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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C01B
管理番号 1337368
審判番号 不服2016-18125  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-02 
確定日 2018-02-07 
事件の表示 特願2015-29277「ゼオライト材料を生成するための有機テンプレート不要の合成プロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月27日出願公開、特開2015-134712〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年6月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月18日(US)アメリカ合衆国 2009年6月18日(CN)中国)を国際出願日とする特願2012-515511号の一部を平成24年10月19日に新たな特許出願(特願2012-231436号)としたものの一部を、更に平成27年2月18日に新たな特許出願(特願2015-29277号)としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 3月12日 :手続補正書、上申書の提出
同年 5月12日 :上申書の提出
平成28年 2月 9日付け:拒絶理由の通知
同年 7月12日 :意見書、手続補正書の提出
同年 8月 3日付け:拒絶査定
同年12月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成28年12月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

1.補正の却下の決定の結論
平成28年12月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2.理由
(1)請求項1に対する補正の内容
本件補正は、請求項1の記載を、以下のとおり補正するものである。(下線部は請求人が示した補正箇所である。)

【請求項1】
YO_(2)及びX_(2)O_(3)を含む、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を生成するための、有機テンプレート不要の合成プロセスであって、前記プロセスは、
(1)種晶、少なくとも1種のYO_(2)供給源及び少なくとも1種のX_(2)O_(3)供給源を含む混合物を調製する工程;
(2)該混合物を結晶化する工程;及び
(6)BEA骨格構造を有するゼオライト材料をイオン交換処理に供する工程、
を含み、
ここで、Yは、Siであり、Xは、Alであり、
前記種晶は、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を含み、
工程(6)において、BEA骨格構造を有するゼオライト材料に含まれる少なくとも1つのイオン性の非骨格元素がFeとイオン交換されることを特徴とするプロセス。

これに対し、本件補正前の請求項1の記載は、平成28年7月12日付けの手続補正によって補正された請求項1に記載された、以下のとおりのものである。

【請求項1】
YO_(2)及びX_(2)O_(3)を含む、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を生成するための、有機テンプレート不要の合成プロセスであって、前記プロセスは、
(1)種晶、少なくとも1種のYO_(2)供給源及び少なくとも1種のX_(2)O_(3)供給源を含む混合物を調製する工程;
(2)該混合物を結晶化する工程;及び
(6)BEA骨格構造を有するゼオライト材料をイオン交換処理に供する工程、
を含み、
ここで、Yは、Siであり、Xは、Alであり、
前記種晶は、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を含み、
工程(6)において、BEA骨格構造を有するゼオライト材料に含まれる少なくとも1つのイオン性の非骨格元素がFe及び/又はCuとイオン交換されることを特徴とするプロセス。

(2)補正の目的、新規事項の追加の有無
上記補正は、工程(6)において、イオン交換によりゼオライト材料に含まれることになる元素を、「Fe及び/又はCu」から「Fe」とし、選択肢を限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)との産業上の利用分野、及び解決しようとする課題は同一であると認められる。
よって、上記補正は、特許法第17条の2第5項2号に掲げる、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
また、上記補正は選択肢を限定するものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する、いわゆる新規事項の追加にあたるものでもない。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正発明が、独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討したが、本件補正発明は、原査定の拒絶の理由で引用され、本願の原出願の最先の優先日(2009年6月18日)前に頒布された下記引用例1に記載された発明及び下記引用例2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができない。

引用例1:中国特許出願公開第101249968号明細書
引用例2:特表2008-542173号公報
引用例3:特開2007-296521号公報

以下、その理由について詳述する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記(1)に、本件補正後の請求項1として記載されたとおりのものである。

イ 引用例の記載事項
(ア)引用例1には、以下の記載がある。
(なお、訳は、本願の原出願である特願2012-515511号に対し、平成25年1月11日に提出された刊行物等提出書の「参考資料1」を参考に、当審が作成した。)

a 「

」(第3ページ第6?13行)
(訳:三次元で12員環を持つBeta型分子篩は、非常に重要な触媒として、石油の精製や化学工学分野に広く使われている。一般的には、例えばTEAOHのような有機テンプレートを用いて、2?5日で合成される。これらのテンプレートは細孔を充填している。Beta型分子篩の合成に有機テンプレートを用いたことで、コストが高くなり、しかも、有機テンプレートを除去するための焼成が、エネルギーの消費と環境汚染を導く。以上の原因で、触媒反応に優れた性能を示したにも関わらず、応用はまだ制約されている。そのため、業界は、テンプレートを使わず、かつ速いBeta型分子篩の合成法を求めている。)

b 「

」(第3ページ最終行?第4ページ第9行)
(訳:本発明は技術問題を解決し、背景技術のBeta型分子篩の合成法の欠点を克服し、有機テンプレートを使わず、焼成の必要がなく、結晶性の高いBeta型分子篩の新しい合成法を提供し、大幅に結晶化時間を短縮し、生産の効率を高め、エネルギーを節約し、環境にやさしいといった目的を達する。
有機テンプレートを使わないBeta型分子篩の合成法の手順の一つは以下のとおりである。:アルカリ金属酸化物源、アルミナ源、シリカ源と水の混合物を混合し、撹拌して最初のシリカアルミナゲルを合成する。その後、Beta型ゼオライトの結晶を入れ、室温で撹拌する。100?180℃において、12?24時間結晶化し、水熱合成でBeta型分子篩を合成する。合成した最初のシリカアルミナゲルの原料モル比は、SiO_(2)/Al_(2)O_(3)=31.04?40.3、・・・である。)

c 「

」(第4ページ第10?14行)
(訳:ここで述べたシリカ源はホワイトカーボンでもよい、・・・アルミナ源はアルミン酸ナトリウムでもよい、・・・)

d 「

」(第5ページ第2?18行)
(訳:実施例1:テンプレートを使わないBeta型分子篩の快速合成法
Beta型分子篩を合成する開始原料のモル比は以下のとおりである。:40.28SiO_(2)/1.00Al_(2)O_(3)/10.46Na_(2)O/566.66H_(2)O・・・具体的な合成手順は以下のとおりである。:0.117gのNaAlO_(2)と0.36gのNaOHを5.04mlのH_(2)Oに溶かした後、溶液中に1.2gのホワイトカーボンを加える。10?15分撹拌した後、ゲルに0.12gのBeta型ゼオライトの結晶(・・・)を入れ、室温で10?15分撹拌する。その後、ゲルをステンレス反応釜中のポリテトラフルオロエチレン製容器に入れ、140℃で約19時間結晶化を行う。冷却した後、室温でろ過し、80℃で乾燥して、生成物が得られる。図3のX線回折により、生成物はBeta型分子篩であるといえる。・・・また、図5には、Beta型分子篩の窒素吸着の結果が示され、この結果から、本方法で合成されたBeta型分子篩は開いた微孔を有しているといえるため、焼成は省略できる。
非常に重要なことは、本合成法が、テンプレートを用いる方法と比べて、時間が大幅に短縮されることである。・・・反応ゲル中にBeta型ゼオライトの結晶を加えることで、Beta型分子篩合成の結晶化時間が大幅に短縮できる。)

(イ)引用例2には、以下の記載がある。
e 「【0002】
・・・独特の構造的特徴により、ゼオライトβは、優れた熱および水熱安定性、耐酸性、耐コーキング性および一連の触媒反応における触媒活性を有し、触媒作用、吸着などの局面で優れた性能を示し、従って、用途において広範な可能性を有し、最近、急速に新しいタイプの触媒物質が開発されている。いくつかの金属成分で改質または担持された後に、ゼオライトβを、石油精製および石油化学処理、例えば、オレフィンの水素化分解、水素化異性化、水和などに使用することができる。
【0003】
多くの触媒化学反応方法において、金属または金属イオン(例えば、Ni、Co、Cu、Ag、Zn、Fe、Mn、Cr、Zr、Mo、W、アルカリ土類金属、希土類金属など)で担持または交換されたゼオライトを、触媒の活性成分として使用する必要性がある。」

(ウ)引用例3には、以下の記載がある。
f 「【0029】
・・・ゼオライトが鉄、銅及び/又はセリウムを含有している場合には、その固体触媒は、特に高度のSCR活性を示す。イオン交換されたゼオライトが鉄を含有するゼオライトであり、そのゼオライト物質が1?9重量%の鉄を含有していることが有利である。これに関連していうと、約1重量%の鉄がイオン交換によってゼオライトに結合されているが、鉄の残りの部分は、ゼオライトの開口した細孔構造によってゼオライトに付着している。」

g 「【実施例2】
【0041】
実施例1にならって、更に別の固体触媒を製造する。但し、ゼオライトとしては、イオン交換されたZSM-5ゼオライトに代えて、イオン交換されたベータゼオライトを使用する。そのベータゼオライトには5重量%の鉄が含まれている。・・・
【0042】
所定の組成を有するモデル排気ガスを、焼成した固体触媒の上に通す。内燃機関の典型的な運転条件に従った排気ガス条件をシミュレートする。窒素に加えて、高い排気ガス温度では、そのモデル排気ガスには900ppmのNOが含まれており、これを触媒上、高容積流量で通過させる。より低い排気ガス温度では、600ppmのNOを添加し、排気ガスを固体触媒上、低容積流量で通過させる。これらのモデル排気ガスには、残りの成分として、10容積%の酸素及び7容積%の水が更に含まれており、これらの比率は変化しない。モデルガスには、更にアンモニアが、NO対NH_(3)が0.9となる比率で含まれている。このモデルガスを、合わせて6種の異なった温度で、固体触媒の上を通過させる。固体触媒による転化率を、その固体触媒の上流側と下流側における、排気ガス中のNOの濃度比として測定する。それらの結果については、表2を参照されたい。
【0043】
【表2】

【0044】
表2から判るように、実施例2による固体触媒は、300℃を超える温度範囲において高い転化率を示す。排気ガスの温度が極端に低いと、触媒活性が低下する。しかしながら、200℃においてさえも、含まれているNOの20%を超えるものが転化されている。モデル排気ガスにNO_(2)を添加することによって、固体触媒の活性がかなり向上するという事実には、特に注意を払うべきである。測定された活性は、NOの転化に関しては最低の活性を示している。」

ウ 引用発明
摘示箇所b、dより、引用例1には、「NaAlO_(2)及びホワイトカーボンを含有する混合物を撹拌してシリカアルミナゲルを合成し、そのゲルにBeta型ゼオライトの結晶を入れ、140℃で約19時間結晶化を行うことにより、有機テンプレートを使わずBeta型分子篩を合成する方法」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

エ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「Beta型分子篩」は、本件補正発明の「BEA骨格構造を有するゼオライト材料」に相当する。
そして、摘示箇所cより、引用発明における「ホワイトカーボン」はシリカ源、「NaAlO_(2)」はアルミナ源であるから、引用発明の「Beta型分子篩」は、SiO_(2)及びAl_(2)O_(3)を含むもの、すなわち、本件補正発明の「YO_(2)及びX_(2)O_(3)を含」み、「Yは、Siであり、Xは、Alであ」るものに相当する。
また、シリカ源である引用発明の「ホワイトカーボン」は、本件補正発明の「少なくとも1種のYO_(2)供給源」に、アルミナ源である「NaAlO_(2)」は、本件補正発明の「少なくとも1種のX_(2)O_(3)供給源」に相当することになる。

(イ)引用発明の「Beta型ゼオライトの結晶」は、本件補正発明の「BEA骨格構造を有するゼオライト材料を含」む「種晶」に相当する。

(ウ)したがって、引用発明の、「NaAlO_(2)及びホワイトカーボンを含有する混合物を撹拌してシリカアルミナゲルを合成し、そのゲルにBeta型ゼオライトの結晶を入れ」る工程は、本件補正発明の、「(1)種晶、少なくとも1種のYO_(2)供給源及び少なくとも1種のX_(2)O_(3)供給源を含む混合物を調製する工程」に相当する。

(エ)引用発明の「140℃で約19時間結晶化を行う」工程は、該工程により「Beta型分子篩を合成する」ものであり、本件補正発明の、「(2)該混合物を結晶化する工程」に相当する。

(オ)引用発明が、「有機テンプレートを使わず・・・合成する方法」であることは、本件補正発明の「有機テンプレート不要の合成プロセス」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、下記の点で一致し、下記の点で相違する。

・一致点
「YO_(2)及びX_(2)O_(3)を含む、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を生成するための、有機テンプレート不要の合成プロセスであって、前記プロセスは、
(1)種晶、少なくとも1種のYO_(2)供給源及び少なくとも1種のX_(2)O_(3)供給源を含む混合物を調製する工程;
(2)該混合物を結晶化する工程;
を含み、
ここで、Yは、Siであり、Xは、Alであり、
前記種晶は、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を含むことを特徴とするプロセス。」

・相違点
本件補正発明は、「BEA骨格構造を有するゼオライト材料に含まれる少なくとも1つのイオン性の非骨格元素がFeとイオン交換されることを特徴とする」「(6)BEA骨格構造を有するゼオライト材料をイオン交換処理に供する工程」を含むのに対し、引用発明は、イオン交換を行わない点。

オ 判断
(ア)相違点に対する判断
上記相違点について検討するに、引用例2、3には、Fe(鉄)でイオン交換されたゼオライトβ(ベータゼオライト)が、触媒の活性成分として使用できることが記載されている。(摘示箇所e?g)
特に引用例3には、鉄を含有しているゼオライトが、特に高度のSCR活性を示すことが記載され(摘示箇所f)、鉄でイオン交換されたベータゼオライトを用いた「実施例2」も開示されている(摘示箇所g)。

そして、引用発明も「Beta型分子篩」に関するものであり、引用例1には、三次元で12員環を持つBeta型分子篩が、非常に重要な触媒として石油の精製や化学工学分野に広く使われていることも記載されている(摘示箇所a)。
してみれば、「Beta型分子篩を合成する方法」である引用発明において、合成されたBeta型分子篩を触媒の活性成分として用いるため、Beta型分子篩の合成後にFeとイオン交換する工程を更に行うことは、上記引用例2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者であれば容易になし得ることである。

(イ)請求人の主張に対する判断
(a)請求人は、審判請求書第4?5ページの(2)において、本願明細書【0014】、【0107】、【0110】?【0112】の記載から、発明の詳細な説明には、本願発明の金属ゼオライトが、触媒として有利に使用されること、そして、上記材料の最も好ましい用途がNOx低減のための成形SCR触媒であることが明確に記載されており、当業者は、本願発明の材料が、酸化窒素の還元に卓越した活性を示すことを容易に推定するはずであると主張している。
そして、同第7?8ページの(4)において、本願発明の合成方法によって合成されたゼオライトは、SCR反応において予測することのできない高い触媒性能を発揮するという驚くべき技術的効果が見いだされたものであって、かかる効果は、平成27年5月12日に提出された上申書において「添付データ」として記載された、実施例A?Cと比較例D?Fの比較によって明確に実証されていると主張している。

(b)上記主張について検討するに、まず、本願明細書【0014】には、「本発明のさらなる目的は、BEA骨格構造を有する新規ゼオライト材料、特に、例えば触媒および/または触媒支持体として都合よく使用することができるゼオライト材料を提供することだった。」と記載されており、また、同【0017】には、「本発明のプロセスによれば、現在の用途および新規の用途において都合よく利用することができる新規特性を示すBEA骨格構造を有する新規ゼオライト材料を得ることができると見出された。特に、有機テンプレート(oganotemplate)によって媒介される合成ではその化学組成および/または物理的性質が得られない可能性があるBEA骨格を得ることができる。」と記載されている。

しかしながら、本願明細書【0002】?【0009】に記載された背景技術をみると、ゼオライトベータなどのBEA骨格材料を有するゼオライト材料の合成における有機テンプレート化合物の使用について、(i)有機テンプレート化合物が高価であり、また、除去工程において破壊されるので再利用できないこと、(ii)除去工程による長い生成時間、過剰なエネルギー消費、並びに有害ガス及び望まれない廃棄物の生成といった点で不都合があること、そして、(iii)厳しい熱処理のため、耐熱性のゼオライトベータ、特に高シリカゼオライトベータに限定されてしまうことが記載されている(【0005】?【0007】)ものの、BEA骨格構造を有するゼオライト材料のイオン交換や、イオン交換したゼオライト材料の触媒としての利用に関する課題については、何らの記載も示唆も見いだせない。

また、本願明細書に開示された実施例をみても、BEA骨格構造を有するゼオライトのイオン交換を行った実施例は、【0156】?【0159】に記載された「実施例11B」において、Na^(+)イオンとNH_(4)^(+)イオンとのイオン交換を行ったもののみであり、Feはもとより、その他の金属とさえ、イオン交換を行った実施例は一切記載されていない。
加えて、本願明細書には、BEA骨格構造を有するゼオライトについて、SCR反応はもとより、触媒反応に用い、その触媒活性を対比検討した具体例は一切記載されていない。

してみれば、本願明細書には、本件補正発明のBEA骨格構造を有するゼオライト材料が、Feとイオン交換できること、及び、SCR触媒として利用できることが記載されているとまではいえるが、「有機テンプレート化合物を用いることなく合成され、Feとイオン交換したBEA骨格構造を有するゼオライト材料が、SCR反応において予測することのできない高い触媒性能を発揮すること」が、本件補正発明の奏する効果として、当業者が理解できるように記載されているとはいえない。
本願明細書の記載から当業者が理解することのできる本件補正発明の奏する効果は、同【0011】?【0012】に課題として記載された、有機テンプレート化合物を除去するためのか焼処理又は他の処理を必要とせず、費用効率が高い改善されたプロセスを提供すること、にとどまる。

(c)したがって、上申書において「添付データ」を用いて請求人が主張する、本件補正発明で合成されたBEA骨格構造を有するゼオライト材料が、SCR反応において予測することのできない高い触媒性能を発揮するという効果は、本願明細書に記載された効果であるとはいえないし、また、本願明細書の記載から当業者が推定できる効果であるともいえない。

(d)ここで、上記上申書に記載された「添付データ」についても、一応以下に検討する。

上記上申書の【表1】には、有機テンプレート化合物を用いることなく合成されたゼオライトベータを出発材料としてFeとイオン交換した「実施例A?C」と、市販のゼオライトベータを出発材料としてFeとイオン交換した「比較例D?F」のデータが開示されているが、該「実施例A?C」と「比較例D?F」とは、請求人が主張する有機テンプレート化合物の使用の有無に加え、SiO_(2):Al_(2)O_(3)のモル比も、「実施例A?C」が9.90?10.71であるのに対し、「比較例D?F」が32?53.79と大幅に相違する。
そして、ゼオライトのSiO_(2):Al_(2)O_(3)比が、ゼオライトのイオン交換容量に影響することは当業者の技術常識であり、イオン交換容量は、イオン交換時の収率、ひいてはイオン交換後の触媒性能に影響するものといえる。
してみれば、【表1】に開示された「Fe収率」や、【表5】に開示された触媒性能の差が、有機テンプレート化合物の使用の有無のみによるものとはいえないし、SiO_(2):Al_(2)O_(3)比の特定もない本件補正発明の効果を示すものともいえない。

(e)上記のとおりであるから、上記(a)に記載した請求人の主張は採用できない。

(f)また、請求人は、審判請求書第5ページの(3)において、引用例1には、有機テンプレート不使用の方法から得られたゼオライトベータの触媒としての使用は全く記載されていないと主張している。
しかしながら、引用例の摘示箇所aからは、Beta型分子篩が、三次元で12員環を持つというその構造により、非常に重要な触媒として使われているものと理解される。
してみれば、三次元で12員環を持つBeta型分子篩であれば、合成時に有機テンプレートを使用する、しないに関わらず触媒として使用できることが、引用例には記載されているといえる。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(ウ)本件補正発明の効果についての判断
上記(イ)(b)に記載のとおり、本願明細書の記載から当業者が理解することのできる、本件補正発明の奏する効果は、同【0011】?【0012】に課題として記載された、有機テンプレート化合物を除去するためのか焼処理又は他の処理を必要とせず、費用効率が高い改善されたプロセスを提供すること、にとどまる。
これに対し、引用発明も、引用例1に、「有機テンプレートを使わず、焼成の必要がなく、大幅に合成時間を短縮し、生産の効率を高め、エネルギーを節約し、環境にやさしいといった目的を達する」ものであると記載されている。(摘示箇所b)

したがって、本件補正発明の効果は、引用例1の記載から、引用発明が奏する効果として当業者に予測し得る範囲のものである。

カ 本件補正発明の独立特許要件についてのむすび
したがって、本件補正発明は、引用例1に記載された発明、及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、その余について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 原査定の理由について

1.本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?34に係る発明は、平成28年7月12日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?34に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、上記「第2 2.(1)」に本件補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。

2.原査定の理由
原査定の理由のひとつは、前記「第2 2.(3)」に記載した引用例1に記載された発明、及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて、本願発明1は当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例1?3の記載事項、引用発明
引用例1?3の記載事項は、前記「第2 2.(3)イ」に記載したとおりであり、引用例1に記載された発明、すなわち引用発明は、同「第2 2.(3)ウ」に記載したとおりである。

4.対比、判断
本件補正発明は、前記「第2 2.(2)」で検討したとおり、本願発明1から、イオン交換によりゼオライト材料に含まれることになる元素を限定したものであるから、本願発明1は、本件補正発明を包含するものである。
そして、前記「第2 2.(3)エ、オ」で検討したとおり、本件補正発明は、引用例1に記載された発明、及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明1も、引用例1に記載された発明、及び引用例2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-05 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2015-29277(P2015-29277)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C01B)
P 1 8・ 575- Z (C01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 隆介  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 永田 史泰
後藤 政博
発明の名称 ゼオライト材料を生成するための有機テンプレート不要の合成プロセス  
代理人 江藤 聡明  
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