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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1337974
審判番号 不服2017-5693  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-20 
確定日 2018-03-27 
事件の表示 特願2016- 67601「ラインパターン,光制御部材および光学結像部材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月5日出願公開,特開2017-181722,請求項の数(11)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016-67601号(以下「本件出願」という。)は,平成28年3月30日に出願された特許出願であって,その手続等の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成28年 6月21日付け:拒絶理由の通知
平成28年 8月 8日 :意見書の提出
平成28年 8月 8日 :手続補正書の提出
平成28年10月20日付け:拒絶理由の通知
平成28年11月17日 :意見書の提出
平成28年11月17日 :手続補正書の提出
平成29年 1月19日付け:拒絶の査定(以下「原査定」という。)
平成29年 4月20日 :審判請求書の提出
平成29年 4月20日 :手続補正書の提出
(この手続補正書による補正を,以下「本件補正」という。)
平成29年 6月28日付け:前置報告

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は,概略,本件補正前の各請求項に係る発明は,本件出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
拒絶査定において示された引用文献は,以下のとおりである。
引用文献1:特開2015-40910号公報
引用文献2:特開2002-372603号公報
引用文献3:特開2010-109092号公報
なお,前置報告において,以下の引用文献も追加されている。
引用文献4:特開2015-131481号公報
引用文献5:国際公開第2007/097120号

3 本願発明
本件出願の請求項1-請求項11に係る発明は,本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-請求項11に記載されたとおりの,以下のものである(以下「本願発明1」-「本願発明11」という。)。
「【請求項1】
互いに平行配置された複数の線状部材からなるラインパターンと,前記線状部材の側面に形成された光反射面とを有する光制御部材における前記ラインパターンの製造方法であり,
2官能以上の多官能モノマー(A),感放射線性重合開始剤(B),ならびにフッ素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種を含む化合物(C)を含有する樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程(a)と,ここで前記樹脂組成物の,E型粘度計により25℃で測定した粘度が,300?10000mPa・sであり,
前記ラインパターンの形状に対応する凹凸パターンを有し,前記凹凸パターン表面がフッ素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種を含む化合物により表面処理されている凹凸部材を前記塗膜に押圧し,前記塗膜に放射線を照射する工程(b)と,
放射線照射後の前記塗膜から前記凹凸部材を分離して,互いに平行配置された複数の,高さが50?500μmである線状部材からなるラインパターンを得る工程(c)と
を有し,
前記工程(b)において,前記凹凸部材の塗膜側の環境を減圧し,前記凹凸部材の塗膜側とは反対側の環境を加圧した状態で前記押圧を行い,ここで前記凹凸部材の塗膜側とは反対側の加圧条件を0.1?30.0MPaの範囲とし,前記凹凸部材の塗膜側の環境の減圧条件を150Pa以下とする
ことを特徴とするラインパターンの製造方法。

【請求項2】
多官能モノマー(A)が,多官能(メタ)アクリレートである請求項1のラインパターンの製造方法。

【請求項3】
前記化合物(C)の,ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が,1000?100000である請求項1または2のラインパターンの製造方法。

【請求項4】
前記化合物(C)が,シリコーン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である請求項1?3のいずれか1項のラインパターンの製造方法。

【請求項5】
前記化合物(C)の含有量が,樹脂組成物100質量%中,0.1?20.0質量%である請求項1?4のいずれか1項のラインパターンの製造方法。

【請求項6】
前記線状部材の,波長500nmにおける全光線透過率が,70%以上である請求項1?5のいずれか1項のラインパターンの製造方法。

【請求項7】
前記線状部材の断面形状が矩形状である請求項1?6のいずれか1項のラインパターンの製造方法。

【請求項8】
請求項1?7のいずれか1項の方法によりラインパターンを形成する工程(1)と,
前記線状部材の側面に光反射面を形成する工程(2)と
を有することを特徴とする光制御部材の製造方法。

【請求項9】
前記線状部材間に透明部材を形成する工程(3)
をさらに有する請求項8の光制御部材の製造方法。

【請求項10】
互いに平行配置された複数の線状部材からなるラインパターンと,前記線状部材の側面に形成された光反射面とを有する光制御部材を備える光学結像部材の製造方法であり,
前記光制御部材を,請求項8または9の方法により製造する
ことを特徴とする光学結像部材の製造方法。

【請求項11】
第1の光制御部材および第2の光制御部材を備える光学結像部材の製造方法であり,ここで第1の光制御部材および第2の光制御部材は,それぞれ,互いに平行配置された複数の線状部材からなるラインパターンと,前記線状部材の側面に形成された光反射面とを有しており,
第1の光制御部材および第2の光制御部材の少なくとも一方を,請求項8または9の方法により製造し,続いて,
第1の光制御部材および第2の光制御部材を,各々が有するラインパターンが光制御部材の上方から視た場合に交差した状態で配置する
ことを特徴とする光学結像部材の製造方法。」

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
本件出願の出願前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1には,以下の記載がある。なお,引用文献1の記載に対して付された下線は,当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,帯状の平面光反射部(鏡面要素)を一定ピッチで並べて形成した第1,第2の光制御パネルを用いた光学結像装置に関し,前記した第1,第2の光制御パネルを安価に製造する方法に関する。
【背景技術】
…(省略)…
【0003】
…(省略)…
そこで,本発明者は,特許文献2に記載のような光学結像方法(装置)を完成した。この光学結像装置60を図6,図7に示すが,この光学結像装置60は透明平板61,62の内部に,透明平板61,62の一方側の面に垂直に多数かつ帯状の平面光反射部63,64を並べて形成した第1及び第2の光制御パネル65,66を用い,第1及び第2の光制御パネル65,66のそれぞれの一面側を,それぞれの平面光反射部63,64を直交させた状態で向かい合わせて構成されている。
【0004】
そして,第1の光制御パネル65の平面光反射部63に物体Nからの光h1,h2を入射させ,この平面光反射部63で反射した反射光k1,k2を第2の光制御パネル66の平面光反射部64で再度反射させた反射光j1,j2によって,物体Nの像をこの光学結像装置60の反対側に実像N’として結像させることができる。」
(当合議体注:図6は以下の図である。)

(当合議体注:図7は以下の図である。)


イ 「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
…(省略)…
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,透明平板(透明な板状光学材)内に一定間隔で平行配置された平面光反射部を形成するのに最適に用いられる対向する壁面への選択的蒸着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る対向する壁面への選択的蒸着方法は,例えば,モールド型を用いて,透明な板状光学材の片側に一定の幅を有する断面四角形の角溝(即ち,凹部)を,所定ピッチで複数形成する第1工程と,
隣り合う前記角溝を形成する土手部(即ち,凸部)の表面(即ち,上面),及び前記角溝の底面を,紫外線照射剥離樹脂で覆う第2工程と,
前記紫外線照射剥離樹脂で前記土手部の表面及び前記角溝の底面が覆われた加工光学材の表面に金属蒸着する第3工程と,
前記加工光学材の裏面から紫外線を照射して,表面に金属蒸着された前記紫外線照射剥離樹脂を除去する第4工程とを有し,
前記角溝の対向する側面を鏡面(金属反射面)とする。
…(省略)…
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて,添付した図面を参照しながら,本発明の一実施の形態に係る対向する壁面への選択的蒸着方法に使用するモールド型の製造方法の一例について説明する。
まず,図5を参照しながら,モールド型10について説明する。
モールド型10は,同一ピッチで複数の断面矩形の角溝11が平行に形成されている。角溝11の幅w1と,隣り合う角溝11を連結する土手部12の幅w2は,例えば100μm?2mmの範囲にあって同一となっている。ここで,角溝11の深さd1は,例えばw1の1?4倍程度となっている。」
(当合議体注:図5は以下の図である。)


ウ 「【0029】
次に,このモールド型10を使用して(第1,第2の)光制御パネルの製造方法(特に,対向する壁面への選択的蒸着方法)について,図3(G)?(J),図4(K),(L)を参照しながら説明する。
図3(G)に示すように,内底が鏡面状態となった容器35を用意する。この場合の容器35は,第1,第2の光制御パネル65,66の大きさ(広さ)と同一とする。深さは,例えば第1,第2の光制御パネル65,66の厚みの40?150%とする。この容器35は角形形状となって底部は表面粗度Raが30nm以下の超平面となっている。
【0030】
そして,容器35の中に透明な紫外線硬化型樹脂36を入れる。注入量は,容器35の深さの1/2程度でよいが,角溝11の深さd1より大きくするのが好ましい。
容器35を水平に保った状態で,モールド型10の角溝11の側面17,18を垂直状態に保って,図3(H)に示すように,角溝11の底面19が完全に紫外線硬化型樹脂36に漬かるまで,即ち,所定位置まで入れる。この後,紫外線硬化型樹脂36に紫外線を照射し,紫外線硬化型樹脂36を硬化させて全体を透明な加工光学材37とする。以下に説明する角溝40が未形成の透明な一定厚みの板材を「透明な板状光学材」と称する。
【0031】
これによって,図3(I)に示すように,角溝11が転写された透明な加工光学材37が形成される。この加工光学材37には平行な側面38,39を有する断面矩形の角溝40が所定ピッチ(a+b)で形成される。一定の幅aを有する角溝40の対向をする側面38,39,底面41,隣り合う各角溝40を形成する幅bの土手部42の表面43の表面粗度Raが,例えば,30nm以下の鏡面(超平面)となる。これはモールド型10の凹凸部30の表面粗度がそのままコピーされるからである。なお加工光学材37の底部(裏面)に,例えば図4(K)に示すような硬質の透明平板(例えば,ガラス板,透明な補強板の一例)37aを設けることもできる。この場合は,容器35の底にこの透明平板37aを配置しておくことになる。以上の処理に加工光学材37の片側に複数の各溝40が平行に形成される(以上,第1工程)。
…(省略)…
【0034】
図4(K)に示す加工光学材37においては,角溝40の側面38,39に蒸着によって形成された金属反射面(鏡面)49,50が残る。角溝40の部分は空間となっているので,必要な場合は,内部に加工光学材37と同一又は近似した屈折率を有する透明樹脂を充填する。なお,充填した透明樹脂の露出面に凹凸がある場合には,再度研磨加工を行ってもよい。これによって図4(L)に示すような第1,第2の光制御パネル65,66が形成できる。なお,図4(L)において,63a,63bは平面光反射部を示す。これによって,図6,図7に示すように光学結像装置が形成され,物体の立体像が再生できる。」
(当合議体注:図3は以下の図である。)

(当合議体注:図4は以下の図である。)


エ 「【0035】
…(省略)…
なお,板状光学材はモールド型によって加工できる固形状又はゲル状物であってもよい。」

(2) 引用発明
引用文献1には,光制御パネルを安価に製造する方法(【0001】)として,【0009】に記載の方法が開示され,その第一工程として,【0029】-【0030】に記載の方法が開示されている。また,引用文献1の【0031】には,図4(K)のように透明平板37aを用いた態様も記載されている。加えて,引用文献1の【0020】には,モールド型10の形状について記載されている。
そうしてみると,引用文献1からは,以下の発明を把握することができる(モールド型の角溝と,光制御パネルの角溝を区別するため,符号を付して記載した。以下「引用発明」という。)。
「 帯状の平面光反射部63,64を一定ピッチで並べて形成した光制御パネル65,66を安価に製造する方法であって,
モールド型10を用いて,透明な板状光学材の片側に一定の幅を有する断面四角形の角溝40を,所定ピッチで複数形成する第1工程と,
隣り合う角溝40を形成する土手部42の表面及び角溝40の底面を,紫外線照射剥離樹脂45,46で覆う第2工程と,
紫外線照射剥離樹脂45,46で土手部42の表面及び角溝40の底面が覆われた加工光学材37の表面に,金属蒸着する第3工程と,
加工光学材37の裏面から紫外線を照射して,表面に金属蒸着された紫外線照射剥離樹脂45,46を除去する第4工程を有し,
ここで,モールド型10は,同一ピッチで複数の断面矩形の角溝11が平行に形成され,角溝11の幅w1と,隣り合う角溝11を連結する土手部12の幅w2は,100μm?2mmの範囲にあって同一となっていて,角溝11の深さd1は,例えばw1の1?4倍程度となっており,
第1工程は,
容器35を用意し,容器35の底に透明平板37aを配置し,
容器35の中に透明な紫外線硬化型樹脂36を入れ,
容器35を水平に保った状態で,モールド型10の角溝11の側面17,18を垂直状態に保って,角溝11の底面19が完全に紫外線硬化型樹脂36に漬かるまで入れ,
この後,紫外線硬化型樹脂36に紫外線を照射し,紫外線硬化型樹脂36を硬化させて全体を透明な加工光学材37とする工程である,
光制御パネル65,66を安価に製造する方法。」

(3) 引用文献2の記載
本件出願の出願前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2には,以下の記載がある。なお,○囲いの数字は,[1]等で代用表記した。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,光通信用光学部品(本明細書においては,屈折,反射により光の進行方向を変えたり,回折現象を起こすもののみを「光学部品」といい,単に光を透過するようなものは「光学部品」の範疇には入れない),及びその製造方法に関するものである。
…(省略)…
【0008】
【発明が解決すべき課題】光通信用の光学部品が有すべき性質としては以下のものがある
[1]波長が800nm以上の近赤外領域で透過率が高いこと
[2]光電子プリント基板に実装される場合,プリント基板のハンダ処理温度(約260℃)に耐えること
[3]樹脂等で形成される場合,その硬化の際の収縮率が小さいこと
[4]数十μm?数mmに成型した場合の形状安定性が良いこと(低内部応力)
[5]耐環境性(特に耐熱性と低吸湿性)が良いこと
本発明は,このような事情を考慮してなされたもので,以上の[1]?[5]の条件を満足し,かつ,安価に製造できる光通信用光学部品を提供することを課題とする。
【0009】また,樹脂を用いて一方の面と他方の面に光学面を有する光通信用光学部品を製造する場合,それぞれの面に形成された光学面の光軸が共通になるような光通信用光学部品の製造方法を提供することを課題とする。」

イ 「【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための第1の手段は,アセタールグリコールジアクリレートと少なくとも1種のウレタンアクリレートとを重合した樹脂からなり,専ら800nm以上の波長域で使用されることを特徴とする光通信用光学部品(請求項1)である。
…(省略)…
【0023】アセタールグリコールジアクリレートと,ウレタンアクリレートとを重合した樹脂の,0.1mm厚における内部透過率の例を図1に示す。図1によると,この樹脂は,400nm以上の可視領域から近赤外域にかけて95%以上の高い内部透過率を有する。また熱変形温度も170℃以上であり,従来の透明樹脂の中で比較的耐熱性が高いCR39やポリカーボネートに比べ30?50℃も高い値を示す。」
(当合議体注:図1は以下の図である。)


ウ 「【0024】さらにこの樹脂は,後に示すように,260℃,1分の雰囲気を2度通過させても樹脂の形状の変化は見られず,はんだ付けの際の高温に十分耐えうるものである。これは,アセタールグリコールジアクリレートの分子量が比較的小さいので,非常に高い耐熱性を持つことのできる構造になっているためと考えられる。
【0025】この樹脂は,2種類以上の物質の混合物であるウレタンアクリレートを構成する物質の,種類や混合割合を変化させることで,比重 0.8-1.3程度,屈折率1.4-1.8程度,粘度10-4,800 CPS程度(いずれも25℃)のものが得られる。すなわち,所望の光学特性(屈折率等)や粘度は多官能のウレタンアクリルレートの混合比を変えることによって変えられるので,光通信用光学部品に要求される値とすることができ,光通信用光学部品の製造が容易となる。
【0026】なお,アセタールグリコールジアクリレートとウレタンアクリルレートの混合物には,公知の光重合開始剤を適量添加することが好ましい。例えば,アセトフェノン系やベンゾイン系,チオキサン系,アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤のうちから選択された1種類を用いてもよいし,2種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】本手段に係る光学部品は,たとえば,イオン交換法,フォトサーマル法,イオンビームエッティング法あるいは反応性イオンエッティング法などによって作られたガラス成品をマスターとして電鋳により第1の型を作り,その型にこの樹脂を垂らして,その上からガラスの平板,又はイオン交換法,フォトサーマル法,イオンビームエッティング法あるいは反応性イオンエッティング法などによって成型されたガラスの型を押しつけ,これらのガラスの平板又は型を通して紫外線を照射して,樹脂を硬化させることによって得られる。
【0028】この製法を用いれば数mm厚の成形品まで作製できる。この方法では,一旦型ができてしまえばあとは成形のみの短時間な加工ですむ。すなわち,従来のフォトレジストを用いた複雑な工程に比べ,安価な製品が提供可能となる。
…(省略)…
【0032】よって,無機材料からなる基板は平板でよいので,複雑な加工を必要としない。また,樹脂はその厚さを薄くすることができるので,成形収縮率はほとんど無視することができる。よって,ほぼ型通りのものを安定して製造できるので,製作が容易となる。なお,無機材料としてはガラスを使用するのが最も良く,その場合には,ガラスの表面をシラン処理して樹脂との密着性を向上させることが好ましい。」

エ 「【0049】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,光通信に使用するために必要な性能を有する光学素子を,簡単な手法で効率よく,安価に製造することができる。」

(4) 引用文献3の記載
本件出願の出願前に頒布された刊行物であり,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献3には,以下の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ナノインプリント用組成物に関する。
…(省略)…
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は,光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ,凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド,スタンパ,テンプレートと呼ばれる)を,レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。
…(省略)…
【0005】
このようなナノインプリント法においては,以下のような応用技術が提案されている。
第一の技術としては,成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち,様々なナノテクノロジーの要素部品,あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては,各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体,光学フィルム,フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。
…(省略)…
【0010】
これらの用途においては良好なパターンが形成されることが前提であるが,パターン形成において光ナノインプリント法に関しては,モールドに組成物が十分に充填される必要があり,光インプリント法に用いられる液状硬化組成物は低粘度であることが要求される。
…(省略)…
また,パターン形成においてナノインプリント法に関しては,モールドとナノインプリント用組成物との剥離性が重要である。マスクと感光性組成物とが接触しないフォトリソグラフィ法に対し,ナノインプリント法においてはモールドとナノインプリント用組成物とが接触する。モールド剥離時にモールドに組成物の残渣が付着すると以降のインプリント時にパターン欠陥となってしまう問題がある。これに対しモールドの表面処理,具体的には,フロロアルキル鎖含有シランカップリング剤をモールド表面に結合させる方法や,モールドのフッ素プラズマ処理,フッ素含有樹脂モールドを用いる方法などにより付着問題を解決するなどの試みがこれまでになされてきた。しかしながら,量産時にはモールドには数万回のインプリント耐久性が求められており,モールド表面処理だけでなく,ナノインプリント用組成物からのモールド剥離性改良が求められている。
…(省略)…
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
…(省略)…
【0014】
本発明の目的は,モールド剥離性に優れ,良好なパターンが形成でき,且つモールド汚染の少ないナノインプリント用組成物,これを用いたパターンおよびその形成方法を提供することにある。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は,特定の構造のフッ素系ポリマーを,特定の割合でナノインプリント用組成物に含有させることで,モールド剥離性に優れると同時に,良好なパターンが形成でき,且つモールド汚染の少ない本発明のナノインプリント用組成物を見出すに至った。すなわち,本発明は,以下の通りである。
【0016】
[1] 重合性単量体と,光重合開始剤と,フッ素原子またはケイ素原子のうち少なくとも一方を有する官能基と重合性官能基とを有するポリマーとを含有するナノインプリント用組成物であって,前記ポリマーの重量平均分子量が2000以上であり,前記ポリマーが前記重合性単量体に対し,0.01?20質量%含まれるナノインプリント用組成物。
…(省略)…
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば,パターン形成性,モールド剥離性に優れ良好なパターンが形成でき,且つモールド汚染の少ないナノインプリント用組成物を提供することができる。また,本発明のパターン形成方法によれば,ラインパターンの欠損がなく,モールドに忠実な本発明のパターンを提供することができる。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
…(省略)…
【0019】
…(省略)…
なお,本発明でいう“ナノインプリント”とは,およそ数nmから数μmのサイズのパターン転写をいう。
…(省略)…
【0020】
[本発明のナノインプリント用組成物]
本発明のナノインプリント用組成物(以下,単に「本発明の組成物」と称する場合もある)における第1の様態は,重合性単量体(A)と,光重合開始剤(B)とフッ素原子またはケイ素原子のうち少なくとも一方を有する官能基と重合性官能基とを有するポリマー(C)(以下,(C)成分とも言う)とを含有し,前記フッ素原子またはケイ素原子のうち少なくとも一方を有する官能基と重合性官能基とを有するポリマーの重量平均分子量が2000以上であり,前記フッ素原子またはケイ素原子のうち少なくとも一方を有する官能基と重合性官能基とを有するポリマーが前記重合性単量体に対し,0.01?20質量%含まれることを特徴とする(光)ナノインプリント用組成物である(以下,「光ナノインプリント用硬化組成物」と称する場合もある)。通常,光ナノインプリント法に用いられる硬化性組成物は,重合性官能基を有する重合性単量体と,光照射によって前記重合性単量体の重合反応を開始させる光重合開始剤と,を含み,さらに必要に応じて,溶剤,界面活性剤または酸化防止剤等を含んで構成される。本発明においてはさらに特定の分子量を有する前記(C)成分を特定の割合で含有する。
【0021】
<(A)重合性単量体>
重合性単量体としては,例えば,エチレン性不飽和結合含有基を1?6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ,硬化性の観点から,エチレン性不飽和結合含有基を1?6個有する重合性不飽和単量体,が好ましい。
…(省略)…
【0023】
他の重合性単量体として,エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
…(省略)…
【0044】
<光重合開始剤(B)>
本発明のナノインプリント硬化性組成物には,光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は,光照射により上述の重合性単量体を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては,ラジカル重合開始剤が好ましい。また,本発明において,光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
…(省略)…
【0050】
<(C)フッ素原子またはケイ素原子のうち少なくとも一方を有する官能基と重合性官能基とを有するポリマー>
本発明のナノインプリント硬化性組成物は,フッ素原子またはケイ素原子のうち少なくとも一方を有する官能基と重合性官能基とを有するポリマー(以下,ポリマー(C)とも言う)を含有し,前記ポリマーの重量平均分子量が2000以上であり,前記ポリマーが前記重合性単量体に対し,0.01?20質量%含まれることを特徴とする。
…(省略)…
【0052】
-フッ素原子を有する官能基-
前記フッ素原子を有する官能基としては,界面偏在性の観点から,フロロアルキル基,フロロアルキルエーテル基が好ましく,界面偏在性の観点から,トリフロロメチル基を有していることがより好ましい。
…(省略)…
【0062】
-ケイ素原子を有する官能基-
前記ケイ素原子を有する官能基としては,トリアルキルシリル基,鎖状シロキサン構造,環状シロキサン構造,籠状シロキサン構造などが挙げられ,他の成分との相溶性,モールド剥離性の観点から,トリメチルシリル基またはジメチルシロキサン構造を有する官能基が好ましい。
…(省略)…
【0083】
-ポリマーの構成-
前記ポリマー(C)の分子量範囲は,標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が2000以上である。好ましくは2000?300000であり,より好ましくは3000?80000,特に好ましくは5000?50000である。
…(省略)…
【0088】
-界面活性剤-
本発明のナノインプリント用組成物には,界面活性剤を含有することが好ましい。
…(省略)…
【0089】
…(省略)…
このような界面活性剤を用いることによって,…(省略)…モールド凹部のキャビティ内への本発明の組成物の流動性の向上,モールドとレジストとの間の剥離性の向上,レジストと基板間との密着性の向上,組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に,本発明のナノインプリント組成物は,前記界面活性剤を添加することにより,塗布均一性を大幅に改良でき,スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において,基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
…(省略)…
【0094】
本発明のナノインプリント用組成物において,溶剤を除く成分の25℃における粘度は1?100mPa・sであることが好ましい。より好ましくは5?50mPa・s,さらに好ましくは7?30mPa・sである。粘度を適切な範囲とすることで,パターンの矩形性が向上し,さらに残膜を低く抑えることができる。
…(省略)…
【0109】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは,本発明のナノインプリント用組成物とモールド表面との剥離性をさらに向上させ,パターン生産性をより高めるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドの離型処理としては,例えば,シリコーン系やフッ素系などのシランカップリング剤による処理を挙げることができる。
…(省略)…
【0110】
本発明の組成物を用いてナノインプリントリソグラフィを行う場合,本発明のパターン形成方法では,通常,モールド圧力を0.1?30MPaで行うのが好ましい。
…(省略)…
【0111】
…(省略)…
また,本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては,光照射の際の基板温度は,通常,室温で行われるが,反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として,真空状態にしておくと,気泡混入防止,酸素混入による反応性低下の抑制,モールドと光ナノインプリント用硬化性組成物との密着性向上に効果があるため,真空状態で光照射してもよい。また,本発明のパターン形成方法中,光照射時における好ましい真空度は,10^(-1)Paから常圧の範囲である。」

(5) 引用文献4の記載
本件出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,前置報告において引用された引用文献4には,以下の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,新規なナノインプリント用レプリカ金型(以下,単に「レプリカ金型」という)の製造方法に関する。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって,本発明の目的は,高精度のパターン形成能,金型からの離型性,繰り返し耐久性,樹脂フィルム等の基材層とパターン層との密着性,さらには,生産性に優れたレプリカ金型の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は,上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果,重合性単量体光硬化性組成物を塗膜材として用いて,樹脂フィルム等の基材層とパターン層とを含んでなる積層体からなるレプリカ金型を製造するに当たり,基材層上に直接又は間接的に形成した,パターンを転写した塗膜材の光硬化膜面(パターン層)を有する積層体を,真空紫外光を照射した後に,離型処理することで,高精度のパターン形成能,金型からの離型性,繰り返し耐久性,基材層とパターン層との密着性,さらには,生産性に優れたレプリカ金型を製造できることを見出し,本発明を完成するに至った。」

イ 「【0019】
なお,本発明により製造されるレプリカ金型は,転写パターンの幅及び間隔が5nm?100μmであるパターン,更には,5?500nmである微細なパターンを有するものであるが,本発明の製法は,勿論,100μmを超えるパターンのレプリカ金型にも適用できる。
…(省略)…
【0022】
光硬化性組成物は,重合性単量体,珪素化合物および光重合開始剤を含んでなるものである。本発明では,公知の重合性単量体を何ら制限されず用いることができるが,高精度のパターン形成能,金型からの離型性,繰り返し耐久性,樹脂フィルム等の基材層とパターン層との密着性,さらには,生産性に優れていることが重要であり,樹脂フィルム等の基材層との密着性や,生産性の観点から見ると,光硬化性の単量体が好ましい。また,高精度のパターン形成を低圧力で行う場合を勘案すると,一般的に,パターンを形成する光硬化性組成物の粘度が低い方が有利であることから,重合性単量体としては,好ましくは,(メタ)アクリル基(メタクリル基又はアクリル基を意味する)を有する重合性単量体を含有するものが使用される。
…(省略)…
【0026】
1分子中に2つの(メタ)アクリル基を有する多官能重合性単量体(2官能重合性単量体)としては,例えば,…(省略)…が挙げられる。
…(省略)…
【0047】
ハロゲン元素を有するアルコキシシラン
ハロゲン元素を有するアルコキシシランとしては,一般式(3)
【化3】

(式中,R^(6)及びR^(8)は,それぞれ,炭素数1?10のアルキル基又は炭素数3?10のシクロアルキル基であり;R^(7)は,含フッ素アルキル基,含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシエーテル基であり;aは1?3の整数であり,bは0?2の整数であり,ただし,a+b=1?3であり;R^(6),R^(7)及びR^(8)がそれぞれ複数存在する場合には,その複数のR^(6),R^(7)及びR^(8)は,それぞれ同一であっても,異なる基であってもよい)で示されるフッ素化シラン化合物が挙げられる。このフッ素化シラン化合物の加水分解物を使用することにより,基材とパターンとの密着性,及び金型からの離型性を向上することができる。
…(省略)…
【0058】
(光重合開始剤)
本発明において,光重合開始剤は特に制限されるものではなく,重合性単量体を光重合できるものであれば,いかなる光重合開始剤も使用できる。
…(省略)…
【0067】
界面活性剤としては,フッ素含有界面活性剤,シリコーン含有界面活性剤,脂肪族系界面活性剤を使用できる。
…(省略)…
【0078】
(光硬化性組成物を用いたパターンの転写方法)
上述した光硬化性組成物を塗膜材として使用し,金型(マスター金型又はマスター金型から形成されたレプリカ金型)のパターンを転写する方法について説明する。
【0079】
先ず,光硬化性組成物を,基材上に公知の方法に従って塗布することにより,塗膜を形成する。
…(省略)…
【0083】
次に,金型のパターン形成面を前記塗膜と接触させる。
…(省略)…
【0085】
本発明で使用される光硬化性組成物は,金型を押し付ける際に比較的低圧でパターンを転写することができる。この際の圧力は,特に制限されるものではないが,0.01MPa?3MPaの範囲である。なお,当然のことながら,上記圧力の上限値以上の圧力でもパターンの転写は可能である。
【0086】
その後,パターンが転写された塗膜を光硬化させる。
…(省略)…
【0087】
光重合時の雰囲気として,大気下でも重合可能であるが,光重合反応を促進する上で,酸素阻害の少ない雰囲気下での光重合が好ましい。例えば,窒素ガス雰囲気下,不活性ガス雰囲気下,フッ素系ガス雰囲気下,真空雰囲気下等が好ましい。
【0088】
光硬化後,硬化した塗膜から金型を分離することにより,基材層と,基材層上に,光硬化した塗膜(光硬化膜)によりパターンが形成されたパターン層との積層体が得られる。
【0089】
(レプリカ金型の製造)
レプリカ金型として使用するためには,上記方法により得られた積層体について,その表面に離型処理を施す。離型処理としては,フッ素を含有するシランカップリング剤等の離型処理剤を反応させることが好ましく行われる。」

ウ 「【実施例】
…(省略)…
【0112】
(レプリカ金型を使用したナノインプリント)
上記の光硬化性組成物をナノインプリント用組成物として使用し,厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)社製,両面易接着処理PETフィルム,コスモシャインA-4300)上に数滴滴下し,薄く延ばした後,120℃において2分間乾燥して,ナノインプリント用組成物の塗膜がコーティングされたPETフィルムを得た。上記塗膜がコーティングされたPETフィルムと,上記で得られた離型処理したレプリカ金型とを,ナノインプリント装置(SCIVAX(株)製,X-300)にセットし,300Paまで真空引きした後,上記塗膜がコーティングされたPETフィルムにレプリカ金型を接触させ,圧力2.0MPaをかけ,LED365nm光源から光を60秒間照射してUVナノインプリントを行った。PETフィルムをレプリカ金型から剥離し,レプリカ金型のパターンに対応する(補形をなす)パターンが転写されたPETフィルムを得た。得られたPETフィルム上の転写されたパターンの形状を評価するため,PETフィルムの上に形成されたパターンをSEMにて観察し,パターンの径および高さを計測した。レプリカ金型を使用したナノインプリントにより形成されたパターンの形状の測定結果を表3に示した。形成されたパターンは,レプリカ金型の作製に使用したシリコン製金型のパターンと同じであった。」

(6) 引用文献5の記載
本件出願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,前置報告において引用された引用文献5には,以下の記載がある。
ア 「[0001] この発明は,細胞培養構造体,細胞培養容器,スフェロイド付き構造体,スフェロイド付き容器およびこれらの製造方法に関するものである。
背景技術
[0002] 今日,創薬の開発において,細胞培養技術によって培養した細胞が,薬剤の薬理活性評価や毒性試験のシミュレーターに利用されている。
…(省略)…
[0008] そこで,本発明は,形状や大きさ,材質が制御された細胞培養構造体,細胞培養容器,スフェロイド付き構造体およびスフェロイド付き容器を提供することを目的とする。また,これらを簡単かつ短時間で安価に製造する製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0009] 上記目的を達成するために,本発明の細胞培養構造体は,凹凸の幅が3μm以下の凹凸構造を有することを特徴とする。
…(省略)…
[0048] 次に,このような細胞培養構造体の製造方法について説明する。細胞培養構造体の製造方法には,加工対象物200に対し型100を押圧して型100に形成された微細なパターン(凹凸構造)を転写するナノインプリント技術を用いることができる。ナノインプリント技術には,熱式のインプリントプロセス技術や光式のインプリントプロセス技術等がある。図2に熱式のインプリントプロセス技術に用いる加工装置1を示す。」
(当合議体注:図2は以下の図である。)


イ 「[0049] 加工装置1は,図2に示すように,所定のパターンを有する型100と加工対象物200とを押圧して,型のパターンを加工対象物200に転写する微細加工装置であって,型100を保持する型保持部2と,加工対象物200を保持する加工対象物保持部12と,加工対象物200に対する型100の相対的な位置およびその位置を変化させる変位速度を調節可能な変位手段5と,加工対象物200に対する型100の相対的な位置を検出する位置検出手段7と,型100と加工対象物200との間の圧力を検出する圧力検出手段8と,型100を加熱する型加熱手段3と,型100を冷却する型冷却手段4と,型100の温度を検出する型温度検出手段31と,加工対象物200を加熱する加工対象物加熱手段13と,加工対象物200を冷却する加工対象物冷却手段14と,加工対象物200の温度を検出する加工対象物温度検出手段131と,位置検出手段7,圧力検出手段8,型温度検出手段31および加工対象物温度検出手段131の検出情報に基づいて,変位手段5,型加熱手段3,型冷却手段4,加工対象物加熱手段13および加工対象物冷却手段14の作動を制御する制御手段300と,で主に構成される。
…(省略)…
[0071] 型100と加工対象物200とを所定温度に加熱した後,型100と加工対象物200とを予め設定した圧力で押圧する。この際,型100と加工対象物200との間の圧力は,型100のパターンを加工対象物200に転写できる大きさの範囲で,できる限り小さい圧力を用いる方が良い。具体的には,4MPa以下,好ましくは2MPa以下,更に好ましくは1.5MPa以下,更に好ましくは1MPa以下,更に好ましくは,0.5MPa以下,更に好ましくは0.25MPa以下にするのが良い。これにより,従来よりも比較的小さい圧力で押圧するため,型100と加工対象物200との間の密着力を増加させることがなく,型崩れ等を防止して離型を容易にすることができる。
…(省略)…
[0073] また,型100と加工対象物200とを押圧し,型100のパターンを加工対象物に転写する際には,型100と加工対象物200の雰囲気を真空にする方が好ましい。この場合,パターンの転写前に真空雰囲気にすれば良いが,加工対象物200の酸化等を考慮すれば,加工対象物200の加熱前に真空雰囲気にする方が好ましい。真空度としては,例えば40Pa以下にすれば良い。」

2 対比及び判断
(1) 対比
引用発明と本願発明1を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 線状部材,光反射面,光制御部材,ラインパターンの製造方法
引用発明の「モールド型10」の形状,及び「第1工程」からみて,引用発明の「土手部42」(複数)は,互いに平行配置された複数の線状の部材からなるラインパターンということができる。また,引用発明の「第1工程」に加えて「第2工程」-「第4工程」をも勘案すると,引用発明の「平面光反射部63,64」は,「土手部42」の側面に形成された,光を反射する面ということができる。そして,引用発明は,「帯状の平面光反射部63,64を一定ピッチで並べて形成した光制御パネル65,66を安価に製造する方法」である。
そうしてみると,引用発明の「土手部42」,「平面光反射部63,64」及び「光制御パネル65,66」は,それぞれ,本願発明1の「線状部材」,「光反射面」及び「光制御部材」に相当する。また,引用発明の「第1工程」-「第4工程」のうち「第1工程」は,本願発明1の「光制御部材」を製造する各工程のうち,ラインパターンを製造する工程に対応するから,引用発明の「第1工程」は,本願発明1の「互いに平行配置された複数の線状部材からなるラインパターンと,前記線状部材の側面に形成された光反射面とを有する光制御部材における前記ラインパターンの製造方法」に相当する。

イ 工程(a)
引用発明の「第1工程」は,「容器35を用意し,容器35の底に透明平板37aを配置し」,「容器35の中に透明な紫外線硬化型樹脂36を入れ」る工程(以下「工程1A」という。)を具備する。
ここで,引用発明の「透明平板37a」と「紫外線硬化型樹脂36」との関係に着目してみれば,引用発明の「工程1A」は,「紫外線硬化型樹脂36」の層を「透明平板37a」の上に形成する工程ということができる。
そうしてみると,引用発明の(容器35の中に入れた後の)「紫外線硬化型樹脂36」と本願発明1の「塗膜」とは,「層」の点で共通し,そして,引用発明の「工程1A」と本願発明1の「工程(a)」は,「樹脂組成物の」層「を基板上に形成する工程」の点で共通する。

ウ 工程(b)
引用発明の「第1工程」は,「容器35を水平に保った状態で,モールド型10の角溝11の側面17,18を垂直状態に保って,角溝11の底面19が完全に紫外線硬化型樹脂36に漬かるまで入れ」,「この後,紫外線硬化型樹脂36に紫外線を照射」する工程(以下「工程1B」という。)を具備する。
ここで,引用発明の「第1工程」からみて,引用発明の「モールド型10」は,引用発明の「土手部42」(複数)の形状に対応する凹凸パターンを有するといえる。また,引用発明の「工程1B」は,「モールド型10」を「角溝11の底面19が完全に紫外線硬化型樹脂36に漬かるまで入れ」,「この後,紫外線硬化型樹脂36に紫外線を照射」するものであるから,「モールド型10」を「紫外線硬化型樹脂36」の層に入れ,「紫外線硬化型樹脂36」の層に放射線を照射する工程ということができる。
したがって,引用発明の「モールド型10」は,本願発明の「凹凸部材」に相当する。また,引用発明の「工程1B」と本願発明1の「工程(b)」は,「前記ラインパターンの形状に対応する凹凸パターンを有し」「ている凹凸部材を前記」層に入れ,前記層「に放射線を照射する工程」の点で共通する。

エ 工程(c)
引用発明が「第1工程」以降「第2工程」より前に,「紫外線を照射し」た後の「紫外線硬化型樹脂36」の層から「モールド型10」を分離する工程(以下「工程1C」という。)を具備することは必然である。また,上記アで述べたとおりであるから,引用発明が,「工程1C」の結果,互いに平衡配置された複数の「土手部42」からなるラインパターンを得ていることも明らかである。
そうしてみると,引用発明の「工程1C」と本願発明1の「工程(c)」は,「放射線照射後の」層「から前記凹凸部材を分離して,互いに平行配置された複数の」「線状部材からなるラインパターンを得る工程(c)」の点で共通する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明(の第1工程)は,次の構成で一致ないし共通する。
「 互いに平行配置された複数の線状部材からなるラインパターンと,前記線状部材の側面に形成された光反射面とを有する光制御部材における前記ラインパターンの製造方法であり,
樹脂組成物の層を基板上に形成する工程と,
前記ラインパターンの形状に対応する凹凸パターンを有している凹凸部材を前記層に入れ,前記層に放射線を照射する工程と,
放射線照射後の前記層から前記凹凸部材を分離して,互いに平行配置された複数の,線状部材からなるラインパターンを得る工程と
を有する
ラインパターンの製造方法。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は,以下の相違点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の樹脂組成物は,「2官能以上の多官能モノマー(A),感放射線性重合開始剤(B),ならびにフッ素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種を含む化合物(C)を含有する」とともに「E型粘度計により25℃で測定した粘度が,300?10000mPa・s」であるのに対して,引用発明の「紫外線硬化型樹脂36」の組成及び粘度は,このような構成を具備するとは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1の「凹凸部材」は,「凹凸パターン表面がフッ素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種を含む化合物により表面処理されている」ものであるのに対して,引用発明の「モールド型10」は,このような表面処理がされているとは特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1の「線状部材」は,「高さが50?500μm」であるのに対して,引用発明の「土手部42」は,「モールド型10」の形状からみて,「100μm?2mm」の「1?4倍程度」である「100μm?8mm」である点。

(相違点4)
「層」に関して,本願発明1は「塗膜」であり,また,本願発明1の「工程(b)」は,「凹凸部材を前記塗膜に押圧」する工程を含むとともに,「工程(b)において,前記凹凸部材の塗膜側の環境を減圧し,前記凹凸部材の塗膜側とは反対側の環境を加圧した状態で前記押圧を行い,ここで前記凹凸部材の塗膜側とは反対側の加圧条件を0.1?30.0MPaの範囲とし,前記凹凸部材の塗膜側の環境の減圧条件を150Pa以下とする」ものであるのに対して,引用発明の「工程1B」は,「容器35を水平に保った状態で,モールド型10の角溝11の側面17,18を垂直状態に保って,角溝11の底面19が完全に紫外線硬化型樹脂36に漬かるまで入れ」るものである点。

(3) 判断
相違点1に関して,引用文献2の【0025】及び【0026】には,それぞれ「樹脂は,2種類以上の物質の混合物であるウレタンアクリレートを構成する物質の,種類や混合割合を変化させることで,比重0.8-1.3程度,屈折率1.4-1.8程度,粘度10-4,800 CPS程度(いずれも25℃)のものが得られる」こと,及び「アセタールグリコールジアクリレートとウレタンアクリルレートの混合物には,公知の光重合開始剤を適量添加することが好ましい」ことが記載されている。ここで,1CPS=1mPa・sであるから,引用文献2に記載された樹脂の粘度の数値範囲と,本願発明1の樹脂組成物の粘度の数値範囲は,重複している。
ここで,引用文献2の樹脂は,光通信用光学部品用の樹脂であり,引用発明のものとは技術分野も求められる性質も相違する。ただし,「ガラスの型を押しつけ,これらのガラスの平板又は型を通して紫外線を照射して,樹脂を硬化させる」(【0027】)ための樹脂(いわゆる光インプリント用の樹脂)という側面においては,引用発明の樹脂と共通する。

次に,相違点4に関して,引用文献3の【0110】及び【0111】には,それぞれ「モールド圧力を0.1?30MPaで行うのが好ましい」こと,及び「光照射時における好ましい真空度は,10^(-1)Paから常圧の範囲である」ことが開示されている。また,引用文献4の【0085】には,金型を押し付ける際の圧力として,「0.01MPa?3MPaの範囲」が開示されている。また,引用文献5の[0071]及び[0073]には,それぞれ「型100と加工対象物200との間の圧力は,型100のパターンを加工対象物200に転写できる大きさの範囲で,できる限り小さい圧力を用いる方が良い。具体的には,4MPa以下,好ましくは2MPa以下,更に好ましくは1.5MPa以下,更に好ましくは1MPa以下,更に好ましくは,0.5MPa以下,更に好ましくは0.25MPa以下にするのが良い」こと,及び「型100と加工対象物200とを押圧し,型100のパターンを加工対象物に転写する際には,型100と加工対象物200の雰囲気を真空にする方が好ましい。この場合,パターンの転写前に真空雰囲気にすれば良いが,加工対象物200の酸化等を考慮すれば,加工対象物200の加熱前に真空雰囲気にする方が好ましい。真空度としては,例えば40Pa以下にすれば良い。」ことが記載されている。そうしてみると,引用文献3-引用文献5に記載された加圧条件及び減圧条件の数値範囲と,本願発明1の加圧条件及び減圧条件の数値範囲は,部分的に重複している。
ここで,引用文献3-引用文献5に記載された技術は,いずれもナノインプリントに関するものであり,成型時に極めて高い転写精度が求められるものであるところ,引用発明の光制御パネル65,66も,成型時の極めて高い転写精度が求められるものであり(引用文献の【0031】),両者は,この点において共通する。

ところで,当業者ならば,モールド圧力と樹脂の粘度の間には,密接な関係があることを心得ている。すなわち,モールド圧力が比較的低い場合には樹脂の粘度も比較的低くしなければ成型時の転写精度を確保することができず,逆に,樹脂の粘度が比較的高い場合には,モールド圧力を比較的高くしなければ,成型時の転写精度を確保することができない。そうしてみると,仮に,引用発明と引用文献2に記載された樹脂,並びに,引用文献3-引用文献5に記載された加圧条件及び減圧条件を組み合わせようと考える当業者ならば,引用文献3-引用文献5に記載された樹脂の粘度についても参考にすると考えられる。そこで,引用文献3-引用文献5の記載内容を確認すると,引用文献3の【0094】には,「本発明のナノインプリント用組成物において,溶剤を除く成分の25℃における粘度は1?100mPa・sであることが好ましい。より好ましくは5?50mPa・s,さらに好ましくは7?30mPa・sである。」と記載されている。また,引用文献4の【0022】には「一般的に,パターンを形成する光硬化性組成物の粘度が低い方が有利である」と記載され,また,【0112】に記載された実施例の光硬化性組成物(【0106】)の粘度もその組成からみて極めて低いと考えられる。引用文献5は,熱ナノインプリントであり,そもそも前提が異なるといえる。
そうしてみると,引用発明に接した当業者が,仮に,引用発明と引用文献2に記載された樹脂,並びに,引用文献3-引用文献5に記載された加圧条件及び減圧条件を組み合わせることに思い到ったとしても,その際に採用する樹脂の粘度は,引用文献2の【0025】の記載の示唆に従い,「2種類以上の物質の混合物であるウレタンアクリレートを構成する物質の,種類や混合割合を変化させることで」,粘度範囲の最低値である10CPS近くまで低い粘度に調整されたものになると考えられる。
したがって,仮に,当業者が引用発明と引用文献2に記載された樹脂,並びに,引用文献3-引用文献5に記載された加圧条件及び減圧条件を組み合わせることに思い到ったとしても,相違点1に係る本願発明1の構成に到ることはないと考えられる。そして,本願発明1は,相違点1に係る粘度の樹脂組成物と,相違点4に係る加圧条件及び減圧条件の下でラインパターンの製造を可能とするために,相違点1に係る化合物(C)及び相違点2に係る表面処理の構成を採用したものと考えることができる。

以上勘案すると,相違点3について検討するまでもなく,当業者が引用発明に基づいて,相違点1,相違点2及び相違点4に係る本願発明1の構成を具備する,本願発明1の「ラインパターンの製造方法」を容易に発明することができたということはできない。

(4) 本願発明2-本願発明11について
本願発明2-本願発明7は,いずれも,相違点1,相違点2及び相違点4に係る本願発明1の構成を具備するラインパターンの製造方法である。また,本願発明8及び本願発明9は,いずれも,本願発明1-本願発明7のいずれか1つの方法によりラインパターンを形成する工程を含む,光制御部材の製造方法である。そして,本願発明10及び本願発明11は,いずれも,光制御部材を本願発明8又は本願発明9の方法により製造する構成を含む,光学結像部材の製造方法である。
そうしてみると,本願発明2-本願発明11は,いずれも,その方法の中に,相違点1,相違点2及び相違点4に係る本願発明1の構成を含むものであるから,本願発明1と同様に,当業者が引用発明に基づいて,容易に発明することができたということはできない。

第3 まとめ
以上のとおり,原査定の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-12 
出願番号 特願2016-67601(P2016-67601)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小西 隆山▲崎▼ 和子  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 宮澤 浩
樋口 信宏
発明の名称 ラインパターン、光制御部材および光学結像部材の製造方法  
代理人 特許業務法人SSINPAT  
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