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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61F |
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管理番号 | 1337093 |
異議申立番号 | 異議2017-700135 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-02-15 |
確定日 | 2018-02-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5969211号発明「吸水シート構成体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5969211号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5969211号(以下「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成22年12月27日(優先権主張平成22年1月13日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年7月15日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人平川弘子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年4月17日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成29年6月6日に意見書の提出がされ、再度、当審において平成29年9月7日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成29年11月2日に意見書の提出がされたものである。 2.本件発明 本件特許の請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1?10」という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本件発明1は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 吸水性樹脂及び接着剤を含有してなる吸収層が、不織布により該吸収層の上方及び下方から挟持され、該不織布が該吸収層と接着された構造を有する吸水シート構成体の製造方法であって、 接着剤が溶融塗布された不織布上に均一に散布された吸水性樹脂を、接着剤が溶融塗布された不織布で挟持して加圧圧着する工程を有し、 該吸水性樹脂の含有量が10g/m^(2)以上100g/m^(2)未満、該吸水性樹脂の生理食塩水保水能が35?80g/gであり、該吸水シート構成体の剥離強度が0.05?3.0N/7cmである吸水シート構成体の製造方法。」 3.平成29年9月7日付けで通知した取消理由の概要 本件発明1?10に対して、特許権者に平成29年9月7日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 本件特許の本件発明1?10は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲1:特開2005-59579号公報 甲2:特開2008-133396号公報 甲3:特開2006-176570号公報 甲4:特開平5-38350号公報 甲7:特開2002-144461号公報 本件発明1?10は、甲4発明及び甲7、甲1、甲2又は甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.当審の判断 (1)甲4(特に、段落【0032】、【0034】)には、 「親水化処理を行ったポリエチレン/ポリエステル複合繊維からなる不織布9(坪量35g/m^(2)、クレム吸収度25mm/1分)上にホットメルト粘着剤a(トプコP-618B(商品名)、東洋ペトロライト(株))を20g/m^(2)でスパイラル形状に塗布し、次いで、吸収ポリマーY(アクリル酸ナトリウム重合体架橋物、生理食塩水の吸収量40g/g、吸収速度8.5cc/0.3g・20分)を坪量20g/m^(2)で散布し、この上から不織布9を更に重ね圧着一体化する、吸収シートの製造方法」の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。 (2)本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「親水化処理を行ったポリエチレン/ポリエステル複合繊維からなる不織布9」、「ホットメルト粘着剤a」、「吸収ポリマーY」、「吸収シート」は、それぞれ、本件発明1の「不織布」、「接着剤」、「吸水性樹脂」、「吸水シート構成体」に相当する。 また、甲4発明の散布される吸収ポリマーYの坪量としての「20g/m^(2)」は、本件発明1の「吸水性樹脂の含有量が10g/m^(2)以上100g/m^(2)未満」の範囲内であり、甲4発明の吸収ポリマーYの吸収量としての生理食塩水の「40g/g」は、本件発明1の「吸水性樹脂の生理食塩水保水能が35?80g/g」の範囲内である。 そうすると、本件発明1と甲4発明とは、本件発明1が「吸水シート構成体の剥離強度が0.05?3.0N/7cmである」のに対し、甲4発明は、剥離強度について特定されていない点で、少なくとも相違する。 剥離強度について、甲7には、生理用ナプキン等の衛生物品のフィルムと不織布との間の剥離強度として「400mN/25mm」(換算すると、1.12N/7cm)以上であることが好ましいと記載(【0016】)されているが、吸収ポリマーと不織布からなる吸収シートの剥離強度ではなく、甲4発明の吸収シートの剥離強度を「0.05?3.0N/7cm」とすることを示唆するものではない。 また、甲1?3にも、吸水シート構成体の剥離強度を「0.05?3.0N/7cm」のごとく小さい範囲に設定することの記載や示唆はない。 そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を備えることで、「剥離強度を特定の範囲とすることで、吸水性樹脂の表面全体が接着剤に覆われた状態ではなく、一部分が固着した状態であるため、吸水性樹脂の吸水性能がほとんど阻害されることがなく、吸水性樹脂が十分に膨潤することができる」(本件特許明細書の【0021】)ことから、「薄型であっても、形態保持性が良好なために、液体吸収前や吸収後に型くずれを起こさず、しかも尿のような低粘性の液体だけでなく、経血のような高粘性の液体に対しても十分な吸収能力を発揮することができるという優れた効果を奏する」(同じく【0018】)ものである。 よって、本件発明1は、甲4発明及び甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)また、本件発明2?10は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件発明1は、上記のように、甲4発明及び甲7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2?10は、甲4発明及び甲7、甲1、甲2又は甲3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)平成29年4月17日付けで通知した取消理由について 平成29年4月17日付けで通知した取消理由は、本件発明1?10は、甲1発明に、甲2?7に記載された技術的事項を適用して当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 なお、この取消理由は、申立人の特許異議申立理由を、すべて通知したものであり、甲5は国際公開第01/89439号、甲6は特開2001-158074号公報である。 この甲1発明においても、吸収ポリマーと不織布からなる吸収シートの剥離強度を「0.05?3.0N/7cm」とするものではなく、また、申立人が提出した他の証拠にも、吸収シートの剥離強度を「0.05?3.0N/7cm」とすることについて、記載も示唆もされていない。 この点は、甲5、6についても同様である。 よって、本件発明1?10は、甲1発明及び甲2?7に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)したがって、本件発明1?10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1?10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?10に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-01-30 |
出願番号 | 特願2011-549905(P2011-549905) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A61F)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 笹木 俊男 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
井上 茂夫 千壽 哲郎 |
登録日 | 2016-07-15 |
登録番号 | 特許第5969211号(P5969211) |
権利者 | 住友精化株式会社 |
発明の名称 | 吸水シート構成体の製造方法 |
代理人 | 細田 芳徳 |