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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) F16B
管理番号 1337101
判定請求番号 判定2017-600036  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 判定 
判定請求日 2017-08-29 
確定日 2018-01-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第5200190号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件の「緩み止め具」は、特許第5200190号の請求項1ないし4に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨と手続の経緯
本件判定の趣旨は、イ号物件写真に示す「緩み止め具」は、特許第5200190号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。

本件特許に係る手続の経緯は、平成22(2010)年5月21日を国際出願日として出願され、平成25年2月15日に特許権の設定登録がなされ、平成29年8月29日に本件判定請求が、株式会社KHIを被請求人として、なされたものである。
ところで、株式会社KHIは、平成27年7月24日に特別清算手続が結了したが、登録原簿の上では本件特許の権利者は依然として株式会社KHIである。この点、同年29年9月12日付けで判定請求書副本を株式会社KHIに送達するとともに、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人から答弁書は提出されなかった。

第2 本件特許発明
1 本件特許発明の構成
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのもの(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)であって、本件特許発明1について各構成要件(以下、「構成要件A」などという。)ごとに分説すると、次のとおりである。

構成要件A:
所定の方向に巻回したコイル素線で構成された第1のコイルバネ部と、

構成要件B:
該第1のコイルバネ部を構成するコイル素線の一端と接続する一端を有し前記所定の方向と同じ方向に巻回したコイル素線で構成されると共に、前記第1のコイルバネ部の内接円よりも小さい径を有する第2のコイルバネ部と、

構成要件C:
前記第1のコイルバネ部のコイル素線の一端と接続した前記第2のコイルバネ部のコイル素線の一端とは反対側の他端と接続する一端を有し前記所定の方向と同じ方向に巻回したコイル素線で構成されると共に、前記第2のコイルバネ部の径よりも大きい内接円を有する第3のコイルバネ部とを備え、

構成要件D:
前記第1のコイルバネ部の形状は、前記第3のコイルバネ部の形状と略同じであり、

構成要件E:
前記第1のコイルバネ部と前記第3のコイルバネ部は互いに接しており、

構成要件F:
前記第2のコイルバネ部の一端と接続する前記第1のコイルバネ部のコイル素線の一端とは反対側の他端、および前記第2のコイルバネ部のコイル素線の他端と接続する前記第3のコイルバネ部のコイル素線の一端とは反対側の他端は、コイル素線とコイル素線の間に位置する

構成要件G:
脱落防止具。

2 本件特許発明の目的及び作用効果
本件特許発明1ないし4は、「ボルトへの装着前に装着方向を確認する必要がなく、ナットや被固定物の緩みを抑制できる脱落防止具を提供すること」(本件特許の明細書の段落【0007】)を目的とし、脱落防止具が上記「1」の各構成要件を有することにより、「脱落防止具をボルトの脚部に装着するとき、第1のコイルバネ部もしくは第3のコイルバネ部のどちらからでもボルトの脚部に装着することができる」(本件特許の明細書の段落【0009】)という効果、及び「脱落防止具の嵩が低くなるので、脱落防止具を積み重ねやすくなり、1つの工具内に複数の脱落防止具を重ねて装填し、連続して脱落防止具をボルトの脚部に装着することができる」(本件特許の明細書の段落【0010】)という効果を奏するものと認められる。

第3 イ号物件
判定請求書の第2ページ第11行及び第12行の「甲第2号証(イ号物件写真)で示す、ボルトに装着されたナットや被固定物が緩んで脱落することを防止する緩み止め具(イ号物件)」との記載及び甲第2号証のイ号物件斜視写真、イ号物件正面写真、イ号物件平面写真(以下、イ号物件斜視写真、イ号物件正面写真、及びイ号物件平面写真を総称して「イ号物件写真」という。)からみて、イ号物件に関して以下の事項が認められるか、または看取される。

(1)甲第2号証のイ号物件写真より、以下の点が認められる。

ア イ号物件は、コイル素線が略円形状に略同一径で第2のコイルバネ部2と同じ方向に巻回された第1のコイルバネ部1を有することが看取される。

イ イ号物件は、第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の一端から延びるコイル素線が、第1のコイルバネ部1の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、第1のコイルバネ部1と同心状に、かつ、所定の方向に多角形状に巻回された第2のコイルバネ部2を有することが看取される。

ウ イ号物件は、第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の他端から延びるコイル素線が、第1のコイルバネ部1の巻回範囲より大きい巻回り範囲で、かつ、第1のコイルバネ部1と同心状に、かつ、多角形状に第2のコイルバネ部2と同じ方向に巻回された第3のコイルバネ部3を有することが看取される。

エ イ号物件において、第2のコイルバネ部2の形状と第3のコイルバネ部3の形状は略同じであることが看取される。

オ イ号物件において、第2のコイルバネ部2と第3のコイルバネ部3は互いに離れていることが看取される。

カ イ号物件において、第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の一端と接続する、第2のコイルバネ部2を構成するコイル素線の一端とは反対側の他端2Aは、第1のコイルバネ部の軸線方向において第1のコイルバネ部1の一端よりも外側に位置することが看取される。

キ イ号物件において、第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の他端と接続する、第3のコイルバネ部3を構成するコイル素線の一端とは反対側の他端3Aは、第1のコイルバネ部1の軸線方向において第1のコイルバネ部1の他端よりも外側に位置することが看取される。

(2)判定請求書の第2ページ第11行ないし第12行の「甲第2号証(イ号物件写真)で示す、ボルトに装着されたナットや被固定物が緩んで脱落することを防止する緩み止め具(イ号物件)」との記載から、イ号物件は緩み止め具であると認められる。

上記各事項より、イ号物件は、各構成(以下、「構成a」などという。)ごとに分説して記載すると、次のとおりである。

構成a:
第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の一端から延びるコイル素線が、前記第1のコイルバネ部1の巻回範囲より大きい巻回範囲で、かつ、前記第1のコイルバネ部1と同心状に、かつ、多角形状に所定の方向に巻回された第2のコイルバネ部2と、

構成b:
コイル素線が略円形状に略同一径で第2のコイルバネ部2と同じ方向に巻回された第1のコイルバネ部1と、

構成c:
第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の他端から延びるコイル素線が、前記第1のコイルバネ部1の巻回範囲より大きい巻回り範囲で、かつ、前記第1のコイルバネ部1と同心状に、かつ、多角形状に第2のコイルバネ部2と同じ方向に巻回された第3のコイルバネ部3とを備え、

構成d:
第2のコイルバネ部2の形状と第3のコイルバネ部3の形状は略同じであり、

構成e:
第2のコイルバネ部2と第3のコイルバネ部3は互いに離れており、

構成f:
第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の一端と接続する、第2のコイルバネ部2を構成するコイル素線の一端とは反対側の他端2Aは、前記第1のコイルバネ部の軸線方向において前記第1のコイルバネ部1の一端よりも外側に位置し、前記第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の他端と接続する、第3のコイルバネ部3を構成するコイル素線の一端とは反対側の他端3Aは、前記第1のコイルバネ部1の軸線方向において前記第1のコイルバネ部1の他端よりも外側に位置する

構成g:
緩み止め具。

第4 充足性の判断
イ号物件が本件特許発明1に係る前記分説した各構成要件AないしGを充足するか否かについて両者を対比する。

1 構成要件Aについて
イ号物件の構成aの「コイル素線が」「所定の方向に巻回された第2のコイルバネ部2」は、本件特許発明1の構成要件Aの「所定の方向に巻回したコイル素線で構成された第1のコイルバネ部」に相当する。
したがって、イ号物件の構成aは本件特許発明1の構成要件Aを充足する。

2 構成要件Bについて
イ号物件の構成aによれば、第1のコイルバネ部1は、第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の一端から延びるコイル素線が、第2のコイルバネ部2を構成しているから、第1のコイルバネ部1は、第2のコイルバネ部2を構成するコイル素線の一端と接続する一端を有するといえる。
イ号物件の構成aによれば、第1のコイルバネ部1は第2のコイルバネ部2と同じ方向に巻回されており、第2のコイルバネ部2が巻回される方向は所定の方向であるから、第1のコイルバネ部1は所定の方向に巻回したコイル素線で構成されているといえる。
イ号物件の構成aによれば、第2のコイルバネ部2のコイル素線の巻回範囲は、第1のコイルバネ部1の巻回範囲より大きく、かつ、第1のコイルバネ部1と同心状であり、かつ、第2のコイルバネ部2は多角形状に巻回されており、イ号物件の構成bによれば、第1のコイルバネ部1は略円形状に巻回されているから、第1のコイルバネ部1は、第2のコイルバネ部2の内接円よりも小さい径を有するといえる。
以上から、イ号物件の「第1のコイルバネ部1」は、第2のコイルバネ部2を構成するコイル素線の一端と接続する一端を有し、所定の方向に巻回したコイル素線で構成され、第2のコイルバネ部2の内接円よりも小さい径を有するものといえるので、本件特許発明1の構成要件Bの「該第1のコイルバネ部を構成するコイル素線の一端と接続する一端を有し前記所定の方向と同じ方向に巻回したコイル素線で構成されると共に、前記第1のコイルバネ部の内接円よりも小さい径を有する第2のコイルバネ部」に相当する。
したがって、イ号物件の構成a、bは本件特許発明1の構成要件Bを充足する。

3 構成要件Cについて
イ号物件の第1のコイルバネ部1は、前記「2」で検討したとおり、第2のコイルバネ部2を構成するコイル素線の一端と接続する一端を有している。また、イ号物件の構成cによれば、第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の一端とは反対側の他端から延びるコイル素線が、第3のコイルバネ部3を構成しているから、第3のコイルバネ部3は、第2のコイルバネ2のコイル素線の一端と接続した前記第1のコイルバネ部のコイル素線の一端とは反対側の他端と接続する一端を有するといえる。
イ号物件の構成cによれば、第3のコイルバネ部3は第2のコイルバネ部2と同じ方向に巻回されており、第2のコイルバネ部2が巻回される方向は所定の方向であるから、第3のコイルバネ部3は所定の方向に巻回したコイル素線で構成されているといえる。
イ号物件の構成cによれば、第3のコイルバネ部3のコイル素線の巻回範囲は、第1のコイルバネ部1の巻回範囲より大きく、かつ、第1のコイルバネ部1と同心状であり、かつ、第3のコイルバネ部3は多角形状に巻回されており、イ号物件の構成bによれば、第1のコイルバネ部1は略円形状に巻回されているから、第3のコイルバネ3は、第1のコイルバネ部1の径よりも大きい内接円を有しているといえる。
以上から、イ号物件の構成cの「第3のコイルバネ部3」は、第2のコイルバネ2のコイル素線の一端と接続した前記第1のコイルバネ部のコイル素線の一端とは反対側の他端と接続する一端を有し、所定の方向に巻回したコイル素線で構成され、第1のコイルバネ部1の径よりも大きい内接円を有するものといえるので、本件特許発明1の構成要件Cの「前記第1のコイルバネ部のコイル素線の一端と接続した前記第2のコイルバネ部のコイル素線の一端とは反対側の他端と接続する一端を有し前記所定の方向と同じ方向に巻回したコイル素線で構成されると共に、前記第2のコイルバネ部の径よりも大きい内接円を有する第3のコイルバネ部」に相当する。
したがって、イ号物件の構成cは本件特許発明1の構成要件Cを充足する。

4 構成要件Dについて
前記「1」及び「3」で検討したとおり、イ号物件の「第2のコイルバネ部2」及び「第3のコイルバネ部3」は本件特許発明1の「第1のコイルバネ部」及び「第3のコイルバネ部」に、それぞれ相当する。
そうすると、イ号物件の構成dの「第2のコイルバネ部2の形状と第3のコイルバネ部3の形状は略同じ」であることは、本件特許発明1の構成要件Dの「前記第1のコイルバネ部の形状は、前記第3のコイルバネ部の形状と略同じ」であることに相当する。
したがって、イ号物件の構成dは本件特許発明1の構成要件Dを充足する。

5 構成要件Eについて
イ号物件の構成eの第2のコイルバネ部2と第3のコイルバネ部3は互いに離れているものである。
したがって、イ号物件は、第2のコイルバネ部2と第3のコイルバネ部3は互いに接しているとはいえない点において、本件特許発明1の構成要件Eを充足しない。

6 構成要件Fについて
イ号物件の構成fは、第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の一端と接続する、第2のコイルバネ部2を構成するコイル素線の一端とは反対側の他端2Aは前記第1のコイルバネ部の軸線方向において前記第1のコイルバネ部1の一端よりも外側に位置し、前記第1のコイルバネ部1を構成するコイル素線の他端と接続する、第3のコイルバネ部3を構成するコイル素線の一端とは反対側の他端3Aは前記第1のコイルバネ部1の軸線方向において前記第1のコイルバネ部1の他端よりも外側に位置するものである。
したがって、イ号物件は、第1のコイルバネ部1の一端と接続する第2のコイルバネ部2のコイル素線の一端とは反対側の他端、および前記第1のコイルバネ部1のコイル素線の他端と接続する第3のコイルバネ部3のコイル素線の一端とは反対側の他端は、コイル素線とコイル素線の間に位置するとはいえない点において、本件特許発明1の構成要件Fを充足しない。

7 構成要件Gについて
判定請求書の第2ページ第11行ないし第12行の「甲第2号証(イ号物件写真)で示す、ボルトに装着されたナットや被固定物が緩んで脱落することを防止する緩み止め具(イ号物件)」との記載によれば、イ号物件の緩み止め具は被固定物が緩んで脱落することを防止する機能を有している。
そうすると、イ号物件の構成gの「緩み止め具」は本件特許発明1の「脱落防止具」に相当する。
したがって、イ号物件の構成gは本件特許発明1の構成要件Gを充足する。

8 小括
以上のように、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件E及びFを充足しないから、本件特許発明1の構成要件のすべてを充足するとはいえない。
また、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1をさらに限定するものであるから、イ号物件は、本件特許発明2ないし4の構成要件のすべてを充足するとはいえない。
よって、イ号物件は、本件特許発明1ないし4の技術的範囲に属しない。

第5 結論
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1ないし4の技術的範囲に属しないものである。

よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2018-01-15 
出願番号 特願2012-515692(P2012-515692)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (F16B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳楽 隆昌  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 内田 博之
滝谷 亮一
登録日 2013-02-15 
登録番号 特許第5200190号(P5200190)
発明の名称 脱落防止具  
代理人 大久保 秀人  
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