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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1337896
審判番号 不服2015-15948  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-28 
確定日 2018-02-28 
事件の表示 特願2013-549478「画像処理に基づくカメラベースの位置特定およびナビゲーション」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日国際公開、WO2012/096877、平成26年 4月 3日国内公表、特表2014-508284〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年1月9日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2011年1月11日 アメリカ合衆国、2011年6月30日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって平成25年7月11日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成25年8月14日に特許法第184条の4第1項に規定する明細書、特許請求の範囲及び図面の翻訳文(以下、「当初明細書等」ともいう。)が提出され、同日に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書及び上申書が提出され、平成26年7月24日付けで拒絶理由が通知され、平成26年11月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年4月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成27年8月28日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年12月17日及び平成28年2月15日に上申書が提出され、その後、当審において平成28年9月2日付けで平成27年8月28日付けの手続補正を却下し、平成28年9月27日付けで拒絶理由が通知され、平成29年1月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年2月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成29年5月22日に意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし44に係る発明は、平成25年8月14日に提出された手続補正書によって補正された明細書、平成29年1月4日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び平成25年8月14日に提出された図面の翻訳文の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし44に記載された事項によって特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

<本願発明>
「少なくとも1つの慣性センサとカメラを備えるモバイルデバイスにおけるナビゲーションを較正するための方法であって、前記方法は、
初期位置を提供することと、
デッドレコニング位置推定の後、SAS(セルフアドレッシングソース)を検出することと、前記SASが検出されない場合には、前記デッドレコニング位置推定が続けられる、
前記SASと基準点との間で第1ベクトルV_(1)を決定することと、
前記基準点に対してSASポーズを決定することと、
前記SASに対して前記モバイルデバイスの第2ベクトルV_(2)を決定することと、なお、前記第2ベクトルV_(2)は、前記カメラによってキャプチャされた前記SASの画像から、少なくとも基づいて決定され、前記第2ベクトルV_(2)は、前記モバイルデバイスから前記SASまでの変位と、前記モバイルデバイスから前記SASまでの角度によって表される、
前記第1ベクトルV_(1)、前記SASポーズ、および前記第2ベクトルV_(2)に基づいて前記モバイルデバイスの第3ベクトルV_(3)を計算することと、なお、前記第3ベクトルV_(3)は、前記基準点から前記モバイルデバイスまでの変位と、前記基準点から前記モバイルデバイスまでの角度によって表される、
前記第3ベクトルV_(3)に、少なくとも基づいて前記モバイルデバイスの現在の位置を計算することと、
ジャイロメータからの測定値を使用して推定された、デッドレコニングに基づく前記モバイルデバイスの位置推定値を、前記計算された現在の位置で再較正することと、なお、前記慣性センサはジャイロメータを備える、
を備える方法。」

第3 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
当審による平成29年2月15日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開2004-138513号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「屋内位置検出装置及び屋内位置検出方法」に関し、図面とともに次の記載がある。

ア 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1では、歩行航行装置に経時的に蓄積される歩行距離や歩行方向の誤差を訂正するために、絶対位置情報を送信する赤外線信号送信装置は、屋内の適切な位置に配置される必要がある。特に、広い屋内(原子力発電所の原子炉建屋,大型工場建屋,大型デパートなど)で人間の位置を正確に検出するためには、新たな設備として多数の赤外線信号送信装置を、所定間隔で増設する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、広い屋内でも、新たな設備の増設を極力減らしつつ、人間の位置を正確に検出できる屋内位置検出装置及び屋内位置検出方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、屋内の基準位置で基準位置信号を受信し、基準位置からの進行距離及び進行方位を検出することにより基準位置からの相対位置を求め、基準位置に対する相対位置から絶対位置を検出する際に、相対方位検出手段で検出した相対方位を絶対方位検出手段で検出した絶対方位を用いて修正することにより進行方位を求める。
【0008】
他の本発明では、屋内位置検出手段で上記方法により絶対位置を検出すると共に、屋外位置検出手段でGPS信号から絶対位置を検出する。屋外位置検出手段がGPS信号を捉えていない時は、屋内位置検出手段で検出した絶対位置を自己位置と判定する。屋外位置検出手段がGPS信号を捉えている時は、屋外位置検出手段で検出した絶対位置と屋内位置検出手段で検出した絶対位置との誤差を求め、この誤差が予め設定したしきい値以下の場合、屋外位置検出手段で検出した絶対位置を自己位置と判定する。誤差がしきい値よりも大きい場合には、屋内位置検出手段で検出した絶対位置を自己位置と判定する。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1を用いて、本発明を原子力発電所における作業員の屋内位置検出に適用した第1実施例を説明する。図1は、第1実施例の屋内位置検出装置の概略構成図である。原子力発電所は、原子炉建屋101,補助建屋102,中央操作室103等を備え、多くの作業員がこれらの屋内で作業する。これらの屋内の通信手段として構内PHS(Personal Handy-Phone System)が設置される場合、各部屋に基地局104,104a,104bが設置され、各基地局が基地局配線105を通して構内電話集約機106に接続される。
【0010】
作業員108の位置/状態を監視するために、作業員の位置検出機能及び放射線被曝線量検出機能を有する携帯端末109が、作業員108に携帯される。位置検出機能の精度を高めるために、補正局(情報補正装置)107,107aが各部屋に設置される。補正局は、各部屋の入口、又は各部屋の適切な位置に設置する。
【0011】
例えば、補正局107aの下(基準位置)に作業員108が来た時に、補正局107aは、人体検知信号110を捉えて、補正情報(基準位置信号)111を作業員108の携帯する携帯端末109に送信する。携帯端末109は、補正情報111を用いて作業員108の位置を算出し、位置/状態情報112を基地局104aに送信する。位置/状態情報112は、作業員108の位置情報,放射線被曝線量を示す情報,作業員の状態を示す情報等を含む。携帯端末109から送信された位置/状態情報は、基地局104a及び104b,基地局配線105を通して中央操作室103の統合監視装置113に集約されて、表示される。
【0012】
携帯端末109の詳細構成を図2に示す。携帯端末109は、携帯通信端末201にインターフェースケーブル202を介して携帯位置検出端末203を接続して構成する。携帯通信端末201としては、PHS,携帯電話,その他の無線を利用した通信機器が使用可能である。携帯位置検出端末203は、線量計204,ジャイロセンサ(相対方位検出手段)205,2軸加速度センサ206,地磁気センサ(磁気方位センサ,絶対方位検出手段)207を搭載している。線量計204は、作業員108の放射線被曝線量を検出するセンサである。ジャイロセンサ205及び地磁気センサ207は、後述する方法で作業員108の進行方位を検出するセンサである。2軸加速度センサ206は、後述する方法で作業員108の進行距離を検出するセンサである。これらのセンサの出力信号は、必要に応じてアンプやフィルタを介してマイコン208に入力され、マイコン208が作業員108の位置を求める。こうして検出された作業員108の位置情報は、放射線被曝線量を示す情報と共に、携帯通信端末201により統合監視装置113に伝送される。携帯位置検出端末203はバッテリ209により動作する。
【0013】
補正局107(107a)の詳細構成を図3に示す。補正局107は、赤外線センサ302及び磁気方位センサ(地磁気センサ,絶対方位検出手段)304を有する。赤外線センサ302は、補正局107の下に作業員(人間)108が来たことを検出する感知センサである。マイクロ波センサも、感知センサとして使用できる。赤外線センサ302が作業員を検出した場合、この検出信号がマイコン303に伝えられる。この時、補正局107の位置における地磁気の誤差が磁気方位センサ304で検出され、この地磁気の誤差信号がマイコン303に伝えられる。補正局107の設置位置及び設置状態における地磁気の北の情報(磁北情報)が、予めマイコン303に記憶されている。マイコン303は、磁北情報と磁気方位センサ304で検出した磁気方位情報とを比較し、設置位置及び設置の向きによる磁北誤差を算出する。算出した磁北誤差及び設置位置の情報は、補正情報発信部305により携帯通信端末201で受信できる信号に変換され、アンテナ306を介して携帯通信端末201に伝送される。
【0014】
携帯端末109及び補正局107における情報(データ)処理方法を図4に示す。携帯端末109は、まず、進行方位検出(403)及び進行距離検出(404)を行い、検出した進行方位情報及び進行距離情報から相対位置情報を検出する
(405)。次に、補正局107から受信した絶対位置情報406に相対位置情報を加算して絶対位置情報を更新し(407)、相対位置検出(405)に戻る。407で求められた絶対位置情報は、411で検出された線量情報と共に統合監視装置113に伝送されて、表示される。
【0015】
一方、補正局107は、408で人体を検知した時に、磁北誤差情報409及び絶対位置情報410を携帯端末109に送信する。磁北誤差情報409は、携帯端末109における進行方位検出(403)に利用される。絶対位置情報410は、携帯端末109における現在の絶対位置情報の更新(補正)に利用される。
【0016】
携帯端末109の進行距離検出方法(404)を図5に示す。進行距離の検出には、進行方向加速度信号501,上下加速度信号502および絶対位置情報406が用いられる。上下加速度信号は、鉛直方向の加速度信号である。
【0017】
進行方向加速度信号501は、帯域通過フィルタ504により、直流成分及び歩行周波数の影響が排除される。帯域通過フィルタのカットオフ周波数(通過帯域の周波数範囲)は、例えば0.1Hz?0.5Hzとする。カットオフ周波数の下限は、直流成分のみをカットするためにできるだけ低くする。歩行周波数は低くても1Hz以上であるため、カットオフ周波数の上限を0.5Hz として、進行方向加速度信号が1Hzで十分に減衰するように設定する。次に、進行事象検出(505)では、帯域通過フィルタ504を通過した信号の絶対値を監視し、この絶対値が予め設定したしきい値を超えた時に、作業員が進行方向に移動していると判断する。また、この絶対値が上記しきい値以下の時は、作業員が停止していると判断する。これは、人が移動している場合、進行方向に加速度が発生する現象を利用している。
【0018】
上下加速度信号502は、帯域通過フィルタ506により歩行周波数の成分のみが取り出される。通常の歩行及び走行の場合、上下加速度信号は1Hz?3Hzの間にピークが現れる。このため、帯域通過フィルタのカットオフ周波数は、1Hz?3Hzとする。ステップ検出(507)では、帯域通過フィルタ506を通過した信号を用いて歩数を検出する。具体的には、帯域通過フィルタ506の出力信号の1周期毎にステップをカウントして歩数を求める。歩数検出(508)では、進行事象検出(505)で進行していると判断した時に、ステップ検出(507)で求めた歩数を、最終的に歩行した歩数として検出する。
【0019】
一方、上下加速度信号502は、バッファ509により所定時間蓄積され、周波数特性が演算(解析)され(510)、ピーク周波数が検出される(511)。512では、511で検出されたピーク周波数Fpk(Hz)を用いて、(数1)から歩幅WS(m)が算出される。
【0020】
WS=K1×Fpk^(K2) …(数1)
ここで、K1及びK2は歩幅算出用の歩幅変換係数であり、個人により若干異なるが、成人男性の場合、K1は0.3程度、K2は1.1程度である。尚、上記歩幅変換係数を調整可能な手段を図2の携帯端末に設けても良い。
【0021】
このようにして、水平加速度から直接歩幅を算出できない場合(人が鉛直方向に対して傾いた状態など)でも、歩幅を検出できる。更に、歩行途中で歩行速度が変化して歩幅が変更する場合でも、歩幅を実時間で再設定できる。
【0022】
513では、508で検出された歩数と512で算出された歩幅との積から進行距離を検出する。(数1)で用いる係数K1及びK2は個人により異なるため、こうして求めた進行距離は校正する必要がある。この校正に、補正局107から受信した絶対位置情報406が用いられる。補正局107から受信した絶対位置情報406は最新の補正位置情報514として保存される。516では、最新の補正位置情報514と保存されている前回の補正位置情報515との差から補正位置間距離が算出される。
【0023】
一方、518では歩数検出(508)で求めた歩数から補正位置間歩数が検出され、この補正位置間歩数が補正位置間歩幅検出(517)に用いられる。517で検出された補正位置間歩幅を用いて、(数1)の逆算により歩幅変換係数を算出し、歩幅変換係数が更新される(519)。519で歩幅変換係数が更新された後は、518の歩数検出がリセットされ、更新された歩幅変換係数は歩幅算出(512)に反映される。このようにして、より正確な歩幅の設定が可能となる。
【0024】
図5の歩数検出の一例を図6により説明する。上下加速度信号601を1?3Hzの帯域通過フィルタで処理すると、信号602のようになる。信号602が上側しきい値L1を超えた後に下側しきい値L2を下まわった時に、作業員が一歩歩いたと判断して、パルス状のステップ検出信号603を発生させる。信号603は、信号602が下側しきい値L2を下まわった後に上側しきい値L1を超えた時に発生させても良い。ステップ検出信号は、通常歩行していない時は0を示し、歩行している時は1を示す。ステップ検出信号603のパルス数が歩数として検出される。
【0025】
図5の歩幅算出の一例を図7により説明する。図7は、一般成人男性の走行時、通常歩行時及び低速歩行時における上下加速度信号の周波数分析の一例を示す。図7のように、走行時、通常歩行時及び低速歩行時のピーク周波数は、それぞれ約2.7Hz ,約2.2Hz 及び約1.9Hz となる。K1=0.3 ,K2=1.1 とし、これらのピーク周波数を(数1)に代入すると、走行時、通常歩行時及び低速歩行時の歩幅は、それぞれ約89cm,約71cm,約61cmとなる。このようにして、成人男性の一般的な歩幅を算出できる。
【0026】
次に、携帯端末109の進行方位検出方法(403)の一例を図8に示す。進行方位検出には、ジャイロセンサ出力801,携帯端末109(端末側)の磁気方位センサ出力802,補正局(補正局側)の磁気方位センサ出力803を用いる。角速度信号であるジャイロセンサ出力801は、積分処理される(804)ことにより、角度信号(相対方位信号)805に換算される。この際、積分による蓄積誤差が発生し易いため、以下のようにして補正を行う。
【0027】
一方、端末側の磁気方位センサ出力802は、蓄積誤差は無いが、屋内では、建屋の帯磁,電気配線の誘導磁界等の影響により系統的な誤差が発生する。そこで、磁気方位センサ出力802は、補正局からの磁北誤差信号806を用いて補正される。補正方法は、例えば磁気方位センサ出力802として検出した磁気方位に、磁北誤差信号806に対応する磁北誤差(方位誤差)を加算して、真の絶対方位として更新する(807)。809では、ジャイロセンサで検出された相対方位信号805が磁気方位センサで検出された絶対方位信号808により修正(補正)され、進行方位として更新される。この更新後の信号を修正ジャイロ方位信号という。
【0028】
図8の方法による進行方位検出の一例を図9により説明する。図9は、作業員が360°,270°,180°,90°の方向(方位)に順次向きを変えて歩行した時のジャイロセンサ出力,磁気方位センサ出力,修正ジャイロ方位信号を、それぞれ進行方位に換算した方位信号D1,D2,D3を示す。図9のように、磁気方位センサによる方位信号D2は、作業員が一定方位を向いて歩行している時でも、大きく変化している。ジャイロセンサによる方位信号D1は、方位の大きな変化は無いが、方向転換時に発生した誤差が蓄積されて若干ずれている。図8の方法でジャイロセンサ出力を補正することにより、方位信号D3のように、進行方位を精度良く検出することが可能になる。このようにして、磁場が歪められる環境が屋内に存在しても、この影響を排除して正確な進行方位を検出できる。」(段落【0005】ないし【0028】)

イ 「【0062】
次に、図21を用いて、本発明を公衆の自己位置検出に適用した第4実施例を説明する。この場合、地上では、利用者50が持参する携帯端末109を用いて、GPS(Global Positioning System)衛星51からのGPS信号51aによる自己位置検出が可能である。検出された自己位置信号は、屋外自己位置情報50aとして携帯電話アンテナ52に送信される。しかし、利用者50がエレベータ53等を利用して地下鉄55のホーム56に降りると、GPS信号は利用できない。これに対して、構内アンテナ54及び補正局107を設置する。地下空間にいる利用者50が構内に設置された補正局107の下に来た時、補正局107が人体検知信号110を捉えて補正情報111を携帯端末109に送信することにより、利用者50の自己位置を検出する。検出された自己位置信号は、屋内自己位置情報506として構内アンテナ54に送信される。
【0063】
本実施例に用いる携帯端末109の構成を図22に示す。携帯端末109を構成する携帯通信端末201は、位置検出部203aを備える。位置検出部203aは、GPS受信機51b及びGPSアンテナ51cを備え、屋外におけるGPSを用いた詳細な自己位置検出が可能になっている。その他の構成は第1実施例と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0064】
次に、本実施例における携帯端末による自己位置検出方法を図23に示す。初めに、第1実施例で説明した方法により、利用者の相対位置検出(U1)及び絶対位置(自律位置)検出(U2)を行う。U3では、GPS信号の受信レベルから、携帯端末がGPS信号を捉えているか否かを判断する。即ち、GPS信号の受信レベルが予め設定した基準レベル以上であれば、携帯端末がGPS信号を捉えていると判断し、受信レベルが基準レベルよりも小さければ、携帯端末がGPS信号を捉えていないと判断する。
【0065】
GPS信号を捉えている時は、U4でGPSにより自己位置を検出する。U5ではGPSにより検出した自己位置(絶対位置)と自律位置の誤差を計算する。U6では誤差が予め設定したしきい値よりも大きいか否かを判断し、誤差がしきい値よりも大きい時は、U7でGPS信号の信頼性が低いと判断して自律位置を自己位置と判定する。誤差がしきい値以下の時は、U8でGPS自己位置を自己位置と判定する。U7又はU8で自己位置が判定されれば、U9で自己位置が確定され出力される。
【0066】
U3でGPS信号を捕らえていない場合、U7で自律位置を自己位置とする。また、補正局は、人を検出した時(U10)に位置及び方位の補正情報を携帯端末に送信する(U11)。この補正情報による自己位置検出方法は、第1実施例と同じである。
【0067】
第4実施例によれば、利用者が屋外又は屋内の何れに居る場合でも、利用者の自己位置検出及び位置情報の通報が可能になる。さらに、自己位置情報を表示する表示手段を、携帯端末に設置することもできる。この場合、利用者は、携帯端末の表示手段を目視することにより、屋外または屋内に拘らず、自己位置を容易に把握できる。」(段落【0062】ないし【0067】)

(2)引用文献1記載の事項
図1ないし図9に主要部の構成が示された第1実施例(特に段落【0009】ないし【0028】)を基本構成として参照しつつ、図21ないし図23に主要部が示された第4実施例(段落【0062】ないし【0067】)に着目すると、次のことが分かる。

ア 上記(1)ア及びイから、引用文献1記載の絶対位置情報を更新するための方法は、公衆の利用者50が、ジャイロセンサ205及び携帯通信端末201を備える携帯端末109を用いて行うことが分かる。

イ 上記(1)アの、特に段落【0013】及び段落【0015】の記載から、補正局107は、補正局107の磁北誤差及び設置位置の情報を、磁北誤差情報409及び絶対位置情報410として携帯端末109の携帯通信端末201に伝送することが分かる。

ウ 上記(1)アの、特に段落【0015】及び図4の記載から、補正局107が携帯端末109に送信する絶対位置情報410は、携帯端末109において、絶対位置情報406として受信され、現在の絶対位置情報の更新及び補正に利用されることが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

<引用発明>
「少なくとも1つのジャイロセンサ205、地磁気センサ207、2軸加速度センサ206及び携帯通信端末201を備える携帯端末109における現在の絶対位置情報を更新するための方法であって、前記方法は、
補正局107の下に利用者50が来たときに送信される補正局107からの補正情報(基準位置信号)111を受信することと、
補正局107からの、設置位置の情報である絶対位置情報410に基づいて携帯端末109の現在の絶対位置情報406を受信することと、
ジャイロセンサ205からのジャイロセンサ出力801及び地磁気センサ207からの磁気方位センサ出力802を用いて検出した進行方位情報並びに2軸加速度センサ206からの進行方向加速度信号501及び上下加速度信号502を用いて検出した進行距離情報から検出した相対位置情報を補正局107から受信した絶対位置情報406に加算して求められた絶対位置情報を、補正局107から受信した絶対位置情報406を利用して現在の絶対位置情報に補正することと、
を備える、
方法。」

2 引用文献2
(1)引用文献2の記載
当審による平成29年2月15日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開2008-309530号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「位置検出装置、それにおける位置の検出をコンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」に関し、図面とともに次の記載がある。

ア「【0033】
図1は、この発明の実施の形態による位置検出装置の構成を示す概略ブロック図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による位置検出装置10は、カメラ1と、位置検出手段2と、受付手段3と、記憶手段4と、ディスプレイ5と、GPS受信機6と、加速度センサ7とを備える。なお、位置検出装置10は、たとえば、携帯電話機に搭載される。
【0034】
カメラ1は、位置検出手段2から撮影指示PHGを受けると、後述する2次元バーコードを撮影し、その撮影した2次元バーコードの画像Gを位置検出手段2へ出力する。
【0035】
位置検出手段2は、位置検出装置10が搭載された携帯電話機の位置情報PSFGをGPS受信機6から受け、位置検出装置10が搭載された携帯電話機の加速度ACCを加速度センサ7から受け、携帯電話機が使用状態であることを示す信号USEまたは携帯電話機において位置情報を必要とするアプリケーションソフトウェアが起動されたことを示す信号ONを携帯電話機の処理部(図示せず)から受ける。
【0036】
そして、位置検出手段2は、加速度センサ7から受けた加速度ACCに基づいて、携帯電話機のユーザの歩行リズムを検知し、携帯電話機のユーザの歩行周期から携帯電話機が最も安定しているタイミングを検出する。より具体的には、位置検出手段2は、加速度ACCがしきい値ACC_TH以下である期間を内蔵したタイマーによって計測し、その計測した期間が一定期間Tに達したタイミングを携帯電話機が最も安定しているタイミングとして検出する。なお、しきい値ACC_THは、位置検出手段2に予め設定されている。
【0037】
そうすると、位置検出手段2は、位置検出装置10の位置の検出を開始する開始条件を満足したか否かを判定する。そして、位置検出手段2は、開始条件を満足し、携帯電話機が最も安定しているタイミングを検出すると、撮影指示PHGを生成してカメラ1へ出力する。この場合、位置検出手段2は、GPS受信機6から位置情報PSFGを受信しなくなり、その後、一定時間が経過したときに開始条件を満足したと判定する。また、位置検出手段2は、携帯電話機の処理部(図示せず)から信号USEを受けると、開始条件を満足したと判定する。さらに、位置検出手段2は、携帯電話機の処理部(図示せず)から信号ONを受けると、開始条件を満足したと判定する。
【0038】
また、位置検出手段2は、カメラ1から画像Gを受け、2次元バーコードの実際のサイズACSn、画像GのサイズGSnおよび距離Lnからなる数値列[ACSn,GSn,Ln](nは2以上の整数)および表示指示DSPを受付手段3から受ける。
【0039】
そして、位置検出手段2は、受付手段3から受けた数値列[ACSn,GSn,Ln]の実際のサイズACSnおよび画像GのサイズGSnに基づいて、実際のサイズACSnと画像GのサイズGSnとのサイズ比RSn(=GSn/ACSn)を演算し、その演算したサイズ比RSnに距離Lnを対応付ける。位置検出手段2は、この処理をn回実行し、サイズ比RSnと距離Lnとの対応表TBLを作成するとともに、その作成した対応表TBLを記憶手段4に記憶する。
【0040】
さらに、位置検出手段2は、後述する方法によって、画像Gが2次元バーコードの画像であるか否かを判定する。そして、位置検出手段2は、画像Gが2次元バーコードの画像であると判定すると、画像Gを正面から正対して見たときの画像に補正し、その補正した画像GHのサイズGSSを後述する方法によって計測する。なお、位置検出手段2は、画像Gが2次元バーコードの画像でないと判定したとき、位置検出動作を停止する。
【0041】
位置検出手段2は、画像Gを補正すると、その補正結果に基づいて、2次元バーコードに対して携帯電話機が存在する向き・傾きに関する方向情報IFHKを後述する方法によって検出する。また、位置検出手段2は、画像GH(=補正した画像G)に基づいて、2次元バーコードに記録された2次元バーコードの実際のサイズACSRおよび位置情報PSBCを読み出す。
【0042】
そうすると、位置検出手段2は、読み出した2次元バーコードの実際のサイズACSRと計測した画像GHのサイズGSSとのサイズ比RSS(=GSS/ACSR)を演算する。そして、位置検出手段2は、記憶手段4から対応表TBLを読み出し、その読み出した対応表TBLを参照して、サイズ比RSSに対応する距離Lを検出する。その後、位置検出手段2は、位置情報PSBC、方向情報IFHKおよび距離Lに基づいて、後述する方法によって、位置検出装置10(=携帯電話機)の位置PSおよび方位・傾きを検出する。なお、位置検出手段2は、2次元バーコードが配置された方位および2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報を予め保持しているので、その保持している方位・傾き情報および方向情報IFHKを用いて位置検出装置10(=携帯電話機)の方位・傾きも検出できる。」(段落【0033】ないし【0042】)

イ「【0070】
このように、画像処理手段22は、画像g1を正面から見た画像g3に補正し、カメラ1から2次元バーコードを見たときの仰角ψおよび方位角θを検出する。そして、仰角ψおよび方位角θは、2次元バーコードに対してカメラ1(=位置検出装置10)が存在する方向を示すので、画像処理手段22は、角度ψ,θを方向情報IFHKとして検出する。」(段落【0070】)

ウ「【0085】
図8は、2次元バーコードに対するカメラ1(=携帯電話機)の位置PSを検出する方法を説明するための図である。なお、2次元バーコードに対するカメラ1(=携帯電話機)の位置PSの検出は、xyz直交座標からなる空間において実行される。
【0086】
図8を参照して、検出手段24は、画像処理手段22から画像g1、位置情報PSBCおよび方向情報IFHKを受け、距離決定手段23から距離Lを受けると、画像g1の中心がxyz直交座標の原点Oに一致するように画像g1を平面PLN上に配置する。すなわち、検出手段24は、画像g1の元になる2次元バーコードの位置[x0,y0,z0]を原点Oに移動して画像g1を平面PLN上に配置する。
【0087】
そして、検出手段24は、一方端が原点Oに一致し、長さが距離Lに一致し、さらに、画像g1に垂直になるように直線SL4を引く。その後、検出手段24は、方向情報IFHKを構成する角度[ψ,θ]を検出し、画像g1の中心を原点Oに保持し、かつ、直線SL4と画像g1との垂直性を保持したまま、画像g1が平面PLNに垂直になるように画像g1および直線SL4を角度ψだけ回転させる。これによって、直線SL4は、直線SL5になる。
【0088】
引き続いて、検出手段24は、直線SL5の他方端TP1の座標[x1,y1,z1]を検出する。そして、検出手段24は、直線SL5の一方端を原点Oに一致させ、かつ、他方端TP1のz座標(=z1)を保持したまま、直線SL5をy軸方向へ角度θだけ回転させる。これによって、直線SL5は、直線SL6になる。
【0089】
そうすると、検出手段24は、直線SL6の他方端TP2の座標[x2,y2,z1]を検出する。直線SL6の一方端は、xyz直交座標の原点Oに配置されているが、本来、2次元バーコードの位置を示す座標[x0,y0,z0]を有するので、検出手段24は、検出した座標[x2,y2,z1]に座標[x0,y0,z0]を加算して座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]を演算する。そして、検出手段24は、その演算した座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]をカメラ1(=携帯電話機)の位置PSとして検出する。
【0090】
なお、座標[x0,y0,z0]が2次元バーコードの絶対位置からなる場合、座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]は、カメラ1(=携帯電話機)の絶対位置を示し、座標[x0,y0,z0]が2次元バーコードの相対位置からなる場合、座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]は、カメラ1(=携帯電話機)の相対位置を示す。
【0091】
したがって、検出手段24は、位置情報PSBC、方向情報IFHKおよび距離Lに基づいて、カメラ1(=携帯電話機)の相対位置PSまたは絶対位置PSを検出する。」(段落【0085】ないし【0091】)

エ「【0104】
図10は、この発明による位置検出の方法を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、一連の動作が開始されると、位置検出手段2の制御手段21は、上述した方法によって、位置検出を開始する開始条件を満足したか否かを判定し(ステップS1)、開始条件を満足したと判定すると、さらに、上述した方法によって携帯電話機が安定しているか否かを判定する(ステップS2)。そして、制御手段21は、携帯電話機が安定していると判定すると、撮影指示PHGを生成してカメラ1へ出力する(ステップS3)。
【0105】
カメラ1は、制御手段21からの撮影指示PHGに応じて、2次元バーコードを撮影し(ステップS4)、その撮影した2次元バーコードの画像を位置検出手段2へ出力する。
【0106】
位置検出手段2の画像処理手段22は、カメラ1から2次元バーコードの画像を受け、その受けた画像を補正する(ステップS5)。その後、画像処理手段22は、補正された画像のサイズGSSを上述した方法によって検出するとともに(ステップS6)、補正された画像のドットパターンを解析して2次元バーコードの位置情報PSBCおよび実際のサイズACSRを検出する(ステップS7)。そして、画像処理手段22は、画像のサイズGSSおよび実際のサイズACSRを距離決定手段23へ出力し、位置情報PSBCおよびステップS5に示す画像の補正によって得られた方向情報IFHKを検出手段24へ出力する。
【0107】
その後、距離決定手段23は、画像のサイズGSSおよび実際のサイズACSRに基づいて、上述した方法によって、2次元バーコードとカメラ1との距離Lを決定し(ステップS8)、その決定した距離Lを検出手段24へ出力する。
【0108】
そして、検出手段24は、位置情報PSBC、方向情報IFHKおよび距離Lに基づいて、上述した方法によって、カメラ1の位置および方位・傾きPSを検出し(ステップS9)、その検出した位置および方位・傾きPSを制御手段21へ出力する。
【0109】
制御手段21は、受付手段3から表示指示DSPを受けると、記憶手段4から地図データMAPを読み出し、その読み出した地図データMAPに検出手段24から受けた位置および方位・傾きPSを記載してディスプレイ5へ出力する。そして、ディスプレイ5は、制御手段21から受けた地図データMAPに基づいて、位置および方位・傾きPSが記載された地図を表示する(ステップS10)。これによって、携帯電話機のユーザは、自分の位置を知ることができる。そして、一連の動作が終了する。
【0110】
なお、ステップS7において、2次元バーコードの位置情報として絶対位置情報が検出された場合、ステップS9において検出されたカメラ1の位置および方位・傾きPSは、絶対位置からなる。また、ステップS7において、2次元バーコードの位置情報として相対位置情報が検出された場合、ステップS9において検出されたカメラ1の位置および方位・傾きPSは、相対位置からなる。
【0111】
図11は、図10に示すステップS5の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、図10に示すステップS4の後、画像処理手段22は、カメラ1から受けた画像に対してグレースケール変換を施し、適応型閾値処理によって画像を2値化する(ステップS51)。
【0112】
そして、画像処理手段22は、上述したラベリングおよび連結成分処理によって2次元バーコードの候補領域を抽出するとともに(ステップS52)、その抽出した2次元バーコードの候補領域の輪郭を上述した方法によって抽出し、2次元バーコードの黒枠を検出する(ステップS53)。
【0113】
引き続いて、画像処理手段22は、2次元バーコードの黒枠画像に基づいて、黒枠画像の四辺を構成する直線のフィッティングを試行する(ステップS54)。そして、画像処理手段22は、フィッティングが成功したか否かを判定する(ステップS55)。この場合、画像処理手段22は、黒枠画像の縦の2本の直線に平行な2本の直線SL1vtc,SL2vtcと、黒枠画像の横の2本の直線に平行な2本の直線SL1hzt,SL2hztとを用意し、2本の直線SL1vtc,SL2vtcをそれぞれ黒枠画像の縦の2本の直線上へ配置でき、2本の直線SL1hzt,SL2hztをそれぞれ黒枠画像の横の2本の直線上へ配置できたか否かを判定することによってフィッティングが成功したか否かを判定する。
【0114】
そして、ステップS55において、フィッティングが成功しなかったと判定されたとき、画像処理手段22は、画像が2次元バーコードの画像ではないと判断し(ステップS56)、画像処理を停止する。その後、一連の動作は、図10に示す“終了”へ移行する。
【0115】
一方、ステップS55において、フィッティングが成功したと判定されたとき、画像処理手段22は、サブピクセルレベルでのフィッティングを行ない、直線フィッティングを高精度化する(ステップS57)。
【0116】
その後、画像処理手段22は、4直線の情報を用い、上述した方法によって2次元バーコードの画像を補正し、方向情報IFHKを検出する(ステップS58)。そして、画像処理手段22は、予め内蔵している2次元バーコードの画像のリストを用いて、抽出された画像とリストの画像とのマッチングを行ない(ステップS59)、確信度を演算する。
【0117】
その後、画像処理手段22は、2次元バーコードの番号と確信度とを出力する(ステップS60)。そして、一連の動作は、図10のステップS6へ移行する。」(段落【0104】ないし【0117】)

オ「【0129】
上述したように、この発明においては、カメラ1によって撮影した2次元バーコードの画像に基づいて、2次元バーコードの位置、2次元バーコードに対してカメラ1が存在する方向、および2次元バーコードとカメラ1との距離を取得し、その取得した2次元バーコードの位置、2次元バーコードに対してカメラ1が存在する方向、および2次元バーコードとカメラ1との距離に基づいて、2次元バーコードを基準にしてカメラ1の位置および方位・傾きを検出する。
【0130】
したがって、この発明によれば、GPSの使用が困難な場所でもカメラ1の位置および方位・傾きを検出できる。また、2次元バーコードとカメラ1との距離を取得し、2次元バーコードの位置を基準としてカメラ1の位置および方位・傾きを検出するので、カメラ1の位置および方位・傾きを精度良く検出できる。」(段落【0129】及び【0130】)

カ「【0150】
図16は、図1に示す位置検出装置10を用いて位置を検出する場合の具体例を示す図である。また、図17は、ディスプレイ5の表示例を示す図である。図16を参照して、2次元バーコードBC1?BC5が地下街の通路50に配置されている。そして、2次元バーコードBC1?BC5の各々は、図5に示す2次元バーコード20からなり、配置位置の位置情報PSBCおよび実際のサイズACSRがドットパターンによって記録されている。そして、地下街には、たとえば、書店70が通路50に面して配置されている。
【0151】
位置情報PSBCが相対位置からなる場合、位置情報PSBCは、たとえば、書店70の出入口71の点71Aを原点としたxyz座標からなる。
【0152】
携帯電話機200のユーザは、携帯電話機200のディスプレイ5を見ながら通路50を歩行している。CPU102は、携帯電話機200が地下街に存在しているので、GPSが使用不可であると判定し、携帯電話機200が使用されているので、処理部240から信号USEを受ける。そして、CPU102は、加速度ACCに基づいて携帯電話機200が最も安定しているタイミングを検出すると、カメラ1に撮影指示PHGを出力し、カメラ1は、2次元バーコードBC3を撮影し、その撮影した2次元バーコードBC3の画像をCPU102へ出力する。
【0153】
そうすると、CPU102は、カメラ1から受けた画像に基づいて、上述した方法によってカメラ1の位置および方位・傾きPSを検出する。そして、携帯電話機200のユーザは、表示指示DSPをキーパッド101を介して入力すると、カメラ1の位置および方位・傾き(=自己の位置)PSがディプレイ5に表示される(図17の(a)の星印参照)。これによって、携帯電話機200のユーザは、携帯電話機200を普通に使用しながら自己の位置を知ることができる。」(段落【0150】ないし【0153】)

(2)引用文献2記載の事項
引用文献2の記載から以下のことが分かる。

ア 上記(1)ア(特に段落【0033】を参照。)の記載から、位置検出の方法はカメラ1を備える携帯電話機における方法であることが分かる。

イ 上記(1)ア(特に段落【0034】を参照。)の記載から、位置検出の方法は2次元バーコードを撮影することが分かる。

ウ 上記(1)カ(特に段落【0150】及び【0151】を参照。)の記載から、位置検出の方法において、2次元バーコードには点71Aを原点としたxyz座標からなる位置情報PSBCが記録されていることが分かる。

エ 上記(1)ア(特に段落【0033】及び【0042】を参照。)の記載から、位置検出の方法において、携帯電話機の位置検出手段2は、2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報を予め保持していることが分かる。

オ 上記(1)ア及びウ(特に段落【0034】、【0041】、【0042】及び【0085】ないし【0091】を参照。)の記載から、位置検出の方法において、2次元バーコードの相対位置である座標[x0,y0,z0]を原点Oに移動させたときの、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]を決定することが分かる。

カ 上記(1)イ及びウの記載から、2次元バーコードの相対位置である座標[x0,y0,z0]を原点Oに移動させたときの、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]は、カメラ1によって撮影された2次元バーコードの画像に基づいて決定され、座標[x2,y2,z1]とは、2次元バーコードと携帯電話機のカメラ1との距離Lと、2次元バーコードからカメラ1の角度を示す方向情報IFHKから得られることが分かる。

キ 上記(1)カ(特に段落【0150】ないし【0153】を参照。)には、カメラ1(携帯電話機)の位置及び方位・傾きPSをディスプレイ5に表示することが記載されている。

ク 上記(1)ア(特に段落【0042】)及びウの記載から、位置検出手段が予め保持する2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・位置情報は、携帯電話機の方位・傾きの検出に用いられることが分かる。

ここで、上記(1)ア及びイの記載を、上記ウないしオの記載とあわせてみると、携帯電話機の相対位置である座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]及び方位・傾きは、2次元バーコードに記録された点71Aを原点としたxyz座標からなる位置情報PSBC、2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報及び2次元バーコードの相対位置である座標[x0,y0,z0]と、2次元バーコードの相対位置を原点Oに移動させた際の、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]に基づいて、計算されるといえる。

(3)引用文献2記載技術
上記(1)及び(2)から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認める。

<引用文献2記載技術>
「カメラ1を備え、2次元バーコードを撮影することと、
2次元バーコードには点71Aを原点としたxyz座標からなる位置情報PSBCが記録されていることと、
携帯電話機の位置検出手段2は、2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報を予め保持していることと、
2次元バーコードの相対位置である座標[x0,y0,z0]を原点Oに移動させたときの、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]を決定することと、なお、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]は、カメラ1によって撮影された2次元バーコードの画像に基づいて決定される、
2次元バーコードに記録された点71Aを原点としたxyz座標からなる位置情報PSBC、2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報及び2次元バーコードの相対位置である座標[x0,y0,z0]を原点Oに移動させたときの、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]に基づいて、携帯電話機の相対位置である座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]を計算すること、
携帯電話機の相対位置である座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]に基づいて携帯電話機の位置及び方位・傾きPSを計算することと、
を備える位置検出の技術。」

3 引用文献3
(1)引用文献3の記載
当審による平成29年2月15日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開平11-44550号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「誘導装置」に関し、図面とともに次の記載がある。

ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,車両に取り付けられた各種測定手段から得られた情報に基づいて車両の現在位置及び姿勢を推定し,車両を所定の走行経路に沿って走行させるための誘導装置に関するものである。」(段落【0001】

イ「【0007】
【発明の実施の形態】以下添付図面を参照して,本発明の実施の形態及び実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態及び実施例は本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここに,図1は本発明の実施の形態に係る誘導装置A1の概略構成を示す模式図,図2は上記誘導装置A1の車両誘導処理手順の一例を示すフローチャート,図3は上記誘導装置A1の車両誘導処理手順の説明図,図4は上記誘導装置A1を適用する車両10の構成の一例を示す模式図,図5は実施例に係る車両誘導処理手順を示すフローチャート,図6は上記実施例に係る車両誘導処理手順の説明図である。本実施の形態に係る誘導装置A1は,図1に示すように,車両のステア角を検出するポテンショメータ等のステア角検出センサ1と,車両の駆動輪に取付けられ車両の速度を検出するエンコーダ等の移動速度検出センサ2と,車両の走行経路上に任意の間隔で設けられた磁気マークに対する横ズレ量を検出する磁気センサ3と,上記ステア角検出センサ1及び上記移動速度検出センサ2からの検出値に基づいて車両の位置及び姿勢を推定する位置・姿勢推定部4と,上記走行経路の情報及び上記磁気マークの位置(座標)を予め記憶する地図情報記憶部7(認識マーク位置記憶手段に相当)と,上記地図情報記憶部7に記憶された上記磁気マークの位置と,上記磁気センサ3により検出された磁気マークからの横ズレ量と,上記位置・姿勢推定部4により得られた位置・姿勢推定値とに基づいて上記位置・姿勢推定値を補正する補正部5と,上記位置・姿勢推定部4により得られた位置・姿勢推定値若しくは上記補正部5により得られた補正後の位置・姿勢推定値に基づいて車両を走行経路に沿って走行させるように制御する制御部6とで構成されている。尚,上記ステア角検出センサ1と移動速度検出センサ2とで位置・姿勢検出手段を構成している。以上のような構成を有する誘導装置A1は,上記ステア角検出センサ1と移動速度検出センサ2からの検出値に基づいて上記位置・姿勢推定部4において車両の位置・姿勢推定値を求め,該位置・姿勢推定値と上記地図情報記憶部7に記憶された走行経路の情報とに基づいて制御部6により走行制御を行う,いわゆる慣性航法を基本とし,上記磁気センサ3により上記磁気マークが検出される度に上記補正部5により上記位置・姿勢推定部4で求めた車両の位置・姿勢推定値を補正するものである。これは,上記ステア角検出センサ1と移動速度検出センサ2により得られる相対位置を,上記磁気センサ3により得られる絶対位置で補正していると言うこともできる。
【0008】以下,図2及び図3を用いて,上記誘導装置A1による車両の誘導手順について説明する。尚,以下の説明に用いる車両10は,図4に示すように,ホイールベース(=W)の中心を車体中心位置とし,車輪11から距離Lだけ離れた車体最前部に磁気センサ3が取り付けられている。また,車両10の走行経路R上には任意の間隔で磁気マークM(M1,M2,…Mn)が設置されており,上記磁気センサ3は上記磁気マークMと車両10の中心線との横ズレ量Dを検出する。スタート地点SP(図3)から車両10が走行を始めると,ステア角検出センサ1及び移動速度検出センサ2によりそれぞれステア角と移動速度の検出が連続的に行われ(ステップS1),それら検出値に基づいて位置・姿勢推定部4において車両10の位置及び姿勢の推定値が求められる(ステップS2)。車両10の最前部に取り付けられた磁気センサ3により,走行経路R上の磁気マークM1を検出するまでは,上記位置・姿勢推定部4において求められた位置・姿勢推定値が地図情報記憶部7に記憶された走行経路Rに沿うように制御部10により車体10の走行が制御される(ステップS3→S7→S8→S1→…)。磁気センサ3により磁気マークM1が検出されると(ステップS3),上記ステップS7を実行する前に,以下に説明するステップS4?S6の処理が行われる。」(段落【0007】及び【0008】)

ウ 図2において、ステップS8の「目標位置到着」の判定が「No」である場合、ステップS1「移動速度とステア角の検出」及びステップS2「位置・姿勢の推定」を経て再度ステップS3「マーク検出」を行うことが看取できる。

(2)引用文献3記載の事項
上記(1)イ及びウから、引用文献3記載の誘導装置は、磁気マークを検出しないとき(ステップS3において「No」判定)、経路情報と推定位置・姿勢を用いて車両を誘導する(ステップS7)とともに、目標位置に到着していない場合(ステップS8)は、移動速度とステア角の検出(ステップS1)を行い、位置・姿勢の推定(ステップS2)を続け、その後再度磁気マークの検出を行う(ステップS3)ことが分かる。

(3)引用文献3記載技術
上記(1)及び(2)から、引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3記載技術」という。)が記載されていると認める。

<引用文献3記載技術>
「誘導装置において、車両速度とステア角を検出して位置及び姿勢推定を行い、位置及び姿勢推定の後、磁気マークの検出を行い、磁気マークが検出されないときであって目標位置に到達していない場合は車両速度とステア角を検出して位置及び姿勢推定を続け、磁気マークが検出されると磁気マークに基づいて推定位置及び姿勢を較正する方法。」

第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「少なくとも1つのジャイロセンサ205」は、その構造、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「少なくとも1つの慣性センサ」及び「ジャイロメータ」に相当し、以下同様に、「携帯端末109」は「モバイルデバイス」に、「現在の絶対位置情報」は「ナビゲーション」及び「現在の位置」に、「更新」は「較正」に、「補正局107」は「SAS(セルフアドレッシングソース)」に、「補正局107aの下に利用者50が来たときに送信される補正局107aからの絶対位置情報111を受信することと、」は「初期位置を提供すること」に、「ジャイロセンサ205からのジャイロセンサ出力801及び地磁気センサ207からの磁気方位センサ出力802を用いて検出した進行方位情報並びに2軸加速度センサ206からの進行方向加速度信号501及び上下加速度信号502を用いて検出した進行距離情報から検出した相対位置情報を補正局107から受信した絶対位置情報406に加算して求められた絶対位置情報」は「ジャイロメータからの測定値を使用して推定された、デッドレコニングに基づく前記モバイルデバイスの位置推定値」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「携帯通信端末201を備え」「補正局107からの、設置位置の情報である絶対位置情報410に基づいて携帯端末109の現在の絶対位置情報406を受信すること」は「外界センサを備え」「現在の位置を得る」という限りにおいて、本願発明の「カメラを備え」「デッドレコニング位置推定の後、SAS(セルフアドレッシングソース)を検出することと、前記SASが検出されない場合には、前記デッドレコニング位置推定が続けられる、前記SASと基準点との間で第1ベクトルV_(1)を決定することと、前記基準点に対してSASポーズを決定することと、前記SASに対して前記モバイルデバイスの第2ベクトルV_(2)を決定することと、なお、前記第2ベクトルV_(2)は、前記カメラによってキャプチャされた前記SASの画像から、少なくとも基づいて決定され、前記第2ベクトルV_(2)は、前記モバイルデバイスから前記SASまでの変位と、前記モバイルデバイスから前記SASまでの角度によって表される、前記第1ベクトルV_(1)、前記SASポーズ、および前記第2ベクトルV_(2)に基づいて前記モバイルデバイスの第3ベクトルV_(3)を計算することと、なお、前記第3ベクトルV_(3)は、前記基準点から前記モバイルデバイスまでの変位と、前記基準点から前記モバイルデバイスまでの角度によって表される、前記第3ベクトルV_(3)に、少なくとも基づいて前記モバイルデバイスの現在の位置を計算すること」と共通し、
引用発明における「補正局107から受信した絶対位置情報406を利用して現在の絶対位置情報に補正すること」は、「前記現在の位置で再較正する」という限りにおいて、本願発明における「前記計算された現在の位置で再較正すること」と共通する。
また、引用発明における「ジャイロセンサ205」は、慣性センサであり、かつジャイロメータでもあるものであるから、引用発明においても「慣性センサはジャイロメータを備える」との構成を備えることは明らかである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「少なくとも1つの慣性センサと外界センサを備えるモバイルデバイスにおけるナビゲーションを較正するための方法であって、前記方法は、
初期位置を提供することと、
現在の位置を得ることと、
ジャイロメータからの測定値を使用して推定された、デッドレコニングに基づく前記モバイルデバイスの位置推定値を、前記現在の位置で再較正することと、なお、前記慣性センサはジャイロメータを備える、
を備える方法。」
という点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
「外界センサを備え」、「現在の位置を得ること」及び「前記現在の位置で再較正すること」に関し、本願発明は、「カメラを備え」、「デッドレコニング位置推定の後、SAS(セルフアドレッシングソース)を検出することと、前記SASが検出されない場合には、前記デッドレコニング位置推定が続けられる」、「前記SASと基準点との間で第1ベクトルV_(1)を決定することと、前記基準点に対してSASポーズを決定することと、前記SASに対して前記モバイルデバイスの第2ベクトルV_(2)を決定することと、なお、前記第2ベクトルV_(2)は、前記カメラによってキャプチャされた前記SASの画像から、少なくとも基づいて決定され、前記第2ベクトルV_(2)は、前記モバイルデバイスから前記SASまでの変位と、前記モバイルデバイスから前記SASまでの角度によって表される、前記第1ベクトルV_(1)、前記SASポーズ、および前記第2ベクトルV_(2)に基づいて前記モバイルデバイスの第3ベクトルV_(3)を計算することと、なお、前記第3ベクトルV_(3)は、前記基準点から前記モバイルデバイスまでの変位と、前記基準点から前記モバイルデバイスまでの角度によって表される、前記第3ベクトルV_(3)に、少なくとも基づいて前記モバイルデバイスの現在の位置を計算すること」及び「前記計算された現在の位置で再較正すること」であるのに対し、引用発明は「携帯通信端末201を備え」、「補正局107からの、設置位置の情報である絶対位置情報410に基づいて携帯端末109の現在の絶対位置情報406を受信すること」及び「補正局107から受信した絶対位置情報406を利用して現在の絶対位置情報に補正すること」である点(以下、「相違点」という。)。

2 判断
上記各相違点について検討する。
(1)「デッドレコニング位置推定」との用語の意義
上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を把握するため、当初明細書等を参照して「デッドレコニング位置推定」との用語の意味を把握する。
当初明細書等の段落【0005】には、次の記載がある。

「【0005】・・・(中略)・・・デッドレコニングは、動き(movement)を蓄積するために、慣性センサ測定値を使用する。・・・(中略)・・・慣性センサは、動きのステップを決定するために、動きをインテグレートし蓄積する。すなわち、デッドレコニングの位置推定値は、前の位置推定値と合計された位置の決定された増分変化(incremental change)に基づいている。」

上記記載から、本願発明における「デッドレコニング位置推定」とは、移動を伴い、センサを用いて移動前後の増分変化を検出し、移動前の位置推定値と増分変化とを用いて移動後の位置を推定するものであることが分かる。
そうすると、本願発明における「デッドレコニング位置推定が続けられる」ことは、「位置の移動を伴い、移動前後の増分変化を検出し、移動前の位置推定値と増分変化とを用いた移動後の位置の推定を再び行う」ことを包含することが分かる。

(2)本願発明と引用文献2記載技術との対比
本願発明及び引用文献2記載技術は、カメラを備える携帯装置における位置検出方法である点で共通するから、両者を対比すると、引用文献2記載技術における「カメラ1」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願発明における「カメラ」に相当し、以下同様に、「携帯電話機」は「モバイルデバイス」に、「2次元バーコード」は「SAS(セルフアドレッシングソース)」及び[SAS]に、「撮影する」は「検出する」に、「点71Aを原点」は「基準点」に、「2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報」は「SASポーズ」に、「撮影された」は「キャプチャされた」に、それぞれ相当する。

また、xyz座標表示とベクトル表示とは、数学における表現上の差異にしか過ぎないから、引用文献2記載技術における「2次元バーコードには点71Aを原点としたxyz座標からなる位置情報PSBCが記録されていること」は、本願発明における「SASと基準点との間で第1ベクトルV_(1)を決定すること」に相当し、以下同様に、「携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]」は「第2ベクトルV_(2)」に、「2次元バーコードの相対位置である座標[x0,y0,z0]を原点Oに移動させたときの、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]を決定すること」は「SASに対してモバイルデバイスの第2ベクトルV_(2)を決定すること」に、それぞれ相当する。

さらに、引用文献2記載技術においては「2次元バーコードには点71Aを原点としたxyz座標からなる位置情報PSBCが記録されている」ことから、「2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報」(SASポーズ)も点71Aを原点とした情報として記録されていると考えるのが合理的かつ自然であるから、引用文献2記載技術における「携帯電話機の位置検出手段2は、2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報を予め保持していること」は、本願発明における「基準点に対してSASポーズを決定すること」に相当する。

加えて、引用文献2記載技術における「座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]」は、2次元バーコードに記録された点71Aを原点としたxyz座標からなる位置情報PSBC(第1ベクトルV_(1))、2次元バーコードの設置面の傾きに関する方位・傾き情報(SASポーズ)及び2次元バーコードの相対位置である座標[x0,y0,z0]を原点Oに移動させたときの、携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1](第2ベクトルV_(2))基づいて計算するものであるから、引用文献2記載技術における「座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]」は、本願発明における「第3ベクトルV_(3)」に相当し、引用文献2記載技術における「座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]」に基づいて携帯電話機の位置及び方位・傾きPSを計算する」ことは、本願発明における「第3ベクトルV_(3)に、少なくとも基づいてモバイルデバイスの現在の位置を計算する」ことに相当する。
さらに、2つのxyz座標がある場合、一方のxyz座標を、他方のxyz座標からの変位と、角度によって表すことも、数学における表現上の差異にしか過ぎないから、引用文献2記載技術における「携帯電話機の相対位置である座標[x2,y2,z1]」(第2ベクトルV_(2))及び「携帯電話機の相対位置である座標[x0+x2,y0+y2,z0+z1]」(第3ベクトルV_(3))は、本願発明における「モバイルデバイスからSASまでの変位と、モバイルデバイスからSASまでの角度によって表される」及び「第3ベクトルV_(3)は、基準点からモバイルデバイスまでの変位と、基準点からモバイルデバイスまでの角度によって表される」に、それぞれ相当する。

以上によれば、引用文献2記載技術は、本願発明における用語を用いて表現すると、
「カメラを備え、SAS(セルフアドレッシングソース)を検出することと、
SASと基準点との間で第1ベクトルV_(1)を決定することと、
基準点に対してSASポーズを決定することと、
SASに対してモバイルデバイスの第2ベクトルV_(2)を決定することと、なお、第2ベクトルV_(2)は、カメラによってキャプチャされたSASの画像から、少なくとも基づいて決定され、第2ベクトルV_(2)は、モバイルデバイスからSASまでの変位と、モバイルデバイスからSASまでの角度によって表される、
第1ベクトルV_(1)、SASポーズ、および第2ベクトルV_(2)に基づいてモバイルデバイスの第3ベクトルV_(3)を計算することと、なお、第3ベクトルV_(3)は、基準点からモバイルデバイスまでの変位と、基準点からモバイルデバイスまでの角度によって表される、
第3ベクトルV_(3)に、少なくとも基づいてモバイルデバイスの現在の位置を計算する、」技術と言い換えることができる。

(3) 相違点についての検討
上記(1)及び(2)を踏まえて相違点について検討する。
引用発明において、「補正局107からの、設置位置の情報である絶対位置情報410に基づいて携帯端末109の現在の絶対位置情報406を受信する」ことは、外界センサ及び位置が既知のSASを利用して現在の位置を得るという点において、引用文献2記載技術と共通する。
したがって、引用発明における「補正局107からの、設置位置の情報である絶対位置情報410に基づいて携帯端末109の現在の絶対位置情報406を受信する」及び「補正局107から受信した絶対位置情報406」との構成を引用文献2記載技術で置換又は並列的に付加することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明において、「ジャイロセンサ205からのジャイロセンサ出力801及び地磁気センサ207からの磁気方位センサ出力802を用いて検出した進行方位情報並びに2軸加速度センサ206からの進行方向加速度信号501及び上下加速度信号502を用いて検出した進行距離情報から検出した相対位置情報を補正局107から受信した絶対位置情報406に加算して」絶対位置情報を求め、「補正局107から受信した絶対位置情報406を利用して現在の絶対位置情報に補正する」ことは、内界センサにより推定した位置を、外界センサ及び位置が既知のSASを用いて得た現在の位置により補正する点において、引用文献3記載技術と共通する。
したがって、引用発明に引用文献2記載技術を適用する際に、「位置及び姿勢推定の後、磁気マークの検出を行い、磁気マークが検出されないときであって目標位置に到達していない場合は車両速度とステア角を検出して位置及び姿勢推定を続け」るとの引用文献3記載技術を参酌して、「デッドレコニング位置推定の後」、「SASが検出されない場合には、前記デッドレコニング位置推定が続けられる」ようにすることは、設計的事項である。

そうすると、引用発明において、引用文献2記載技術及び引用文献3記載技術から、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明は、引用発明、引用文献2記載技術及び引用文献3記載技術から、当業者が予測できる以上の格別な作用効果を奏するものではない。
よって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載技術及び引用文献3記載技術から当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載技術及び引用文献3記載技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
上記第5のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、請求項2ないし44に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-27 
結審通知日 2017-10-03 
審決日 2017-10-16 
出願番号 特願2013-549478(P2013-549478)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 根本 徳子  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 三島木 英宏
松下 聡
発明の名称 画像処理に基づくカメラベースの位置特定およびナビゲーション  
代理人 奥村 元宏  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  

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