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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
管理番号 1337091
異議申立番号 異議2017-700956  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-05 
確定日 2018-02-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6109399号発明「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6109399号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6109399号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成28年11月17日(優先権主張 平成28年3月31日 日本国(JP))になされ、平成29年3月17日に特許の設定登録がされ、同年4月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月5日付けで特許異議申立人西谷光夫と藤井和子とによりそれぞれ特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件特許発明

本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明4」ということもあり、これらの発明を、まとめて、本件特許発明ということがある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、
Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)
(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)
であり、
前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用の正極活物質粒子。
【請求項2】
結晶子サイズが200nm以上900nm以下であり、且つ平均二次粒子径(D50)が3μm以上20μm以下である請求項1に記載の正極活物質粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の正極活物質粒子を製造する方法であって、
下記組成式で示される前駆体を用い、
(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))OH_(2)
(0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)
該前駆体にリチウム化合物をLi/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02以上1.07以下の範囲となるように混合した後に、酸化性雰囲気において910℃以上970℃以下で焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得ることを特徴とする正極活物質粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の正極活物質粒子を使用した非水電解質二次電池。」


第3 特許異議の申立理由の概要

特許異議申立人西谷光夫は、証拠として国際公開第2008/123011号(以下、「引用文献1」という。)、国際公開第2009/063613号(以下、「引用文献2」という。)、国際公開第2010/029745号(以下、「引用文献3」という。)、国際公開第2011/065464号(以下、「引用文献4」という。)、特許第4462451号公報(以下、「引用文献5」という。)を提出し、以下の1.?3.の理由により、本件特許の請求項1?4に係る発明の特許を取り消すべきものである旨主張している。

1. 本件特許発明1?4は、引用文献1?5のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものである(特許異議申立人西谷光夫が提出した特許異議申立書第6頁下から4行?第24頁末行、以下、「申立理由1」という。)。

2. 本件特許発明1?4は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである(特許異議申立人西谷光夫が提出した特許異議申立書第25頁第1行?第27頁第15行、以下、「申立理由2」という。)。

3. 本件特許発明1?4は、明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである(特許異議申立人西谷光夫が提出した特許異議申立書第27頁第16行?第28頁第8行、以下、「申立理由3」という。)。

また、特許異議申立人藤井和子は、主たる証拠として、特開2016-11227号公報(以下、「引用文献6」という。)、特表2014-529868号公報(以下、「引用文献7」という。)、特開2013-222612号公報(以下、「引用文献8」という。)、及び、従たる証拠として、特表2007-512668号公報(以下、「引用文献9」という。)と引用文献1?5とを提出し、本件特許発明3の製造方法の発明は、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜になし得るものであるし、その適用により製造された正極活物質は、本件特許発明1の正極活物質と同一の物であるし、その適用に際して、平均粒径等を引用文献2?6や引用文献9に記載の周知の範囲としたのが、本件特許発明2の正極活物質にすぎず、進歩性を有しないし、本件特許発明4の非水電解質二次電池は、本件特許発明1?2の正極活物質を使用したことを特定したのみであるため、進歩性を有しないことから、本件特許発明1?4は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、それらの発明の特許を取り消すべきものである旨主張している(特許異議申立人藤井和子が提出した特許異議申立書第6頁第1行?第25頁第14行、以下、「申立理由4」という。)。


第4 引用文献の記載事項及び引用文献記載の発明

1. 引用文献1(国際公開第2008/123011号)は、上記第3によれば、申立理由1における主たる証拠として提出され、また、申立理由4における従たる証拠として提出されているところ、当該引用文献1には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載されている(当審注:「…」は記載の省略を表す。以下同じ。)。

1ア. 「請求の範囲
[1] 核となる二次粒子の組成がLi_(x1)Ni_(1-y1-z1-w1)Co_(y1)Mn_(z1)M _(w1)O_(2)(0.9≦x1≦1.3、0.1≦y1≦0.3、0.0≦z1≦0.3、0≦w1≦0.1 MはAl、Feから選ばれる少なくとも1種の金属)であるLi-Ni複合酸化物において、前記二次粒子の粒子表面に、組成がLi_(x2)Ni_(1-y2-z2-w2)Co_(y2)Mn_(z2)M_(w2)O_(2)(0.9≦x2≦1+z2、0≦y2≦0.33、0≦z2≦0.5、0≦w2≦0.1 MはAl、Fe、Mg、Zr、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属であり、且つ、0.5≦(1-y2-z2-w2)/(y2+z2+w2)、0.3≦(z1+z2)かつ0<(z2-z1)≦0.5)であるLi-Ni複合酸化物を被覆又は存在させることを特徴とする非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末。
…」

1イ. 「背景技術

[0003] 従来、4V級の電圧をもつ高エネルギー型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn_(2)O_(4) 、ジグザグ層状構造のLiMnO_(2)、層状岩塩型構造のLiCoO_(2) 、LiNiO_(2)等が一般的に知られており、なかでもLiNiO_(2)を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電容量を有する電池として注目されてきた。しかし、この材料は、充電時の熱安定性及び充放電サイクル耐久性に劣る為、更なる特性改善が求められている。
[0004] 即ち、LiNiO_(2)はリチウムを引き抜いた際に、Ni^(3+)がNi^(4+)となりヤーンテラー歪を生じ、Liを0.45引き抜いた領域で六方晶から単斜晶へ、さらに引き抜くと単斜晶から六方晶と結晶構造が変化する。そのため、充放電反応を繰り返すことによって、結晶構造が不安定となり、サイクル特性が悪くなる、又酸素放出による電解液との反応などが起こり、電池の熱安定性及び保存特性が悪くなるといった特徴があった。この課題を解決する為に、LiNiO_(2)のNiの一部にCo及びAlを添加した材料の研究が行われてきたが、未だにこれらの課題を解決した材料は得られておらず、より結晶性の高いLi-Ni複合酸化物が求められている。
[0005] また、Li-Ni複合酸化物の製造方法において、充填性が高く結晶構造が安定なLi-Ni複合酸化物を得るためには、物性及び結晶性、不純物量を制御したNi複合水酸化物粒子を用い、LiサイトへのNi^(2+)の混入の無い条件で焼成を行う必要がある。
[0006] 即ち、非水電解質二次電池用の正極活物質として充填性が高く結晶構造が安定で充電状態の熱安定性に優れたLi-Ni複合酸化物が要求されている。

発明が解決しようとする課題
[0009] 非水電解質二次電池用の正極活物質として充電時の熱安定性を改善するLi-Ni複合酸化物について、現在最も要求されているところであるが、未だ必要十分な要求を満たす材料は得られていない。
[0010] 従って、本発明の目的は、非水電解質二次電池用の正極活物質としての充電時の熱安定性が改善されたLi-Ni複合酸化物粒子粉末、その製造方法および当該Li-Ni複合酸化物粒子粉末を含有する正極から成る非水電解質二次電池を提供することである。」

1ウ. 「
[0023] 先ず、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末について述べる。
[0024] 本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末は、特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物の二次粒子を核とし、該二次粒子の粒子表面に、特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物粒子を被覆又は存在させたものである。なお、本発明において、「粒子表面に被覆又は存在させる」とは、粒子の表面はもちろんのこと、例えば二次粒子に凹凸や細孔が存在する場合に、外界と通じているような内部表面を特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物粒子で被覆したり孔内に存在させることも含むものとする。すなわち、核となる二次粒子の表面全体を特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物粒子を被覆させたもの、または核となる二次粒子の表面近傍若しくは粒子表面の一部に、特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物粒子を存在若しくは付着させたものである。」

1エ. 「
[0053] 次に、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いた正極について述べる。
[0054] 本発明に係る正極活物質を用いて正極を製造する場合には、常法に従って、導電剤と結着剤とを添加混合する。…
[0055] 本発明に係る正極活物質を用いて製造される二次電池は、前記正極、負極及び電解質から構成される。」

1オ. 「
[0074] 実施例1:

[0076]…Al被覆されたNi-Co水酸化物粒子と予め粉砕機によって粒度調整を行った水酸化リチウム・1水塩とをモル比でLi/(Ni+Co+Al)=1.02となるように混合した。
[0077] この混合物を酸素雰囲気下、750℃にて10時間焼成し、解砕した。得られた焼成物の化学組成は、ICP分析の結果、Li_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)であり、平均粒子径は14.5μmであった。このLi-Ni複合酸化物を核となる二次粒子粉末として用いた。
[0078] 次に、2mol/lの硫酸ニッケルと硫酸コバルト及び硫酸マンガンをNi:Co=1/3:1/3:1/3なるように混合した水溶液と5.0mol/lアンモニア水溶液を、同時に反応槽内に供給した。
[0079] 反応槽は羽根型攪拌機で常に攪拌を行い、同時にpH=11.5±0.5となるように2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を自動供給した。生成したNi-Co-Mn水酸化物はオーバーフローされ、オーバーフロー管に連結された濃縮槽で濃縮し、反応槽へ循環を行い、反応槽と沈降槽中のNi-Co-Mn水酸化物濃度が4mol/lになるまで40時間反応を行った。
[0080] この懸濁液を、フィルタープレスを用いてNi-Co-Mn水酸化物の重量に対して10倍の水により水洗を行った後、乾物を行い、Ni:Co:Mn=1/3:1/3:1/3のNi-Co-Mn水酸化物粒子を得た。
[0081] Ni-Co-Mn水酸化物粒子と予め粉砕機によって粒度調整を行った炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した。
[0082] この混合物を空気雰囲気下、950℃にて5時間焼成した後、重量百分率が30%となるように純水に邂逅した後、湿式ボールミルにて1時間粉砕し、乾燥した。得られた焼成物の化学組成は、ICP分析の結果、Li_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)であり、平均一次粒子径は0.5μmであった。
[0083] ここで、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)に対して、重量百分率が3%となるようにLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)を混合し、機械的磨砕機を用いて30分間機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、750℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni複合酸化物粒子粉末を得た。ここで、被覆又は存在させる粒子の平均一次粒子径は核となる粒子の平均二次粒子径の1/29であった。
[0084]…また、このLi-Ni複合酸化物粒子粉末の放電容量は183mAh/gであった。」

1カ. 引用文献1には、上記1ア.?1ウ.によれば、充電時の熱安定性が改善された非水電解質二次電池用の正極活物質としてのLi-Ni複合酸化物粒子粉末であって、核となる二次粒子の組成がLi_(x1)Ni_(1-y1-z1-w1)Co_(y1)Mn_(z1)M _(w1)O_(2)(0.9≦x1≦1.3、0.1≦y1≦0.3、0.0≦z1≦0.3、0≦w1≦0.1 MはAl、Feから選ばれる少なくとも1種の金属)であるLi-Ni複合酸化物において、前記二次粒子の粒子表面に、組成がLi_(x2)Ni_(1-y2-z2-w2)Co_(y2)Mn_(z2)M_(w2)O_(2)(0.9≦x2≦1+z2、0≦y2≦0.33、0≦z2≦0.5、0≦w2≦0.1 MはAl、Fe、Mg、Zr、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属であり、且つ、0.5≦(1-y2-z2-w2)/(y2+z2+w2)、0.3≦(z1+z2)かつ0<(z2-z1)≦0.5)であるLi-Ni複合酸化物を被覆又は存在させることを特徴とする非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末が記載されていると認められる。

1キ. そして、上記1オ.によれば、実施例1においては、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)であるLi-Ni複合酸化物が3重量%被覆したLi-Ni複合酸化物粒子粉末が、上記1カ.に示した非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末であるとされている。

1ク. また、上記1オ.によれば、実施例1においては、Ni:Co:Mn=1/3:1/3:1/3のNi-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した混合物を空気雰囲気下、950℃にて5時間焼成した後、粉砕し、乾燥して、一次粒子径が0.5μmのLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)を得、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)に対して、重量百分率が3%となるように前記のLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)を混合し、機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、750℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni複合酸化物粒子粉末を得たとされている。

1ケ. また、上記1エ.によれば、引用文献1の発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いた二次電池は、前記正極活物質を用いた正極、負極及び電解質から構成されるとされている。

1コ. 上記1カ.?1ケ.の検討から、引用文献1には、実施例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(1コ-1) 充電時の熱安定性が改善された非水電解質二次電池用の正極活物質としてのLi-Ni複合酸化物粒子粉末であって、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)であるLi-Ni複合酸化物が3重量%被覆したLi-Ni複合酸化物粒子粉末(以下、「引用文献1の複合酸化物粒子粉末の発明」という。)。

(1コ-2) 充電時の熱安定性が改善された非水電解質二次電池用の正極活物質としてのLi-Ni複合酸化物粒子粉末の製造方法であって、Ni:Co:Mn=1/3:1/3:1/3のNi-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した混合物を空気雰囲気下、950℃にて5時間焼成した後、粉砕し、乾燥して、一次粒子径が0.5μmのLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)を得、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)に対して、重量百分率が3%となるように前記のLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)を混合し、機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、750℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni複合酸化物粒子粉末を得る方法(以下、「引用文献1の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明」という。)。

(1コ-3) 核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)であるLi-Ni複合酸化物が3重量%被覆したLi-Ni複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いて充電時の熱安定性が改善された非水電解質二次電池であって、前記正極活物質を用いた正極、負極及び電解質から構成される二次電池(以下、「引用文献1の非水電解質二次電池の発明」という。)。


2. 引用文献2(国際公開第2009/063613号)は、上記第3によれば、申立理由1における主たる証拠として提出され、また、申立理由4における従たる証拠として提出されているところ、当該引用文献2には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「非水電解液二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載されている。

2ア. 「請求の範囲

[2] Co及び/又はAlが粒子内部に存在するLi-Ni系酸化物粒子の二次粒子の粒子表面に、Li-Mn系複合酸化物を存在させたLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、マンガンの濃度が粒子の中心から粒子表面に向けて高くなっていることを特徴とするLi-Ni系複合酸化物粒子粉末。
[3] 前記核となるLi-Ni系酸化物粒子の二次粒子の組成がLi_(x1)(Ni_(1-y1-z1-w1)Co_(y1)Mn_(z1)M1_(w1))O_(2)(0.9≦x1≦1.3、0.1≦y1≦0.3、0.0≦z1≦0.3、0≦w1≦0.1 M1はAl、Fe、Mg、Zr、Ti、Bから選ばれる少なくとも1種の金属)である請求項2記載のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末。
…」

2イ. 「背景技術

[0003] 従来、4V級の電圧をもつ高エネルギー型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn_(2)O_(4) 、ジグザグ層状構造のLiMnO_(2) 、層状岩塩型構造のLiCoO_(2)、LiNiO_(2)等が一般的に知られており、なかでもLiNiO_(2)を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電容量を有する電池として注目されてきた。しかし、この材料は、充電時の熱安定性及び充放電サイクル耐久性に劣る為、更なる特性改善が求められている。
[0004] 即ち、LiNiO_(2)はリチウムを引き抜いた際に、Ni^(3+)がNi^(4+)となりヤーンテラー歪を生じ、Liを0.45引き抜いた領域で六方晶から単斜晶へ、さらに引き抜くと単斜晶から六方晶と結晶構造が変化する。そのため、充放電反応を繰り返すことによって、結晶構造が不安定となり、サイクル特性が悪くなる、又酸素放出による電解液との反応などが起こり、電池の熱安定性及び保存特性が悪くなるといった特徴があった。この課題を解決する為に、LiNiO_(2)のNiの一部にCo及びAlを添加した材料の研究が行われてきたが、未だにこれらの課題を解決した材料は得られておらず、より結晶性の高いLi-Ni系複合酸化物が求められている。
[0005] また、Li-Ni系複合酸化物の製造方法において、充填性が高く結晶構造が安定なLi-Ni系複合酸化物を得るためには、物性及び結晶性、不純物量を制御したNi複合水酸化物粒子を用い、LiサイトへのNi^(2+)の混入の無い条件で焼成を行う必要がある。
[0006] 即ち、非水電解質二次電池用の正極活物質として充填性が高く結晶構造が安定で充電状態の熱安定性に優れたLi-Ni系複合酸化物が要求されている。
[0007] 前記の熱安定性の改善には、酸素放出による電解液との反応を抑制することが重要である。Li-Ni系複合酸化物は、充電状態においてNi^(4+)を生成するが、この酸化状態のNiイオンは不安定であり、容易に酸素を放出し、Ni^(3+)ないしはNi^(2+)の状態に還元されやすい。このため、該酸化物をリチウム二次電池の正極活物質として用いた場合、充電状態において、発熱・発火等の熱的安定性に問題が生じることになる。
[0008] さらに、リチウム二次電池の熱的安定性、とりわけ発熱・発火は、電極活物質と電解液の固液界面を起点にして起こると考えられる。
[0009] このような事実を鑑みた場合、Li-Ni系複合酸化物の熱的安定性を改善するには、電解液との接触面すなわち粒子表面を、他の安定な元素でコートすることが有効であると考えられる。

[0011]…しかしながら、いずれも熱安定性という観点で見た場合、コア材料自体が元来、安定的なものであり、表面修飾はサイクル劣化の防止を主目的としたものである。
[0012] 本発明はコア材料にLi-Ni系複合酸化物を用いたものであり、その目的もサイクル特性の向上ではなく、Li-Ni系複合酸化物に特有な熱安定性の問題を改善することにある。」

2ウ. 「
[0034] 先ず、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末について述べる。
[0035] 本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末は、特定の組成を有するLi-Ni系酸化物の二次粒子を核とし、該二次粒子の粒子表面若しくは粒子表面近傍に、Li-Mn系複合酸化物を被覆又は存在させたものである。すなわち、核となる二次粒子の表面全体を特定の組成を有するLi-Mn系複合酸化物を被覆させたもの、または核となる二次粒子の表面近傍若しくは粒子表面の一部に、特定の組成を有するLi-Mn系複合酸化物を存在若しくは付着させたものである。

[0040] 核となる二次粒子の平均二次粒子径は、3μm?20μmが好ましい。平均二次粒子径が3μm未満の場合、電極充填密度が下がると共に、BET比表面積が大きくなることによって、電解液との反応性が高くなり、充電時の熱安定性が低下する。平均粒子径が20μmを超えると、電極の厚みが厚くなる為、電極内の抵抗が上昇して、充放電レート特性が低下する。…」

2エ. 「
[0065] 次に、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いた正極について述べる。
[0066] 本発明に係るLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を用いて正極を製造する場合には、常法に従って、導電剤と結着剤とを添加混合する。…
[0067] 本発明に係るLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を用いて製造される二次電池は、前記正極、負極及び電解質から構成される。」

2オ. 「
[0105] 比較例1:
Ni:Co:Mn=50:20:30の平均二次粒子径が14.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子に、モル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.02となるように水酸化リチウム・1水塩と混合し、酸素雰囲気下、950℃にて15時間焼成し、Li_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)複合酸化物を得た。次いで、この複合酸化物に対して、Co/Mnのモル比が9/1の複合水酸化物を、重量百分率で3%相当となるように混合した後、機械的磨砕機を用いて30分間機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、850℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を得た。
[0106]…また、このLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の放電容量は175mAh/gであった。」


2カ. 引用文献2には、上記2ア.?2ウ.によれば、充電時の熱安定性が改善された非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、核となるLi-Ni系酸化物粒子の二次粒子の組成がLi_(x1)(Ni_(1-y1-z1-w1)Co_(y1)Mn_(z1)M1_(w1))O_(2)(0.9≦x1≦1.3、0.1≦y1≦0.3、0.0≦z1≦0.3、0≦w1≦0.1 M1はAl、Fe、Mg、Zr、Ti、Bから選ばれる少なくとも1種の金属)であり、前記二次粒子の平均二次粒子径が3μm?20μmであるLi-Ni複合酸化物粒子粉末において、前記二次粒子の粒子表面に、Li-Mn系複合酸化物を存在させたLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、Co及び/又はAlが粒子内部に存在し、マンガンの濃度が粒子の中心から粒子表面に向けて高くなっていることを特徴とするLi-Ni系複合酸化物粒子粉末が記載されていると認められる。

2キ. そして、上記2オ.によれば、比較例1においては、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末としたとされている。

2ク. また、上記2オ.によれば、比較例1においては、Ni:Co:Mn=50:20:30の平均二次粒子径が14.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子に、モル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.02となるように水酸化リチウム・1水塩と混合し、酸素雰囲気下、950℃にて15時間焼成し、Li_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)複合酸化物を得、この複合酸化物に対して、Co/Mnのモル比が9/1の複合水酸化物を、重量百分率で3%相当となるように混合した後、機械的磨砕機を用いて30分間機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、850℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を得たとされている。

2ケ. また、上記2エ.によれば、Li-Ni系複合酸化物粒子粉末を用いて製造される二次電池は、前記Li-Ni系複合酸化物粒子粉末を用いた正極、負極及び電解質から構成されるとされている。

2コ. 上記2カ.?2ケ.の検討から、引用文献2には、比較例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(2コ-1) 非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末(以下、「引用文献2の複合酸化物粒子粉末の発明」という。)。

(2コ-2) 非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末の製造方法であって、Ni:Co:Mn=50:20:30の平均二次粒子径が14.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子に、モル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.02となるように水酸化リチウム・1水塩と混合し、酸素雰囲気下、950℃にて15時間焼成し、Li_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)複合酸化物を得、この複合酸化物に対して、Co/Mnのモル比が9/1の複合水酸化物を、重量百分率で3%相当となるように混合した後、機械的磨砕機を用いて30分間機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、850℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を得る方法(以下、「引用文献2の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明」という。)。

(2コ-3) 核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を用いた非水電解質二次電池であって、前記Li-Ni系複合酸化物粒子粉末を用いた正極、負極及び電解質から構成される二次電池(以下、「引用文献2の非水電解質二次電池の発明」という。)。


3. 引用文献3(国際公開第2010/029745号)は、上記第3によれば、申立理由1における主たる証拠として提出され、また、申立理由4における従たる証拠として提出されているところ、当該引用文献3には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池
」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載されている。

3ア. 「請求の範囲
[請求項1] 核となる二次粒子の組成がLi_(x1)Ni_(1-y1-z1-w1)Co_(y1)Mn_(z1) M1_(w1)O_(2-v)K_(v)(1<x1≦1.3、0≦y1≦0.33、0.2≦z1≦0.33、0≦w1<0.1、0≦v≦0.05であり、M1はAl、Mgから選ばれる少なくとも1種の金属及びKはF^(-) 、PO_(4)^(3-)から選ばれる少なくとも1種のアニオン)であるLi-Ni-Mn複合酸化物において、前記二次粒子の粒子表面若しくは表面近傍に、組成がLi_(x2)Ni_(1-y2-z2)Co_(y2)M2_(z2)O_(2)(0.98≦x2≦1.05、0.15≦y2≦0.2、0≦z2≦0.05、M2はAl、Mg、Zr、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属)であるLi-Ni複合酸化物を被覆又は存在させた非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末であって、該非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末の複合粒子の平均粒子径が核となる二次粒子の平均粒子径の1.1倍以上であり、かつ核となる粒子に対する被覆粒子もしくは表面近傍に存在するLi-Ni複合酸化物粒子の重量百分率が10%以上50%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末。」

3イ. 「背景技術

[0003] 従来、4V級の電圧をもつ高エネルギ#型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn_(2)O_(4)、ジグザグ層状構造のLiMnO_(2)、層状岩塩型構造のLiCoO_(2)、LiNiO_(2)等が一般的に知られており、なかでもLiNiO_(2)を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電容量を有する電池として注目されてきた。しかし、この材料は、充電時の熱安定性及び充放電サイクル耐久性に劣る為、更なる特性改善が求められている。
[0004] 即ち、LiNiO_(2)はリチウムを引き抜いた際に、Ni^(3+)がNi^(4+)となりヤ-ンテラ-歪を生じ、Liを0.45引き抜いた領域で六方晶から単斜晶へ、さらに引き抜くと単斜晶から六方晶と結晶構造が変化する。そのため、充放電反応を繰り返すことによって、結晶構造が不安定となり、サイクル特性が悪くなる、又酸素放出による電解液との反応などが起こり、電池の熱安定性及び保存特性が悪くなるといった特徴があった。この課題を解決する為に、LiNiO_(2)のNiの一部にCo及びAlを添加した材料の研究が行われてきたが、未だにこれらの課題を解決した材料は得られておらず、より結晶性の高いLi-Ni複合酸化物が求められている。
[0005] また、Li-Ni複合酸化物の製造方法において、充填性が高く結晶構造が安定なLi-Ni複合酸化物を得るためには、物性及び結晶性、不純物量を制御したNi複合水酸化物粒子を用い、LiサイトへのNi^(2+)の混入の無い条件で焼成を行う必要がある。
[0006] 即ち、非水電解質二次電池用の正極活物質として充填性が高く結晶構造が安定で充電状態の熱安定性に優れたLi-Ni複合酸化物が要求されている。
…」

3ウ. 「発明が解決しようとする課題
[0009] 非水電解質二次電池用の正極活物質として充電時の熱安定性を改善と高容量化及び高温安定性を両立したLi-Ni複合酸化物について、現在最も要求されているところであるが、未だ必要十分な要求を満たす材料は得られていない。
課題を解決するための手段
[0010] 即ち、本発明は、上記目的を達成する為に、正極とリチウム金属或いはリチウムイオンを吸蔵放出可能な材料からなる負極とを有する非水電解質二次電池において、前記正極の活物質は、核となる二次粒子の組成がLi_(x1)Ni_(1-y1-z1-w1)Co_(y1)Mn_(z1) M1_(w1)O_(2-v)K_(v)(1<x1≦1.3、0≦y1≦0.33、0.2≦z1≦0.33、0≦w1<0.1、0≦v≦0.05であり、M1はAl、Mgから選ばれる少なくとも1種の金属及びKはF^(-) 、PO_(4)^(3-)から選ばれる少なくとも1種のアニオン)であるLi-Ni-Mn複合酸化物において、前記二次粒子の粒子表面若しくは表面近傍に、組成がLi_(x2)Ni_(1-y2-z2)Co_(y2)M2_(z2)O_(2)(0.98≦x2≦1.05、0.15≦y2≦0.2、0≦z2≦0.05、M2はAl、Mg、Zr、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属)であるLi-Ni複合酸化物を被覆又は存在させた非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末であって、該非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末の複合粒子の平均粒子径が核となる二次粒子の平均粒子径の1.1倍以上であり、かつ核となる粒子に対する被覆粒子もしくは表面近傍に存在するLi-Ni複合酸化物粒子の重量百分率が10%以上50%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末である(本発明1)。」

3エ. 「
[0026] 先ず、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末について述べる。
[0027] 本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末は、特定の組成を有するLi-Ni-Mn複合酸化物の二次粒子を核とし、該二次粒子の粒子表面若しくは粒子表面近傍に、特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物粒子を被覆又は存在させたものである。すなわち、核となる二次粒子の表面全体を特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物粒子を被覆させたもの、または核となる二次粒子の表面近傍若しくは粒子表面の一部に、特定の組成を有するLi-Ni複合酸化物粒子を存在若しくは被覆させたものである。

[0037] なお、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末の平均粒子径(レ-ザ-回折・散乱法による測定)は、3?20μmが好ましい。平均粒子径が3μm以下の場合には、Li-Ni複合酸化物を電極スラリ-にする際の分散性が悪くなる。20μmを超える場合には、電極の厚みが厚くなる為、レ-ト特性が悪くなり、放電容量が低下する。」

3オ. 「
[0049] 次に、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いた正極について述べる。
[0050] 本発明に係る正極活物質を用いて正極を製造する場合には、常法に従って、導電剤と結着剤とを添加混合する。…
[0051] 本発明に係る正極活物質を用いて製造される二次電池は、前記正極、負極及び電解質から構成される。」

3カ. 「
[0109] 実施例1:
2mol/lの硫酸ニッケルと硫酸コバルト及び硫酸マンガンをNi:Co:Mn=33:33:33なるように混合した水溶液と5.0mol/lアンモニア水溶液を、同時に反応槽内に供給した。
[0110] 反応槽は羽根型攪拌機で常に攪拌を行い、同時にpH=11.5±0.5となるように2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を自動供給した。生成したNi-Co-Mn水酸化物はオ-バ-フロ-され、オ-バ-フロ-管に連結された濃縮槽で濃縮し、反応槽へ循環を行い、反応槽と沈降槽中のNi-Co-Mn水酸化物濃度が4mol/lになるまで40時間反応を行った。
[0111] 反応後、取り出した懸濁液を、フィルタ-プレスを用いてNi-Co-Mn水酸化物の重量に対して10倍の水により水洗を行った後、乾燥を行い、Ni:Co:Mn=33:33:33の平均二次粒子径が9.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子を得た。Ni-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した。
[0112] この混合物を空気雰囲気下、925℃にて4時間焼成し、解砕した。得られた焼成物の化学組成は、ICP分析の結果、Li_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)であり、平均粒子径は9.6μmであった。このLi-Ni-Mn複合酸化物を核となる二次粒子粉末として用いた。
[0113] この二次粒子粉末300gを水中に懸濁し、この懸濁液に、2mol/lの硫酸ニッケルと硫酸コバルトをNi:Co=84:16となるように混合した水溶液と5.0mol/lアンモニア水溶液を、同時に反応槽内に供給した。
[0114] 反応槽は羽根型攪拌機で常に攪拌を行い、同時にpH=11.5±0.5となるように2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を自動供給し、生成したNi-Co水酸化物がLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)に対して重量百分率で10wt%となるようにした。
[0115] この懸濁液を、フィルタ-プレスを用いて表面被覆Li-Ni-Mn複合酸化物の重量に対して10倍の水により水洗を行った後、乾燥を行い、Ni-Co水酸化物で被覆されたLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)中間体を得た。
[0116] Ni-Co水酸化物で被覆されたLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)中間体と予め粉砕機によって粒度調整を行った水酸化リチウム及び水酸化アルミニウムとをモル比でLi/(表面のNi+Co+Al)=0.98となるように混合した。
[0117] この混合物を酸素雰囲気下、750℃にて10時間焼成し、核となるLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(0.98)Ni_(0.80)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)が10重量%被覆した平均粒子径が10.6μmのLi-Ni複合酸化物粒子粉末を得た。
[0118]…また、このLi-Ni複合酸化物粒子粉末の放電容量は160mAh/gであり、60℃、1週間保存後の残存放電容量は、155mAh/gであった。…」

3キ. 引用文献3には、上記3ア.?3エ.によれば、非水電解質二次電池用の正極活物質として充電時の熱安定性の改善と高容量化及び高温安定性を両立したLi-Ni複合酸化物粒子粉末であって、核となる二次粒子の組成がLi_(x1)Ni_(1-y1-z1-w1)Co_(y1)Mn_(z1) M1_(w1)O_(2-v)K_(v)(1<x1≦1.3、0≦y1≦0.33、0.2≦z1≦0.33、0≦w1<0.1、0≦v≦0.05であり、M1はAl、Mgから選ばれる少なくとも1種の金属及びKはF^(-) 、PO_(4)^(3-)から選ばれる少なくとも1種のアニオン)であり、前記二次粒子の平均二次粒子径が3μm?20μmであるLi-Ni-Mn複合酸化物粒子粉末の粒子表面若しくは表面近傍に、組成がLi_(x2)Ni_(1-y2-z2)Co_(y2)M2_(z2)O_(2)(0.98≦x2≦1.05、0.15≦y2≦0.2、0≦z2≦0.05、M2はAl、Mg、Zr、Tiから選ばれる少なくとも1種の金属)であるLi-Ni複合酸化物を被覆又は存在させた非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末であって、該非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末の複合粒子の平均粒子径が核となる二次粒子の平均粒子径の1.1倍以上であり、かつ核となる粒子に対する被覆粒子もしくは表面近傍に存在するLi-Ni複合酸化物粒子の重量百分率が10%以上50%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末が記載されていると認められる。

3ク. そして、上記3カ.によれば、実施例1においては、核となるLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(0.98)Ni_(0.80)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)が10重量%被覆した、平均粒子径が10.6μmのLi-Ni複合酸化物粒子粉末が、上記3キ.に示した非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末であるとされている。

3ケ. また、上記3カ.によれば、実施例1においては、Ni:Co:Mn=33:33:33の平均二次粒子径が9.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子を得、このNi-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した混合物を空気雰囲気下、925℃にて4時間焼成し、解砕して、平均粒子径は9.6μmである、Li_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子粉末を得、この二次粒子粉末の表面にNi-Co水酸化物を生成させ、乾燥を行い、Ni-Co水酸化物で被覆されたLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)中間体を得、この中間体と水酸化リチウム及び水酸化アルミニウムとをモル比でLi/(表面のNi+Co+Al)=0.98となるように混合した混合物を酸素雰囲気下、750℃にて10時間焼成し、核となるLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(0.98)Ni_(0.80)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)が10重量%被覆した平均粒子径が10.6μmのLi-Ni複合酸化物粒子粉末を得たとされている。

3コ. また、上記3オ.によれば、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いた二次電池は、前記正極活物質を用いた正極、負極及び電解質から構成されるとされている。

3サ. 上記3キ.?3コ.の検討から、引用文献3には、実施例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(3サ-1) 非水電解質二次電池用の正極活物質として充電時の熱安定性の改善と高容量化及び高温安定性を両立したLi-Ni複合酸化物粒子粉末であって、核となるLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(0.98)Ni_(0.80)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)が10重量%被覆した平均粒子径が10.6μmのLi-Ni複合酸化物粒子粉末(以下、「引用文献3の複合酸化物粒子粉末の発明」という。)。

(3サ-2) 非水電解質二次電池用の正極活物質として充電時の熱安定性を改善と高容量化及び高温安定性を両立したLi-Ni複合酸化物粒子粉末の製造方法であって、Ni:Co:Mn=33:33:33の平均二次粒子径が9.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子を得、このNi-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した混合物を空気雰囲気下、925℃にて4時間焼成し、解砕して、平均粒子径は9.6μmである、Li_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子粉末を得、この二次粒子粉末の表面にNi-Co水酸化物を生成させ、乾燥を行い、Ni-Co水酸化物で被覆されたLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)中間体を得、この中間体と水酸化リチウム及び水酸化アルミニウムとをモル比でLi/(表面のNi+Co+Al)=0.98となるように混合した混合物を酸素雰囲気下、750℃にて10時間焼成し、核となるLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(0.98)Ni_(0.80)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)が10重量%被覆した平均粒子径が10.6μmのLi-Ni複合酸化物粒子粉末を得る方法(以下、「引用文献3の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明」という。)。

(3サ-3) 核となるLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(0.98)Ni_(0.80)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)が10重量%被覆した平均粒子径が10.6μmのLi-Ni複合酸化物粒子粉末からなる正極活物質を用いて充電時の熱安定性の改善と高容量化及び高温安定性を両立した非水電解質二次電池であって、前記正極活物質を用いた正極、負極及び電解質から構成される二次電池(以下、「引用文献3の非水電解質二次電池の発明」という。)。


4. 引用文献4(国際公開第2011/065464号)は、上記第3によれば、申立理由1における主たる証拠として提出され、また、申立理由4における従たる証拠として提出されているところ、当該引用文献4には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載されている。

4ア. 「請求の範囲
[請求項1] 核となる二次粒子が少なくとも空間群R-3mに属する結晶系と空間群C2/mに属する結晶系とを有する化合物であり、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折図の2θ=20.8±1°における最大回折ピークの強度(a)と2θ=18.6±1°における最大回折ピークの強度(b)との相対強度比(a)/(b)が0.02?0.5であり、Mn含有量はモル比でMn/(Ni+Co+Mn)が0.55以上であるLi-Mn複合酸化物粒子であって、前記二次粒子の粒子表面若しくは表面近傍に、組成がLi_(x2) Mn_(2-y2)Ni_(y2)O_(4)(0.95≦x2≦1.10、0.45≦y2≦0.55)、またはLi_(x3)Mn_(1-y3)Fe_(y3)PO_(4)(0.98≦x3≦1.10、0<y3≦0.30)から選ばれる少なくとも1種のLi-Mn化合物粒子を被覆又は存在させた非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末であって、該非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の二次粒子の平均粒子径が核となる二次粒子の平均粒子径の1.1倍以上であり、かつ核となる粒子に対する被覆粒子若しくは表面近傍に存在するLi-Mn化合物粒子の重量百分率が0.5%以上20%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末。
[請求項2] 核となる二次粒子が、空間群R-3mに属する結晶系を有する化合物としてLiM_(p)Mn_((1-p))O_(2)(MはNi及び/またはCo、0<p≦1)を、空間群C2/mに属する結晶系を有する化合物としてLi_(2)M’_((1-q))Mn_(q)O_(3)(M’はNi及び/またはCo、0<q≦1)を含む請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末。」

4イ. 「背景技術

[0003] 従来、4V級の電圧をもつ高エネルギー型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn_(2)O_(4)、ジグザグ層状構造のLiMnO_(2)、層状岩塩型構造のLiCoO_(2)、LiNiO_(2)等が一般的に知られており、なかでもLiNiO_(2)を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電容量を有する電池として注目されてきた。しかし、この材料は、充電時の熱安定性及び充放電サイクル耐久性に劣る為、更なる特性改善が求められている。
[0004] 即ち、LiNiO_(2)はリチウムを引き抜いた際に、Ni^(3+)がNi^(4+)となりヤーンテラー歪を生じ、Liを0.45引き抜いた領域で六方晶から単斜晶へ、さらに引き抜くと単斜晶から六方晶と結晶構造が変化する。そのため、充放電反応を繰り返すことによって、結晶構造が不安定となり、サイクル特性が悪くなる、又酸素放出による電解液との反応などが起こり、電池の熱安定性及び保存特性が悪くなるといった特徴があった。この課題を解決する為に、LiNiO_(2)のNiの一部にCo及びAlを添加した材料の研究が行われてきたが、未だにこれらの課題を解決した材料は得られておらず、より結晶性の高いLi-Ni複合酸化物が求められている。」

4ウ. 「発明が解決しようとする課題
[0007] 高電圧充電時の充放電容量及び初回充放電効率の優れた非水電解質二次電池用の正極活物質は、現在最も要求されているところであるが、未だ必要十分な要求を満たす材料は得られていない。
[0008] そこで、本発明の目的は、高電圧充電時に充放電容量が大きく、初期充放電効率に優れた非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末、その製造方法及び該正極活物質粒子粉末を含有する正極からなる非水電解質二次電池を提供することである。
課題を解決するための手段
[0009] 本発明は、核となる二次粒子が少なくとも空間群R-3mに属する結晶系と空間群C2/mに属する結晶系とを有する化合物であり、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折図の2θ=20.8±1°における最大回折ピークの強度(a)と2θ=18.6±1°における最大回折ピークの強度(b)との相対強度比(a)/(b)が0.02?0.5であり、Mn含有量はモル比でMn/(Ni+Co+Mn)が0.55以上であるLi-Mn複合酸化物粒子であって、前記二次粒子の粒子表面若しくは表面近傍に、組成が、Li_(x2)Mn_(2-y2)Ni_(y2)O_(4)(0.95≦x2≦1.10、0.45≦y2≦0.55)、またはLi_(x3)Mn_(1-y3)Fe_(y3)PO_(4)(0.98≦x3≦1.10、0<y3≦0.30)から選ばれる少なくとも1種のLi-Mn化合物粒子を被覆又は存在させた非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末であって、該非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の二次粒子の平均粒子径が核となる二次粒子の平均粒子径の1.1倍以上であり、かつ核となる粒子に対する被覆粒子若しくは表面近傍に存在するLi-Mn化合物粒子の重量百分率が0.5%以上20%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末である(本発明1)。」

4エ. 「[0033] 次に、本発明に係る正極活物質粒子粉末の製造方法について述べる。

[0044] 本発明に係る正極活物質粒子粉末は、核となるLi-Mn複合酸化物粒子の粒子表面若しくは表面近傍に、被覆又は存在させる、スピネル型Li-Mn複合酸化物粒子、またはオリビン型Li-Mnリン酸化合物粒子を乾式による機械的処理によって、核となる二次粒子の粒子表面若しくは表面近傍にスピネル型Li-Mn複合酸化物粒子、またはオリビン型Li-Mnリン酸化合物粒子を存在させるものである。…
[0045] 被覆又は存在させる粉末の二次粒子の平均粒子径および、核となる二次粒子の平均粒子径は、非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の二次粒子の平均粒子径が核となる二次粒子の平均粒子径の1.1倍以上であり、かつ核となる粒子に対する被覆粒子若しくは表面近傍に存在するLi-Mn化合物粒子の重量百分率が0.5%以上20%以下であることを満足すれば特に制限されないが、核となる二次粒子の平均粒子径は通常1?45μm、好ましくは1.5?40μmであり、被覆又は存在させる粉末の二次粒子の平均粒子径は通常3.0μm以下、好ましくは0.8?2.8μmである。…」

4オ. 「[0047] 次に、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末を含有する正極について述べる。
[0048] 本発明に係る正極活物質粒子粉末を用いて正極を製造する場合には、常法に従って、導電剤と結着剤とを添加混合する。…
[0049] 本発明に係る正極活物質粒子粉末を用いて製造される二次電池は、前記正極、負極及び電解質から構成される。」

4カ. 「[0067] 参考例1:
まず、核となる粒子を下記製造方法に従って作製した。密閉型反応槽に水を14L(リットル)入れ、窒素ガスを流通させながら50°に保持した。さらにpH=8.2(±0.2)となるよう、撹拌しながら連続的に1.5MのNi、Co、Mnの混合硫酸塩水溶液と0.8M炭酸ナトリウム水溶液と2Mアンモニア水溶液を加えた。反応中は濃縮装置により濾液のみを系外に排出して固形分は反応槽に滞留させながら、20時間反応後、共沈生成物のスラリーを採取した。採取したスラリーを濾過、水洗し、105°で一晩乾燥させ、共沈前駆体の粉末を得た。
[0068] 得られた共沈前駆体と炭酸リチウム粉末とホウ酸を秤量し、十分に混合した。これを電気炉を用いて、エアー流通下、800℃で5hr焼成し、Li-Mn複合酸化物粒子粉末を得た。

[0070] ICP組成分析の結果、それぞれモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.33、Ni:Co:Mn=21.6:12.4:66であった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)によって前記Li-Mn複合酸化物粒子粉末の粒子を観察した結果、平均一次粒子径が0.07μmの一次粒子が凝集して二次粒子を形成していた。また、Li-Mn複合酸化物粒子粉末の平均粒子径は12.1μmであった。…
[0071] 更に被覆する粒子を下記製造方法に従って作製した。2mol/lの硫酸ニッケルと硫酸コバルト及び硫酸マンガンをNi:Co:Mn=40:20:40なるように混合した水溶液と5.0mol/lアンモニア水溶液を、同時に反応槽内に供給した。
[0072] 反応槽は羽根型攪拌機で常に攪拌を行い、同時にpH=11.5±0.5となるように2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を自動供給した。生成したNi-Co-Mn水酸化物はオーバーフローされ、オーバーフロー管に連結された濃縮槽で濃縮し、反応槽へ循環を行い、反応槽と濃縮槽中のNi-Co-Mn水酸化物濃度が4mol/lになるまで40時間反応を行った。
[0073] 反応後、取り出した懸濁液を、フィルタープレスを用いてNi-Co-Mn水酸化物の重量に対して10倍の水により水洗を行った後、乾燥を行い、Ni:Co:Mn=33:33:33の平均粒子径が9.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子を得た。Ni-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した。
[0074] この混合物を酸素雰囲気下、925℃にて4時間焼成し、解砕した。得られた焼成物の化学組成は、ICP分析の結果、Li_(1.05)Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)であった。この粒子を気流式粉砕機によって粉砕し、二次粒子の平均粒子径が2μmのLi-Ni-Co-Mn複合酸化物を得た。
[0075] これら核となる粒子と被覆する粒子とを重量比で、核となる粒子:被覆する粒子=99:1での割合で混合した後、機械式摩砕機を用いて核粒子の表面にLi_(1.05) Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)が1%コートした正極活物質粒子粉末を得た。この正極活物質粒子粉末の二次粒子の平均粒子径は13.4μmであった。…」

4キ. 引用文献4には、上記4ア.?4エ.によれば、高電圧充電時に充放電容量が大きく、初期充放電効率に優れた非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末であって、平均粒子径が1?45μmである核となる二次粒子が、少なくとも空間群R-3mに属する結晶系を有する化合物としてのLiM_(p)Mn_((1-p))O_(2)(MはNi及び/またはCo、0<p≦1)と、空間群C2/mに属する結晶系を有する化合物としてのLi_(2)M’_((1-q))Mn_(q)O_(3)(M’はNi及び/またはCo、0<q≦1)とを有し、Cu-Kα線を使用した粉末X線回折図の2θ=20.8±1°における最大回折ピークの強度(a)と2θ=18.6±1°における最大回折ピークの強度(b)との相対強度比(a)/(b)が0.02?0.5であり、Mn含有量はモル比でMn/(Ni+Co+Mn)が0.55以上であるLi-Mn複合酸化物粒子であり、前記二次粒子の粒子表面若しくは表面近傍に、組成がLi_(x2) Mn_(2-y2)Ni_(y2)O_(4)(0.95≦x2≦1.10、0.45≦y2≦0.55)、またはLi_(x3)Mn_(1-y3)Fe_(y3)PO_(4)(0.98≦x3≦1.10、0<y3≦0.30)から選ばれる少なくとも1種のLi-Mn化合物粒子を被覆又は存在させた非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末であり、該非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の二次粒子の平均粒子径が核となる二次粒子の平均粒子径の1.1倍以上であり、かつ核となる粒子に対する被覆粒子若しくは表面近傍に存在するLi-Mn化合物粒子の重量百分率が0.5%以上20%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末が記載されていると認められる。

4ク. そして、上記4カ.によれば、参考例1においては、核となる粒子がモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.33、Ni:Co:Mn=21.6:12.4:66であるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子であり、前記二次粒子の粒子表面にLi_(1.05) Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)が1%コートした、平均粒子径が13.4μmの二次粒子を正極活物質粒子粉末としたとされている。

4ケ. また、上記4カ.によれば、参考例1においては、Ni、Co、Mnの共沈前駆体と炭酸リチウム粉末とを混合し、エアー流通下、800℃で5hr焼成し、モル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.33、Ni:Co:Mn=21.6:12.4:66であり、平均粒子径が12.1μmである、核となるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子を得、更に被覆する粒子を、Ni-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した混合物を酸素雰囲気下、925℃にて4時間焼成し、解砕して、平均粒子径が2μmである、Li_(1.05)Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)の二次粒子粉末を得、前記核となる粒子と前記被覆する粒子とを重量比で99:1の割合で混合し、機械式摩砕機を用いて前記核となる粒子の表面にLi_(1.05)Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)が1%コートした、平均粒子径が13.4μmの正極活物質粒子粉末の二次粒子粉末を得たとされている。

4コ. また、上記4オ.によれば、非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末を用いた非水電解質二次電池は、前記正極活物質を用いた正極、負極及び電解質から構成されるとされている。

4サ. ここで、上記4ク.?4ケ.に示したような、モル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.33、Ni:Co:Mn=21.6:12.4:66であるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子とは、Li_(1.33)Ni_(0.216)Co_(0.124)Mn_(0.66)O_(2)であるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子と言い換えることができると認められる。

4シ. 上記4キ.?4サ.の検討から、引用文献4には、参考例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(4シ-1) 核となる粒子がLi_(1.33)Ni_(0.216)Co_(0.124)Mn_(0.66)O_(2)であるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子であり、前記二次粒子の粒子表面にLi_(1.05) Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)が1%コートした、平均粒子径が13.4μmの二次粒子である非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末(以下、「引用文献4の正極活物質粒子粉末の発明」という。)。

(4シ-2) 非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末の製造方法であって、Ni、Co、Mnの共沈前駆体と炭酸リチウム粉末とを混合し、エアー流通下、800℃で5hr焼成し、Li_(1.33)Ni_(0.216)Co_(0.124)Mn_(0.66)O_(2)であり、平均粒子径が12.1μmである、核となるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子を得、更に被覆する粒子を、Ni-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した混合物を酸素雰囲気下、925℃にて4時間焼成し、解砕して、平均粒子径が2μmである、Li_(1.05)Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)の二次粒子粉末を得、前記核となる粒子と前記被覆する粒子とを重量比で99:1の割合で混合し、機械式摩砕機を用いて前記核となる粒子の表面にLi_(1.05)Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)が1%コートした、平均粒子径が13.4μmの正極活物質粒子粉末の二次粒子粉末を得る方法(以下、「引用文献4の正極活物質粒子粉末の製造方法の発明」という。)。

(4シ-3) 核となる粒子がLi_(1.33)Ni_(0.216)Co_(0.124)Mn_(0.66)O_(2)であるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子であり、前記二次粒子の粒子表面にLi_(1.05) Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)が1%コートした、平均粒子径が13.4μmの二次粒子である非水電解質二次電池用正極活物質粒子粉末を用いた非水電解質二次電池であって、前記正極活物質粒子粉末を用いた正極、負極及び電解質から構成される二次電池(以下、「引用文献4の非水電解質二次電池の発明」という。)。


5. 引用文献5(特許第4462451号公報)は、上記第3によれば、申立理由1における主たる証拠として提出され、また、申立理由4における従たる証拠として提出されているところ、当該引用文献5には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「非水電解液二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載されている。

5ア. 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともCoが粒子内部に存在するLi-Ni系酸化物粒子の二次粒子の粒子表面に、Li-Mn系複合酸化物を存在させたLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、マンガンの濃度が粒子の中心から粒子表面に向けて高くなっており、前記Li-Mn系複合酸化物の組成が、Lix2(Mn1-z2M2z2)y2O_(2)、(M2はCo、Ni、Al、Fe、Mg、Zr、Ti、Bから選ばれる少なくとも1種の金属であり、且つ、1/2<x2≦4/3、2/3≦y2≦1、0≦z2<4/5)であることを特徴とするLi-Ni系複合酸化物粒子粉末。」

5イ. 「【背景技術】

【0003】
従来、4V級の電圧をもつ高エネルギー型のリチウムイオン二次電池に有用な正極活物質としては、スピネル型構造のLiMn_(2)O_(4)、ジグザグ層状構造のLiMnO_(2)、層状岩塩型構造のLiCoO_(2)、LiNiO_(2)等が一般的に知られており、なかでもLiNiO_(2)を用いたリチウムイオン二次電池は高い充放電容量を有する電池として注目されてきた。しかし、この材料は、充電時の熱安定性及び充放電サイクル耐久性に劣る為、更なる特性改善が求められている。
【0004】
即ち、LiNiO_(2)はリチウムを引き抜いた際に、Ni^(3+)がNi^(4+)となりヤーンテラー歪を生じ、Liを0.45引き抜いた領域で六方晶から単斜晶へ、さらに引き抜くと単斜晶から六方晶と結晶構造が変化する。そのため、充放電反応を繰り返すことによって、結晶構造が不安定となり、サイクル特性が悪くなる、又酸素放出による電解液との反応などが起こり、電池の熱安定性及び保存特性が悪くなるといった特徴があった。この課題を解決する為に、LiNiO_(2)のNiの一部にCo及びAlを添加した材料の研究が行われてきたが、未だにこれらの課題を解決した材料は得られておらず、より結晶性の高いLi-Ni系複合酸化物が求められている。
【0005】
また、Li-Ni系複合酸化物の製造方法において、充填性が高く結晶構造が安定なLi-Ni系複合酸化物を得るためには、物性及び結晶性、不純物量を制御したNi複合水酸化物粒子を用い、LiサイトへのNi^(2+)の混入の無い条件で焼成を行う必要がある。
【0006】
即ち、非水電解質二次電池用の正極活物質として充填性が高く結晶構造が安定で充電状態の熱安定性に優れたLi-Ni系複合酸化物が要求されている。
【0007】
前記の熱安定性の改善には、酸素放出による電解液との反応を抑制することが重要である。Li-Ni系複合酸化物は、充電状態においてNi^(4+)を生成するが、この酸化状態のNiイオンは不安定であり、容易に酸素を放出し、Ni^(3+)ないしはNi^(2+)の状態に還元されやすい。このため、該酸化物をリチウム二次電池の正極活物質として用いた場合、充電状態において、発熱・発火等の熱的安定性に問題が生じることになる。
【0008】
さらに、リチウム二次電池の熱的安定性、とりわけ発熱・発火は、電極活物質と電解液の固液界面を起点にして起こると考えられる。
【0009】
このような事実を鑑みた場合、Li-Ni系複合酸化物の熱的安定性を改善するには、電解液との接触面すなわち粒子表面を、他の安定な元素でコートすることが有効であると考えられる。

【0012】
本発明はコア材料にLi-Ni系複合酸化物を用いたものであり、その目的もサイクル特性の向上ではなく、Li-Ni系複合酸化物に特有な熱安定性の問題を改善することにある。」

5ウ. 「【0033】
先ず、本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末について述べる。
【0034】
本発明に係る非水電解質二次電池用Li-Ni系複合酸化物粒子粉末は、特定の組成を有するLi-Ni系酸化物の二次粒子を核とし、該二次粒子の粒子表面若しくは粒子表面近傍に、Li-Mn系複合酸化物を被覆又は存在させたものである。すなわち、核となる二次粒子の表面全体を特定の組成を有するLi-Mn系複合酸化物を被覆させたもの、または核となる二次粒子の表面近傍若しくは粒子表面の一部に、特定の組成を有するLi-Mn系複合酸化物を存在若しくは付着させたものである。

【0039】
核となる二次粒子の平均二次粒子径は、3μm?20μmが好ましい。平均二次粒子径が3μm未満の場合、電極充填密度が下がると共に、BET比表面積が大きくなることによって、電解液との反応性が高くなり、充電時の熱安定性が低下する。平均粒子径が20μmを超えると、電極の厚みが厚くなる為、電極内の抵抗が上昇して、充放電レート特性が低下する。…」

5エ. 「【0067】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0068】
平均粒子径はレーザー式粒度分布測定装置LMS-30[セイシン企業(株)製]を用いて湿式レーザー法で測定した体積基準の平均粒子径である。
被覆又は存在させる粒子の存在状態はエネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡SEM-EDX[(株)日立ハイテクノロジーズ製]を用いて観察した。
被覆又は存在させる粒子の平均一次粒子径はエネルギー分散型X線分析装置付き走査電子顕微鏡SEM-EDX[(株)日立ハイテクノロジーズ製]を用いて観察し、確認した。

【0070】
Li-Ni系複合酸化物粒子を用いてコインセルによる初期充放電特性及び高温保存特性評価を行った。
まず、正極活物質としてLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を90重量%、導電材としてアセチレンブラックを3重量%及びグラファイトKS-16を3重量%、バインダーとしてN-メチルピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン4重量%とを混合した後、Al金属箔に塗布し150℃にて乾燥した。このシートを16mmφに打ち抜いた後、1t/cm^(2)で圧着し、電極厚みを50μmとした物を正極に用いた。負極は16mmφに打ち抜いた金属リチウムとし、電解液は1mol/lのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比で1:2で混合した溶液を用いてCR2032型コインセルを作成した。
初期充放電特性は、室温で充電は4.25Vまで0.2mA/cm^(2)にて行った後、放電を3.0Vまで0.2mA/cm^(2)にて行い、その時の初期充電容量、初期放電容量及び初期効率を測定した。」

5オ. 「【0081】
比較例1
Ni:Co:Mn=50:20:30の平均二次粒子径が14.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子に、モル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.02となるように水酸化リチウム・1水塩と混合し、酸素雰囲気下、950℃にて15時間焼成し、Li_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)複合酸化物を得た。次いで、この複合酸化物に対して、Co/Mnのモル比が9/1の複合水酸化物を、重量百分率で3%相当となるように混合した後、機械的磨砕機を用いて30分間機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、850℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を得た。
…また、このLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の放電容量は175mAh/gであった。

【0085】
Li-Ni系複合酸化物粒子粉末の核となる粒子の組成、表面若しくは表面近傍に被覆又は存在させる粒子の組成、被覆又は存在させる粒子の重量百分率、焼成温度を種々変化させて、Li-Ni系複合酸化物粒子粉末を製造した。得られたLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0086】
【表1】



5カ. 引用文献5には、上記5ア.?5ウ.によれば、非水電解質二次電池用の正極活物質として充填性が高く結晶構造が安定で充電状態の熱安定性に優れたLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、少なくともCoが粒子内部に存在するLi-Ni系酸化物粒子の二次粒子の粒子表面に、Li-Mn系複合酸化物を存在させたLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、マンガンの濃度が粒子の中心から粒子表面に向けて高くなっており、前記Li-Mn系複合酸化物の組成が、Lix2(Mn1-z2M2z2)y2O_(2)、(M2はCo、Ni、Al、Fe、Mg、Zr、Ti、Bから選ばれる少なくとも1種の金属であり、且つ、1/2<x2≦4/3、2/3≦y2≦1、0≦z2<4/5)であることを特徴とするLi-Ni系複合酸化物粒子粉末が記載されていると認められる。

5キ. そして、上記5オ.によれば、比較例1においては、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を得たとされ、このLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の放電容量は175mAh/gであったとされている。

5ク. 上記5エ.からすると、Li-Ni系複合酸化物粒子粉末の放電容量は、当該Li-Ni系複合酸化物粒子粉末を正極活物質として用い、電解液に1mol/lのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比で1:2で混合した溶液を用いたコインセルによる初期充放電特性の評価から得られたことが把握される。

5ケ. また、上記5オ.の表1によれば、比較例1によって得られたLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の平均二次粒子径は、15μmであったとされている。

5コ. また、上記5オ.によれば、比較例1においては、Ni:Co:Mn=50:20:30の平均二次粒子径が14.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子に、モル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.02となるように水酸化リチウム・1水塩と混合し、酸素雰囲気下、950℃にて15時間焼成し、Li_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)複合酸化物を得、この複合酸化物に対して、Co/Mnのモル比が9/1の複合水酸化物を、重量百分率で3%相当となるように混合した後、機械的磨砕機を用いて30分間機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、850℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を得たとされている。

5サ. 上記5カ.?5コ.の検討から、引用文献5には、比較例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(5サ-1) 核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、電解液に1mol/lのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比で1:2で混合した溶液を用いた、充放電可能なコインセルにおいて、正極活物質として用いられ、平均二次粒子径が15μmであるLi-Ni系複合酸化物粒子粉末(以下、「引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の発明」という。)。

(5サ-2) Li-Ni系複合酸化物粒子粉末の製造方法であって、Ni:Co:Mn=50:20:30の平均二次粒子径が14.5μmのNi-Co-Mn水酸化物粒子に、モル比がLi/(Ni+Co+Mn)=1.02となるように水酸化リチウム・1水塩と混合し、酸素雰囲気下、950℃にて15時間焼成し、Li_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)複合酸化物を得、この複合酸化物に対して、Co/Mnのモル比が9/1の複合水酸化物を、重量百分率で3%相当となるように混合した後、機械的磨砕機を用いて30分間機械的処理を行った後、再度酸素雰囲気下、850℃にて5時間焼成し、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を得る方法(以下、「引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明」という。)。

(5サ-3) 核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末を正極活物質として用い、電解液に1mol/lのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比で1:2で混合した溶液を用いた、充放電可能なコインセル(以下、「引用文献5の充放電可能なコインセルの発明」という。)。


6. 引用文献6(特開2016-11227号公報)は、上記第3によれば、申立理由4における主たる証拠として提出されているところ、当該引用文献6には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「ニッケル複合水酸化物及びその製造方法、正極活物質及びその製造方法、並びに非水系電解質二次電池」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載されている。

6ア. 「【請求項10】
Li_(1+u)Ni_(1-x-y-z)Co_(x)Mn_(y)M_(z)O_(2)(但し、式中のuは-0.05≦u≦0.50、xは0<x≦0.35、yは0≦y≦0.35、zは0≦z≦0.1の範囲内にあり、0<x+y+z≦0.7を満たす。また、式中のMは、V、Mg、Al、Ti、Mo、Nb、Zr及びWから選ばれる少なくとも1種の添加元素を示す。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用の正極活物質であって、
上記リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなり、
上記板状一次粒子の板面と垂直な方向から投影した形状が球形、楕円形、長円形又は塊状物の平面投影形の何れかであり、上記二次粒子のアスペクト比が3?20であり、レーザー回折散乱法測定による体積平均粒径(Mv)が4μm?20μmであることを特徴とする非水系電解質二次電池用の正極活物質。」

6イ. 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル複合水酸化物及びその製造方法、正極活物質及びその製造方法、並びに非水系電解質二次電池に関する。より詳しくは、リチウムイオン二次電池等の非水系電解質二次電池において、正極活物質として用いられるリチウムニッケル複合酸化物の前駆体用ニッケル複合水酸化物及びその製造方法、正極活物質及び前駆体用ニッケル複合水酸化物を用いたその製造方法、並びに正極活物質を用いた非水系電解質二次電池に関する。」

6ウ. 「【背景技術】

【0003】
リチウム金属複合酸化物、特にリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として期待され、実用化が進んでいる。リチウムコバルト複合酸化物を用いた電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発が、これまで数多く行われてきており、既に様々な成果が得られている。
【0004】
これまで主に提案されている正極活物質としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO_(2))、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO_(2))やリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2))、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn_(2)O_(4))等を挙げることができ、主に合成が容易な球状又は略球状の粒子が用いられている。
【0005】
これらの正極活物質を用いた電池の主な特性として、容量や出力密度が挙げられ、特に近年において需要が飛躍的に増加しつつあるハイブリッド車載用電池には、高い出力密度が求められる。
【0006】
電池の出力密度を向上させる方法として、二次電池で用いられる電極膜の厚みを薄くすることが挙げられ、例えばハイブリッド車載用電池では、厚みが50μm程度のものが用いられる。ハイブリッド車載用電池において、電極膜の厚みを薄くすることができる理由としては、リチウムイオンの移動距離が少なくなるためである。このように、薄い電極膜に用いられる正極活物質は、電極膜を突き破る恐れがあることから、粒径の揃った小粒径粒子に限られ、ハイブリッド車載用電池用の電極膜の場合には、5μm程度の粒子が用いられる。
【0007】
しかしながら、このような小粒径粒子を電極膜に用いた場合には、電極密度が低くなるため、出力密度と共に重要な特性である体積エネルギー密度が低下するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-84502号公報

【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなトレードオフの関係を打破する方法としては、一般的に球状又は略球状である正極活物質粒子の形状を変化させる、具体的には、板状の形状とすることが挙げられる。正極活物質粒子の形状を板状とすることで、同体積の球状粒子よりも表面積が増加し、また、電極作製時に板状粒子を配向させれば、高い電極密度を実現することができる。更に、このようにアスペクト比の高い粒子を配向させることで、電極の厚みを更に薄くすることが可能となり、更なる出力向上が可能となる。
【0010】
このような板状の正極活物質粒子としては、例えば、特許文献1には、厚さ(μm)をt、厚さtを規定する厚さ方向と直交する方向における寸法である粒径をd、アスペクト比をd/tとすると、t≦30、d/t≧2であり、(003)面が板状粒子の板面と交差するように配向した一次結晶粒子(リチウム出入面配向粒子)が、(003)面が板状粒子の板面と平行となるように配向した一次結晶粒子(多数の(003)面配向粒子)の集合体内に、分散状態で配置された正極活物質用の板状粒子が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献1の記載通りに、二次粒子の外側にリチウム出入面を配向させても、正極活物質と電解質との接触が十分に行われない場合には、出力特性に悪影響を与える。また、特許文献1には、レート特性については記載されているものの、電池特性の重要な特性である電池容量そのものについては記載されていない。
【0012】
以上のように、高い電極密度を有した薄い電極膜を形成することができ、高容量で、且つ出力特性に優れる正極活物質を工業的に得ることは、従来技術においては困難である。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みて、薄い電極膜を形成することができ、電池の正極に用いた際に高い出力特性と電池容量が得られ、高い電極密度の達成が可能な非水系電解質二次電池用の正極活物質を提供すると共に、この正極活物質を用いた高容量で高出力が得られる非水系電解質二次電池を提供することを目的とする。」

6エ. 「【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明者らは、高い電極密度の達成が可能な形状を有する非水系電解質二次電池用の正極活物質及びその前駆体であるニッケル複合水酸化物に関して鋭意検討を行った。その結果、ニッケル複合水酸化物の晶析時の組成と晶析条件を制御することにより、複数の板状一次粒子の板面が重なって凝集した板状の二次粒子が得られるとの知見を得た。
【0016】
更に、本発明者らは、このようなニッケル複合水酸化物をリチウム化合物と混合して焼成することにより、ニッケル複合水酸化物の形状を引き継いだ正極活物質が得られ、高い出力特性及び電池容量と高電極密度とを両立させることが可能であるとの知見を得て、本発明を完成した。

【0024】
本発明に係る非水系電解質二次電池用の正極活物質は、Li_(1+u)Ni_(1-x-y-z)Co_(x)Mn_(y)M_(z)O_(2)(但し、式中のuは-0.05≦u≦0.50、xは0<x≦0.35、yは0≦y≦0.35、zは0≦z≦0.1の範囲内にあり、0<x+y+z≦0.7を満たす。また、式中のMは、V、Mg、Al、Ti、Mo、Nb、Zr及びWから選ばれる少なくとも1種の添加元素を示す。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成された非水系電解質二次電池用の正極活物質であって、リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなり、板状一次粒子の板面と垂直な方向から投影した形状が球形、楕円形、長円形又は塊状物の平面投影形の何れかであり、二次粒子のアスペクト比が3?20であり、レーザー回折散乱法測定による体積平均粒径(Mv)が4μm?20μmであることを特徴とする。」

6オ. 「【0123】
体積平均粒径(Mv)が4μm未満では、板状の形状を有していても充填時に二次粒子間に隙間が増加するため、体積エネルギー密度が低下する。また、電極作製用スラリーの混練時に粘度が上昇してハンドリング性の悪化が生じる。体積平均粒径(Mv)が20μmを超えると、電極膜作製時の筋引きやセパレータ貫通による短絡の原因となる。体積平均粒径(Mv)を4μm?20μmの範囲とすることで、電極での体積エネルギー密度が高く、電極膜作製時の筋引きやセパレータ貫通による短絡が抑制された正極活物質を得ることができる。」

6カ. 「【0192】
(実施例1)
[核生成工程]

【0193】
[粒子成長工程]
…得られたニッケル複合水酸化物の組成はNi_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)(OH)_(2)であった。また、体積平均粒径(Mv)は10.6μmであり、粒径のばらつき指数を示す[(D90-D10)/Mv]は0.65であった。
【0194】
…SEM観察から測定されたアスペクト比は6.3であり、板状一次粒子の板面と垂直な方向から投影した形状の最大径(二次粒子の板面と垂直な方向から投影した板状一次粒子の最大径)の平均値は2.1μmであった。…
【0195】
[正極活物質の製造及び評価]
実施例1では、得られたニッケル複合水酸化物と、Li/Me=1.02となるように秤量した水酸化リチウムを混合してリチウム混合物を形成した。混合は、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製、TURBULA Typet2C)を用いて行った。
【0196】
次に、実施例1では、得られたリチウム混合物を空気気流中にて、900℃で5時間焼成し、冷却した後に解砕して正極活物質を得た。得られた正極活物質は、組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であり、X線回折装置(パナリティカル社製、X‘Pert PRO)による分析で六方晶系のリチウム複合酸化物の単相であることが確認された。…更に、2032型コイン電池(コイン型電池1)を作製して初期放電容量、サイクル容量維持率、レート特性を評価した。
【0197】
そして、実施例1では、ニッケル複合水酸化物と同様にして評価した体積平均粒径(Mv)、アスペクト比、組成比と共に、これらの評価結果を表1に示す。[(D90-D10)/Mv]は、ニッケル複合水酸化物と同等であった。

【0220】
【表1】



6キ. 引用文献6には、上記6ア.?6オ.によれば、薄い電極膜を形成することができ、電池の正極に用いた際に高い出力特性と電池容量が得られ、高い電極密度の達成が可能な非水系電解質二次電池用の正極活物質であって、Li_(1+u)Ni_(1-x-y-z)Co_(x)Mn_(y)M_(z)O_(2)(但し、式中のuは-0.05≦u≦0.50、xは0<x≦0.35、yは0≦y≦0.35、zは0≦z≦0.1の範囲内にあり、0<x+y+z≦0.7を満たす。また、式中のMは、V、Mg、Al、Ti、Mo、Nb、Zr及びWから選ばれる少なくとも1種の添加元素を示す。)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成され、上記リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなり、上記板状一次粒子の板面と垂直な方向から投影した形状が球形、楕円形、長円形又は塊状物の平面投影形の何れかであり、上記二次粒子のアスペクト比が3?20であり、レーザー回折散乱法測定による体積平均粒径(Mv)が4μm?20μmであることを特徴とする非水系電解質二次電池用の正極活物質が記載されていると認められる。

6ク. そして、上記6カ.によれば、実施例1の非水系電解質二次電池用の正極活物質は、組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であり、六方晶系のリチウム複合酸化物の単相であり、アスペクト比が6.3であり、体積平均粒径(Mv)が10.6μmであるとされている。

6ケ. また、上記6カ.によれば、実施例1においては、Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)(OH)_(2)であり、体積平均粒径(Mv)が10.6μmであり、粒径のばらつき指数を示す[(D90-D10)/Mv]が0.65であり、アスペクト比は6.3であり、板状一次粒子の板面と垂直な方向から投影した形状の最大径(二次粒子の板面と垂直な方向から投影した板状一次粒子の最大径)の平均値は2.1μmであるニッケル複合水酸化物と、Li/Me=1.02となるように秤量した水酸化リチウムを混合してリチウム混合物を形成して得られたリチウム混合物を空気気流中にて、900℃で5時間焼成し、冷却した後に解砕して、組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であり、六方晶系のリチウム複合酸化物の単相であり、アスペクト比が6.3であり、体積平均粒径(Mv)が10.6μmである、非水系電解質二次電池用の正極活物質を得たとされている。

6コ. また、上記6イ.によれば、上記の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池に関する発明も記載されていると認められる。

6サ. 上記6キ.?6コ.の検討から、引用文献6には、実施例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(6サ-1) 薄い電極膜を形成することができ、電池の正極に用いた際に高い出力特性と電池容量が得られ、高い電極密度の達成が可能な非水系電解質二次電池用の正極活物質であって、組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であり、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成され、前記リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなり、アスペクト比が6.3であり、体積平均粒径(Mv)が10.6μmである、非水系電解質二次電池用の正極活物質(以下、「引用文献6の正極活物質の発明」という。)。

(6サ-2) 薄い電極膜を形成することができ、電池の正極に用いた際に高い出力特性と電池容量が得られ、高い電極密度の達成が可能な非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法であって、Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)(OH)_(2)であり、体積平均粒径(Mv)が10.6μmであり、粒径のばらつき指数を示す[(D90-D10)/Mv]が0.65であり、アスペクト比は6.3であり、板状一次粒子の板面と垂直な方向から投影した形状の最大径(二次粒子の板面と垂直な方向から投影した板状一次粒子の最大径)の平均値は2.1μmであるニッケル複合水酸化物と、Li/Me=1.02となるように秤量した水酸化リチウムを混合して得られたリチウム混合物を空気気流中にて、900℃で5時間焼成し、冷却した後に解砕して、組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であり、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成され、前記リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなり、アスペクト比が6.3であり、体積平均粒径(Mv)が10.6μmである、非水系電解質二次電池用の正極活物質を得る方法(以下、「引用文献6の正極活物質の製造方法の発明」という。)。

(6サ-3) 薄い電極膜を形成することができ、電池の正極に用いた際に高い出力特性と電池容量が得られ、高い電極密度の達成が可能な非水系電解質二次電池用の正極活物質であって、組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であり、六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成され、前記リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなり、アスペクト比が6.3であり、体積平均粒径(Mv)が10.6μmである、正極活物質を用いた非水系電解質二次電池(以下、「引用文献6の二次電池の発明」という。)。


7. 引用文献7(特表2014-529868号公報)は、上記第3によれば、申立理由4における主たる証拠として提出されているところ、当該引用文献7には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「リチウムイオン電気化学セルに使用される大容量正極及び該正極の製造方法」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載され、以下の発明が記載されている。

7ア. 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を有する組成物を含み、
Li_(1+x)(Ni_(a)Mn_(b)Co_(c))_(1-x)O_(2)
[式中、0.05≦x≦0.10、a+b+c=1、0.6≦b/a≦1.1、c/(a+b)<0.25、a、b、及びcはいずれも0よりも大きい]
前記組成物が、30℃でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.7Vの間でサイクルした場合の52回目のサイクル後の容量を2回目のサイクル後の容量と比較した場合に、50サイクル後に約95%よりも高い容量維持率を有する、リチウムイオン電気化学セル用の正極。

【請求項6】
前記組成物が、50℃でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.7Vの間でサイクルした場合の52回目のサイクル後の容量を2回目のサイクル後の容量と比較した場合に、50サイクル後に約90%よりも高い容量維持率を有する、請求項1に記載のリチウムイオン電気化学セル用の正極。
…」

7イ. 「【0002】
[背景]

【0003】
リチウムイオン電気化学的セルの設計における課題としては、大容量、高い充放電速度、低い不可逆容量、コスト、及び安全性のバランスを得ることがある。コバルト酸リチウム(LiCoO_(2))は、コンピュータ及び携帯電話などの市販製品に使用されるリチウムイオン電気化学セルの正極として広く使用されている。LiCoO_(2)電極は、LiCoO_(2)の高い密度に基づく大きな容量、その層状構造に基づく高速の充放電、及び低い可逆容量を有している。しかしながら、LiCoO_(2)は高価であり、時折熱暴走反応を生じやすい。コスト及び安全性能を適正化するため、マンガン及びニッケルを酸化物構造体に添加することで、より低コストで安定性の高いいわゆるNMC(ニッケル、マンガン、コバルト)酸化物を形成することができる。しかしながら、これらの酸化物の容量は、LiCoO_(2)の容量と比較してそれほど増加していない。
【0004】
一般的には、層状のリチウム遷移金属酸化物は、完全に脱リチウム化された状態の構造的不安定性のために、サイクル(充電)時に完全に脱リチウム化されることは決してない。したがって、より大きな容量を実現するための1つの方法は、高度な脱リチウム化状態において高い安定性を有し、したがってより高い電圧(例えばLi/Li^(+)に対し4.3?4.8V又はそれ以上)にサイクルすることが可能な正極材料を設計することである。Li[Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16)]O_(2)などの一般的なリチウム混合金属酸化物(NMC)正極材料は、(Li/Li^(+)に対して)最大で約4.35V?4.4Vの充電電圧にまで良好にサイクルされるものである。しかしながら、こうした材料がこの値(例えばLi/Li+に対して4.8V)を超えて充電される場合には、サイクル寿命は極めて低くなる。
【0005】
[概要]
サイクル毎に容量損失をほとんど生じることなく、高い電圧(例えばLi/Li^(+)に対して4.8V)にまでサイクルすることを可能とする、リチウムイオン電気化学セルにおいて有用な正極材料が求められている。提供される正極材料、該材料から作製される電極、及び該材料を製造する方法により、従来の材料と比較してサイクル毎の容量損失がほとんど生じないか又は低減された高い電圧のサイクリングが可能となる。
【0006】
一態様では、下式:Li_(1+x)(Ni_(a)Mn_(b)Co_(c))_(1-x)O_(2)[式中、0.05≦x≦0.10、a+b+c=1、0.6≦b/a≦1.1、c/(a+b)<0.25、a、b、及びcはいずれも0よりも大きい]を有する組成物を含み前記組成物は、…リチウムイオン電気化学セル用の正極が提供される。該組成物は、850℃?925℃の範囲の温度に前駆物質を焼成することによって調製することができる。コバルトの量は、約10?約20モル%(全金属含量に対して)で変化してよく、マンガン及びニッケルの量は概ね同じであってよい(b/a=約1)。リチウムの過剰量は、5?7%で変化してよい(0.05≦x≦0.07)。同様の組成物は、50℃でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.7Vの間でサイクルした場合に2回目のサイクル後の容量と比較して52回目のサイクル後に約90%よりも高い容量維持率を有し得る。」

7ウ. 「【0011】
提供される正極及びこれらの正極を有する電気化学的セルは、高い電圧(Li/Li^(+)に対して4.4Vよりも高く、Li/Li^(+)に対して最大で約4.8V)で動作することが可能であり、従来の電極及びセルと比較して複数回のサイクル後の容量維持率がより高い。」

7エ. 「【図面の簡単な説明】
【0013】

【図2】50℃でサイクルした実施例1の組成物について容量(mAh/g)に対するセル電圧(V)を示したグラフである。
【図2a】図2の電圧曲線についてVに対する容量の微分dQ/dVを示したグラフである。
…」

7オ. 「【実施例】
【0033】
サイクリング実験
Mazerustarミキサーを使用して8分間、MNP(アルドリッチ・ケミカルズ社(AldrichChemicals))中で酸化物、導電性希釈剤(Super P、エム・エム・エム社(MMM))、及び結合剤(PVDF、アルドリッチ・ケミカルズ社(Aldrich Chemicals))を(90:5:5)の重量組成で混合することにより正極組成物を調製した。この懸濁液をノッチバーコーターによりアルミニウム箔にコーティングし、コーティングを100℃のオーブン中で乾燥した。コーティングを電極に切断し、金属Li対極を用いて2325個(当審注:「2325個」は「2325型」の誤記と認める。)のコインセルに組み立てた。Maccorサイクラー(マッカー社(Maccor)、オクラホマ州タルサ)を使用し、これらのセルを、C/10の充放電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間で最初の2サイクル充放電を行った後、C/4の充放電速度で2.5?4.7Vの間で以降のサイクルを行った。各セルを…50℃でオーブン内で平衡状態に維持し、52回目のサイクル後の容量を2回目のサイクル後の容量と比較することにより50サイクルにわたって容量維持率を測定した。
【0034】
(実施例1)
15gの(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))(OH)_(2)の組成の混合遷移金属水酸化物(オー・エム・ジー社(OMG)、フィンランド、コッコラより入手可能)を7.8gのLi(OH)・H_(2)Oとモルタル中で混合し、混合物を500℃で4時間焼結した後、900℃で12時間焼成することにより、Li_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)を生成した。

【0036】
図2は、実施例1の組成物について容量(mAh/g)に対するセル電圧(V)を示したグラフである。図2では、「酸素損失」のプラトーが、約4.5?4.7Vの辺りに認められる。「酸素損失」のプラトーの存在は、4.6V付近に際立ったピークを示す容量の微分のプロット(Qに対するdQ/dV)を観察することにより特に明らかである(図2aを参照)。」

7カ. 「【図2】

【図2a】



7キ. 引用文献7には、上記7ア.?7イ.によれば、サイクル毎に容量損失をほとんど生じることなく、高い電圧(例えばLi/Li^(+)に対して4.8V)にまでサイクルすることを可能とする、リチウムイオン電気化学セル用の正極材料であって、組成がLi_(1+x)(Ni_(a)Mn_(b)Co_(c))_(1-x)O_(2) [式中、0.05≦x≦0.10、a+b+c=1、0.6≦b/a≦1.1、c/(a+b)<0.25、a、b、及びcはいずれも0よりも大きい]であり、50℃でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.7Vの間でサイクルした場合の52回目のサイクル後の容量を2回目のサイクル後の容量と比較した場合に、50サイクル後に約90%よりも高い容量維持率を有する、リチウムイオン電気化学セル用の正極材料が記載されていると認められる。

7ク. そして、上記7エ.?7カ.によれば、実施例1のリチウムイオン電気化学セル用の正極材料は、(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))(OH)_(2)の組成の混合遷移金属水酸化物とLi(OH)・H_(2)Oとの混合物を500℃で4時間焼結した後、900℃で12時間焼成することにより生成した、Li_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)であり、当該正極材料、Super P、PVDFを(90:5:5)の重量組成で調整した正極組成物をアルミニウム箔にコーティングした電極と金属Li対極を用いて組み立てた2325型のコインセルにおいて、50℃に維持しながら、C/10の充放電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間で最初の2サイクル充放電を行った後、C/4の充放電速度で2.5?4.7Vの間で以降のサイクルを行ったときに、セル電圧(V)に対する容量(mAh/g)の曲線についての、Vに対する容量の微分dQ/dVのプロットが4.6V付近に際立ったピークを示す、正極材料であるとされている。

7ケ. また、上記7ウ.によれば、引用文献7には、上記の正極材料を用いた正極を有するリチウムイオン電気化学的セルも記載されていると認められる。

7コ. 上記7キ.?7ケ.の検討から、引用文献7には、実施例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(7コ-1) サイクル毎に容量損失をほとんど生じることなく、高い電圧(例えばLi/Li^(+)に対して4.8V)にまでサイクルすることを可能とする、リチウムイオン電気化学セル用の正極材料であって、組成がLi_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)であり、当該正極材料、Super P、PVDFを(90:5:5)の重量組成で調整した正極組成物をアルミニウム箔にコーティングした電極と金属Li対極を用いて組み立てた2325型のコインセルにおいて、50℃に維持しながら、C/10の充放電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間で最初の2サイクル充放電を行った後、C/4の充放電速度で2.5?4.7Vの間で以降のサイクルを行ったときに、52回目のサイクル後の容量を2回目のサイクル後の容量と比較した場合に、50サイクル後に約90%よりも高い容量維持率を有し、セル電圧(V)に対する容量(mAh/g)の曲線についての、Vに対する容量の微分dQ/dVのプロットが4.6V付近に際立ったピークを示す、リチウムイオン電気化学セル用の正極材料(以下、「引用文献7の正極材料の発明」という。)。

(7コ-2) サイクル毎に容量損失をほとんど生じることなく、高い電圧(例えばLi/Li^(+)に対して4.8V)にまでサイクルすることを可能とする、リチウムイオン電気化学セル用の正極材料の製造方法であって、組成がLi_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)である正極材料であり、当該正極材料、Super P、PVDFを(90:5:5)の重量組成で調整した正極組成物をアルミニウム箔にコーティングした電極と金属Li対極を用いて組み立てた2325型のコインセルにおいて、50℃に維持しながら、C/10の充放電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間で最初の2サイクル充放電を行った後、C/4の充放電速度で2.5?4.7Vの間で以降のサイクルを行ったときに、52回目のサイクル後の容量を2回目のサイクル後の容量と比較した場合に、50サイクル後に約90%よりも高い容量維持率を有し、セル電圧(V)に対する容量(mAh/g)の曲線についての、Vに対する容量の微分dQ/dVのプロットが4.6V付近に際立ったピークを示す、正極材料を、(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))(OH)_(2)の組成の混合遷移金属水酸化物とLi(OH)・H_(2)Oとの混合物を500℃で4時間焼結した後、900℃で12時間焼成することにより得る、リチウムイオン電気化学セル用の正極材料の製造方法(以下、「引用文献7の正極材料の製造方法の発明」という。)。

(7コ-3) サイクル毎に容量損失をほとんど生じることなく、高い電圧(例えばLi/Li^(+)に対して4.8V)にまでサイクルすることを可能とする、リチウムイオン電気化学セルであって、組成がLi_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)である正極材料、Super P、PVDFを(90:5:5)の重量組成で調整した正極組成物をアルミニウム箔にコーティングした電極と金属Li対極を用いて組み立てた2325型のコインセルにおいて、50℃に維持しながら、C/10の充放電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間で最初の2サイクル充放電を行った後、C/4の充放電速度で2.5?4.7Vの間で以降のサイクルを行ったときに、52回目のサイクル後の容量を2回目のサイクル後の容量と比較した場合に、50サイクル後に約90%よりも高い容量維持率を有し、セル電圧(V)に対する容量(mAh/g)の曲線についての、Vに対する容量の微分dQ/dVのプロットが4.6V付近に際立ったピークを示す、リチウムイオン電気化学セル(以下、「引用文献7のリチウムイオン電気化学セルの発明」という。)。


8. 引用文献8(特開2013-222612号公報)は、上記第3によれば、申立理由4における主たる証拠として提出されているところ、当該引用文献8には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「非水二次電池」(発明の名称)について、以下の事項が記載され、以下の発明が記載されている。

8ア. 「【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電サイクル特性および貯蔵特性に優れた非水二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池をはじめとする非水二次電池は、高電圧・高容量であることから、その発展に対して大きな期待が寄せられている。非水二次電池の負極材料(負極活物質)には、Li(リチウム)やLi合金の他、Liイオンを挿入および脱離可能な、天然または人造の黒鉛(黒鉛質炭素材料)などが適用されている。
【0003】
ところが、最近では、小型化および多機能化した携帯機器用の電池について更なる高容量化が望まれており、これを受けて、低結晶性炭素やSi(シリコン)、Sn(錫)、更にはSiの超微粒子がSiO_(2)中に分散した構造を持つSiO_(z)(例えば、特許文献1?3)などのように、より多くのLiを収容可能な材料が負極材料(以下、「高容量負極材料」ともいう)として注目を集めている。
【0004】
ところが、前記のような高容量負極材料は、充放電に伴う体積変化が非常に大きいため、特にこのような材料を用いた電池では、充放電の繰り返しによって電池特性が急激に低下する虞があることから、こうした問題を回避する技術の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-47404号公報
【特許文献2】特開2005-259697号公報
【特許文献3】特開2007-242590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電サイクル特性に優れ、貯蔵特性も良好な非水二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成し得た本発明の非水二次電池は、正極と負極とがセパレータを介して積層されてなる電極体と、非水電解質とを有し、体積エネルギー密度が600Wh/L以上の非水二次電池であって、前記正極は、集電体の片面または両面に、リチウムイオンを吸蔵、脱離可能な正極活物質、およびバインダを含有する正極合剤層を有しており、前記負極は、集電体の片面または両面に、リチウムと合金可能な元素もしくは前記元素の化合物を含む合金系材料と、リチウムイオンを吸蔵、脱離可能な炭素材料とを負極活物質とし、更にバインダを含有する負極合剤層を有しており、電池の容量を1時間で放電できる電流値をA(mA)、正極の正極合剤層と負極の負極合剤層との対向面積をB(cm^(2))としたとき、A/B≧4の関係を満たしており、正極合剤層の含有するバインダは、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのうち、少なくとも一方のモノマー由来の構造単位を有する重合体または共重合体を含み、負極合剤層の含有するバインダは、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのうち、少なくとも一方のモノマー由来の構造単位を有する共重合体を含み、負極活物質中の合金系材料の割合をt(質量%)としたときに、0.5≦t≦20であり、電池の有する非水電解質の体積をC(cm^(3))、正極合剤層の空孔体積をD(cm^(3))、負極合剤層の空孔体積をE(cm^(3))、およびセパレータの空孔体積をF(cm^(3))としたとき、〔D×1.07+E×(1+t×0.024)+F×0.98〕×1.86≦C≦〔D×1.07+E×(1+t×0.024)+F×0.98〕×2.14の関係を満足することを特徴とするものである。」

8イ. 「【0010】
前記の通り、非水二次電池では充放電に伴って活物質が体積変化し、これに起因して電極が膨張、収縮する。特に、より多くのLiを収容可能な高容量負極材料では、充放電に伴う体積変化量が大きいことから、これを含有する電極を有する電池においては、電極の膨張に伴って膨れが発生したり、膨張によって電極が劣化したりして、電池の充放電サイクル特性が低下するなどの問題が生じやすい。
【0011】
そこで、本発明では、正極と負極とがセパレータを介して積層されてなる電極体を有する非水二次電池において、体積エネルギー密度を600Wh/L以上とし、かつ電池容量を1時間で消費できる電流値A(mA)と、正極に係る正極合剤層(活物質などを含有する正極合剤層)と負極に係る負極合剤層(活物質などを含有する負極合剤層)との対向面積をB(cm^(2))としたときに、A/B≧4となるようにした。
【0012】
前記のA/Bは電池の電流密度を表している。通常の非水二次電池では、電流密度が2?3.5程度であり、例えば渦巻状に巻回されてなる巻回電極体の場合には、巻回数を増やして、電池内への正負極の活物質の導入量を高めることで、高容量化に対応している。しかしながら、電池内容積には限りがあることから、例えば、巻回電極体内での隙間を極力減らすなどの対策が採られており、これが、充放電に伴う電極の膨張に起因する前記の問題の大きな要因となっている。
【0013】
これに対し、本発明の非水二次電池は、電流密度A/Bを4以上と、電極体における正極合剤層と負極合剤層との対向面積Bを減らしつつ、高い電池容量Aを確保することとしている。正極合剤層と負極合剤層との対向面積Bを低減することで、集電体やセパレータなど活物質以外の構成要素の体積を減らすことができるため、同等の容量を有する従来の電池よりも、電池内での空隙を多くすることができ、この空隙部分が、電極が膨張した際の膨張代となる。よって、本発明の非水二次電池によれば、喩え充放電に伴う体積変化量の大きな活物質を含有する電極を用いた場合でも、この体積変化に起因する前記の問題の発生を抑えることができる。
【0014】
しかしながら、正極合剤層と負極合剤層との対向面積Bを小さくしつつ、電池容量Aを大きくするには、正極合剤層や負極合剤層の厚みを大きくして、電池内に導入する活物質量を多くする必要がある。また、非水二次電池においては、電流密度を高く設定すると負極にLiデンドライトが発生しやすくなり、これが電池の充放電サイクル特性を損なうといった問題もある。
【0015】
そこで、本発明の非水二次電池では、正極および負極を特定の構成とし、かつ電池内に導入する非水電解質の量を特定範囲とすることで、電池容量を高く維持しつつ、充放電サイクル特性の低下抑制を可能としている。」

8ウ. 「【0016】
本発明の非水二次電池に係る正極は、集電体の片面または両面に、Liイオンを吸蔵、脱離可能な正極活物質、およびバインダなどを含有する正極合剤層を有している。
【0017】
正極活物質には、例えば、従来から知られている非水二次電池に使用されているものを使用することができるが、高容量であり、かつ熱安定性にも優れていることから、下記一般組成式(1)で表されるリチウム含有複合酸化物を用いることが好ましい。
Li_(1+x)M^(1)O_(2) (1)
[前記一般組成式(1)中、-0.5≦x≦0.5であり、M^(1)は、少なくともNiと、Co、Mn、FeおよびTiよりなる群から選択される1種以上の元素とを含む2種以上の元素群を表し、M^(1)を構成する各元素中で、Ni、Co、Mn、FeおよびTiの割合(mol%)を、それぞれa、b、c、dおよびeとしたときに、30≦a≦95、b≦40、c≦40、d≦30、e≦30および5≦b+c+d+e≦60である。]」

8エ. 「【0143】
実施例1
<リチウム含有複合酸化物の合成>
…NiとCoとMnとの共沈化合物(球状の共沈化合物)を合成した。…
【0144】
前記の共沈化合物を水洗、濾過および乾燥させて、NiとCoとMnとを6:2:2のモル比で含有する水酸化物を得た。この水酸化物0.194molと、0.206molのLiOH・H_(2)Oとをエタノール中に分散させてスラリー状にした後、遊星型ボールミルで40分間混合し、室温で乾燥させて混合物を得た。次いで、前記混合物をアルミナ製のるつぼに入れ、2dm^(3)/分のドライエアーフロー中で600℃まで加熱し、その温度で2時間保持して予備加熱を行い、更に900℃に昇温して12時間焼成することにより、リチウム含有複合酸化物を合成した。
【0145】
得られたリチウム含有複合酸化物を乳鉢で粉砕して粉体として、正極活物質を得た。この正極活物質は、デシケーター中で保存した。
【0146】
前記正極活物質(リチウム含有複合酸化物の粉体)について、原子吸光分析装置で組成を測定したところ、Li_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される組成であることが判明した。」

8オ. 引用文献8には、上記8ア.?7イ.によれば、充放電サイクル特性に優れ、貯蔵特性も良好な非水二次電池であって、正極と負極とがセパレータを介して積層されてなる電極体と、非水電解質とを有し、体積エネルギー密度が600Wh/L以上の非水二次電池であり、前記正極は、集電体の片面または両面に、リチウムイオンを吸蔵、脱離可能な正極活物質、およびバインダを含有する正極合剤層を有しており、前記負極は、集電体の片面または両面に、リチウムと合金可能な元素もしくは前記元素の化合物を含む合金系材料と、リチウムイオンを吸蔵、脱離可能な炭素材料とを負極活物質とし、更にバインダを含有する負極合剤層を有しており、電池の容量を1時間で放電できる電流値をA(mA)、正極の正極合剤層と負極の負極合剤層との対向面積をB(cm^(2))としたとき、A/B≧4の関係を満たしており、正極合剤層の含有するバインダは、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのうち、少なくとも一方のモノマー由来の構造単位を有する重合体または共重合体を含み、負極合剤層の含有するバインダは、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのうち、少なくとも一方のモノマー由来の構造単位を有する共重合体を含み、負極活物質中の合金系材料の割合をt(質量%)としたときに、0.5≦t≦20であり、電池の有する非水電解質の体積をC(cm^(3))、正極合剤層の空孔体積をD(cm^(3))、負極合剤層の空孔体積をE(cm^(3))、およびセパレータの空孔体積をF(cm^(3))としたとき、〔D×1.07+E×(1+t×0.024)+F×0.98〕×1.86≦C≦〔D×1.07+E×(1+t×0.024)+F×0.98〕×2.14の関係を満足することを特徴とする非水二次電池が記載されていると認められる。

8カ. また、上記8ウ.によれば、本発明の非水二次電池に係る正極における正極活物質には、高容量であり、かつ熱安定性にも優れていることから、一般組成式(1)
Li_(1+x)M^(1)O_(2) (1)
[前記一般組成式(1)中、-0.5≦x≦0.5であり、M^(1)は、少なくともNiと、Co、Mn、FeおよびTiよりなる群から選択される1種以上の元素とを含む2種以上の元素群を表し、M^(1)を構成する各元素中で、Ni、Co、Mn、FeおよびTiの割合(mol%)を、それぞれa、b、c、dおよびeとしたときに、30≦a≦95、b≦40、c≦40、d≦30、e≦30および5≦b+c+d+e≦60である。]で表されるリチウム含有複合酸化物を用いることが好ましいとされている。

8キ. そして、上記8エ.によれば、実施例1においては、NiとCoとMnとを6:2:2のモル比で含有する水酸化物を得、この水酸化物とLiOH・H_(2)Oとの混合物をドライエアーフロー中で600℃まで加熱し、その温度で2時間保持して予備加熱を行い、更に900℃に昇温して12時間焼成することにより得られた、リチウム含有複合酸化物を粉砕して、組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される正極活物質を得たとされている。

8ク. 上記8オ.?8キ.の検討から、引用文献8には、実施例1に注目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
(8ク-1) 非水二次電池に係る正極における正極活物質であって、高容量であり、かつ熱安定性にも優れている、組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される、非水二次電池に係る正極における正極活物質(以下、「引用文献8の正極活物質の発明」という。)。

(8ク-2) 非水二次電池に係る正極における正極活物質の製造方法であって、NiとCoとMnとを6:2:2のモル比で含有する水酸化物を得、この水酸化物とLiOH・H_(2)Oとの混合物をドライエアーフロー中で600℃まで加熱し、その温度で2時間保持して予備加熱を行い、更に900℃に昇温して12時間焼成することにより得られた、リチウム含有複合酸化物を粉砕して、組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される正極活物質を得るという、非水二次電池に係る正極における正極活物質の製造方法(以下、「引用文献8の正極活物質の製造方法の発明」という。)。

(8ク-3) 充放電サイクル特性に優れ、貯蔵特性も良好な非水二次電池であって、正極と負極とがセパレータを介して積層されてなる電極体と、非水電解質とを有し、体積エネルギー密度が600Wh/L以上の非水二次電池であり、前記正極は、集電体の片面または両面に、組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される、リチウムイオンを吸蔵、脱離可能な正極活物質、およびバインダを含有する正極合剤層を有しており、前記負極は、集電体の片面または両面に、リチウムと合金可能な元素もしくは前記元素の化合物を含む合金系材料と、リチウムイオンを吸蔵、脱離可能な炭素材料とを負極活物質とし、更にバインダを含有する負極合剤層を有しており、電池の容量を1時間で放電できる電流値をA(mA)、正極の正極合剤層と負極の負極合剤層との対向面積をB(cm^(2))としたとき、A/B≧4の関係を満たしており、正極合剤層の含有するバインダは、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのうち、少なくとも一方のモノマー由来の構造単位を有する重合体または共重合体を含み、負極合剤層の含有するバインダは、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのうち、少なくとも一方のモノマー由来の構造単位を有する共重合体を含み、負極活物質中の合金系材料の割合をt(質量%)としたときに、0.5≦t≦20であり、電池の有する非水電解質の体積をC(cm^(3))、正極合剤層の空孔体積をD(cm^(3))、負極合剤層の空孔体積をE(cm^(3))、およびセパレータの空孔体積をF(cm^(3))としたとき、〔D×1.07+E×(1+t×0.024)+F×0.98〕×1.86≦C≦〔D×1.07+E×(1+t×0.024)+F×0.98〕×2.14の関係を満足することを特徴とする非水二次電池(以下、「引用文献8の非水二次電池の発明」という。)。


9. 引用文献9(特表2007-512668号公報)は、上記第3によれば、引用文献6?8を主たる証拠とする、申立理由4において、従たる証拠として提出されているところ、当該引用文献9には、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、「リチウム二次電池用正極活物質の製造方法、その方法に使用される反応基及びその方法により製造されるリチウム二次電池用正極活物質」(発明の名称)について、以下の事項が記載されている。

9ア. 「【0024】
本発明の正極活物質は、一般式Li_(1+δ)[Ni_(x)Mn_(x-y/2)Co_(1-2x-z)M_(y)N_(z)]O_(2-a)P_(a)、またはLi_(1+δ)[Ni_(x)Mn_(x+y)Co_(1-2(x+y))M_(y)]O_(2-a)P_(a)(M=Mg、Zn、Ca、Sr、Cu、Zr、N=Fe、Al、Ga、In、Cr、Ge、Sn、P=F、S、-1/10≦δ≦1/10、0≦x≦1、0≦y≦1/10、0≦z≦1/10、0≦a≦0.3)で表され、1次の粒子が凝集されて2次の粒子を形成したものであ…る。この時、1次の粒子の平均粒径が1μmであり、2次の粒子の平均粒径が10μmであることを特徴とする。1次の粒子の平均粒径を1μmとすることによって、充放電の反応性を高め、電池の高率特性を向上させる一方、2次の粒子の平均粒径を10μmとすることによって、リチウム複合酸化物の充電性を高め、コーティング力を向上させ、電極を高容量化することができる。」

9イ. 上記9ア.に示した一般式は、y=0、z=0、a=0の場合には、Li_(1+δ)[Ni_(x)Mn_(x)Co_(1-2x)]O_(2)(-1/10≦δ≦1/10、0≦x≦1)で表される。

9ウ. 上記9イ.の検討を踏まえると、上記9ア.に示した引用文献9の記載事項は、「一般式Li_(1+δ)[Ni_(x)Mn_(x)Co_(1-2x)]O_(2)(-1/10≦δ≦1/10、0≦x≦1)で表され、1次の粒子が凝集されて2次の粒子を形成した正極活物質は、1次の粒子の平均粒径が1μmであり、2次の粒子の平均粒径が10μmであることによって、電池の高率特性を向上させる一方、電極を高容量化することができる。」(以下、「引用文献9の正極活物質についての記載事項」という。)と言い換えることができる。


第5 特許異議の申立理由に対する当審の判断
1. 申立理由1について
申立理由1は、上記第3によれば、本件特許発明1?4は、引用文献1?5のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものである旨の申立理由である。

(1) 本件特許発明と引用文献1に記載された発明との対比・判断
上記第2によれば、本件特許発明1?2は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明であり、本件特許発明3は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法の発明であり、本件特許発明4は非水電解質二次電池の発明である。
これらの発明に対して、引用文献1には、上記第4の(1コ-1)に示した、引用文献1の複合酸化物粒子粉末の発明が、上記第4の(1コ-2)に示した、引用文献1の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明が、上記第4の(1コ-3)に示した、引用文献1の非水電解質二次電池の発明が、それぞれ、記載されていると認められる。

(1-1) 本件特許発明1と引用文献1に記載された発明との対比・判断
ア. まず、本件特許発明1と、上記第4の(1コ-1)に示した、引用文献1の複合酸化物粒子粉末の発明とを対比するに、引用文献1の複合酸化物粒子粉末の発明における「複合酸化物粒子粉末」は、非水電解質二次電池用の正極活物質としてのLi-Ni複合酸化物粒子粉末であるから、本件特許発明1における「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
非水電解質二次電池用の正極活物質粒子である点。

<相違点>
相違点1:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」るのに対し、
引用文献1の複合酸化物粒子粉末の発明では、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)であるLi-Ni複合酸化物が3重量%被覆したものであり、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である」ものか明らかでない点。

相違点2:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献1の複合酸化物粒子粉末の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

イ. そこで、上記相違点1?2について検討するに、本件特許発明1が、上記相違点1?2に係る発明特定事項を備えることに関して、本件特許の明細書によれば、非水電解質二次電池用の正極活物質として高安定性であり、電池の安定性を向上できる材料が現在最も要求されているが、未だ必要十分な要求を満たす材料が得られていないとの問題があったことから、そのような問題に鑑みてなされたものが本件特許発明1であり、安定性が高い非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を得ることを発明が解決しようとする課題(以下、単に「課題」ということがある。)としており(【0002】?【0011】)、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備える非水電解質二次電池用の正極活物質粒子においては、Li複合酸化物内にLi_(2)MnO_(3)がランダムに適量存在し、該Li複合酸化物の結晶格子を安定化すると考えられるところ、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備える非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさによって、充電状態で活性化するLi_(2)MnO_(3)の量を定量することができるとの知見に基づいたものであって、前記グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下であると、すなわち、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えていると、Li複合酸化物内にランダムに適量存在するLi_(2)MnO_(3)が充電状態においても活性化することが無く、該Li複合酸化物の結晶格子の安定性向上に寄与し、結果として種々の問題を誘発する虞のある開回路電圧の低下が生じ難い、安定性の高い電池を得ることが出来ることから、前記の課題を解決できるとの説明が本件特許の明細書になされている(【0015】?【0017】、【0027】?【0036】、【0054】?【0055】)。

ウ. そして、上記イ.に示した課題を解決できるとの説明の妥当性は、本件特許の明細書の【実施例】における、実施例1?4、参考例1及び比較例1?5についての記載(【0056】?【0085】)によって、裏付けられている。

エ. また、本件特許の明細書によれば、本件特許発明1の正極活物質粒子は、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備える非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が得られるように、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02以上1.07以下の範囲内で、混合した混合物を酸化性雰囲気で焼成温度910℃?970℃の範囲内で焼成するに際して、前記正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項をも備えるように、前記の所定のモル比率と前記の所定の焼成温度との条件内で最適な条件を選択することで得られるとされており(【0029】?【0036】、【0040】?【0042】)、具体的には、モル比率と焼成温度とをそれぞれ、実施例1のように1.035と930℃、あるいは、実施例2のように1.065と960℃、あるいは、実施例3のように1.020と910℃、あるいは、実施例4のように1.040と940℃にした場合に、上記相違点1?2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えた、正極活物質粒子を得ることができるとされている(【0056】?【0085】)。

オ. 本件特許の明細書に、上記エ.に示したようなモル比率と焼成温度との条件についての記載があるのは、技術常識からして、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02以上1.07以下の範囲内のいずれかのモル比率で混合した混合物を酸化性雰囲気で、単に、焼成温度910℃?970℃の範囲内のいずれかの焼成温度で焼成しただけでは、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項をも備えた正極活物質粒子を得ることができないことを意味しているから、本件特許の明細書に記載されている実施例1?4で選択された条件以外のモル比率と焼成温度との条件が、前記正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるような条件であるとの認定を合理的に行うには、当該条件で得られた正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えることが実証されている必要がある。

カ. なお、本件特許の審査過程中に提出された、平成29年2月9日付けの意見書において、上記エ.に示したモル比率と焼成温度とに、実施例3で選択された条件に類似した、1.02と900℃を選択した場合には、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備える非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が得られたものの、当該正極活物質粒子は上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えていなかったことが実証されているから、上記エ.に示したモル比率と焼成温度とに実施例1?4で選択された条件に類似した条件を選択したとしても、当該条件で得られた正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えることが実証されていない状況においては、前記正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるとの認定を合理的に行うことはできない。

キ. また、本件特許の明細書によれば、本件特許発明1の正極活物質粒子は、組成式がLi_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が得られるように、上記エ.に示したように、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを混合した混合物を酸化性雰囲気で焼成することで製造されるものであるところ、当該混合物は均一な混合物であるし(【0066】?【0085】)、前記前駆体にNi、Co、Mn以外の金属元素が含有されていると前記の組成式を満足し得ないから、核となるLi複合酸化物粒子の表面に、当該Li複合酸化物とは組成の異なる、Li複合酸化物を被覆又は存在させた正極活物質粒子を包含しないものであることは明らかである。

ク. 上記キ.の検討を踏まえると、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)であるLi-Ni複合酸化物が3重量%被覆した、引用文献1の正極活物質粒子は、本件特許発明1に包含されないものであるから、上記相違点1は実質的な相違点であると認められる。

ケ. また、上記イ.?カ.の検討を踏まえると、引用文献1においては、上記第4の1コ.に示されるように、Ni:Co:Mn=1/3:1/3:1/3のNi-Co-Mn水酸化物粒子と炭酸リチウムとをモル比率でLi/(Ni+Co+Mn)=1.05となるように混合した混合物を空気雰囲気下、950℃にて5時間焼成した後、粉砕し、乾燥して、Li_(1.05)Ni_(1/3)Co_(1/3)Mn_(1/3)O_(2)であるLi複合酸化物を得ているものの、当該Li複合酸化物は、核となるLi_(1.02)Ni_(0.8)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)の被覆に3重量%と、Li-Ni複合酸化物粒子粉末全体からすると少量用いられているにすぎないし、また、モル比率と焼成温度とをそれぞれ、前記した引用文献1記載のとおりに、1.05と950℃とした場合は、本件特許の明細書に記載されている実施例1?4で選択された条件以外のモル比率と焼成温度との条件であるところ、引用文献1の正極活物質粒子について、引用文献1の全体の記載を参照しても、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えることが実証されているわけではないから、上記相違点2も実質的な相違点であると認められる。

コ. してみると、上記相違点1?2は、いずれも、実質的な相違点であるから、本件特許発明1が引用文献1に記載された発明ではないことは明らかである。


(1-2) 本件特許発明2と引用文献1に記載された発明との対比・判断
本件特許発明2と、上記第4の(1コ-1)に示した、引用文献1の複合酸化物粒子粉末の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明2の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(1-1)での検討と同様にして、本件特許発明2が引用文献1に記載された発明ではないことは明らかである。

(1-3) 本件特許発明3と引用文献1に記載された発明との対比・判断
本件特許発明3と、上記第4の(1コ-2)に示した、引用文献1の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明3の正極活物質粒子の製造方法の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(1-1)での検討と同様にして、本件特許発明3も引用文献1に記載された発明ではないことは明らかである。

(1-4) 本件特許発明4と引用文献1に記載された発明との対比・判断
本件特許発明4と、上記第4の(1コ-3)に示した、引用文献1の非水電解質二次電池の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(1-1)での検討と同様にして、本件特許発明4も引用文献1に記載された発明ではないことは明らかである。


(2) 本件特許発明と引用文献2に記載された発明との対比・判断
上記第2によれば、本件特許発明1?2は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明であり、本件特許発明3は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法の発明であり、本件特許発明4は非水電解質二次電池の発明である。
これらの発明に対して、引用文献2には、上記第4の(2コ-1)に示した、引用文献2の複合酸化物粒子粉末の発明が、上記第4の(2コ-2)に示した、引用文献2の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明が、上記第4の(2コ-3)に示した、引用文献2の非水電解質二次電池の発明が、それぞれ、記載されていると認められる。

(2-1) 本件特許発明1と引用文献2に記載された発明との対比・判断
サ. まず、本件特許発明1と、上記第4の(2コ-1)に示した、引用文献2の複合酸化物粒子粉末の発明とを対比するに、引用文献2の複合酸化物粒子粉末の発明における「複合酸化物粒子粉末」は、上記第4の(2コ-3)に示されるとおり、非水電解質二次電池の正極に用いられるところ、非水電解質二次電池の正極に用いられる複合酸化物粒子粉末は、技術常識からして、正極活物質といえるから、本件特許発明1における「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当すると認める。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
非水電解質二次電池用の正極活物質粒子である点。

<相違点>
相違点3:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」るのに対し、
引用文献2の複合酸化物粒子粉末の発明では、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したものであり、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である」ものか明らかでない点。

相違点4:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献2の複合酸化物粒子粉末の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

シ. そこで、上記相違点3?4について検討するに、上記相違点3は上記相違点1と同じ相違点であるし、上記相違点4は上記相違点2と同じ相違点であるところ、上記(1-1)のイ.?ケ.での検討と同様にして、上記相違点3?4は、いずれも、実質的な相違点であるから、本件特許発明1が引用文献2に記載された発明ではないことは明らかである。

(2-2) 本件特許発明2と引用文献2に記載された発明との対比・判断
本件特許発明2と、上記第4の(2コ-1)に示した、引用文献2の複合酸化物粒子粉末の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明2の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(2-1)での検討と同様にして、本件特許発明2が引用文献2に記載された発明ではないことは明らかである。

(2-3) 本件特許発明3と引用文献2に記載された発明との対比・判断
本件特許発明3と、上記第4の(2コ-2)に示した、引用文献2の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明3の正極活物質粒子の製造方法の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(2-1)での検討と同様にして、本件特許発明3も引用文献2に記載された発明ではないことは明らかである。

(2-4) 本件特許発明4と引用文献2に記載された発明との対比・判断
本件特許発明4と、上記第4の(2コ-3)に示した、引用文献2の非水電解質二次電池の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(2-1)での検討と同様にして、本件特許発明4も引用文献2に記載された発明ではないことは明らかである。


(3) 本件特許発明と引用文献3に記載された発明との対比・判断
上記第2によれば、本件特許発明1?2は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明であり、本件特許発明3は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法の発明であり、本件特許発明4は非水電解質二次電池の発明である。
これらの発明に対して、引用文献3には、上記第4の(3サ-1)に示した、引用文献3の複合酸化物粒子粉末の発明が、上記第4の(3サ-2)に示した、引用文献3の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明が、上記第4の(3サ-3)に示した、引用文献3の非水電解質二次電池の発明が、それぞれ、記載されていると認められる。

(3-1) 本件特許発明1と引用文献3に記載された発明との対比・判断
タ. まず、本件特許発明1と、上記第4の(3サ-1)に示した、引用文献3の複合酸化物粒子粉末の発明とを対比するに、引用文献3の複合酸化物粒子粉末の発明における「複合酸化物粒子粉末」は、非水電解質二次電池用の正極活物質としてのLi-Ni複合酸化物粒子粉末であるから、本件特許発明1における「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
非水電解質二次電池用の正極活物質粒子である点。

<相違点>
相違点5:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」るのに対し、
引用文献3の複合酸化物粒子粉末の発明では、核となるLi_(1.05)Ni_(0.33)Co_(0.33)Mn_(0.33)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLi_(0.98)Ni_(0.80)Co_(0.15)Al_(0.05)O_(2)が10重量%被覆した平均粒子径が10.6μmのものであり、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である」ものか明らかでない点。

相違点6:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献3の複合酸化物粒子粉末の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

チ. そこで、上記相違点5?6について検討するに、上記相違点5は上記相違点1と同じ相違点であるし、上記相違点6は上記相違点2と同じ相違点であるところ、上記(1-1)のイ.?ケ.での検討と同様にして、上記相違点5?6は、いずれも、実質的な相違点であるから、本件特許発明1が引用文献3に記載された発明ではないことは明らかである。

(3-2) 本件特許発明2と引用文献3に記載された発明との対比・判断
本件特許発明2と、上記第4の(3サ-1)に示した、引用文献3の複合酸化物粒子粉末の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明2の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(3-1)での検討と同様にして、本件特許発明2が引用文献3に記載された発明ではないことは明らかである。

(3-3) 本件特許発明3と引用文献3に記載された発明との対比・判断
本件特許発明3と、上記第4の(3サ-2)に示した、引用文献3の複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明3の正極活物質粒子の製造方法の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(3-1)での検討と同様にして、本件特許発明3も引用文献3に記載された発明ではないことは明らかである。

(3-4) 本件特許発明4と引用文献3に記載された発明との対比・判断
本件特許発明4と、上記第4の(3サ-3)に示した、引用文献3の非水電解質二次電池の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(3-1)での検討と同様にして、本件特許発明4も引用文献3に記載された発明ではないことは明らかである。


(4) 本件特許発明と引用文献4に記載された発明との対比・判断
上記第2によれば、本件特許発明1?2は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明であり、本件特許発明3は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法の発明であり、本件特許発明4は非水電解質二次電池の発明である。
これらの発明に対して、引用文献4には、上記第4の(4シ-1)に示した、引用文献4の正極活物質粒子粉末の発明が、上記第4の(4シ-2)に示した、引用文献4の正極活物質粒子粉末の製造方法の発明が、上記第4の(4シ-3)に示した、引用文献4の非水電解質二次電池の発明が、それぞれ、記載されていると認められる。

(4-1) 本件特許発明1と引用文献4に記載された発明との対比・判断
ナ. まず、本件特許発明1と、上記第4の(4シ-1)に示した、引用文献4の正極活物質粒子粉末の発明とを対比するに、引用文献4の正極活物質粒子粉末の発明における「正極活物質粒子粉末」は、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子粉末であるから、本件特許発明1における「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
非水電解質二次電池用の正極活物質粒子である点。

<相違点>
相違点7:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」るのに対し、
引用文献4の正極活物質粒子粉末の発明は、核となる粒子がLi_(1.33)Ni_(0.216)Co_(0.124)Mn_(0.66)O_(2)であるLi-Mn複合酸化物粒子粉末の二次粒子であり、前記二次粒子の粒子表面にLi_(1.05) Ni_(0.40)Co_(0.20)Mn_(0.40)O_(2)が1%コートした、平均粒子径が13.4μmの二次粒子であるものであり、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である」ものか明らかでない点。

相違点8:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献4の正極活物質粒子粉末の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

ニ. そこで、上記相違点7?8について検討するに、上記相違点7は上記相違点1と同じ相違点であるし、上記相違点8は上記相違点2と同じ相違点であるところ、上記(1-1)のイ.?ケ.での検討と同様にして、上記相違点7?8は、いずれも、実質的な相違点であるから、本件特許発明1が引用文献4に記載された発明ではないことは明らかである。

(4-2) 本件特許発明2と引用文献4に記載された発明との対比・判断
本件特許発明2と、上記第4の(4シ-1)に示した、引用文献4の正極活物質粒子粉末の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明2の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(4-1)での検討と同様にして、本件特許発明2が引用文献4に記載された発明ではないことは明らかである。

(4-3) 本件特許発明3と引用文献4に記載された発明との対比・判断
本件特許発明3と、上記第4の(4シ-2)に示した、引用文献4の正極活物質粒子粉末の製造方法の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明3の正極活物質粒子の製造方法の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(4-1)での検討と同様にして、本件特許発明3も引用文献4に記載された発明ではないことは明らかである。

(4-4) 本件特許発明4と引用文献4に記載された発明との対比・判断
本件特許発明4と、上記第4の(4シ-3)に示した、引用文献4の非水電解質二次電池の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(4-1)での検討と同様にして、本件特許発明4も引用文献4に記載された発明ではないことは明らかである。


(5) 本件特許発明と引用文献5に記載された発明との対比・判断
上記第2によれば、本件特許発明1?2は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明であり、本件特許発明3は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法の発明であり、本件特許発明4は非水電解質二次電池の発明である。
これらの発明に対して、引用文献5には、上記第4の(5サ-1)に示した、引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の発明が、上記第4の(5サ-2)に示した、引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明が、上記第4の(5サ-3)に示した、引用文献5の充放電可能なコインセルの発明が、それぞれ、記載されていると認められる。

(5-1) 本件特許発明1と引用文献5に記載された発明との対比・判断
ハ. まず、本件特許発明1と、上記第4の(5サ-1)に示した、引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の発明とを対比するに、引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の発明における「Li-Ni系複合酸化物粒子粉末」は、電解液に1mol/lのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比で1:2で混合した溶液を用いた、充放電可能なコインセルにおいて、正極活物質として用いられるところ、当該電解液は非水電解質であり、当該充放電可能なコインセルは非水電解質二次電池といえるため、本件特許発明1における「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
非水電解質二次電池用の正極活物質粒子である点。

<相違点>
相違点9:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」るのに対し、
引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の発明では、核となるLi_(1.02)Ni_(0.5)Co_(0.2)Mn_(0.3)O_(2)の二次粒子の粒子表面にLiMn_(0.1)Co_(0.9)O_(2)が3重量%被覆したLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であって、電解液に1mol/lのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比で1:2で混合した溶液を用いた、充放電可能なコインセルにおいて、正極活物質として用いられ、平均二次粒子径が15μmであるLi-Ni系複合酸化物粒子粉末であり、「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である」ものか明らかでない点。

相違点10:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

ヒ. そこで、上記相違点9?10について検討するに、上記相違点9は上記相違点1と同じ相違点であるし、上記相違点10は上記相違点2と同じ相違点であるところ、上記(1-1)のイ.?ケ.での検討と同様にして、上記相違点9?10は、いずれも、実質的な相違点であるから、本件特許発明1が引用文献5に記載された発明ではないことは明らかである。

(5-2) 本件特許発明2と引用文献5に記載された発明との対比・判断
本件特許発明2と、上記第4の(5サ-1)に示した、引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明2の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(5-1)での検討と同様にして、本件特許発明2が引用文献5に記載された発明ではないことは明らかである。

(5-3) 本件特許発明3と引用文献5に記載された発明との対比・判断
本件特許発明3と、上記第4の(5サ-2)に示した、引用文献5のLi-Ni系複合酸化物粒子粉末の製造方法の発明とについて対比・判断するに、本件特許発明3の正極活物質粒子の製造方法の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(5-1)での検討と同様にして、本件特許発明3も引用文献5に記載された発明ではないことは明らかである。

(5-4) 本件特許発明4と引用文献5に記載された発明との対比・判断
本件特許発明4と、上記第4の(5サ-3)に示した、引用文献5の充放電可能なコインセルの発明とについて対比・判断するに、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(5-1)での検討と同様にして、本件特許発明4も引用文献5に記載された発明ではないことは明らかである。


(6) 補足
(6-1) 特許異議申立人西谷光夫は、上記相違点2、4、6、8、10に係る本件特許発明1の発明特定事項について、本件特許発明1の「dQ/dV曲線において、電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」という発明特定事項の要素は、Li/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02以上1.07以下の範囲であること且つ、焼成温度が910?970℃の条件によって得られるものであることを必要条件としているところ、引用文献1?5には、そのような必要条件を備えた非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が記載されている旨主張している(特許異議申立人西谷光夫が提出した特許異議申立書第8頁第16行?第16頁第16行)。

(6-2) しかしながら、上記(1-1)エ.での検討のとおり、本件特許の明細書によれば、本件特許発明1の正極活物質粒子は、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備える非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が得られるように、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02以上1.07以下の範囲内で、混合した混合物を酸化性雰囲気で焼成温度910℃?970℃の範囲内で焼成するに際して、前記正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項をも備えるように、前記の所定のモル比率と前記の所定の焼成温度との条件内で最適な条件を選択することで得られるとされており(【0029】?【0036】、【0040】?【0042】)、具体的には、モル比率と焼成温度とをそれぞれ、実施例1のように1.035と930℃、あるいは、実施例2のように1.065と960℃、あるいは、実施例3のように1.020と910℃、あるいは、実施例4のように1.040と940℃にした場合に、上記相違点1?2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えた、正極活物質粒子を得ることができるとされている(【0056】?【0085】)。
そして、本件特許の明細書に、前記のようなモル比率と焼成温度との条件についての記載があるのは、技術常識からして、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02以上1.07以下の範囲内のいずれかのモル比率で混合した混合物を酸化性雰囲気で、単に、焼成温度910℃?970℃の範囲内のいずれかの焼成温度で焼成しただけでは、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項をも備えた正極活物質粒子を得ることができないことを意味しているところ、上記(1-1)?(5-4)で検討したとおり、引用文献1?5には、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02以上1.07以下の範囲内で、混合した混合物を酸化性雰囲気で焼成温度910℃?970℃の範囲内で焼成するに際して、前記正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項をも備えるように、前記の所定のモル比率と前記の所定の焼成温度との条件内で最適な条件を選択することを行ったといえるまでの開示はされていない。

(6-3) よって、特許異議申立人西谷光夫の上記(6-1)の主張は妥当性を欠いており、採用し得ない。


(7) 小括
以上のとおりであるから、申立理由1及び証拠によっては、本件特許発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。


2. 申立理由2について
(1) 申立理由2は、上記第3に示したように、本件特許発明1?4は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである旨の申立理由であるところ、まず、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載された発明につき検討する。

(2) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明によれば、上記1.(1-1)イ.での検討のとおり、非水電解質電解質二次電池用の正極活物質として高安定性であり、電池の安定性を向上できる材料が現在最も要求されているが、未だ必要十分な要求を満たす材料が得られていないとの問題があったことから、本件特許発明は、そのような問題に鑑みてなされてものであり、安定性が高い非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を得ることを課題としている(【0002】?【0011】)。

(3) そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2) (1.00≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子について、Li複合酸化物内にLi_(2)MnO_(3)がランダムに適量存在し、該Li複合酸化物の結晶格子を安定化すると考えられるところ、当該非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさ(以下、「dQ/dV曲線における面積の大きさ」ということがある。)によって、充電状態で活性化したLi_(2)MnO_(3)の量を定量することができるとの知見に基づいたものが本発明であって、dQ/dV曲線における面積の大きさが35mAh/g以下であると、前記Li_(2)MnO_(3)が充電状態においても活性化することが無く、Li複合酸化物の結晶格子の安定性向上に寄与し、結果として種々の問題を誘発する虞のある開回路電圧の低下が生じ難い、安定性の高い電池を得ることが出来ることから、「本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」によって、上記(2)に示した課題を解決できるとの説明がなされている(【0012】?【0017】、【0027】?【0036】、【0054】?【0055】)。
すなわち、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」とは、【0013】に記載された、六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式がLi_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2-δ)(1.00≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であり、当該正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(電流密度16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下であることを特徴とするものであると記載されている。

(4) さらに、上記(2)に示した課題を解決できるとの上記(3)の説明の妥当性は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明における、実施例1?4、参考例1及び比較例1?5についての記載(【0056】?【0085】)によって、裏付けられている。

(5) 上記(2)?(4)の検討を踏まえると、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、上記(3)に示した「本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」が、安定性が高い非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を得るとの課題を解決できるものとして記載されているといえる。

(6) ここで、上記第2に示した、本件特許発明1の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明が、上記(3)に示した「本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」の範囲内にあることは明らかであるから、本件特許発明1の発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていることは明らかである。

(7) また、上記第2に示した、本件特許発明2の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明、本件特許発明3の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法の発明、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明は、いずれも、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(2)?(6)と同様の検討により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていることは明らかである。

(8) 補足
(8-1) 特許異議申立人西谷光夫は、特許異議申立書第25頁第1行?第27頁第15行において、次のア.?ウ.の主張をしている。
ア. 本件特許発明1の「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下であること」との発明特定事項について、以下の(ア)?(イ)の主張をしている。
(ア) 実施例1の表1には、「グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさ」は、32.5mAh/g(実施例1)、31.3mAh/g(実施例2)、34.3mAh/g(実施例3)、34.1mAh/g(実施例4)のデータが示され、31.3mAh/g?34.3mAh/gの範囲のデータしかなく、35mAh/g以下という下限値の規定のない数値範囲全体にわたる十分な数の具体例が示されておらず、しかも、発明の詳細な説明の他所の記載をみても、また、出願時の技術常識に照らしても、当該具体例から請求項に記載された数値範囲全体にまで拡張ないし一般化できるとはいえず、本件特許発明1は本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
(イ) 前記の発明特定事項は、Li/(Ni+Co+Mn)モル比率が1.02以上1.07以下の範囲内であり、且つ、焼成温度が910℃?970℃の条件によって得られるものであることに関しても、(モル比率1.035、焼成温度930℃)(実施例1)、(モル比率1.065、焼成温度960℃)(実施例2)、(モル比率1.020、焼成温度910℃)(実施例3)、(モル比率1.040、焼成温度940℃)(実施例4)のデータが示されているだけで、例えば、(モル比率1.07、焼成温度910℃)や(モル比率1.020、焼成温度960℃)の条件でも得られることは示されておらず、しかも、発明の詳細な説明の他所の記載をみても、また、出願時の技術常識に照らしても、当該具体例から請求項に記載された数値範囲全体にまで拡張ないし一般化できるとはいえず、本件特許発明1は本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。

イ. 本件特許発明2の「結晶子サイズが200nm以上900nm以下であ」るとの発明特定事項について、実施例1の表1には、結晶子サイズの大きさは、630nm(実施例1)、744nm(実施例2)、480nm(実施例3)、632nm(実施例4)のデータが示され、480nm?744nmの範囲のデータしかなく、前記の発明特定事項の結晶子サイズの大きさの数値範囲全体にわたる十分な数の具体例が示されておらず、しかも、発明の詳細な説明の他所の記載をみても、また、出願時の技術常識に照らしても、当該具体例から請求項に記載された数値範囲全体にまで拡張ないし一般化できるとはいえず、本件特許発明2は本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとの主張をしている。

ウ. 本件特許発明3、4は、本件特許発明1、2を引用しているため、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとの主張をしている。

(8-2) 当審の見解
上記(2)?(6)の検討のとおり、本件特許発明1が、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した発明の範囲内にあることは明らかであるし、上記(7)の検討のとおり、本件特許発明2?4が、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した発明の範囲内にあることも明らかであるし、また、以下のカ.?ク.の検討のとおり、上記(8-1)の主張は、いずれも、合理性を欠いている。
それらのため、上記(8-1)の主張を採用することができない。

カ. 上記(3)の検討のとおり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、dQ/dV曲線における面積の大きさが35mAh/g以下であると、六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2) (1.00≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子(以下、「特定組成の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」ということがある。)について、Li複合酸化物内にランダムに適量存在するLi_(2)MnO_(3)が充電状態においても活性化することが無く、該Li複合酸化物の結晶格子の安定性向上に寄与し、結果として種々の問題を誘発する虞のある開回路電圧の低下が生じ難い、安定性の高い電池を得ることが出来ることから、「本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」によって、安定性が高い非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を得るとの課題を解決できるとの説明がなされているところ、そのような説明は、前記の課題を解決できなかった、従来の特定組成の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子においては、dQ/dV曲線における面積の大きさの下限値が35mAh/gよりも大きかったことを意味しており、そして、従来の特定組成の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子においては、Li_(2)MnO_(3)がLi複合酸化物内にランダムに適量存在していても、充電状態において活性化するLi_(2)MnO_(3)が、dQ/dV曲線における面積の大きさに応じて、存在していたのに対し、dQ/dV曲線における面積の大きさが35mAh/g以下であれば、その面積の大きさによらずに、Li複合酸化物内にランダムに適量存在するLi_(2)MnO_(3)が充電状態においても活性化することが無いことから、安定性の高い電池を得ることが出来ると解されるし、また、dQ/dV曲線における面積の大きさが35mAh/g以下であっても、前記の課題を解決できない場合があると認定し得る客観的且つ具体的な証拠が存在するわけでもないから、dQ/dV曲線における面積の大きさの下限値が規定されていなければ、前記の課題を解決できるものとはならないとし得る合理的根拠は存在しない。
よって、上記(8-1)ア.(ア)の主張は合理性を欠いている。

キ. 上記1.(1-1)エ.での検討のとおり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明に係る非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」は、特定組成の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が得られるように、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02以上1.07以下の範囲内で、混合した混合物を酸化性雰囲気で焼成温度910℃?970℃の範囲内で焼成するに際して、前記正極活物質粒子が上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項をも備えるように、前記の所定のモル比率と前記の所定の焼成温度との条件内で最適な条件を選択することで得られるとされており(【0029】?【0036】、【0040】?【0042】)、具体的には、モル比率と焼成温度とをそれぞれ、実施例1のように1.035と930℃、あるいは、実施例2のように1.065と960℃、あるいは、実施例3のように1.020と910℃、あるいは、実施例4のように1.040と940℃にした場合に、上記相違点1?2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えた、正極活物質粒子を得ることができるとされている(【0056】?【0085】)。
そして、本件特許の明細書に、前記のようなモル比率と焼成温度との条件についての記載があるのは、技術常識からして、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02以上1.07以下の範囲内のいずれかのモル比率で混合した混合物を酸化性雰囲気で、単に、焼成温度910℃?970℃の範囲内のいずれかの焼成温度で焼成しただけでは、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項をも備えた正極活物質粒子を得ることができないことを意味しているから、上記(8-1)ア.(イ)の主張も合理性を欠いている。

ク. また、本件特許発明2?4は、いずれも、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであり、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載した発明の範囲内にあることが明らかであるから、上記(8-1)イ.?ウ.の主張も合理性を欠いている。


(9) 小括
以上のとおりであるから、申立理由2によっては、本件特許発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。


3. 申立て理由3について
(1) 申立理由3は、上記第3に示したように、本件特許発明1?4は、明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである旨の申立理由であるから、本件特許の特許請求の範囲の記載の明確性につき検討する。

(2) 本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、上記第2に示したとおりの記載がなされているところ、前記請求項1のうちの、「正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い」との記載自体では、その初期充電を行う際の非水電解質二次電池の具体的構成が、必ずしも、明らかではないものの、前記請求項1における当該記載以外の記載は明確であると認められる。
そこで、前記の初期充電を行う際の非水電解質二次電池について、特許法第70条第2項の規定に基づき、本件特許の明細書の記載を参照してみると、「正極活物質粒子粉末としての複合酸化物を90重量%、導電材としてアセチレンブラックを3重量%、グラファイトを3重量%、バインダーとしてN-メチルピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン4重量%とを混合した後、Al金属箔に塗布し120℃にて乾燥したシートを14mmΦに打ち抜いた後、1.5t/cm^(2)で圧着したものを正極に用い、負極は16mmΦに打ち抜いた厚さが500μmの金属リチウムとし、電解液は1mol/LのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比1:2で混合した溶液を用いて2032型コインセルを組み、60℃の環境下で4.6Vまで0.2Cレート(電流密度16mA/g)の充電密度で初期充電を行う」ことが記載されており(【0063】?【0064】)、そして、その記載の他には、前記の初期充電を行う際の非水電解質二次電池についての記載はない。
してみると、前記請求項1における「正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い」との記載における、初期充電を行う際の非水電解質二次電池は、正極活物質粒子粉末としての複合酸化物を90重量%、導電材としてアセチレンブラックを3重量%、グラファイトを3重量%、バインダーとしてN-メチルピロリドンに溶解したポリフッ化ビニリデン4重量%とを混合した後、Al金属箔に塗布し120℃にて乾燥したシートを14mmΦに打ち抜いた後、1.5t/cm^(2)で圧着したものを正極に用い、負極は16mmΦに打ち抜いた厚さが500μmの金属リチウムとし、電解液は1mol/LのLiPF_(6)を溶解したECとDMCを体積比1:2で混合した溶液を用いて2032型コインセルを組んだものであることを、一義的に意味していることは明らかである。
そうすると、請求項1には不明確な記載はないこととなるから、本件特許発明1は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていることとなる。

(3) 本件特許の特許請求の範囲の請求項2?4には、上記第2に示したとおり、請求項1の記載を引用する記載がなされているところ、前記請求項1のうちの、「正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い」との記載自体では、その初期充電を行う際の非水電解質二次電池の具体的構成が、必ずしも、明らかではないものの、当該記載以外の記載は明確であると認められる。
そして、上記(2)の検討と同様にして、初期充電を行う際の非水電解質二次電池の具体的構成は、本件特許の明細書の記載を参照してみると、明らかであるから、請求項2?4にも不明確な記載はないこととなり、本件特許発明2?4も特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていることとなる。


(4) 補足
(4-1) 特許異議申立人西谷光夫は、特許異議申立書第27頁第16行?第28頁第8行において、本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い」と特定されているが、非水電解質二次電池の電解液の材料や電池自体の具体的構成が特定されておらず、非水電解質二次電池の構成内容や構成材料などが変われば、電池特性も変わることが技術常識であるから、同じ正極活物質粒子を正極に用いても、dQ/dV曲線における面積の大きさは異なることになるため、本件特許発明1は不明確であるし、本件特許発明1を引用する本件特許発明2?4も不明確である旨主張している。

(4-2) 当審の判断
上記(2)の検討のとおり、特許法第70条第2項の規定に基づき、明細書の記載を参照してみると、本件特許発明1における、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い」との記載の意味を一義的に把握することができ、これにより、当該初期充電を行う際の非水電解質二次電池を具体的に把握することができるから、本件特許発明1は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていることとなる。
また、上記(3)の検討のとおり、本件特許発明2?4も、本件特許発明1と同様に、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていることとなる。
よって、上記(4-1)の主張を採用することはできない。


(5) 小括
以上のとおりであるから、申立理由3によっては、本件特許発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。


4. 申立理由4について
申立理由4は、上記第3によれば、本件特許発明3の製造方法の発明は、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜になし得るものであるし、その適用により製造された正極活物質は、本件特許発明1の正極活物質と同一の物であるし、その適用に際して、平均粒径等を引用文献2?6や引用文献9に記載の周知の範囲としたのが、本件特許発明2の正極活物質にすぎず、進歩性を有しないし、本件特許発明4の非水電解質二次電池は、本件特許発明1?2の正極活物質を使用したことを特定したのみであるため、進歩性を有しないことから、本件特許発明1?4は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、それらの発明の特許を取り消すべきものである旨の申立理由である。
そこで、本件特許発明3の製造方法の発明と、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明との対比・判断から順次検討を行うこととする。

(1) 本件特許発明3と引用文献6?8に記載された発明との対比・判断
上記第2によれば、本件特許発明1?2は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明であり、本件特許発明3は非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法の発明であり、本件特許発明4は非水電解質二次電池の発明である。
そして、本件特許発明3と対比される、引用文献6?8に記載された発明は、それぞれ、上記第4の(6サ-2)に示される、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明、上記第4の(7コ-2)に示される、引用文献7の正極材料の製造方法の発明、上記第4の(8ク-2)に示される、引用文献8の正極活物質の製造方法の発明である。

(1-1) 本件特許発明3と引用文献6に記載された発明との対比・判断
ア. まず、本件特許発明3と、上記第4の(6サ-2)に示される、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明とを対比するに、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明における「Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)(OH)_(2)」は、本件特許発明3における「下記組成式で示される前駆体」「(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))OH_(2)(0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)」と、引用文献6に記載される「Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)(OH)_(2)」という組成式そのもので重複し、そして、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明における「Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)(OH)_(2)…であるニッケル複合水酸化物と、Li/Me=1.02となるように秤量した水酸化リチウムを混合して得られたリチウム混合物を空気気流中にて、900℃で5時間焼成し」たことは、本件特許発明3における「該前駆体にリチウム化合物をLi/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02となるように混合した後に、酸化性雰囲気において焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得ること」に相当し、また、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明における「六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成され、前記リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からな…る、非水系電解質二次電池用の正極活物質」は、本件特許発明3における「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であ」ることに相当し、また、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明における「組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であ」ることは、本件特許発明3における「組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」ることとは、引用文献6に記載される「Li_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)」という組成式そのもので重複する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法であって、
下記組成式で示される前駆体を用い、
Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)(OH)_(2)
該前駆体にリチウム化合物をLi/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02となるように混合した後に、酸化性雰囲気において焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得る正極活物質粒子の製造方法。

<相違点>
相違点A:NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物を混合した後に、酸化性雰囲気において焼成する際の焼成温度が、
本件特許発明3では、「910℃以上970℃以下」であるのに対し、
引用文献6の正極活物質の製造方法の発明では、900℃であり、「910℃以上970℃以下」ではない点。

相違点B:製造する非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明3では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献6の正極活物質の製造方法の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

イ. そこで、上記相違点A?Bについて検討するに、本件特許の明細書によれば、上記1.の(1-1)イ.?エ.での検討と同様にして、本件特許発明3は、非水電解質二次電池用の正極活物質として高安定性であり、電池の安定性を向上できる材料が現在最も要求されているが、未だ必要十分な要求を満たす材料が得られていないとの問題に鑑みてなされてものであり、安定性が高い非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を得ることを課題としており(【0002】?【0011】)、六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式がLi_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)である、所定組成の正極活物質粒子においては、Li複合酸化物内にLi_(2)MnO_(3)がランダムに適量存在し、該Li複合酸化物の結晶格子が安定化すると考えられるところ、前記正極活物質粒子を製造するに際して、前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさによって、すなわち、dQ/dV曲線における面積の大きさによって、充電状態で活性化したLi_(2)MnO_(3)の量を定量することができるとの知見に基づいたものであって、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02?1.07の範囲内で、混合した混合物を酸化性雰囲気で焼成温度910℃?970℃の範囲内で焼成するに際して、dQ/dV曲線における面積の大きさが35mAh/g以下となるように、すなわち、上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えるように、前記所定組成の正極活物質粒子を前記のモル比率と前記の焼成温度との条件内で最適な条件で焼成すると、Li複合酸化物内にランダムに適量存在するLi_(2)MnO_(3)が充電状態においても活性化することが無く、該Li複合酸化物の結晶格子の安定性向上に寄与し、結果として種々の問題を誘発する虞のある開回路電圧の低下が生じ難い、安定性の高い電池を得ることが出来ることから、前記の課題を解決できるとされており(【0015】?【0017】、【0027】【0029】?【0036】、【0040】?【0042】、【0054】?【0055】)、具体的には、前記のモル比率が1.035のときには実施例1のように930℃にした場合に、前記のモル比率が1.065のときには実施例2のように960℃にした場合に、前記のモル比率が1.020のときには実施例3のように910℃にした場合に、前記のモル比率が1.040のときには実施例4のように940℃にした場合に、上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えた発明となるとされている(【0056】?【0085】)。

ウ. 本件特許の明細書に、上記イ.に示したようなモル比率と焼成温度との条件についての記載があるのは、技術常識からして、例えば、引用文献6記載のように、組成式がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造するに際して、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02で混合した混合物を、単に、酸化性雰囲気で焼成温度910℃?970℃の範囲内の任意の温度で焼成したのでは、上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えた発明とはなり得ないことを意味しているから、本件特許の明細書に記載されている実施例1?4で選択された条件以外のモル比率と焼成温度との条件が、前記正極活物質粒子が上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えるような条件であるとの認定を合理的に行うには、当該条件で得られた正極活物質粒子が上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えることが実証されている必要がある。

エ. なお、本件特許の審査過程中に提出された、平成29年2月9日付けの意見書において、モル比率と焼成温度とに、引用文献6に記載された、1.02と900℃を選択した場合には、組成式がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が得られたものの、当該正極活物質粒子は上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えていなかったことが実証されているから、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明が上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えていないことは明らかである。

オ. そして、dQ/dV曲線における面積の大きさが35mAh/g以下となるように、上記イ.に示したような、所定組成の正極活物質粒子を所定のモル比率と所定の焼成温度との条件内で最適な条件で焼成すると、Li複合酸化物内にランダムに適量存在するLi_(2)MnO_(3)が充電状態においても活性化することが無く、該Li複合酸化物の結晶格子の安定性向上に寄与し、結果として種々の問題を誘発する虞のある開回路電圧の低下が生じ難い、安定性の高い電池を得ることができるとの本件特許の技術事項は、引用文献1?9の全体の記載を参照しても、それらの文献には記載も示唆もされておらず、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、周知の技術事項であるとも、技術常識であるともいえないことから、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明において、上記相違点A?Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えるようにすることを、本件特許の出願に係る優先主張の日前に、合理的に想起することはできないといえる。

カ. また、引用文献1?5に焼成温度を925℃や950℃にすることが記載されてはいるものの、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明は、上記第4の(6サ-2)に示されるように、複数の板状の一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなる正極活物質を得る方法であるところ、引用文献1?5記載の正極活物質の製造方法の発明は、いずれも、核となるLi複合酸化物の二次粒子の粒子表面に、そのLi複合酸化物とは組成の異なる、Li複合酸化物を被覆又は存在させた正極活物質を製造する方法であって(上記第4の(1コ-2)、(2コ-2)、(3サ-2)、(4シ-2)、(5コ-2))、製造する正極活物質の形態が、引用文献6記載の複数の板状の一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からなる正極活物質ではないから、引用文献6記載の正極活物質の製造方法の発明に引用文献1?5に記載される焼成温度を925℃や950℃にすることを適用することに合理性があるとはいえないし、また、引用文献6の正極活物質の製造方法の発明における焼成温度に引用文献1?5に記載される925℃や950℃を適用し得る場合があると仮定してみても、上記ウ.の検討のとおり、NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物とを、Li/(Ni+Co+Mn)で示されるモル比率1.02で混合した混合物を、単に、酸化性雰囲気で焼成温度925℃や950℃で焼成した場合に得られる正極活物質が上記相違点Bに係る本件特許発明3の発明特定事項を備えることが実証されているわけでもないから、本件特許発明3が、引用文献6記載の正極活物質の製造方法の発明における焼成温度に引用文献1?5に記載される925℃や950℃を適用したものと同じ発明であるとすることに合理的根拠もない。

キ. よって、本件特許発明3の製造方法の発明は、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献6に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜になし得るものであるとはいえない。


(1-2) 本件特許発明3と引用文献7に記載された発明との対比・判断
サ. 次に、本件特許発明3と、上記第4の(7コ-2)に示される、引用文献7の正極材料の製造方法の発明とを対比するに、引用文献7の正極材料の製造方法の発明における「組成がLi_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)である正極材料であ」る「リチウムイオン電気化学セル用の正極材料の製造方法」、「正極材料を、(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))(OH)_(2)の組成の混合遷移金属水酸化物とLi(OH)・H_(2)Oとの混合物を500℃で4時間焼結した後、900℃で12時間焼成することにより得る」は、技術常識からして、それぞれ、本件特許発明3における「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、」「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法」、「前駆体にリチウム化合物を混合した後に、酸化性雰囲気において焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得ること」に相当するものの、引用文献7の正極材料の製造方法の発明における「組成がLi_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)である正極材料」は、組成式がLi_(1.06)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(0.94)]O_(2)である正極活物質粒子を表しているところ、そのような組成式は、Ni+Mn+Coの合計モル数が0.94であるのに対し、本件特許発明3における「組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)」との組成式は、Ni+Mn+Coの合計モル数が1.00とならなけれならならいことを意味しているし、また、引用文献7の正極材料の製造方法の発明における前記の組成式の正極活物質粒子を得るための前駆体となる、「(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))(OH)_(2)の組成の混合遷移金属水酸化物」も、本件特許発明3における「(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))OH_(2)(0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)」という「組成式で示される前駆体」についての特定事項のうちの「0.10≦z≦0.40」を満足してはいない。
また、引用文献7の正極材料の製造方法の発明における「正極材料、Super P、PVDFを(90:5:5)の重量組成で調整した正極組成物をアルミニウム箔にコーティングした電極と金属Li対極を用いて組み立てた2325型のコインセルにおいて、50℃に維持しながら、C/10の充放電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間で最初の」充放電を行うことについて、50℃に維持しながらC/10の充電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間での充電を行うことは、本件特許発明3における「60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行」うこととは、初期充電の条件が異なる上、前記のように「2325型のコインセル」を組み立てたのでは、上記3.での検討において示した、本件特許発明3における「正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組」むが意味する非水電解質二次電池とは異なる非水電解質二次電池を組んでいることとなる。
それらのため、引用文献7の正極材料の製造方法の発明における「正極材料、Super P、PVDFを(90:5:5)の重量組成で調整した正極組成物をアルミニウム箔にコーティングした電極と金属Li対極を用いて組み立てた2325型のコインセルにおいて、50℃に維持しながら、C/10の充放電速度でLi/Li^(+)に対して2.5V?4.8Vの間で最初の」充放電を行うことは、本件特許発明3における「正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行」うことには、相当しない。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であり、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法であって、前駆体にリチウム化合物を混合した後に、酸化性雰囲気において焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得る正極活物質粒子の製造方法。

<相違点>
相違点C:前駆体にリチウム化合物を混合する際に、
本件特許発明3は、「下記組成式で示される前駆体を用い、
(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))OH_(2)(0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)
該前駆体にリチウム化合物をLi/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02以上1.07以下の範囲となるように混合」するのに対し、
引用文献7の正極材料の製造方法の発明は、「(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))(OH)_(2)の組成の混合遷移金属水酸化物とLi(OH)・H_(2)Oと」を、組成がLi_(1.06)(Ni_(0.39)Mn_(0.39)Co_(0.15))O_(2)である正極材料が得られるように、Li/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.14となるように混合することから、「下記組成式で示される前駆体
(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))OH_(2)(0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)」を用いてはいないし、「Li/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02以上1.07以下の範囲となるように混合」してはいない点。

相違点D:前駆体にリチウム化合物を混合した後に、酸化性雰囲気において焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得るに際して、
本件特許発明3は、焼成温度が「910℃以上970℃以下」であるのに対し、
引用文献7の正極材料の製造方法の発明は、900℃であり、「910℃以上970℃以下」ではない点。

相違点E:製造する非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の組成式が、
本件特許発明3では、「 Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」るのに対し、
引用文献7の正極材料の製造方法の発明では、Li_(1.06)(Ni_(0.39)Mn_(0.39)Co_(0.15))O_(2)であり、「 Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)」ではない点。

相違点F:製造する非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明3では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献7の正極材料の製造方法の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

シ. そこで、上記相違点C?Fにつき検討するに、それらの相違点のうちの、上記相違点D、Fは、それぞれ、上記相違点A、Bと同じ相違点であるから、上記(1-1)イ.?カ.での検討と同様にして、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献7に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜になし得るものであるとはいえない。

ス. また、上記サ.の検討からして、上記相違点C、Eは実質的な相違点といえるところ、引用文献7の正極材料の製造方法の発明は、引用文献7全体の記載からして、製造する非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の組成式が上記相違点Eの相違点を備え、そして、前駆体にリチウム化合物を混合する際に上記相違点Cの相違点を備える条件で混合することを必須とする発明であるから、そもそも、引用文献7の正極材料の製造方法の発明に基づいたのでは、本件特許発明3の製造方法の発明に合理的に到達することができるとはいえない。

セ. よって、本件特許発明3の製造方法の発明は、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献7に記載の発明と引用文献1?5に記載の周知技術とに基づいて、当業者が容易になし得るものであるとはいえない。


(1-3) 本件特許発明3と引用文献8に記載された発明との対比・判断
タ. 次に、本件特許発明3と、上記第4の(8ク-2)に示される、引用文献8の正極活物質の製造方法の発明とを対比するに、引用文献8の正極活物質の製造方法の発明における「NiとCoとMnとを6:2:2のモル比で含有する水酸化物」は、本件特許発明3における「下記組成式で示される前駆体
(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))OH_(2)(0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)」とは、引用文献8記載の「NiとCoとMnとを6:2:2のモル比で含有する水酸化物」との前駆体そのもので重複し、そして、引用文献8の正極活物質の製造方法の発明における「この水酸化物とLiOH・H_(2)Oとの混合物をドライエアーフロー中で600℃まで加熱し、その温度で2時間保持して予備加熱を行い、更に900℃に昇温して12時間焼成することにより得られた、リチウム含有複合酸化物を粉砕して、組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される正極活物質を得る」ことは、本件特許発明3における「該前駆体にリチウム化合物をLi/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02となるように混合した後に、酸化性雰囲気において焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得ること」に相当し、また、引用文献8の正極活物質の製造方法の発明における「組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される正極活物質を得る」ことは、技術常識からして、本件特許発明3における「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であ」る「正極活物質粒子を製造する」ことに相当し、また、引用文献8の正極活物質の製造方法の発明における「組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される」ことは、本件特許発明3における「組成式が、Lix(Ni1-y-zCoyMnz)O2(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」ることと、引用文献8記載の「Li_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)」との組成式そのもので重複する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子で、組成式がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子を製造する方法であって、
NiとCoとMnとを6:2:2のモル比で含有する水酸化物である前駆体を用い、
該前駆体にリチウム化合物をLi/(Ni+Co+Mn)のモル比率が1.02となるように混合した後に、酸化性雰囲気において焼成して、Li、Ni、Co及びMnを含有する複合酸化物を得る正極活物質粒子の製造方法。

<相違点>
相違点G:NiとCoとMnとを含有する前駆体とリチウム化合物を混合した後に、酸化性雰囲気において焼成する際の焼成温度が、
本件特許発明3では、「910℃以上970℃以下」であるのに対し、
引用文献8の正極活物質の製造方法の発明では、900℃であり、「910℃以上970℃以下」ではない点。

相違点H:製造する非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明3では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献8の正極活物質の製造方法の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

チ. そこで、上記相違点G?Hについて検討するに、上記相違点G、Hは、それぞれ、上記相違点A、Bと同じ相違点であるから、上記(1-1)イ.?カ.での検討と同様にして、本件特許発明3の製造方法の発明は、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献8に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜になし得るものであるとはいえない。


(2) 本件特許発明1と引用文献6?8に記載された発明との対比・判断
次に、本件特許発明1の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明につき検討するに、本件特許発明1と対比される、引用文献6?8に記載された発明は、それぞれ、上記第4の(6サ-1)に示される、引用文献6の正極活物質の発明、上記第4の(7コ-1)に示される、引用文献7の正極材料の発明、上記第4の(8ク-1)に示される、引用文献8の正極活物質の発明である。

(2-1) 本件特許発明1と引用文献6に記載された発明との対比・判断
ナ. 本件特許発明1と、上記第4の(6サ-1)に示される、引用文献6の正極活物質の発明とを対比するに、引用文献6の正極活物質の発明における「六方晶系の層状構造を有するリチウムニッケル複合酸化物により構成され、前記リチウムニッケル複合酸化物は、複数の板状一次粒子の板面が重なることによって凝集した板状の二次粒子からな…る、非水系電解質二次電池用の正極活物質」は、本件特許発明1における「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であ」る「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当し、また、引用文献6の正極活物質の発明における「組成がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)であ」ることは、本件特許発明1における「組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」ることと、引用文献6記載の「Li_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)」との組成式そのもので重複する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子で、組成式がLi_(1.02)Ni_(0.50)Co_(0.20)Mn_(0.30)O_(2)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子。

<相違点>
相違点I:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献6の正極活物質の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

ニ. そこで、上記相違点Iについて検討するに、上記相違点Iは上記相違点Bと同じ相違点であるから、上記(1-1)イ.?カ.での検討と同様にして、本件特許発明1の発明は、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献6に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜に製造し得た正極活物質粒子と同一であるとはいえない。


(2-2) 本件特許発明1と引用文献7に記載された発明との対比・判断
ハ. 本件特許発明1と、上記第4の(7コ-1)に示される、引用文献7の正極材料の発明とを対比するに、引用文献7の正極材料の発明における「組成がLi_(1+x)[(Ni_(0.42)Mn_(0.42)Co_(0.16))_(1-x)]O_(2)(x=0.06)であ」る「リチウムイオン電気化学セル用の正極材料」は、技術常識からして、本件特許発明1における「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であ」る「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子。

<相違点>
相違点J:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の組成式が、
本件特許発明1では、「 Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」るのに対し、
引用文献7の正極材料の発明では、Li_(1.06)(Ni_(0.39)Mn_(0.39)Co_(0.15))O_(2)であり、「 Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)」ではない点。

相違点K:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献7の正極材料の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

ヒ. そこで、上記相違点J?Kについて検討するに、上記相違点J、Kは、それぞれ、上記相違点E、Fと同じ相違点であるから、上記(1-2)シ.?ス.での検討と同様にして、本件特許発明1の発明は、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献7に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜に製造し得た正極活物質粒子と同一であるとはいえない。


(2-3) 本件特許発明1と引用文献8に記載された発明との対比・判断
マ. 本件特許発明1と、上記第4の(8ク-1)に示される、引用文献8の正極活物質の発明とを対比するに、引用文献8の正極活物質の発明における「組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される、非水二次電池に係る正極における正極活物質」は、技術常識からして、本件特許発明1における「六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であ」る「非水電解質二次電池用の正極活物質粒子」に相当し、また、引用文献8の正極活物質の発明における「組成がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)で表される」ことは、本件特許発明1における「組成式が、Li_(x)(Ni_(1-y-z)Co_(y)Mn_(z))O_(2)(1.02≦x≦1.07、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40、0.3≦y+z≦0.7)であ」ることと、引用文献8記載の「Li_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)」との組成式そのもので重複する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
六方晶層状岩塩構造を有する正極活物質粒子であって、組成式がLi_(1.02)Ni_(0.60)Co_(0.20)Mn_(0.20)O_(2)である、非水電解質二次電池用の正極活物質粒子。

<相違点>
相違点L:非水電解質二次電池用の正極活物質粒子が、
本件特許発明1では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のに対し、
引用文献8の正極活物質の発明では、「前記正極活物質粒子を正極に用い、負極としてLiを用いて非水電解質二次電池を組んで、60℃環境下で4.6Vまで0.2Cレート(16mA/g)で初期充電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に初期充電容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成したとき、該グラフ内で電圧が4.3V以上4.52V以下の範囲における面積の大きさが35mAh/g以下である」のか明らかでない点。

ミ. そこで、上記相違点Lについて検討するに、上記相違点Lは、上記相違点Hと同じ相違点であるから、上記(1-3)チ.での検討と同様にして、本件特許発明1の発明は、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献8に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜に製造し得た正極活物質粒子と同一であるとはいえない。

(2-4) 補足
なお、特許異議申立人藤井和子は、本件特許発明1の本質は、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明との関係でいえば、上記相違点I、K、Lに係る本件特許発明1の発明特定事項を実現するための製造条件を見出したにすぎず、その製造条件は、引用文献1?5に記載される周知の焼成温度であるから、進歩性を有しない旨主張している(特許異議申立人藤井和子が提出した特許異議申立書第20頁第10?19行、同書第22頁第16?24行、同書第24頁第23行?第25頁第6行)。
しかしながら、上記(2-1)?(2-3)での検討に照らし、特許異議申立人藤井和子の前記主張が合理性を欠くことは明らかである。


(3) 本件特許発明2と引用文献6?8に記載された発明との対比・判断
ヤ. 次に、本件特許発明2と引用文献6?8に記載された発明とについて対比・判断するに、本件特許発明2の非水電解質二次電池用の正極活物質粒子の発明は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(2)での検討と同様にして、本件特許発明2の発明は、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明と引用文献1?5、9に記載の周知技術とに基づいて、当業者が適宜に製造し得た正極活物質粒子であるとはいえない。

ユ. なお、特許異議申立人藤井和子は、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用するに際して、平均粒径等を引用文献2?6や引用文献9に記載の周知の範囲としたのが、本件特許発明2の正極活物質粒子である旨主張している(特許異議申立人藤井和子が提出した特許異議申立書第20頁第21?26行、同書第22頁第25行?第23頁第3行、同書第25頁第7?12行)。

ヨ. しかしながら、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明に引用文献1?5記載の技術事項を適用することについては、上記(1-1)カ.、上記(1-2)シ.?ス.、上記(1-3)チ.でも検討したとおり、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明に引用文献1?5記載の技術事項を適用することは合理性がない。また、引用文献9に記載されているのは、上記第4の9ウ.に示したとおり、一般式Li_(1+δ)[Ni_(x)Mn_(x)Co_(1-2x)]O_(2)(-1/10≦δ≦1/10、0≦x≦1)で表される正極活物質について、1次の粒子の平均粒径が1μmであり、2次の平均粒径が10μmであることによって、電池の高率特性を向上させる一方、電極を高容量化することができるという技術事項であり、その一般式からして、NiとMnとのモル比が等しく、しかも、(Li+Ni+Mn+Co)/Oのモル比率が(2+δ)/2に等しいとの関係を満たさなければならないところ、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の正極活物質粒子は、その組成式からして、いずれも、引用文献9に記載の前記一般式が当てはまらないから、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の正極活物質粒子に引用文献9記載の技術事項を適用することも、合理性がない。さらに、引用文献1?9には、本件特許発明2で特定されている結晶子サイズまでの開示はない。
してみると、前記ユ.に示した、特許異議申立人藤井和子の主張も合理性を欠いていることは明らかである。


(4) 本件特許発明4と引用文献6?8に記載された発明との対比・判断
次に、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明につき検討するに、本件特許発明4と対比される、引用文献6?8に記載された発明は、それぞれ、上記第4の(6サ-3)に示される、引用文献6の非水系電解質二次電池の発明、上記第4の(7コ-3)に示される、引用文献7のリチウムイオン電気化学セルの発明、上記第4の(8ク-3)に示される、引用文献8の非水系二次電池の発明である。
そして、本件特許発明4の非水電解質二次電池の発明も、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備えたものであるから、上記(2)での検討と同様にして、本件特許発明4の発明も、本件特許の出願に係る優先権主張の日前に、引用文献6、引用文献7又は引用文献8に記載の発明において、焼成温度を引用文献1?5に記載の925℃や950℃にするとの周知技術を適用することで、当業者が適宜に製造し得た正極活物質粒子を用いた非水電解質二次電池であるとはいえない。


(5) 小括
以上のとおりであるから、申立理由4及び証拠によっては、本件特許発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。


第6 むすび

したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-26 
出願番号 特願2016-223847(P2016-223847)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H01M)
P 1 651・ 121- Y (H01M)
P 1 651・ 537- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 浅野 裕之  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 宮本 純
小川 進
登録日 2017-03-17 
登録番号 特許第6109399号(P6109399)
権利者 BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社
発明の名称 非水電解質二次電池用の正極活物質粒子及びその製造方法、並びに非水電解質二次電池  
代理人 金子 修平  
代理人 井関 勝守  
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