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審決分類 |
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A61K 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61K 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61K 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61K 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A61K |
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管理番号 | 1337251 |
審判番号 | 訂正2017-390125 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2017-11-20 |
確定日 | 2018-01-19 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6223543号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6223543号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第6223543号に係る発明は、平成26年3月14日(パリ条約による優先権主張 2013年3月15日(US)米国)を国際出願日とする特願2016-502761号の請求項1?43に係る発明について平成29年10月13日に設定登録がなされたものであるところ、平成29年11月20日に本件訂正審判が請求されたものである。 2.請求の趣旨 特許第6223543号に係る明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正することを認める、との審決を求める。 3.訂正事項 (1)訂正事項1 明細書の発明の名称における、「多汗症の処置のための抗コリン作用性グリコピロレートエステル」との記載を、「ソフト抗コリン作用性エステルの投与の方法および使用」に訂正する。 4.訂正の適否の判断 (1)訂正の目的 訂正前の発明の名称の末尾は「グリコピロレートエステル」であり、発明の名称として特定の化合物の名称が記載されている。 しかしながら、本件特許の請求項1?6および請求項23?28は当該化合物の使用に関する発明であり、請求項7?22および29?43は当該化合物を含む医薬組成物に関する発明であって、本件特許の特許請求の範囲には、化合物の発明はない。そのため、訂正前の発明の名称と特許請求の範囲は整合しておらず、また、訂正前の発明の名称と特許請求の範囲に記載の発明との関係が明瞭でない。 これに対して、訂正事項1は、発明の名称を「ソフト抗コリン作用性エステルの投与の方法および使用」とすることにより、特許請求の範囲に記載された発明とその名称との関係を明らかにしようとするものである。 したがって、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明に該当し、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものである。 また、特許法第184条の19の規定により同法第126条第5項で規定する願書に最初に添付した明細書とされる本件特許の国際出願日における国際出願の明細書に記載された発明の名称は「METHOD OF DOSING AND USE OF SOFT ANTICHOLINERGIC ESTERS」であるところ、訂正前の発明の名称「多汗症の処置のための抗コリン作用性グリコピロレートエステル」がその訳語として対応しないことは明らかであり、訂正事項1は、発明の名称を国際出願時の発明の名称の正しい翻訳に訂正しようとするものといえる。 したがって、訂正事項1は、誤訳の訂正に該当し、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものでもある。 (2)その他の要件について 訂正事項1に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書とされる本件特許の国際出願日における国際出願の明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 また、訂正事項1に係る訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明になるものではないから、特許法第126条第7項に規定する要件に適合するものである。 5.むすび 以上のとおり、本件審判請求による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号、及び同第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものであるので、当該訂正を認める。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ソフト抗コリン作用性エステルの投与の方法および使用 【背景技術】 【0001】 (背景) 種々の抗コリン作用性化合物は、以前から記載されてきたが最適ではない。 【0002】 ムスカリン様レセプターアンタゴニストは、平滑筋、心筋および腺細胞の神経効果器部位において、ならびに末梢神経節および中枢神経系(CNS)において、ムスカリン様コリン作用性レセプターへのアセチルコリンの結合をブロックすることによってアセチルコリンの効果を阻害する、頻繁に使用される治療剤である。しかし、それらの副作用(上記副作用としては、ドライマウス、羞明、霧視(blurred vision)、排尿躊躇および尿閉、嗜眠状態、眩暈感、不穏状態(restlessness)、易刺激性、失見当識、幻覚、頻脈および心不整脈、悪心、便秘、ならびに重症アレルギー反応が挙げられ得る)は、しばしば、それらの臨床使用を制限する。ムスカリン様レセプターの局部的ブロックが臨床的に有益である標的とする領域(例えば、汗腺)への抗コリン作用性薬剤の局所(topical)投与は、望ましい治療ストラテジーである。しかし、現在使用される局所的抗コリン作用薬は、望ましくない全身性の副作用(これは、安全に投与され得る投与量を制限し得る)を示し得る。 【0003】 グリコピロレートは、血液脳関門を通過できないためにCNS関連副作用が低下した第四級アンモニウム抗コリン作用薬の中の一つである;しかし、グリコピロレートは、主に未変化薬物もしくは活性代謝産物として排除されるので、その局所投与はしばしば、一般的な望ましくない抗コリン作用性全身性副作用と関連する。抗コリン作用薬の治療指数を増大させるために、ソフト薬物アプローチは、種々のリード化合物から出発する多くの種々の設計において適用されてきたが、臨床的に意義のある生物学的活性を有する、なお他の新しいソフト抗コリン作用薬が必要である。これら新規なムスカリン性アンタゴニストは、ちょうど他の全てのソフト薬物のように、適用部位においてそれらの意図された薬理学的効果を誘発するが、全身循環に入るとそれらの設計に組み込まれた(designed-in)不活性代謝産物へと迅速に代謝されて身体から迅速に排除され、減少した全身副作用および増大した治療指数を生じるように設計される。 【0004】 ソフト抗コリン作用性双極性イオンは、US公報第2012/0141401号、およびその関連特許US 8,071,693;同第7,538,219号;および同第7,417,147号に記載されてきた。ソフト抗コリン作用性エステルは、US公報第2012/0177590号およびその関連特許US 8,147,809号;同第7,576,210号;および同第7,399,861号に記載されてきた。これらの公開された出願および特許は、抗コリン作用性の双極性イオンもしくはエステル形態の、多汗症を処置するために使用される潜在能力を同定したが、活性および作用の持続時間は、公開された散瞳データとの比較に基づくと予想外に高く、以前に公知ではなく、以前に記載されてもいない。 【0005】 多汗症は、身体を冷やすために必要とされるのを超えて過剰な制御されない発汗によって特徴付けられる、特発性の病的状態である。汗腺の機能亢進およびそれらのコリン作用性刺激の障害は、この状態の考えられる原因として記載されてきた。人口の約3%が多汗症に罹患していることは公知である。多汗症は、激しい社会的羞恥を生じ得るのみならず、個人の職業を妨害し得ることすらある。 【0006】 多汗症は、最も頻繁には、1つまたはそれより多くの領域、特に、手、腋窩、足もしくは顔面を含むが、それは、全身を含むことすらあり得る。腋窩多汗症は、最も一般的な形態であり、手掌多汗症がそれに続く。発汗抑制剤のみでは、一般に、この過剰な発汗を処置するにあたって有効ではない。経口服薬は、ときおり有益であるが、副作用を有し得る。他の治療選択肢としては、外科手技(例えば、胸腔鏡下胸部交感神経切除術)が挙げられる。上記手術は、罹患個体のうちの約40%?90%において恒久的な利益をもたらすが、それは侵襲性であり、全身麻酔を要し、潜在的な副作用がないわけではない。胸部交感神経切除術を受けた個人のうちの50%もが、体幹もしくは大腿部の代償的で迷惑な発汗を発生させる。 【0007】 ボツリヌス神経毒素A(Botulinum A neurotoxin)(BOTOX)は、自律神経によって放出されるアセチルコリンの汗腺に対する作用をブロックし、多汗症において有効であると判明した。罹患個体の手掌もしくは腋窩に注射される微量のBOTOXは、統計的に有意な利益を生じる。その効果は、数ヶ月持続するが、反復注射を要し、しばしば、小児患者にとっては適切な選択肢でない。 【0008】 汗を低下させる活性が高く、長時間持続し、副作用がより少なく、非侵襲性の、便利でかつ有効な処置は、多汗症を処置するための歓迎される選択肢である。 【0009】 局所的グリコピロレートは、糖尿病性自律神経ニューロパチーと関連する味覚性発汗を処置するために以前使用された。この障害において、しばしばおびただしい発汗は、患者が摂食した直後に始まり、前頭部に始まって、次いで、顔面、頭皮および頸部が含まれる。グリコピロレートの溶液を上記患者の顔面に適用したところ、味覚性発汗が妨げられた。 【0010】 同様に、グリコピロレートはまた、耳下腺摘出後に発生し得るフライ症候群と関連する味覚性発汗を処置するために以前使用された。フライ症候群は、切断された耳下腺副交感神経線維による顔面の汗腺の異所性再神経支配から生じると考えられる。 【0011】 糖尿病性味覚性発汗およびフライ症候群の両方において、おびただしい顔面発汗は、摂食の特定の刺激によって誘発される。さらに、各々における発汗は、明確な神経病理学的プロセスの結果である。対照的に、多汗症は、特定の刺激なしに自発的に起こる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0012】 【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0141401号明細書 【特許文献2】米国特許第8,071,693号明細書 【特許文献3】米国特許第7,538,219号明細書 【特許文献4】米国特許第7,417,147号明細書 【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0177590号明細書 【特許文献6】米国特許第8,147,809号明細書 【特許文献7】米国特許第7,576,210号明細書 【特許文献8】米国特許第7,399,861号明細書 【発明の概要】 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明は、部分的には、哺乳動物への5%濃度のソフト抗コリン作用性化合物の毎日の局所的適用が、多汗症を処置することにおける以前の問題のうちの多くを克服するという発見に関する。ソフト抗コリン作用性化合物とグリコピロレートとを比較する以前の公開された散瞳研究において、匹敵する活性には、グリコピロレートと比較して、5倍(5×)もの、またはそれより高い濃度の上記ソフト抗コリン作用性化合物が必要であったようである。驚くべきことに、本発明の化合物は、グリコピロレートの匹敵する用量を使用して報告された類似の汗の減少のレベルで、汗の生成の臨床的に有意な減少を提供し得、このことは、潜在的に、本発明の化合物を多汗症の適切な処置選択肢にする。 【0014】 さらに、本発明は、多汗症の従来の処置によってこれまで達成されなかった利点を提供する。例えば、上記適用されるソフト抗コリン作用性化合物は、Botox処置と関連する副作用を有さず、全身性の抗コリン作用性薬剤もしくは局所的グリコピロレートと比較した場合に、改善された安全性プロフィールを有し得る。 【0015】 概要 ソフト抗コリン作用性薬剤を使用する哺乳動物被験体(例えば、多汗症に罹患しているヒト)における過剰な発汗状態を処置する方法が記載され、これらを含む薬学的組成物が提供される。記載される方法は、就寝前に局所投与される場合の、ソフト抗コリン作用薬の予想外の活性に関する。 【0016】 1つの例示的実施形態において、以下の式を有する化合物が提供され: 【化1】 ここでRは、メチルもしくはエチルであり、上記化合物は、2位においてR立体配置を、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物である。 【0017】 他の例示的実施形態において、前述の式の化合物のうちの1種もしくはそれより多く、およびそのための薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物;前述の式の化合物のうちの1種もしくはそれより多くおよび別の発汗抑制剤(例えば、塩化アルミニウム)を含む薬学的組み合わせ物;ならびに本発明の組成物および組み合わせ物を使用する方法が提供される。 【0018】 上記組成物は、好ましくは、多汗症の処置、予防もしくは改善における局所的適用のために製剤化される。 【0019】 1つの好ましい実施形態は、被験体における多汗症を処置、予防もしくは改善するための方法を包含し、ここで上記方法は、以下の工程を包含する: a)薬学的に受容可能なビヒクルおよび約1.0%?約25%の以下の式を有する化合物を含む組成物を提供する工程: 【化2】 (ここでRは、メチルもしくはエチルであり、上記化合物は、2位においてR立体配置を、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物である);ならびに b)就寝前に多汗症に罹患している被験体に上記組成物を局所投与する工程であって、上記局所投与は、等しい濃度のグリコピロレートを含む組成物の投与後に汗の生成が未処置のベースライン状態と比較して減少する量と予想外に実質的に等しい量、少なくとも約6時間にわたって汗の生成が未処置のベースライン状態と比較して減少するようなものである、工程。 【0020】 本発明の方法は、好ましくは、ヒト被験体に上記組成物を投与することによって行われ、好ましくは、上記被験体の手掌領域、足底領域、鼠径領域、腋窩領域、および顔面領域から選択される、汗の減少の必要のある解剖学的表面領域において、上記被験体の皮膚に適用され得る。 【0021】 本発明の方法は、汗の生成を約25%?約99%、好ましくは約30%?約75%、より好ましくは約45%?約60%、最も好ましくは約50%減少させ得、これらは、多汗症を処置するための適応症についての臨床的に有意なエンドポイントであり得る。 【0022】 上記方法は、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム(foam)、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンなどとして製剤化される組成物を使用し得、好ましくは、約2%?約10%の濃度の上記化合物を含む。1つの好ましい実施形態は、70% エタノール中の上記化合物の5%溶液として製剤化される組成物を使用する。 【0023】 さらに、睡眠サイクル後の、この睡眠サイクルの前の用量の後約6?10時間以内の第2の用量の投与はまた、好ましい投与方法もしくは投与レジメンであり得る。 【0024】 驚くべきことに、本発明の方法は、汗の生成を約8時間?約24時間、および好ましくは、約8時間?約12時間減少させ得る。 【0025】 本発明の別の方法は、多汗症に罹患している被験体が就寝前に、薬学的に受容可能なビヒクルおよび約1.0%?約25%の以下の式を有する化合物: 【化3】 を含む組成物を局所投与されることによる、新規な投与レジメンに関し、 ここでRは、メチルもしくはエチルであり、上記化合物は、2位においてR立体配置、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物であり、その結果、未処置のベースライン状態と比較して、汗の生成は、少なくとも約6時間にわたって少なくとも約25%減少するか、または汗の生成は、等価な濃度のグリコピロレートを含む組成物の投与後に、未処置のベースライン状態と比較して汗の生成が減少される量に実質的に等しい応答である。 【0026】 本発明に従う投与レジメンは、好ましくは、ヒト被験体への上記組成物の投与によって行われ、上記被験体の手掌領域、足底領域、鼠径領域、腋窩領域、および顔面領域から選択される解剖学的表面領域において上記被験体の皮膚に適用され得る。 【0027】 本発明に従う投与レジメンは、汗の生成を約25%?約99%、好ましくは約30%?約75%、より好ましくは約45%?約60%、最も好ましくは約50%減少させ得、これらは、多汗症を処置するための適応症についての臨床的に有意なエンドポイントであり得る。 【0028】 本発明に従う投与レジメンは、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンなどとして製剤化される組成物を使用し得、好ましくは、約2%?約10%の濃度の上記化合物を含む。1つの好ましい実施形態は、70% エタノール中の上記化合物の5%溶液として製剤化される組成物を使用する。 【0029】 さらに、本発明に従う投与レジメンは、第1の投与の後に、上記被験体が覚醒した後に、上記被験体に上記組成物の第2の用量を局所投与する工程を包含するさらなる工程を包含し得る。驚くべきことに、本発明に従う本投与レジメンは、汗の生成を約8時間?約24時間、および好ましくは、約8時間?約12時間減少させ得る。 特定の実施形態では、例えば以下が提供される: (項目1) 就寝前に、多汗症に罹患している哺乳動物被験体のある領域の皮膚に局所投与するための医薬組成物の調製における、以下の式を有する化合物: 【化5】 の使用であって、ここでRは、メチルもしくはエチルであり、該化合物は、2位においてR立体配置、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物であり;該組成物は、約1.0%?約25%の該化合物および薬学的に受容可能なビヒクルを含み、その結果、未処置のベースライン状態と比較して、汗の生成は、少なくとも約6時間にわたって少なくとも約25%減少する、使用。 (項目2) 以下の式を有する化合物: 【化6】 であって、ここでRは、メチルもしくはエチルであり、該化合物は、2位においてR立体配置、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物であり;該化合物は、医薬組成物の調製における使用のためのものであり、該医薬組成物は、約1.0%?約25%の該化合物および薬学的に受容可能なビヒクルを含み、就寝に先立つ被験体の罹患皮膚領域への局所投与によって多汗症を処置するためのものである、化合物。 (項目3) 以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する、項目1に記載の使用: a)前記被験体は、ヒトである; b)汗の生成は、約25%?約99%減少する; c)前記組成物は、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンとして製剤化される; d)汗の生成は、約8時間?約24時間減少する; e)Rは、メチルである; f)前記組成物は、手掌領域、足底領域、鼠径領域、腋窩領域もしくは顔面領域から選択される解剖学的表面領域において前記被験体の皮膚に適用される; g)汗の生成は、等価な濃度のグリコピロレートを含む組成物の投与後に汗の生成が未処置のベースライン状態と比較して減少する量に実質的に等しい量減少する。 (項目4) 以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する、項目1または3に記載の使用: a)汗の生成は、約30%?約75%減少する; b)前記組成物は、約2%?約10%の前記化合物を含む、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンとして製剤化される; c)汗の生成は、約8時間?約12時間減少する; d)Rは、エチルである。 (項目5) 以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する、項目1、3または4に記載の使用: a)汗の生成は、約45%?約60%減少する; b)前記組成物は、70% エタノール中の前記化合物の5%溶液として製剤化される。 (項目6) 汗の生成は、約50%減少する、項目1、3、4または5に記載の使用。 (項目7) 前記局所投与は、前記被験体が起床後の朝に、前記組成物の第2の用量を投与することをさらに包含する、項目1、3、4、5または6に記載の使用。 (項目8) 前記化合物は、以下からなる群より選択される、項目1、3、4、5、6または7に記載の使用: (i) 3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (ii) 3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (iii) (2R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (iv) (2R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (v) (2R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (vi) (2R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (vii) (2R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (viii) (2R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (ix) (2R,1’R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (x) (2R,1’S,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xi) (2R,1’R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xii) (2R,1’S,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xiii) (2R,1’R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xiv) (2R,1’S,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xv) (2R,1’R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド;および (xvi) (2R,1’S,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド。 (項目9) 以下の特徴のうちの1つまたはそれより多くを有する医薬組成物の調製において使用するための、項目2に記載の化合物: a)該組成物は、固体もしくは半固体、散剤、ゲル、クリーム剤、ローション剤、フォーム、液剤、懸濁物もしくはエマルジョンとして製剤化される; b)該組成物は、約2%?約10%の前記化合物を含む; c)該組成物は、70% エタノール中の前記化合物の約5%溶液を含む; d)該組成物は、Rがメチルである化合物を含む。 (項目10) 医薬組成物の調製における使用のための項目2に記載の化合物であって、該化合物は、以下からなる群より選択される、化合物: (i) 3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (ii) 3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (iii) (2R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (iv) (2R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (v) (2R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (vi) (2R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (vii) (2R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (viii) (2R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (ix) (2R,1’R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (x) (2R,1’S,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xi) (2R,1’R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xii) (2R,1’S,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xiii) (2R,1’R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xiv) (2R,1’S,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xv) (2R,1’R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド;および (xvi) (2R,1’S,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド。 【発明を実施するための形態】 【0030】 (詳細な説明) 本明細書全体を通じて、以下の定義、概説および例証が、適用可能である。 【0031】 本明細書で言及される特許、公開出願、および科学文献は、当業者の知識を確立する。本明細書で引用される任意の参考文献と、本明細書の具体的教示との間の何らかの矛盾は、後者を選択して解決されるものとする。同様に、語もしくは句の当該分野で理解される定義と、本明細書で具体的に教示されるとおりの上記語もしくは句の定義との間の何らかの矛盾は、後者を選択して解決されるものとする。 【0032】 本明細書で使用される場合、請求項の移行部にあろうと本文部分にあろうと、用語「含む(comprise(s))」および「含む(comprising)」は、オープンエンドな意味を有すると解釈されるべきである。すなわち、上記用語は、句「少なくとも有する(having at least)」もしくは「少なくとも含む(including at least)」と同義的に解釈されるべきである。プロセスに関して使用される場合、用語「comprising(含む、包含する)」は、そのプロセスが、少なくともその記載された工程を含むが、さらなる工程を含み得ることを意味する。組成物に関して使用される場合、用語「含む(comprising)」は、その組成物が少なくともその記載される特徴もしくは成分を含むが、さらなる特徴もしくは成分を含んでもよいことを意味する。 【0033】 用語「から本質的になる(consists essentially of)」もしくは「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、部分的にクローズドな意味を有し、すなわち、それらは、プロセスもしくは組成物の本質的な特徴を実質的に変化させる工程もしくは特徴もしくは成分;例えば、本明細書で記載される化合物もしくは組成物の所望の特性を顕著に妨げる工程もしくは特徴もしくは成分を含むことを許容しない、すなわち、上記プロセスもしくは組成物は、特定された工程もしくは材料、および本発明の基本的および新規な特徴に本質的に影響を及ぼさないものに限定される。 【0034】 用語「からなる(consists of)」および「からなる(consists)」は、クローズドな用語法であり、記載される工程もしくは特徴もしくは成分を含むことのみを許容する。 【0035】 本明細書で使用される場合、単数形「a(1つの、ある)」、「an(1つの、ある)」および「the(この、その、上記)」は、文脈が明らかにそうでないことを指し示すのでなければ、これらが言及するその用語の複数形をも具体的に包含する。 【0036】 用語「約(about)」は、ほぼ(approximately)、ほぼ(in the region of)、およそ(roughly)、もしくはそのあたり(around)を意味するために本明細書で使用される。用語「約」が数値範囲と組み合わせて使用される場合、それは、その境界を、示される数値範囲の上方および下方に広げることによってその範囲を修飾する。一般に、用語「約」もしくは「ほぼ」は、示された数値の上方および下方に20%の変化によって数値を修飾するために本明細書で使用される。 【0037】 本明細書で使用される場合、変数に関する数値範囲の記載は、上記変数が、その範囲内の数値のいずれにも等価であり得ることを示すことが意図される。従って、本質的に不連続である変数に関しては、上記変数は、その数値範囲(その範囲の端点を含む)の任意の整数値に等価であり得る。同様に、本質的に連続である変数に関しては、上記変数は、その数値範囲(その範囲の端点を含む)の任意の実数値に等価であり得る。一例として、0?2の間の値を有すると記載される変数は、本質的に不連続である変数については0、1もしくは2であり得、そして本質的に連続である変数については0.0、0.1、0.01、0.001、もしくは任意の他の実数であり得る。 【0038】 本明細書および請求項において、単数形は、その文脈がそうでないことを明確に示さなければ、複数形への言及を含む。本明細書で使用される場合、そうでないことが具体的に示されなければ、用語「or(もしくは、または、あるいは)」は、「and/or(および/もしくは)」の「包括的」意味で使用され、「either/or(いずれか/もしくは)」の「排他的」意味で使用されない。 【0039】 本明細書で使用される技術用語および科学用語は、別段定義されなければ、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書では当業者に公知の種々の方法論および材料が言及される。薬理学の一般原理を示す標準的な参考資料としては、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Ed.,McGraw Hill Companies Inc.,New York(2001)が挙げられる。 【0040】 本明細書で使用される場合、「処置」とは、本発明の化合物も組成物も投与されていない個体の症状と比較して、本発明の化合物を含む組成物が投与された個体における症状の発生を減少させるか、妨害するかもしくは阻害し、上記症状を制御するか、阻害するか、緩和するか、そして/または改善することを意味する。実務家は、本明細書で記載される組み合わせ物、組成物、投与形態および方法が、その後の治療を決定するために、熟練した実務家(医師もしくは獣医師)による連続した臨床評価と付随して使用されるべきであることを認識する。このような評価は、特定の処置用量を増大させるか、減少させるかもしくは継続する、および/または投与様式を変更するか否かを評価することの一助となり、情報を与える。 【0041】 本発明の化合物もしくは組成物はまた、本発明の化合物も組成物も投与されていない個体の症状と比較して、本発明の化合物を含む組成物が投与された個体における症状を予防し得るか、または上記症状の発生を予防し得る。 【0042】 本明細書で記載される方法は、それらの利益を経験し得る任意の哺乳動物被験体/患者での使用が意図される。従って、用語「被験体」、ならびに「患者」、「個体」および「温血動物」は、ヒト、ならびに非ヒト被験体(例えば、多汗症を経験し得る動物)を含む。 【0043】 キラル中心2に対してR配置を有する本発明の化合物は、特に重要である。 【0044】 特に重要なのは、以下の式の化合物: 【化4】 であり、ここでRは、メチルもしくはエチルであり、上記化合物は、2位においてR立体配置を、ならびに1’位および3’位においてR、S、もしくはRS立体配置を有するか、またはこれらの混合物である。 【0045】 以下の化合物は特に重要である: (i) 3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (ii) 3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (iii) (2R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (iv) (2R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (v) (2R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (vi) (2R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (vii) (2R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (viii) (2R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (ix) (2R,1’R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (x) (2R,1’S,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xi) (2R,1’R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xii) (2R,1’S,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(エトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xiii) (2R,1’R,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xiv) (2R,1’S,3’S)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド; (xv) (2R,1’R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド;および (xvi) (2R,1’S,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミド。 【0046】 本発明の化合物を作製する種々の方法が、当該分野で記載されている。 【0047】 本発明の化合物は、その抗コリン作用性活性により、薬剤として有用である。このような薬剤の抗コリン作用性として有効な量は、神経効果器部位におけるムスカリン性コリン作用性レセプターへのその結合をブロックすることによって、アセチルコリンの効果を阻害する。抗コリン作用性応答を誘発する方法が必要な被験体は、抗コリン作用性薬剤での処置に応答する状態に罹患している被験体(過剰な発汗もしくは多汗症に罹患している被験体を含む)である。 【0048】 本発明の化合物は、そのままで使用され得るか、または本発明に従って他の不活性物質もしくは活性物質と併用され得る。これらは、特に、発汗抑制活性物質(例えば、塩化アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウムなど)を含む。 【0049】 本発明の化合物が、上記のとおりの他の活性物質とともに使用されようがされまいが、代表的には本発明の化合物は、抗コリン作用性として有効な量の上記化合物およびそのための非毒性の薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物の形態で、投与される。薬学的に受容可能なキャリア、もしくは希釈剤は、当該分野で周知である。上記キャリアは、投与に適した、有機もしくは無機の任意の不活性物質であり得る(例えば:水、アルコール、ゼラチン、アラビアガム、ラクトース、微結晶性セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド性二酸化ケイ素など)。 【0050】 このような組成物はまた、上記のような、他の薬学的に活性な薬剤および/もしくは従来の添加剤(例えば、溶媒、安定化剤、湿潤化剤、乳化剤、緩衝化剤、結合剤、崩壊剤、芳香剤、滑沢剤、滑剤、付着防止剤(antiadherent)、プロペラントなど)を含み得る。上記キャリア(例えば、非活性成分)は、pHが、上記活性薬剤が水溶性であるように調節された、単なる(滅菌)水であり得る。pHは6もしくはその付近であることが好ましい。代わりにおよび好ましくは、上記非活性キャリア因子は、pHが適切に調節された生理食塩水であるべきである。化合物が僅かに、中程度に、もしくは高度に水に不溶性である場合、非毒性の薬学的に受容可能な有機溶媒もしくは共溶媒が使用され得る。例えば、アルコール(例えば、イソプロピルアルコール、エタノールなど)が、単独で、もしくは水との共溶媒として、使用され得る。 【0051】 本発明の化合物は、本発明に従って任意の適切な様式で投与され得る。上記化合物は、固体、半固体、もしくは液体の形態(例えば、散剤、液剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル、半固体スティック、フォーム、スプレー、エアゾール、溶液、懸濁物もしくはエマルジョンなど)に作り上げられ得る。 【0052】 本発明の化合物は、受け入れられた薬学的手順に従って、適切な投与形態(例えば、被験体への投与のための組成物、好ましくは、局所投与による)にされ得る。投与経路、よって投与形態は、本発明の抗コリン作用性薬剤で処置されることになる状態に鑑みて選択される。例証に過ぎないが、多汗症(hyperhydrosis)を処置するために、発汗抑制スティック、ゲル、スプレー、クリーム剤、液剤、フォームなどとして製剤化された局所調製物が好ましい。 【0053】 本発明の化合物は、リポソーム送達系(例えば、小さなユニラメラ小胞、大きなユニラメラ小胞およびマルチラメラ小胞)の形態で投与され得る。リポソームは、種々のリン脂質、例えば、コレステロール、ステアリルアミンもしくはホスファチジルコリンから形成され得る。 【0054】 製剤を調製するにあたって、他の成分と合わせるのに先立って、上記活性化合物を粉砕して適切な粒度とすることが必要かもしれない。上記活性化合物が実質的に不溶性である場合、それは通常、200メッシュ未満の粒度へと粉砕される。上記活性化合物が実質的に水溶性である場合、通常は上記粒度は、上記製剤中での実質的に均一な分布(例えば、約40メッシュ)を提供するように粉砕することによって調節される。 【0055】 適切な局所的賦形剤のいくつかの例としては、アルコール、アロエベラゲル、アラントイン、グリセリン、ビタミンAおよびEのオイル、ミネラルオイル、PPG2、ミリスチルプロピオネート、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。上記製剤は、さらに以下を含み得る:滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイル);湿潤化剤;乳化および懸濁剤;保存剤(例えば、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピル(methyl- and propylhydroxy-benzoates);甘味剤;および矯味矯臭剤。本発明の組成物は、当該分野で公知の手順を使用することによって、患者に投与した後に、上記活性成分の迅速放出、持続放出もしくは遅延放出を提供するように製剤化され得る。 【0056】 上記組成物は、1種もしくはそれより多くの選択肢的な添加剤(例えば、着色剤、香料など)をさらに含み得る。実際には、これら選択肢的な添加剤の各々は、上記化合物と混和性かつ適合性であるべきである。適合性の添加剤は、本明細書で記載される様式で、上記化合物の使用を妨げないものである。 【0057】 本発明における使用のための他の適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見出され得る。 【0058】 例証目的で、液体製剤投与量が、%溶液(g/100ml)もしくは%濃度(w/v)に基づいて表される。固体製剤投与量に関しては、%濃度が、mg/mg、もしくはw/wの濃度として表され得る。当業者は、記載される製剤のタイプに応じた%濃度を容易に理解する。 【0059】 一般に、本発明の化合物の治療上有効なもしくは抗コリン作用性として有効な量は、約0.1%溶液(1μg/ml)?約100%溶液(1,000μg/ml)である。好ましくは、局所組成物用量は、約1%濃度?約25%濃度であり、約5%のソフト抗コリン作用性エステルを含む組成物を処置面積あたり約0.5?約1.0ml使用するのが最も好ましい。本発明の化合物の正確な投与量は、その有効性、投与様式、被験体の年齢および体重、ならびに処置される状態の重症度に依存して変動し得る。1日投与量は、1回でまたは複数回で、1日に1?4回で投与され得る。本発明の化合物は、1日に1回の投与で予想外によく効き、就寝に先立って投与される場合、予測されるより高い有効性もしくは活性を示す。 【0060】 就寝に先立つ投与は、夜間をも、特定の時間をも、特定の時刻をも意味しない;むしろ、就寝前もしくは就寝に先立つ(before or prior to bedtime)とは、上記組成物が、好ましくは、一般に、個人の通常の休息もしくは睡眠(代表的には、4?10時間)の期間に先立つ約1?2時間以内に投与されることを意味する。この投薬量投与時間は、本発明の活性化合物の好ましい応答もしくは活性を提供することが見出された。 【0061】 限定することは意図しないが、就寝に先立つ投与が、皮膚層への上記化合物の優れた吸収もしくは浸透を促進し得、ムスカリン様レセプターへの結合が最適化され得ると現在考えられている。さらに、被験体の自然のバイオリズムが、この時刻にもしくは睡眠サイクルの間に発汗低下を可能にし得、これはまた、本発明の化合物の吸収もしくは作用、および翌日の活動期間中の発汗低下という得られる応答を改善し得る。 【0062】 より具体的には、組成物中の同じもしくは類似の濃度の1種もしくはそれより多くの本発明の化合物の投与が、同じ濃度のグリコピロレートを含む組成物の投与と比較して、被験体において実質的に同一もしくは類似の臨床的(発汗低下)応答を提供し得ることは、現在実証されている。従って、この知見の結果は、組成物中の本発明の化合物が、類似のもしくは実質的に同一の臨床応答を示すグリコピロレート組成物の濃度の5倍から10倍の濃度で存在する必要があることを示唆した以前に発表された散瞳研究に鑑みれば、驚くべきことである。 【0063】 さらに、睡眠サイクル後に、睡眠サイクルの前の用量の後約6?10時間以内に、第2の用量を投与することはまた、好ましい投与方法もしくは投与レジメンであり得る。 【0064】 多汗症を処置するための局所投与形態は、液体の溶液、半固体、もしくは固体であり得る。溶液は、通常の方法で、例えば、等張剤、保存剤(例えば、p-ヒドロキシベンゾエート)、もしくは安定化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩)を添加して、必要に応じて、乳化剤および/もしくは分散剤を使用して、調製される一方で、水が希釈剤として使用される場合には、例えば、有機溶媒は、溶媒和化薬剤(solvating agent)もしくは溶解補助物質として必要に応じて使用され得、バイアルもしくはアンプルもしくはボトルへと移され得る。 【0065】 使用され得る賦形剤としては、以下が挙げられる:例えば、水、薬学的に受容可能な有機溶媒(例えば、パラフィン(例えば、石油画分)、植物性油(例えば、落花生油もしくは胡麻油)、一官能性もしくは多官能性アルコール(例えば、エタノールもしくはグリセロール)、キャリア(例えば、天然ミネラルパウダー(例えば、カオリン、クレイ、タルク、白亜)、合成ミネラルパウダー(例えば、高分散性ケイ酸およびシリケート)、糖(例えば、甘蔗糖、ラクトースおよびグルコース)、乳化剤(例えば、リグニン、亜硫酸パルプ廃液(spent sulfite liquors)、メチルセルロース、デンプンおよびポリビニルピロリドン)および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸およびラウリル硫酸ナトリウム)。 【0066】 本発明の他の組成物は、公知の技術を使用して都合良く製剤化され得る。 【実施例】 【0067】 実施例1 多汗症を処置するにあたって、本発明の化合物の活性がグリコピロレートの活性に等用量で予想外に匹敵することを実証するために、実験を行い得る。 【0068】 腋窩領域における匹敵する発汗低下 70% エタノール中のソフト(soft)グリコピロレート(例えば、エチルエステルもしくはメチルエステル)の4%溶液(溶液1)を調製する。 【0069】 70% エタノール中のグリコピロレートの4%溶液(溶液2)を調製する。 【0070】 ベースラインの汗の生成の評価を、1日目に、各発汗刺激条件(92F,60%湿度)下で、5分間(分)の4連続期間の間に決定する。平均の汗の生成を計算し、ベースラインの5分間発汗量とみなす。 【0071】 汗の生成の低下を、以下のように定量し得る: 溶液1の0.5mLを、1日目の就寝時に、腋窩領域に適用した。2日目、溶液1適用の約8時間後に、発汗刺激条件(92F,60%湿度)下および上記ベースライン評価とほぼ同じ時刻に、処置後の汗の生成を、4連続期間中各々5分間測定する。平均の汗の生成を計算し、上記溶液1処置後5分間発汗量とみなす。 【0072】 少なくとも7日間の洗い流し(上記化合物の投与も組成物の投与もなし)期間後に、上記に記載されるのと同じ手順を、溶液2で反復する。 【0073】 ベースラインからの変化%を、溶液1および溶液2に関して決定する。統計分析を行って、ベースラインからの変化が、溶液1および溶液2に関して有意であるか否か、および発汗低下の量が、溶液1と溶液2との間で統計的に類似であるか否かを評価する。 【0074】 実施例2 化合物(v)、すなわち、(2R,3’R)3-(2-シクロペンチル-2-フェニル-2-ヒドロキシアセトキシ)-1-(メトキシカルボニルメチル)-1-メチルピロリジニウムブロミドの5%溶液を、70%エタノール中に調製し、発汗低下におけるその効力に関して、ヒト被験体で試験した。 【0075】 腋窩の汗の生成を、重量分析法によって測定した:濾紙を秤量し、次いで、5分間の期間にわたって腋窩に配置し、次いで、再秤量して、その期間の間に生じた汗の量(重量)を決定する。濾紙の最終重量からの重量差(乾燥重量)を、その期間の汗の生成として決定する。 【0076】 4回の独立した評価を、各々5分間(分)行い(変動を減少させるため)および平均を評価する。 【0077】 ベースラインは、本発明の化合物を使用する処置なしでの、各々5分間の期間の合計8回の評価(2日間、各日に4回の評価で測定)の平均である。 【0078】 5% ソフトグリコピロレート化合物溶液の0.5mLの1日1回の用量を右腋窩に4回投与した。左腋窩には、コントロールとして、70% エチルアルコール溶液のみを与えた。 【0079】 処置後評価を、第2の用量、第3の用量、および第4の用量の各々の投与の8時間後に行った。各々5分間の期間の4回の評価の平均を表す。 【0080】 実験結果から、ベースライン(処置に先立つ)と比較して、ソフトグリコピロレート処置した腋窩における汗の生成の50%を超える低下が示され、最大約24時間まで効力が示された。このことは、ソフトグリコピロレート化合物が局所適用された場合に、臨床的に意義のある発汗低下効果を誘発する能力があるという証拠を提供する。ビヒクル処置した腋窩は、そのベースライン値と比較した場合に、処置の間に発汗低下の証拠を何ら示さなかった。 【0081】 以下の表は、その結果をまとめる。 【表1】 【0082】 ベースラインからの変化%は、以下の式に従って、対応する腋窩のベースライン値に対する各時点での平均の汗の生成を比較することから計算した: それぞれ、 ベースラインからの変化%(PCB)=(RB/RTx)/RB×100、もしくはPCB=(LB/LTx)/LB×100、ここで: RB=5分分の期間での右腋窩のベースラインの汗の生成の平均 RTx=5分間の期間での右腋窩の(第2もしくは第3もしくは第4の用量の投与)処置後の汗の生成の平均 LB=5分間の期間での左腋窩のベースラインの汗の生成の平均 LTx=5分間の期間での左腋窩の(第2もしくは第3もしくは第4の用量の投与)処置後の汗の生成の平均。 【0083】 上記生成物の局所適用は、十分に寛容性であり、いかなる局所的な有害反応も全身性の有害反応も誘発しなかった。特に全身性の抗コリン作用性効果は全く認められなかった。 【0084】 最後の用量(第4の用量)の投与後32時間での観察から、ベースライン値と比較した場合、右腋窩での平均37%の発汗低下を伴う、ソフトグリコピロレートの活性の持続が示された。 【0085】 これら結果は、以前の薬力学的抗コリン作用性評価(例えば、これら分子でのウサギの散瞳試験)から予測されるものを超える、局所適用された場合の汗の生成の低下におけるソフトグリコピロレートの驚くほど高い生物学的活性を示す。 【0086】 これら結果はまた、ソフトグリコピロレート化合物が、局所製剤中で投与される場合の生物学的効果(例えば、汗の生成の低下)を誘発するために十分な濃度で皮膚に浸透する能力、およびソフトグリコピロレート化合物が哺乳動物における汗腺のムスカリン様レセプターに結合する能力を間接的に示す。 【0087】 以前の散瞳研究において、上記化合物は、短時間作用性であることが見出されたのに対して、これら特定の研究は、驚くべきことに、本発明の化合物もしくは組成物が長時間作用性であることを示した。これら以前の薬力学的研究は、同様なインビボでの薬力学的抗コリン作用性応答を達成するために必要であったソフトグリコピロレートの濃度が、グリコピロレートの濃度より5倍?10倍高かったことを示す。この試験では、ソフトグリコピロレート製剤の5%濃度が、4% グリコピロレート溶液について報告されたもの(例えば、US公報第2010/0276329号を参照のこと)と比較して、実質的に類似の発汗低下(例えば、50%より高い)を誘発した。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2017-12-25 |
結審通知日 | 2017-12-27 |
審決日 | 2018-01-11 |
出願番号 | 特願2016-502761(P2016-502761) |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Y
(A61K)
P 1 41・ 854- Y (A61K) P 1 41・ 853- Y (A61K) P 1 41・ 855- Y (A61K) P 1 41・ 856- Y (A61K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 安藤 公祐 |
特許庁審判長 |
内藤 伸一 |
特許庁審判官 |
穴吹 智子 淺野 美奈 |
登録日 | 2017-10-13 |
登録番号 | 特許第6223543号(P6223543) |
発明の名称 | ソフト抗コリン作用性エステルの投与の方法および使用 |
代理人 | 飯田 貴敏 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 石川 大輔 |
代理人 | 石川 大輔 |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 山本 秀策 |
代理人 | 山本 健策 |
代理人 | 飯田 貴敏 |
代理人 | 山本 秀策 |