷性、擦傷処理後接触角)
母材擦傷性の評価方法と同様にしてハードコートフィルムの擦傷性を評価した。また、擦傷処理後の接触角を前述の接触角測定方法で測定した。擦傷性は表面の傷の入りやすさの指標となる。擦傷後の接触角が擦傷前と変化がないということは、表面の防汚性能の耐擦過性が高いといえる。」

カ.「【0052】
<実施例2>
基材シートとして、厚さ125μmのPETフィルム(商品名TA010、東洋紡績(株)製)を用い、この基材シート上にハードコート層形成用組成物(B)をバー塗工した。ハードコート層形成用組成物(B)は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するフッ素化合物(商品名オプツールDAC、ダイキン工業(株)製)を1質量部、末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン化合物(商品名サイラプレーンFM-0711、チッソ(株)製)を0.1質量部、多官能(メタ)アクリレートとして、6官能アクリレート(商品名DPHA、ダイセル・サイテック(株)製)64.2質量部、ジエチレングリコールジアクリレート(商品名SR230、サートマー社製)を27.5質量部、光重合開始剤(商品名IRGACURE184、BASF社製)を4質量部、光安定化剤(TINUVIN152、BASF社製)を4質量部、希釈溶剤として、MIBKを50.4質量部、シクロヘキサノンを50.4質量部から成る塗料である。その後、80℃60秒加熱乾燥し、高圧水銀ランプ紫外線照射機(アイグラフィックス社製)を用いて、160W/cm、ランプ高さ13cm、ベルトスピード10m/min、2pass、窒素雰囲気下で紫外線照射して厚さ10μmのハードコート層を硬化形成することによって、ハードコートフィルムを得た。
得られたハードコートフィルムのハードコート層と反対側の基材面に、粘着剤をアプリケータ塗工した。粘着剤は、アクリル系接着剤(商品名KP2514、日本カーバイド工業(株)製)を100質量部、イソシアネート系架橋剤(商品名CK-117、日本カーバイド工業(株)製)を1質量部、希釈溶剤として酢酸エチルを67.4質量部から成る塗料である。その後、100℃120秒加熱乾燥し、セパレートフィルム(商品名38RL-07(2)、王子特殊紙(株)製)と貼り合わせ、23℃50%の環境下で1週間の架橋反応エージングを行うことによって、積層体を得た。接着層の厚さは10μmであった。

・・・中略・・・

【0058】
(擦傷性、擦傷処理後接触角)
得られた積層体のセパレートフィルムをはがし、ハードコートフィルムを粘着層を介して、鏡面光沢を持つ黒アクリル板に貼付し、ハードコート表面に実施例1の母材擦傷性と同じスチールウールをのせて、実施例1の母材擦傷性評価と同様な方法で評価した。また、擦傷処理後の接触角を実施例1と同様の方法で評価した。」

キ.「【0066】
【表1】



3.刊行物3には、次の記載がある。
ア.「【請求項1】
下記式(1)
【化1】


(式中、Rf基は-(CF_(2))_(d)-(OC_(2)F_(4))_(e)(OCF_(2))_(f)-O(CF_(2))_(d)-であり、Aは末端が-CF_(2)Hである1価のフッ素含有基であり、Qは2価の有機基であり、Zはシロキサン結合を有する2?8価のオルガノポリシロキサン残基であり、Rは炭素数1?4のアルキル基またはフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは1?7の整数、cは1?20の整数であり、αは0または1であり、dはそれぞれ独立に0または1?5の整数、eは0?80の整数、fは0?80の整数であり、かつ、e+f=5?100の整数であり、繰り返し単位はランダムに結合されていてよい)
で表される直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、片末端加水分解性ポリマーと称す)と、
下記式(2)
【化2】


(式中、Rf、Q、Z、R、X、a、b、c、αは上記式(1)と同じである)
で表される直鎖状フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー(以下、両末端加水分解性ポリマーと称す)を含むフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物であって、
片末端加水分解性ポリマーと両末端加水分解性ポリマーとの合計モルに対する両末端加水分解性ポリマーの含有量が0.1モル%以上10モル%未満であることを特徴とするフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物。

・・・中略・・・

【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物及び/又は該フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物の部分加水分解縮合物を含有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物を含有する表面処理剤。

・・・中略・・・

【請求項11】
請求項7に記載の表面処理剤で処理されたタッチパネルディスプレイ。」

イ.「【0010】
タッチパネルディスプレイの表面に被覆する撥水撥油層は、傷付き防止性及び指紋拭取り性の観点から動摩擦係数が低いことが望ましく、耐擦傷性に優れ、かつ動摩擦係数が低い撥水撥油層の開発が要求されている。本発明者らは先に、一方の片末端にフッ素原子を有し他方の片末端に加水分解性基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーと、両末端に加水分解性基を有するフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの混合物より成るフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物を発明したが(特願2009-247032)、該組成物から形成される膜は耐擦傷性が十分ではない。そこで本発明は、耐擦傷性及び低動摩擦性に優れた撥水撥油層を形成することができるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】

・・・中略・・・

【0014】
本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物の硬化物から形成される膜は動摩擦係数が低く、撥水撥油性及び耐摩耗性に優れ、特に耐擦傷性に優れる。従って、本発明のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物を含有する表面処理剤で処理することによって、各種物品に優れた撥水撥油性、低動摩擦性、耐摩耗性及び耐擦傷性を付与することができる。」

ウ.「【0051】
本発明の表面処理剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の表面処理剤は前記基板に撥水撥油性、低動摩擦性、及び耐擦傷性を付与することができる。特に、SiO_(2)処理されたガラスまたは石英基板の表面処理剤として好適に使用することができる。
【0052】
本発明の表面処理剤で処理される物品としては、例えばカーナビゲーション、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、PDA、ポータブルオーディオプレーヤー、カーオーディオ、ゲーム機器、眼鏡レンズ、カメラレンズ、レンズフィルター、サングラス、胃カメラ等の医療用器機、複写機、PC、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、保護フイルム、及び反射防止フイルム、など光学物品が挙げられる。本発明の表面処理剤は、各種物品に指紋及び皮脂が付着するのを防止し、さらに傷つき防止性を付与する事ができる。特に、タッチパネルディスプレイ、及び反射防止フイルムの表面に撥水撥油層を形成するための処理剤として有用である。」

エ.「【0081】
表面処理剤の調製及び硬化被膜の形成
実施例1?6及び比較例1?9のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー組成物または化合物を、濃度20wt%になるように1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンに溶解させて表面処理剤を調製した。最表面にSiO_(2)を10nm処理したガラス(コーニング社製 Gorilla)に、各表面処理剤10mgを真空蒸着し(処理条件は、圧力:9.0×10^(-4)Pa、温度:740℃)、40℃、湿度80%の雰囲気下で2時間硬化させて硬化被膜を形成した。
【0082】
得られた硬化被膜を下記の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0083】
[撥水撥油性の評価]
接触角計DropMaster(協和界面科学社製)を用いて、硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)及びオレイン酸に対する接触角(撥油性)を測定した。

・・・中略・・・

【0085】
[耐摩耗性の評価]
ラビングテスター(新東科学社製)を用いて、下記に示す各条件で硬化被膜の表面を擦った後の、硬化被膜の水に対する接触角(撥水性)を評価した。試験環境条件は25℃、
湿度40%である。

・・・中略・・・

【0088】
3.耐スチールウール摩耗性
スチールウール:BONSTAR#0000(日本スチールウール株式会社製)
移動距離(片道):30mm
移動速度:1800mm/分
荷重:1kg/cm^(2)
擦り回数:10,000回
【0089】
【表2】



4.刊行物4には、図面とともに、次の記載がある。
ア.「【請求項1】
下記一般式(1a)および(1b)のいずれか:
【化1】

(これら式中、Rf^(1)は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1?16のアルキル基を表し、
a、b、cおよびsはそれぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、cおよびsの和は少なくとも1であり、a、b、c、sを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、
dおよびfは0または1であり、
eおよびgは0以上2以下の整数であり、
mおよびlは1以上10以下の整数であり、
Xは水素原子またはハロゲン原子を表し、
Yは水素原子または低級アルキル基を表し、
Zはフッ素原子または低級フルオロアルキル基を表し、
Tは-NR^(2)_(2)または-NHR^(2)(式中、R^(2)は、置換または非置換の炭素数1?22のアルキル基を表し、2つのR^(2)は互いに結合して環構造を形成してもよい)で表される置換アミノ基を表し、
R^(1)は炭素数1?22のアルキル基、炭素数1?22のアルコキシ基または水酸基を表し、
nは1以上3以下の整数である。)
で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シラザン化合物。

・・・中略・・・

【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル基含有シラザン化合物を含む、表面処理剤。

・・・中略・・・

【請求項8】
基材と、該基材の表面に、請求項1?4のいずれかに記載のパーフルオロポリエーテル基含有シラザン化合物または請求項5?7のいずれかに記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
【請求項9】
前記物品が光学部材である、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記基材が、ガラスまたは透明プラスチックである、請求項8または9に記載の物品。」

イ.「【0008】
本発明は、撥水性、撥油性、防汚性を有し、かつ、高い摩擦耐久性を有する層を形成することのできる新規なパーフルオロポリエーテル基含有シラザン化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、かかるパーフルオロポリエーテル基含有シラザン化合物を使用して得られる表面処理剤等を提供することを目的とする。」

ウ.「【0086】
上記のようにして、基材の表面に、表面処理剤の膜に由来する表面処理層が形成され、本発明の物品が製造される。これにより得られる表面処理層は、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、摩擦耐久性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0087】
これによって得られる表面処理層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray)ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。」

エ.「【0099】
(評価)
以上の実施例および比較例にて基材表面に形成された表面処理層について、水の静的接触角を測定した。水の静的接触角は、接触角測定装置(協和界面科学社製)を用いて、水1μLにて実施した。
【0100】
まず、初期評価として、表面処理層形成後、その表面に未だ何も触れていない状態で、水の静的接触角を測定した(摩擦回数 ゼロ回)。
【0101】
その後、摩擦耐久性評価として、スチールウール摩擦耐久性評価を実施した。具体的には、表面処理層を形成した基材を水平配置し、スチールウール(番手♯0000、寸法10mm×10mm×5mm)を表面処理層の露出上面に接触させ、その上に1000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態でスチールウールを140mm/秒の速度で往復させた。往復回数1000回毎に水の静的接触角(度)を測定した(接触角の測定値が100度未満となった時点で評価を中止した。
【0102】
結果を表1および図1に示す(表中、記号「-」は測定せず)。
【表1】



5.刊行物5には、図面とともに、次の記載がある。
ア.「【請求項1】
少なくとも一面側にプライマー層を有するポリエチレンテレフタレート基材、並びに粒子表面にアクリロイル基との架橋反応性を有する反応性官能基aを有する平均1次粒径1?100nmの反応性シリカ微粒子、及び1分子中にアクリロイル基を6つ以上有し、重量平均分子量が1000?10000のウレタンアクリレートを含み、
当該反応性シリカ微粒子を硬化性樹脂組成物の全固形分に対して25?65重量%含み、且つ、
当該ウレタンアクリレートを硬化性樹脂組成物の全バインダー成分に対して70重量%以上含む、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を準備し、
当該一面側のプライマー層に、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とし、
当該塗膜に300?600mJ/cm^(2)の照射量で光照射し、当該塗膜を硬化させハードコート層を形成して得られることを特徴とする、光学シート。」

イ.「【0028】
(プライマー層)
本発明においては、PET基材は少なくとも一面側にプライマー層を有する。
本発明においてプライマー層とは、PET基材とハードコート層の密着性向上を第一目的として設ける層である。プライマー層はPET基材とハードコート層との屈折率差を低減し、光学シートとした際の干渉縞の発生を抑制することができる層であることが好ましい。
【0029】
プライマー層の材料は従来公知のものを適宜選択して用いて良く、例えば、熱硬化性又は熱可塑性のポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0030】
プライマー層の厚さは要求される性能に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、10?1000nmとすることができる。
【0031】
また、本発明のPET基材には本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記プライマー層を設ける他、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行っても良い。
【0032】
プライマー層を有するPET基材の市販品としては、東レ(株)製:U46、U48、QTA1、東洋紡績(株)製:A4300、帝人(株)製:KD86、KD86W、KDL8W等が挙げられる。」

6.刊行物6には、次の記載がある。
ア.「【請求項3】
基材の少なくとも一方の面にハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、少なくとも一方の面のハードコート層面のオレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項4】
基材の両面にハードコート層を設けたハードコートフィルムにおいて、一方の面のハードコート層のオレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であり、他方の面のハードコート層のオレイン酸接触角が15度以上であり、かつ水接触角が80度以上であることを特徴とする請求項3記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
ハードコートフィルムのハードコート層面に熱転写印刷法により加飾を行なった加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムとして請求項1記載のハードコートフィルムを用い、表面張力が35mN/m以上であるハードコート層面に熱転写印刷法により加飾し、熱転写リボンとして基材上にアクリル系樹脂を含有する着色層を設けた熱転写リボンを用いることを特徴とする加飾ハードコートフィルム。
【請求項6】
ハードコートフィルムのハードコート層面に熱転写印刷法により加飾を行なった加飾ハードコートフィルムにおいて、ハードコートフィルムとして請求項3記載のハードコートフィルムを用い、オレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であるハードコート層面に熱転写印刷法により加飾し、熱転写リボンとして基材上にアクリル系樹脂を含有する着色層を設けた熱転写リボンを用いることを特徴とする加飾ハードコートフィルム。」

イ.「【0003】
タッチパネル機能を具備したモバイル機器に該ハードコートフィルムを貼着する場合、タッチパネルの製造工程中に加わる加熱処理工程によってハードコートフィルムに反りが生じてしまう。これは加熱により基材であるPETフィルムが収縮するのと同時にハードコート層も収縮するからである。つまり片面のみにハードコートをコートしたハードコートフィルムを用いると、加熱工程で発生したハードコートフィルムの反りが、タッチパネルの機能に悪影響を及ぼす可能性が高い。そのため、タッチパネル機能を具備したモバイル機器のディスプレイ部の最表面に貼着するハードコートフィルムは、通常基材の両面をハードコート処理したフィルムであることが一般的である。よって加飾する場合には、スクリーン印刷法などによって裏側のハードコート面に直接印刷する方法が用いられている。」

ウ.「【0011】
本発明のハードコート層に用いられる化合物は電離放射線により重合する化合物から主に形成されていることが好ましく、ラジカル重合反応を形成する(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、カチオン重合反応を形成する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては分子内に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物を意味し、モノマーであっても、オリゴマーであってもよい。」

エ.「【0020】
さらに、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、界面活性剤、有機系潤滑剤、有機系微粒子、無機系微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料、帯電防止剤などを含有していてもよい。」

オ.「【0023】
ハードコートフィルムに加飾行うためには、少なくとも一方の面にスクリーン印刷法、グラビア印刷法、パッド印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、熱転写印刷法等を用いて加飾印刷を行うが、なかでも熱転写印刷法は、少ロット生産性、オンデマンド性、印刷の多様性等が優れているため、特に好ましい。熱転写印刷法によりハードコート面に印刷する場合、表面張力が35mN/m以上であるハードコート層に印刷すると印刷適性が優れる。表面張力が35mN/m未満のハードコート層に熱転写印刷すると、印字の欠けなどの印刷不良が生じやすく、好ましくない。同様に熱転写印刷法によりハードコート層に印刷する場合、オレイン酸接触角が15度未満であり、かつ水接触角が80度未満であるハードコート面に印刷すると印刷適性が優れる。オレイン酸接触角が15度以上であり、かつ水接触角が80度以上であるハードコート層に印刷するすると、印字の欠けなどの印刷不良が生じやすく、好ましくない。」

カ.「【0044】
以上の様にして作製したハードコートフィルムを熱転写プリンタを用いて、前記熱転写リボンで印字を行った。評価項目および評価基準は以下の通りである。
1.表面張力
ヌレ試薬を用いて、ハードコート印刷面側のヌレ指数を測定し、表面張力とした。
2.接触角
ハードコート印刷面側のオレイン酸および水接触角を測定した。測定器は、協和界面科学(株)製のCA-D型を使用した。
3.ハードコートの干渉ムラ
非印刷面側のハードコート層の干渉ムラレベルを以下の基準で評価した。
○:干渉ムラ無し
△:大きなマトリックスの干渉ムラが見える
×:細かいマトリックスの干渉ムラが見える
4.熱転写印刷適性
熱転写プリンタ(自社製)を使用し、スピード25mm/sec、印字エネルギー40mj/mm^(2)で印字した際の、インクの転写性を以下の基準で評価した。
[インクのハードコート面への転写性]
5:特に良好
4:良好
3:印字の欠けがみられる
2:印字の欠けが大きい
1:転写不可
[文字のにじみ]
5:特に良好
4:良好
3:若干にじみが見られる
2:にじみが大きい
1:文字が完全につぶれる
上記方法に従って測定結果および評価結果を表1にまとめた。
【0045】
【表1】



第5.当審の判断
1.申立理由1について
(1)本件発明1について
(1-1)対比
本件発明1と、刊行物1発明とを対比する。
ア.刊行物1発明の「タッチパネルの表面を保護するために用いられるハードコートフィルム」は、本件発明1の「タッチパネルのタッチ面に装着されるタッチパネル用保護フィルム」に相当する。

イ.刊行物1発明の「透明基材」は、「光学用途に使用されている各種の樹脂製フィルムが用いられ」るものであるから、本件発明1の「基材フィルム」に相当し、刊行物1発明の「ハードコート層」は、「透明基材の表面上に前記ハードコート剤組成物を塗布し、未硬化のハードコート層を形成し、その後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して未硬化層を硬化して、ハードコート層と」したものであり、ハードコート剤組成物は、「パーフルオロポリエーテル基を含む分子鎖の両末端のそれぞれに、ウレタン結合を介して活性エネルギー線反応性基を有する第1のフッ素含有ポリエーテル化合物(C)」等を含み、「さらに、紫外線吸収剤を含んでいても差し支えないもの」であるから、刊行物1発明の「紫外線吸収剤」を含ませた「ハードコート剤組成物」からなる「透明基材上のハードコート層」は、本件発明1の「基材フィルム上に、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層」に相当する。

したがって、本件発明1と刊行物1発明との一致点・相違点は次のとおりである。

〈一致点〉
「タッチパネルのタッチ面に装着されるタッチパネル用保護フィルムであって、基材フィルム上に、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層を備えた、
タッチパネル用保護フィルム。」

〈相違点〉
本件発明1では、「紫外線硬化性樹脂層表面をスチールウール#0000を使用し、荷重250g/cm^(2)、移動速度60mm/秒、往復移動距離120mmで1000往復させる」「スチールウール摩耗性試験」の「後の紫外線硬化性樹脂層表面における水接触角が95度以上である」のに対して、刊行物1発明では、紫外線吸収剤を含ませたハードコート剤組成物からなるハードコート層表面における水接触角は特定されていない点。

(1-2)判断
〈相違点〉について検討する。
ア.刊行物1の上記摘記事項ケ.?サ.に摘記したように、刊行物1には、紫外線吸収剤を含まないハードコート剤組成物からなるハードコート表面に対して、初期のハードコート表面をスチールウール(#0000)で荷重500g/cm^(2) にて500往復擦る耐スチールウール試験を行った後に、純水を用いて接触角を測定した測定結果が、106.0?109.5となることも記載されている。
また、上記「第4.」の「2.」-「4.」の摘記事項に記載されるように、刊行物2には、タッチパネルディスプレイ等に貼り付けることによって表面を保護するハードコートフィルムであり、擦傷性を評価することにより表面の防汚性能の耐擦過性を評価するための接触角測定方法である、ハードコート母材に#0000番のスチールウールをのせ、荷重200g/cm^(2)で、距離9cmを、150回往復して擦った後の水接触角を測定した結果が、103?110°である、防汚性能が高い表面摩耗耐久性を有する高機能ハードコート層を有するハードコートフィルムが、刊行物3には、タッチパネルディスプレイ、及び反射防止フィルムの表面に撥水撥油層を形成するための表面処理剤を硬化させて形成した硬化被膜であり、スチールウール:BONSTAR#0000(日本スチールウール株式会社製)、移動距離(片道):30mm、移動速度:1800mm/分、荷重:1kg/cm^(2)、擦り回数:10,000回で硬化被膜の表面を擦った後の、硬化被膜の水に対する接触角が、110?111°の、撥水撥油性、耐摩耗性、耐擦傷性を付与した硬化被膜が、刊行物4には、表面処理剤の膜に由来する表面処理層が形成されたタッチパネルシートであり、表面処理層を形成した基材を水平配置し、スチールウール(番手♯0000、寸法10mm×10mm×5mm)を表面処理層の露出上面に接触させ、その上に1000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態でスチールウールを140mm/秒の速度で往復させ、往復回数1000回毎に水の静的接触角(度)を測定し(接触角の測定値)が100度未満となった時点で評価を中止するスチールウール摩擦耐久性評価の結果、往復回数が10000回以上である、防汚性を有し、かつ高い摩擦耐久性を有する表面処理層が形成されたタッチパネルシートがそれぞれ記載されている。
しかしながら、刊行物1-刊行物4に記載された「スチールウール摩耗性試験」の条件は、本件発明1の「スチールウール#0000を使用し、荷重250g/cm^(2)、移動速度60mm/秒、往復移動距離120mmで1000往復させる」という条件とは異なるものであり、刊行物1-刊行物4の記載より、直ちに、「紫外線硬化性樹脂層表面をスチールウール#0000を使用し、荷重250g/cm^(2)、移動速度60mm/秒、往復移動距離120mmで1000往復させる」「スチールウール摩耗性試験」の「後の紫外線硬化性樹脂層表面における水接触角が95度以上である」という、本件発明1の上記相違点に係る構成が、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。

イ.また、本件発明1は、「紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物」に対して、「紫外線硬化性樹脂層表面をスチールウール#0000を使用し、荷重250g/cm^(2)、移動速度60mm/秒、往復移動距離120mmで1000往復させる」「スチールウール摩耗性試験」を行った後の「紫外線硬化性樹脂層表面における水接触角が95度以上である」ものであるが、刊行物1-刊行物4には、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物からなる樹脂層が、スチールウールを用いた試験後の水接触角が95度以上となることは記載されておらず、刊行物1-刊行物4の記載より、本件発明1の上記相違点に係る構成とすることが、当業者が容易になし得ることであるとはいえない。

ウ.そして、本件明細書に「【0007】しかし、保護フィルムの耐候性を向上させるために、紫外線硬化性樹脂層に紫外線吸収剤を含有させると、防汚耐久性が低下する傾向にある。【0008】従って、本発明の目的は、上記従来技術の問題に鑑み、耐候性および防汚耐久性が共に改善されたタッチパネル用保護フィルムを提供することにある。」、「【0013】スチールウール摩耗性試験後の紫外線硬化性樹脂層表面の水接触角が95度以上であるとは、即ち、タッチパネルの長期間使用に十分に耐え得る防汚耐久性を有することを意味する。」と記載されるように、本件発明1は、紫外線吸収剤を含有させた紫外線硬化樹脂層の防汚耐久性が改善されるという格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、当業者が刊行物1-刊行物4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

なお、刊行物5には、紫外線吸収剤を添加することは記載されておらず、また、刊行物6及び周知技術Aの例示として提示された特開2011-39978号公報、特開2013-75955号公報には、紫外線吸収剤を添加することは記載されているものの、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物からなる樹脂層が、スチールウールを用いた試験後の水接触角が95度以上となることは記載されていない。

(2)本件発明2-10について
本件発明2-10は、本件発明1を直接又は間接的に引用し、本件発明1をさらに限定したものであるので、本件発明1と同じ理由により、当業者が刊行物1-刊行物4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、刊行物5には、紫外線吸収剤を添加することは記載されておらず、刊行物6には、紫外線吸収剤を添加することは記載されているものの、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物からなる樹脂層が、スチールウールを用いた試験後の水接触角が95度以上となることは記載されていないから、本件発明2-10は、当業者が刊行物1-刊行物6に記載された発明及び周知技術Aに基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本件特許発明1-10は、刊行物1-刊行物6の発明及び周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものでない。

2.申立理由2について
(1)申立理由2の1について
ア.本件明細書の「【0025】紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層の防汚耐久性を向上させるには、紫外線硬化性樹脂組成物に、一分子中にフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する重合性フッ素化合物(以下、「重合性フッ素化合物」と略記する)を含有させることが好ましい。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有させることも好ましい。より好ましくは、紫外線硬化性樹脂組成物に、重合性フッ素化合物と多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の両方を含有させることである。」、「【0026】重合性フッ素化合物は、一分子中にフッ素原子とエチレン性不飽和基を有する。重合性フッ素化合物の一分子中におけるフッ素原子の数は、防汚性を高めるという観点から、3個以上が好ましく、4個以上がより好ましく、5個以上が更に好ましく、6個以上が特に好ましい。フッ素原子の数が多くなりすぎると、紫外線硬化性樹脂層の塗布性や密着性が低下することがあるため、上限のフッ素原子数は25個以下が好ましく、20個以下がより好ましく、17個以下が特に好ましい。」、「【0045】紫外線硬化性樹脂組成物における重合性フッ素化合物の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して0.01?10質量%の範囲が好ましく、0.1?7質量%の範囲がより好ましく、0.5?5質量%の範囲が特に好ましい。重合性フッ素化合物の含有量が0.01質量%未満では、十分な防汚耐久性が得られないことがあり、一方、10質量%を超えると耐擦傷性が低下することがある。本発明において、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量は、溶剤を除く不揮発成分の合計量を意味する。」、「【0046】紫外線硬化性樹脂組成物における多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して20?80質量%の範囲が好ましく、30?70質量%の範囲がより好ましく、40?60質量%の範囲が特に好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量が20質量%未満では、十分な耐擦傷性が得られないことがあり、一方、80質量%を超えると耐候性(黄変などの着色防止)が低下することがある。」、「【0055】紫外線吸収剤の添加量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して0.1?10質量%の範囲が好ましく、0.5?8質量%の範囲がより好ましく、1?5質量%の範囲が特に好ましい。紫外線吸収剤の添加量が0.1質量%未満では、十分な耐候性が得られないことがあり、一方、10質量%を越えると耐擦傷性や防汚耐久性が低下することがある。」なる記載を考慮すると、
本件発明1は、タッチパネル用保護フィルムの紫外線硬化性樹脂層を、紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化性樹脂組成物に、重合性フッ素化合物と多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の両方を含有させ、重合性フッ素化合物は、一分子中にフッ素原子とエチレン性不飽和基を有するものであり、当該重合性フッ素化合物の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して0.01?10質量%の範囲に、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して20?80質量%の範囲に、紫外線吸収剤の添加量は、紫外線硬化性樹脂組成物の固形分総量100質量%に対して0.1?10質量%の範囲にした紫外線硬化性樹脂組成物で形成することにより得られるものと理解できる。
また、本件明細書段落【0136】-【0151】、【0161】の【表1】には、上記紫外線硬化性樹脂組成物により作成した、所定条件のスチールウール摩耗性試験後の水接触角が95度以上である保護フィルムの実施例が記載されている。
そうすると、本件発明1-10は、上記紫外線硬化性樹脂組成物で形成した紫外線硬化性樹脂層を有するタッチパネル用保護フィルムについて、所定条件のスチールウール摩耗性試験後の水接触角が95度以上であるか否かを確認することで、過度の試行錯誤を要することなく、当業者が実施できるものと理解できる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1-10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない、とはいえない。

イ.なお、申立人は、本件明細書段落【0060】には、「紫外線硬化性樹脂層(紫外線硬化性樹脂組成物)は、平均粒子径が2μm以上の粒子を実質的に含有しないことが好ましく、特に平均粒子径が1μm以上の粒子を実質的に含有しないことが好ましい。このような平均粒子径が比較的大きい粒子が紫外線硬化性樹脂層中に存在すると、紫外線硬化性樹脂層表面に凹凸が形成されることがあり、耐擦傷性や防汚耐久性が低下することがある。」と記載されているのに対し、本件明細書には、平均粒子径が2μm以上の粒子を紫外線硬化性樹脂層中に含有する実施例が記載されておらず、紫外線硬化性樹脂層が平均粒子径2μm以上の粒子を含有する場合に、如何なる手段を採用すれば本件発明1で特定している機能・特性を付与し得るかについて何ら記載されていないので、本件発明1が包含する、発明の詳細な説明に具体的な製造方法が記載された物以外の物(紫外線硬化性樹脂層が平均粒子径2μm以上の粒子を含有する物)について、技術常識を考慮しても、どのようにして本件発明1で特定している機能・特性を満たすものを作ることができるのかを理解することができない旨、概略、主張している(特許異議申立書第42頁第24行-第43頁第25行)。

ウ.しかしながら、本件発明1が、紫外線硬化性樹脂層が平均粒子径2μm以上の粒子を含有するか否かにかかわらず、上記「ア.」に記載したように、本件明細書の記載に基づき、上記紫外線硬化性樹脂組成物で形成した紫外線硬化性樹脂層を有するタッチパネル用保護フィルムについて、所定条件のスチールウール摩耗性試験後の水接触角が95度以上であるか否かを確認することで、過度の試行錯誤を要することなく、当業者は本件発明1を実施することができるものと認められる。
また、本件明細書段落【0060】の記載は、平均粒子径が比較的大きい粒子が紫外線硬化性樹脂層中に存在した場合、防汚耐久性が低下する可能性があることを表しているにすぎず、紫外線硬化性樹脂層中に平均粒子径2μm以上の粒子を実質的に含有しないことが、本件発明1の構成を得るためには必須であることを表したものではない。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(2)申立理由2の2について
ア.上記「(1)申立理由2の1について」の「ア.」に記載したように、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1-10の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない、とはいえない。

イ.申立人は、本件明細書段落【0073】には、「基材フィルム上に、紫外線吸収剤とフッ素化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた紫外線硬化性樹脂層を積層した場合、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性が低下しやすくなる。特に、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合に密着性低下が起こりやすくなる。」と、段落【0074】には、「基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を介在させることにより、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性が高められる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に熱硬化性樹脂層を介して紫外線硬化性樹脂層を積層することにより、高い密着性が得られる。」と記載されており、また、基材フィルムと、基材フィルム上に形成する塗膜との密着性が低い場合、塗膜を擦った場合などに塗膜が剥がれやすくなり、塗膜の耐摩耗性(≒防汚耐久性)が悪化することは、積層体の分野において一般常識であるから、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に位置する熱硬化性樹脂層は、本件発明1で特定している機能・特性と密接に関連しているといえるものであるが、本件明細書には、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を有さない実施例が記載されておらず、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を有さない場合に、如何なる手段を採用すれば本件発明1で特定している機能・特性が得られるのかについて何ら記載されていないから、本件発明1が包含する、発明の詳細な説明に具体的な製造方法が記載された物以外の物(基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を有さない物)について、技術常識を考慮しても、どのようにして本件発明1で特定している機能・特性を満たすものを作ることができるのかを理解することができない旨、概略、主張し(特許異議申立書第43頁第26行-第45頁第6行)、また、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性を向上させるためには、熱硬化性樹脂層が、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間で何らかの化学的若しくは物理的な作用を生じる必要があることが一般常識であるが、本件明細書の発明の詳細な説明の記載では、熱硬化性樹脂層によって、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に如何なる化学的若しくは物理的作用が生じているのかを理解することができず、本件明細書の発明の詳細な説明の記載では、本件明細書の実施例で使用している特定の熱硬化性樹脂層以外の熱硬化性樹脂層を用いた場合において、技術常識を考慮しても、どの様にして、本件発明1で特定している機能・特性を満たすものを作ることができるのかを理解することができない旨、概略、主張している(特許異議申立書第45頁第7-21行)。

ウ.しかしながら、本件発明1が、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を有するか否かにかかわらず、本件明細書の記載に基づき、上記紫外線硬化性組成物で形成した紫外線硬化性樹脂層を有するタッチパネル用保護フィルムについて、所定条件のスチールウール摩耗性試験後の水接触角が95度以上であるか否かを確認することで、過度の試行錯誤を要することなく、当業者は本件発明1を実施することができるものと認められる。
また、本件明細書段落【0073】、【0074】の記載は、紫外線吸収剤とフッ素化合物を含有する紫外線硬化性樹脂組成物を硬化した紫外線硬化性樹脂層を用いた場合、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との密着性が低下しやすくなること、特に基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合密着性の低下が起こりやすいことを表しているにすぎず、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に熱硬化性樹脂層を有さなければ本件発明1で特定している機能・特性が得られないことを表したものではない。
さらに、本件明細書の記載から、熱硬化性樹脂層によって、基材フィルムと紫外線硬化性樹脂層との間に如何なる化学的若しくは物理的作用が生じているのかを理解することできないとしても、本件明細書には、基材フィルム、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂を具体的に特定し、本件発明1で特定している機能・特性を得る実施例が記載されており、本件明細書の記載より、過度の試行錯誤を要することなく、当業者は本件発明1の実施をすることができるものと認められる。
よって、申立人の上記主張を採用することはできない。

第6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-02-02 
出願番号 特願2013-257744(P2013-257744)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06F)
P 1 651・ 536- Y (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西田 聡子  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
稲葉 和生
登録日 2017-04-21 
登録番号 特許第6127956号(P6127956)
権利者 東レフィルム加工株式会社
発明の名称 タッチパネル用保護フィルム  
代理人 一條 力  

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