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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  B65D
審判 全部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1337265
審判番号 無効2016-800142  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-12-28 
確定日 2018-01-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3967542号発明「シリコーン組成物の保存方法および分包キット」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3967542号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〕、〔2、3〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る主な手続の経緯を以下に示す。
平成11年12月 1日 優先権基礎出願(特願平11-342298号)
平成12年11月24日 本件出願(特願2000-357336号)
平成19年 6月 8日 設定登録(特許第3967542号(以下、「本件特許」という。))
平成28年12月28日 審判請求
平成29年 3月27日 答弁書・訂正の請求
平成29年 4月13日 審理事項通知(1)
平成29年 5月19日 両者・口頭審理陳述要領書(1)
平成29年 5月25日 審理事項通知(2)
平成29年 6月16日 両者・口頭審理陳述要領書(2)
平成29年 6月21日 口頭審理審理事項メモ
平成29年 6月23日 請求人口頭審理陳述要領書(3)
平成29年 6月23日 第1回口頭審理
平成29年 7月14日 被請求人上申書
平成29年 7月28日 請求人上申書

以下、「審判請求書」を「請求書」と略記し、「口頭審理陳述要領書」を「要領書」と略記し、「甲第1号証」等を「甲1」等と略記する。

第2 当事者の主張
1.請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第3967542号の特許を無効とする。審判費用は被請求人らの負担とする」との審決を求めており、請求人の主張の概要、証拠方法は以下のとおりである。
(1)訂正の請求について
訂正前の特許請求の範囲において、減圧にされた封入体中に封入して保持する対象は、「各分包剤」である。そして、「分包剤」はシリコーン組成物であり、他の「分包剤」と混合することにより硬化可能な付加型反応で硬化するものである。つまり、個別の分包剤は、シリコーン組成物である(発明の詳細な説明によれば、ペースト状あるいは液状の組成物として調製される)。このようなシリコーン組成物を減圧にされた封入体中に封入して保持すると規定している。
これに対して、訂正の請求にかかる請求項1において、減圧にされた封入体中に封入して保持する対象は、各分包剤(すなわち、シリコーン組成物。ペースト状あるいは液状の組成物として調製される)を充填した容器である。
すなわち、訂正前において減圧にされた封入体中に封入して保持する対象が「シリコーン組成物」であったものを、シリコーン組成物を充填した「容器」に変更している。
これは、特許請求の範囲を実質的に変更するものであり、特許法134条の2第9項が準用する同法126条6項の規定に違反するものであるから、本件訂正の請求は不適法である。(請求人要領書(1)別紙2頁9行?末行)

(2)無効理由
ア.本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布された甲1に記載された発明と同一であるか、または、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し、または同条2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(請求書7頁7?12行)

イ.シリコーン組成物の相違に係る相違点1について
(ア)本件発明1は、各分包剤が容器に充填された硬化性シリコーン組成物の保存方法に関するものであり、当該容器が減圧された封入体に封入され保存することを特徴とするものである。したがって、付加型反応で硬化するのは、当該分包剤を混合した後のことであるから、当該硬化が常温下で行われるのか加熱下で行われるのかについては、保存方法とは直接関係する事項ではない。すなわち、本件発明1と甲1発明は、唯一、硬化反応をする組成物に添加される白金触媒抑制剤の有無という点において、相違しているにすぎない。そもそも、白金触媒抑制剤の添加は、混合されることにより開始する付加型反応の温度に関するものであって、本件発明1の特徴(課題及びその解決手段)とは無関係の事項である。よって、相違点1は、実質的な相違点ではない。(請求人要領書(1)別紙28頁15行?29頁5行)
(イ)また、甲2?6、甲17?21に記載された事項から、本件特許の優先日前に、付加型反応により常温で硬化する2液型のシリコーン組成物は当業者において技術常識又は周知技術であったことが認められ、これを甲1発明に適用することにより相違点1を本件発明1のものとすることは当業者に容易である。(請求人要領書(1)別紙7頁12行?24頁下から5行、29頁6行?30頁下から4行)
(ウ)甲1発明の多液型シリコーン組成物において白金触媒抑制剤を含有させる理由は、段落[0035]の「より長い作業時間又は可使時間が得られるように、適切な抑制剤の添加により周囲条件での触媒の活性を阻害又は抑制する。」との記載からすれば、硬化時間を管理するために行うものと思料されるが、だからといって、アンダフィルの際に白金触媒抑制剤を含有しなければ、硬化時間の管理ができなくなるわけではなく、また、シリコーン組成物が2液を混合させた後直ちに硬化して流動性を失うということでもない。甲21に開示された半導体の樹脂封止剤として用いられる付加型反応で常温硬化する2液型シリコーン組成物は、白金触媒抑制剤を含有しなくても、これらを混合して半導体樹脂封止に用いるための十分な流動性を備えたものであることが分かる。
半導体製造工程の封入剤に用いる付加型反応による常温で硬化する2液型シリコーン組成物において、白金触媒抑制剤などの付加型反応抑制剤を含有することは何ら必須ではないから、甲1発明の加熱硬化型シリコーン組成物を本件発明1の常温硬化型シリコーン組成物に置換することに阻害要因は全く存在しない。(請求人要領書(2)別紙12頁16行?22頁12行)
(エ)白金触媒抑制剤を含有しないで付加型反応により常温で硬化する2液型シリコーン組成物は、2液を混合する前後において、半導体の樹脂封入剤として十分な流動性を備えており、加熱硬化型の付加型反応により硬化するシリコーン組成物とともに、半導体の樹脂封止の封入剤として広く用いられるものであることが明らかである。
また、甲21?29に例示されるように、半導体製造の技術分野において、加熱することで付加型反応により硬化するシリコーン組成物及び常温で付加型反応により硬化するシリコーン組成物は、いずれも広く用いられるものであり(付加型反応により常温で硬化するシリコーン組成物を半導体の封入剤として用いることに何ら支障がないことも、甲21?29から明らかである)、その両者のいずれを選択するかは、当業者が適宜選択することができるものである。
すなわち、半導体製造の技術分野において、半導体樹脂封止の封入剤として、加熱硬化型を用いるのか、それとも常温硬化型を用いるのかは、単なる材料選択ないし設計事項の問題にすぎない。「実質的に空気を含まない減庄小分け可能」であって、「個々の液を各包装したものを混合して、70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するもの」であるシリコーン組成物を開示する甲1発明に接した当業者は、甲1発明を出発点として、通常の創作能力の発揮により、半導体樹脂封止の封入剤として慣用される技術常識又は周知慣用技術である「常温で硬化可能な、付加型反応で硬化する」シリコーン組成物に置換して本件発明に想到することは容易というべきである。(請求人要領書(2)別紙22頁末行?38頁7行)
(オ)また、工程数をできるかぎり省略して効率を上げることは、一般的な課題として常に存在するものであるところ、付加型反応で硬化するシリコーン組成物として常温硬化型を用いるか、それとも加熱硬化型を用いるかは、単なる設計事項ないし材料選択の問題にすぎない。
したがって、当業者であれば、工程数をできるかぎり省略して効率を上げるために、白金触媒抑制剤を混合する上記工程を省略して、付加型反応で硬化するシリコーン組成物として常温硬化型を用いることを動機付けられるといえるから、甲1発明を出発点として、加熱硬化型を常温硬化型に置換して本件発明に至ることは容易である。(請求人要領書(3)別紙4頁9?17行)
(カ)甲1の[0035]?[0039]の記載は、1液型シリコーン組成物に関する記載であって、多液型シリコーン組成物に関する記載ではないから、甲第1号証には、多液型シリコーン組成物について、白金触媒抑制剤が減圧小分け作業時の流動性を付与するための必須の成分とは記載されていない。多液型シリコーン組成物において、白金触媒抑制剤は必須の成分ではないから、白金触媒抑制剤を排除して加熱硬化型から常温硬化型へ換えることに、阻害要因はない。(請求人上申書別紙3頁5行?6頁9行)

ウ.保存する方法の相違に係る相違点2について
(ア)甲1の[0049]の記載は、本発明(甲1発明)の組成物は、空気及び湿気への暴露を防止するために密閉容器(sealed containers)内に貯蔵されるべきであり(必須)、その上で、さらにアルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグに貯蔵されるのが好ましいとして、密閉容器(必須)とアルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグ(好ましい)とによる包装を推奨している。
甲1発明の組成物を包含する甲1発明の組成物を対象とした[0049]の記載に沿った貯蔵方法が[0056]に例示されているのであるから、[0049]及び[0056]の記載に接した当業者であれば、甲1発明においても同様に、当該組成物を個々のポリエチレンシリンジに分けて閉じ込め、さらにアルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグに入れられることが例示されていると理解することができるから、甲1発明も、そのように認定されるべきである。(請求人要領書(1)別紙4頁14行?6頁23行)
(イ)仮に相違点2が存するとしても、甲1には、組成物をシリンジに充填した後、ポリエチレン/ポリエステルバッグ内に入れ、そのバッグを減圧下でヒートシールして冷蔵庫内で貯蔵する方法が記載されており([0056])、この貯蔵方法を、多液型組成物の個々の液のパッケージに適用することは容易である。(請求人要領書(1)別紙30頁末行?34頁10行)

(3)「分包キット」について
本件の「分包キット」は、「2以上の分包された分包剤が充填された容器を、減圧された封入体(袋体)中に封入したもの」であると解するべきではない。「2以上の分包された分包剤が充填された容器」と「封入体」を組み合わせた両者一体の物と理解することになると解されるが、かかる理解は、本件特許請求の範囲の記載を踏まえないものである。
本件特許請求の範囲の訂正後の請求項2は、「2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する該分包剤からなる分包キットであって、保存中は、各分包剤が容器中に充填されかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されていることを特徴とする、硬化性シリコーン組成物形成用分包キット。」とされており、「分包キット」という物(容器)の発明として記載されている。
この記載に照らせば、本件の「分包キット」とは、「2以上に分包された分包剤が充填された容器」であって、「保存中は、各分包剤が容器中に充填されかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されている」容器のことを意味すると解すべきであり 、「2以上の分包された分包剤が充填された容器」と「減圧にされた封入体(袋体)」を組み合わせてなる物を意味するものではない。(請求人要領書(3)別紙1頁下から9行?2頁6行)

(4)証拠方法
甲1:欧州特許出願公開第0955328号明細書
甲2:特開平6-157914号公報
甲3:特公平4-45538号公報
甲4:特開平10-226613号公報
甲5:特開平11-318946号公報
甲6:特開平10-121025号公報
甲7:米国特許第5848894号明細書
甲8:米国特許第5722829号明細書
甲9:特開平7-96977号公報
甲10:特開平7-313576号公報
甲11:特開平10-5333号公報
甲12:特開平8-229122号公報
甲13:特開平8-92005号公報
甲14:特開平6-190021号公報
甲15:特開平11-56969号公報
甲16:特開平11-128314号公報
甲17:特表平10-502352号公報
甲18:特開平5-140320号公報
甲19:特開平7-252466号公報
甲20:特開平6-256657号公報
甲21:特開平10-60282号公報
甲22:特開平9-111127号公報
甲23:特開平6-107947号公報
甲24:特開平7-72169号公報
甲25:特開平7-335790号公報
甲26:特開平8-97343号公報
甲27:特開平11-181289号公報
甲28:特開平11-317837号公報
甲29:特開平11-213868号公報
甲30:久保山俊史、「アンダーフィル材 概論」、日本ゴム協会誌、第84巻(2011)、第10号、313?320頁
甲31:「信越シリコーン 注目製品:室温付加硬化型RTVシリコーンゴム」のウェブページ(https://www.silicone.jp/products/notice/138/index2.shtml)の印刷物
甲32:特開平6-37213号公報

2.被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めており、被請求人の主張の概要、証拠方法は以下のとおりである。
(1)訂正の請求について
訂正前の請求項1では、「保存中は、各分包剤を減圧にされた封入体中に封入して保持する」と規定されており、「保存中は、各分包剤を容器中に充填しかつ該容器を減圧にされた封入体中に封入して保持する」と訂正した後も各分包剤が封入体中に存在することには何ら変更はない。つまり、訂正前の請求項1では各分包剤を封入体の中でどのように封入するかについて限定していなかったのを、訂正後は、各分包剤を「容器中に充填」した上で減圧にされた封入体中に封入するように、さらに封入状態を限定したにすぎないものであり、適法な訂正の請求である。(被請求人要領書(2)14頁8?15行)

(2)請求人の主張する無効理由について
ア.甲1に記載された多液型組成物の発明、及び、多液型組成物の貯蔵方法の発明は、以下のように認定されるべきである。
「2以上に分包された、周囲温度で組成物の硬化を抑制するのに十分な量の0.10MPaで150℃よりも高い沸点を有する白金触媒抑制剤を含む個々の液を混合及び加熱することにより硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する該個々の液を、いずれも実質的に空気を含まない状態で貯蔵した2以上のポリエチレン/ポリエステルバッグであって、貯蔵中は、該液が減圧下で該バッグ中に密閉されていることを特徴とする、半導体に対して減圧小分け可能な、アンダフィルに用いる加熱硬化性シリコーン組成物を貯蔵する2以上のポリエチレン/ポリエステルバッグ。」
「周囲温度で組成物の硬化を抑制するのに十分な量の0.10MPaで150℃よりも高い沸点を有する白金触媒抑制剤を含む、加熱することにより硬化可能な、付加型反応で硬化する、分包されていないシリコーン組成物を貯蔵する方法であって、貯蔵中は、該組成物が実質的に空気を含まない状態で1つのポリエチレンシリンジ中に密閉され、かつ、該シリンジを減圧にされた袋体であるポリエチレン/ポリエステルバッグ中に封入して保持することを特徴とする、半導体に対して減圧小分け可能な、アンダフィルに用いる加熱硬化性シリコーン組成物の貯蔵方法。」
(答弁書17頁下から11行?19頁下から3行)

イ.シリコーン組成物の相違に係る相違点1について
(ア)甲1発明の認定について、「周囲温度で組成物の硬化を抑制するのに十分な量の0.10MPaで150℃よりも高い沸点を有する白金触媒抑制剤を含む」との技術的事項は、甲1が開示する発明の技術的思想の本質をなす構成である。
すなわち、甲1には、同号証における加熱硬化型シリコーン組成物が、半導体(ないし半導体の基板)に対して減圧小分け可能なアンダフィルに用いられるべきものであること、減圧小分け作業中に流動性(低粘性)が要求されることが明瞭に記載されているところ、白金触媒抑制剤は、減圧小分け作業において組成物に流動性を付与するための必須の成分として添加されるべきことが明瞭に記載されている。(被請求人上申書3頁1行?下から2行)
(イ)甲1発明において白金触媒抑制剤は、甲1の対象とする発明の課題解決に不可欠なものである。すなわち、甲1には、従来技術の課題として、減圧小分け中にシリコーン組成物が多量の空気を放出してボイドが発生すること、このガス発生には組成物中の低沸点成分も寄与していることの二つが記載されており([0004]、[0005])、課題を解決する手段として、脱気工程を経て実質的に空気を含まない組成物とし、「0.10MPaで150℃よりも高い沸点を有する白金触媒抑制剤」を用いている。このように、甲1は、白金触媒抑制剤を含有する加熱硬化型シリコーン組成物が有する課題を解決する発明を開示しているのであって、白金触媒抑制剤はその課題解決に不可欠な必須成分であることが明瞭に述べられているのであるから、かかる記載は、すなわち、白金触媒抑制剤を排除して加熱硬化型から常温硬化型へ代えることを阻害する記載であるということができる。
また、成分Fが必要とされる理由を説明した以下に引用する[0035]及び[0036]の記載は、甲1に係る組成物が、常温でなく、高温で硬化すべきものであることを示しているから、[0035]及び[0036]は、特に、白金触媒抑制剤を排除して加熱硬化型から常温硬化型へ代えることを阻害する記載であるということができる。
さらに、[0037]及び[0038]の成分Fの効果に関する記載、すなわち、「これらの抑制剤を含む組成物は、実質的な速度で硬化するには概して70℃以上での加熱を必要とする」「・・・十分な保存安定性及び硬化速度が得られる」は、成分Fが、常温硬化ではなく、高温硬化型であることが必要であることを説明しているから、[0037]及び[0038]も、白金触媒抑制剤を排除して加熱硬化型から常温硬化型へ代えることを阻害する記載であるということができる。(被請求人上申書4頁3行?5頁7行)
(ウ)甲1発明は、白金触媒抑制剤を含有する加熱硬化型シリコーン組成物が有する課題を解決する発明であって、白金触媒抑制剤は甲1発明の課題解決に不可欠な必須成分であり、甲1に接した当業者が、工程数の削減を理由に、同成分を排除しようなどと想到しないこと、その意味で、同記載は、甲1に、加熱硬化型を常温硬化型に代えることを着想ないし示唆する記載には該らないことは、明らかである。(被請求人上申書5頁8行?下から6行)

ウ.保存する方法の相違に係る相違点2について
甲1記載の貯蔵方法によれば、1液型では貯蔵寿命が-20?-30℃の温度で数カ月になり、多液型では周囲温度で6か月以上貯蔵できることが記載されている。この貯蔵期間の違いは、1液型では、たとえ白金触媒抑制剤が含まれていたとしても1液中に混在する反応性成分が反応してしまう可能性があるため貯蔵期間が比較的短く、一方、多液型では反応性成分が反応しないように予め分包されているため、貯蔵期間が比較的長くなることに基づく。したがって、多液型は反応性が比較的低いため1液型よりも厳密な貯蔵方法(包装方法)を採用する必要はなく、当業者は、多液型組成物は【0049】に記載されたように個々の液をパッケージで密封すれば十分であると理解する。
また、多液型組成物を用いて減圧小分け作業をする場合には、複数の容器に分包されたシリコーン組成物を作業前に各容器から一旦取り出して混合する必要があるが、この時に各容器がさらに二重に包装されていると混合作業がさらに煩雑になってしまう。したがって、使用時の作業性、さらには包装コスト等の観点から、当業者が、個々の液をパッケージで密封すれば十分な多液型組成物を、[0056]に記載されたように二重に包装しようと動機付けられることはないというべきである。(被請求人要領書(1)10頁下から10行?11頁6行)

(3)「分包キット」について
本件の「分包キット」については、クレームの記載に基づけば、「2以上の分包された分包剤が充填された容器を、減圧された封入体(袋体)中に封入したもの」であると解してよい。(第1回口頭審理調書「被請求人」欄「2」)

(4)証拠方法
乙1の1:田畑晴夫、「エレクトロニクス実装における装着」、溶接学会誌、第79巻(2010)、第7号、34?39頁
乙1の2:尾形正次、「半導体用液状封止材の技術動向」、日立化成テクニカルレポート、No.39(2002.7)、7?12頁
乙1の3:「BGA・CSP実装用アンダーフィル剤」、スリーボンド・テクニカルニュース、平成12年7月1日発行、第55巻、1?8頁
乙2の1:実用真空技術総覧編集委員会編集、「実用真空技術総覧」、1990年11月26日初版、415?417頁
乙2の2:日本規格協会編集、「JIS工業用語大辞典【第4版】」、1995年11月20日第4版第1刷、2000?2001頁
乙3:三木洋二、「WFE薄膜蒸留装置の新適用分野の紹介」、神鋼パンテツク技報、Vol.34、No.2(1990/8)、17?21頁
乙4の1:長倉三郎他編集、「岩波理化学辞典 第5版」、株式会社岩波書店、2001年8月20日、第5版第5刷、1510頁
乙4の2:化学同人編集部編集、「新版 続・実験を安全に行うために」、2002年3月1日、新版第17刷、75?76頁
乙5:東レ・ダウコーニング株式会社パンフレット「LED照明用シリコーン」、2016年1月発行、20頁
乙6の1:特開平7-130794号公報
乙6の2:特開平9-172035号公報
乙6の3:特開平8-241900号公報

第3 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件特許に係る訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、「特許第3967542号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「2以上の分包された分包剤を混合することにより硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」とあるのを、
「2以上の分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「保存中は、各分包剤を減圧にされた封入体中に封入して保持する」とあるのを、
「保存中は、各分包剤を容器中に充填しかつ該容器を減圧にされた封入体中に封入して保持する」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「2以上の分包された分包剤を混合することにより硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」とあるのを、
「2以上の分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」に訂正する。
(請求項2を引用する請求項3についても、同様に訂正する。)

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1では、シリコーン樹脂について、常温あるいは高温で硬化可能なものなのか特定されていなかったものを、常温で硬化可能なものに限定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)には、以下のように記載されている。(なお、下線は当審で付したもの。以下同じ。)
「【0002】
【従来の技術】
シリコーン材料は優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、近年、電子機器、自動車、建築、医療、食品をはじめとする様々な分野で広く使用されている。このシリコーン材料の常温で硬化するものは、耐熱性塗料、接着剤、コーティング材、建築用シーリング材、歯科用シリコーンラバー印象材、歯科義歯用軟質裏装材等の材料に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、常温で硬化するシリコーン材料は、保存中に容器の隙間から徐々に空気を取り込み、ペーストあるいは溶液中に空気を溶解させやすい性質がある。一旦溶解した空気は硬化時に材料中に溶解することができず、結局のところ硬化体中に気泡として残ってしまう。そして、この気泡の入った硬化体は、材料自身の強度の低下、材料の表面が削れやすいことによる面荒れ、透明性の低下、気密性の低下等の様々な問題が生じる。硬化性のシリコーン材料にはこのような問題があることを、この材料について長年研究開発していく過程で我々は発見した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シリコーン組成物のための各成分の分包剤を減圧下で保存することにより硬化体中に気泡がきわめて少ないシリコーン組成物が得られること、並びに気泡が極めて少ない硬化体は強度の低下、面荒れ等々の低下を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
すなわち、常温で硬化するシリコーン材料には、保存中に容器の隙間から徐々に空気を取り込み、その空気は硬化体中に気泡として残ってしまい、材料自身の強度の低下等の問題が生じるという課題があり、本件特許に係る発明は、そのようなシリコーン材料について、シリコーン組成物のための各成分の分包剤を減圧下で保存することにより硬化体中に気泡がきわめて少ないシリコーン組成物が得られ、強度の低下等を防止できることを見出してなされたものである。
よって、「硬化可能な」シリコーン組成物を、「常温で硬化可能な」シリコーン組成物とする訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正前の請求項1では、「各分包剤」が「減圧にされた封入体中に封入して保持する」とのみ特定されていたものを、「各分包剤」が「容器中に充填」されて、封入体中に封入されることを限定するものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件特許明細書には、以下のように記載されている。
「【0033】
上記のようにして調製された各分包用組成物は、分包されたのち、好ましくは容器に充填される。本発明において、これらの分包された組成物は減圧下に保持される。容器に充填した後直ちに減圧にし、その後封入体中に保存してもよいし、容器に充填したのち一旦そのままの状態で維持し、必要に応じて減圧にした後、封入体中に保存してもよい。しかし、保存期間中はできるだけ減圧の状態に維持することが好ましい。減圧にして保存する封入体としては、例えば袋体、ビン、ケース等が挙げられる。封入体は減圧可能な構造になっていれば特に限定されない。」
「【0035】
分包された組成物を充填する容器としては、特に限定されず、例えばシリンジやチューブ等が挙げられる。シリンジとしては、(a)ベースポリマーと(b)架橋剤を基本成分とする組成物および(a)ベースポリマーと(c)硬化用触媒を基本成分とする組成物のそれぞれが、2本のシリンジが隣接して一体化されたカートリッジのそれぞれのシリンジに充填されるようにして用いられる該カートリッジが好ましい。」
「【0036】
減圧で保存する方法としては、代表的には、容器ごと封入体中に入れ、真空ポンプで減圧にした後、封入体を熱シールする方法、チャック式封入体を利用する方法;容器ごと封入体中に入れ、専用の密封包装機を用いて真空パックする方法;容器をミキスライダー(シーリングテープ)と逆止弁付きの圧縮袋に入れ、ミキスライダー(シーリングテープ)を綴じた後、吸引機で逆止弁から減圧にする方法;歯科医院にあるバキュームを用いて減圧にする方法等がある。」
これらの記載からみて、各分包剤は、容器中に充填した上で、減圧にされた封入体中に封入して保持されることは明らかであるから、「各分包剤を容器中に充填しかつ該容器を減圧にされた封入体中に封入して保持する」とする訂正事項2は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

なお、この訂正事項2について、請求人は、訂正前において減圧にされた封入体中に封入して保持する対象が「シリコーン組成物」であったものを、シリコーン組成物を充填した「容器」に変更するものであり、特許請求の範囲を実質的に変更するものである旨主張する。(前記「第2 1.(1)」)
しかし、訂正事項2の訂正によっても、封入体に封入されるのは「各分封剤」であることに変わりはなく、訂正事項2の訂正は、各分包剤を「容器中に充填」した上で減圧にされた封入体中に封入する旨、封入状態をさらに限定したにすぎないものであるから、特許請求の範囲を実質的に変更するものであるとはいえない。

(3)訂正事項3について
訂正前の請求項2では、シリコーン樹脂について、常温あるいは高温で硬化可能なものなのか特定されていなかったものを、常温で硬化可能なものに限定するものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、上記(1)で述べたように、「常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」とする訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであるから、訂正事項3も本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)一群の請求項について
上記訂正事項3に係る訂正は、一群の請求項である請求項2及び請求項3について請求されたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〕、〔2、3〕について訂正を認める。

第4 無効理由についての当審の判断
1.請求項1?3に係る発明
本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する該分包剤を保存する方法であって、保存中は、各分包剤を容器中に充填しかつ該容器を減圧にされた封入体中に封入して保持することを特徴とする保存方法。
【請求項2】 2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する該分包剤からなる分包キットであって、保存中は、各分包剤が容器中に充填されかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されていることを特徴とする、硬化性シリコーン組成物形成用分包キット。
【請求項3】 封入体が袋体である請求項2に記載の分包キット。」

2.甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(1)甲1の記載事項
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲1(欧州特許出願公開第0955328号明細書)には、以下の事項が記載されている。
ア.「[0001]Our invention provides vacuum dispensable silicone compositions that are substantially free of air, methods forthe preparation of such compositions and cured silicone compositions formed therefrom.」
(日本語訳。以下同じ。
「[0001]本発明は、実質的に空気を含まない減圧小分け可能なシリコーン組成物、そのような組成物の製造方法及びそのような組成物から形成される硬化したシリコーン組成物を提供する。」)

イ.「[0002]Silicones are widely used in the electrical andelectronics industries as a result of their unique properties. Silicones exhibit low alpha particle emissions,very good moisture resistance, excellent electricalinsulation, excellent thermal stability and very high ionicpurity. In particular, silicone encapsulants can improvethe reliability of an electronic device by providing aneffective barrier against environmental moisture, UV radiation, ozone and weathering.
[0003]Recent advances in semiconductor packaging, namelythe development of chip scale or chip size packages, havecreated a critical demand for high performance vacuumdispensable silicone encapsulants. In addition to thedesired properties of electronic grade silicone materials,such encapsulants must also be compatible with the newvacuum dispensing systems and possess the rheologicalproperties required for flow around and/or under the siliconchip or die.
[0004]・・・・Conventional silicone composition sevolve copious amounts of air during vacuum dispensing. Lowboiling components in the compositions, either initiallypresent or later formed during storage, also contribute togas evolution. The rapidly escaping gas bubbles causefoaming and splattering of the encapsulant, resulting incontamination of the exposed surface of the semiconductordevice. An additional cleaning step is then required toremove encapsulant from the contaminated die surface.Moreover, extensive gas evolution produces voids in theencapsulant layer, resulting in incomplete underfill of thedevice. Contamination and residual voids becomeincreasingly conspicuous as the complexity of the deviceincreases and its dimensions decrease. In the fabricationof chip scale or chip size semiconductor packages, these encapsulation problems result in increased costs and reduced component reliability.」
(「[0002]シリコーンはそれらの独特の特性に帰因して電子産業及びエレクトロニクス産業で広く使用されている。シリコーンは、低いα粒子放出性、非常に良好な耐湿性、優れた電気絶縁性、優れた熱安定性及び非常に高いイオン純度を示す。特にシリコーン封入剤は、環境湿度、紫外線、オゾン及び屋外暴露に対して有効なバリヤーを提供することによって電子装置の信頼度を向上させることができる。
[0003]半導体の実装、すなわちチップスケール又はチップサイズのパッケージにおける最近の進歩によって、高性能の減圧小分け可能なシリコーン封入剤に対する要求は厳しくなっている。電子装置用のシリコーン材料の望ましい特性に加えて、そのような封入剤は新しい減圧小分け装置に適合するものであるとともにシリコンチップ又はダイの周り及び/又は下を流れるのに必要な流動学的特性を有するものでなくてならない。
[0004]・・・・従来のシリコーン組成物は、減圧小分け中に多量の空気を放出する。最初から存在するか又は貯蔵時に後形成される組成物中の低沸点成分もガス発生に寄与する。急速に抜ける気泡は、封入剤の発泡及び飛散を引き起し、半導体デバイスの露出面の汚染をもたらす。従って、汚染されたダイ表面から封入剤を除去するために追加の清浄化工程が必要となる。さらに、甚だしいガス発生によって、封入剤層内にボイドが生じ、デバイスの不完全なアンダフィルがもたらされる。デバイスの複雑さがますほど及びデバイスの寸法が小さくなるほど、汚染及び残留ボイドはますます顕著になる。チップスケール又はチップサイズの半導体パッケージの製造において、これらの封入にかかわる問題は、コストの増大及び製品信頼度の低下をもたらす。」)

ウ.「[0005]Our invention provides a silicone composition which satisfies the need for a vacuum dispensable silicone encapsulant. We have discovered that the excessive outgassing characteristic of conventional addition-curablesilicone compositions during vacuum dispensing is due to thepresence of air and low molecular weight volatile componentsin the compositions. Moreover, we have overcome theoutgassing problem and its deleterious effects, including contamination and void formation.
[0006]Specifically, our invention is a siliconecomposition comprising:
(A) 100 parts by weight of a polydiorganosiloxane containing an average of at least two silicon-bonded alkenylgroups per molecule;
(B) 10 to 100 parts by weight of anorganopolysiloxane resin essentially consisting of (a)R^(3)_(2)(CH_(2)=CH)SiO_(1/2) siloxane units, (b) R^(3)_(3)SiO_(1/2) siloxaneunits, and (c) SiO_(4/2) siloxane units wherein each R^(3) isindependently selected from monovalent hydrocarbon ormonovalent halogenated hydrocarbon groups free of aliphatic unsaturation, the mole ratio of the combination of (a) and(b) units to (c) units is from 0.6:1 to 1.1:1 and the resincontains from 1 to 5 percent by weight of vinyl groups;
(C) an organohydrogenpolysiloxane having anaverage of at least three silicon-bonded hydrogen atoms permolecule in an amount sufficient to provide from one tothree silicon-bonded hydrogen atoms per alkenyl group incomponents (A) and (B) combined;
(D) an adhesion promoter in an amount sufficientto effect adhesion of the composition to a substrate;
(E) a hydrosilylation catalyst in an amount sufficient to provide from 0.1 to 1000 parts per million ofa platinum group metal based on the combined weight ofcomponents (A), (B) and (C); and
(F) a platinum catalyst inhibitor having a boilingpoint greater than 150 ℃at 0.10 MPa in an amountsufficient to retard curing of the composition at ambienttemperature; and wherein the composition comprising components (A) through (F) is substantially free of air.
[0007]・・・・
[0008]Our invention further provides a multi-partsilicone composition comprising components (A) through (F)specified above, wherein each part of the composition issubstantially free of air and with the proviso that neitherthe polydiorganosiloxane nor the organopolysiloxane resinare present with the organohydrogenpolysiloxane and thehydrosilylation catalyst in the same part.
[0009]Our invention also provides a method of preparingthe silicone composition, comprising the steps of mixingcomponents (A) through (F) delineated above and de-airingthe mixture to produce a composition substantially free ofair.」
(「[0005]本発明は、減圧小分け可能なシリコーン封入剤に対する要求を満足するシリコーン組成物を提供する。我々は、従来の付加硬化性シリコーン組成物の減圧小分け中の過剰なガス発生特性が、組成物中に空気及び低分子量揮発性成分が存在することに帰因することを見いだした。さらに、我々は、汚染及びボイド形成を含むガス発生にかかわる問題及びその有害な影響を解消した。
[0006]特に、本発明は、
(A)ケイ素に結合しているアルケニル基を分子当たり平均少なくとも2個含むポリジオルガノシロキサン、100重量部;
(B)(a)R^(3)_(2) (CH_(2) =CH)SiO_(1/2) シロキサン単位、(b)R^(3)_(3) SiO_(1/2) シロキサン単位及び(c)SiO_(4/2) シロキサン単位から実質的になるオルガノポリシロキサン樹脂であって、前記式中、各R3 は脂肪族不飽和を含まない1価炭化水素又は1価ハロゲン化炭化水素基から独立に選ばれ、前記(c)単位に対する前記(a)単位と前記(b)単位の合計のモル比が0.6:1?1.1:1であり、1?5重量%のビニル基を含む樹脂、10?100重量部;
(C)前記成分(A)及び(B)中のアルケニル基当たりケイ素に結合している水素原子を1?3個提供するのに十分な量の、ケイ素に結合している水素原子を分子当たり平均少なくとも3個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
(D)基板に対する組成物の接着をもたらすのに十分な量の接着促進剤;
(E)前記成分(A)、(B)及び(C)の合計重量を基準にして0.1?1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化触媒;並びに
(F)周囲温度で組成物の硬化を抑制するのに十分な量の、0.10MPaで150℃よりも高い沸点を有する白金触媒抑制剤;を含む。前記成分(A)?(F)を含むこの組成物は実質的に空気を含まない。
[0007]・・・・
[0008]本発明は、前記成分(A)?(F)を含む多液型シリコーン組成物であって、その組成物の各液が実質的に空気を含まず、前記ポリジオルガノシロキサンも前記オルガノポリシロキサン樹脂も前記オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び前記ヒドロシリル化触媒と同一の液の中に存在しないことを条件とするものも提供する。
[0009]本発明は、前記成分(A)?(F)を混合する工程及び混合物を脱気して実質的に空気を含まない組成物を生じさせる工程を含む前記シリコーン組成物の製造方法も提供する。」)

エ.「[0010]The compositions of our instant invention aresubstantially free of air and contain only components thatare nonvolatile under vacuum dispense conditions, which-istypically performed at a pressure of from 4,000 to 10,700Pa. Compared to conventional silicone compositions, oursilicone compositions exhibit extremely low outgassingduring vacuum dispensing. The compositions can be vacuumdispensed with negligible or no contamination of unexposeddie surfaces, which eliminates the need for an additional cleaning step in the fabrication of a chip scale package.Our silicone compositions produce uniform protective layers substantially free of voids. Moreover, the desiredadvantages of silicone materials for such applications are retained. ・・・・
[0011]Component (A) of the present invention is apolydiorganosiloxane containing an average of at least twosilicon-bonded alkenyl groups per molecule. Suitablealkenyl groups contain from 2 to 6 carbon atoms and areexemplified by, but not limited to vinyl, allyl and 6-hexenyl.The alkenyl groups in component (A) may be locatedat terminal, pendant, or both terminal and pendantpositions. The remaining silicon-bonded organic groups incomponent (A) are independently selected from monovalent hydrocarbon or monovalent halogenated hydrocarbon groupsfree of aliphatic unsaturation. ・・・・
[0021]Component (C) of the present invention is an organohydrogenpolysiloxane having an average of at leastthree silicon-bonded hydrogen atoms per molecule and anaverage of no more than one silicon-bonded hydrogen atom persilicon atom. The silicon-bonded hydrogen atoms can belocated at terminal, pendant, or at both terminal andpendant positions in the organohydrogenpolysiloxane.Component (C) is a homopolymer or a copolymer. Thestructure of the organohydrogenpolysiloxane can be linear,branched, or cyclic. The siloxane units present in component(C) may include HR^(4)_(2)SiO_(1/2), R^(4)_(3)SiO_(1/2) HR^(4)SiO_(2/2), R2^(4)_(2)SiO_(2/2),HSiO_(3/)2, R^(4)SiO_(3/2) and SiO_(4/2) units. ・・・・
[0033]Component (E) of our invention is ahydrosilylation catalyst comprising a platinum group metalor a compound containing such a metal that promotes theaddition reaction of components (A) and (B) with component(C). These metals include platinum, rhodium, ruthenium,palladium, osmium and iridium. Platinum and platinum compounds are preferred based on the high activity level ofthese catalysts in hydrosilylation reactions.・・・・」
(「[0010]本発明に係る組成物は実質的に空気を含まず、典型的には4,000?10,700Paの圧力で実施される減圧小分けの条件下で不揮発性である成分のみを含む。従来のシリコーン組成物と比較すると、本発明のシリコーン組成物は、減圧小分け中のガス発生性は極めて低い。この組成物は、露出していないダイ表面をほとんど又は全く汚染せずに減圧小分けできるものである。これによって、チップスケールパッケージの製造において余分な清浄化工程の必要がなくなる。本発明のシリコーン組成物は、実質的にボイドのない均一な保護層を生じる。さらに、そのような用途に対するシリコーン材料の望ましい利点は失われずに保たれる。・・・・
[0011]本発明の成分(A)は、ケイ素に結合しているアルケニル基を分子当たり平均少なくとも2個含むポリジオルガノシロキサンである。適切なアルケニル基は2?6個の炭素原子を含み、そのようなものとして限定するわけではないが例としてビニル、アリル及び6-ヘキセニルが挙げられる。成分(A)中のアルケニル基は、末端、鎖側部、又は末端と鎖側部の両方の位置に存在していてよい。成分(A)中の残りのケイ素に結合している有機基は、脂肪族不飽和を含まない1価炭化水素又は1価ハロゲン化炭化水素基から独立に選ばれる。・・・・
[0021]本発明の成分(C)は、ケイ素に結合している水素原子を分子当たり平均少なくとも3個有するとともに、ケイ素に結合している水素原子をケイ素原子当たり平均1個以下有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。ケイ素に結合している水素原子は、末端、鎖側部、又は末端と鎖側部の両方に位置することができる。成分(C)はホモポリマー又はコポリマーである。このオルガノハイドロジェンシロキサンの構造は線状、分枝状又は環状であることができる。成分(C)中に存在するシロキサン単位は、HR^(4)_( 2) SiO_(1/2 )単位、R^(4)_(3) SiO_(1/2) 単位、HR_(4) SiO_(2/2) 単位、R^(4)_(2) SiO_(2/2) 単位、HSiO_(3/2) 単位、R_(4)SiO_(3/2) 単位及びSiO_(4/2 )単位を含むことができる。・・・・
[0033]本発明の成分(E)は、白金族金属又はそのような金属を含む化合物であって、成分(A)及び(B)と成分(C)との付加反応を促進するものを含むヒドロシリル化触媒である。これらの金属には、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム及びイリジウムが包含される。ヒドロシリル化反応におけるそれらの高い活性度から、白金及び白金化合物が好ましい。・・・・」)

オ.「[0035]Mixtures of said components (A), (B), (C), (D) and(E) may begin to cure at ambient temperature. To obtain alonger working time or "pot life", the activity of thecatalyst under ambient conditions is retarded or suppressedby the addition of a suitable inhibitor.
[0036]Component (F) of the present invention is aplatinum catalyst inhibitor having a boiling point greaterthan 150℃. at 0.10 MPa. The platinum catalyst inhibitorretards curing of the present compositions at ambient temperature, but does not prevent the composition fromcuring at elevated temperatures. In order to be effective in this invention, component (E) must be soluble in the composition. ・・・・
[0037]Acetylenic alcohols constitute a preferred classof inhibitors and 2-phenyl-3-butyn-2-ol is a particularlypreferred inhibitor. Compositions containing these inhibitors generally require heating at 70℃. or above tocure at a practical rate.
[0038]The platinum catalyst inhibitor is added to thepresent compositions in an amount sufficient to retardcuring of the compositions at ambient temperature without preventing or excessively prolonging cure at elevated temperatures. This amount will vary widely depending on the particular inhibitor used, the nature and concentration ofthe hydrosilylation catalyst and the nature of the organohydrogenpolysiloxane.
[0039]・・・・」
(「[0035]前記成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の混合物は周囲温度で硬化し始める。より長い作業時間又は可使時間が得られるように、適切な抑制剤の添加により周囲条件での触媒の活性を阻害又は抑制する。
[0036]本発明の成分(F)は0.10MPaで150℃よりも高い沸点を有する白金触媒抑制剤である。この白金触媒抑制剤は、周囲温度での本発明の組成物の硬化を抑制するが、高温でのこの組成物の硬化を妨げない。本発明において効果的であるように、成分(E)は当該組成物に可溶でなくてはならない。・・・・
[0037]アセチレン系アルコールは好ましい種類の抑制剤を構成し、2-フェニル-3-ブチン-2-オールが特に好ましい抑制剤である。これらの抑制剤を含む組成物は、実際的な速度で硬化するには概して70℃以上での加熱を必要とする。
[0038]白金触媒抑制剤は、高温での硬化を妨げることなく又は過剰に引き延ばすことなく周囲温度での本発明の組成物の硬化を抑制するのに十分な量で、本発明の組成物に加えられる。その量は、使用される個々の抑制剤、ヒドロシリル化触媒の性質及び濃度並びにオルガノハイドロジェンポリシロキサンの性質に依存して広範囲にわたって変わる。
[0039]・・・・」)

カ.「[0044]The compositions of the instant invention aretypically prepared by combining components (A) through (F)and, optionally a filler, in the stated proportions and thende-airing the composition. Mixing is accomplished by any ofthe techniques known in the art such as milling, blending and stirring, either in a batch or continuous process. The particular device is determined by the viscosity of the components and the final composition. Preferably, the hydrosilylation catalyst is added last at a temperature below 30℃. to prevent premature curing of the composition and thus ensure adequate working time. Also, the components are preferably mixed under vacuum at a pressure of from3,400 to 16,900 Pa to minimize the inclusion of air in thecomposition.
[0045]Alternatively, the composition of the present invention is a multi-part composition comprising components(A) through (F) in two or more parts. The multi-partcomposition can contain any number of different parts containing different amounts of different ingredients,provided that neither the polydiorganosiloxane nor the organopolysiloxane resin are present with the organohydrogenpolysiloxane and hydrosilylation catalyst in thesame part. In a typical method for preparing such acomposition, a portion of the polydiorganosiloxane, aportion of the organopolysiloxane resin, the adhesionpromoter, the hydrosilylation catalyst and any filler oradditives are mixed together to produce Part A and theremaining portions of the polydiorganosiloxane and resin,organohydrogenpolysiloxane and platinum catalyst inhibitorare mixed together to produce part B. The individual parts of the multi-part composition are de-aired according to the method described below. Preferably, the components are packaged in such as manner that equal weight amounts of each package can be mixed to produce the compositions of this invention.
[0046]The one-part compositions and the individual parts of the multi-part composition must be thoroughly de-airedprior to use in a vacuum dispensing process. Preferably,de-airing is performed by passing the composition through afalling film evaporator at ambient temperature under apressure of less than 1333 Pa and preferably under apressure of 667 Pa. According to the preferred method, the composition passes through one or more slits in the headassembly into the vacuum chamber at a rate of 227 grams perminute. The slit forces the material into a thin ribbon having a high surface area and short diffusion path for airor other gases to escape. The ribbon falls through the vacuum chamber a distance of 0.6 m into a press pot. Afterall of the material has fallen into the pot, the vacuum is maintained for at least fifteen minutes to ensure thorough removal of air. Air is then slowly readmitted into the system and the material is pressed out of the pot into suitable containers. For the purposes of the present invention, a composition de-aired according to the preceding method, which is further delineated in Example 1, or by anyother method that produces an equivalent composition, istermed "substantially free of air". Different combinations of flow rate, pressure, vacuum chamber length and temperature than those recited above can be used to producethe compositions of the present invention. The precise set of conditions required to produce compositions substantially free of air, as defined supra, can be determined by routine experimentation. An airless mixing technique known in theart should be used to combine the de-aired parts of themulti-part composition.
[0047]It is important to note that the composition of our invention is de-aired prior to introduction into the vacuum dispensing equipment. The vacuum created in the vacuum dispenser alone is not of a sufficient nature to produce the compositions of the present invention. As usedherein, the term "de-airing" does not refer to removal ofair during vacuum dispensing.」
(「[0044]本発明の組成物は典型的には上記割合で成分(A)?(F)場合に応じて充填剤を組み合わせ、次いで脱気することによって製造される。混合は、練り、ブレンド及び攪拌のような当該技術分野で周知の技術のいずれかによって、回分式又は連続式で行われる。個々の装置は、成分及び最終組成物の粘度によって決定される。組成物の時期尚早の硬化を妨げ適切な作業時間が得られるように30℃未満の温度でヒドロシリル化触媒が最後に加えられることが好ましい。組成物中への空気の同伴が最低限に抑えられるように、圧力が3,400?16,900Paの減圧で成分を混合することも好ましい。
[0045]代わりに、本発明の組成物は、2つ以上の部分に成分(A)?(F)を含む多液型(multi-part)組成物である。多液型(multi-part)組成物は、それぞれ異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液(part)を複数含むことができる。ただし、ポリジオルガノシロキサンもオルガノポリシロキサン樹脂もオルガノハイドロジェンポリシロキサン及びヒドロシリル化触媒と一緒に同一の液(part)中に存在しないことを条件とする。そのような組成物を製造するための典型的な方法において、ポリジオルガノシロキサンの一部、オルガノシロキサン樹脂の一部、接着促進剤、ヒドロシリル化触媒及び任意の充填剤又は添加剤を混合してA液(Part A)を形成し、ポリジオルガノシロキサン及び樹脂の残りの部分、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒抑制剤を混合してB液(Part B)を形成する。多液型(multi-part)組成物の個々の液(part)は以下で説明する方法によって脱気される。等重量の各包装したものを混合すると本発明の組成物が生じるように成分が包装されることが好ましい。
[0046]1液型(one-part)組成物及び多液型(multi-part)組成物の個々の液は、減圧小分けプロセスでの使用前に完全に脱気されねばならない。圧力が1333Pa未満、好ましくは667Pa未満の周囲温度で流下膜式蒸発器(falling filmevaporator )に組成物を通すことにより脱気が行われることが好ましい。好ましい方法によると、組成物はヘッドアセンブリ内の1つ以上のスリットを通過して227g/分の割合で真空室内に入る。スリットによって、物質が強制的に大きな表面積と空気又は他の気体が逃げる短い拡散路とを有する薄いリボンになる。リボンは真空室を通って0.6mの距離を流下してプレスポット内に入る。全ての物質がポット内に流入した後、完全に空気が除去されるように少なくとも15分間真空を保つ。次に空気を前記系に徐々に再び入れ、適切な容器内に前記ポットを押し込む。本発明の目的に対し、前述の方法(実施例1においてさらに概説する)に従って又は同等の組成物を生じる任意の他の方法によって脱気された組成物を「実質的に空気を含まない」組成物と呼ぶ。先に列挙したもの以外の流量、圧力、減圧室の長さ及び温度の組み合わせを使用して本発明の組成物を製造できる。先に定義したような実質的に空気を含まない組成物を製造するのに必要な条件の正確な組は、慣例的な実験により決定できる。多液型組成物の脱気された液を組み合わせることに、当該技術分野で周知の無気混合技術が使用されるべきである。
[0047]本発明の組成物が減圧小分け装置に入れられる前に脱気されることは重要なので言及しておく。減圧ディスペンサー内で生じる減圧だけでは本発明の組成物を製造するのに十分ではない。本明細書で使用する場合に「脱気」なる用語は減圧小分け中の空気の除去を意味するものではない。」)

キ.「[0049]The compositions of the present invention should be stored in sealed containers to prevent exposure to air and moisture. Preferably, the compositions are stored in foil bags that are heat sealed under vacuum. A preferred package is an aluminized polyethylene/polyester bag. Such abag is commercially available from LPS Industries (Newark,New Jersey) under the trade name Vapor Flex(R)VF-52. The one part product of the present invention may be stored at room temperature for several weeks without any change in the properties of the cured encapsulant product. However, theshelf life of the compositions of this invention can beextended to several months by storing the mixtures at atemperature below 0℃. and preferably from -20 to -30℃.Individual sealed packages of the multi-part composition described above can be stored for over 6 months at ambientconditions without any deterioration in the performance ofthe composition produced upon their admixture.
[0050]The compositions of our invention are cured byheating at temperatures of from 70 to 200℃., preferably from 80 to 150℃., for a suitable length of time. For example, the compositions typically cure in two hours at80℃. and in fifteen minutes at 150℃.」
(「[0049]本発明の組成物は、空気及び湿気への暴露を防止するために密閉容器内に貯蔵されるべきである。減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に組成物が貯蔵されることが好ましい。好ましい包装はアルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグである。そのようなバッグは、LPS Industries(ニュージャージー州ニューアーク(Newark)所在)から商品名Vapor Flex(商標)VF-52 で商業的に入手可能である。本発明の1液型(one-part)製品は、硬化した封入剤製品の特性になんの変化ももたらさずに数週間室温で貯蔵可能である。しかしながら、本発明の組成物の貯蔵寿命は、混合物を0℃未満、好ましくは-20?-30℃の温度で貯蔵することによって数カ月に延びうる。上記多液型(multi-part)組成物の個々の密閉されたパッケージは、それらを混合することによって生じる組成物の性能になんの悪影響も及ぼさずに周囲条件で6か月以上貯蔵できる。
[0050]本発明の組成物は、70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化される。例えば、この組成物は典型的には80℃で2時間で、150℃で5分間で硬化する。」)

ク.「Example 1
[0054]This example demonstrates the preparation andpackaging of a composition according to the present invention. A blend of an organohydrogenpolysiloxane and aplatinum catalyst inhibitor was prepared by mixing 10.2 parts of a trimethylsiloxy-terminated dimethylmethylhydrogen siloxane containing an average of five HMeSiO_(2/2) units andthree Me_(2)SiO_(2/2) units per molecule and having a viscosity of 4.8 x 10^(-3) Pa・s and 1.3 parts of 2-phenyl-3-butyn-2-ol at70℃. for 20 minutes. A base was prepared by mixing 81.2 parts of fused silica having an average particle size of 4.5 ±0.5 micrometers; 73.4 parts of a dimethylvinylsiloxyterminatedpolydimethylsiloxane having an average DP of 830and a viscosity of 55 Pa・s; 26.6 parts of adimethylvinylsiloxy-terminated polydimethylsiloxane havingan average degree of polymerization (DP) of 434 and aviscosity of 2 Pa・s; 44.4 parts of a resin essentiallyconsisting of (CH_(3))_(2)CH_(2)=CHSiO_(1/2) units, (CH_(3))_(3)SiO_(1/2) unitsand SiO_(4/2) units, wherein the mole ratio of totaltriorganosiloxane units to SiO_(4/2) units is 0.7:1 and theresin contains 2.0 weight percent of vinyl groups; ・・・・
[0055]To the base was added the blend of theorganohydrogenpolysiloxane and the inhibitor. Finally, 0.9parts of a platinum complex of 1,3-diethenyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxanewas added to the mixture. The resulting composition was mixed until homogenous using a shear mixer. All mixing operations were carried out under apressure of from 6773 Pa to 10,159 Pa except during the addition of components to the mixture.
[0056]The material was then transferred to a 19 Lpolypropylene pail and pumped into a falling film evaporation system. The vacuum chamber in the apparatus was maintained at a pressure of 667 Pa. The composition passed through two slits in the head assembly, each having a lengthof 38.1 mm and a width of 3.2 mm, into the vacuum chamber ata rate of 227 grams per minute. The two ribbons of material emerging from the head assembly fell a distance of 0.6 minto a press pot. After all of the material had fallen intothe pot, the system was held under vacuum for an additional 15 minutes. Air was then slowly readmitted into the apparatus. The composition was mechanically pressed out of the bottom of the pot and withdrawn into polyethylenesyringes (30 cm^(3)). Furthermore the syringes were placed inVapor Flex(R)VF-52 aluminized polyethylene/polyester bags(LPS Industries, Newark, New Jersey) containing silica geldesiccant. The bags were heat sealed under vacuum and then stored in a freezer at -20℃.」
(「実施例1
[0054]この実施例は本発明の組成物の製造及び包装を例示するものである。分子当たり平均して5個のHMeSiO_(2/2) 単位及び3個のMeSiO_(2/2) 単位を含み、4.8×10^(-3)Pa・sの粘度を有するトリメチルシロキシ末端ジメチルメチルハイドロジェンシロキサン10.2部と1.3部の2-フェニル-3-ブチン-2-オールとを70℃で20分間混合することによって、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金触媒抑制剤のブレンドを調製した。4.5±0.5μmの平均粒度を有する溶融シリカ81.2部;平均重合度(DP)830及び粘度55Pa・sのジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン73.4部;平均重合度(DP)434及び粘度2Pa・sのジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン26.6部;(CH_(3) )_(2) CH_(2) =CHSiO_(1/2) 単位、(CH_(3) )_(3) SiO_(1/2) 単位及びSiO_(4/2) 単位から実質的になる樹脂であって、SiO_(4/2) 単位に対する全トリオルガノシロキサン単位のモル比が0.7:1であり、2.0重量%のビニル基を含む樹脂44.4部;・・・・を混合することにより基材を調製した。
[0055]この基材に前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンと抑制剤のブレンドを加えた。最後に、この混合物に、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体0.9部を加えた。得られた組成物を均質になるまで剪断混合機を使用して混合した。各成分を混合物に加える間を除き、677Pa?10,159Paの圧力下で全ての混合操作を行った。
[0056]次に材料を19リットルポリプロピレンバケツに移しいれ、流下薄膜型蒸留装置にポンプ輸送した。この装置内の減圧室を667Paの圧力に保った。ヘッドアセンブリ内の2枚のスリットに組成物を通し、227g/分の流量で減圧室に入れた。前記2枚のスリットはそれぞれ長さ38.1mm、幅3.2mmであった。前記ヘッドアセンブリから出てくる材料の2つのリボンは0.6mの距離を流下してプレスポット内に入った。全ての材料がプレスポット内に流下した後、系をさらに15分間減圧に保った。次に、装置内に空気を再び入れた。組成物を機械的にポットの底部から絞り出し、ポリエチレンシリンジ(30cm^(3))に閉じ込めた。さらに、そのシリンジを、シリカゲルを含むVapor Flex(商標)VF-52 アルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグ(LPS Industries, ニュージャージー州ニューアーク所在)内に入れた。そのバッグを減圧下でヒートシールし、次に-20℃の冷凍庫内に貯蔵した。」)

ケ.「Example 2
[0057]This example demonstrates the effects of platinum catalyst inhibitors having different boiling points on the extent of outgassing for compositions dispensed under vacuum. A blend of each inhibitor and an organohydrogenpolysiloxane was prepared by mixing 1.3 parts of theinhibitor and 10.3 parts of the organohydrogenpolysiloxane used in Example 1. Four bases were prepared by mixing 82.1 parts of fused silica having an average particle size of 4.5±0.5 micrometers, 100 parts of a vinyl-terminatedpolydimethylsiloxane having an average DP of 830 and aviscosity of 55 Pa・s; 44.9 parts of the resin used in example 1; and 2.6 parts of adhesion promoter (1). To eachbase was added one of the inhibitor-organohydrogenpolysiloxane blends. Finally, 0.9 parts of a platinumcomplex of 1,3-diethenyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane was added to each mixture. The resulting compositions were mixed until homogeneous using a shear mixer. All mixing operations were carried out under a pressure of from 6773 Pa to 10,159 Pa except during the addition of components to the mixture.
[0058]A portion of the composition containing 2-phenyl-3-butyn-2-oland the entire amount of each of the other compositions were de-aired according to the method inexample 1. The compositions were withdrawn into polyethylene syringes (30 cm^(3)) and the syringes were placedin Vapor Flex(R)VF-52 aluminized polyethylene/polyester bags(LPS Industries, Newark, New Jersey) containing silica gel desiccant. The bags were heat sealed under vacuum and then stored in a freezer at -20℃. The compositions were removed from the freezer just prior to use and allowed to warm to room temperature.
[0059]Each composition, including the composition not de-aired, was used to encapsulate an array of 30 diesmounted on a flexible circuit tape. Each die assembly consists of a silicon die (3 mm x 5 mm) and a polyimide tape separated by an elastomer pad or spacer. The composition was vacuum dispensed along three sides of each silicon die.A waiting period of 1 to 2 minutes was observed to allow the material to wet the die. Encapsulant was then dispensed onthe fourth side of each die. Approximately 0.03 grams ofcomposition was dispensed per die. The extent of degassing for each composition was determined by visual inspection ofthe encapsulant during vacuum dispensing. The results arepresented in Table I.


(「実施例2
[0057]この実施例は、減圧下で小分けされた組成物のガス発生に及ぼす、それぞれ異なる沸点を有する白金抑制剤の効果を示すものである。1.3部の抑制剤と実施例1で使用したオルガノハイドロジェンポリシロキサン10.3部を混合することにより各阻害剤とオルガノハイドロジェンポリシロキサンのブレンドを調製した。4.5±0.5μmの平均粒度を有する溶融シリカ82.1部、平均重合度(DP)830及び粘度55Pa・sのビニル末端ポリジメチルシロキサン100部、実施例1で使用した樹脂44.9部、及び接着促進剤(1)2.6部を混合することにより4つの基材を調製した。各基材に、阻害剤-オルガノハイドロジェンポリシロキサンブレンドのうちの1つを加えた。最後に、各混合物に、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体0.9部を加えた。得られた組成物を均質になるまで剪断混合機を使用して混合した。各成分を混合物に加える間を除き、6773Pa?10,159Paの圧力下で全ての混合操作を行った。
[0058]2-フェニル-3-ブチン-2-オールを含む組成物の一部と、その他の各組成物の全量を実施例1に記載の方法に従って脱気した。組成物をポリエチレンシリンジ(30cm^(3))に閉じ込め、シリカゲル乾燥剤を含むVapor Flex(商標)VF-52 アルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグ(LPS Industries,ニュージャージー州ニューアーク所在)内に入れた。そのバッグを減圧下でヒートシールし、次に-20℃の冷凍庫内に貯蔵した。組成物を使用直前に冷凍庫から取り出し、室温に温めた。
[0059] 各組成物(脱気しなかった組成物を含む)を使用し、可撓性回路テープ上に取り付けられた30個のダイのアレイを封入した。各ダイアセンブリはエラストマーパッド又はスペーサーにより分離されたシリコンダイ(3mm×5mm)及びポリイミドテープからなっていた。各シリコンダイの3つの側面に沿って組成物を減圧小出しした。その材料でダイを濡らすのに1?2分間の待ち時間をとった。次に封入剤を各ダイの4番目の側面に小出しした。ダイ1つ当たり約0.03gの組成物を小分けした。各組成物についてのガス発生の程度は、減圧小分け中に封入剤を目視観察することにより決定した。結果を表1に示す。

」)

(2)甲1に記載された発明
ア.(ア)甲1には、「実質的に空気を含まない減圧小分け可能なシリコーン組成物」に係る発明が記載されている([0001])。
(イ)そのシリコーン組成物は、「多液型組成物」であって、「それぞれ異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液を複数含むことができ」るものであり、「多液型組成物」の「個々の液」は、「各包装したものを混合」すると組成物が生じるように成分が包装されている([0045])。
(ウ)甲1の「多液型組成物」は、
ケイ素に結合しているアルケニル基を分子当たり平均少なくとも2個含むポリジオルガノシロキサンであって、アルケニル基は2?6個の炭素原子を含むビニル、アリル及び6-ヘキセニル等であるポリジオルガノシロキサンの成分と([0011])、
ケイ素に結合している水素原子を分子当たり平均少なくとも3個有するとともに、ケイ素に結合している水素原子をケイ素原子当たり平均1個以下有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの成分と([0021])、
白金族金属又はそのような金属を含む化合物の成分と([0033])、を含むシリコーン組成物であり、このような成分を含むシリコーン組成物は、一般に「付加硬化性のシリコーン」といい(例えば、甲20の段落【0008】参照。)、この組成物は、「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化」される([0050])。
(エ)また、この組成物は、空気及び湿気への暴露を防止するために「減圧下でヒートシールされた箔バッグ内」に貯蔵される([0049])。
(オ)「多液型組成物」の「個々の液」は箔バッグ内に貯蔵されて「個々の密閉されたパッケージ」とされる([0049])。

イ.以上より、甲1には、多液型組成物を貯蔵する方法について、
「実質的に空気を含まない減圧小分け可能な付加硬化性のシリコーン組成物を多液型組成物とし、多液型組成物は、異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液を複数含むことができ、個々の液を各包装したものを混合して、70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するものであり、多液型組成物の個々の液を減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵する、方法。」の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されている。

ウ.また、甲1には、多液型組成物のパッケージについて、
「実質的に空気を含まない減圧小分け可能な付加硬化性のシリコーン組成物を多液型組成物とし、多液型組成物は、異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液を複数含むことができ、個々の液を各包装したものを混合して、70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するものであり、多液型組成物の個々の液を減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵した、多液型組成物の個々の密閉されたパッケージ。」の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されている。

エ.なお、請求人は、甲1([0049])には、空気及び湿気への暴露を防止するために組成物は密閉容器内に貯蔵されるべきであり、その上で、さらにアルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグに貯蔵されるのが好ましいと記載されており、甲1に記載された発明も、そのように認定するべきである旨主張する。(前記「第2 1.(2)ウ.(ア)」)
しかし、甲1の[0049]には、「本発明の組成物は、空気及び湿気への暴露を防止するために密閉容器内に貯蔵されるべきである。減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に組成物が貯蔵されることが好ましい。」と記載され、「箔バッグ」が「密閉容器」を収容するとは記載されていない。この記載は、「密閉容器」として「箔バッグ」が好ましいとしていると理解するのが自然であって、甲1のこの記載をもって、請求人が主張するようには直ちに認定することはできない。

オ.一方、被請求人は、甲1発明には、「周囲温度で組成物の硬化を抑制するのに十分な量の0.10MPaで150℃よりも高い沸点を有する白金触媒抑制剤を含む」との事項を認定すべき旨主張する。(前記「第2 2.(2)イ.(ア)」)
この点について、本件特許明細書の記載をみると、硬化可能なシリコーン組成物には、添加剤として「反応抑制剤」を配合し得ることが記載(段落【0026】?【0028】)されている。
しかしながら、本件発明1には、「2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」と特定されて、硬化する温度が「常温」であることは特定されるものの、「反応抑制剤」を含むか否かについては何ら特定されていない。
引用発明の認定は、引用例の記載から把握できる技術的事項のうち、本件発明との対比において、必要な事項に基いて発明を認定すれば足りるものといえるから、反応抑制剤を含むか否かが特定されていない本件発明1?3との対比において、認定されるべき甲1-1発明及び甲1-2発明には、「白金触媒抑制剤」に関する事項の認定を要するものとは、必ずしもいえないし、たとえ被請求人の主張どおりに甲1-1発明及び甲1-2発明を認定したとしても、反応抑制剤を含むか否かについては、両者の相違点とはならない。

3.本件発明1についての判断
(1)本件発明1と甲1-1発明の技術的意義について
ア.本件特許明細書には、常温で硬化するシリコーン材料について、
(ア)従来より、「耐熱性塗料、接着剤、コーティング材、建築用シーリング材、歯科用シリコーンラバー印象材、歯科義歯用軟質裏装材等の材料に用いられている」(【0002】)が、「常温で硬化するシリコーン材料は、保存中に容器の隙間から徐々に空気を取り込み、ペーストあるいは溶液中に空気を溶解させやすい性質がある。一旦溶解した空気は硬化時に材料中に溶解することができず、結局のところ硬化体中に気泡として残ってしまう。そして、この気泡の入った硬化体は、材料自身の強度の低下、材料の表面が削れやすいことによる面荒れ、透明性の低下、気密性の低下等の様々な問題が生じる。」(【0003】)との課題があったところ、
「シリコーン組成物のための各成分の分包剤を減圧下で保存することにより硬化体中に気泡がきわめて少ないシリコーン組成物が得られること、並びに気泡が極めて少ない硬化体は強度の低下、面荒れ等々の低下を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った」(【0004】)ものである。
(イ)その付加型反応による硬化するシリコーン組成物における効果については、実施例1?3と比較例1?3の結果の比較により、「本発明の減圧下に保存したものから作製した硬化体の気泡数は、3つの保存状態において、常圧で保存したものから作製した硬化体と比較して平均気泡数がはるかに少なかった。また、減圧下に保存したものから作製した硬化体の引張り強度は、3つの保存状態において、常圧で保存したものから作製した硬化体と比較して引張り強度が大きかった。」(【0043】)との結果が確認されている。
(ウ)これらのことから、本件発明1?3は、常温で硬化するシリコーン組成物について、容器充填後の保存中にシリコーン組成物に取り込まれる空気が、材料の強度低下等の課題を引き起こすため、空気が入らないように、減圧下で保存するようにしたものといえる。

イ.一方、甲1には、シリコーン組成物について、
(ア)「半導体の実装、すなわちチップスケール又はチップサイズのパッケージにおける最近の進歩によって、高性能の減圧小分け可能なシリコーン封入剤に対する要求は厳しくなって」おり、「電子装置用のシリコーン材料の望ましい特性に加えて、そのような封入剤は新しい減圧小分け装置に適合するものであるとともにシリコンチップ又はダイの周り及び/又は下を流れるのに必要な流動学的特性を有するものでなくてならない」([0003])とされ、「従来のシリコーン組成物は、減圧小分け中に多量の空気を放出する。最初から存在するか又は貯蔵時に後形成される組成物中の低沸点成分もガス発生に寄与する。急速に抜ける気泡は、封入剤の発泡及び飛散を引き起し、半導体デバイスの露出面の汚染をもたらす。従って、汚染されたダイ表面から封入剤を除去するために追加の清浄化工程が必要となる。さらに、甚だしいガス発生によって、封入剤層内にボイドが生じ、デバイスの不完全なアンダフィルがもたらされる。デバイスの複雑さがますほど及びデバイスの寸法が小さくなるほど、汚染及び残留ボイドはますます顕著になる。チップスケール又はチップサイズの半導体パッケージの製造において、これらの封入にかかわる問題は、コストの増大及び製品信頼度の低下をもたらす」([0004])ことから、「従来の付加硬化性シリコーン組成物の減圧小分け中の過剰なガス発生特性が、組成物中に空気及び低分子量揮発性成分が存在することに帰因することを見いだし」([0005])たものである。
(イ)ここで、「減圧小分け」とは、例えば、甲27(【0021】)に、「封止・充填剤6を、半導体チップ1、半導体チップ取付部2、接着剤3、および枠材7に囲まれた隙間に一定量をディスペンサーにより塗布し、このバンプ5を含む空間全体に空気泡を含まずに封止・充填剤6で封止・充填するため、10torrの減圧下で真空含浸した。この際、封止・充填剤として用いた硬化性シリコーン組成物の脱泡性を観察した。その後、これを150℃で30分間加熱して封止・充填剤6を硬化させた。」(下線は当審で付記したもの。)とあるように、基板上の半導体チップに対して、ディスペンサーにより充填剤としてのシリコーン組成物を小分けしながら塗布していく工程であり、この工程を減圧下で行うことを意味するものであることが技術常識であって、このことは、甲1の「減圧小分け中に多量の空気を放出する。・・・・急速に抜ける気泡は、封入剤の発泡及び飛散を引き起し、半導体デバイスの露出面の汚染をもたらす。」([0004])との記載、「典型的には4,000?10,700Paの圧力で実施される減圧小分けの条件下で」([0010]。当審注:「4,000?10,700Paの圧力」は、約0.04?0.11気圧に相当。)、「この実施例は、減圧下で小分けされた組成物のガス発生に及ぼす、それぞれ異なる沸点を有する白金抑制剤の効果を示すものである。」([0057])とも整合するものである。
(ウ)上記のように、「減圧小分け」とは、「減圧下」で、基板上の半導体チップに対して、シリコーン組成物を小分けしながら塗布していく工程をいうものであるが、この「減圧小分け」中の課題を解決するために、甲1-1発明は、シリコーン組成物に、
「実質的に空気を含まず、典型的には4,000?10,700Paの圧力で実施される減圧小分けの条件下で不揮発性である成分のみを含む」([0010])ようにしたもので、「実質的に空気を含まない」ようにするために、「1液型(one-part)組成物及び多液型(multi-part)組成物の個々の液は、減圧小分けプロセスでの使用前に完全に脱気されねばならない」として、「圧力が1333Pa未満、好ましくは667Pa未満の周囲温度で流下膜式蒸発器(falling filmevaporator )に組成物を通すことにより脱気が行われることが好ましい。好ましい方法によると、組成物はヘッドアセンブリ内の1つ以上のスリットを通過して227g/分の割合で真空室内に入る。スリットによって、物質が強制的に大きな表面積と空気又は他の気体が逃げる短い拡散路とを有する薄いリボンになる。リボンは真空室を通って0.6mの距離を流下してプレスポット内に入る。全ての物質がポット内に流入した後、完全に空気が除去されるように少なくとも15分間真空を保つ。次に空気を前記系に徐々に再び入れ、適切な容器内に前記ポットを押し込む」([0046])とされる。
これにより、「従来のシリコーン組成物と比較すると、本発明のシリコーン組成物は、減圧小分け中のガス発生性は極めて低い。この組成物は、露出していないダイ表面をほとんど又は全く汚染せずに減圧小分けできるものである。これによって、チップスケールパッケージの製造において余分な清浄化工程の必要がなくなる。本発明のシリコーン組成物は、実質的にボイドのない均一な保護層を生じる。さらに、そのような用途に対するシリコーン材料の望ましい利点は失われずに保たれる」([0010])ものとなっている。
(エ)この「減圧小分け」を行うシリコーン組成物については、「より長い作業時間又は可使時間が得られるように、適切な抑制剤の添加により周囲条件での触媒の活性を阻害又は抑制する」([0035])ようにしたものであり、この抑制剤は、「周囲温度での本発明の組成物の硬化を抑制するが、高温でのこの組成物の硬化を妨げない」([0036])もので、「これらの抑制剤を含む組成物は、実際的な速度で硬化するには概して70℃以上での加熱を必要とする」([0037])ものである。
(オ)そして、「実質的に空気を含まない」シリコーン組成物は、「本発明の組成物は、空気及び湿気への暴露を防止するために密閉容器内に貯蔵されるべきである。減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に組成物が貯蔵されることが好ましい。好ましい包装はアルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグである」とされ、これにより、「上記多液型(multi-part)組成物の個々の密閉されたパッケージは、それらを混合することによって生じる組成物の性能になんの悪影響も及ぼさずに周囲条件で6か月以上貯蔵できる」([0049])ものとなっている。
(カ)また、実施例1及び実施例2により、「脱気された組成物」と「脱気されなかった組成物」の結果が比較され、「脱気されなかった組成物」については、「激しく泡立ち及び発泡、ダイの甚だしい汚染、ボイドあり、掃除の必要あり。」との評価を受ける結果であったことが確認されている。
(キ)これらのことから、甲1-1発明は、「減圧下」で小分けしながら塗布していく「減圧小分け」に用いられるシリコーン組成物を貯蔵する対象とし、当該シリコーン組成物について、空気が発泡しないように「実質的に空気を含まない」ものとするとともに、周囲温度で硬化しないように「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するもの」としたものである。そして、甲1-1発明において、このようなシリコーン組成物を、「減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵」するのは、容器充填前に存在するシリコーン組成物中の空気に着目して、その空気が放出されて組成物が飛散し、半導体デバイスの露出面が汚染されることから、一旦、シリコーン組成物中の空気を脱気して、空気を放出することがない、「減圧小分け」で用いることができる状態にして、その状態を維持するように「減圧下」で貯蔵するものといえる。

(2)本件発明1と甲1-1発明との対比
ア.甲1-1発明の「異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液を複数含む」「個々の液を各包装したもの」は、本件発明1の「2以上に分包された分包剤」に相当するといえる。
また、甲1-1発明の「付加硬化性」は、本件発明1の「付加型反応で硬化する」ことに相当する。
すると、甲1-1発明の「実質的に空気を含まない減圧小分け可能な付加硬化性のシリコーン組成物を多液型組成物とし、多液型組成物は、異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液を複数含むことができ、個々の液を各包装したものを混合して、70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化する」「シリコーン組成物」と、本件発明1の「2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」とは、「2以上に分包された分包剤を混合することにより硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」という限りにおいて一致する。

イ.本件発明1の「保存」という事項に関し、本件特許明細書には、「袋体内に減圧でヒートシールしたものと、カートリッジをそのまま常圧で、室温(実施例1、比較例1)、25℃恒温槽(実施例2、比較例2)、1日をワンサイクルとして15℃に12時間そして30℃に12時間保持することがプログラムされた槽(実施例3、比較例3)に、それぞれ6ヶ月保存した。その後、カートリッジにミキシングチップを取りつけ、ディスペンサーで押出して2つのペーストを混練し、1g当りの硬化体中の気泡数を調べた。実施例、比較例において、同条件についてそれぞれ5個測定してその平均値を平均気泡数とした。結果を表1に示す。」(【0040】)、「表1の結果から、付加型反応で硬化するシリコーン組成物において、本発明の減圧下に保存したものから作製した硬化体の気泡数は、3つの保存状態において、常圧で保存したものから作製した硬化体と比較して平均気泡数がはるかに少なかった。また、減圧下に保存したものから作製した硬化体の引張り強度は、3つの保存状態において、常圧で保存したものから作製した硬化体と比較して引張り強度が大きかった。このことから、本発明の保存方法は効果があることが分かる。」(【0043】)と記載されている。
これらの記載からすれば、本件発明1の「保存」という事項は、「6ヶ月」程度の期間にわたり、組成物の性能に影響がなく維持できることを意味するものと理解できる。
一方、甲1-1発明の「貯蔵」も、甲1の[0049]に「上記多液型(multi-part)組成物の個々の密閉されたパッケージは、それらを混合することによって生じる組成物の性能になんの悪影響も及ぼさずに周囲条件で6か月以上貯蔵できる。」と記載されていることからすれば、本件発明1の「保存」と同様に、6か月以上の期間、組成物の性能に悪影響も及ぼさずに維持できることを意味すると解されるから、甲1-1発明の「貯蔵」は、本件発明1の「保存」に相当するものといえる。

ウ.甲1-1発明の、多液型組成物の個々の液を減圧下で「貯蔵」する「箔バッグ」は、本件発明1の分包剤を「保存」する減圧にされた「封入体」に相当する。
また、本件特許明細書に、
「実施例1?3、比較例1?3
・・・・上記(A)および(B)のペーストを25gずつ2つのシリンジを備えたカートリッジ中に充填し、押子(ピストンとシリコーンO-リング)で封をした。このカートリッジを、外側が15μmのナイロン6フィルムで内側60μmのポリエチレンフィルムであるラミネートフィルムからなる袋に入れ、270mmHgに減圧してヒートシールした。」(段落【0039】)と記載されていることからすると、本件発明1の「封入して保持」との事項には、分包剤を入れた袋を減圧してヒートシールすることが含まれるものと理解されるから、甲1-1発明の「減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵する」ことは、本件発明1の「保存中は」、「減圧にされた封入体中に封入して保持」することに相当するものといえる。

エ.よって、本件発明1と甲1-1発明とは、
「2以上に分包された分包剤を混合することにより硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する該分包剤を保存する方法であって、保存中は、減圧にされた封入体中に封入して保持する、保存方法」であることで一致し、下記の点で相違する。
《相違点1》
保存の対象であるシリコーン組成物が、本件発明1では「常温で硬化可能」なシリコーン組成物であるのに対し、甲1-1発明では「実質的に空気を含まない減圧小分け可能」なシリコーン組成物であって「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するもの」である点。
《相違点2》
保存する方法について、本件発明1が「各分包剤を容器中に充填しかつ該容器を減圧にされた封入体中に封入して保持する」のに対し、甲1-1発明は「多液型組成物の個々の液を減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵する」点。

(3)まず、相違点1について検討する。
ア.(ア)本件発明1は、上記「(1)ア.(ウ)」で述べたように、常温で硬化するシリコーン組成物は、容器充填後の保存中に空気を取り込み、その空気が材料の強度低下等の課題を引き起こすため、空気が入らないように、減圧下で保存するようにしたものである。
一方、甲1-1発明は、上記「(1)イ.(キ)」で述べたように、保存対象であるシリコーン組成物は、「減圧下」で小分けしながら塗布する「減圧小分け」で用いることができるように、空気を含まない状態にされるとともに、周囲温度で硬化しないように「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するもの」とし、その状態を維持するように減圧下で貯蔵される。
この甲1-1発明のシリコーン組成物は、「減圧小分け」を可能とするために、「実質的に空気を含まない」ものとし、「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するもの」としたものであるから、そのようなシリコーン組成物のかわりに、本件発明1のように、「実質的に空気を含まない減圧小分け可能」という限定がなく、また、周囲温度で硬化し始める、すなわち「常温」で硬化可能なものに、あえて換えようとする動機は生じないというべきである。
(イ)それどころか、「実質的に空気を含まない減圧小分け可能な」ものではないと、ガス発生によりボイドが生じ、急速に抜ける気泡により封入剤の飛散を引き起して、半導体デバイスの露出面の汚染するという問題が生じるし、「常温」で硬化可能なものに換えると、周囲温度で硬化し始めてしまい、「より長い作業時間又は可使時間が得られるように」することができなくなるという阻害事由も存在する。
(ウ)そもそも、甲1-1発明において、「減圧下」で貯蔵する方法は、「実質的に空気を含まない」「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化する」シリコーン組成物を貯蔵対象とし、「減圧小分け」で用いるために選択されたものであるところ、反応抑制剤を含まない混合物は「周囲温度で硬化し始める。より長い作業時間又は可使時間が得られるように、適切な抑制剤の添加により周囲条件での触媒の活性を阻害又は抑制する」([0035])との甲1の記載からすれば、「減圧小分け」を行い得るとはいえない「常温」で硬化するシリコーン組成物について、「減圧下」で貯蔵することを選択する必然性があるとはいえない。
(エ)よって、甲1-1発明の「実質的に空気を含まない減圧小分け可能」で「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化する」シリコーン組成物を、「実質的に空気を含まない減圧小分け可能」という限定がなく、「常温で硬化可能」なシリコーン組成物に換えることは、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。

イ.請求人は、シリコーン組成物の相違に係る相違点1について、以下のように主張するので検討する。
(ア)請求人は、本件発明1は、各分包剤が容器に充填された硬化性シリコーン組成物の保存方法に関するものであり、当該容器が減圧された封入体に封入され保存することを特徴とするものであるところ、組成物の硬化が常温下で行われるのか加熱下で行われるのかは、保存方法とは直接関係する事項ではないから、相違点1は、実質的な相違点ではない旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(ア)」)
しかし、上記「ア.(ウ)」で述べたように、「減圧下」で貯蔵する方法は、「実質的に空気を含まない」「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化する」シリコーン組成物を、「減圧小分け」で用いるために選択されたものであるから、「減圧小分け」されたシリコーン組成物の硬化を加熱下で行うことは、「減圧下」で貯蔵する方法と関連するものである。
そして、上記「ア.(ア)?(エ)」で述べたように、甲1-1発明のシリコーン組成物において、「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するもの」を「常温」で硬化するものに換えることは、当業者が容易に想到することができたものではないから、請求人の、組成物の硬化が常温下で行われるのか加熱下で行われるのかは、保存方法とは直接関係する事項ではないから、相違点1は、実質的な相違点ではないとする主張は、採用することができない。
(イ)また、請求人は、甲2?6、甲17?21に記載された事項から、付加型反応により常温で硬化する2液型のシリコーン組成物は当業者において技術常識又は周知技術であったことが認められ、これを甲1発明に適用することにより相違点1を本件発明1のものとすることは当業者に容易である旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(イ)」)
しかし、甲2?5、17は特に歯科用の印象材料として硬化させるシリコーン組成物について、甲6は室温で急速に硬化して粘着性の状態となる2段階硬化のシリコーン組成物について、甲18はシリコーン油に対して増粘剤として作動するもので硬化するものではないシリコーン組成物について、甲19は金属やガラス等の基材に対する接着促進剤としてN-複素環式シランを含むシリコーン組成物について、甲20はアミン安定剤を含有するシリコーン組成物について、甲21は硬化物を得るために「150℃で4時間加熱」することを要するシリコーン組成物について、それぞれ記載されているものの、いずれも、より長い作業時間又は可使時間を得るために、周囲温度(常温)での硬化の抑制が求められる「減圧小分け」で用いることが可能であることを示すものではない。そのため、付加型反応により常温で硬化する2液型のシリコーン組成物が当業者において技術常識又は周知技術であったとしても、甲2?6、甲17?21に記載された事項によっては、その技術常識又は周知技術が、「減圧小分け」で用いるシリコーン組成物の保存方法に係る甲1-1発明に適用できるものとは、直ちにはいえない。
よって、請求人の、甲2?6、甲17?21に記載の技術常識又は周知技術を甲1発明に適用して、相違点1を本件発明1のものにすることは当業者に容易であるとする主張は、採用することができない。
(ウ)また、請求人は、シリコーン組成物が2液を混合させた後、直ちに硬化して流動性を失うということではなく、甲21の付加型反応で常温硬化する2液型シリコーン組成物は、白金触媒抑制剤を含有しなくても、混合して半導体樹脂封止に用いるための十分な流動性を備えたものである。半導体製造工程の封入剤に用いる付加型反応による常温で硬化する2液型シリコーン組成物において、白金触媒抑制剤などの付加型反応抑制剤を含有することは何ら必須ではなく、甲1発明の加熱硬化型シリコーン組成物を本件発明1の常温硬化型シリコーン組成物に置換することに阻害要因は存在しない旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(ウ)」)
しかし、2液を混合したシリコーン組成物が、直ちに硬化しないとしても、その流動性が「減圧小分け」を可能とするものとはいえず、また、甲21は、半導体素子の「コーティングやポッティング」、「ジャンクション部やワイヤーの保護」(【0002】)を目的とするものであって、「減圧小分け」に用い得る流動性までをも有するとは必ずしもいえない。しかも、甲21のシリコーン組成物は、硬化物を得るために「150℃で4時間加熱」(実施例1)すると記載されていることからすれば、常温で硬化する2液型シリコーン組成物であるともいえない。
よって、請求人の、シリコーン組成物が2液を混合させた後、直ちに硬化して流動性を失うということではなく、甲21のシリコーン組成物が反応抑制剤を含有することが必須ではないとされることをもって、甲1-1発明の加熱硬化型シリコーン組成物を、常温硬化型シリコーン組成物に置換することに阻害要因は存在しないとする主張は、採用することができない。
(エ)また、請求人は、甲21?29に例示されるように、半導体製造の技術分野において、加熱することで付加型反応により硬化するシリコーン組成物及び常温で付加型反応により硬化するシリコーン組成物は、いずれも広く用いられるものであり、その両者のいずれを選択するかは、単なる材料選択ないし設計事項の問題にすぎず、甲1発明に接した当業者は、甲1発明を出発点として、通常の創作能力の発揮により、半導体樹脂封止の封入剤として慣用される技術常識又は周知慣用技術である「常温で硬化可能な、付加型反応で硬化する」シリコーン組成物に置換して本件発明1に想到することは容易である旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(エ)」)
しかし、甲21?26、28及び29は、いずれも「減圧小分け」に用い得るシリコーン組成物について記載されていない。また、甲27には、シリコーン組成物を半導体チップと取付部の間に「10torrの減圧下で真空含浸させる旨記載されているが、甲27のシリコーン組成物は「150℃で30
分加熱」して硬化させるものであるから、甲1-1発明と同様、加熱硬化型のシリコーン組成物である。そのため、「常温で硬化可能な、付加型反応で硬化する」シリコーン組成物が、半導体樹脂封止の封入剤として慣用される技術常識又は周知慣用技術であったとしても、甲21?29に記載された事項によっては、「常温で硬化可能な、付加型反応で硬化する」シリコーン組成物が、「減圧小分け」で用いるシリコーン組成物の保存方法に係る甲1-1発明に適用できるものとは、直ちにはいえない。
よって、甲21?29の記載を参酌すれば、甲1発明を、半導体樹脂封止の封入剤として慣用される技術常識又は周知慣用技術である「常温で硬化可能な、付加型反応で硬化する」シリコーン組成物に置換して本件発明1に想到することは容易であるとする請求人の主張は、採用することができない。
(オ)また、請求人は、工程数をできるかぎり省略して効率を上げることは、一般的な課題として常に存在するものであり、付加型反応で硬化するシリコーン組成物として常温硬化型を用いるか加熱硬化型を用いるかは、単なる設計事項ないし材料選択の問題にすぎず、当業者であれば、工程数をできるかぎり省略して効率を上げるために、白金触媒抑制剤を混合する上記工程を省略して、付加型反応で硬化するシリコーン組成物として常温硬化型を用いることを動機付けられるといえるから、甲1発明を出発点として、加熱硬化型を常温硬化型に置換して本件発明1に至ることは容易である旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(オ)」)
しかし、「減圧小分け」に用い得る「常温で硬化可能」なシリコーン組成物が、技術常識又は周知慣用技術であるとする証拠等は示されておらず、直ちには、そのようにはいえず、付加型反応で硬化するシリコーン組成物として常温硬化型を用いるか加熱硬化型を用いるかが、単なる設計事項ないし材料選択の問題ではないことは、上述のとおりである。
そして、工程数をできるかぎり省略して効率を上げることが、一般的な課題として常に存在するとしても、上記ア.(ウ)で述べたように、白金触媒抑制剤を混合する工程を省略して「常温」で硬化するものに換えると、「周囲温度で硬化し始め」てしまい、「より長い作業時間又は可使時間が得られるように」することができなくなるという阻害事由も存在するため、甲1-1発明において、そのようにすることは当業者が想起し得ない。
よって、請求人の、工程数をできるかぎり省略して効率を上げるという動機付けのものとに、白金触媒抑制剤を混合する工程を省略して、甲1発明を出発点として本件発明1に至ることは容易であるとする主張は、採用することができない。
(カ)さらに、請求人は、甲1の[0035]?[0039]の記載は、1液型シリコーン組成物に関する記載であって、多液型シリコーン組成物に関する記載ではないから、甲1には、多液型シリコーン組成物について、白金触媒抑制剤が減圧小分け作業時の流動性を付与するための必須の成分とは記載されていないから、白金触媒抑制剤を排除して加熱硬化型から常温硬化型へ換えることに、阻害要因はない旨主張する。(前記「第2 1.(2)イ.(カ)」)
しかし、甲1の[0003]の記載(「半導体の実装、すなわちチップスケール又はチップサイズのパッケージにおける最近の進歩によって、高性能の減圧小分け可能なシリコーン封入剤に対する要求は厳しくなっている。電子装置用のシリコーン材料の望ましい特性に加えて、そのような封入剤は新しい減圧小分け装置に適合するものであるとともにシリコンチップ又はダイの周り及び/又は下を流れるのに必要な流動学的特性を有するものでなくてならない。」)からすれば、半導体の実装に用いられるシリコーン封入剤について、シリコンチップ又はダイの周り及び/又は下を流れるのに必要な流動学的特性が求められるのは、多液型のものも同じであることは明らかである。また、甲1の[0045]に「本発明の組成物は、2つ以上の部分に成分(A)?(F)を含む多液型(multi-part)組成物である。多液型(multi-part)組成物は、それぞれ異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液(part)を複数含むことができる。・・・・ポリジオルガノシロキサンの一部、オルガノシロキサン樹脂の一部、接着促進剤、ヒドロシリル化触媒及び任意の充填剤又は添加剤を混合してA液(Part A)を形成し、ポリジオルガノシロキサン及び樹脂の残りの部分、オルガノハイドロジェンポリシロキサン及び白金触媒抑制剤を混合してB液(Part B)を形成する。」と記載され、白金触媒抑制剤である成分(F)を「B液」に含有させるとされていることからすれば、甲1の[0035]?[0039]に記載された1液型シリコーン組成物の機能や作用に関する記載が、甲1-1発明の多液型シリコーン組成物についても該当することは明らかである。
よって、請求人の、甲1に、多液型シリコーン組成物について、白金触媒抑制剤が減圧小分け作業時の流動性を付与するための必須の成分とは記載されていないとして、白金触媒抑制剤を排除して加熱硬化型から常温硬化型へ換えることに阻害要因はないとする主張は、採用することができない。

ウ.したがって、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1の相違点1に係る構成は、甲1-1発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。

(4)次に、相違点2について検討する。
ア.甲1-1発明は、上記「(1)イ.(キ)」で述べたように、保存対象であるシリコーン組成物を「減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵」するのは、容器充填前に存在するシリコーン組成物中の空気が脱気されて、空気を放出することがない、「減圧小分け」で用いることができる状態を維持するためである。
すると、「減圧小分け」で用いることができる状態を維持することは、「減圧下でヒートシールされた箔バッグ内で貯蔵する」ことで解決されるから、わざわざ容器に充填した上で、箔バッグ内で貯蔵しようとする動機が見いだせない。

イ.請求人は、前記「第2 1.(2)ウ.(イ)」において、甲1([0056])には、組成物をシリンジに充填した後、ポリエチレン/ポリエステルバッグ内に入れ、そのバッグを減圧下でヒートシールして冷蔵庫内で貯蔵する方法が記載されており、この貯蔵方法を、多液型組成物の個々の液のパッケージに適用することは容易である旨主張する。
確かに、甲1の[0056]には、シリコーン組成物が1液型ではあるものの、組成物をポリエチレンシリンジに閉じ込めた後、そのシリンジを、シリカゲルを含むアルミニウム蒸着ポリエチレン/ポリエステルバッグ内に入れ、そのバッグを減圧下でヒートシールして貯蔵する実施例が記載されている。この実施例において、シリカゲルを含むバッグ内に入れるのは、「空気及び湿気への暴露を防止するため」([0049])であり、シリンジに入れた上でシリカゲルを含むバッグ内に入れるのは、バッグ内のシリカゲルと組成物が混ざらないようにするためと解される。
一方、本件発明1の封入体は、シリカゲルを含むものとはされていない。また、本件発明1は、上記「(1)ア.(ウ)」で述べたように、保存中にシリコーン組成物が取り込まれる空気の気泡により、材料の強度低下等の課題が生じるために、シリコーン組成物に空気が入らないようにしたものであるところ、その課題の解決のために湿気への対処が必要であるとはされておらず、シリカゲルを封入体に含む必要性があるとはいえない。そのため、甲1-1発明の「多液型組成物の個々の液」を、シリカゲルを含むバッグ内に入れるように換えることができたとしても、シリカゲルを省いて、本件発明1のように「各分包剤を容器中に充填しかつ該容器を減圧にされた封入体中に封入して保持する」ものとすることまで、当業者にとって容易に想到することができたものとはいえない。
よって、請求人の上記主張は採用することはできない。

ウ.したがって、相違点2も実質的な相違点であり、本件発明1の相違点2に係る構成は、甲1-1発明に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。

(5)そして、付加型反応により常温で硬化するシリコーン組成物について、本件発明1の減圧下に保存したものから作製した硬化体は、「常圧で保存したものから作製した硬化体と比較して平均気泡数がはるかに少な」く、また、「常圧で保存したものから作製した硬化体と比較して引張り強度が大き」い(本件特許明細書の【0043】)との効果を奏するものであり、甲1-1発明による、組成物からの発泡やダイの汚染が低減できるとの効果とは異質のものであって、当業者の予測し得る範囲外のものである。
また、甲2?32のいずれにも、そのことを示唆する記載はない。

(6)以上より、本件発明1と甲1-1発明とは、相違点1及び相違点2で相違するから、本件発明1は甲1-1発明ではなく、また、相違点1及び相違点2は当業者が容易に想到することができたものとはいえないから、本件発明1は、甲1-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4.本件発明2についての判断
(1)本件発明2と甲1-2発明との対比
ア.前記「3.(2)ア.」で述べたことと同様に、甲1-2発明の「異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液を複数含む」「個々の液を各包装したもの」は、本件発明2の「2以上に分包された分包剤」に相当し、甲1-2発明の「付加硬化性」は、本件発明2の「付加型反応で硬化する」ことに相当する。
また、甲1-2発明の「実質的に空気を含まない減圧小分け可能な付加硬化性のシリコーン組成物を多液型組成物とし、多液型組成物は、異なる成分をそれぞれ異なる量で含むそれぞれ異なる液を複数含むことができ、個々の液を各包装したものを混合して、70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化する」「シリコーン組成物」と、本件発明2の「2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」とは、「2以上に分包された分包剤を混合することにより硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物」という限りにおいて一致する。

イ.前記「3.(2)イ.」で述べたことと同様に、甲1-2発明の「貯蔵」は、本件発明2の「保存」に相当するものといえる。
また、前記「3.(2)ウ.」で述べたことと同様に、甲1-2発明の、多液型組成物の個々の液を減圧下で「貯蔵」する「箔バッグ」は、本件発明2の分包剤を「保存」する減圧にされた「封入体」に相当し、甲1-2発明の「減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵」することは、本件発明2の「保存中は」、「減圧にされた封入体中に封入されている」ことに相当するものといえる。

ウ.本件発明2の「分包キット」との事項は、本件発明2に「保存中は、各分包剤が容器中に充填されかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されていることを特徴とする、硬化性シリコーン組成物形成用分包キット」と記載されていることからすれば、「分包キット」は、「分包剤が充填された容器を、減圧された封入体中に封入したもの」といえる。
この点について、請求人は、本件の「分包キット」とは、「2以上に分包された分包剤が充填された容器」であって、「保存中は、各分包剤が容器中に充填されかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されている」容器のことを意味すると解すべきであり 、「2以上の分包された分包剤が充填された容器」と「減圧にされた封入体(袋体)」を組み合わせてなる物を意味するものではない旨主張する。(前記「第2 1.(3)」)
しかし、請求人が主張するように、「分包キット」とは、「2以上に分包された分包剤が充填された容器」であるとすると、「容器が減圧にされた封入体中に封入されている」との事項が「分包キット」に含まれなくなる。本件発明2は、「減圧にされた封入体に封入」するという保存方法の発明ではなく、「分包キット」に係る物の発明であるから、本件発明2の「保存中は、各分包剤が容器中に充填されかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されている」との特定は、「分包キット」に係るものと理解するのが自然であり、請求人の上記主張を採用することはできない。

エ.甲1-2発明の「パッケージ」は、箔バッグにより包装して、「多液型組成物の個々の液を減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に」「貯蔵」するものであるから、「各分包剤」が充填された容器を「減圧にされた封入体」中で包装して「保存」する「分包キット」とは、「各分包剤を減圧にされた封入体中で保存する」「包装された物」という限りにおいて一致する。
また、甲1-2発明の「パッケージ」は、付加硬化性のシリコーン組成物を形成するためのものであるから、「硬化性シリコーン組成物形成用」のものであるともいえる。

オ.すると、本件発明2と甲1-2発明とは、
「2以上に分包された分包剤を混合することにより硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する包装する物であって、各分包剤を減圧にされた封入体中で保存する、硬化性シリコーン組成物形成用の包装された物」であることで一致し、下記の点で相違する。
《相違点1’》
シリコーン組成物について、本件発明2が「常温で硬化可能」なシリコーン組成物であるのに対し、甲1-1発明は「実質的に空気を含まない減圧小分け可能」なシリコーン組成物であって「70?200℃、好ましくは80?150℃の温度で適切な長さの時間加熱することにより硬化するもの」である点。
《相違点2’》
硬化性シリコーン組成物形成用の包装された物について、本件発明2が「各分包剤を容器中に充填しかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されている」「分包キット」であるのに対し、甲1-2発明は「多液型組成物の個々の液を減圧下でヒートシールされた箔バッグ内に貯蔵した」「パッケージ」である点。

(2)相違点1’について
相違点1’は、前記「3.(2)エ.」で述べた、本件発明1と甲1-1発明との間の「相違点1」と実質的に同じ事項である。
そして、相違点1は、前記「3.(3)」で述べたように実質的な相違点であり、甲1-1発明からは、容易に想到することができたものではない。
すると、本件発明2と甲1-2発明との相違点である「相違点1’」についても、実質的な相違点であり、甲1-2発明からは、容易に想到することができたものとはいえない。

(3)上記のように、本件発明2は甲1-2発明と相違点1’で相違するから、相違点2’について検討するまでもなく、本件発明2は甲1-2発明ではなく、甲1-2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

5.本件発明3についての判断
(1)本件発明3は、本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに「封入体が袋体」であることを特定するものである。
この本件発明3と甲1-2発明とを対比すると、上記相違点1’及び相違点2’で相違するほか、下記の相違点3’でも相違する。
《相違点3’》
封入体について、本件発明3が「袋体」であるのに対し、甲1-2発明は「箔バッグ」である点。

(2)上記「4.(2)」で述べたように、相違点1’は実質的な相違点であり、本件発明2は甲1-2発明ではなく、甲1-2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明2の発明特定事項を全て含む本件発明3も、甲1-2発明ではなく、甲1-2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

6.まとめ
よって、本件発明1?3は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものでもないから、特許法第123条第1項第2号に該当するものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由によっては、本件発明1?3に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する該分包剤を保存する方法であって、保存中は、各分包剤を容器中に充填しかつ該容器を減圧にされた封入体中に封入して保持することを特徴とする保存方法。
【請求項2】
2以上に分包された分包剤を混合することにより常温で硬化可能な、付加型反応で硬化するシリコーン組成物を形成する該分包剤からなる分包キットであって、保存中は、各分包剤が容器中に充填されかつ該容器が減圧にされた封入体中に封入されていることを特徴とする、硬化性シリコーン組成物形成用分包キット。
【請求項3】
封入体が袋体である請求項2に記載の分包キット。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-11-20 
結審通知日 2017-11-22 
審決日 2017-12-07 
出願番号 特願2000-357336(P2000-357336)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (B65D)
P 1 113・ 113- YAA (B65D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 谿花 正由輝
井上 茂夫
登録日 2007-06-08 
登録番号 特許第3967542号(P3967542)
発明の名称 シリコーン組成物の保存方法および分包キット  
代理人 森山 航洋  
代理人 片山 英二  
代理人 大西 ひとみ  
代理人 服部 誠  
代理人 小林 雅人  
代理人 井口 司  
代理人 大西 ひとみ  
代理人 大西 ひとみ  
代理人 片山 英二  
代理人 保志 周作  
代理人 井口 司  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 片山 英二  
代理人 服部 誠  
代理人 井口 司  
代理人 服部 誠  
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