• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1337255
審判番号 無効2014-800159  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-09-18 
確定日 2018-01-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4800467号発明「医薬組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4800467号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1,3?18][2,29?41][19?23][24?28][42?48]について訂正することを認める。 特許第4800467号の請求項1ないし48に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4800467号(請求項の数28)は、平成12年8月4日(優先権主張2000年1月26日、英国)を出願日とする特願2000-237576号に係るものであり、平成23年8月12日に設定登録を受けた(以下、その特許を「本件特許」という。)ものである。
そして、平成26年9月18日に、本件特許を無効とすることについて、レック ファーマシューティカルズ ディー.ディー.(以下「請求人」という。)から本件審判の請求がされた。
本件審判の手続の経緯は、以下のとおりである

平成26年 9月18日付け 審判請求書(請求人)
平成27年 1月20日付け 答弁書及び訂正請求書(被請求人)
同年 3月23日付け 審理事項通知書
同年 6月11日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 6月25日 第1回口頭審理、及び、
第1回口頭審理調書
同年 7月16日付け 上申書(請求人)
上申書(被請求人)
平成28年 1月 4日付け 審決の予告(1)
同年 3月31日付け 上申書及び訂正請求書
同年 5月13日付け 訂正拒絶理由通知
同年 7月 5日付け 意見書、手続補正書
同年 8月18日付け 手続補正書(方式)
同年 10月18日付け 弁駁書
平成29年 3月21日付け 審決の予告(2)
同年 6月23日付け 上申書及び訂正請求書


第2 訂正請求
被請求人が平成29年6月23日付け訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)により請求する訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求の趣旨、及び、訂正の内容は、それぞれ以下のとおりのものである。

なお、被請求人が、平成27年1月20日付け訂正請求書により請求する訂正、及び、平成28年3月31日付け訂正請求書(同年8月18日付け手続補正書(方式)により補正された、同年7月5日付け手続補正書により補正されている。)により請求する訂正は、いずれも、特許法第134の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。

2-1.訂正請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、「特許第4800467号の明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?48について訂正することを求める。」というものである。

2-2.訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、
1)本件訂正後の請求項1、3?18を「第1群の請求項」、
2)本件訂正後の請求項19?23を「第2群の請求項」、
3)本件訂正後の請求項24?28を「第3群の請求項」、
4)本件訂正後の請求項2、29?41を「第4群の請求項」、
5)本件訂正後の請求項42?48を「第5群の請求項」、
ともいう。

2-2-1.第1群の請求項(請求項1、3?18)に係る訂正事項
訂正事項1-1
請求項1の「およびその中でカチオンが多価である無機塩」を、「およびカチオンが多価である無機塩」と訂正する。

訂正事項1-2
請求項3?6、8?13及び18の引用請求項から請求項2を除く。

訂正事項1-3
請求項3の「記載の医薬組成物。」を、「記載の医薬組成物(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)。」と訂正する。

訂正事項1-4
請求項4の「無機塩のアニオンが」を「無機塩が、カチオンが多価である無機塩のみからなり、無機塩のアニオンが」と訂正する。

訂正事項1-5
請求項4の「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」を、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

訂正事項1-6
請求項5の「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を、「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

2-2-2.第2群の請求項(請求項19?23)に係る訂正事項
訂正事項2-1
請求項19の「化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルー2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジンー5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプトー6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を安定させるための、…カチオンが多価である無機塩の使用」を、「化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピルー2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジンー5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプトー6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を安定させるための、カチオンが多価である無機塩の使用であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩の使用」と訂正する。

訂正事項2-2
請求項19の「その中でカチオンが多価である無機塩の使用」を、「カチオンが多価である無機塩の使用」と訂正する。

訂正事項2-3
請求項20の「記載の使用。」を、「記載の使用(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)。」と訂正する。

訂正事項2-4
請求項20の「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている」を、「無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている」と訂正する。

訂正事項2-5
請求項21の「無機塩のアニオンが」を、「無機塩が、カチオンが多価である無機塩のみからなり、無機塩のアニオンが」と訂正する。

訂正事項2-6
請求項21の「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」を、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

訂正事項2-7
請求項22の「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を、「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

訂正事項2-8
請求項23の「その中でカチオンが多価である無機塩」を、「カチオンが多価である無機塩」と訂正する。

2-2-3.第3群の請求項(請求項24?28)に係る訂正事項
訂正事項3-1
請求項24の「カチオンが多価である無機塩を、化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を含有する医薬組成物に組み込むこと」を、「カチオンが多価である無機塩であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩を、化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を含有する医薬組成物に組み込むこと」と訂正する。

訂正事項3-2
請求項24の「その中でカチオンが多価である無機塩」を、「カチオンが多価である無機塩」と訂正する。

訂正事項3-3
請求項25の「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている」を、「無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている」と訂正する。

訂正事項3-4
請求項26の「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

訂正事項3-5
請求項27の「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を、「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

訂正事項3-6
請求項28の「その中でカチオンが多価である無機塩」を、「カチオンが多価である無機塩」と訂正する。

2-2-4.第4群の請求項(請求項2、29?41)に係る訂正事項
訂正事項4-1
請求項3?6、8?13及び18の引用請求項から請求項2を除く訂正(上記2-2-1.の訂正事項1-2に係る訂正)に伴い、請求項4?5、8?13、18、及び、請求項11を引用することを介して請求項2を引用していた請求項14?17に対応する請求項であって、請求項2を引用していた部分に対応する請求項として、新たに請求項29?41を追加する。
ただし、請求項10、11にそれぞれ対応する新たな請求項33、34については、引用する請求項から、請求項2を除く。

訂正事項4-2
請求項2の「有効成分としての…および…カチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物、ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではない」を、「有効成分としての…およびカチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物であって、該無機塩のカチオンが多価のカルシウムのみであり、ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではない該医薬組成物」と訂正する。

訂正事項4-3
請求項2の「およびその中でカチオンが多価である無機塩」を、「およびカチオンが多価である無機塩」と訂正する。

訂正事項4-4
請求項4の「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」を、対応する本件訂正後の請求項29において、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

訂正事項4-5
請求項5の「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を、対応する本件訂正後の請求項30において、「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正する。

2-2-5.第5群の請求項(請求項42?48)に係る訂正事項
訂正事項5-1
訂正事項1-2に係る訂正(上記2-2-1.参照。)において、請求項10、11の引用請求項から請求項2を除き、訂正事項4-1に係る訂正(上記2-2-4.参照。)において、請求項2を引用する請求項10、11に対応する新たな請求項33、34を追加し、ただし、その際引用請求項から請求項2を除いたことに伴い、新たな請求項33、34において請求項2を引用していた部分、及び、請求項35?41のうち、新たな請求項33、34を介して請求項2を引用していた部分に対応する請求項として、新たな請求項42?48を追加する。

訂正事項5-2
請求項2の「カチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物、ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。」を、対応する本件訂正後の請求項42において、「カチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択され、ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではなく」と訂正する。

訂正事項5-3
請求項2の「およびその中でカチオンが多価である無機塩」を、対応する本件訂正後の請求項42において、「およびカチオンが多価である無機塩」と訂正する。

訂正事項5-4
請求項10の「無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲である」を、対応する本件訂正後の請求項42において、「無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲であり、そして無機塩が、該組成物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する、該医薬組成物(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)」と訂正する。

訂正事項5-5
請求項11の「付加的に・・・含有している」を、対応する本件訂正後の請求項43において、「付加的に・・・含有しており、無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択される」と訂正する。

訂正事項5-6
請求項14の「賦形剤が・・・存在している」を、対応する本件訂正後の請求項44において、「賦形剤が・・・存在しており、該無機塩のカチオンがカルシウムである」と訂正する。

訂正事項5-7
請求項18の「有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩である」を、対応する本件訂正後の請求項48において、「有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩であり、そして無機塩が組成物の5?18質量%の量で存在している」と訂正する。


2-3.訂正の適否の判断

2-3-1.第1群の請求項(本件訂正後の請求項1、3?18)に係る本件訂正について

訂正事項1-1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1の記載「その中でカチオンが多価である無機塩」が、その記載中「その」の示すものが明確でない点で、明瞭でない記載であったものを、明瞭な記載である「カチオンが多価である無機塩」に訂正するものである。
したがって、訂正事項1-1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

そして、本件特許明細書には、「無機塩がメタケイ酸マグネシウムアルミニウムである」(請求項1を引用する請求項6)、「該エージェントにおいて安定性は、1種以上の多価の無機カチオンを含有している、組成物に添加するべき無機塩の選択により改善されることが判明した。」(【0006】)、及び「無機塩中に存在する多価のカチオンは、以下の、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されてよい。」(【0013】)なる記載がある。これらの記載から、本件訂正前の請求項1にいう「その中でカチオンが多価である無機塩」が、無機塩においてカチオンが多価であるもの、すなわち「カチオンが多価である無機塩」の意味で記載されたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項1-1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項1-2に係る訂正は、本件訂正前の請求項3?6、8?13、18が引用する請求項から請求項2を除くものである。また、それにより、本件訂正前の請求項11が請求項2を引用しないものとなる結果として、本件訂正前の請求項11を引用する本件訂正前の請求項14?17が間接的に引用する請求項から請求項2を除くものである。
したがって、訂正事項1-2に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-2に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項1-3に係る訂正は、「医薬組成物」について、「カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合」を除くものである。
したがって、訂正事項1-3に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-3に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項1-4に係る訂正は、「無機塩」を、「カチオンが多価である無機塩のみ」に限定するものである。
したがって、訂正事項1-4に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-4に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項1-5に係る訂正は、本件訂正前の請求項4の記載「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」が、炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩のいずれも、アニオンではない点で、明瞭でない記載であったものを、明瞭な記載である「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである。
したがって、訂正事項1-5に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

そして、本件特許明細書には、「無機塩がメタケイ酸マグネシウムアルミニウム」(請求項4を引用する請求項6)、「無機塩中に存在する多価のカチオンは、以下の、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されてよい。」(【0013】)、「無機塩中の対アニオンは、リン酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されてよい。」(【0014】)、「本発明の個々の実施態様は、上記のものから選択された多価カチオンおよびまた上記のものから選択された対アニオンからなる無機塩を含む。」(【0015】)、及び「本発明で使用するために有利な無機塩は、メタケイ酸マグネシウムアルミニウム……である。」(【0016】)なる記載がある。これらの記載から、本件訂正前の請求項4にいう「無機塩」が、多価のカチオンおよび対アニオンからなるものであり、同「炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩」が対アニオンに該当するものとして記載されたものであることは明らかであるから、本件訂正前の請求項4にいう「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」が「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」の意味で記載されたものであることは明らかである。
したがって、訂正事項1-5に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項1-6に係る訂正は、本件訂正前の請求項5の記載「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」が、ケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩のいずれも、アニオンではない点で、明瞭でない記載であったものを、明瞭な記載である「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである。
したがって、訂正事項1-6に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

また、訂正事項1-5に係る訂正は、訂正事項1-6に係る訂正を含むものであるところ、上述のとおり、訂正事項1-5に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。
したがって、訂正事項1-6に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

以上のとおり、第1群の請求項に係る訂正事項1-1?1-6に係る訂正は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-2.第2群の請求項(本件訂正後の請求項19?23)に係る本件訂正について

訂正事項2-1に係る訂正は、「カチオンが多価である無機塩」を、「カチオンが多価である無機塩であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩」に限定するものである。
したがって、訂正事項2-1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「カチオンが多価である無機塩」に、「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択され」るものが含まれる点については、本件特許明細書の【0013】や、本件訂正前の請求項19を引用する本件訂正前の請求項20に記載されている。
したがって、訂正事項2-1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項2-2に係る訂正は、「その中で」を削除するものである点で、訂正事項1-1に係る訂正と一致する。
訂正事項2-2に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-1に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2-2に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項2-3に係る訂正は、「無機塩」について、「カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合」を除くものである点で、訂正事項1-3に係る訂正と一致する。
訂正事項2-3に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-3に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2-3に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項2-4に係る訂正は、本件訂正前の請求項20に「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている、」とあるところ、「無機塩のカチオン」の選択肢から、亜鉛、アルミニウム及び鉄を含むものを除く訂正であるから、訂正事項2-4に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2-4に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項2-5に係る訂正は、「無機塩」を、「カチオンが多価である無機塩のみからな」るもののみに限定するものである点で、訂正事項1-4に係る訂正と一致する。
したがって、訂正事項2-5に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-4に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2-5に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項2-6に係る訂正は、「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」を「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである点で、訂正事項1-5に係る訂正と一致する。
訂正事項2-6に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-5に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2-6に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項2-7に係る訂正は、「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである点で、訂正事項1-6に係る訂正と一致する。
訂正事項2-7に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-6に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2-7に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項2-8に係る訂正は、訂正事項2-2によって本件訂正前の請求項23が引用する請求項19における記載「その中で」が削除されることに整合させるために、本件訂正前の請求項23における記載「その中で」を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2-8に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。


以上のとおり、第3群の請求項に係る、訂正事項2-1?2-8に係る訂正は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-3.第3群の請求項(本件訂正後の請求項24?28)に係る本件訂正について

訂正事項3-1に係る訂正は、「カチオンが多価である無機塩」を「カチオンが多価である無機塩であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩」に限定するものである点で、訂正事項2-1に係る訂正と一致する。
訂正事項3-1に係る訂正は、「2-3-2.」で訂正事項2-1に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項3-2に係る訂正は、「その中で」を削除するものである点で、訂正事項1-1に係る訂正と一致する。
訂正事項3-2に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-1に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3-2に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項3-3に係る訂正は、「無機塩のカチオン」の選択肢から、亜鉛、アルミニウム及び鉄を含むものを除くものである点で、訂正事項2-4に係る訂正と一致する。
したがって、訂正事項3-3に係る訂正は、「2-3-2.」で訂正事項2-4に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-3に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項3-4に係る訂正は、「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」を「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである点で、訂正事項1-5に係る訂正と一致する。
訂正事項3-4に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-5に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3-4に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項3-5に係る訂正は、「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである点で、訂正事項1-6に係る訂正と一致する。
訂正事項3-5に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-6に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3-5に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項3-6に係る訂正は、訂正事項3-2に係る訂正によって本件訂正前の請求項28が引用する請求項24における記載「その中で」が削除されることに整合させるために、本件訂正前の請求項28における記載「その中で」を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3-6に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

以上のとおり、第4群の請求項に係る、訂正事項3-1?3-6に係る訂正は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-4.第4群の請求項(本件訂正後の請求項2、29?41)に係る本件訂正について

訂正事項1-2に係る訂正は、請求項4、5、8?13及び18の引用請求項から請求項2を除くものである(上記2-2-1. 参照。)。
そして、訂正事項4-1に係る訂正は、訂正事項1-2に係る訂正に対応し、本件訂正前の請求項3?6、8?13及び18のうち、請求項2を引用していた部分について、本件訂正前の請求項11を引用することを介して請求項2を引用していた請求項14?17も含めて、引用関係を解消して新たな請求項(請求項29?41)とするものであるから、訂正事項4-1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項4-1に係る訂正は、本件訂正前の請求項10、11にそれぞれ対応する新たな請求項33、34が引用する請求項から請求項2を除くものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4-1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項4-2に係る訂正は、本件訂正前の請求項2において、錠剤である医薬組成物が含有する「カチオンが多価である無機塩」を、「無機塩のカチオンが多価のカルシウムのみであり」に限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「カチオンが多価である無機塩」に、「無機塩のカチオンが多価のカルシウム」であるものが含まれる点については、本件特許明細書の【0013】や、本件訂正前の請求項2を引用する本件訂正前の請求項3に記載されている。
したがって、訂正事項4-2に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項4-3に係る訂正は、「その中で」を削除するものである点で、訂正事項1-1に係る訂正と一致する。
訂正事項4-3に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-1に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4-3に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項4-4に係る訂正は、「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」を「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである点で、訂正事項1-5に係る訂正と一致する。
訂正事項4-4に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-5に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4-4に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項4-5に係る訂正は、「無機塩のアニオンがケイ酸塩、酸化物またはメタケイ酸塩から選択されている」を「無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている」に訂正するものである点で、訂正事項1-6に係る訂正と一致する。
訂正事項4-5に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-6に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4-5に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

以上のとおり、第4群の請求項に係る訂正事項4-1?4-5に係る訂正は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-5.第5群の請求項(本件訂正後の請求項42?48)に係る本件訂正について

訂正事項1-2に係る訂正は、請求項3?6、8?13及び18の引用請求項から請求項2を除くものである(上記2-2-1.参照。)。
なお、請求項14?17は、請求項2を直接引用していないが、請求項11の引用請求項から請求項2を除くと、請求項14?17から、請求項11を引用することを介して請求項2を引用していた部分が除かれる。
また、訂正事項4-1に係る訂正は、請求項4?5、8?13、18、及び、請求項11を引用することを介して請求項2を引用していた請求項14?17に対応する請求項であって、請求項2を引用していた部分に対応する請求項として、新たな請求項29?41(それぞれ、本件訂正前の請求項4?5、8?18に対応する。)を追加し、ただし、請求項10、11にそれぞれ対応する新たな請求項33、34については、引用する請求項から請求項2を除くものである。
なお、請求項33、34の引用請求項から請求項2を除くと、請求項35?41(それぞれ、本件訂正前の請求項12?18に対応する。)から、請求項33、34を引用することを介して請求項2を引用していた部分が除かれる。
そして、訂正事項5-1に係る訂正は、これらの訂正に伴い、請求項10、11において請求項2を引用する部分に対応する請求項として、新たに請求項42、43を追加し、また、請求項2を引用する請求項10または11を引用する請求項14?18に対応する請求項として、新たに請求項44?48を追加するものである。
したがって、訂正事項5-1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項5-1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項5-2に係る訂正は、「カチオンが多価である無機塩」を「カチオンが多価である無機塩であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩」に限定するものである点で、訂正事項2-1に係る訂正と一致する。
訂正事項5-2に係る訂正は、「2-3-2.」で訂正事項2-1に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5-2に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項5-3に係る訂正は、「その中で」を削除するものである点で、訂正事項1-1に係る訂正と一致する。
訂正事項5-3に係る訂正は、「2-3-1.」で訂正事項1-1に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5-3に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項5-4に係る訂正は、「無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲である」を、本件訂正後の請求項44において、「無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲であり、そして無機塩が、該組成物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する」とすることを含むものであり、この点において、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5-4に係る訂正は、「無機塩」について、「カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く」ものであるが、この訂正は、訂正事項1-3に係る訂正と一致するから、「2-3-1.」で訂正事項1-3に係る訂正について説示した理由と同様の理由によって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書には、従来技術として、「HMG CoAレダクターゼ阻害剤である特定の7-置換3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸塩の医薬調剤は、英国特許第2262229号に開示されており、該調剤はpH分解に対して敏感である。前記の調剤は、組成物の水溶液または水性分散液のpHを少なくとも8にすることができるアルカリ性媒体(例えば炭酸塩または重炭酸塩)の存在を必要とする。」(【0004】)との記載及び課題を解決するための手段についての、「ところで、該エージェントにとって調剤中のpHを調節することのみによって安定性を改善することは充分ではないことが判明した。」(【0006】)との記載があることから、本件特許明細書には、組成物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する無機塩についての記載があり、本件訂正前の請求項10に係る発明には、組成物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する無機塩を組成物中に含むものが包含されると認められる。
したがって、訂正事項5-4に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項5-5に係る訂正は、「無機塩のカチオン」について、「カルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択される」ものに限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5-5に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項5-6に係る訂正は、「無機塩のカチオン」を、「カルシウム」に限定する訂正であるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5-6に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

訂正事項5-7に係る訂正は、「無機塩のカチオン」の組成物中の存在量について「5?18質量%」に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「無機塩のカチオン」の組成物中の存在量が「5?18質量%」である態様について、発明の詳細な説明の【0027】に「一般に無機塩、例えば三塩基性リン酸カルシウムは、1?25質量%の範囲、例えば1?20質量%、例えば5?18質量%の量で存在する。」と記載されている。
したがって、訂正事項5-7に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

以上のとおり、第5群の請求項に係る、訂正事項5-1?5-7に係る訂正は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

2-3-6.独立特許要件
本件特許無効審判においては、全ての請求項が無効審判の請求の対象とされているので、本件訂正に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)が適用される請求項はない。

2-3-7.訂正請求に対する請求人の主張について

請求人は、被請求人が請求する訂正に対して、口頭審理陳述要領書の6.(1)(ロ)及び平成27年7月16日付け上申書の6.II.6.?7.において、以下の主張をしている。
(i)
本件訂正前の請求項1等に、「その中でカチオンが多価である無機塩」とあったのを、「その中で」の語を削除して、「カチオンが多価である無機塩」にする訂正は、特許請求の範囲の変更にあたる。
(ii)
本件訂正前の請求項4及び21は、「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」と規定していたところ、訂正後の請求項4及び21は、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」と訂正され、訂正後の請求項5、22、26、27、30、31も同様の訂正がされた。
「炭酸塩イオン」との用語は、広辞苑等の一般的辞書には存在しないため、「炭酸塩イオン」により具体的にどのようなイオンが意味されるのか不明である。「炭酸塩イオン」との用語が不明確である以上、上記訂正は実質上特許請求の範囲を拡張するか、又は変更するものと考えられる。よって、訂正後の請求項4、5、21、22、26、27、30及び31については、特許請求の範囲が変更されたことは明らかであり、平成27年1月20日付けの訂正の請求は訂正要件を満たしていない。

しかしながら、(i)については、上記「2-3-1.」で訂正事項1-1について説示したとおり、本件訂正前の特許請求の範囲に記載された「その中でカチオンが多価である無機塩」が、無機塩においてカチオンが多価であるもの、すなわち「カチオンが多価である無機塩」の意味で記載されたものであることは明らかであるから、これらの訂正は、実質的に特許請求の範囲を変更するものではない。

(ii)については、上記「2-3-1.」で訂正事項1-5について説示したとおり、本件特許明細書の記載から本件訂正前の特許請求の範囲に記載された「炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩」が対アニオンに該当するものとして記載されたものであることは明らかであって、「炭酸塩イオン」等の用語が一般的辞書に掲載されていないとしても、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」が明確でないとすることはできない。
また、「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択されている」を「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」にする訂正が、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも、上記「2-3-1.」で説示したとおりである。
よって、請求人の上記主張(i)(ii)はいずれも受け入れられない。

2-3-8.むすび
2-3-1.?2-3-7.に説示したとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号または第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものであるので、当該訂正を認める。


第3 本件訂正発明
本件訂正の結果、本件特許第4800467号の請求項1?48に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?48に記載された事項により特定されるとおりの以下のものであると認める。
なお、以下、本件訂正後の請求項1?48に係る各発明をそれぞれ請求項の番号に対応させて、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明48」、あるいは、まとめて単に「本件訂正発明」ともいう。
また、
1)本件訂正発明1、3?18を「第1群の本件訂正発明」、
2)本件訂正発明19?23を「第2群の本件訂正発明」、
3)本件訂正発明24?28を「第3群の本件訂正発明」、
4)本件訂正発明2、29?41を「第4群の本件訂正発明」、
5)本件訂正発明42?48を「第5群の本件訂正発明」、
ともいう。

「【請求項1】
有効成分としての(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩およびカチオンが多価である無機塩を含有する医薬組成物、ただしその際、
(i)無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく、かつ
(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。
【請求項2】
有効成分としての(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩およびカチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物であって、該無機塩のカチオンが多価のカルシウムのみであり、ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではない該医薬組成物。
【請求項3】
無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている、請求項1記載の医薬組成物(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)。
【請求項4】
無機塩が、カチオンが多価である無機塩のみからなり、無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項1または3記載の医薬組成物。
【請求項5】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項1、3および4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
無機塩がメタケイ酸マグネシウムアルミニウムである、請求項1または3から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
錠剤または粉末である、請求項1または3から6までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
有効成分が5mgより多く存在している、請求項1または3から7までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
有効成分が10mgより多く存在している、請求項1または3から8までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲である、請求項1または3から9までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
付加的に1種以上の賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤を含有している、請求項1または3から10までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
有効成分が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項1または3から11までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
無機塩が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項1または3から12までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
賦形剤が組成物の30?90質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項15】
結合剤が組成物の2?90質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項16】
崩壊剤が組成物の2?10質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項17】
滑沢剤が0.5?3質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項18】
有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩である、請求項1または3から17までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項19】
化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を安定させるための、カチオンが多価である無機塩の使用であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩の使用、ただしその際、
(i)無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく、かつ
(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。
【請求項20】
無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている、請求項19記載の使用(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)。
【請求項21】
無機塩が、カチオンが多価である無機塩のみからなり、無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項19または20記載の使用。
【請求項22】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項19から21までのいずれか1項記載の使用。
【請求項23】
カチオンが多価である無機塩が、メタケイ酸マグネシウムアルミニウムである、請求項19記載の使用。
【請求項24】
カチオンが多価である無機塩であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム,亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩を、化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を含有する医薬組成物に組み込むことを含む、安定化された医薬組成物の製造方法、ただしその際、
(i)無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく、かつ
(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。
【請求項25】
無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている。請求項24記載の方法。
【請求項26】
無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項24または25記載の方法。
【請求項28】
カチオンが多価である無機塩が、メタケイ酸マグネシウムアルミニウムである、請求項24記載の方法。
【請求項29】
無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項30】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項2または29記載の医薬組成物。
【請求項31】
有効成分が5mgより多く存在している、請求項2、29および30のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項32】
有効成分が10mgより多く存在している、請求項2および29から31までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項33】
無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲である、請求項29から32までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項34】
付加的に1種以上の賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤を含有している、請求項29から33までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項35】
有効成分が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項2および29から34までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項36】
無機塩が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項2および29から35までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項37】
賦形剤が組成物の30?90質量%の量で存在している、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項38】
結合剤が組成物の2?90質量%の量で存在している、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項39】
崩壊剤が組成物の2?10質量%の量で存在している。請求項34記載の医薬組成物。
【請求項40】
滑沢剤が0.5?3質量%の量で存在している、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項41】
有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩である、請求項2および29から40までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項42】
有効成分としての(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩およびカチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択され、
ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではなく、
無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲であり、そして
無機塩が、該組成物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する、該医薬組成物(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。) 。
【請求項43】
付加的に1種以上の賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤を含有しており、該無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択される、請求項42記載の医薬組成物。
【請求項44】
賦形剤が組成物の30?90質量%の量で存在しており、該無機塩のカチオンがカルシウムである、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項45】
結合剤が組成物の2?90質量%の量で存在している、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項46】
崩壊剤が組成物の2?10質量%の量で存在している、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項47】
滑沢剤が0.5?3質量%の量で存在している、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項48】
有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩であり、そして無機塩が組成物の5?18質量%の量で存在している、請求項42から47までのいずれか1項記載の医薬組成物。」

なお、本件訂正前後の請求項の対応関係は、以下のとおりである。

・本件訂正前の請求項1は、本件訂正後の請求項1に対応する。
・本件訂正前の請求項2は、本件訂正後の請求項2に対応する。
・本件訂正前の請求項3は、本件訂正後の請求項3に対応する。
・本件訂正前の請求項4は、本件訂正後の請求項4及び29に対応する。
・本件訂正前の請求項5は、本件訂正後の請求項5及び30に対応する。
・本件訂正前の請求項6は、本件訂正後の請求項6に対応する。
・本件訂正前の請求項7は、本件訂正後の請求項7に対応する。
・本件訂正前の請求項8は、本件訂正後の請求項8及び31に対応する。
・本件訂正前の請求項9は、本件訂正後の請求項9及び32に対応する。
・本件訂正前の請求項10は、本件訂正後の請求項10、33及び42に対応する。
・本件訂正前の請求項11は、本件訂正後の請求項11、34及び43に対応する。
・本件訂正前の請求項12は、本件訂正後の請求項12及び35に対応する。
・本件訂正前の請求項13は、本件訂正後の請求項13及び36に対応する。
・本件訂正前の請求項14は、本件訂正後の請求項14、37及び44に対応する。
・本件訂正前の請求項15は、本件訂正後の請求項15、38及び45に対応する。
・本件訂正前の請求項16は、本件訂正後の請求項16、39及び46に対応する。
・本件訂正前の請求項17は、本件訂正後の請求項17、40及び47に対応する。
・本件訂正前の請求項18は、本件訂正後の請求項18、41及び48に対応する。
・本件訂正前の請求項19は、本件訂正後の請求項19に対応する。
・本件訂正前の請求項20は、本件訂正後の請求項20に対応する。
・本件訂正前の請求項21は、本件訂正後の請求項21に対応する。
・本件訂正前の請求項22は、本件訂正後の請求項22に対応する。
・本件訂正前の請求項23は、本件訂正後の請求項23に対応する。
・本件訂正前の請求項24は、本件訂正後の請求項24に対応する。
・本件訂正前の請求項25は、本件訂正後の請求項25に対応する。
・本件訂正前の請求項26は、本件訂正後の請求項26に対応する。
・本件訂正前の請求項27は、本件訂正後の請求項27に対応する。
・本件訂正前の請求項28は、本件訂正後の請求項28に対応する。

なお、以下、特許請求の範囲に記載されている「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」を、本件特許明細書の【0001】の記載に従い、「エージェント」ともいう。


第4 当事者の主張、及び、提出した証拠方法

4-1.請求人の主張する無効理由、及び、提出した証拠方法

請求人が提出した審判請求書、口頭審理陳述要領書、当審が平成27年6月25日の口頭審理について作成した第1回口頭審理調書、同年7月16日付け上申書及び平成28年10月18日付け弁駁書によれば、請求人は、「特許第4800467号を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、」との審決を求め、その理由として、以下の無効理由1-1?無効理由2((b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4)、(c-1))を主張し、証拠方法として、甲第1?15号証及び参考資料1?11を提出している。

無効理由1-1
本件特許の請求項1?4、7?21、24?26(本件訂正後の請求項1?4、7?21、24?26、29、31?41、42?48)に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第2号証及び/又は甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。

無効理由1-2
本件特許の請求項1?4、7?21、24?26(本件訂正後の請求項1?4、7?21、24?26、29、31?41、42?48)に係る発明は、甲第4号証に記載された発明と甲第2号証及び/又は甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。

無効理由1-3
本件特許の請求項1?4、7?21、24?26(本件訂正後の請求項1?4、7?21、24?26、29、31?41、42?48)に係る発明は、甲第5号証に記載された発明と、甲第6号証に記載された事項、甲第2号証及び/又は甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。

無効理由1-4
本件特許の請求項1?4、7?21、24?26(本件訂正後の請求項1?4、7?21、24?26、29、31?41、42?48)に係る発明は、甲第7号証に記載された発明と、甲第2号証及び/又は甲第3号証並びに甲第1号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。

無効理由2((a-1)、(a-2)、(a-3)、(a-4)、(d))
本件特許の請求項1?28(本件訂正後の請求項1?48)の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、それらの請求項に係る発明は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

無効理由2((b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4)、(c-1))
本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項1?28(本件訂正後の請求項1?48)に係る各発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、それらの発明は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。(無効理由2の(b-1)、(b-2)、(b-3の一部)、(b-4の一部))
また、本件特許明細書の請求項1、4、21(本件訂正後の請求項1、4、21、29)、及び、本件訂正後の請求項4、5、21、22、26、27、29、30の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件訂正後の請求項1、4、5、21、22、26、27、29、30に係る発明は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。(無効理由2の(b-3の一部)、(b-4の一部)、(c-1))

(証拠方法)
甲第1号証:特開平5-246844号公報
甲第2号証:特開平5-178841号公報
甲第3号証:Drugs of the Future 1999,24(5),511-513頁:1999年発行
甲第4号証:特表平8-505640号公報
甲第5号証:特開平2-6406号公報
甲第6号証:Consult 1998 PDR supplements and future editions for revisions,808-811頁:1998年発行
甲第7号証:特開平1-261377号公報
甲第9号証:Handbook of Pharmaceutical Excipients,424?426頁,1994 :1994年発行
(以上、審判請求書に添付。)
甲第8号証の2: 2015年6月22日付け実験報告書(甲第8号証を差し替えたもの。なお、甲第8号証は取下げられた。)
甲第8号証の2翻訳
甲第10号証: 2015年6月5日付け実験報告書
甲第11号証:クレストール(R)薬品添付文書:2005年発行
(注 上記(R)は、○内にRの文字が記された記号である。)
甲第12号証:クレストール(R)の医薬品インタビューフォーム 4?6頁:2015年1月発行
(注 上記(R)は、○内にRの文字が記された記号である。)
甲第13号証:特開2001-206877号公報
甲第14号証:Stability of Drugs and DosageForms,108-109頁:2002年発行
甲第15号証:Microenvironmental pH Modulation in Solid Dosage Forms,948-995頁:2007年発行
(以上、口頭審理陳述要領書に添付。)

参考資料1:特許第4800467号公報
(以上、審判請求書に添付。)
参考資料2:(当審注 被請求人の安定性試験の実験結果と、請求人が甲第8号証の2として提出した安定性試験の実験結果をまとめた表)
(以上、口頭審理陳述要領書に添付。)
参考資料3:英国特許出願0001621.2明細書
参考資料4:I C H : Guidance for Industry Q1A(R2)Stability Testing of New Drug Substances and Products (2003)
参考資料5: 「第十一改正 日本薬局方解説書1986」 C-1664?C-1667、表紙及び奥付
参考資料6: Wikipediaプリントアウト「硫酸亜鉛」の項目
参考資料7: 「医薬品添加物辞典2007」 120頁及び表紙
(以上、平成27年7月16日付け上申書に添付。)
参考資料8: 「Package LEAFLET: INFOMATIO FOR THE USER」と題し、Solvazinc Effervescent Tablets (Zinc Sulfate Monohydrate)」との副題のついた、「This leaflet was last revised in 03/2015」と記載された印刷物
参考資料9: 「SUMMARY OF PRODUCT CHARACTERISTICS」と題し、「1. NAME OF THE MEDICINAL PROCUCT」の項に「ZincfantR 20mg」(原文は、「R」が、○で囲まれている。)と記載されており、各頁の上端中央に「WHOPAR part4」、及び、上端右端に「February 2013」と記載されている印刷物
参考資料10:「Our tools-your inspiration Chemicals for Pharmaceutical Formulation」と題する「Merck Millipore Merck KGaA Frankfurter Str. 250 64293 Darmstadt, Germany」と記載されている印刷物
参考資料11:「へパンED配合内服剤」の添付文書
(以上、弁駁書に添付。)

4-2.被請求人の主張、及び、提出した証拠方法

被請求人が提出した答弁書、口頭審理陳述要領書、平成27年7月16日付け上申書、平成28年3月31日付け上申書、同年7月5日付け意見書、及び、平成29年6月23日付け上申書によれば、被請求人は、「訂正を認める、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、本件特許には、上記無効理由は存在しない点を主張し、証拠方法として、乙第1?7号証を提出している。

(証拠方法)
乙第1号証:本件手続書類(平成23年5月19日付け意見書)
乙第2号証:2015年1月9日作成実験報告書
乙第2号証訳文
(以上、答弁書に添付。)
乙第3号証:「Federal Register/ Vol.65,
No.78」の21446?21453頁(2000年4月21日出版)
乙第4号証:Kim.Huynh・Ba氏の編集による「Pharmaceutical Stability Testing to Support Global Markets」の表紙.奥付及び107?116頁
(2010年出版、Springer)
乙第5号証:日本医薬品添加剤協会編「医薬品添加物事典2000」
(2000年4月28日出版、薬事日報社)、306?312頁、表紙、奥付
(以上、平成27年7月16日付け上申書に添付。)
乙第6号証:「安全データシート」と題し、1/7頁の右上に「酸化チタン(IV)[2014/10/8] 」(なお、原文は「チタン」が半角で記載されている。)と記載されている印刷物
乙第7号証:「安全データシート(SDS)」と題し、各頁の左下に「昭和化学株式会社」、各頁の右下に「SDS No. 26054250」と記載されている印刷物
(以上、平成28年3月31日付け上申書に添付。)

以下、書証は、その証拠番号により、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」などともいう。


第5 当審の判断
当審は、本件訂正発明1、7?19、24?26に係る特許は、無効理由1-1によって無効にすべきものであり、本件訂正発明1?48に係る特許は、無効理由2(a-1)によって無効にすべきものであり、本件訂正発明1、3?19、21?24、26?28、42、48に係る特許は、無効理由2(a-2)によって無効にすべきものであり、本件訂正発明1、4、5、7?18に係る特許は、無効理由2(a-3)によって無効にすべきものであり、本件訂正発明1?3、7?20、24?25、31?48に係る特許は、無効理由2(a-4)によって無効にすべきものであり、本件訂正発明19?28に係る特許は、無効理由2(b-1)によって無効にすべきものである、と判断する。その理由は、以下のとおりである。

事案に鑑み、まず無効理由2((a-1)?(b-4))について記す。
5-1.無効理由2((a-1)?(b-4))について
5-1-1.無効理由2((a-1)?(a-4))の要点
請求人が主張する無効理由2((a-1)?(a-4))の要点は以下のとおりである。

(a-1)
発明の詳細な説明には、本件訂正発明の実施例が記載されておらず、本件訂正発明は、発明の詳細な説明の記載により支持されていないので、本件訂正発明は、サポート要件を満たしていない。
したがって、本件訂正発明1?48は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

(a-2)
本件訂正発明の「カチオンが多価である無機塩」のうち、少なくとも「亜鉛、アルミニウムおよび鉄」については、発明の詳細な説明の記載によって支持されていないので、本件訂正発明は、サポート要件を満たしていない。
したがって、本件訂正発明1?48は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

(a-3)
本件訂正発明の実施例に該当しない「三塩基性リン酸カルシウム」の使用をもって、特性も大きく異なる第4族、第6族、第7族、第10族、第11族及び第14族などの金属を含む全ての多価金属をカチオンとする無機塩を含むように、発明の詳細な説明の記載を一般化又は拡張することはできない。実際、チタンについては、甲第8号証の2に二酸化チタンが安定化効果を有しないことが実験により証明されている。よって、本件訂正発明の「カチオンが多価である無機塩」は、発明の詳細な説明の記載によって支持されていないので、本件訂正発明は、サポート要件を満たしていない。
したがって、本件訂正発明1?48は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

(a-4)
発明の詳細な説明には、水酸化カルシウムが、カチオンが多価である無機塩に属することについて全く記載されていないし、発明の詳細な説明の従来技術(【0004】)の記載とも矛盾する。
したがって、本件訂正発明の「カチオンが多価である無機塩」が「水酸化カルシウム」である発明は、発明の詳細な説明の記載により支持されていないので、サポート要件を満たしていない。
したがって、本件訂正発明1?48は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

5-1-2.無効理由2((a-1)?(a-4))についての判断
特許法第36条第6項第1号には、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定されており、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。

(1)本件訂正発明が解決しようとする課題

特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載(特に、【0002】?【0003】及び【0005】)から、一定条件下での分解に対して敏感である従来のエージェント含有医薬組成物に比して「安定したエージェント含有医薬組成物を提供すること」であると認められる。

(2)検討
発明の詳細な説明には、本件訂正発明は、「カチオンが多価である無機塩を含有させること」を上記課題を解決するための手段とするものであること(【0006】)が記載されている。
また、本件訂正発明1?48は、いずれも、発明を特定するための事項として「カチオンが多価である無機塩を含有させること」に対応する発明特定事項を含むものである。
そこでまず、当該解決手段により上記課題(安定したエージェント含有医薬組成物を提供すること)を解決できるものであるといえるか検討する。

発明の詳細な説明には、エージェント含有医薬組成物中に「カチオンが多価である無機塩」を含有させることで、エージェントの分解が抑制されて安定性が改善した組成物になる旨の記載は、【0006】?【0007】、【0013】?【0015】に一応見られるが、その裏付けとなる理論、原理、作用機序等についての記載はない。
また、発明の詳細な説明【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明には該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明が解決しようとする課題を解決できることを直接示すものとはいえない。たとえ、例1?例4の錠剤の安定性についての記載から、本件訂正発明1の安定性に対する「カチオンが多価である無機塩」の影響を推測するとしても、「三塩基性リン酸カルシウム」以外の「カチオンが多価である無機塩」(例えば、多価のカチオンが亜鉛、アルミニウムまたは鉄である無機塩、多価のカチオンが第4族、第6族、第7族、第10族、第11族、第14族の金属である無機塩、水酸化カルシウムなど)が「三塩基性リン酸カルシウム」と同様のエージェント安定化効果を奏するといえる根拠は見出せない。
したがって、発明の詳細な説明には本件訂正発明が解決しようとする課題を解決できることを具体的に示す実施例等の記載はない。
また、エージェント含有医薬組成物中に「カチオンが多価である無機塩」を含有させることで、エージェントの分解が抑制されて安定性が改善した組成物が得られるといえる、本件特許の出願時の技術常識を見出すこともできない。

なお、無効理由2((a-1)?(a-4))のうち、無効理由2(a-2)は、「カチオンが多価である無機塩」のカチオンとして、少なくとも「亜鉛、アルミニウムおよび鉄」のいずれか一つを含むことを前提とする無効理由であるから、当該前提を満足しない本件訂正発明2、20、25、29?41、43?47に係る特許を無効にすることはできないものであり、無効理由2(a-3)は、「カチオンが多価である無機塩」のカチオンとして、少なくとも「第4族、第6族、第7族、第10族、第11族及び第14族などの金属」のいずれか一つを含むことを前提とする無効理由であるから、当該前提を満足しない本件訂正発明2、3、6、19?48に係る特許を無効にすることはできないものであり、無効理由2(a-4)は、「カチオンが多価である無機塩」が「水酸化カルシウム」であることを前提とする無効理由であるから、当該前提を満足しない本件訂正発明4?6、21?23、26?28、29?30に係る特許を無効にすることはできないものである。

以上のとおり、発明の詳細な説明には、「カチオンが多価である無機塩を含有させること」という解決手段によって、「安定したエージェント含有医薬組成物を提供すること」という課題を解決することができることについて、その裏付けとなる理論、原理、作用機序等についての記載はなく、解決できることを具体的に示す実施例等の記載もない。
また、そのような記載がなくても、課題を解決することができることを当業者が認識できるといえる技術常識を見出すこともできない。
したがって、本件訂正発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。

なお、請求人は、本件特許明細書には、水酸化カルシウムが、カチオンが多価である無機塩に属することについて全く記載されていないし、【0004】の記載とも矛盾する(審判請求書39頁21行?40頁18行)と主張しているが、水酸化カルシウムは、本件訂正発明の「カチオンが多価である無機塩」に該当するものであると認められる。その理由は、以下のとおりである。
発明の詳細な説明において、「カチオンが多価である無機塩」に関連する記載がある段落は、【0013】?【0016】であり、水酸化カルシウムを構成するカチオンであるカルシウムイオンについて、【0013】に記載があるが、水酸化カルシウム自体や、水酸化カルシウムの対アニオンである水酸化物イオンについては、明示的な記載はない。
また、「無機塩」という用語の定義についても、発明の詳細な説明には記載がない。
そこで、「無機塩」という用語の一般的な意味について検討すると、「無機塩」の定義は、広辞苑(第3版)や岩波理化学辞典(第5版)にはないが、「塩」については、岩波理化学辞典(第5版)によると、「陽イオンと陰イオンが電荷を中和する形で生じた化合物の総称.また酸の乖離で出来る水素原子を金属イオンで置換したもの,あるいはブレーンステッド酸・塩基がちょうど中和されたときの生成物とみることもできる.」とされていることから、塩の解釈には、狭義から広義までの解釈が取り得るところ、少なくとも、広義の解釈にしたがった場合には、「無機塩」には、無機の陽イオン(カチオン)と無機の陰イオン(アニオン)が電荷を中和する形で生じたあらゆる無機化合物が包含されると言える。
そして、【0014】に、無機塩中の対アニオンの例として「酸化物」が記載されており、いわゆる無機酸の中和無機塩に限定されないことは明らかであることから、本件訂正発明の「カチオンが多価である無機塩」には、多価のカチオンとアニオンが電荷を中和する形で生じたあらゆる無機化合物が包含されると解するのが妥当であり、「水酸化カルシウム」も含まれるものと認められる。

また、被請求人は、「本件明細書には、訂正発明の技術的思想が記載され、エ-ジェント含有製剤に添加される「カチオンが多価である無機塩」の具体的態様も記載されている。」(答弁書51頁10行?53頁10行) 、「実施例では具体的にCa_(3)(PO_(4))_(2)を用いて多価カチオンの効果が確かめられているし、乙2においてもNa及びCaを比較することでその効果が実証されている。」(平成27年7月16日付け上申書7頁19?29行)、「本件発明は、カチオンが多価の無機塩により、1価のカチオンを含有するものよりも顕著な安定性を奏する。」(平成28年3月31日付け上申書3頁36?4頁4行)と主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明にはエージェント含有医薬組成物中に「カチオンが多価の無機塩」を含有させることで、安定したエージェント含有医薬組成物が得られることを裏付ける記載のないことは上述のとおりである。しかも、発明の詳細な説明には「1価のカチオン」との用語は全く記載されておらず、「カチオンが多価の無機塩」を含有させることにより、「1価のカチオン」を含有するものと比べて、エージェント含有医薬組成物の顕著な安定性を奏するという事項は、発明の詳細な説明に記載されていたとはいえないものである。
したがって、発明の詳細な説明に記載された事項であるとはいえない、「カチオンが多価の無機塩により、1価のカチオンを含有するものよりも顕著な安定性を奏すること」について、本願出願後に作成された乙2に示された実験結果を、参酌することはできない。
さらに、「本件発明は、カチオンが多価の無機塩により、1価のカチオンを含有するものよりも顕著な安定性を奏する。」との主張については、発明の詳細な説明のどの記載を根拠にするものであるか被請求人は釈明していないし、発明の詳細な説明を検討しても、「安定性の基準」を具体的に説明した記載(「安定したエージェント含有医薬組成物」に該当するか否かを判定する方法や基準値など。)等はなく、例1?4に係る安定性試験の結果に関する記載も、70℃/相対湿度80%で1週間貯蔵した後の、酸化生成物B2及びラクトンの生成量が「わずか」ということを示すにとどまり、1価のカチオンを含有するものとの比較が行われていないので、被請求人の主張の根拠にはなりえない。

5-1-3.無効理由2((a-1)?(a-4))についてのむすび
上記5-1-2.に説示したとおり、本件訂正発明1?48は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められないものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、無効理由2(a-1)によって無効にすべきものである。
また、本件訂正発明1、3?19、21?24、26?28、42、48に係る特許は、無効理由2(a-2)によって無効にすべきものである。
また、本件訂正発明1、4、5、7?18に係る特許は、無効理由2(a-3)によって無効にすべきものである。
また、本件訂正発明1?3、7?20、24?25、31?48に係る特許は、無効理由2(a-4)によって無効にすべきものである。

5-1-4.無効理由2((b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4))の要点
請求人が主張する無効理由2((b-1)、(b-2)、(b-3)、(b-4))の要点は以下のとおりである。

(b-1)
本件訂正発明の「カチオンが多価である無機塩」が、「酸性の無機塩」である場合には、本件訂正発明の目的である「エージェントであるロスバスタチンの安定性の改善」を達成できないことは当業者に明らかであるから、本件訂正発明は、その目的を達成できない態様を含んでおり、実施可能要件を満たさない。
したがって、本件訂正発明1?48は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。
(b-2)
二酸化ケイ素は、4%水溶液が酸性を示すことが知られ(甲第9号証)、甲第8号証の2には、二酸化ケイ素が安定化効果を有しないことが実験により証明されている。よって、酸性の無機塩である場合には、本件訂正発明は、その目的を達成できない態様を含んでおり、実施可能要件を満たさない。
したがって、本件訂正前の請求項1、2、19、24並びに請求項4と21を引用する請求項5?18、22?23に係る発明(本件訂正発明1、2、19、24、及び、本件訂正発明4、21、及び、29と、これらの発明を引用する発明である本件訂正発明5?18、22?23、30?41)は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

(b-3)
本件訂正前の請求項4、21に、「無機塩のアニオンが炭酸塩、ケイ酸塩、酸化物およびメタケイ酸塩から選択される」ことが規定されているが、これらの塩の全ては、アニオンではないので、技術的意味が不明確である。
また、酸化物において、何がアニオンであるか不明確である。
したがって、本件訂正前の請求項4と21(本件訂正後の請求項4、21、29)は、明確性要件を満たさないから、本件訂正発明4、21、29は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。
また、本件訂正前の請求項4と21(本件訂正後の請求項4、21、29)は、記載が不明確であるので、実施可能要件を満たさず、本件訂正発明4、21、29は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

(b-4)
本件訂正前の請求項1には、「その中でカチオンが多価である無機塩を含有する」という文言があるが、「その中で」が何を意味しているのか不明確であるから、本件訂正前の請求項1は、明確性要件を満たさない。
したがって、本件訂正発明1は、特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。
また、本件訂正前の請求項1は、記載が不明確であるので、実施可能要件を満たさず、本件訂正発明1は、特許を受けることができないものであり、その発明に係る特許は、特許法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきものである。

5-1-5.無効理由2((b-1)?(b-4))についての判断
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載しなければならない。」と定めるところ、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、当該発明にかかる物の生産、使用等をいうものであるから、実施可能要件を満たすためには明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る物を生産し、使用することができる程度のものでなければならない。
そして、医薬の用途発明においては、一般に、物質名、化学構造等が示されることのみによっては、当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効量を予測することは困難であり、当該医薬を当該用途に使用することができないから、医薬用途発明において実施可能要件を満たすためには、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その医薬を製造することができるだけではなく、出願時の技術常識に照らして、医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載される必要がある。

また、方法の発明について実施可能要件を満足するというためには、発明の詳細な説明の記載に、発明にかかる方法を当業者が実施できる程度に記載されている必要がある。そして、その方法を実施できる程度に記載されるというためには、その方法を実施することができることについて具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その方法を実施することができる程度に、その発明が記載されていなければならないと解される。

さらに、物の製造方法(物を生産する方法)について、実施可能要件を満足するというためには、発明の詳細な説明の記載に、発明にかかる製造方法を当業者が実施できる程度に記載されている必要があるほか、その製造方法により製造した物を使用できる程度に記載されている必要がある。そして、そのためには、その製造方法及び該製造方法により製造した物が使用できることについて、具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その製造方法を使用でき、また、該製造方法により製造した物が使用できる程度に、その発明が記載されていなければならないと解される。

(b-1)について

(1) 本件訂正発明1?18、29?48について
本件訂正発明1?18、29?48は、いずれも、エージェントを含む医薬組成物という物の発明に関するものである。
また、本件訂正発明1?18、29?48に係る医薬組成物は、その組成によって特定された組成物であるから、製造することができることは明らかである。
さらに、エージェントが、HMG CoAレダクターゼの阻害剤であり、高コレステロール血症、高脂血蛋白血症およびアテローム性動脈硬化症の治療のために有用であることは周知(必要であれば、特開平5-178841号公報(甲第2号証)、Drugs of the Future 1999,24(5),p511-513:1999年発行(甲第3号証)などを参照。)であるから、発明の詳細な説明の記載は、エージェントを含む本件訂正発明1?18、29?48に係る医薬組成物について、出願時の技術常識に照らして、医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載されているといえる。
そうすると、発明の詳細な説明に製造方法や使用方法についてさらに具体的な記載がなくても、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1?18、29?48の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

(2) 本件訂正発明19?23について
本件訂正発明19?23は、「エージェントを安定させるための、カチオンが多価である無機塩の使用」に関するものであり、方法の発明である。
しかしながら、上記「5-1-2. (2)検討」に説示したとおり、発明の詳細な説明には、「カチオンが多価である無機塩」を含有する医薬組成物においてエージェントが安定化していることは記載されていないし、カチオンが多価である無機塩を、エージェントを安定化させることができるような態様で使用する方法についての記載もない。また、そのような使用が可能であるといえる技術常識も見出せない。
なお、被請求人は、本件訂正発明19?23がその目的(「エージェントであるロスバスタチンの安定性の改善」)を達成できないことは、実施可能要件違反とは関係ないと主張(答弁書50頁13行?51頁7行)するが、本件訂正発明19?23は、「エージェントを安定させるための、カチオンが多価である無機塩の使用」に関するものであり、発明を特定するための事項として実質的に、「エージェントであるロスバスタチンの安定性の改善」を含むと認められるから、この主張は、採用できない。

したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明19?23の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(3) 本件訂正発明24?28について
本件訂正発明24?28は、エージェントを含有する安定化された医薬組成物の製造方法に関するものであって、物の製造方法(物の生産方法)の発明である。
ここで、発明の詳細な説明の記載を総合すると、「エージェントを含有する安定化された医薬組成物」とは、エージェントが安定化されている医薬組成物を意味すると解することが妥当であるが、上記「5-1-2. (2)検討」に説示したとおり、エージェントが安定化されている医薬組成物は、その製造例も含め、発明の詳細な説明には一切記載されていない。
また、具体的な製造方法に関する記載がなくても、エージェントが安定化されている医薬組成物を製造することができるといえる技術常識もない。
なお、被請求人は、本件訂正発明24?28がその目的(「エージェントであるロスバスタチンの安定性の改善」)を達成できないことは、実施可能要件違反とは関係ないと主張(答弁書50頁13行?51頁7行)するが、本件訂正発明24?28は、「エージェントを含有する安定化された医薬組成物」に関するものであり、発明を特定するための事項として実質的に、「エージェントであるロスバスタチンの安定性の改善」を含むと認められるから、この主張は、採用できない。

したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明24?28の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(4) 小括
発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明19?28の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、それらの発明は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、無効理由2(b-1)によって無効にすべきものである。
また、本件訂正発明1?18、29?48に係る特許は、無効理由2(b-1)によって無効にすべきものであるとはいえない。

(b-2)について
(1) 本件訂正発明1について
本件訂正発明1は、医薬組成物の発明であって、その組成によって特定された組成物であるから、製造することができることは明らかである。
さらに、エージェントを含むことから、医薬組成物として使用することができることも明らかである。
そうすると、発明の詳細な説明に製造方法や使用方法について実施例などの具体的な記載がないとしても、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、本件訂正発明1に係る特許は、無効理由2(b-2)によって無効にすべきものであるとはいえない。

(2) 本件訂正発明2、19、24、及び、本件訂正発明4、21、及び、29と、これらの発明を引用する発明である本件訂正発明5?18、22?23、30?41について
本件訂正発明2、19、24は、無機塩のカチオンが「ケイ素イオン」である場合を包含せず、また、本件訂正発明4、21、及び、29と、これらの発明を引用する発明である本件訂正発明5?18、22?23、30?41は、無機塩のアニオンが酸素イオンである場合を包含していないことから、いずれも「カチオンが多価である無機塩」が「二酸化ケイ素」である態様を包含していない。
したがって、本件訂正発明2、19、24、及び、本件訂正発明4、21、及び、29と、これらの発明を引用する発明である本件訂正発明5?18、22?23、30?41に係る特許は、無効理由2(b-2)によって無効にすべきものであるとはいえない。

(3) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1、2、19、24並びに本件訂正発明4、21、及び、29と、これらの発明を引用する発明である本件訂正発明5?18、22?23、30?41に係る特許は、無効理由2(b-2)によって無効にすべきものであるとはいえない。

(b-3)及び(b-4)について
請求人が主張する無効理由2の(b-3)、(b-4)は、要するに、本件発明を特定するための事項である「無機塩のアニオンが炭酸塩」や「その中で」などの事項は、技術的な意味が不明確であるから、本件訂正発明が明瞭ではないし、技術的な意味が不明確であるから、当業者が本件訂正発明を実施することができない、というものである。
しかしながら、本件訂正により本件訂正発明は、当該事項を含まないものとなっているから、本件特許は、無効理由2の(b-3)、(b-4)によって無効にすべきものであるとはいえない。

5-1-6.無効理由2((b-1)?(b-4))についてのむすび
上記5-1-5.に説示したとおり、発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明19?28を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえないものであるから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件訂正発明19?28は、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、無効理由2(b-1)によって無効にすべきものである。

5-2.無効理由2((c-1)、(d))について
5-2-1.無効理由2(c-1)について
請求人が主張する無効理由2(c-1)の要点は、「本件訂正後の請求項4、5、21、22、26、27、29、30に記載された「?塩イオン」との表現は、不明確であるから、明確性要件を満たさず、本件訂正後の請求項4、5、21、22、26、27、29、30に係る特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により特許無効とされるべきである。」というものであるが、上記「第2 2-3.訂正の適否の判断」に説示したとおり、本件訂正後の請求項4等の「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン」等の記載が、本件訂正前の請求項4等の記載と同様、無機塩を構成する対アニオンが炭酸塩を構成する対アニオン(である炭酸イオン)などのイオンを意図する記載であることは、当業者に明らかであり、「炭酸塩イオン」などが一般的辞書に存在しないことをもって、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン・・・」といった記載自体が不明確であるとはいえない。
したがって、本件訂正発明4、5、21、22、26、27、29、30に係る特許は、無効理由2の(c-1)によって無効にすべきものではない。

5-2-2.無効理由2(d)について
請求人が主張する無効理由2(d)の要点は、「本件特許明細書に「?塩イオン」や「酸化物イオン」との記載はないから、本件訂正後の請求項4、5、21、22、26、27、29、30に記載された発明は、明細書にサポートされていない。」というものであるが、上記「第2 2-3.訂正の適否の判断」で訂正事項1-5について説示したとおり、本件特許明細書(特に、【0014】)には実質的に「?塩イオン」や「酸化物イオン」に相当する事項が記載されているといえる。
したがって、本件訂正発明4、5、21、22、26、27、29、30に係る特許は、無効理由2の(d)によって無効にすべきものではない。


5-3.無効理由1-1について
5-3-1.甲号証の記載
甲第1号証の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審による。
(1a)(特許請求の範囲)
「【請求項1】 式
【化1】


〔式中、Rは有機基であり、Xは-CH=CH-であり、そしてMは生理学的に許容しうるカチオンである〕のHMA-CoA化合物、及び組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与しうるアルカリ性媒体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項2】 請求項1に定義した如き式Iの化合物を、少くとも1種の炭酸塩と良く混合して含んでなる製薬学的組成物。
【請求項3】 フルバスタチンナトリウム及び組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与しうる製薬学的に許容できるアルカリ性媒体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項4】 フルバスタチンナトリウム、(i)炭酸カルシウム及び(ii)炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムを含んでなる製薬学的組成物。
【請求項5】 フルバスタチンナトリウム 0.5?60重量%、炭酸カルシウム 25?40重量%、炭酸水素ナトリウム 0.5?10重量%、及び微結晶性セルロース 20?35重量%、を含んでなるフルバスタチンナトリウムを供給するためのカプセル形の経口用製薬学的組成物。
【請求項6】 フルバスタチンナトリウム 0.5?60重量%、炭酸カルシウム 5?20重量%、炭酸水素ナトリウム 5?20重量%、及び微結晶性セルロース 50?65重量%、を含んでなるHMG-CoAリダクターゼ禁止剤化合物を供給するための錠剤形の経口用製薬学的組成物。
【請求項7】 薬剤基質及びアルカリ性媒体を良く接触会合することを含んでなる請求項1の組成物の製造法。」

(1b)(【0001】?【0008】)
「【0001】本発明は、貯蔵安定性の高められたpHに敏感な薬剤を含んでなる製薬学的組成物に関する。
【0002】あるHMG-CoAリダクターゼ化合物、即ちコレステロール生合成禁止剤(inhibitor)は、高脂蛋白質血症(hyperlipoproteinemia)及びアテローム性硬化症の処置に有用な式
【0003】
【化2】


【0004】〔式中、Rは有機基であり、Xは-CH=CH-、好ましくは(E)-CH=CH-であり、そしてMは生理学的に許容しうるカチオン例えばアルカリ金属カチオン又はアンモニウム、好ましくはナトリウム又はカリウム、及び特にナトリウムである〕の化合物であり、約8以下のpHにおいて非常に分解しやすい。そのような化合物の例は化学的表示、R*,S*-(E)-(±)-7-〔3-(4-フルオルフエニル)-1-(1-メチルエチル)-1H-インドル-2-イル〕-3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸ナトリウム塩(参照、ヨーロツパ特許願第114027号)、のUSAN表示フルバスタチンナトリウム(以下「フルバスタチン」)を有する化合物を含んでなる。
【0005】例えば今回、種々のpHの水溶液中におけるフルバスタチンの分解動力学は以下の通りであることが発見された:
37℃での残存フルバスタチン%
pH 1時間後 24時間後
7.8 98.3 98.0
6.0 99.6 97.1
4.0 86.7 25.2
1.0 10.9 0
フルバスタチン及び関連HMG-CoAリダクターゼ化合物の上述した不安定性は、ヘプテン鎖上のβ,δ-ヒドロキシ基が非常に動きやすいこと及び二重結合が存在することによると思われる。即ち中性?酸性pHにおいてこの化合物は脱離又は異性化又は酸化反応を容易に受けて共役不飽和芳香族化合物、並びにトレオ異性体、対応するラクトン、及び他の分解生成物を生成する。
【0006】そのような化合物を含んでなる市販できる投薬形を達成するためには、それをpHに関係する不安定性に対して適切に保存することが必須である。
【0007】更に主題の化合物が熱及び光に敏感なこと並びに吸湿性であることは、製薬学的投薬形の製造及び貯蔵に特別な条件を課する。
【0008】今回驚くことに、長期間の貯蔵安定性を有する、例えば+20?+30℃下に2年後及び更に長期間において薬剤の初期量の少くとも約95%が活性であるというそのような組成物を製造することができた。」

(1c)(【0014】?【0023】)
「【0014】本組成物は薬剤物質及び「アルカリ性媒体」を含んでなる。このアルカリ性媒体は本組成物の水性溶液又は分散液に少くとも8のpHを付与することによつて組成物を安定化することができる。好ましくは式Iの化合物及びアルカリ性媒体を、薬剤の最適な安定性を達成するために、組成物中において良く接触会合(association)させる。
【0015】得られる組成物は、湿気の存在下においてでさえ或いはそのような組成物が、さもなければ潜在的に反応性の賦形剤例えばラクトースを更に含んでなる場合にも、式Iの化合物の貯蔵寿命を長くすることが発見された。本発明の組成物における薬剤物質の安定性は25℃で18ケ月、更に長期間後においてでさえ少くとも95%、典型的には98?99%である。
【0016】本明細書に用いる「アルカリ性媒体」又は「塩基」とは、本発明の組成物の水性溶液又は分散液に、少くとも8、好ましくは少くとも9且つ約10までのpHを付与しうる1種又はそれ以上の製薬学的に許容しうる物質を意味しよう。更にアルカリ性媒体は、組成物が水を吸着した時又は組成物に水を少量で添加した時、組成物の粒子の周囲に少くとも8の「ミクロ-pH」を生じせしめる。その他アルカリ性媒体は式Iの化合物に不活性であるべきである。このpHは例えばフルバスタチン20mg又は式Iに含まれる他の化合物の同等量を含有する組成物の単位投薬量を採取し、この組成物を水10?100mlに分散又は溶解することによつて決定することができる。
【0017】アルカリ性媒体を含んでなる製薬学的に許容しうるアルカリ性物質は水溶性から殆んど溶解しないないし本質的に水に不溶性の範囲であつてよい。
【0018】必要な塩基性を付与しうる水溶性アルカリ物質の例は、ある種の製薬学的に許容しうる無機炭酸塩例えば炭酸ナトリウム又はカリウム、炭酸水素ナトリウム、或いは炭酸水素カリウム;例えば無水のナトリウム、カリウム又はカルシウム二塩基性ホスフエート、或いは燐酸三ナトリウム;並びにアルカリ金属水酸化物例えば水酸化ナトリウム、カリウム、又はリチウム;及びこれらの混合物を含む。本発明による安定化された組成物の例は、薬剤物質(例えばフルバスタチン)0.5?60重量%、典型的には0.5?40重量%;及び例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及びこれらの混合物から選択される可溶性の炭酸塩化合物0.1?35重量%、好ましくは1?15重量%を含んでなる。
【0019】水に不溶性の又は殆んど溶解しないが、組成物において安定化のアルカリ性媒体を形成するのに潜在的に有用な物質の例は、通常抗酸処方物に使用される化合物(例えばマグネシウム酸化物、水酸化物又は炭酸塩;炭酸水素マグネシウム;アルミニウム又はカルシウム水酸化物又は炭酸塩;複合アルミニウム-マグネシウム化合物例えば水酸化マグネシウムアルミニウム);並びに燐酸の製薬学的に許容しうる塩例えば三塩基性燐酸カルシウム;及びこれらの混合物を含んでなる。
【0020】上述したアルカリ性物質のうち、製薬学的に許容しうる無機炭酸塩及び炭酸水素塩を意味する「製薬学的に許容しうる炭酸塩」、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、及びこれらの混合物はアルカリ性媒体とするのに特に有効であることがわかつた。
【0021】特に魅力的な貯蔵安定性を有する組成物は、アルカリ性媒体として、水溶性のアルカリ性賦形剤及び水に不溶性の又は殆んど溶解しないアルカリ性賦形剤の双方を含んでなる。
【0022】例えば安定性の実質的な改善及び他の利点は、水溶性の炭酸塩及び水に不溶性の炭酸塩を含んでなるアルカリ性媒体、特に炭酸水素(又は炭酸)ナトリウムの炭酸カルシウムとの組合せ物を用いることにより達成できた。
【0023】炭酸水素ナトリウムは有利には、貯蔵中に組成物の粒子上に吸着した水分の存在下において組成物中の酸性基を中和するのに役立つ。炭酸カルシウムは飲んだ時の薬剤の遊離に見かけ上影響することなしに貯蔵組成物中で緩衝作用する。更に炭酸塩は薬剤物質を十分に安定化し、斯くして通常の水に基づく調剤技術、例えば水を用いる混練り又は湿式粒状化を用いて本発明の安定化された組成物の製造しうることが発見された。」

(1d)(【0025】?【0032】)
「【0025】アルカリ性媒体は本発明の水性溶液又は分散液に、例えば少くとも8、好ましくは少くとも10のpH及び10程度の高pHを付与するのに十分な量で組成物中に存在しよう。一般に本発明の組成物は薬剤物質約0.1?60重量%(典型的には0.5?40重量%)及びアルカリ性媒体約0.1?60重量%、好ましくは20?35重量%を含んでなる。
【0026】使用しうる特別な安定化賦形剤の量はある程度まで意図する製造法に依存しよう。例えば組成物を錠剤にするには、炭酸カルシウムは簡便に圧縮に供しうる量を越えるべきでなく、一般により容易に圧縮しうるアルカリ性物質例えば炭酸水素ナトリウムと組合せて使用されよう。一方カプセルの投薬形は、全体の組成が十分に自由流動性で加工しうるならば圧縮しにくい賦形剤をより高量で含有することができる。
【0027】固体の単位投薬組成物は例えば1:40?2:1の水溶性炭酸塩と不溶性炭酸塩の比を有しうる。
【0028】本発明の錠剤の例は炭酸カルシウムと炭酸水素ナトリウムを重量で約2:1?1:2の比で含んでなる。カプセル組成物は例えば25:1?35:1の重量比でこれらの賦形剤を含んでなる。
【0029】薬剤物質及びアルカリ性媒体のほかに、本組成物に加工性を付与するために一般に充填剤が使用される。潜在的に適当な充填剤物質は技術的に良く知られており・・・ラクトース及び他の炭水化物、予じめゼラチン化した殿粉例えば殿粉1500R〔・・・)〕、コーン・スターチ、燐酸二カルシウム、セルロース、微結晶セルロース、砂糖、塩化ナトリウム、及びこれらの混合物を含み、中でもラクトース、微結晶セルロース、予じめゼラチン化した殿粉、及びこれらの混合物が好適である。
【0030】優れた崩壊及び圧縮性のために、微結晶セルロース〔アビセル(AvicelR)、FMC社〕、及び微結晶セルロース及び1種又はそれ以上の更なる充填剤例えば予じめゼラチン化した殿粉を含んでなる混合物は特に有用である。
【0031】全充填剤は全組成物に基づいて約1?65重量%の量で組成物中に存在する。生成物の投薬形の加工性を容易にし及び/又はその性質を高揚するために組成物に混入しうる他の成分は、良く知られた錠剤化結合剤(例えばゼラチン、砂糖、天然及び合成ゴム、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、及びこれらの混合物);崩壊剤(例えば架橋カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース、クロスポビドン、殿粉グリコール酸ナトリウム);滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、水素化植物油、カーナウバロウなど);流動剤(例えば二酸化珪素);付着防止剤又は滑り剤(例えばタルク);並びに甘味剤、着色剤(例えば酸化鉄、アルミニウムフレーク)、風味剤、抗酸化剤などを含む。特別な成分及びその使用量の選択は錠剤又はカプセル或いは他の投薬形を製造するための標準的な方法及び実例を参照することにより同業者によつて容易に決定されよう。一般に錠剤化結合剤の有効量は全組成物に基づいて約1?10重量%、好ましくは1?5重量%;付着防止剤又は滑り剤は約1?10重量%;崩壊剤は約1?5重量%;そして滑剤は約0.1?2重量%をなすであろう。
【0032】そのような組成物は公知の手段で処方して、化合物の標準的な単位経口投薬量例えば5mg、10mg、20mg、40mgなどを、カプセル、錠剤、ペレツトなどの形で提供することができる。」

(1e)(【0045】?【0049】)
「【0045】本発明の錠剤組成物は、同業者には一般に公知の種々の技術及び製造法で製造しうる。
【0046】組成物の製造においては、薬剤物質とアルカリ性媒体を良く接触会合させることが重要である。これらの成分を乾式混合して(好ましくは充填剤及び残りの賦形剤の添加前に)実質的に均質な混合物とし、次いで圧縮工程を行うことにより、所望の良好な接触を達成することができる。
【0047】しかしながら非常に安定な処方物を得るためには、水性又は他の溶媒に基づく調剤法が好適に使用される。この場合には、薬剤物質及びアルカリ性媒体を、少量の、例えば水の存在下に一緒に混合して、薬剤及びアルカリ性物質を良く混合して含有する粒状物を製造する。HMG-CoAリダクターゼ禁止剤化合物例えばフルバスタチンの吸湿性及び水分への敏感性が見られるならば、その薬剤物質はそのような工程による分解に耐えるほど十分に、アルカリ性媒体によつて安定化されるとは予期されない。
【0048】そのような方法における1つの具体例では、薬剤及びアルカリ性媒体を水でそしやくし、次いで得られた粒子を乾燥する。次いで該粒子の「外部相」を形成させるべく別置した充填剤及び残りの賦形剤を乾燥した粒子と混合して、カプセル化、錠剤化などに適当な組成物とする。
【0049】続く流動床での乾燥を補助することのできる溶媒に基づく方法の他の具体例では、薬剤物質及びアルカリ性媒体を公知の技術により、即ち湿つた状態で混合して、ある量の充填剤物質と一緒に湿式粒状化する。このように製造した粒状物を、乾燥後に残りの充填剤及び他の別置物例えば結合剤、滑剤と一緒にし、錠剤化、カプセル化或いは他の投薬形への成形を行う。」

(1f)(【0065】?【0067】)
「【0065】本発明は、フルバスタチン・ナトリウムを含んでなる組成物のほかに、式Iの他のHMG-CoAリダクターゼ禁止剤化合物を含んでなる組成物も包含するものである。該化合物は例えば本明細書に参考文献として引用される次のすべての特許、特許願及び刊行物に開示されている:米国特許第4,739,073号・・・
【0066】式Iの更なる化合物は、例えばヨーロツパ特許願第304,063号(R=キノリニル及びその誘導体);ヨーロツパ特許願第330,057号及び米国特許第5,026,708号及び第4,868,185号(R=ピリミジニル及びその誘導体)・・・に開示されている。
【0067】本組成物における活性成分として適当な化合物は、Rがインドリル、ピリミジニル、インデニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、インドリジニル、ピロロピリジン、ピラゾロピリジン、キノリニル、フエニルシリルフエニル、ナフチル、シクロヘキシル、フエニルチエニル、フエニルフリル及びピリダジニル基及びこれらの誘導体であるものである。好適なものはRがインドリル、ピリミジニル及びインデニル基及びこれらの誘導体であり、そしてXが(E)-CH=CH-である式Iの化合物である。」

(1g)(【0083】?【0093】;実施例4)
「【0083】実施例4
次の処方物を含んでなる20mgの経口用フルバスタチン錠剤を製造した。
【0084】
表2
成分 量(mg)
フルバスタチン 21.06
炭酸カルシウム、USP 25.00
炭酸水素ナトリウム、USP 25.00
微結晶セルロース、NFd 118.94
クロスカルメロース、ナトリウム、NFe 3.00
ポリビニルピロリドン、USPf 6.00
ステアリン酸マグネシウム、NF 1.00
精製水、USP q.s.*
───────────────────────────
d アビセルpH101(FMC社)
e Ac-Pi-ゾル(sol)(FMC社)
f コリドン(Kollidon)30(BASF社)
* 工程中に除去
(a) フルバスタチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、微結晶セルロ-ス、ポリビニルピロリドン、及びクロスカルメロース・ナトリウムを、それぞれ40メツシユのふるいを通過させ、次いで一緒にし且つ3分間混合し、そして得られた混合物を40メツシユのふるいにかけ、混合を2分間継続した。
【0085】(b) 得られた混合物に、水を混合しながら約5分間にわたつて添加して湿つた粒状物を生成せしめた。
【0086】(c) この粒状物を、そのL.O.D.が6?8%になるまで入口温度50℃の流動床乾燥器中で乾燥した。この粒状物を、14メツシユのふるいを通過させ、L.O.D.が2.5%を越えないようにした。この乾燥した粒状物を24メツシユのふるいにかけ、3分間混合した。
【0087】(d) この混合物中に、60メツシユのボルテイング布を通過させたステアリン酸マグネシウムを5分間にわたつて混入した。
【0088】得られた組成物は2%より大きくないL.O.D.を有した。
【0089】組成物の水10?100ml中分散液はpH10を有した。
【0090】(e) 得られた明黄色の組成物を、8mmのパンチ(punch)を用いて200mgの錠剤中心部に成形した。
【0091】(f) この錠剤中心部に、ヒドロキシメチルセルロースのフイルムコーテイング組成物、オパドライ・イエロー(Opadry YellowT)、YS-1-6347-G、カラーコン社(10%水性懸濁液)を、入口温度を70?75℃に設定した流動床中で適用し、5?6%の錠剤の重量増加とした。
【0092】得られた錠剤はUSPパドル法による30分間で75%という溶解基準に適合した。
【0093】この薬剤は光から保護された耐湿性の環境において30℃で18ケ月後に99%完全であることがわかつた。」

(1h)(【0098】?【0111】)
「【0098】なお本発明の特徴及び態様は以下の通りである:
1.式
【0099】
【化4】


【0100】〔式中、Rは有機基であり、Xは-CH=CH-であり、そしてMは生理学的に許容しうるカチオンである〕のHMA-CoA化合物、及び組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与しうるアルカリ性媒体を含んでなる製薬学的組成物。
【0101】2.上記1に定義した如き式Iの化合物を、少くとも1種の炭酸塩と良く混合して(in intimate association)含んでなる製薬学的組成物。
・・・
【0110】12.薬剤基質及びアルカリ性媒体を良く接触会合(intimate contacting association)することを含んでなる請求項1の組成物の製造法。
【0111】13.HMG-CoAリダクターゼ禁止剤化合物及びアルカリ性安定化媒体を一緒に凍結乾燥(lyophilize)することを含んでなる上記12の方法。」

甲第2号証の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審による。
(2a)(特許請求の範囲)
「【請求項1】式(I):
【化1】


(式中、R1は低級アルキル、アリ-ルまたはアラルキルでありこれらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい;R2およびR3はそれぞれ独立して水素、低級アルキルまたはアリ-ルであり該アルキルおよびアリ-ルはそれぞれ置換基を有していてもよい;R4は水素、低級アルキルまたは非毒性の薬学的に許容しうる塩を形成する陽イオン;Xは硫黄、酸素、スルホニル基または置換基を有していてもよいイミノ基;破線は二重結合の有無をそれぞれ表わす)で示される化合物またはその閉環ラクトン体である化合物。
・・・
【請求項5】Xが置換基を有していてもよいイミノ基である請求項1記載の化合物。
【請求項6】置換基がアシル基、アルキルスルホニルアミノ基またはアルキルスルホニル基である請求項5記載の化合物。
【請求項7】光学活性体である請求項1記載の化合物。
【請求項8】請求項1記載の化合物を有効成分として含有するHMG-CoA還元酵素阻害剤。」

(2b)(【0001】)
「【産業上の利用分野】本発明は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素阻害剤に関する。さらに詳しくは、コレステロ-ル生合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を特異的に阻害し、コレステロ-ルの合成を抑制することにより、高コレステロ-ル血症、高リポタンパク血症、更にはアテロ-ム性動脈硬化症の治療に有効である。」

(2c)(【0008】)
「薬学的に許容し得る塩を形成する陽イオンとは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属陽イオンまたはアンモニウムイオンを意味する。具体的には・・アルカリ土類金属として、ベリリウム、マグネシウムおよびカルシウム等が挙げられるが、ナトリウムおよびカルシウムが特に好ましい。」

(2d)(【0029】?【0034】;実施例1)
「【0029】実施例1
(+)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノピリミジン)-5-イル]-(3R,5S)-ジヒドロキシ-(E)-6-ヘプテン酸ナトリウム(Ia-1)
(1)・・・[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)ピリミジン-5-イル]メタノ-ル 4 277mg(収率:96.1%)を得る。 ・・・
【0030】(2)次いで・・・4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)ピリミジン-5-カルバルデヒド 5 196mg(収率:71.2%)の結晶を得る。 ・・・
【0031】(3)・・・7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)ピリミジン-5-イル]-(3R)-3-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-5-オキソ-(E)-6-ヘプテネ-ト 6 233mg(収率:71.3%)を飴状物として得る。 ・・・
【0032】(4)・・・メチル 7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)ピリミジン-5-イル]-(3R)-3-ヒドロキシ-5-オキソ-(E)-6-ヘプテネ-ト 7 13g(収率:100%)を飴状物として得られる。 ・・・
【0033】(5)・・・メチル 7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-(N-メチル-N-メチルスルホニルアミノ)ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-ジヒドロキシ-(E)-6-ヘプテネ-ト(Ib-1)11.4g(収率:85.2%)を飴状物として得られる。・・・
【0034】(6)化合物(Ib-1)11.4gおよびエタノ-ル160ml溶液に氷冷下で0.1N水酸化ナトリウム223mlを加えて徐々に室温とし、1時間撹拌する。溶媒を減圧留去して、残渣にエ-テルを加えて撹拌することにより目的化合物(Ia-1)11.0g(収率:95.0%)を結晶性粉末として得られる。
【化15】


[α]D=+18.9±0.6°(C=1.012, 25.0℃, H2O)
NMR(CDCl3)δ:1.24 (d, J=7,6H); 1.48 (m, 1H); 1.65 (m, 1H); 2.27 (dd, J=2,6,2H); 3.41(hept, J=7,1H); 3.48 (s, 3H); 3.59 (s, 3H); 3.73 (m, 1H); 4.32 (m, 1H);5.49 (dd, J=7,16, 1H); 6.62 (d, J=16, 1H); 7.19 (m, 2H); 7.56 (m, 2H)」

(2e)(【0039】;実施例7)
「実施例7
化合物(Ia-1)のCa塩の合成方法
化合物(Ia-1)(Na塩)1.50g(3.00mmol)を15mlの水に溶解し、窒素気流下室温で撹拌する。そこへ1mol/L塩化カルシウム水溶液3.00ml(3.00mmol)を3分間かけて滴下する。その後、同温度で2時間撹拌し、析出物を濾取し、水洗、乾燥して粉末状のCa塩1.32gを得る。この化合物は155℃から溶融が始まるが、明確な融点を示さない。
[α]D=+6.3±0.2°(C=2.011, 25.0℃, MeOH)
元素分析値(%)C22H27N3O6SF・0.5Ca・0.5H2Oとして
計算値:C,51.85; H,5.53; N,8.25; F,3.73; Ca,3.93
実測値:C,51.65; H,5.51; N,8.47; F,3.74; Ca,4.07」

(2f)(【0040】?【0042】)
「【0040】生物活性評価
[試験例]
HMG-CoA還元酵素阻害作用
(1)ラット肝ミクロゾ-ムの製法
・・・
【0041】(2)HMG-CoA還元酵素阻害活性測定法
-80℃で保存したラット肝ミクロゾ-ム100μlを0℃で溶解させ、冷リン酸カリウム緩衝液(100mM、pH7.4)0.7mlで薄め、50mMEDTA溶液(前記リン酸カリウム緩衝液溶液)0.8mlと100mMジチオスレイト-ル溶液(前記リン酸カリウム緩衝液溶液)0.4mlを加え、0℃に保った。このミクロゾ-ム溶液1.675mlに25mMNADPH溶液(前記リン酸カリウム緩衝液溶液)670μlを混じ、この溶液を0.5mM[3-14C]HMG-CoA溶液(3mCi/mmol)670μlに加えた。このミクロゾ-ムとHMG-CoAの混液45μlに被検化合物のナトリウム塩のリン酸カリウム緩衝液溶液5μlを混じ、37℃で30分間インキュベ-トした。冷後、10μlの2N塩酸を加えて、再び37℃で15分間インキュベ-トした。この混合物30μlを0.5mm厚シリカゲル薄層クロマト板(メルク社製 Merck AG、商品名 Art 5744)にアプライし、トルエン-アセトン(1:1)で展開したのち、Rf値が0.45?0.60の部分をかきとり、10mlのシンチレ-ションカクテルを入れたバイアル中に加えてシンチレ-ションカウンタ-で比放射能を測定した。本法により測定したメビノリン(ナトリウム塩)の阻害活性を100とした時の本発明化合物の相対活性を表4に示した。
【0042】
【表4】(当審注;表4の記載は省略するが、表中には、被験化合物Ia-1の相対活性が442であることが記載されている。)
以上のように、特に本発明化合物はメビノリンよりも強力なHMG-CoA還元酵素阻害活性を示す有効な薬剤であると考えられる。」

甲第3号証の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
なお、甲3は、英文の文献であるので、当審による訳文を示す。また、下線は当審による。
(3a)(タイトル及び化学構造式)
「ZD-4522
脂質低下性のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤
S-4522
(+)-(3R.5S)-7-[4-(4-Fluorophenyl)-6-isopropyl-2-(N-methyl-N-methanesulfonylamino)pyrim idin-5-yl]-3,5-dihydroxy-6(E)heptenoic acid calcium salt(2:1)




(3b)(「薬理作用」の欄の1段落)
「薬理作用
初期のin vitro研究において、ZD-4522は、単離ラット肝細胞におけるHMG-CoAリダクターゼの阻害において、ロバスタチンに比べて約4.42倍も高い効果を示した(表題化合物であるZD-4522のIC_(50)は11nMであるのに対して、ロバスタチンのIC_(50)は27である)。ZD-4522は、又、単離ラット肝細胞におけるコレステロール生合成をIC_(50)が1.12nMで抑制したが、これは、このモデル系でのプラバスタチン(IC_(50)=l98nM)の約100倍効果があった。培養した人肝腫瘍細胞(Hep-G2)において、表題化合物であるZD-4522は、プラバスタチンよりも約10倍もLDLレセプターのmRNAを増加させたが、これは血清コレステロールを低下させるポテンシャルが増加したことを示している」

(3c)(「臨床試験」の欄)
「臨床試験
動物実験において得られた有望な知見に基づいて、ZD-4522を臨床試験に進めた。この化合物(つまりZD-4522)は、良好な許容投与量で、LDLコレステロールやトリグリセリドを、第1世代のスタチンよりも遥かに大きな割合で低下させるその特性により、”スーパースタチン”であると考えられている。未だ未公開の第II相治験結果により、ZD-4522はアトルバスタチンと少なくとも同等の効果を有し、素晴らしい許容性(tolerability)を持つことが確認された。ZD-4522の第I相、第IIa相及び第IIb相治験が完了し、促進第III相開発計画が開始された。



(3d)(「製造者」の欄)
「製造者
塩野義製薬株式会社(JP)がアストラゼネカplc(GB)にライセンスした。」


5-3-2.甲第1号証に記載された発明
甲1の記載事項(1a)(【請求項1】)及び同記載事項(1h)(【0100】)にいう「HMA-CoA化合物」に関して、甲1の記載事項(1b)(特に【0002】?【0004】)に、高脂蛋白質血症(hyperlipoproteinemia)及びアテローム性硬化症の処置に有用な「HMG-CoAリダクターゼ化合物、すなわちコレステロール生合成禁止剤(inhibitor)」を表す化学構造式【化2】として、甲1の記載事項(1a)(【請求項1】)に「HMA-CoA化合物」を表す化学構造式【化1】と同じものが記載されており、「HMG-CoAリダクターゼ化合物、すなわちコレステロール生合成禁止剤(inhibitor)」は「HMG-CoAリダクターゼ阻害剤」とも表されるものと認められるから、甲1の記載事項(1a)(【請求項1】)及び同記載事項(1h)(【0100】)にいう「HMA-CoA化合物」は「HMG-CoAリダクターゼ阻害剤」の誤記と認められる。
そして、甲1の記載事項(1a)?同記載事項(1h)から、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「式
【化1】



〔式中、Rは有機基であり、Xは-CH=CH-であり、そしてMは生理学的に許容しうるカチオンである〕
のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤、及び組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与しうるアルカリ性媒体を含んでなる製薬学的組成物。」

5-3-3.甲1発明との対比・判断
(1) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明1について
甲1発明にいう「製薬学的組成物」は、本件訂正発明1にいう「医薬組成物」に相当する。
甲1発明における式【化1】の化学構造式で表される化合物は、Xが-CH=CH-であるから、ヘプト-6-エン酸またはその塩であって、3番目の炭素と5番目の炭素にヒドロキシル基が置換され、7番目の炭素に有機基が置換され、ヒドロキシル基に関する光学的な立体構造が(3R,5S)である化合物であるから、7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸またはその塩である。
甲1発明における式【化1】の化合物において、基Xの幾何学的立体構造が(E)体であり、有機基置換が[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]基である化合物は、本件訂正発明1における「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」すなわち「エージェント」である。

したがって、本件訂正発明1と甲1発明とは、
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を含有する医薬組成物。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。

第1-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明1は、有効成分としての「エージェント」を含有するのに対し、甲1発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を含有する点。

第1-2の相違点
本件訂正発明1は、「カチオンが多価である無機塩」であって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」を含有するのに対し、甲1発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を含有する点。

第1-1の相違点について
甲1発明における式【化1】に関して、甲1の記載事項(1f)(【0067】)には、式【化1】におけるRの例としてピリミジニルが挙げられ、Xの例として(E)-CH=CH-が挙げられている。
また、甲2の記載事項(2d)に示される【化15】の化合物(Ia-1)、及び、同記載事項(2e)に示されるそのCa塩は、その化学構造式から、甲1発明における式【化1】において、基Xが(E)体であり、かつ、有機基Rが[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]基である化合物であって、本件訂正発明1における「エージェント」に相当すると認められるところ、甲2の記載事項(2f)にはその化合物(Ia-1)が強力なHMG-CoAリダクターゼ阻害活性を有することが記載されている。
また、甲3の記載事項(3a)に示される「ZD-4522」は、その名称及び化学構造式から、甲1発明における式【化1】において、基Xが(E)体であり、かつ、有機基Rが[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]基である化合物であって、本件訂正発明1における「エージェント」に相当すると認められるところ、甲3の記載事項(3b)及び同記載事項(3c)にはその化合物「ZD-4522」が強力なHMG-CoAリダクターゼ阻害活性を有することが記載されている。
したがって、甲1発明におけるHMG-CoAリダクターゼ阻害剤として、甲2及び甲3の記載事項に基いて式【化1】において、基Xが(E)体であり、かつ、有機基Rが[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]基である化合物を選択することにより、有効成分としての「エージェント」を含有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

第1-2の相違点について
本件訂正発明1は、その発明特定事項からみて、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していない。
そして、甲1の記載事項(1b)(特に【0005】)及び同記載事項(1c)(特に【0014】、【0021】?【0022】)には、フルバスタチン及び関連HMG-CoAリダクターゼ化合物の不安定性は、ヘプテン鎖上のβ,δ-ヒドロキシ基が非常に動きやすいこと及び二重結合が存在することによると思われること、アルカリ性媒体を含むことにより組成物の水性溶液又は分散液に少なくとも8のpHを付与することによって組成物を安定化することができること、アルカリ性媒体として、水溶性のアルカリ性賦形剤及び水に不溶性の又は殆んど溶解しないアルカリ性賦形剤の双方を含んでなる場合、特に炭酸水素(又は炭酸)ナトリウムの炭酸カルシウムとの組合せ物が好ましいことが記載されている。
「エージェント」は甲1発明における式【化1】の化合物に包含されるものであるから、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)に接した当業者は、「エージェント」の不安定性を認識し、有効成分としての「エージェント」を含有する組成物に対して、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)の教示にしたがって、水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体による安定性確保を図って、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと、炭酸カルシウムとの混合物を、組成物の水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体として用いることを、容易に想到すると認められる。

効果について
本件訂正発明1に含有される無機塩は、
「カチオンが多価である無機塩」であって、
「ただしその際、
(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ
(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。」とされている。
発明の詳細な説明【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明1に該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明1の効果を直接示すものとはいえず、発明の詳細な説明には本件訂正発明1の効果を実施例などにより具体的に示す記載はない。
また、仮に本件訂正発明1の安定性が、例1?例4の錠剤の安定性と同程度であると推測するとしても、甲1発明の安定性は、式【化1】の化合物の安定性が典型的には98?99%である(甲1の記載事項(1c)の特に【0015】)というものであるから、本件訂正発明1が、甲1発明に比して、当業者が予想し得ない顕著な安定性を奏するとは認められない。
したがって、本件訂正発明1が当業者が予想し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

被請求人の主張について
被請求人は、甲1は、カチオンが多価の無機塩を、エージェントに関して特に効果的な安定化剤として選択することを、当業者に可能とさせるような教示を含んでいない旨主張する(答弁書16頁6?19行)。また、甲1では、炭酸カルシウムは、あくまでもpH調整の手段であるから、本件訂正発明1の「カチオンが多価である無機塩」とは役割が違う旨も主張する(答弁書16頁21行?18頁6行)。
また、被請求人は、平成29年6月23日付け上申書(5頁19-22行)においても、甲1に開示されているのは、pH8を付与し得るアルカリ性媒体がフルバスタチンの安定性に寄与することのみであり、カチオンが多価の無機塩を用いることでエージェントを安定化させる本件訂正発明とは異なる思想に基づく、と同趣旨の主張を繰り返している。
しかし、上記に説示したとおり、被請求人のこれらの主張は受け入れられない。
さらに、被請求人は、本件訂正発明1の効果は乙1、乙2の実験結果に示される旨も主張する(答弁書18頁8行?19頁21行)。
しかし、発明の詳細な説明には、「カチオンが多価である無機塩」を含有せしめることにより、安定したエージェント含有医薬組成物を提供することができることについて、その裏付けとなる理論、原理、作用機序等についての記載はなく、提供することができることを具体的に示す実施例等の記載もない。
また、そのような記載がなくても、安定したエージェント含有医薬組成物を提供することができることを当業者が認識できるといえる技術常識を見出すこともできない(上記「5-1-2.(a-1)?(a-4)の判断」を参照。)ので、本件出願後に作成された乙2に記載された実験結果は、発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内のものであるとはいえないものであるから、参酌することはできないものであり、乙1についても同様であるから、この主張も、採用することができない。
したがって、本件訂正発明1についての被請求人の主張はいずれも受け入れられない。

以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明3について
本件訂正発明3と甲1発明とは、以下の点で相違する。

第3-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明3は、有効成分としての「エージェント」を含有するのに対し、甲1発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を含有する点。

第3-2の相違点
本件訂正発明3は、「カチオンが多価である無機塩」であり、「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている」ものであって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」、「ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。」を含有するのに対し、甲1発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を含有する点。

第3-2の相違点について
第3-2の相違点は、平成29年3月21日付け審決の予告において指摘した第2aの相違点に対応するものである。
また、審決の予告において第2aの相違点についてした判断は、当該予告の時における本件訂正発明3が、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していないものであることを前提とするものである。
これに対し、本件訂正により本件訂正発明3は、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を包含しない発明となったから、当該態様を包含していることを前提とする上記判断は、本件訂正発明3に係る第3-2の相違点についての判断には当てはまらないことが明らかである。

そうすると、本件訂正発明3は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 第1群の発明のうち、本件訂正発明4について
本件訂正発明4と甲1発明とは、以下の点で相違する。

第4-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明4は、有効成分としての「エージェント」を含有するのに対し、甲1発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を含有する点。

第4-2の相違点
本件訂正発明4は、「カチオンが多価である無機塩のみ」からなり、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」ものであって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」を含有するのに対し、甲1発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を含有する点。

第4-2の相違点について
第4-2の相違点は、平成29年3月21日付け審決の予告において指摘した第2bの相違点に対応するものである。
また、審決の予告において第2bの相違点についてした判断は、当該予告の時における本件訂正発明4が、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していないものであることを前提とするものである。
これに対し、本件訂正により本件訂正発明4は、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を包含しない発明となったから、当該態様を包含していることを前提とする上記判断は、本件訂正発明4に係る第4-2の相違点についての判断には当てはまらないことが明らかである。

そうすると、本件訂正発明4は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明7?17について
本件訂正発明7?17と甲1発明とは、以下の点で相違する。

第7-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明7?17は、有効成分としての「エージェント」を含有するのに対し、甲1発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を含有する点。

第7-2の相違点
本件訂正発明7?17は、「カチオンが多価である無機塩」であって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」を含有するのに対し、甲1発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を含有する点。

その他の相違点
・本件訂正発明7は「錠剤または粉末である」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明8は「有効成分が5mgより多く存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明9は「有効成分が10mgより多く存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明10は「無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲である」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明11は「付加的に1種以上の賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤を含有している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明12は「有効成分が組成物の1?50質量%の量で存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明13は「無機塩が組成物の1?50質量%の量で存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明14は「賦形剤が組成物の30?90質量%の量で存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明15は「結合剤が組成物の2?90質量%の量で存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明16は「崩壊剤が組成物の2?10質量%の量で存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。
・本件訂正発明17は「滑沢剤が0.5?3質量%の量で存在している」ことを発明特定事項とするのに対し、甲1発明にはその発明特定事項はない。

第7-1の相違点及び第7-2の相違点について
第7-1の相違点及び第7-2の相違点は、それぞれ、実質的に第1-1の相違点及び第1-2の相違点と同じであるから、上記(1)に説示したとおりである。

その他の相違点について
甲1の記載事項(1d)に、剤形、有効成分含有量、無機塩含有量、付加的な含有物等が示されており、その他の相違点はいずれも、甲1の記載事項(1d)の教示にしたがって、当業者が容易に想到し得る発明特定事項である。

効果について
発明の詳細な説明の【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明7?17に該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明7?17の効果を直接示すものとはいえず、発明の詳細な説明には本件訂正発明7?17の効果を実施例などにより具体的に示す記載はない。
また、仮に本件訂正発明7?17の安定性が、例1?例4の錠剤の安定性と同程度であると推測するとしても、甲1発明の安定性は、式【化1】の化合物の安定性が典型的には98?99%である(甲1の記載事項(1c)の特に【0015】)というものであるから、本件訂正発明7?17が、甲1発明に比して、当業者が予想し得ない顕著な安定性を奏するとは認められない。
したがって、本件訂正発明7?17が当業者が予想し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

以上のとおり、本件訂正発明7?17は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明18について
本件訂正発明18と甲1発明とは、以下の点で相違する。

第18-1の相違点
本件訂正発明18においては、有効成分として(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩を含有するのに対し、甲1発明では、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を含有する点。

第18-2の相違点
本件訂正発明18は、「カチオンが多価である無機塩」であって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」を含有するのに対し、甲1発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を含有する点。

第18-1の相違点について
甲2には、「化合物(Ia-1)のCa塩」(甲2の記載事項(2e))が記載されており、当該化合物(Ia-1)は、その化学構造式が【化15】(甲2の記載事項(2d))であることを勘案すると、本件訂正発明18の「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩」に相当し、また、甲3に、スーパースタチンであると考えられていると記載されている「S-4522」或いは「ZD-4522」とも記載される化合物は、その名称が「(+)-(3R,5S)-7-[4-(4-Fluorophenyl)-6-isopropyl-2-(N-methyl-N-methanesulfonylamino)pyrimidin-5-yl]-3,5-dihydroxy-6(E)heptenoic acid calcium salt(2:1)」であるから、本件訂正発明18の「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩」に相当する。
そうすると、甲1発明におけるHMG-CoAリダクターゼ阻害剤として、甲2及び甲3の記載事項に基いて(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩を選択することにより、有効成分として(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩を含有するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

第18-2の相違点について
第18-2の相違点は、実質的に第1-2の相違点と同じであるから、上記(1)に説示したとおりである。

効果について
発明の詳細な説明【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明18に該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明18の効果を直接示すものとはいえず、発明の詳細な説明には本件訂正発明18の効果を実施例などにより具体的に示す記載はない。
また、仮に本件訂正発明18の安定性が、例1?例4の錠剤の安定性と同程度であると推測するとしても、甲1発明の安定性は、式【化1】の化合物の安定性が典型的には98?99%である(甲1の記載事項(1c)の特に【0015】)というものであるから、本件訂正発明18が、甲1発明に比して、当業者が予想し得ない顕著な安定性を奏するとは認められない。
したがって、本件訂正発明18が当業者が予想し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

以上のとおり、本件訂正発明18は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6) 第2群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明19について
甲1の記載事項(1a)(特に、請求項1)、同記載事項(1b)(特に、【0001】、【0005】及び【0006】)及び同記載事項(1c)(特に、【0014】、【0021】?【0023】)を総合すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1’発明」という。)が記載されているものと認められる。

「式【化1】(化学式とその説明の記載を省略。)のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を安定させるための、組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与しうるアルカリ性媒体の使用」

本件訂正発明19と甲1’発明とは、以下の点で相違する。

第19-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明19は、有効成分としての「エージェント」を安定させるのに対し、甲1’発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を安定させる点。

第19-2の相違点
本件訂正発明19は、「カチオンが多価である無機塩」であり、「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている」ものであって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」を使用するのに対し、甲1’発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を使用する点。

第19-1の相違点について
第19-1の相違点は、実質的に第1-1の相違点と同じであるから、上記(1)に説示したとおりである。

第19-2の相違点について
本件訂正発明19は、その発明特定事項からみて、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していない。
そして、甲1の記載事項(1b)(特に【0005】)及び同記載事項(1c)(特に【0014】、【0021】?【0022】)には、フルバスタチン及び関連HMG-CoAリダクターゼ化合物の不安定性は、ヘプテン鎖上のβ,δ-ヒドロキシ基が非常に動きやすいこと及び二重結合が存在することによると思われること、アルカリ性媒体を含むことにより組成物の水性溶液又は分散液に少なくとも8のpHを付与することによって組成物を安定化することができること、アルカリ性媒体として、水溶性のアルカリ性賦形剤及び水に不溶性の又は殆んど溶解しないアルカリ性賦形剤の双方を含んでなる場合、特に炭酸水素(又は炭酸)ナトリウムの炭酸カルシウムとの組合せ物が好ましいことが記載されている。
「エージェント」は甲1’発明における式【化1】の化合物に包含されるものであるから、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)に接した当業者は、「エージェント」の不安定性を認識し、有効成分としての「エージェント」を含有する組成物に対して、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)の教示にしたがって、水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体による安定性確保を図って、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと、炭酸カルシウムとの混合物を、組成物の水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体として用いることを、容易に想到すると認められる。

効果について
発明の詳細な説明【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明19の使用によって得られたものに該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明19の効果を直接示すものとはいえず、発明の詳細な説明には本件訂正発明19の効果を実施例などにより具体的に示す記載はない。
また、仮に本件訂正発明19の使用によって得られたものの安定性が、例1?例4の錠剤の安定性と同程度であると推測するとしても、甲1’発明の使用によって得られたものの安定性は、式【化1】の化合物の安定性が典型的には98?99%である(甲1の記載事項(1c)の特に【0015】)というものであるから、本件訂正発明19の使用によって得られたものが、甲1’発明の使用によって得られたものに比して、当業者が予想し得ない顕著な安定性を奏するとは認められない。
したがって、本件訂正発明19が当業者が予想し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

以上のとおり、本件訂正発明19は、甲1’発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7) 第2群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明20について
本件訂正発明20は、本件訂正発明19において、「カチオンが多価である無機塩」を、更に、「無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている」ものであり、「ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。」ものに限定したものである。
本件訂正発明20と甲1’発明とは、以下の点で相違する。

第20-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明20は、有効成分としての「エージェント」を安定させるのに対し、甲1’発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を安定させる点。

第20-2の相違点
本件訂正発明20は、「カチオンが多価である無機塩」であり、「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている」ものであって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」、「ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。」ものを使用するのに対し、甲1’発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を使用する点。

第20-2の相違点について
第20-2の相違点は、平成29年3月21日付け審決の予告において指摘した第2fの相違点に対応するものである。
また、審決の予告において第2fの相違点についてした判断は、当該予告の時における本件訂正発明20が、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していないものであることを前提とするものである。
これに対し、本件訂正により本件訂正発明20は、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を包含しない発明となったから、当該態様を包含していることを前提とする上記判断は、本件訂正発明20に係る第20-2の相違点についての判断には当てはまらないことが明らかである。

そうすると、本件訂正発明20は、甲1’発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(8) 第2群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明21について
本件訂正発明21は、本件訂正発明19において、「カチオンが多価である無機塩のみ」からなり、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」ものに限定したものである。
本件訂正発明21と甲1’発明とは、以下の点で相違する。

第21-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明21は、有効成分としての「エージェント」を安定させるのに対し、甲1’発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を安定させる点。

第21-2の相違点
本件訂正発明21は、「カチオンが多価である無機塩のみ」からなり、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」であり、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」ものを使用するのに対し、甲1’発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を使用する点。

第21-2の相違点について
第21-2の相違点は、平成29年3月21日付け審決の予告において指摘した第2gの相違点に対応するものである。
また、審決の予告において第2gの相違点についてした判断は、当該予告の時における本件訂正発明21が、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していないものであることを前提とするものである。
これに対し、本件訂正により本件訂正発明21は、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を包含しない発明となったから、当該態様を包含していることを前提とする上記判断は、本件訂正発明21に係る第21-2の相違点についての判断には当てはまらないことが明らかである。

そうすると、本件訂正発明21は、甲1’発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(9) 第3群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明24について
甲1の記載事項(1a)(特に、請求項1及び7)及び同記載事項(1c)(特に、【0014】、【0023】)によれば、甲1には、以下の発明(以下「甲1’’発明」という。)が記載されているものと認められる。

「式【化1】(化学式とその説明の記載を省略。)のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤、及び組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与しうるアルカリ性媒体を良く接触会合することを含む、安定化された製薬学的組成物の製造方法」

本件訂正発明24と甲1’’発明とは、以下の点で相違する。

第24-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明24は、有効成分としての「エージェント」を使用するのに対し、甲1’’発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を使用する点。

第24-2の相違点
本件訂正発明24は、「カチオンが多価である無機塩」であり、「無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている」ものであって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」を使用するのに対し、甲1’’発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を使用する点。

第24-3の相違点
本件訂正発明24の製造方法は、「医薬組成物に組み込むこと」を含むのに対し、甲1’’発明の製造方法は、「良く接触会合すること」を含むものである点。

第24-1の相違点、及び、第24-2の相違点の相違点について
第24-1の相違点は、実質的に第1-1の相違点と同じであるから、上記(1)に説示したとおりであり、第24-2の相違点は、実質的に第19-2の相違点と同じであるから、上記(6)に説示したとおりである。

第24-3の相違点について
まず、本件訂正発明24の「組み込むこと」という工程について検討すると、発明の詳細な説明には、本件訂正発明24の「組み込むこと」という工程の定義を説明した記載はないが、【0033】には、「本発明の医薬組成物は、従来技術で一般に公知の標準的な技術および製造方法を使用して、例えば成分の乾式混合により製造してもよい。例えば該エージェント、およびその中でカチオンが多価である無機塩、1種以上の賦形剤、1種以上の結合剤および1種以上の崩壊剤、ならびに所望の場合にはその他の付加的な添加剤を一緒に混合する。・・次いでふるい分けされていてもよい滑沢剤を該ブレンドに添加し、均質な混合物が得られるまで混合を継続する。次いで該混合物を圧縮成形して錠剤にする。あるいは湿式造粒技術を使用することができる。例えば該エージェント、およびその中でカチオンが多価である無機塩、1種以上の賦形剤、1種以上の結合剤、および一部の崩壊剤、ならびに所望の場合にはその他の付加的な添加剤を、例えば造粒機を使用して一緒に混合し、かつ粉末ブレンドを少量の精製水を用いて造粒する。該顆粒を乾燥させ、かつミルに通過させる。崩壊剤の残りおよび滑沢剤をミルで処理した顆粒に添加し、かつ混合後に、得られた均質な混合物を圧縮成形して錠剤にする。乾式混合および湿式造粒技術の変更は、成分の添加およびふるい分けおよび錠剤への圧縮成形に先立つ混合の順序を含めて、従来技術で周知の原理により実施してもよいことは明らかである。」と記載されている。
また、実施例において、エージェントと、各種添加剤成分を一緒に混合し、(滑沢剤である)ステアリン酸マグネシウムをブレンドに添加し、混合を継続し、得られた均質な混合物を圧縮成形して錠剤にした例が記載されている。
また、医薬組成物は、粉末であってもよい(【0011】)ものである。
してみると、本件訂正発明24の「組み込む」とは、乾式混合や湿式造粒技術といった医薬の一般的な製造方法に従い、エージェント及び所定の無機塩を含む医薬組成物を製造する方法を、単に言い換えたに過ぎないものと解される。
また、医薬組成物中に無機塩とエージェントを含む医薬組成物を乾式混合や湿式造粒技術を使用して製造する方法は、本件訂正発明24の、「組み込むことを含む、医薬組成物の製造方法」に相当すると認められる。

次に、甲1’’発明の「良く接触会合すること」について 検討する。
甲1には、「本発明の錠剤組成物は、同業者には一般に公知の種々の技術及び製造法で製造しうる。組成物の製造においては、薬剤物質とアルカリ性媒体を良く接触会合させることが重要である。これらの成分を乾式混合して(好ましくは充填剤及び残りの賦形剤の添加前に)実質的に均質な混合物とし、次いで圧縮工程を行うことにより、所望の良好な接触を達成することができる。」(【0045】?【0046】)、「薬剤物質及びアルカリ性媒体を公知の技術により、即ち湿つた状態で混合して、ある量の充填剤物質と一緒に湿式粒状化する。このように製造した粒状物を、乾燥後に残りの充填剤及び他の別置物例えば結合剤、滑剤と一緒にし、錠剤化、カプセル化或いは他の投薬形への成形を行う。」(【0049】)と記載されている。
また、例えば、実施例4においては、「(a)(薬剤物質である)フルバスタチン、(アルカリ性媒体に相当する)炭酸カルシウム、(同左)炭酸水素ナトリウム、微結晶セルロ-ス、ポリビニルピロリドン、及びクロスカルメロース・ナトリウムを・・混合・・(b) 得られた混合物に、水を混合しながら・・添加して湿つた粒状物を生成せしめた。(c) この粒状物を、・・流動床乾燥器中で乾燥した。・・(d) この混合物中に、・・ステアリン酸マグネシウムを5分間にわたつて混入した。・・(e) 得られた明黄色の組成物を、・・錠剤中心部に成形した・・。(f) この錠剤中心部に・・コーテイング組成物・・を・・流動床中で適用し、5?6%の錠剤の重量増加とした。」と記載されている。
してみると、甲1’’発明において、「良く接触会合すること」とは、(式Iの)薬剤物質とアルカリ性媒体を乾式混合して均質な混合物とする乾式混合技術、或いは、薬剤物質及びアルカリ性媒体を充填剤物質と一緒に湿式混合粒状化する工程を含む湿式造粒技術により製薬学的組成物を製造することであるといえる。

そうすると、本件訂正発明24の「医薬組成物に組み込むこと」と、甲1’’発明の「良く接触会合すること」は、実質的に同じ工程(操作)を意味していると認められるので、第24-3の相違点は、実質的な相違点ではない。

効果について
発明の詳細な説明【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明24に該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明24の効果を直接示すものとはいえず、発明の詳細な説明には本件訂正発明24の効果を実施例などにより具体的に示す記載はない。
また、仮に本件訂正発明24の製造方法により製造した製薬学的組成物の安定性が、例1?例4の錠剤の安定性と同程度であると推測するとしても、甲1’’発明の製造方法により製造した製薬学的組成物の安定性は、式【化1】の化合物の安定性が典型的には98?99%である(甲1の記載事項(1c)の特に【0015】)というものであるから、本件訂正発明24の製造方法により製造した製薬学的組成物が、甲1’’発明の製造方法により製造した製薬学的組成物に比して、当業者が予想し得ない顕著な安定性を奏するとは認められない。
したがって、本件訂正発明24が当業者が予想し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

以上のとおり、本件訂正発明24は、甲1’’発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10) 第3群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明25について
本件訂正発明25は、本件訂正発明24において、「カチオンが多価である無機塩」を、更に、「無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている」ものに限定したものである。
本件訂正発明25と甲1’’発明とは、以下の点で相違する。

第25-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明25は、有効成分としての「エージェント」を使用するのに対し、甲1’’発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を使用する点。

第25-2の相違点
本件訂正発明25は、「カチオンが多価である無機塩」であって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」であり、「無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている」ものを使用するのに対し、甲1’’発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を使用する点。

第25-3の相違点
本件訂正発明25の製造方法は、「医薬組成物に組み込むこと」を含むのに対し、甲1’’発明の製造方法は、「良く接触会合すること」を含むものである点。

第25-1の相違点、及び、第25-3の相違点について
第25-1の相違点は、実質的に第1-1の相違点と同じであるから、上記(1)に説示したとおりであり、第25-3の相違点は、第24-3の相違点と同じであるから、上記(9)に説示したとおりである。

第25-2の相違点について
上記(1)に説示したとおり、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)に接した当業者は、「エージェント」の不安定性を認識し、有効成分としての「エージェント」を含有する組成物に対して、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)の教示にしたがって、水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体による安定性確保を図って、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと、炭酸カルシウムとの混合物を、組成物の水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体として用いることを、容易に想到すると認められる。

効果について
発明の詳細な説明【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明25に該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明25の効果を直接示すものとはいえず、発明の詳細な説明には本件訂正発明25の効果を実施例などにより具体的に示す記載はない。
また、仮に本件訂正発明25の製造方法により製造した製薬学的組成物の安定性が、例1?例4の錠剤の安定性と同程度であると推測するとしても、甲1’’発明の製造方法により製造した製薬学的組成物の安定性は、式【化1】の化合物の安定性が典型的には98?99%である(甲1の記載事項(1c)の特に【0015】)というものであるから、本件訂正発明25の製造方法により製造した製薬学的組成物が、甲1’’発明の製造方法により製造した製薬学的組成物に比して、当業者が予想し得ない顕著な安定性を奏するとは認められない。
したがって、本件訂正発明25が当業者が予想し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

以上のとおり、本件訂正発明25は、甲1’’発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11) 第3群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明26について
本件訂正発明26は、本件訂正発明24において、「カチオンが多価である無機塩」を、更に、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」ものに限定したものである。
本件訂正発明26と甲1’’発明とは、以下の点で相違する。

第26-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明26は、有効成分としての「エージェント」を使用するのに対し、甲1’’発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を使用する点。

第26-2の相違点
本件訂正発明26は、「カチオンが多価である無機塩」であって、「ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイト又は合成ヒドロタルサイトではなく、かつ(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない無機塩」であり、「無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている」ものを使用するのに対し、甲1’’発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を使用する点。

第26-3の相違点
本件訂正発明26の製造方法は、「医薬組成物に組み込むこと」を含むのに対し、甲1’’発明の製造方法は、「良く接触会合すること」を含むものである点。

第26-1の相違点、及び、第26-3の相違点について
第26-1の相違点は、実質的に第1-1の相違点と同じであるから、上記(1)に説示したとおりであり、第26-3の相違点は、第24-3の相違点と同じであるから、上記(9)に説示したとおりである。

第26-2の相違点について
上記(1)に説示したとおり、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)に接した当業者は、「エージェント」の不安定性を認識し、有効成分としての「エージェント」を含有する組成物に対して、甲1の記載事項(1b)及び同記載事項(1c)の教示にしたがって、水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体による安定性確保を図って、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムと、炭酸カルシウムとの混合物を、組成物の水性溶液又は分散液に少なくともpH8を付与しうるアルカリ性媒体として用いることを、容易に想到すると認められる。

効果について
発明の詳細な説明【0038】?【0050】に記載された例1?例4の錠剤は、いずれも「カチオンが多価である無機塩」として「三塩基性リン酸カルシウム」のみを含有するものであるから、本件訂正発明26に該当せず、例1?例4についての記載は本件訂正発明26の効果を直接示すものとはいえず、発明の詳細な説明には本件訂正発明26の効果を実施例などにより具体的に示す記載はない。
また、仮に本件訂正発明26の製造方法により製造した製薬学的組成物の安定性が、例1?例4の錠剤の安定性と同程度であると推測するとしても、甲1’’発明の製造方法により製造した製薬学的組成物の安定性は、式【化1】の化合物の安定性が典型的には98?99%である(甲1の記載事項(1c)の特に【0015】)というものであるから、本件訂正発明26の製造方法により製造した製薬学的組成物が、甲1’’発明の製造方法により製造した製薬学的組成物に比して、当業者が予想し得ない顕著な安定性を奏するとは認められない。
したがって、本件訂正発明26が当業者が予想し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。

以上のとおり、本件訂正発明26は、甲1’’発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(12) 第4群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1における医薬組成物において、「カチオンが多価である無機塩」を、「該無機塩のカチオンが多価のカルシウムのみ」であるものに限定するとともに、「無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく」との限定を削除し、さらに、医薬組成物の形態を「錠剤」に限定したものに相当する。
本件訂正発明2と甲1発明とは、以下の点で相違する。

第2-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明2は、有効成分としての「エージェント」を含有するのに対し、甲1発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を含有する点。

第2-2の相違点
本件訂正発明2は、「カチオンが多価である無機塩」であって、「ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではな」く、「該無機塩のカチオンが多価のカルシウムのみ」であるものを含有するのに対し、甲1発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を含有する点。

第2-3の相違点
本件訂正発明2では、医薬組成物の形態が「錠剤」に限定されているのに対し、甲1発明では、そのような限定を有していない点。

第2-2の相違点について
第2-2の相違点は、平成29年3月21日付け審決の予告において指摘した第2cの相違点に対応するものである。
また、審決の予告において第2cの相違点についてした判断は、当該予告の時における本件訂正発明2が、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していないものであることを前提とするものである。
これに対し、本件訂正により本件訂正発明2は、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を包含しない発明となったから、当該態様を包含していることを前提とする上記判断は、本件訂正発明2に係る第2-2の相違点についての判断には当てはまらないことが明らかである。

そうすると、本件訂正発明2は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(13) 第2群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明29?41について
本件訂正発明29?41は、本件訂正発明2を特定するための発明特定事項を全て有し、さらに、発明を特定するための事項を有する発明であるところ、上記(12)に説示したとおり、本件訂正発明2は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものである。
そうすると、本件訂正発明29?41も、本件訂正発明2と同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものである。

(14) 第5群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明42について
本件訂正発明42は、本件訂正発明2における医薬組成物において、さらに、無機塩のカチオンについて「多価のカルシウムのみ」であったものを「カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択され」るものに変更するとともに、「無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲であり、そして 無機塩が、該組成物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する」ものであり、「ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く」ものにに限定したものに相当する。
本件訂正発明42と甲1発明とは、以下の点で相違する。

第42-1の相違点
「7-有機基置換-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」として、本件訂正発明42は、有効成分としての「エージェント」を含有するのに対し、甲1発明は、式【化1】のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤を含有する点。

第42-2の相違点
本件訂正発明42は、「カチオンが多価である無機塩」であって、「ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではな」く、「該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択され」であり、「ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く」ものを含有するのに対し、甲1発明は、「組成物の水性溶液又は分散液に少くともpH8を付与し得るアルカリ性媒体」を含有する点。

第42-3の相違点
本件訂正発明42では、医薬組成物の形態が「錠剤」に限定されているのに対し、甲1発明では、そのような限定を有していない点。

第42-4の相違点
本件訂正発明42では、「無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲であり、そして 無機塩が、該組成物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する」ものに限定されているのに対し、甲1発明では、そのような限定を有していない点。

第42-2の相違点について
第42-2の相違点は、平成29年3月21日付け審決の予告において本件訂正発明42に対応する、当該予告時の本件訂正発明44に係る第2cの相違点に対応するものであるところ、それについて説示した判断は、「無機塩」ついて、炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を排除していないものであることを前提とするものであるが、本件訂正発明42は、カチオンが多価である無機塩に相当する炭酸カルシウムとともに、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いる態様を包含しない発明である。
そうすると、当該態様を包含していることを前提とする、上記判断は、本件訂正発明42には当てはまらない。

そうすると、本件訂正発明42は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(15) 第5群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明43?48について
本件訂正発明43?48は、本件訂正発明42を特定するための発明特定事項を全て有し、さらに、発明を特定するための事項を有する発明であるところ、上記(14)に説示したとおり、本件訂正発明42は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものである。
そうすると、本件訂正発明43?48も、本件訂正発明42と同様の理由により、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないものである。

(21)無効理由1-1についてのむすび
上記(1)?(15)のとおり、本件訂正発明1、7?19、24?26は、甲1発明、甲1’発明または甲1’’発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、無効理由1-1によって無効にすべきである。

5-4.無効理由1-2について
5-4-1.甲号証の記載
甲第4号証の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
(4a)(特許請求の範囲)
「1.混合物中に、活性成分として構造式


〔式中、
Xは、-CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)-、-CH_(2)CH_(2)CH_(2)-または-CH_(2)CH(CH_(3))-であり;
R_(1)は、1‐ナフチル;2‐ナフチル;シクロヘキシル;ノルボルネニル;2‐、3‐または4‐ピリジニル;フェニル;弗素、塩素、臭素、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、1?4個の炭素原子のアルキル、1?4個の炭素原子のアルコキシまたは2?8個の炭素原子のアルカノイルアルコキシにより置換されたフェニルであり;
R_(2)またはR_(3)の一方は、-CONR_(5)R_(6)(式中、R_(5)およびR_(6)は、独立して水素;1?6個の炭素原子のアルキル;2‐、3‐または4‐ピリジニル;フェニル;弗素、塩素、臭素、シアノ、トリフルオロメチルまたは3?8個の炭素原子のカルボアルコキシにより置換されたフェニルである)でありそしてR_(2)またはR_(3)の他方は、水素;1?6個の炭素原子のアルキル;シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;フェニル;または弗素、塩素、臭素、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、1?4個の炭素原子のアルキル、1?4個の炭素原子のアルコキシまたは2?8個の炭素原子のアルカノイルオキシにより置換されたフェニル

であり;
R_(4)は、1?6個の炭素原子のアルキル;シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;またはトリフルオロメチルであり;そしてMは、医薬的に許容し得る金属塩である〕の化合物および少なくとも1種の医薬的に許容し得る安定化金属塩添加剤を含有する改善された安定性によって特徴づけられる高コレステロール血症または高脂質血症の経口治療用の医薬組成物。
2.活性成分が、〔R‐(R^(*),R^(*))〕‐2‐(4‐フルオロフェニル)‐β,δ‐ジヒドロキシ‐5‐(1‐メチルエチル)‐3‐フェニル‐4‐〔(フェニルアミノ)カルボニル)‐1H‐ピロール‐1‐ヘプタン酸の医薬的に許容し得る金属塩である請求項1記載の安定な医薬組成物。
(中略)
5.医薬的に許容し得る安定化添加剤がアルカリ土類金属塩である請求項1記載の安定な医薬組成物。
(中略)
8.活性成分が式(IA):


のCI-981 半‐カルシウムでありそして医薬的に許容し得る安定化添加剤が炭酸カルシウムである請求項2記載の安定な医薬組成物。
9.さらに、結合剤、希釈剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤および抗酸化剤の形態の他の成分を含有する請求項1記載の安定な医薬組成物。
10.活性成分の使用量が組成物の約1?50重量%である請求項1、2または8記載の安定な医薬組成物。
11.安定剤炭酸カルシウムが、組成物の約5?75重量%の範囲にある請求項7記載の安定な医薬組成物。」
(4b)(8頁1行?9頁18行)
「特に、これらの化合物は、以下の式I


により示すことができる。
(中略)
立体‐特異的異性体のうち、HMG-CoAレダクターゼ阻害活性を有する一つの特定の化合物、CI-981 半‐カルシウムが、現在、中程度?重度の家族性また非家族性の高コレステロール血症(IIa型)の治療に対して開発中である。このもっとも好ましい化合物は、(2R‐トランス)‐5‐(4‐フルオロフェニル)‐2‐(1‐メチルエチル)‐N,4-ジフェニル‐1‐〔2‐(テトラヒドロ‐4‐ヒドロキシ‐6‐オキソ‐2H‐ピラン‐2‐イル)エチル〕‐1H‐ピロール‐3‐カルボキサミドの開環形態、すなわちエナンチオマー〔R‐(R^(*),R^(*))〕‐2‐(4‐フルオロフェニル)‐β,δ‐ジヒドロキシ‐5‐(1‐メチルエチル)‐3‐フェニル‐4‐〔(フェニルアミノ)カルボニル)‐1H‐ピロール‐1‐ヘプタン酸 半‐カルシウム塩である。その化学構造は、式IA:


によって示すことができる。」
(4c)(9頁19?24行)
「特異的異性体(CI-981)は、同時係属中の米国特許出願07/660,976に記載されている。
しかしながら、これらの化合物は、これらの化合物が熱、湿気、低pH環境および光に感受性であるという点において不安定である。特に、酸性の環境において、ヒドロキシ酸は、ラクトンに変化(degrade)する。さらに、ヒドロキシ酸は、UVまたは蛍光光線にさらしたときに、急速に分解する。」
(4d)(10頁7?24行)
「したがって、本発明は、高コレステロール血症または高脂質血症を経口的に治療するための、少なくとも1種の医薬的に許容し得る安定化添加剤と合した活性成分としての7‐置換ピロリル‐3,5‐ジヒドロキシ‐ヘプタン酸塩の改善された安定性により特徴づけられる医薬製剤を提供する。
本発明の一見地は、活性成分として、少なくとも1種の医薬的に許容し得る金属塩添加剤と合することにより安定化された上記式IによるHMG-CoAレダクターゼ酵素阻害剤を含有する高コレステロール血症または高脂質血症を治療するための安定な経口用医薬製剤を提供することである。
本発明の他の見地は、活性成分として、少なくとも1種の医薬的に許容し得るアルカリ土類金属塩、例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウムまたは水酸化マグネシウムアルミニウムと合することにより安定化されたHMG-CoAレダクターゼ阻害剤、例えばCI-981 半‐カルシウムまたは提案された異性体構造式IAを有するそのエナンチオマー〔R(R^(*),R^(*))〕‐2‐(4‐フルオロフェニル)‐β,δ‐ジヒドロキシ‐5‐(1‐メチルエチル)‐3‐フェニル‐4‐〔(フェニルアミノ)カルボニル〕‐1H‐ピロール‐1‐ヘプタン酸 半‐カルシウム塩を含有する高コレステロール血症または高脂質血症を治療するための安定な経口用医薬製剤を提案することである。」

5-4-2.甲第4号証に記載された発明
甲4の記載事項(4a)の請求項1、2、5、8によれば、甲4には、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「混合物中に、活性成分として構造式


の化合物および少なくとも1種の医薬的に許容し得る安定化金属塩添加剤を含有する改善された安定性によって特徴づけられる高コレステロール血症または高脂質血症の経口治療用の医薬組成物であって、
活性成分が式(IA):


のCI-981 半‐カルシウムでありそして医薬的に許容し得る安定化添加剤が炭酸カルシウムである、
安定な医薬組成物。」

5-4-3.甲4発明との対比・判断
(1) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲4発明は、以下の点で相違している。

相違点6
本件訂正発明1は、「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」を有効成分とするものであるのに対し、甲4発明は、「式(IA):のCI-981 半‐カルシウム」(化学構造式の記載を省略する。以下、同様。)である点。

相違点6について
甲4には活性成分として、構造式(I)(化学構造式とその説明の記載を省略する。以下、同様。)で表される化合物が記載されている(甲4の記載事項(4a)及び同記載事項(4b))ところ、その中で「もっとも好ましい化合物」として、甲4発明の「式(IA):のCI-981 半‐カルシウム」が記載されている。一方、構造式(I)で表される化合物以外の活性成分については、記載も示唆もない。
また、甲2及び甲3のいずれにも「式(IA):のCI-981 半‐カルシウム」についての記載はなく、当業者は、「式(IA):のCI-981 半‐カルシウム」よりも本件訂正発明1における「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」が、甲4発明の活性成分としてふさわしい、安定性を改善すべき特性を有するとは理解し得ない。
してみると、当業者は、甲4発明並びに甲2及び甲3の記載を参酌しても、活性成分として「式(IA):のCI-981 半‐カルシウム」に代えて本件訂正発明1における「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」を用いることを容易に想到し得ない。
したがって、本件訂正発明1は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明3、4、7?18について
本件訂正発明3、4、7?18は、本件訂正発明1を更に限定したものであるところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明3、4、7?18も、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3) 第2群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明19?21について
本件訂正発明19?21は、本件訂正発明1を更に限定するとともに、そのカテゴリーを、物の発明(医薬組成物の発明)から、使用の発明(無機塩の使用の発明)に変更したものであるところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明19?21も、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 第3群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明24?26について
本件訂正発明24?26は、本件訂正発明1を更に限定するとともに、そのカテゴリーを、物の発明(医薬組成物の発明)から、製造方法の発明(医薬組成物の製造方法の発明)に変更したものであるところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明24?26も、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5) 第4群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明2、29、31?41について
本件訂正発明2、29、31?41は、本件訂正発明1を更に限定したものであるところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明2、29、31?41も、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6) 第5群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明42?48について
本件訂正発明42?48は、本件訂正発明1を更に限定したものであるところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明42?48も、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5-4-4.無効理由1-2についてのむすび
上記5-4-3.に説示したとおり、本件訂正発明1?4、7?21、24?26、29、31?41、42?48は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの発明に係る特許は、無効理由1-2によって無効にすべきものであるとはいえない。


5-5.無効理由1-3について
5-5-1.甲号証の記載
甲第5号証の記載事項
甲5には以下の事項が記載されている。
(5a)(特許請求の範囲)
「1.安定性を増大した医薬組成物であって、低pH環境に対して変質し易い薬物、1種以上の増量剤、1種以上の結合剤、1種以上の崩壊剤、1種以上の滑剤および当該医薬組成物の水性分散液に9以上のpHを付与する1種以上の塩基性化剤から成ることを特徴とする安定性良好な医薬組成物。
2.薬物の配合量が組成物全量中約1?60重量%である請求項第1項記載の医薬組成物。
3.薬物がプラバスタチンである請求項第1項記載の医薬組成物。
4.塩基性化剤の配合量が組成物全量中約1?75重量%である請求項第1項記載の医薬組成物。
5.塩基性化剤が、水酸化アルカリ金属、酸化もしくは水酸化アルカリ土類金属または水酸化アンモニウムである請求項第1項記載の医薬組成物。
6.塩基性化剤が、MgO、Mg(OH)_(2)、Ca(OH)_(2)、NaOH、KOH、LiOH、NH_(4)OH、Al(OH)_(3)またはマガルドレートである請求項第5項記載の医薬組成物。」
(5b)(2頁左上欄17行?右上欄18行)
「産業上の利用分野
本発明は安定性良好な医薬組成物、更に詳しくは、低pH環境に対して変質し易い薬物、たとえばプラバスタチン(pravastatin)を含有するが、優れた安定性を有する、好ましくは錠剤形状の医薬組成物に関する。
従来技術と発明の解決しようとする課題
酸性環境で不安定な薬物を含有する医薬組成物は、貯蔵安定性を増大するため塩基性賦形剤を必要とする。
テラハラらのU.S.特許第4346227号に開示のHMG-CoAレダクターゼ抑制剤である、式:


のプラバスタチンは、低pH環境に対して変質し易く、分解してそのラクトンおよび各種異性体を形成する。」
(5c)(2頁左下欄15?19行)
「本発明は特に、薬物としてプラバスタチンを含有する医薬組成物に適合する。プラバスタチンの配合量は、組成物全量中約1?60%(重量%、以下同様)、好ましくは約3?50%の範囲で選定する。」

甲第6号証の記載事項
甲6には以下の事項が記載されている。
なお、甲6は、英文の文献であるので、当審による訳文を示す。
(6a)(808頁左欄「PRABACHOLR」(当審注:末尾の「R」は、○で囲まれている。)の項)
「プラバコール(プラバスタチンナトリウム)は、脂質を低下する新しいクラスの化合物の一つであり、コレステロールの生合成を低減するHMG-CoA還元酵素阻害剤である。
(中略)
プラバコールは、10mg、20mg、40mgの経口投与用の錠剤である。不活性添加剤としてクロスカルメロースナトリウム、ラクトース、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、ポピビドンを含有する。」

5-5-2.甲第5号証に記載された発明
甲5の記載事項(5a)の請求項1、5、6によれば、甲5には、以下の発明が記載されているものと認められる。

「安定性を増大した医薬組成物であって、低pH環境に対して変質し易い薬物、1種以上の増量剤、1種以上の結合剤、1種以上の崩壊剤、1種以上の滑剤および当該医薬組成物の水性分散液に9以上のpHを付与する1種以上の塩基性化剤から成る安定性良好な医薬組成物であって、
塩基性化剤が、MgO、Mg(OH)_(2)、Ca(OH)_(2)、NaOH、KOH、LiOH、NH_(4)OH、Al(OH)_(3)またはマガルドレートである、
医薬組成物。」

また、上記発明において、「塩基性化剤が、MgOである」場合の発明(以下、「甲5発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「安定性を増大した医薬組成物であって、低pH環境に対して変質し易い薬物、1種以上の増量剤、1種以上の結合剤、1種以上の崩壊剤、1種以上の滑剤および当該医薬組成物の水性分散液に9以上のpHを付与する1種以上の塩基性化剤から成る安定性良好な医薬組成物であって、
塩基性化剤が、MgOである、
医薬組成物。」

5-5-3.甲5発明との対比・判断
(1) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲5発明は、以下の点で相違している。

相違点7
本件訂正発明1は、「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」を有効成分とするものであるのに対し、甲5発明は、「低pH環境に対して変質し易い薬物」である点。

相違点7について
甲5には「低pH環境に対して変質し易い薬物」として、プラバスタチンが例示されている(甲5の記載事項(5b)及び同記載事項(5c))が、プラバスタチン以外の化合物については例示も示唆もされていない。
そうすると、甲5の「低pH環境に対して変質し易い薬物」との一般的な表現は、プラバスタチン以外の化合物が包含されうるとしても、実質的にはプラバスタチン以外の化合物が記載も示唆もされていないから、甲5には、甲5発明の「低pH環境に対して変質し易い薬物」としてプラバスタチン以外の化合物は開示されていない。
また、甲6には、本件訂正発明1における「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」についての記載はなく、甲2、甲3及び甲6のいずれにも、「低pH環境に対して変質し易い薬物」についての記載はなく、当業者は、プラバスタチンよりも本件訂正発明1における「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」が甲5発明の薬物としてふさわしい、変質し易い特性を有するとは理解し得ない。
してみると、当業者は、甲5発明並びに甲2、甲3、及び、甲6の記載を参酌しても、甲5発明において、「低pH環境に対して変質し易い薬物」に代えて本件訂正発明1における「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」を用いることを容易に想到し得ない。
したがって、本件訂正発明1は、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明3、4、7?18について
本件訂正発明3、4、7?18は、本件訂正発明1を更に限定したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明3、4、7?18も、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3) 第2群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明19?21について
本件訂正発明19?21は、本件訂正発明1を更に限定するとともに、そのカテゴリーを、物の発明(医薬組成物の発明)から、使用の発明(無機塩の使用の発明)に変更したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明19?21も、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 第3群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明24?26について
本件訂正発明24?26は、本件訂正発明1を更に限定するとともに、そのカテゴリーを、物の発明(医薬組成物の発明)から、製造方法の発明(医薬組成物の製造方法の発明)に変更したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明24?26も、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5) 第4群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明2、29、31?41について
本件訂正発明2、29、31?41は、本件訂正発明1を更に限定したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明2、29、31?41も、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6) 第5群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明42?48について
本件訂正発明42?48は、本件訂正発明1を更に限定したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明42?48も、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5-5-4.無効理由1-3についてのむすび
上記5-5-3.に説示したとおり、本件訂正発明1?4、7?21、24?26、29、31?41、42?48は、甲5発明並びに甲6及び甲2及び/又は甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの発明に係る特許は、無効理由1-3によって無効にすべきものであるとはいえない。


5-6.無効理由1-4について
5-6-1.甲号証の記載
甲第7号証の記載事項
甲7には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審による。
(7a)(特許請求の範囲)
「1.一般式


式中、R^(1)はシクロアルキルを表わすか、或いは
アルキルを表わし、該基はハロゲン、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルホニル、アルコキシカルボニルもしくはアシルで、または式-NR^(4)R^(5)、但し、R^(4)及びR^(5)は同一もしくは相異なるものであり、アルキル、アリール、アラルキル、アシル、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニルを表わす、
の基で、またはカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、スルファモイル、ジアルキルスルファモイル、ヘテロアリール、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールスルホニル、アラルコキシ、アラルキルチオもしくはアラルキルスルホニルで置換されていてもよく、最後に述べた置換基のヘテロアリール及びアリール基はハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオまたはアルキルスルホニルからなる同一もしくは相異なる置換基で一置換、二置換または三置換されていてもよく、
R^(2)はヘテロアリールを表わし、該基はハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールスルホニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオもしくはアルコキシカルボニルまたは式-NR^(4)R^(5)、但し、
R^(4)及びR^(5)は上記の意味を有する、
の基からなる同一もしくは相異なる基で一置換、二置換または三置換されていてもよく或いはR^(2)はアリールを表わし、該基はアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールスルホニル、アラルキル、アラルコキシ、アラルキルチオ、アラルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、アルコキシカルボニル、スルファモイル、ジアルキルスルファモイル、カルバモイルもしくはジアルキルカルバモイル、または式
-NR^(4)R^(5)、但し、
R^(4)及びR^(5)は上記の意味を有する、
の基からなる同一もしくは相異なる基で一置換乃至五置換されていてもよく、
R^(3)は水素を表わすか、
シクロアルキルを表わすか、
アルキルを表わし、該基はハロゲン、シアノ、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメチルスルホニル、アルコキシカルボニルもしくはアシルで、或いは式-NR^(4)R^(5)、但し、R^(4)及びR^(5)は上記の意味を有する、
の基で、またはカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、スルファモイル、ジアルキルスルファモイル、ヘテロアリール、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールスルホニル、アラルコキシ、アラルキルチオもしくはアラルキルスルホニルで置換されていてもよく、最後に述べた置換基のヘテロアリール及びアリール基はハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオまたはアルキルスルホニルからなる同一もしくは相異なる基で一置換、二置換または三置換されていてもよく、または
R^(3)はヘテロアリールを表わし、該基はハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールスルホニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオもしはアルコキシで、または式-NR^(4)R^(5)、但し、
R^(4)及びR^(5)は上記の意味を有する、
の基からなる同一もしくは相異なる基で一置換、二置換または三置換されていてもよく、或いはR^(3)はアリールを表わし、該基はアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルスルホニル、アリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールスルホニル、アラルキル、アラルコキシ、アラルキルチオ、アラルキルスルホニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロメチルチオ、アルコキシカルボニル、スルファモイル、ジアルキルスルファモイル、カルバモイルもしくはジアルキルカルボニルで、または式
-NR^(4)R^(5)、但し、
R^(4)及びR^(5)は上記の意味を有する、
の基からなる同一もしくは相異なる基で一置換乃至五置換されていてもよく、或いは
R^(3)はアルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アルキルチオ、アリールチオもしくはアラルキルチオを表わすか、または式-NR^(4)R^(5)、但し、
R^(4)及びR^(5)は上記の意味を有する、
の基を表わし、
Xは式-CH_(2)-CH_(2)-または-CH=CH-の基を表わし、そして
Aは式


の基を表わし、ここに、
R^(6)は水素またはアルキルを表わし、そしてR^(7)は水素を表わすか、
メチル、アラルキルまたはアリール基を表わすか、或いはカチオンを表わす、
の置換されたピリミジン」
(7b)(4頁右下欄9-20行)
「本発明は置換されたピリミジン、その製造に対する中間体、その製造及び薬剤としてのその用途に関する。
菌・カビ培養物(fungal culture)から単離したラクトン誘導体は3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル補酵素A還元酵素(HMG-CoA還元酵素)の阻害剤であることが開示されている[メビノリン(mevinolin) 、ヨーロッパ特許第22.478号;米国特許第4.231.938号]。更に、またあるインドール誘導体またはピラゾール誘導体はHMG-CoA還元酵素の阻害剤として開示されている[ヨーロッパ特許出願公開第1]」
(7c)(6頁左下欄2-5行)
「驚くべきことに、本発明における置換されたピリミジンはHMG-CoA還元酵素(3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル補酵素A還元酵素)において良好な阻害作用を示す。」
(7d)(11頁右下欄11-20行)
「本発明における一般式(I)の置換されたピリミジンは数個の不斉炭素原子を有し、従って、種々な立体化学的型で存在することができる。本発明は個々の異性体及びその混合物の双方に関する。
基Xまたは基Aの意味に応じて、異なる立体異性体を生じ、これを次に更に詳細に説明する:
a)基-X-が式-CH=CH-の基を表わす場合、本発明における化合物は二重結合においてE立体配置(II)またはZ立体配置(III)を有し得る2種の立体異性体型で存在することができる:」

5-6-2.甲第7号証に記載された発明
甲7には、「一般式(I)(式の説明の記載を省略。以下、同様。)の置換されたピリミジン」(甲7の記載事項(7a))について、薬剤とすること(甲7の記載事項(7b))、HMG-CoA還元酵素において良好な阻害作用を示すこと(甲7の記載事項(7c))が記載されているので、以下の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。

「一般式(I)の置換されたピリミジンを含む薬剤であって、HMG-CoA還元酵素において良好な阻害作用を示す薬剤。」

5-6-3.甲7発明との対比・判断
(1) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明1について
甲7発明の「一般式(I)の置換されたピリミジン」は、
R^(1)の選択肢としてアルキルを含み、
R^(2)の選択肢としてハロゲンで一置換されていてもよいアリールを含み、
R^(3)の選択肢として式-NR^(4)R^(5)を含み、
R^(4)及びR^(5)は、同一もしくは相異なるものであって、その選択肢としてアルキル及びアルキルスルホニルを含み、
Xの選択肢として-CH=CH-の基を含み、
Aの選択肢として-CH(OH)CH_(2)CR^(6)(OH)CH_(2)-COOR^(7)を含み、
R^(6)、及び、R^(7)の選択肢として水素を含むものである。
これらの選択肢(以下、「特定の選択肢」という。)をいずれも選択し、かつ、
R^(1)の選択肢であるアルキルをイソプロピル基に限定し、
R^(2)の選択肢であるハロゲンで一置換されていてもよいアリールをp-フルオロフェニル基に限定し、
R^(3)の選択肢である-NR^(4)R^(5)を-NCH_(3)SO_(2)CH_(3)に限定し、
Aの選択肢を-CH(OH)CH_(2)CH(OH)CH_(2)-COOHに限定(以下、「さらなる限定」という。)した場合の化合物は、本件訂正発明1の「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸」に相当する。

そうすると、本件訂正発明1と甲7発明は、「有効成分を含有する医薬組成物。」である点で一致しており、以下の点で相違している。

相違点8
「一般式(I)の置換されたピリミジンに包含される化合物」が、本件訂正発明1では、「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」に限定されているのに対し、甲7発明は、そのような限定を有さない点。

相違点9
本件訂正発明1の「医薬組成物」は、「カチオンが多価である無機塩を含有する医薬組成物、ただしその際、(i)無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく、かつ (ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない」を含むものに限定されているのに対し、甲7発明は、そのような限定を有していない点。

相違点8、9について
甲7には膨大な数の化合物を包含する「一般式(I)の置換されたピリミジン」の中から、本件訂正発明1の「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」を選択することについて、記載も示唆もない。
また、甲7には、甲7発明の薬剤について、補助剤として「カオリン、白陶土」や、添加物として「炭酸カルシウム及びリン酸二カルシウム」を含ませることができる旨記載されているが、その他の補助剤や添加物と共に例示されているに過ぎず、これらの補助剤や添加物を含有させることの利点等、当業者にとって含有させる動機付けとなるような記載はない。
また、甲1?3のいずれにも本件訂正発明1の「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」と「カチオンが多価である無機塩」を組み合わせるものとすることについての記載はない。してみると、当業者は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項を参酌しても、甲7発明において本件訂正発明1の「(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩」を選択し、かつ、「カチオンが多価である無機塩」を含有するものとすることを容易に想到し得ない。

したがって、本件訂正発明1は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 第1群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明3、4、7?18について
本件訂正発明3、4、7?18は、本件訂正発明1を更に限定したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明3、4、7?18も、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3) 第2群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明19?21について
本件訂正発明19?21は、本件訂正発明1を更に限定するとともに、そのカテゴリーを、物の発明(医薬組成物の発明)から、使用の発明(無機塩の使用の発明)に変更したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明19?21も、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 第3群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明24?26について
本件訂正発明24?26は、本件訂正発明1を更に限定するとともに、そのカテゴリーを、物の発明(医薬組成物の発明)から、製造方法の発明(医薬組成物の製造方法の発明)に変更したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明24?26も、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5) 第4群の本件訂正発明(本件訂正発明2、29、31?41)について
本件訂正発明2、29、31?41は、本件訂正発明1を更に限定したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明2、29、31?41も、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6) 第5群の本件訂正発明のうち、本件訂正発明42?48について
本件訂正発明42?48は、本件訂正発明1を更に限定したものに該当するところ、上記(1)に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明42?48も、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5-6-4.無効理由1-4についてのむすび
上記5-6-3.に説示したとおり、本件訂正発明1?4、7?21、24?26、29、31?41、42?48は、甲7発明並びに甲2及び/又は甲3と甲1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの発明に係る特許は、無効理由1-4によって無効にすべきものであるとはいえない。


第6 むすび
上記第5に述べたとおり、本件訂正発明1、7?19、24?26に係る特許は、「第5 5-3.無効理由1-1について」、に説示したとおり、無効理由1-1によって無効にすべきものであり、
本件訂正発明1?48に係る特許は、「第5 5-1.無効理由2((a-1)?(b-4))について」、に説示したとおり、無効理由2(a-1)によって無効にすべきものであり、
本件訂正発明1、3?19、21?24、26?28、42、48に係る特許は、「第5 5-1.無効理由2((a-1)?(b-4))について」、に説示したとおり、無効理由2(a-2)によって無効にすべきものであり、
本件訂正発明1、4、5、7?18に係る特許は、「第5 5-1.無効理由2((a-1)?(b-4))について」、に説示したとおり、無効理由2(a-3)によって無効にすべきものであり、
本件訂正発明1?3、7?20、24?25、31?48に係る特許は、「第5 5-1.無効理由2((a-1)?(b-4))について」、に説示したとおり、無効理由2(a-4)によって無効にすべきものである。
また、本件訂正発明19?28に係る特許は、「第5 5-1.無効理由2((a-1)?(b-4))について」、に説示したとおり、無効理由2(b-1)によって無効にすべきものである。


そして、審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としての(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩およびカチオンが多価である無機塩を含有する医薬組成物、ただしその際、
(i)無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく、かつ
(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。
【請求項2】
有効成分としての(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩およびカチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物であって、該無機塩のカチオンが多価のカルシウムのみであり、ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではない該医薬組成物。
【請求項3】
無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択されている、請求項1記載の医薬組成物(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)。
【請求項4】
無機塩が、カチオンが多価である無機塩のみからなり、無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項1または3記載の医薬組成物。
【請求項5】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項1、3および4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
無機塩がメタケイ酸マグネシウムアルミニウムである、請求項1または3から5までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
錠剤または粉末である、請求項1または3から6までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
有効成分が5mgより多く存在している、請求項1または3から7までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
有効成分が10mgより多く存在している、請求項1または3から8までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲である、請求項1または3から9までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
付加的に1種以上の賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤を含有している、請求項1または3から10までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
有効成分が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項1または3から11までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
無機塩が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項1または3から12までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項14】
賦形剤が組成物の30?90質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項15】
結合剤が組成物の2?90質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項16】
崩壊剤が組成物の2?10質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項17】
滑沢剤が0.5?3質量%の量で存在している、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項18】
有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩である、請求項1または3から17までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項19】
化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を安定させるための、カチオンが多価である無機塩の使用であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩の使用、ただしその際、
(i)無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく、かつ
(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。
【請求項20】
無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている、請求項19記載の使用(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)。
【請求項21】
無機塩が、カチオンが多価である無機塩のみからなり、無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項19または20記載の使用。
【請求項22】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項19から21までのいずれか1項記載の使用。
【請求項23】
カチオンが多価である無機塩が、メタケイ酸マグネシウムアルミニウムである、請求項19記載の使用。
【請求項24】
カチオンが多価である無機塩であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択される無機塩を、化合物(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩を含有する医薬組成物に組み込むことを含む、安定化された医薬組成物の製造方法、ただしその際、
(i)無機塩はヒドロタルサイトまたは合成ヒドロタルサイトではなく、かつ
(ii)無機塩のアニオンはリン酸塩ではない。
【請求項25】
無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択されている、請求項24記載の方法。
【請求項26】
無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項24または25記載の方法。
【請求項28】
カチオンが多価である無機塩が、メタケイ酸マグネシウムアルミニウムである、請求項24記載の方法。
【請求項29】
無機塩のアニオンが炭酸塩イオン、ケイ酸塩イオン、酸化物イオンおよびメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項30】
無機塩のアニオンがケイ酸塩イオン、酸化物イオンまたはメタケイ酸塩イオンから選択されている、請求項2または29記載の医薬組成物。
【請求項31】
有効成分が5mgより多く存在している、請求項2、29および30のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項32】
有効成分が10mgより多く存在している、請求項2および29から31までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項33】
無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲である、請求項29から32までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項34】
付加的に1種以上の賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤を含有している、請求項29から33までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項35】
有効成分が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項2および29から34までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項36】
無機塩が組成物の1?50質量%の量で存在している、請求項2および29から35までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項37】
賦形剤が組成物の30?90質量%の量で存在している、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項38】
結合剤が組成物の2?90質量%の量で存在している、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項39】
崩壊剤が組成物の2?10質量%の量で存在している、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項40】
滑沢剤が0.5?3質量%の量で存在している、請求項34記載の医薬組成物。
【請求項41】
有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩である、請求項2および29から40までのいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項42】
有効成分としての(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸または薬学的に認容性のその塩およびカチオンが多価である無機塩を含有する錠剤である医薬組成物であって、該無機塩のカチオンがカルシウム、マグネシム、亜鉛、アルミニウムおよび鉄またはこれらの混合物から選択され、
ただしその際、無機塩のアニオンはリン酸塩ではなく、
無機塩対有効成分の質量比が1:80?50:1の範囲であり、そして
無機塩が、該組物の水溶液又は水性分散液に少なくとも8のpHを付与する、該医薬組成物(ただし、無機塩として、カチオンが多価である無機塩とともに炭酸ナトリウム又は炭酸水素ナトリウムが用いられる場合を除く。)。
【請求項43】
付加的に1種以上の賦形剤、結合剤、崩壊剤または滑沢剤を含有しており、該無機塩のカチオンがカルシウムおよびマグネシウムまたはこれらの混合物から選択される、請求項42記載の医薬組成物。
【請求項44】
賦形剤が組成物の30?90質量%の量で存在しており、該無機塩のカチオンがカルシウムである、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項45】
結合剤が組成物の2?90質量%の量で存在している、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項46】
崩壊剤が組成物の2?10質量%の量で存在している、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項47】
滑沢剤が0.5?3質量%の量で存在している、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項48】
有効成分が、(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸のカルシウム塩であり、そして無機塩が組成物の5?18質量%の量で存在している、請求項42から47までのいずれか1項記載の医薬組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-07-27 
結審通知日 2017-08-01 
審決日 2017-08-21 
出願番号 特願2000-237576(P2000-237576)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (A61K)
P 1 113・ 537- ZAA (A61K)
P 1 113・ 536- ZAA (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀬下 浩一  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 蔵野 雅昭
穴吹 智子
登録日 2011-08-12 
登録番号 特許第4800467号(P4800467)
発明の名称 医薬組成物  
復代理人 神田 雄  
代理人 市川 さつき  
復代理人 志村 将  
代理人 寺地 拓己  
代理人 浅井 賢治  
代理人 中濱 明子  
代理人 山崎 一夫  
復代理人 末吉 剛  
代理人 服部 博信  
代理人 寺地 拓己  
復代理人 末吉 剛  
代理人 中濱 明子  
復代理人 神田 雄  
代理人 箱田 篤  
  • この表をプリントする
事前申し込み無料!情報収集目的の方もぜひいらしてください!
すごい知財サービス EXPO 2021

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ