• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H02N
管理番号 1337630
審判番号 不服2016-19703  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-09 
確定日 2018-02-22 
事件の表示 特願2015-257798「第七ハイブリット発電」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 99248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月25日の出願であって、平成28年4月26日付け(発送日 同年5月17日)で拒絶理由が通知され、同年7月15日に意見書が提出されたが、同年9月29日付け(発送 同年10月11日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月9日に拒絶査定不服審判請求がされるとともに、同時に手続補正がされたものである
なお、審判請求書における「請求の趣旨」は、「本願発明は、いずれ枯渇するであろう地球内資源を一切使用することなく太陽光とLED光を利用し、CO_(2)を全く排出せず後世に残せる新規性進歩性に優れた再生可能エネルギーであり、手続補正書により特許請求の範囲を変更と削除で明確にしたため拒絶査定の取り消しを求めます。」と記載されるにとどまるが、請求の理由の「5.まとめ」の項において、「したがって本願発明は原査定を取り消し『この出願の発明はこれを特許すべきものとする』との審決を求める。」と記載されているため、請求の趣旨は、「原査定を取り消す。本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」と解した。

第2 平成28年12月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
本件補正は、補正前(特許願に最初に添付した特許請求の範囲によるもの)の請求項1につき、
「(イ)太陽光ソーラーパネルと完全密閉遮光ボックスを組み合せた第七ハイブリット発電方式
(ロ)完全密閉遮光ボックス内の上面下面にソーラーパネルを中間にLED球を取り付けた透明プラスチック板に設置し太陽光ソーラーパネルで発電した電気をLED球に通電し上面下面のソーラーパネルにLED光を照射しての発電方式
(ハ)LED球は全てピラミット型に透明プラスチック板の上面下面もピラミット型にする
(ニ)太陽光ソーラーセルと完全密閉遮光ボックス内ソーラーセルは全て湾曲面で使用する
(ホ)太陽光ソーラーセルの反射防止膜はピラミット構造にする
(ヘ)完全密閉遮光ボックス内ソーラーセルは保護ガラスと反射防止膜を使用しない裸セルで使用する
(ト)太陽光ソーラーパネルの発電確認完全密閉遮光ボックス内上面下面ソーラーパネルの発電確認LED球の球切れ確認用として発電発光確認用LED球を各ボックス外部に設ける」
とあったものを、
「請求項1のハ?トの5ケを削除し、イとロを1文にし下記の様に変更する。
太陽光ソーラーパネルと完全密閉遮光ボックスを組み合せ、ボックス内の上面、下面にソーラーパネルを、中間にLED球を取り付けた透明プラスチック板に設置し、太陽光ソーラーパネルで発電した電気をLED球に通電し、上面、下面のソーラーパネルにLED光を照射しての発電方式」
に補正するものである。

2 補正前後の特許請求の範囲に関して、請求人は次のとおり主張する。
(1)「本発明書類内で全て説明しており、総合的勘案から、この請求項数になりましたが請求項イ?ヘではなく、請求項1、2、3、4…に分類した方が良かったのでしょうか?」(平成28年7月15日になされた意見書の【意見の内容】の34?35行)
(2)「イ.審判請求と同時に提出した平成28年12月9日付けの手続補正書により補正したので指摘の不備は解消をしたものとする。」(審判請求書の【請求の理由】「3.指摘事項に対する対処と参考意見」の1?2行)

3 上記2の請求人の主張を踏まえて、上記1の本件補正をみると、
補正前の
「【請求項1】太陽光ソーラーパネルと完全密閉遮光ボックスを組み合せた第七ハイブリット発電方式
【請求項2】完全密閉遮光ボックス内の上面下面にソーラーパネルを中間にLED球を取り付けた透明プラスチック板に設置し太陽光ソーラーパネルで発電した電気をLED球に通電し上面下面のソーラーパネルにLED光を照射しての発電方式
【請求項3】LED球は全てピラミット型に透明プラスチック板の上面下面もピラミット型にする
【請求項4】太陽光ソーラーセルと完全密閉遮光ボックス内ソーラーセルは全て湾曲面で使用する
【請求項5】太陽光ソーラーセルの反射防止膜はピラミット構造にする
【請求項6】完全密閉遮光ボックス内ソーラーセルは保護ガラスと反射防止膜を使用しない裸セルで使用する
【請求項7】太陽光ソーラーパネルの発電確認完全密閉遮光ボックス内上面下面ソーラーパネルの発電確認LED球の球切れ確認用として発電発光確認用LED球を各ボックス外部に設ける」
とあったものを、
「請求項3?7を削除し、請求項1と請求項2を1文にし下記の様に変更」して、
「【請求項1】太陽光ソーラーパネルと完全密閉遮光ボックスを組み合せ、ボックス内の上面、下面にソーラーパネルを、中間にLED球を取り付けた透明プラスチック板に設置し、太陽光ソーラーパネルで発電した電気をLED球に通電し、上面、下面のソーラーパネルにLED光を照射しての発電方式」
に補正することを意図しているものと解される。

4 上記3によれば、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的として、補正前の請求項1、3?7を削除し、さらに、補正前の請求項2に「太陽光ソーラーパネル」が記載されているから、特許法第17条の2第5項第4号の明りようでない記載の釈明を目的として、請求項2の「完全密閉遮光ボックス内の」を「太陽光ソーラーパネルと完全密閉遮光ボックスを組み合せ、ボックス内の」と補正するものであると認められる。

5 以上によれば、本件補正は、請求人の意図を踏まえれば補正要件を満たすと認められる。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年12月9日に補正された本願の特許請求の範囲の請求項1には、補正事項である「請求項1のハ?トの5ケを削除し、イとロを1文にし下記の様に変更する」ことまでが記載されているため、これも請求人の意図を踏まえて当該記載を除いた記載であると解し、以下のとおりのものと認める。
「太陽光ソーラーパネルと完全密閉遮光ボックスを組み合せ、ボックス内の上面、下面にソーラーパネルを、中間にLED球を取り付けた透明プラスチック板に設置し、太陽光ソーラーパネルで発電した電気をLED球に通電し、上面、下面のソーラーパネルにLED光を照射しての発電方式」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶理由
原査定の理由における理由1(特許法第36条第4項第1号)は次のとおりである。
「また、拒絶理由通知書で指摘した理由(2)(本願発明は、送電線から供給される電力をLEDと太陽電池の間で単に損失させているだけの装置にすぎないので、技術上の意義がないと言わざるを得ません。)について、上記意見書では、表を添付して、『完全密閉遮光ボックス20台』に加えて『太陽光ソーラーパネル20枚』が電力の供給源であることなどを述べているようですが、完全密閉遮光ボックスの外部に太陽光ソーラーパネルを設けることは出願当初の明細書及び図面にはもともと示されていなかったものですし、また、本願の発明の本質的な内容であると考えられる完全密閉遮光ボックス自体については電力をLEDと太陽電池の間で単に損失させているだけの装置にすぎない点で変わりはないと認められます。」

3 当審の判断
(1)本願の発明の詳細な説明には以下の記載がある。
ア 本願発明が解決する課題に関して、本願の発明の詳細な説明には下記の記載がある。
「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は雨天曇天積雪等による日照不足、季節による太陽軌道変化での発電量の不安定さや夜間では全く発電しなかったソーラーパネルを完全密閉遮光ボックス内の上面、下面にソーラーパネルを設置し中間にピラミット型LED球を取り付けた透明板を配置して、24時間安定した電力を発電させ使用するものである。」
「【発明の効果】
【0016】
季節による太陽軌道の変化、雨曇り、雪等で日照時間がなくても、夜間でも、停電時間が長くても省電力で発光し発熱も少なく長寿命のLED球を完全密閉遮光ボックス内で、上面下面に設置したソーラーパネルにLED光を照射し昼夜季節に関係なく安定した電力を得ることができる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現ソーラーパネルの最大課題はあたりまえだが、太陽光がないと発電しなくなり、日中でも天候による諸条件の問題で発電量の不安定さである。
【0007】
蓄電池に充電された電気であっても使用量に制約があり、発電しない日が、数日間続いた場合、システム自体作動しなくなるのが現実である。
【0008】
本発明は夜間、雨天、曇天 積雪、季節による太陽光軌道の変化等で発電量が不安定だったが、完全密閉遮光ボックス内にソーラーパネルとLED球を組み込みソーラーパネルにLED光を照射し、太陽光不足でも夜間であっても、安定した電力を得ることができ24時間使用することができる。」

イ 「【0027】
完全密閉遮光ボックス(A)内で使用するピラミット型LED球(8)(9)(10)(11)用電源は太陽光で発電したソーラーパネル(B)で発電した直流電気が送電線(20)を通って接続箱(a)に送られ、接続箱(a)から送電線(17)を通ってピラミット型LED球(8)(9)(10)(11)に送電される
【0028】
日中は太陽光ソーラーパネル(B)で発電した電気と完全密閉遮光ボックス(A)内で発電した電気で使用量は多いが、夜間や天候不順においては完全密閉遮光ボックス(A)内で発電した電気のみなので使用量は少なくなるが、一定量の電気は毎日使用することができる
【0029】
太陽光ソーラーパネル(B)で発電した直流電気は接続箱(a)に送られ接続箱(a)から完全密閉遮光ボックス(A)内のピラミット型LED球の発光電源用として使われる
【0030】
完全密閉遮光ボックス(A)内のピラミット型LED球が全て点灯すれば完全密閉遮光ボックス(A)内の上面ソーラーパネル(C)と下面ソーラーパネル(D)はLED光を受け発電する
【0031】
完全密閉遮光ボックス(A)内で発電した電気と太陽光ソーラーパネル(B)で発電された電気は接続箱(a)に送られ接続箱(a)からパワーコンディショナー(D)に送られて、直流から交流に変換され一般に使用することができる
【0032】
夜間や天候不順等で太陽光ソーラーパネル(B)での発電がなくても、完全密閉遮光ボックス(A)内で発電した電気は接続箱(a)に送られLED球を発光させる電気の必要な分だけ再びLED発光用として使われるが、回転継続性により、24時間使用することができる」

(2)上記「(1)」の「ア」及び「イ」の記載から本願発明の技術的意義について検討する。
ア 太陽光ソーラーパネル(B)で発電した直流電気の電力をP(B)とする。
LED球を発光させる際の消費電力(損失)をP(L)とする。
上面ソーラーパネル(C)及び下面ソーラーパネル(D)が発電する電力をそれぞれP(C)、P(D)とする。

イ そうすると、本願発明の「太陽光で使用するソーラーパネル横断面図」である図9と、「完全密閉遮光ボックス本体横断面図」である図2とを組み合わせ、上記P(B)、P(L)、P(C)及びP(D)を当て嵌めると下記図のとおりとなる。
(なお、下記図は、本願発明の構成の概略図であって、本願の図2及び図9を用いて当審が作成したものである。)


ウ 使用できる電力として出力される電力をP(W)とすると、上記イによれば、
P(W)=P(B)-P(L)+P(C)+P(D)・・・式(1)
となる。
上記式(1)は
P(W)=P(B)-(P(L)-P(C)-P(D))・・・式(2)と置き換えることができる。
ここで、ソーラーパネルの変換効率を考慮すれば、P(L)>P(C)+P(D)であることは技術常識であるから、本願発明の構成では、上記式(2)のとおり、P(B)から(P(L)-P(C)-P(D))を差し引いた電力しか得られない。
したがって、本願発明は、太陽光ソーラーパネルで発電される電力をピラミット型LED球と上面ソーラーパネル(C)及び下面ソーラーパネル(D)とで単に損失させているだけの装置にすぎないものであって、当業者が技術上の意義を理解できない発明であると言わざるを得ないものである。

ウ なお、本願発明が解決しようとする課題は、上記「(1)」「ア」によれば、太陽光不足でも夜間であっても、安定した電力を得ることができ24時間使用することができる発電装置を得ることにあると認められる。
そして、上記「(1)」「イ」の段落【0028】、【0032】の記載によれば、
「夜間や天候不順においては完全密閉遮光ボックス(A)内で発電した電気のみなので使用量は少なくなるが、一定量の電気は毎日使用することができる」、「夜間や天候不順等で太陽光ソーラーパネル(B)での発電がなくても、完全密閉遮光ボックス(A)内で発電した電気は接続箱(a)に送られLED球を発光させる電気の必要な分だけ再びLED発光用として使われるが、回転継続性により、24時間使用することができる」(上記「(1)」「イ」)ことは、
P(L)<P(C)+P(D)・・・・式(3)
であることを前提にするものと解される。
しかしながら、上記式(3)は、上面ソーラーパネル(C)及び下面ソーラーパネル(D)が発電する電力(P(C)+P(D))がLED球を発光させる際の消費電力(P(L))よりも大きいという自然法則に基づかないものである以上、技術的に理解できるものではない。

(3)上記(2)での検討によれば、本願の発明の詳細な記載を踏まえても、本願発明は、太陽光ソーラーパネルから供給される電力をLED球と上面、下面のソーラーパネルの間で単に損失させているだけの装置にすぎず、技術上の意義が理解できないと言わざるを得ないものである。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されているものとは認められないから、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4 むすび
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-04 
結審通知日 2017-12-12 
審決日 2017-12-25 
出願番号 特願2015-257798(P2015-257798)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (H02N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 聖司  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 松川 直樹
森林 克郎
発明の名称 第七ハイブリット発電  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ