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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1337430 |
審判番号 | 不服2015-19157 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-23 |
確定日 | 2018-02-07 |
事件の表示 | 特願2012-519704「歯磨き粉の小滴」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日国際公開、WO2011/005896、平成24年12月20日国内公表、特表2012-532880〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、2010年(平成22年)7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年7月8日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年12月3日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正され、平成27年6月17日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年10月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲が補正されたところ、平成29年4月12日付けで当審から拒絶理由が通知され、同年8月17日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲が補正されたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1?7に係る発明は、平成29年8月17日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載されている事項により特定されるとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「容積を規定する可溶性の外膜と; 前記容積内側の歯磨き粉とを具える小滴において; 前記外膜が、水に接触すると溶解する可溶性のフィルムストリップから形成されている ことを特徴とする小滴。」 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、要するに、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である下記引用文献3に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し特許を受けることができない、という理由、及び、同発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 引用文献3:実願平2-71118号(実開平4-29626号)のマイクロフィルム 第4 当合議体の認定・判断 1.引用文献の記載事項 引用文献3には、以下の事項(3-1)?(3-5)が記載されている。(なお、以下、引用文献及び本願明細書の引用部分における下線は当合議体による。) (3-1)「(1) 所定の力を加えることにより容易に破砕することのできる可食性容器に、1回使用量毎に分包された歯磨き剤。 (2) 上記容器が水溶性であることを特徴とする請求項第1項記載の歯磨き剤。」(実用新案登録請求の範囲参照) (3-2)「本考案による歯磨き剤は、所定の力を加えることにより容易に破砕することのできる可食性容器に、1回使用量毎に分包されていることを特徴とするものである。 なお、上記容器は水溶性であることが望ましい。また、上記容器は、薬を分包するために使用されるようなカプセル状であることが望ましい。このように容器をカプセル状にした場合には、つまみ易くするためのタブを設けることが望ましい。更に、上記容器は、所定の色に着色したり、果物、野菜、動物等の所定の形状としてもよい。」(第3頁第1?11行参照) (3-3)「図において、符号1はカプセル状容器を示し、この容器1内には、第2図に示したように、1回使用量分の練り歯磨きである歯磨き剤2が分包された状態で収容されている。」(第4頁第8?11行参照) (3-4)「上記容器1は、従来の薬のカプセルを形成する人に無害な可食性の材料、例えば、ゼラチン、ゼラチンと澱粉を混合したもの等で形成することができる。また、この容器1は、ハブラシのブラシの部分にこれを乗せて、歯に当てた時のように、所定の力が加わったときに容易に破砕し、内部の歯磨き剤2が出るようなものとすることが望ましい。更に、この容器1を水溶性のものとしておけば、歯磨き剤2が容器1から出やすくなる。」(第4頁第14行?第5頁第2行参照) (3-5)「 」 2.引用発明の認定 上記記載事項(3-1)によると、引用文献3には、「所定の力を加えることにより容易に破砕することのできる、水溶性の可食性容器に、1回使用量毎に分包された歯磨き剤」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.対比 以下、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)歯磨き粉について 本願発明は「歯磨き粉」を具えるものであるのに対し、引用発明は「歯磨き剤」に関するものである。しかしながら、本願明細書には、「歯磨き粉の語が本明細書を通して使用されているが、歯磨き粉の語は様々な種類の歯磨剤を含むことを意味しており」(段落【0012】参照)と記載されているから、引用発明における「歯磨き剤」は、本願発明における「歯磨き粉」に相当する。 (2)外膜について 上記記載事項(3-3)及び(3-5)から明らかなように、引用発明の「可食性容器」は、その内部に「1回使用量毎に分包された歯磨き剤」を保持するものであって、その形状によって容積が規定されるものであるといえるから、本願発明において、その「容積内側」に「歯磨き粉」を具えるものであるとされる「容積を規定する可溶性の外膜」に相当するものである。(なお、記載事項(3-5)の図1においては、可食性容器がタブ(3)を有しているが、記載事項(3-2)に記載されるように、タブを設けることは任意の事項である。) また、本願発明では、外膜が「水に接触すると溶解する可溶性のフィルムストリップから形成されている」のに対し、引用発明では、「可食性容器」が「水溶性」であること、すなわち、「水に接触すると溶解する可溶性」の材料で形成されていることが特定されている。 (3)小滴について 本願明細書には、「歯磨き粉の各小滴は、ユーザの歯の1回の清掃に推奨される量の歯磨き粉を含有している。歯を磨くのに必要な量の歯磨き粉を厳密に消費者に提供することで、無駄をなくすことができる。」(段落【0010】参照)と記載されているから、本願発明における「小滴」とは、実質的に、「外膜」及びその容積内側に「ユーザの歯の1回の清掃に推奨される量の歯磨き粉」を具えるものであるといえる。他方、引用発明においても、上記(2)で述べたとおり、「可食性容器」が、その内部に「1回使用量毎に分包された歯磨き剤」を保持するものであるから、引用発明における「可食性容器」及びその内部に保持された「1回使用量毎に分包された歯磨き剤」は、本願発明における「小滴」に相当するものである。 (4)一致点及び相違点 上記(1)?(3)における検討を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の点で一応相違すると認められる。 <一致点> 「容積を規定する可溶性の外膜と; 前記容積内側の歯磨き粉とを具える小滴において; 前記外膜が、水に接触すると溶解する可溶性の材料から形成されている ことを特徴とする小滴。」 <一応の相違点> 本願発明では、外膜が「フィルムストリップから形成されている」ことが特定されているのに対し、引用発明では、そのことが特定されていない点。 4.一応の相違点についての判断 本願明細書においては、「フィルムストリップ」の明確な定義は記載されていないが、一般に、「フィルム」は「薄皮、薄膜」などを意味し、「ストリップ」は「薄板」などを意味する(いずれも、必要であれば以下の参考文献を参照。)。また、本願明細書には、「複数の実施形態では、外膜102は封入材料を利用して形成することができる。この封入材料は、水または唾液があると溶解する、ポリビニルアルコールなどの可溶性のフィルムストリップで作ることができる。代替的に、複数の実施形態では、封入材料をセルロース、カラギーナン、デンプンおよびグルテンなどの食用フィルムで作ることができる。」(段落【0014】参照)との記載があり、「可溶性のフィルムストリップ」に代えて、「食用フィルム」を使用することができることが示されている。そうすると、本願発明における「フィルムストリップ」との用語は、実質的に、「フィルム」と同じ意味、すなわち「薄皮」や「薄膜」のようなものを意味していると解される。 他方、引用発明の「可食性容器」は、記載事項(3-3)及び(3-5)の記載によると、明らかに薄い膜状のものであるといえる。 そうすると、引用発明の「可食性容器」は、本願発明でいうところの「フィルムストリップ」で形成されていると認められ、上記一応の相違点は、実質的な相違点ではない。 参考文献:広辞苑、第五版第一刷、岩波書店、1998年11月11日(「フィルム」は第2300頁、「ストリップ」は第1440頁参照) 5.審判請求人の主張について 上記一応の相違点に関し、審判請求人は、平成26年12月3日付け意見書において、「引用文献3には、歯磨き剤を包含する容器が水溶性であることが記載されていますが、このような水溶性容器は、可溶性のフィルムストリップ技術とは異なるものであり、この点においても差異を有するものと考えます。」と主張している。また、審判請求書において、本願明細書段落【0014】の記載を引用しつつ、「本願明細書段落[0014]には、『・・・(当合議体注:引用部分は省略)』と記載されており、“可溶性のフィルムストリップ”の代替案、すなわち、その代わりとなるものが、食用フィルムであることが記載されています。よって、明細書の上記記載は明らかに、“可溶性のフィルムストリップ”が、明細書の段落[0014]あるいは引用文献3に記載の“食用フィルム”とは異なるものであることを明示しております。」と主張している。 しかしながら、意見書における上記主張について、審判請求人は、その主張の根拠を何ら示していない。また、審判請求書における上記主張について、要するに、本願発明の「可溶性のフィルムストリップ」と、引用発明の「可食性容器」が異なるものであることを主張しているものと解されるが、引用発明は単なる「可食性容器」ではなく、「水溶性の可食性容器」に関するものである。このことは、引用文献3における「上記容器1は、・・・人に無害な可食性の材料・・・で形成することができる。・・・。更に、この容器1を水溶性のものとしておけば、歯磨き剤2が容器1から出やすくなる。」との記載(上記記載事項(3-4)参照)からも明らかである。 そして、上記3.で述べたとおり、本願発明と引用発明は「外膜が、水に接触すると溶解する可溶性の材料から形成されている」点で共通しており、また、上記4.で述べたとおり、引用発明の「可食性容器」は、本願発明でいうところの「フィルムストリップ」で形成されていると認められるところ、これらの認定を覆すに足る根拠はないから、審判請求人の上記主張を検討してもなお、本願発明と引用発明に相違点が存在するとはいえない。 6.本願発明の進歩性について 上述のとおり、本願発明と引用発明に相違点は存在しないが、仮に外膜の形状や膜厚などの点で両者に相違点が存在したとしても、引用文献3には、可食性容器の形状を「所定の形状としてもよい」ことが記載されているのであって(上記記載事項(3-2)参照)、引用発明において、可食性容器の形状や膜厚などを適宜調整することは、当業者が容易になし得た事項に過ぎない。 また、本願発明の効果について、審判請求人は、平成29年8月17日付け意見書において、「口の中に入れる前に水と接触させるだけで溶解する可溶性のフィルムストリップから形成される外膜という特徴は、本願発明に特有のものであり、いずれの引用文献が開示するものではありません。」と主張している。 しかしながら、本願発明は「小滴」に係る物の発明であって、その用途・態様については何ら特定されていない。したがって、「小滴」を「口の中に入れる前に水と接触させるだけで溶解する」ように用いる場合のみならず、その他のあらゆる態様(例えば、口の中で小滴を溶解させるような態様)で用いる場合も包含されるから、審判請求人主張の上記効果が、本願発明全体において奏される優れた効果であるということはできない。 また、仮にそうでないとしても、引用発明も水溶性の可食性容器を用いていることから、本願発明と同様に「口の中に入れる前に水と接触させるだけで溶解する」との性質を有するものであると解される。 したがって、いずれにしても、本願発明の効果が、引用文献3及び技術常識から予測し難い格別なものであると認めることはできない。 7.小括 上記のとおり、本願発明と引用発明の間に相違点は存在しないから、本願発明は引用文献3に記載された発明であるといえる。 また、仮にそうでないとしても、本願発明は、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である引 用文献3に記載された発明であって特許法29条1項3号に該当するものであるか、同発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法29条2項の規定に違反するものであるから、いずれにしても特許を受けることができない。 そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-09-07 |
結審通知日 | 2017-09-12 |
審決日 | 2017-09-26 |
出願番号 | 特願2012-519704(P2012-519704) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(A61K)
P 1 8・ 121- WZ (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今村 明子、松元 麻紀子 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
安川 聡 小川 慶子 |
発明の名称 | 歯磨き粉の小滴 |
代理人 | 特許業務法人北青山インターナショナル |