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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1337713
審判番号 不服2017-3178  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-03 
確定日 2018-02-19 
事件の表示 特願2015-549120「パターン付ロールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日国際公開,WO2015/076180〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2015-549120号(以下「本件出願」という。)は,2014年(平成26年)11月13日(優先権主張平成25年11月25日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成28年 9月 2日差出:手続補正書
平成28年10月 3日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月28日差出:意見書,手続補正書
平成29年 1月11日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 3月 3日差出:審判請求書

第2 本願発明について
1 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項5に係る発明は,平成28年11月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項5に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明」という。)。
「 表面が導電性DLC層とされた基材を準備する工程と,該基材の表面に感光材を塗布し,露光・現像せしめてレジストパターンを形成する工程と,該導電性DLC層及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成する工程と,該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめる工程と,を含むパターン付ロールの製造方法であって,
前記基材である被処理ロールに対して処理を行う処理装置を複数個設け,ロボットアームで該被処理ロールを該処理装置に順次移載して処理するようにしたパターン付ロール全自動製造システムを用いて,パターン付ロールを製造し,
前記パターン付ロール全自動製造システムが,被処理ロールをチャックしてハンドリングする第一の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Aと,被処理ロールをチャックしてハンドリングする第二の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Bと,を有し,前記処理室A及び前記処理室Bを連通せしめ,前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリア又は前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに二台以上の真空成膜装置を配置し,前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリアに,ロールストック装置,感光材塗布装置,電子彫刻装置,レーザ露光潜像形成装置,脱脂装置,砥石研磨装置,超音波洗浄装置,銅メッキ装置,現像装置,ペーパー研磨装置から選ばれる処理装置の少なくとも一つを配置し,前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに,前記処理装置のうち前記処理室Aに配置しなかった処理装置の少なくとも一つを配置し,かつ前記処理室A及び前記処理室Bの前記処理装置は,設置及び撤去が可能とされてなり,前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットで該被処理ロールを該処理装置に順次移載して処理することにより,表面が導電性DLC層とされた基材の該表面に感光材を塗布し,露光・現像せしめてレジストパターンを形成し,該導電性DLC層及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成し,該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ,導電性DLC層の表面にDLCパターンを形成してなるパターン付ロールを製造してなり,前記真空成膜装置にて導電性DLC層の形成処理及びDLC被覆膜の形成処理が行われ,
前記真空成膜装置が二台以上配置されてなり,導電性DLC層の形成処理及びDLC被覆膜の形成処理が各々の前記真空成膜装置で同時に行うことが可能とされてなることを特徴とするパターン付ロールの製造方法。」

2 原査定の理由
平成29年1月11日付け拒絶査定による拒絶の理由は,概略,本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項5に係る発明は,その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2009-167523号公報(以下「引用例1」という。)に記載された発明,並びに,本件出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2012-154964号公報(以下「引用例2」という。)に記載された発明,及び,本件出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/125926号(以下「引用例3」という。)に記載された発明に基いて,本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

第3 引用例
1 引用例1の記載
(1)引用例1には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
・・・(略)・・・
【請求項20】
(A)表面に導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜が形成されている導電性基材のその導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成する工程,
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に,ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法。
【請求項21】
除去可能な凸状のパターンが,感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものである請求項20記載のめっき用導電性基材の製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項29】
絶縁層であるダイヤモンドライクカーボン膜が真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法,アーク放電法,イオン化蒸着法またはプラズマCVD法により形成される請求項20?28のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,めっき用導電性基材,その製造方法及びそれを用いた導体層パターン若しくは導体層パターン付き基材の製造方法,導体層パターン付き基材および透光性電磁波遮蔽部材に関する。
【背景技術】
・・・(略)・・・
【0004】
金属メッシュを電磁波シールド層として有する電磁波遮蔽用部材の製造法として,特許文献1には,メッシュ状に金属電着が可能な電着基板上に金属電解液を使用して金属を電着し,接着剤を介して電磁波遮蔽基板に接着転写して電磁波遮蔽板を作製する方法(以下,転写法という)が記載されている。上記の電着基板は,金属板等の導電性基板の上に,電着を阻害する絶縁性膜でメッシュパタ-ンと逆パターンを形成し,メッシュ状に金属電着が可能な電着部を露出させるようにして作製される。また,特許文献1には,絶縁層支持体上に凸状の導電性メッシュ層を形成した電着基板を用いる方法が記載されている。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
導電性基材表面に傷や微少な窪みなどがあると均一なめっきができず,従って均一な金属箔を形成することができない。そのような傷,微少な窪みなどの表面状態のむらの検査にも時間と労力がかかり,生産性の面からは問題である。
・・・(略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は,次のものに関する。
1. 表面に導電性ダイヤモンドライクカーボン膜又は導電性無機材料膜が形成されているめっき用導電性基材。
2. 基材及びその基材の表面に形成されている導電性ダイヤモンドライクカーボン膜又は導電性無機材料膜を含むめっき用導電性基材。
・・・(略)・・・
7. 基材の表面が,鋼,Ti,ニッケル基合金,クロム若しくはニッケルの合金めっき又は溶射された金属からなる項2?6のいずれかに記載のめっき用導電性基材。
・・・(略)・・・
20. (A)表面に導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜が形成されている導電性基材のその導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成する工程,
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に,ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするめっき用導電性基材の製造方法。
21. 除去可能な凸状のパターンが,感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものである項20記載のめっき用導電性基材の製造方法。
・・・(略)・・・
29. 絶縁層であるダイヤモンドライクカーボン膜が真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法,アーク放電法,イオン化蒸着法またはプラズマCVD法により形成される項20?28のいずれかに記載のめっき用導電性基材の製造方法。
・・・(略)・・・
32. (イ)項8?19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の凹部にめっきにより金属を析出させる工程
及び
(ロ)上記導電性基材の凹部に析出させた金属を剥離する工程を含むことを特徴とする導体層パターンの製造方法。
33. (イ)項8?19のいずれかに記載のめっき用導電性基材の凹部にめっきにより金属を析出させる工程
及び
(ロ)上記導電性基材の凹部に析出させた金属を別の基材に転写する工程を含むことを特徴とする導体層パターン付き基材の製造方法。
・・・(略)・・・
また,前記したいずれの絶縁層も,ダイヤモンドライクカーボン,Al_(2)O_(3)又はSiO_(2)であることが好ましい。また,前記したいずれの絶縁層も,硬度が10?40GPaのダイヤモンドライクカーボンであることが好ましい。また,前記したいずれの絶縁層の厚さも,0.5?20μmであることが好ましい。また,前記したいずれのめっき用導電性基材も,導電性のロール(ドラム)またはロールに巻き付けるものであってもよい。
絶縁層を形成する工程において,前記した境界面の角度は,導電性基材の表面に対して30度以上60度以下であることが好ましく,また,前記めっき用導電性基材の凹部側面の角度は,絶縁層側で30度以上60度以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のめっき用導電性基材において,基材表面に導電性DLC膜又は導電性無機材料膜を形成することにより,基材上の微少な歪みの是正,傷,微少な窪み等の修復を行うことができ,また,表面をより平滑にすることができる。この結果,パターン化されているかまたはされていないかにかかわらず,より均一な金属箔を作製することができる。また,その結果,導電性基材表面にパターニングされた絶縁層を形成する場合には,そのために使用されるレジスト膜の密着性を向上させることができ,よりパターニングの高精度化と微細化が図れる。
また,本発明のめっき用導電性基材において,基材上に導電性DLC膜又は導電性無機材料膜を形成することにより,めっき用導電性基材を繰り返し使用する場合,その表面の清掃や修正を簡単に又は省略することができる。また,従来,導電性基材として金属を使用する場合に発生していためっき薬品による金属表面の劣化が低減され若しくはなくなり,定期的に行う必要があった導電性基材表面の研磨あるいは化学処理のメンテナンス作業が簡単に又は不要となる。さらに,めっきした金属の転写の際に導電性基材の金属表面が少しずつ剥離していくといった欠点が低減できる。その結果,めっき用導電性基材を安価に提供できるようになる。
また,基材上に導電性DLC膜又は導電性無機材料膜を形成することにより,導電性基材表面の傷や窪みの有無の検査を簡単又は省略することができる。
基材と導電性DLC膜又は導電性無機材料膜との間の中間層により,基材と導電性DLC膜又は導電性無機材料膜との間の密着性を向上させることができる。
・・・(略)・・・
【0016】
本発明の導体層パターンの製造法によれば,めっきにより得られる導体層パターンのめっき用導電性基材からの剥離が容易であるため,特定のパターンを有する導体層パターンが容易に製造でき,また,透光性,電磁波シールド性又は導電性に優れた導体層パターンを容易に製造できる。さらに,また,このような導体層パターンを生産効率よく製造できる。」

エ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明におけるめっき用導電性基材は,基材及びその基材の表面に形成されている導電性ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜又は導電性無機材料膜を含む導電性基材であり,電解めっきによりその表面にめっきを施すことができるものである。
上記導電性DLC膜又は導電性無機材料膜の導電性の程度は,体積抵抗率で1×10^(3)Ω・cm以下が好ましく,1×10^(2)Ω・cm以下がより好ましく,1×10Ω・cm以下が最も好ましい。導電性が高い程めっきが析出しやすく体積抵抗率は低い方が好ましい。1×10^(3)Ω・cmを越えると,めっきが析出しない或は析出しても抵抗値が高いため,めっき時の電圧が高くなったり,発熱等が起こる傾向がある。体積抵抗率は1×10^(-6)Ω・cm未満になるとその生成が困難に成る傾向があるので,それ以上が好ましい。上記導電性DLC膜又は導電性無機材料膜の導電性の,体積抵抗率による評価は,後記するように,その下に中間層を有するときは,中間層に導電性DLC膜又は導電性無機材料膜を積層してこれらを併せて測定した値である。
体積抵抗率の測定は,別途シリコンウェハやガラス等の絶縁物に上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜,又は,中間層を形成後その上に上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜を成膜し,四端針抵抗測定法(装置としては,例えばロレスターGP,三菱化学株式会社製を使用することができる)により測定できる。中間層を使用した場合,中間層の厚みと上記導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜の厚みとの和を試料厚みとして,体積抵抗率を算出した。
【0020】
本発明におけるめっき用導電性基材は,また,パターン状のめっき部を有する導電性基材であって,導電性基材の表面に絶縁層が形成されており,その絶縁層に開口方向に向かって幅広なめっきを形成するための凹部(めっき部)が形成されている。この凹部の底面には導電性材料が露出している。この導電性基材は,基材及びその基材の表面に形成されている導電性DLC膜又は導電性無機材料膜を含むものである。
【0021】
本発明において,導電性基材は,その表面のめっき部に電解めっきで金属を析出させるために十分な導電性を有するものである。その導電性基材中の導電性DLC膜又は導電性無機材料膜を表面に有する基材は,金属等の導電性の基材であることが特に好ましい。また,めっき用導電性基材はめっき部の表面に電解めっきにより形成された金属層を容易に剥離できるものであることが好ましく,また,接着性支持体に転写させることができるように,その上に形成された金属層との密着力が低く,容易に剥離できるものであるものが好ましい。導電性DLC膜又は導電性無機材料膜が形成される基材は,上に形成される導電性DLC膜又は導電性無機材料膜に仮にピンホールがあった場合でも耐食性を維持できるようにある程度の耐食性があることが好ましい。そのような導電性の基材の材料としてはステンレス鋼,チタン,チタン合金,チタンをライニングした材料,ニッケル,ニッケル基合金,などを用いることができる。また,クロムめっきされた鋳鉄,クロムめっきされた鋼,ニッケル合金めっきが施された鋼などのめっきにより耐食層を形成することもできる。あるいはサーメットや超硬合金などを溶射により形成することもできる。導電性DLC膜が十分な導電性を有する場合には,基材は,セラミック等の絶縁体であってもよい。基材は耐食性があり,かつ高硬度であることがさらに好ましい。
【0022】
基材上に導電性DLC膜若しくは導電性無機材料膜を形成する方法は,基本的には下記する絶縁性DLC膜若しくは無機材料膜を形成する方法と同様であるが,DLC膜若しくは無機材料膜に導電性を付与する方法が加味される。
・・・(略)・・・
【0030】
前記の導電性基材の形状としては,シート状,プレート状,ロール状,フープ状等がある。ロール状の場合は,シート状,プレート状のものを回転体(ロール)に取り付けたものであってもよい。フープ状の場合は,フープの内側の2箇所から数箇所にロールを設置し,そのロールにフープ状の導電性基材を通すような形態等が考えられる。ロール状,フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため,シート状,プレート状に比較すると,生産効率が高く,好ましい。導電性基材をロールに巻きつけて使用する場合,ロールとして導電性のものを使用し,ロールと導電性基材が容易に導通するようにしたものが好ましい。
【0031】
本発明のめっき用導電性基材が,めっきにより金属層が形成される凹部が開口方向に向かって幅広となって形成されている場合,例えば,その凹部は,導電性基材表面に形成される絶縁層を用いて形成される。
絶縁層の厚さは,凹部の深さに対応する。凹部の深さは,析出するめっきの厚さとも関係するため,目的に応じて適宜決定される。絶縁層の厚さは,0.10μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく,0.5μm以上10μm以下の範囲であることがより好ましい。絶縁層が薄すぎると絶縁層にピンホールが発生しやすくなるため,めっきした際に,絶縁層を施した部分にも金属が析出しやすくなる。絶縁層の厚さは,1?5μmであることが特に好ましい。
【0032】
上記の絶縁層は,ダイヤモンドに類似したカーボン薄膜,いわゆるダイヤモンドライクカーボン(以下,DLCとする)薄膜のうち,絶縁性を有するものにて形成することができる。DLC薄膜は,特に,耐久性,耐薬品性に優れているため,特に好ましい。
さらに,絶縁層をAl_(2)O_(3),SiO_(2)等の無機化合物のような無機材料で形成することもできる。
・・・(略)・・・
【0041】
本発明におけるめっき用導電性基材の製造方法としては,導電性基材の表面に,導電性基材を露出させている凹部によって幾何学図形が描かれるように絶縁層を形成する工程を含む。
この工程は,(A)導電性基材の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成する工程,(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に,絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含む。
【0042】
上記(A)導電性基材の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成する工程は,フォトリソグラフ法を利用して,レジストパターンを形成する方法を利用することができる。
この方法は,
(a-1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程,
(a-2)感光性レジスト層を導体層パターンに対応したマスクを通して露光する工程
及び
(a-3)露光後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
【0043】
また,上記(A)導電性基材の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成する工程は,
(b-1)導電性基材の上に感光性レジスト層を形成する工程,
(b-2)感光性レジスト層に導体層パターンに対応した部分にマスクをせずレーザー光を照射する工程
及び
(b-3)レーザー光を照射後の感光性レジスト層を現像する工程
を含む。
・・・(略)・・・
【0045】
具体的方法として,導電性基材上にドライフィルムレジスト(感光性樹脂層)をラミネートし,マスクを装着して露光することにより,凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし,不要部を現像して除去することにより形成することができる。また,凸状パターンは,導電性基材に液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥するかあるいは仮硬化させた後,マスクを装着して露光することにより,凸状パターンとして残存させる部分を硬化状態に不要部を現像可能状態とし,不要部を現像して除去することにより形成することもできる。液状レジストは,スプレー,ディスペンサー,ディッピング,ロール,スピンコート等により塗布できる。
【0046】
上記において,ドライフィルムレジストをラミネートし,又は液状レジストを塗布した後に,マスクを介して露光する代わりにレーザー光などでマスクを使用せず直接に露光する方法を採用することもできる。光硬化性樹脂にマスクを介して又は介さずして活性エネルギー線を照射することでパターニングできればその態様は問わない。
導電性基材のサイズが大きい場合などはドライフィルムレジストを用いる方法が生産性の観点からは好ましく,導電性基材がめっきドラムなどの場合は,ドライフィルムレジストをラミネートし,又は液状レジストを塗布した後にマスクを介さずにレーザー光などで直接に露光する方法が好ましい。
・・・(略)・・・
【0050】
導電性基材2の上に感光性レジスト層(感光性樹脂層)5形成されている(図3(a))。この積層物の感光性レジスト層(感光性樹脂層)5に対し,フォトリソグラフ法を適用して感光性レジスト層5をパターン化する(図3(b))。パターン化は,パターンが形成されたフォトマスクを感光性レジスト層5の上に載置し,露光した後,現像して感光性レジスト層5の不要部を除去して突起部6を残すことにより行われる。突起部6の形状とそれからなる凸状パターンは,導電性基材2上の凹部4とそのパターンに対応するよう考慮される。
【0051】
この時,突起部6の断面形状において,その側面は,導電性基材に対して垂直であること,又は,突起部6が導電性基材2に接する端部に対して,突起部6の側面上方の少なくとも一部がその端部に覆い被さるような位置にあることが好ましい。突起部6の幅で言う場合は,凸状パターン幅の最大値d_(1)は,凸状パターンと導電性基材2に接する幅d_(0)と等しいか大きくすることが好ましい。これは,形成される密着性のよい絶縁層の凹部幅はd_(1)によって決定されるからである。ここで,突起部6の断面形状で,突起部6の幅の最大値d_(1)が突起部6と導電性基材2に接する幅d_(0)と等しいか大きくする方法としては,突起部6の現像時にオーバ現像するか,形状がアンダーカットとなる特性を有するレジストを使用すれば良い。d_(1)は凸部の上部で実現されていることが好ましい。
除去可能な凸部のパターンを形成する突起部6の形状は,凹部の形状に対応づけられるが,その作製の容易性から,最大幅1μm以上,間隔が1μm以上,高さが1?50μmであることが好ましい。めっき用導電性基材を,光透過性電磁波遮蔽部材用の導体層パターンを作製するために使用するときは,突起部6は,最大幅1?40μm,間隔が50?1000μm及び高さ1?30μmであることがそれぞれ好ましい。特に最大幅3?10μm,間隔が100?400μmであることが好ましい。また,めっき用導電性基材を,穴明き金属箔を作製するために使用するときは,前記したような絶縁層3が形成されるように,平面形状が適宜の大きさの円形又は矩形である突起部を適当な間隔に配置する。
【0052】
前記した(B)除去可能な凸状パターンが形成されている導電性基材の表面に,絶縁層を形成する工程について,説明する。
突起部6からなる凸状パターンを有する導電性基材2の表面に絶縁層7を形成する(図3(c))。
【0053】
絶縁層としてDLC薄膜を形成する方法としては,真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法,アーク放電法,イオン化蒸着法等の物理気相成長法,プラズマCVD法等の化学気相成長法等のドライコーティング法を採用し得るが,成膜温度が室温から制御できる高周波やパルス放電を利用するプラズマCVD法が特に好ましい。
・・・(略)・・・
【0057】
次に,前記した(C)絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程について説明する。絶縁層7が付いている状態(図3(c)参照)で,突起部6からなる凸状パターンを除去する(図3(d)参照)。
絶縁層の付着しているレジストの除去には,市販のレジスト剥離液や無機,有機アルカリ,有機溶剤などを用いることができる。また,パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば,それを用いることもできる。
剥離の方法としては,例えば薬液に浸漬することでレジストを膨潤,破壊あるいは溶解させた後これを除去することが可能である。液をレジストに十分含浸させるために超音波,加熱,撹拌等の手法を併用しても良い。また,剥離を促進するためにシャワー,噴流等で液をあてることもできるし,柔らかい布や綿棒などでこすることもできる。
また,絶縁層の耐熱が十分高い場合には高温で焼成してレジストを炭化させて除去することもできるし,レーザーを照射して焼き飛ばす,といった方法も利用できる。
剥離液としては,例えば,3%NaOH溶液を用い,剥離法としてシャワーや浸漬が適用できる。
・・・(略)・・・
【0099】
また,本発明で用いられる導電性基材として,回転体(ロール)を用いることができることは前記したが,さらに,この詳細を説明する。回転体(ロール)は金属製が好ましい。さらに,回転体としてはドラム式電解析出法に用いるドラム電極などを用いることが好ましい。ドラム電極の表面を形成する物質としては上述のように最表面には導電性DLC又は導電性無機材料膜,その下の基材にはステンレス鋼,チタン,チタン合金,チタンをライニングした材料,ニッケル,ニッケル基合金,などを用いることができる。また,クロムめっきされた鋳鉄,クロムめっきされた鋼,ニッケル合金めっきが施された鋼などのめっきにより耐食層を形成することもできる。あるいはサーメットや超硬合金などを溶射により形成することもできる。導電性基材として回転体を用いることにより連続的に作製して巻物として導体層パターン付き基材を得ることが可能となるため,この場合,生産性が飛躍的に大きくなる。」

オ 「【実施例1】
【0118】
(導電性DLC膜の形成)
装置内にガス導入管とスパッタリング用のターゲットの両方を有するコーティング装置(HAUZER社製,HTC1500)を用いて導電性DLC膜を形成した。詳しくは,100mm□のステンレス基板(SUS304,鏡面仕上げ,厚み0.5mm,日新製鋼(株)製。以下,基板)を真空チャンバー内に入れ,最初にArガスによるプラズマを励起し基板のクリーニングを行なった後,基板の片面に中間層としてCrをスパッタリングにより0.2μm形成した。次いで,アセチレンガス及びメタンガスを導入しながら,タングステンカーバイド(WC)をスパッタし,膜厚が1.5?2.5μmとなるように,中間層の上にタングステン(W)を10%含有したDLC層を形成した。
【0119】
(凸状パターンの形成)
レジストフィルム(フォテックRY3315,10μm厚,日立化成工業株式会社製)を上記で得られた基板の導電性DLCが形成された面に貼り合わせた。貼り合わせの条件は,ロール温度105℃,圧力0.5MPa,ラインスピード1m/minで行った。次いで,光透過部のライン幅が40μm,ラインピッチが300μm,バイアス角度が45°(正四角形のなかに,ラインが正四角形の辺に対して45度の角度になるように配されている)で,格子状にパターンが80mm角のサイズで形成されているネガフィルムを,基板の導電性DLCが形成された面に静置した。紫外線照射装置を用いて,600mmHg以下の真空下において,ネガフィルムを載置し,基板の上から,紫外線を120mJ/cm^(2)照射した。さらに。1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することで,導電性DLCの上にライン幅39?41μm,ラインピッチ300μm,バイアス角度45度の突起部レジスト膜(突起部;高さ10μm)からなる格子状パターンを形成した。
【0120】
(絶縁層の形成)
PBII/D装置(TypeIII,株式会社栗田製作所製)によりDLC膜を形成する。チャンバー内にレジスト膜が付いたまま基板を入れ,チャンバー内を真空状態にした後,基板のレジスト膜が形成された面をアルゴンガスで表面のクリーニングを行った。次いで,チャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを導入し,膜厚0.1μmとなるように中間層を成膜した。次いで,トルエン,メタン,アセチレンガスを導入し,膜厚が5?6μmとなるように,中間層の上にDLC層を形成した。そのときレジスト膜により形成された凸部両側のDLC膜の厚さは,4?6μmであった。境界面の角度は導電性基材の表面に対して45?51度であった。なお,絶縁層の厚さ及び境界面の角度の測定は導電性基材の一部を切り取って樹脂で注型し,倍率は3000倍で断面をSEM観察することにより実測した。測定点は5点で,レジスト膜の両側を測定したので計10点の最大値と最小値を採用した。
【0121】
(凹部の形成;絶縁層の付着した凸状パターンの除去)
絶縁層が付着した基板を水酸化ナトリウム水溶液(10%,50℃)に浸漬し,時々揺動を加えながら8時間放置した。凸状パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜が剥離してきた。一部剥がれにくい部分があったため,布で軽くこすることにより全面剥離し,めっき用導電性基材を得た。
凹部の形状は,開口方向に向かって幅広になっており,その凹部側面の傾斜角は,前記境界面の角度と同じであった。凹部の深さは5?6μmであった。また,凹部の底部での幅は,39?41μm,開口部での幅(最大幅)は49?53μmであった。凹部のピッチはピッチ300μmであった。」

(2)引用発明
引用例1には,請求項20及び請求項21に記載された構成を全て含む請求項29に係る発明として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 (A)表面に導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜が形成されている導電性基材のその導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成する工程,
(B)除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に,ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程
及び
(C)絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程
を含み,
除去可能な凸状のパターンが,感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものであり,
絶縁層であるダイヤモンドライクカーボン膜が真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法,アーク放電法,イオン化蒸着法またはプラズマCVD法により形成されるめっき用導電性基材の製造方法。」

2 引用例2及び引用例3の記載
(1)引用例2には,以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に感光材を塗布し,露光・現像せしめてレジストパターンを形成し,該基材及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成し,該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ,基材の表面にDLCパターンを形成してなることを特徴とするパターン付ロール。
【請求項2】
前記感光材が塗布される基材が,Ni,ステンレス鋼,Ti,Cu,Alからなる群から選ばれた少なくとも一種の材料からなることを特徴とする請求項1記載のパターン付ロール。
【請求項3】
前記基材が,ゴム又はクッション性を有する樹脂からなるクッション層を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン付ロール。
・・・(略)・・・
【請求項11】
前記パターン付ロールが,連続めっき用ロールであることを特徴とする請求項1?6いずれか1項記載のパターン付ロール。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,上記した従来技術の問題点に鑑みなされたもので,サイドエッチングの問題を解消したパターン付ロール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため,本発明のパターン付ロールは,基材の表面に感光材を塗布し,露光・現像せしめてレジストパターンを形成し,該基材及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成し,該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ,基材の表面にDLCパターンを形成してなることを特徴とする。
【0009】
このようにして,レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめるため,サイドエッチングの問題が解消される利点がある。すなわち,本発明では,エッチングではなくいわゆるリフトオフとよばれる手法を用いているため,従来のようなサイドエッチングの問題が生じないのである。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を説明するが,これら実施の形態は例示的に示されるもので,本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0030】
図1において,符号10はパターン付ロールを示す。符号12は基材を示し,Ni,ステンレス鋼,Ti,Cu,Alからなる群から選ばれた少なくとも一種の材料からなるものを用いることができる。また,ゴム又はクッション性を有する樹脂からなるクッション層を備えるようにしてもよい。さらに,基材が,ゴム又はクッション性を有する樹脂からなるクッション性を有する材料からなるように構成することもできる。該クッション層は,ゴム又はクッション性を有する樹脂からなり,1mm?10cm程度の均一な厚さで表面の平滑度が高いシート状のものを,継ぎ目に隙間が開かないように基材12に強固に接着し,その後精密円筒研削,鏡面研磨される。
【0031】
まず,基材12の表面に感光材14を塗布する(図1(a)及び図2のステップ100)。露光・現像せしめてレジストパターン16を形成する(図1(b)及び図2のステップ102)。感光材として用いる感光性組成物はネガ型及びポジ型のいずれでも使用可能であるが,ネガ型感光性組成物を用いるのが好ましい。
【0032】
次に,該基材12及びレジストパターン16の表面にDLC被覆膜18を形成する(図1(c)及び図2のステップ104)。DLC被覆膜はCVD(Chemical Vapor Deposition)法やスパッタ法によって形成すればよい。
【0033】
次いで,該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ,基材の表面にDLCパターン20を形成する(図1(d)及び図2のステップ106)。
【実施例】
【0034】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが,これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0035】
(実施例1)
円周600mm,面長1100mmの版母材(アルミ中空ロール)を準備し,ブーメランライン(株式会社シンク・ラボラトリー製全自動レーザーグラビア製版ロール製造装置)を用いて下記する銅メッキ層及びニッケルメッキ層の形成までを行った。まず,版母材(アルミ中空ロール)を銅メッキ槽に装着し,中空ロールをメッキ液に全没させて20A/dm^(2),6.0Vで80μmの銅メッキ層を形成した。メッキ表面はブツやピットの発生がなく,均一な銅メッキ層を得た。この銅メッキ層の表面を4ヘッド型研磨機(株式会社シンク・ラボラトリー製研磨機)を用いて研磨して当該銅メッキ層の表面を均一な研磨面とした。次いで,ニッケルメッキ槽に装着し,メッキ液に半没させて2A/dm^(2),7.0Vで3μmのニッケルメッキ層を形成した。メッキ表面はブツやピットの発生がなく,均一なニッケルメッキ層を得た。上記形成したニッケルメッキ層を基材としてその表面に感光膜(サーマルレジスト:TSER-NS(株式会社シンク・ラボラトリー製))を塗布(ファウンテンコーター),乾燥した。得られた感光膜の膜厚は膜厚計(FILLMETRICS社製F20,松下テクノトレーデイング社販売)で計ったところ,7μmであった。ついで,画像をレーザー露光し現像した。上記レーザー露光は,Laser Stream FXを用い露光条件300mJ/cm^(2)で所定のパターン露光を行った。また,上記現像は,TLD現像液(株式会社シンク・ラボラトリー製現像液)を用い,現像液希釈比率(原液1:水7)で,24℃90秒間行い,所定のレジストパターンを形成した。
【0036】
該ニッケルメッキ層及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜をCVD法で形成した。雰囲気アルゴン/水素ガス雰囲気,原料ガスにヘキサメチルジシロキサン,成膜温度80-120℃,成膜時間60分で膜厚0.1μmの中間層を成膜した。次に,原料ガスにトルエン,成膜温度80-120℃,成膜時間180分で膜厚5μmのDLC層を成膜した。
【0037】
次いで,該中空ロールを水酸化ナトリウム水溶液中で超音波処理を30分行った。そして,該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ,基材の表面にDLCパターンが形成されたグラビア印刷用ロールを得た。
・・・(略)・・・
【0040】
(実施例3)
パターニング形状を変えた以外は実施例1と同様にして,連続めっき用ロールを得た。得られた連続めっき用ロールを電子顕微鏡で観察したところ,図5に示す高精細なDLCパターンが観察された。図5において,DLCパターン20の線幅は8μmであった。」

(2)引用例3には,以下の事項が記載されている。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は,グラビア製版用の処理システムの発明に関し,より詳しくは,夜間であっても無人操業が可能な全自動グラビア製版用処理システムに関する。」

イ 「発明が解決しようとする課題
[0008] 本発明は,上記した従来技術の現状に鑑みてなされたもので,グラビア製版ロールの製造を従来よりも迅速に行うことが出来,省スペース化をはかることが出来,また夜間であっても無人操業が可能であり,さらに,製造ラインをフレキシブルにカスタマイズすることができ,顧客の様々なニーズに応えることができる自由度の高い全自動グラビア製版用処理システムを提供することを目的とする。
[0009] 上記課題を解決するため,本発明に係る全自動グラビア製版用処理システムは,被製版ロールをチャックしてハンドリングする第一の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Aと,被製版ロールをチャックしてハンドリングする第二の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Bと,を有し,前記処理室A及び前記処理室Bを連通せしめ,前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリアに,ロールストック装置,感光膜塗布装置,電子彫刻装置,レーザ露光潜像形成装置,脱脂装置,砥石研磨装置,超音波洗浄装置,銅メッキ装置,表面硬化皮膜形成装置,現像装置,腐食装置,レジスト画像除去装置,ペーパー研磨装置から選ばれる処理装置の少なくとも一つを配置し,前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに,前記処理装置のうち前記処理室Aに配置しなかった処理装置の少なくとも一つを配置し,かつ前記処理室A及び前記処理室Bの前記処理装置は,設置及び撤去が可能とされてなり,前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットとの間で被製版ロールを受け渡すことにより,製版処理が行われるようにしたことを特徴とする。
[0010] このように,前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットとの間で被製版ロールを受け渡すことにより,スタッカクレーンを用いた従来のグラビア製版ロールの製造ラインよりも迅速に製造することが出来る。また,前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットとの間で被製版ロールを受け渡すので,スタッカクレーンが不要となり,省スペース化をはかることが出来るという利点がある。さらに,一連の処理を所定のプログラムに基づいて全自動で処理できるので,夜間であっても無人操業が可能という利点もある。
[0011] さらにまた,前記処理装置は,ハンドリングエリア内での設置及び撤去が可能とされているため,前記処理装置を設置又は撤去して交換したり配置したりすることで,製造ラインをフレキシブルにカスタマイズすることができ,顧客の様々なニーズに応えることができるので,自由度の高い全自動グラビア製版用処理システムである。従来であれば,スタッカクレーンを設置していたために,製造ラインの場所や設置箇所に限りがあったが,本発明では,前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットのハンドリングエリアに処理装置を設置すればよいので,顧客の要望に応じて製造ラインをフレキシブルにカスタマイズすることができるという利点がある。」

ウ 「図面の簡単な説明
[0015] [図1]本発明に係る全自動グラビア製版用処理システムの一つの実施の形態を示す概略平面図である。
発明を実施するための形態
[0016] 以下に本発明の実施の形態を説明するが,これら実施の形態は例示的に示されるもので,本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
[0017] 本発明に係るグラビア製版ロールの全自動グラビア製版用処理システムを添付図面を用いて説明する。図1において,符号10は本発明に係るグラビア製版ロールの全自動グラビア製版用処理システムを示す。全自動グラビア製版用処理システム10は,処理室Aと,処理室Bとから構成されている。前記処理室Aと処理室Bとは壁12で分け隔てられており,かつ開閉自在なシャッター14を介して連通せしめられている。
[0018] 処理室Aの構成について説明する。処理室Aにおいて,符号16は第一の産業ロボットであり,旋回自在な多軸のロボットアーム18を有している。この第一の産業ロボット16は制御盤28を操作することで制御される。符号Qは第一の産業ロボット16のハンドリングエリアであるロボットアーム18の旋回範囲を示す。
[0019] 符号20は被製版ロールであり,22a,22bはそれぞれロールストック装置である。このロールストック装置については例えば特許文献4?6に開示されたロールストック装置を用いることが可能である。
[0020] 符号24は感光膜塗布装置であり,符号26はレーザ露光装置である。図示例では,レーザ露光装置26の上に感光膜塗布装置24が設けられている。これらの装置には従来公知の装置を適用することができ,例えば特許文献4?6に開示されたような感光膜塗布装置及びレーザ露光装置を用いることができる。符号50は中継のために被製版ロール20を置くためのロール中継載置台である。ロール中継載置台50の下には,ペーパー研磨を行うためのペーパー研磨装置21が設けられている。ペーパー研磨装置21としては,例えば特許文献4?6に開示されているようなペーパー研磨装置を用いることが可能である。また,処理室Aには,全自動グラビア製版用処理システム10を制御するためのメイン制御盤52が設けられている。
[0021] 図示の例では,感光膜塗布装置24を設置し,レーザ露光装置26でレーザ露光する場合を示したが,電子彫刻装置を設置して,電子彫刻する方法でもよい。電子彫刻装置としては従来公知の装置を適用することができ,例えば特許文献4?6に開示されたような電子彫刻装置を用いることができる。
[0022] 次に,処理室Bの構成について説明する。処理室Bにおいて,符号30は第二の産業ロボットであり,旋回自在な多軸のロボットアーム32を有している。この第二の産業ロボット30は制御盤29を操作することで制御される。符号Pは第二の産業ロボット30のハンドリングエリアであるロボットアーム32の旋回範囲を示す。
[0023] 符号34は砥石研磨装置であり,符号36は超音波洗浄装置である。砥石研磨装置34には従来公知の装置を適用することができ,例えば特許文献4?6に開示されたような砥石研磨装置を用いることができる。また,超音波洗浄装置36は,洗浄水を溜めるための貯留槽と前記貯留槽の下部に設けられた超音波振動子とを有しており,前記超音波振動子の超音波振動で洗浄水を振動させて洗浄を行うことができる装置である。
[0024] 符号38は脱脂装置であり,符号40は銅メッキ装置である。これらの装置には従来公知の装置を適用することができ,例えば特許文献4?6に開示されたような脱脂装置及び銅メッキ装置を用いることができる。
[0025] 符号42は現像装置であり,符号44は腐食装置である。これらの装置には従来公知の装置を適用することができ,例えば特許文献4?6に開示されたような現像装置及び腐食装置を用いることができる。
[0026] 符号46はレジスト剥離装置であり,符号48はクロムメッキ装置である。レジスト剥離装置は従来公知の装置を適用することができ,例えば特許文献4?6に開示されたようなレジスト剥離装置を用いることができる。クロムメッキ装置については,従来公知のものを使用でき,例えば特許文献1に開示されたようなクロムメッキ装置を用いることができる。また,図示例では,表面硬化皮膜形成装置の例としてクロムメッキ装置を使用した例を示したが,表面硬化皮膜形成装置としては,他にもDLC膜形成装置や二酸化珪素被膜形成装置を適用できる。DLC被膜形成装置としては例えば特許文献2に記載されたようなDLC被膜形成装置を使用することができ,二酸化珪素被膜形成装置としては例えば特許文献3に記載されたような二酸化珪素被膜形成装置を使用することができる。
[0027] 符号70は水洗乾燥装置であり,各処理毎に必要に応じて,水洗乾燥が行えるようになっている。
[0028] 図示の例では前記処理室Aがクリーンルームとされている。前記処理室A及び処理室Bは,必要に応じてそれぞれクリーンルームとすることが可能である。
[0029] 処理室Aの壁56には扉58,60が設けられており,製版された製版ロールを取り出したり,新たな被製版ロール(版母材)を入れたりする。製版された製版ロールはロールストック装置22a,22bのいずれか一方に載置され,これから製版が行われる被製版ロールは他方のロールストック装置に載置される。処理室Aの外側には,コンピュータ62が置かれており,種々の情報をチェックしたり管理したり,種々のプログラムの設定などが行われる。符号64は,製造された製版ロールを示す。
[0030] 図1に基づいて,本発明の全自動グラビア製版用処理システムの作用を説明する。ロールストック装置22a,22bのいずれか一方に載置された被製版ロール20を第一の産業ロボット16がチャックしてロール中継載置台50に置き,第二の産業ロボット30に受け渡す。被製版ロール20を第二の産業ロボット30がチャックして,脱脂装置38に運んで被製版ロール20を離して脱脂装置38にセットする。
[0031] 脱脂装置38での脱脂作業を終えると,第二の産業ロボット30が被製版ロール20をチャックして銅メッキ装置40に運んで被製版ロール20を離して銅メッキ装置40にセットする。
[0032] 銅メッキ装置40でのメッキ作業を終えると,第二の産業ロボット30が被製版ロール20をチャックしてロール中継載置台50に運んで置き,第一の産業ロボット16に受け渡す。第一の産業ロボット16が被製版ロール20をチャックして砥石研磨装置34に運んで被製版ロール20を離して砥石研磨装置34にセットする。
[0033] 砥石研磨装置34での砥石研磨作業を終えると,第一の産業ロボット16が被製版ロール20をチャックして超音波洗浄装置36に運んで被製版ロール20を離して超音波洗浄装置36にセットする。
[0034] 超音波洗浄装置36での超音波洗浄作業を終えると,第一の産業ロボット16が被製版ロール20をチャックして感光膜塗布装置24に運んで被製版ロール20を離して感光膜塗布装置24にセットする。
[0035] 感光膜塗布装置24での感光膜塗布作業を終えると,第一の産業ロボット16が被製版ロール20をチャックしてレーザ露光装置26に運んで被製版ロール20を離してレーザ露光装置26にセットする。
[0036] レーザ露光装置26での露光作業を終えると,第一の産業ロボット16が被製版ロール20をチャックしてロール中継載置台50に置き,第二の産業ロボット30に受け渡す。被製版ロール20を第二の産業ロボット30がチャックして,現像装置42に運んで被製版ロール20を離して現像装置42にセットする。
[0037] 現像装置42での現像作業を終えると,第二の産業ロボット30が被製版ロール20をチャックして腐食装置44に運んで被製版ロール20を離して腐食装置44にセットする。
[0038] 腐食装置44での腐食(エッチング)作業を終えると,第二の産業ロボット30が被製版ロール20をチャックしてレジスト剥離装置46に運んで被製版ロール20を離してレジスト剥離装置46にセットする。
[0039] レジスト剥離装置46でのレジスト剥離作業を終えると,第二の産業ロボット30が被製版ロール20をチャックしてクロムメッキ装置48に運んで被製版ロール20を離してクロムメッキ装置48にセットする。そしてクロムメッキ装置48でクロムメッキを行う。なお,水洗乾燥装置70で,各処理毎に被製版ロール20の水洗乾燥が行われる。
[0040] クロムメッキ装置48でのメッキ作業を終えると,第二の産業ロボット30が被製版ロール20をチャックしてペーパー研磨装置21に運んで被製版ロール20を離してペーパー研磨装置21にセットする。ペーパー研磨装置21でペーパー研磨(自動研磨)が行われると製版ロール64となり,図示例ではロールストック装置22bに載置される。
[0041] このようにして出来上がった製版ロール64は処理室Aの外側へと運び出されて完成する。」

エ 「 請求の範囲
[請求項1] 被製版ロールをチャックしてハンドリングする第一の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Aと,被製版ロールをチャックしてハンドリングする第二の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Bと,を有し,前記処理室A及び前記処理室Bを連通せしめ,前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリアに,ロールストック装置,感光膜塗布装置,電子彫刻装置,レーザ露光潜像形成装置,脱脂装置,砥石研磨装置,超音波洗浄装置,銅メッキ装置,表面硬化皮膜形成装置,現像装置,腐食装置,レジスト画像除去装置,ペーパー研磨装置から選ばれる処理装置の少なくとも一つを配置し,前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに,前記処理装置のうち前記処理室Aに配置しなかった処理装置の少なくとも一つを配置し,かつ前記処理室A及び前記処理室Bの前記処理装置は,設置及び撤去が可能とされてなり,前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットとの間で被製版ロールを受け渡すことにより,製版処理が行われるようにしたことを特徴とする全自動グラビア製版用処理システム。
[請求項2] 前記処理室Aをクリーンルームとし,前記処理室Aにロール搬入口を設け,前記ロール搬入口近傍に被製版ロールをストックするためのロールストック装置を配置し,前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリアに,ロールストック装置,感光膜塗布装置,レーザ露光潜像形成装置,砥石研磨装置,ペーパー研磨装置を配置し,前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに,脱脂装置,超音波洗浄装置,銅メッキ装置,表面硬化皮膜形成装置,現像装置,腐食装置,レジスト画像除去装置,を配置し,前記処理室A又は前記処理室Bにロール中継載置台を設け,前記ロール中継載置台を介して前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットとの間で被製版ロールを受け渡すことにより,製版処理が行われるようにしたことを特徴とする請求項1記載の全自動グラビア製版用処理システム。
[請求項3] 前記表面硬化皮膜形成装置が,クロムメッキ装置,DLC膜形成装置,又は二酸化珪素被膜形成装置であることを特徴とする請求項1又は2記載の全自動グラビア製版用処理システム。」

オ 「[図1]




第4 対比
1 本願発明と引用発明とを比較すると,以下のとおりとなる。
(1)基材を準備する工程
引用発明の「導電性基材」は,「表面に導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜が形成され」,「その導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成」され,当該「除去可能な凸状のパターン」は,「感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものであ」る。そうしてみると,引用発明の「導電性基材」は,本願発明の「表面に感光材を塗布し,露光・現像せしめてレジストパターンを形成」されるところの「基材」に対応付けられるものである。また,本願発明の「基材」と引用発明の「導電性基材」は,表面が導電性層とされる点で共通する。そして,引用発明においても,当該「導電性基材」を準備する工程が当然に存在するものと解される。

(2)レジストパターンを形成する工程
引用発明は,「導電性基材のその導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜の表面に,除去可能な凸状のパターンを形成する工程」を含み,当該「除去可能な凸状のパターンが,感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法により形成されたものであ」る。ここで,「感光性レジストを用いるフォトリソグラフ法」とは,基材上に「感光性レジスト」の層を形成し,露光・現像せしめて,「感光性レジスト」のパターンを形成する方法であることは,技術常識である(このことは,引用例1の段落【0043】の記載からも確認される事項である。)。一方,本願発明における「該基材の表面に感光材を塗布」することは,基材表面に感光材の層を形成する一つの手段である。そうしてみると,本願発明と引用発明は,「該基材の表面に感光材」の層を形成し,「露光・現像せしめてレジストパターンを形成する工程」を含む点で共通する。

(3)DLC被覆膜を形成する工程
引用発明は,「除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に,ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程」を含む。ここで,「除去可能な凸状のパターン」が,上記(2)で指摘したように,「導電性基材」の表面の導電性層の表面に形成されたレジストパターンであることを踏まえると,「除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面」とは,導電性層及びレジストパターンの表面であると解される。また,当該表面に形成されるものとして,本願発明の「DLC被覆膜」と,引用発明の「ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層」とは,「被覆膜」である点で共通する。したがって,本願発明と引用発明は,「導電性」「層及びレジストパターンの表面に」「被覆膜を形成する工程」を含む点で共通する。

(4)DLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめる工程
引用発明は,「絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程を含」む。ここで「凸状のパターン」に「付着している」「絶縁層」は,「凸状のパターン」と共に除去されるものと解される(このことは,引用例1の段落【0121】の記載からも確認される事項である。)。また,上記(2)で指摘したように,引用発明の「凸状のパターン」は,「感光性レジスト」のパターンである。そうしてみると,引用発明の当該工程は,レジストパターン上に形成されている被覆膜を,レジストパターンごと除去する工程であると解される。また,レジストパターンを「剥離」させることは,レジストパターンを「除去」することに包含される,一つの手法である。そうしてみると,本願発明と引用発明は,「該レジストパターン上に形成された」「被覆膜を該レジストパターンごと」除去せしめる工程を備えている点で共通する。

(5)パターン付きロールの製造方法
引用発明は,上記(1)?(4)で指摘したように,本願発明の各工程に対応付けられる工程を含む「めっき用導電性基材の製造方法」である。そして,これらの工程により,「めっき用導電性基材」の表面には,「パターン」が形成されていることは,明らかである。一方,本願発明における「ロール」とは基材の形態であると解される。そうしてみると,本願発明と引用発明は,「パターン付」基材「の製造方法」である点で共通する。

2 一致点及び相違点
(1)一致点
上記1を踏まえると,本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「 表面が導電性層とされた基材を準備する工程と,該基材の表面に感光材の層を形成し,露光・現像せしめてレジストパターンを形成する工程と,該導電性層及びレジストパターンの表面に被覆膜を形成する工程と,該レジストパターン上に形成された被覆膜を該レジストパターンごと除去せしめる工程と,を含むパターン付基材の製造方法。」

(2)相違点
本願発明と引用発明とは,以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明は,「基材」の「表面」が,「導電性DLC層とされ」るのに対して,引用発明の「導電性基材」は,「表面に導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜が形成されている」ものの,「導電性DLC層」に特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は,基材の表面に感光材を「塗布」するのに対して,引用発明は,「導電性基材」の表面に,感光材であるところの「感光性レジスト」を形成するものの,塗布するとは特定されていない点。

(相違点3)
本願発明は,レジストパターンが形成された基材の表面に「DLC被覆膜を形成する」のに対して,引用発明は,「感光性レジスト」のパターンが形成された「導電性基材」の表面に,「ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する」ものの,DLC被覆膜を形成するとは,特定されていない点。

(相違点4)
本願発明は,「該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめる」のに対して,引用発明は,「絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する」ものの,「剥離」するとは特定されていない点。

(相違点5)
本願発明は,パターン付「ロール」の製造方法であるのに対して,引用発明は,パターンが形成されている「めっき用導電性基材の製造方法」であるものの,当該「基材」が,ロールであるとは特定されていない点。

(相違点6)
本願発明は,「前記基材である被処理ロールに対して処理を行う処理装置を複数個設け,ロボットアームで該被処理ロールを該処理装置に順次移載して処理するようにしたパターン付ロール全自動製造システムを用いて,パターン付ロールを製造し,前記パターン付ロール全自動製造システムが,被処理ロールをチャックしてハンドリングする第一の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Aと,被処理ロールをチャックしてハンドリングする第二の産業ロボットのハンドリングエリアを有する処理室Bと,を有し,前記処理室A及び前記処理室Bを連通せしめ,前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリア又は前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに二台以上の真空成膜装置を配置し,前記処理室Aの前記第一の産業ロボットのハンドリングエリアに,ロールストック装置,感光材塗布装置,電子彫刻装置,レーザ露光潜像形成装置,脱脂装置,砥石研磨装置,超音波洗浄装置,銅メッキ装置,現像装置,ペーパー研磨装置から選ばれる処理装置の少なくとも一つを配置し,前記処理室Bの前記第二の産業ロボットのハンドリングエリアに,前記処理装置のうち前記処理室Aに配置しなかった処理装置の少なくとも一つを配置し,かつ前記処理室A及び前記処理室Bの前記処理装置は,設置及び撤去が可能とされてなり,前記第一の産業ロボット及び第二の産業ロボットで該被処理ロールを該処理装置に順次移載して処理することにより,表面が導電性DLC層とされた基材の該表面に感光材を塗布し,露光・現像せしめてレジストパターンを形成し,該導電性DLC層及びレジストパターンの表面にDLC被覆膜を形成し,該レジストパターン上に形成されたDLC被覆膜を該レジストパターンごと剥離せしめ,導電性DLC層の表面にDLCパターンを形成してなるパターン付ロールを製造してなり,前記真空成膜装置にて導電性DLC層の形成処理及びDLC被覆膜の形成処理が行われ,
前記真空成膜装置が二台以上配置されてなり,導電性DLC層の形成処理及びDLC被覆膜の形成処理が各々の前記真空成膜装置で同時に行うことが可能とされてなる」のに対して,引用発明は,このような全自動製造システムの構成を備えていない点。

第5 判断
1 相違点1について判断する。
引用発明の「導電性基材」の表面には,「導電性ダイヤモンドライクカーボン膜若しくは導電性無機材料膜が形成されている」。また,引用発明に関する実施例では,ステンレス基板上に導電性DLC膜が形成されている(段落【0118】を参照。)。このように,引用発明において,「導電性基材」の表面に形成する膜として「導電性ダイヤモンドライクカーボン膜」を選択することは,当業者の随意である。

2 相違点2について判断する。
引用例1の段落【0045】には,導電性基材上に感光性レジストを形成する方法として,「液状レジストを塗布した後に溶剤を乾燥するかあるいは仮硬化させ」る方法が記載されている。そうしてみると,引用発明において,「感光性レジスト」と導電性基材上に塗布することによって,相違点2に係る本願発明の構成を具備させることは,引用例1の記載が示唆する範囲の事項である。

3 相違点3について判断する。
引用発明は,「除去可能な凸状のパターンが形成されている導電性基材の表面に,ダイヤモンドライクカーボン又は無機材料からなる絶縁層を形成する工程」を含む。また,引用例1の段落【0032】には,当該絶縁層について,「DLC薄膜は,特に,耐久性,耐薬品性に優れているため,特に好ましい。」と記載されている。したがって,引用発明において,絶縁層としてダイヤモンドライクカーボンを選択することは,引用例1の記載が示唆する範囲の事項である。

4 相違点4について判断する。
引用例1の段落【0057】には,絶縁層が付着している凸状パターンを除去する工程について,「絶縁層の付着しているレジストの除去には,市販のレジスト剥離液や無機,有機アルカリ,有機溶剤などを用いることができる。また,パターンを形成するのに使用したレジストに対応する専用の剥離液があれば,それを用いることもできる。」と記載されている。また,引用例1の実施例においても,凸状パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜を剥離している(段落【0121】を参照。)。
したがって,引用発明において,「絶縁層が付着している凸状のパターンを除去する工程」を,凸状のパターンを剥離することによって実施することは,引用例1の記載が示唆する事項の範囲である。

5 相違点5について判断する。
(1)引用例1の段落【0030】には,導電性基材の形状として,ロール状が挙げられ,「ロール状,フープ状ともに金属箔を連続的に生産することが可能であるため,シート状,プレート状に比較すると,生産効率が高く,好ましい。」と記載されている。すなわち,引用例1には,ロール状の導電性基材を用いることが示唆されている。

(2)引用例2には,基材の表面にDLCパターンを形成してなるパターン付ロールが記載されている(【請求項1】を参照。)。また,当該基材を導電性材料とすること(【請求項2】を参照。)や,当該パターン付ロールが連続めっき用ロールであることも記載されている(【請求項11】を参照。)。また,引用例2にはDLCパターンを,レジストパターンを用いたリフトオフ法で形成することも記載されている(段落【0009】を参照。)。引用発明と,引用例2に記載された事項とは,いずれも,導電性基材上にリフトオフ法でダイヤモンドライクカーボン等からなるパターンを形成する,めっき用導電性基材に関する。したがって,上記(1)で指摘した引用例1の示唆,並びに,引用例2に記載された事項に基づいて,引用発明の「導電性基材」を「ロール」状とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮においてなし得たことである。
なお,引用例1の実施例では,平板状の基材が使用されている(例えば,実施例1では,「100mm□のステンレス基板(SUS304,鏡面仕上げ,厚み0.5mm,日新製鋼(株)製。・・・)」が用いられている。段落【0118】を参照。)。しかし,実施例は単なる例示にすぎず,引用発明を規定するものではないから,実施例において平板状基材が用いられているからといって,ロール状の構成を引用発明に適用することが妨げられるとはいえない。

(3)以上(1)及び(2)から,引用発明において,相違点5に係る本願発明の構成を具備させることは,当業者が容易になし得たことである。

6 相違点6について判断する。
(1)引用例1には,引用発明に係る具体的な実施例において,導電性DLC膜を形成するためのコーティング装置(HAUZER社製,HTC1500),ネガフィルムを介して紫外線を照射する紫外線照射装置,絶縁層であるDLC膜を形成するためのPBII/D装置(TypeIII,株式会社栗田製作所製)を用いることが記載されている(段落【0118】?【0121】を参照。)。また,当該実施例では,基材上に感光性レジストを形成する装置,紫外線照射装置による潜像形成後に現像して凸状パターンを形成する装置,揺動を加えることにより,凸状パターンを形成するレジスト膜とそれに付着したDLC膜を剥離させる装置も用いられている(上記の引用箇所を参照。)。すなわち,引用発明の実施に際しては,基材に対して処理を行う処理装置を複数個用いるものと解される。また,上記コーティング装置及び上記PBII/D装置は,真空成膜装置であると解される(引用例1の段落【0118】及び【0120】を参照。)。

(2)引用例3には,被処理ロールをチャックしてハンドリングする産業ロボットのハンドリングエリアをそれぞれ有する処理室A及び処理室Bを有し,感光膜塗布装置,レーザ露光潜像形成装置,表面硬化被膜形成装置,現像装置,レジスト画像除去装置等の処理装置を,連通する処理室A及び処理室Bのいずれかに,設置及び撤去が可能とされるように配置した全自動処理システムが記載されている([請求項1]を参照。)。また,産業ロボットを,旋回可能な多軸のロボットアームを有するものとすることも記載されている(段落[0018],[0022]を参照。)。そして,当該全自動処理システムの作用として,産業ロボットが被製版ロールを各処理装置にセットして,処理を行い,当該処理終了後には産業ロボットが被製版ロールをチャックして,次の処理装置へと運ぶことが記載されている(段落[0030]?[0041]を参照。)。すなわち,当該全自動処理システムにおいては,被処理体が,産業ロボットのロボットアームで処理装置に順次移載されて,処理されるものと解される。
また,引用例3には,前記表面硬化被膜形成装置の一例として,DLC膜形成装置が挙げられている([請求項3]を参照。)。

(3)引用発明と引用例3に記載された全自動処理システムは,同様の処理装置を複数個用いて,被処理体を処理する点で共通する。また,上記5(1)で指摘したように,引用例1には,引用発明の「導電性基材」をロール状とする示唆がなされている。また,製造工程の全自動化は,周知の課題である。したがって,引用例1に記載されるような複数の処理装置を用いて引用発明を実施する際に,引用例3に記載されるように,産業ロボットのハンドリングエリアをそれぞれ有する処理室A及び処理室Bのいずれかに,各処理装置を設置及び撤去が可能とされるように配置して,産業ロボットのロボットアームにより処理装置に順次移載して処理を行う,全自動処理システムの構成を採用することは,当業者の通常の創作能力の発揮においてなし得たことである。

(4)上記(3)で指摘したように,引用発明に引用例3に記載される全自動処理システムを採用する際に,引用発明を実施する上で必要な処理装置を,処理室A及び処理室Bのいずれに配置するかは,製造プロセスが効率的に実施できるように,当業者が随意に選択しうる事項である(例えば,引用例3には,感光膜塗布装置やレーザ露光潜像形成装置は処理室Aに配置して,レジスト画像除去装置を処理室Bに配置することも記載されている([請求項2]を参照。)。)。そうしてみると,引用発明を2つの処理室からなる全自動処理システムで実現する際に,導電性DLC膜及びDLC膜を形成する処理装置以外の処理装置を,当該2つの処理室のそれぞれに,少なくとも一つ配置することは,当業者が容易にできたことである。

(5)上記(1)に記載したように,引用例1には引用発明を実施するために,二つの真空成膜装置を用いることが記載されているものと解される。したがって,引用発明に引用例3に記載された全自動処理システムを適用する際には,当該二つの真空成膜装置を,処理室A又は処理室Bのいずれかに配置することになる。
引用例3の[請求項2]には,一方の処理室である処理室Aをクリーンルームとすることが記載されている。また,図1に示された例においても同様である(段落[0028]を参照。)。各処理装置は,求められるクリーン度が異なることは技術常識であるから,処理室Aと処理室Bに処理装置を振り分ける際に,同程度のクリーン度が求められる処理装置を,同じ処理室に配置することは,当業者ならば当然に考慮し得たことである。
そうしてみると,引用発明を実施するための二つの真空成膜装置を,処理室A又は処理室Bのいずれかに配置することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(6)引用例3に記載されるような全自動処理システムを用いた製造において,製造に要する時間を短縮化することは,当然の課題である(引用例3の段落[0008]を参照。)。そして,当該課題を解決するために,複数の処理装置からなるシステムにおいて,一つの被処理体に対する処理が終了して処理装置が空いた際には,次の被処理体を移載して処理を開始することは,周知慣用の技術である。また,成膜装置のように比較的時間がかかる処理を行う装置を複数台設けて,当該処理を同時に並行して実施することも,周知慣用の技術である(必要であれば,特開平11-145084号公報の段落【0054】,特開2011-202270号公報の段落【0030】?【0031】,図7?8を参照。)。
ダイヤモンドライクカーボン膜の成膜も,長時間を要する処理であることは技術常識である(必要であれば,引用例2の段落【0036】を参照。)。そうしてみると,引用発明を実施する際に,導電性の膜と絶縁層の二つの成膜工程を,各々の真空成膜装置で同時に行うことは,当業者の通常の創作能力の発揮においてなし得たことである。

(7)以上(1)?(6)から,引用発明において,相違点6に係る本願発明の構成を具備させることは,当業者が容易に発明できたことである。

7 発明の効果について
本願発明は,サイドエッチングの問題を解消しつつ,感光材の剥離性及び転写物の剥離性に優れたパターン付ロール及びその製造方法を提供することができるという効果を有する(本件出願の明細書の段落【0038】)。しかし,当該効果は,同じ材料を用いて同じリフトオフ法を採用した,引用発明も有する効果である。
また,審判請求書中で本件請求人が主張するように,本願発明は,真空成膜装置を二台以上配置して,導電性DLC層の形成処理とDLC被覆膜の形成処理を同時に行うから,処理効率の向上を図ることができるということもできる。しかし,複数台の処理装置を用いて同時に処理を行うことによって処理効率の向上を図ることは,上記6(6)で指摘したように周知慣用の技術である。したがって,本願発明がこうした効果を有しているとしても,当該効果は,当業者が技術常識に基づいて容易に予測し得た範囲のものである。

第6 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-18 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-09 
出願番号 特願2015-549120(P2015-549120)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉持 俊輔  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 佐藤 秀樹
河原 正
発明の名称 パターン付ロールの製造方法  
代理人 石原 進介  
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