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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1338074
審判番号 不服2016-17464  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-22 
確定日 2018-03-08 
事件の表示 特願2012-217945「回折光学シートおよび表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開,特開2014- 71327〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2012-217945号(以下「本件出願」という。)は平成24年9月28日に出願された特許出願であって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。
平成28年 6月17日付け:拒絶理由通知
平成28年 8月 1日 :意見書の提出
平成28年 8月 1日 :手続補正書の提出
平成28年 8月18日付け:拒絶の査定
平成28年11月22日 :審判の請求
平成28年11月22日 :手続補正書の提出
平成29年 9月 6日付け:拒絶理由通知(当合議体)
平成29年11月 7日 :意見書の提出
(以下「本件意見書」という。)
平成29年11月 7日 :手続補正書の提出
(この手続補正書による補正を,以下「本件補正」という。)

2 本願発明
本件出願の請求項1-請求項6に係る発明は,本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明」という。)。
「 熱可塑性樹脂を用いて形成された回折構造体を,少なくとも一方の面に,備える回折光学シートであって,
前記回折構造体は,不規則な凹凸パターンを形成し,
前記回折構造体を構成する凸部の前記回折光学シートのシート面への法線方向に沿った高さh〔μm〕,前記回折光学シートのシート面に沿った前記凸部の配列ピッチp〔μm〕,および,前記回折光学シートのシート面への法線方向に沿った前記回折光学シートの厚みt〔mm〕が,次の式(1)および式(2)を満たし,
0.5 ≦ h/p ≦ 3 ・・・式(1)
0.6 ≦ h/p+0.47t ≦ 5.5 ・・・式(2)
複屈折率の平均値Δn_(ave)および複屈折率の標準偏差σ_(Δn)が,次の条件(a)および(b)を満たす,回折光学シート。
Δn_(ave)≦50×10^(-6) ・・・条件(a)
(σ_(Δn)/Δn_(ave))≦0.10・・・条件(b)」

3 当合議体の拒絶の理由
当合議体により通知された拒絶の理由は,概略,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献は,以下のとおりである。
引用例1:省略
引用例2:特開2009-283314号公報
引用例3:特開2012-53282号公報
引用例4:省略
周知例1:特開2009-242752号公報
周知例2:特開2010-46798号公報

第2 当合議体の判断
1 引用例の記載及び引用発明
(1) 引用例2の記載
本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用例2には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの点光源と,前記点光源からの光を入射する入光面及び前記光を出射する出光面を有し,前記光の拡散量が最も多い第1方向を有する第1異方性拡散シートと,前記第1異方性拡散シートの上方に配設され,前記点光源からの光を入射する入光面及び前記光を出射する出光面を有し,前記光の拡散量が最も多い第2方向を有する第2異方性拡散シートと,を具備し,前記第1方向と前記第2方向とが異なり,前記第1異方性拡散シート及び/又は前記第2異方性拡散シートは,前記入光面に不規則な凹凸構造を有することを特徴とする光源ユニット。」

イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,点光源と異方性拡散シートとを具備する光源ユニット及びその光源ユニットを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点光源の代表例である発光ダイオード(LED)に関しては,その出射分布を制御する方法が種々開発されている。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,特許文献1に開示された構成では,出射分布が等方的なため,方形領域に光を照射したい場合には,角部にまで光が届かないので,光の利用効率が悪くなるという問題がある。
…(省略)…
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり,点光源を用いたものであり,略方形領域に照光する際にも,面内の照度の均一性に優れた光源ユニットを提供することを目的とする。
…(省略)…
【発明の効果】
【0010】
本発明の光源ユニットは,少なくとも一つの点光源と,前記点光源からの光を入射する入光面及び前記光を出射する出光面を有し,前記光の拡散量が最も多い第1方向を有する第1異方性拡散シートと,前記第1異方性拡散シートの上方に配設され,前記点光源からの光を入射する入光面及び前記光を出射する出光面を有し,前記光の拡散量が最も多い第2方向を有する第2異方性拡散シートと,を具備し,前記第1方向と前記第2方向とが異なり,前記第1異方性拡散シート及び/又は前記第2異方性拡散シートは,前記入光面に不規則な凹凸構造を有するので,光源の出光を略方形状に整形することができ,略方形領域に照光する際にも,光を効率的に利用でき,同時に照度を上げることができる。これにより,バックライトなどに用いた場合,面内の照度均一性を向上させることができる。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下,本発明の実施の形態について,添付図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は,本発明の実施の形態に係る光源ユニットを示す斜視図であり,図1(b)は,図1(a)に示す光源ユニットの側面図である。」
(当合議体注:図1は以下の図である。)


エ 「【0012】
図1に示す光源ユニットは,少なくとも一つの点光源1と,この点光源1の上方に配設され,点光源1からの光を入射する入光面2a及び光を出射する出光面2bを有し,光の拡散量が最も多い第1方向を有する第1異方性拡散シート2と,第1異方性拡散シート2の上方に配設され,点光源1からの光を入射する入光面3a及び光を出射する出光面3bを有し,光の拡散量が最も多い第2方向を有する第2異方性拡散シート3とから主に構成されている。
…(省略)…
【0017】
第1異方性拡散シート2及び第2異方性拡散シート3は,次のような拡散特性を有するシートをいう。図2(a)は,異方性拡散シートを説明するための斜視図であり,図2(b)は,異方性拡散シートを説明するための平面図である。ここでは,第1異方性拡散シートを用いて説明する。異方性拡散シートとは,図2(a)に示すように,第1異方性拡散シート2の入光面2aへ垂直に光線4を入射した場合に,光の拡散量が最も多い方向を有する拡散特性を持つシートをいう。すなわち,この拡散特性は,図2(b)に示す,シートの出光面から垂直方向に所定距離離れた位置における出射分布5の断面において,出射強度が最大を示す方向での出射分布5の半値巾aと,前記方向に垂直な方向での出射分布5の半値巾bとが異なるような拡散特性をいう。
【0018】
ここで,光の出射分布は,変角光度計GC5000L(日本電色工業株式会社)にて,シートの表面に垂直な方向から光束を入射させ,1°毎の相対透過率を測定することにより得ることができる。本発明の光源ユニットに用いられる異方性拡散シートは,a/bが2以上であることが好ましく,より好ましくはa/bが30以上であり,さらに好ましくは,a/bが50以上である。」
(当合議体注:図2は以下の図である。)


オ 「【0019】
本発明の光源ユニットにおいては,第1異方性拡散シート2の光の拡散量が最も多い方向(第1方向)と,第2異方性拡散シート3の光の拡散量が最も多い方向(第2方向)とが異なっている。
…(省略)…
【0020】
本発明の光源ユニットにおいては,第1異方性拡散シート2及び/又は第2異方性拡散シート3は,入光面に不規則な凹凸構造を有する。より好ましくは,第1異方性拡散シート2及び第2異方性拡散シート3の入光面に不規則な凹凸構造を有することである。このように構成することにより,プリズムなどの凹凸構造を有する拡散シートやシート中に針状あるいは楕円状の粒子を配列させてなる拡散シートに比べて,均一な拡散光強度分布を得ることができ,より方形に近い出射分布を得ることができる。ここで,本発明において,方形とは,4つの頂点と辺を持つ多角形を意味するものとする。具体的には,広く四角形全般を意味し,正方形,長方形等の矩形のみならず,菱形等の平行四辺形も含むものとする。
…(省略)…
【0022】
図5(a)?(c)は,不規則な凹凸構造を有する2枚の異方性拡散シートの配設態様を示す図である。図5(a)に示す態様は,光源1の上方に第1異方性拡散シート2が配設され,その上方に第2異方性拡散シート3が配設され,第1異方性拡散シート2の入光面2a及び第2異方性拡散シート3の入光面3aに不規則な凹凸構造を有するものである。また,図5(b)に示す態様は,光源1の上方に第1異方性拡散シート2が配設され,その上方に第2異方性拡散シート3が配設され,第1異方性拡散シート2の入光面2a及び第2異方性拡散シート3の出光面3bに不規則な凹凸構造を有するものである。図5(c)に示す態様は,光源1の上方に第1異方性拡散シート2が配設され,その上方に第2異方性拡散シート3が配設され,第1異方性拡散シート2の出光面2b及び第2異方性拡散シート3の入光面3aに不規則な凹凸構造を有するものである。なお,図5(a)?(c)においては,異方性拡散シートにおいて光が最も拡散する方向(矢印及び丸印)を示した。
…(省略)…
【0027】
凹凸構造における凹凸の高さ又はピッチは不規則であることが好ましい。凹凸の高さ又はピッチを不規則にすることにより,モアレを抑止することができ,加えて拡散光の強度分布が均一になり,照度の面内均一性がより向上する。また,これらの凹凸の高さ及びピッチが不規則な構造として,不均一な非平面スペックルによって特徴づけられた微細な凹凸構造を用いることが好ましい。この不均一な非平面スペックルについては後述する。
…(省略)…
【0031】
また,この複数の凹凸形状のアスペクト比は,0.01以上10以下であり,凹凸形状の最大高さと最低高さとの間の差が50μm以下であることが好ましい。ここで,アスペクト比は,凹凸の高さを山間のピッチ間距離で割った値である。これらの,凹凸形状の高さ,ピッチ,アスペクト比については,光の拡散方向や拡散範囲により適宜決定することができる。例えば,相対的に広い角度範囲に拡散させる場合には,凹凸形状の高さは,0.1μm?50μm,好ましくは1.0μm?20μmであり,凹凸形状のピッチは,0.1μm?50μm,好ましくは0.1μm?20μmであり,アスペクト比は,0.5?10である。また,相対的に狭い角度範囲に拡散させる場合には,凹凸形状の高さは,0.1μm?20μmであり,凹凸形状のピッチは,3.0μm?100μmであり,アスペクト比は,0.01?0.5である。
…(省略)…
【0033】
この凹凸形状を直接形成する場合は,次のようにして形成することができる。まず,予め干渉露光によりスペックルパターンを形成したサブマスタ型を作製し,このサブマスタ型に電鋳などの方法で金属を被着してこの金属にスペックルパターンを転写してマスタ型を作製する。光透過性樹脂層に,上記マスタ型を用いて紫外線による腑形を行って光透過性樹脂層の光取り出し面にスペックルパターンを転写する。
…(省略)…
【0036】
具体的に,凹凸形状としては,図9から図12に示すものが挙げられる。…(省略)…図12Aは,図11Aに比べて低拡散側を同じで,高拡散側がより拡散性を有する凹凸形状が異方拡散を示す図であり,図12Bは,図12Aに示す凹凸形状の高拡散側の断面プロファイルを示す図であり,図12Cは,図12Aに示す凹凸形状の低拡散側の断面プロファイルを示す図である。」
(当合議体注:図12A-図12Cは以下の図である。)
【図12A】


【図12B】


【図12C】


カ 「【0044】
次に,本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(実施例1)
点光源であるLEDの封止剤表面から2.2mm上方に,不均一な非平面スペックルによって特徴づけられた平均ピッチが約4μm,平均高さが約4μm,アスペクト比が約0.4の微細な凹凸構造を片面のみに持ち,高さのばらつきが50%以上の異方性拡散シートであるLSD(Light Shaping Diffuser)60×1を2枚,互いの透過拡散する光が最も拡散する方向が直交するように,かつ互いの面が接するように,かつ双方の凹凸面がLED側を向くようにして配設して実施例1の光源ユニットを作製した。この光源ユニットについて,第2のLSD上面のLED直上部分の出射分布をELDIM社製EZ Contrast XL88により測定した。その結果,図14に示すように,出射分布が矩形となっていた。
…(省略)…
【0046】
本発明は上記実施の形態に限定されず,種々変更して実施することが可能である。例えば,上記実施の形態における部材の材質,配置,形状などは例示的なものであり,適宜変更して実施することが可能である。その他,本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は,ディスプレイに用いる直下型のバックライトなどの照光装置に適用することができる。」

(2) 引用発明
引用例2の【請求項1】には,点光源,光の拡散量が最も多い方向を有する第1異方性拡散シート及び第2異方性拡散シートを具備する光源ユニットの発明が記載されている。また,第1異方性拡散シート及び第2異方性拡散シートの配置に関して,引用例2の【0022】には,図5(b)及び図5(c)とともに,第1異方性拡散シートの出光面2b又は第2異方性拡散シートの出光面3bに不規則な凹凸構造を有する光源ユニットの配設態様が記載されている。そして,凹凸構造に関して,引用例2の【0031】には,光を相対的に広い角度範囲に拡散させる場合,凹凸形状の高さは,0.1μm?50μm,凹凸形状のピッチは,0.1μm?50μmであり,アスペクト比は,0.5?10であることが記載されている。
そうしてみると,引用例2には,請求項1に係る発明の光源ユニットに用いられ,出光面に不規則な凹凸構造を有し,光を相対的に広い角度範囲に拡散させる異方性拡散シートとして,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 点光源,第1異方性拡散シート及び第2異方性拡散シートを具備する光源ユニット用の,出光面に不規則な凹凸構造を有し,光の拡散量が最も多い方向を有する異方性拡散シートであって,
凹凸形状の高さは,0.1μm?50μm,凹凸形状のピッチは,0.1μm?50μm,アスペクト比は,0.5?10であり,
アスペクト比は,凹凸の高さを山間のピッチ間距離で割った値である,
光を相対的に広い角度範囲に拡散させる異方性拡散シート。」

(3) 周知例1の記載
本件出願の出願前に頒布された刊行物である周知例1には,以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,導光板等に用いられる光学シート及び光学シートの製造方法,ならびに光学シートの表面に凹凸を形成した成形体及び同成形体の製造方法に関する。さらに,詳しくは,特定の熱可塑性樹脂を特定の条件下で押出成形し,シートの固体構造における高次構造を制御することにより得られる透明性,導光性に優れた光学シート,同光学シートの製造方法,成形体ならびに成形体の製造方法に関する。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は,薄肉・大画面化が図られた導光板等の成形体への加工が容易で,光線透過率の高い光学シートおよびそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
…(省略)…
(1)(A)粘度平均分子量22000以下の芳香族ポリカーボネイト100質量部および(B)酸化防止剤0.01?1質量部を含有し,青色系色素または顔料を含まない芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物が押出機から押し出された後,ガラス転移温度以下で冷却された光学シートであって,該光学シートの厚み0.1?1mmにおける全光線透過率が91%以上であることを特徴とする光学シート,
(2)複屈折(位相差;波長550nmにおけるリタデーション値)が150nm以下で,且つシート面内の任意箇所でのリタデーション値の標準偏差値が10以下である上記(1)に記載の光学シート,
…(省略)…
(7)上記(1)?(5)のいずれかに記載の光学シートの表面に凹凸パターンを形成させてなる成形体,
(8)導光板,拡散シート,再帰性反射板,プリズムシートおよびフレネルレンズシートのいずれかである上記(7)に記載の成形体,
…(省略)…
【発明の効果】
【0007】
本発明により,射出成形法では不可能な厚みと面積の導光板等の成形体の製造に適した,転写性および高い透明性,低い複屈折性など光学特性(導光性,色調)に優れる光学シートおよび導光板等が提供される。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
…(省略)…
【0026】
次に,前記の光学シートの表面に凹凸パターンを形成させた導光板等の本発明の成形体について説明する。
以上の特性,組成,製造方法により得られた光学シートは,その表面に微細な凹凸パターンを形成することにより成形体とし,配光制御が可能となり,導光板,拡散シート,再帰性反射板,プリズムシートおよびフレネルレンズシート等として用いることができる。
…(省略)…
このような凹凸パターンの形成法としては,ロールエンボス法,真空プレス成形法,ベルト転写法などが挙げられる。
…(省略)…
【0027】
この他,微細な凹凸パターンが形成された金型を用いてアクリル系紫外線硬化樹脂を本発明の光学シートに押し当てながら紫外線で硬化させるリソグラフィー法や,白色インキを用いたスクリーン印刷法になどが適用できる。
…(省略)…
【実施例】
…(省略)…
【0031】
<光学シート押出成形>
…(省略)…
条件2(実施例5で適用)
Hitz産機テクノ株式会社製のUFロール挟圧押出成形機(弾性ロール法?図2参照)を用いて行なった。押出機のスクリュウ直径は90mmである。」
(当合議体注:図2は以下の図である。)


エ 「【0032】
<プレス成形によるパターン転写>
実施例6以外の各実施例および各比較例において作製した各光学シートを名機製作所製微細パターン転写用真空プレスで真空吸引後,三角錘プリズムアレイ(高さ50μm)をニッケルメッキにて形成したスタンパーに押し当て,160℃にてプレス成形を行ない,導光板を作製した(パターン形成1)。
【0033】
<評価方法>
…(省略)…
(2)シートの分光光線透過率
厚み0.4mmの光学シートサンプルを島津製作所製のUV可視分光光度計(UV-2450)により波長300nmでの分光光線透過率(%)を測定した。
(3)複屈折率(レターデーション)およびその標準偏差値
大塚電子株式会社製のリタデーション測定装置(RETS-100)により,550nmに対する複屈折(レターデーション値)を測定した。
本発明において,任意箇所というのは,100cm×100cmの光学シートのサンプルより,各測定箇所が60cm以上離れた2箇所の4cm×4cmの部分の1cmピッチの3cm×3cmの格子上9箇所について合計18点の測定を行った。
計算式:
標準偏差(σ)=
√[{(Re_(1)-Re_(av))^(2)+(Re_(2)-Re_(av))^(2)+・・・・・+(Re_(n)-Re_(av))^(2)}/n]
nは測定した全サンプリング数
Re_(n)はn番目のサンプリング箇所のRe値
Re_(av)はReの平均値を表わす。
…(省略)…
【0036】
【表1】



(4) 周知例2
本件出願の出願前に頒布された刊行物である周知例2には,以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,プラスチックの押出成形シートやフィルムの単材,シート類同士,紙や繊維などの複合材を挟圧成形して冷却し,シート製品やフィルム製品,ラミネート製品,特に光学的用途の極薄シート・フィルムの成形に適したシート・フィルムのロール成形装置およびロール成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱可塑性樹脂の押出成形法には,金属ロール挟圧成形法とゴムロール挟圧成形法がある。
金属ロール挟圧成形法は,押出成形機からTダイを介して互いに平行に配置された主ロールと押さえロール上にシート状の溶融樹脂が供給され,主ロールと押さえロールの間で挟圧されて主ロールの表面に巻き付けられつつ,正確な成形厚みで両ロールの表面の鏡面またはエンボス面が転写成形され,ガイドロールを介して引き出される。…(省略)…そして,これら主ロールと押さえロールは剛性の高いロールであるため,溶融樹脂シートを挟圧している状態で主ロールと押さえロールの表面の変形は無く,主ロールと押さえロールの間に溶融樹脂シートの余剰分が溜まるバンクが発生する。
【0003】
…(省略)…他方,このバンク量が許容範囲を越える場合には,挟圧部で樹脂シートに歪みが付与され,この歪みは,樹脂の弾性性質により左右されるが,ロール挟圧力やバンク量,溶融シート,ロール温度差が大きいと比例して大きくなる傾向にある。このような残留歪みがあるシートは,特に光の乱反射や複屈折現象を起こすために,光学的用途たとえば液晶などの表示装置には使用できず,また経時的に歪みが回復するために変形が生じて初期形状を保持できないため,文具類などに適用できないという問題があった。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
…(省略)…
【0008】
本発明は,上記問題点を解決して,残留歪みがなく光学的用途に好適なシート・フィルムの成形厚みをより薄く,かつ歩留まりもよく安定して成形でき,またエンボス面等の転写も高精度で行えるシート・フィルムのロール成形装置およびロール成形方法を提供することを目的とする。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下,本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
このシート・フィルムのロール成形装置は,図1,図2に示すように,押出機からTダイDを介して押出されたシート状溶融樹脂Pを,第1挟圧部1で主ロール10と第1金属弾性ロール(押さえロール)20との間で挟圧成形し,主ロール10の外周面に沿って案内されるシート状溶融樹脂Pを,第2挟圧部2で主ロール10と第2金属弾性ロール(押さえロール)30との間で挟圧成形するものである。」
(当合議体注:図1及び図2は以下の図である。)
【図1】


【図2】


2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明と引用発明を対比すると,以下とおりである。
ア 回折光学シート
引用発明の「異方性拡散シート」は,「光の拡散量が最も多い方向を有する」とともに,「光を相対的に広い角度範囲に拡散させる」ものであるから,光に対して「異方性拡散」という光学的作用を与えるシートといえる。
したがって,引用発明の「異方性拡散シート」と本願発明の「回折光学シート」は,「光学シート」の点で共通する。

イ 回折構造体
引用発明の「異方性拡散シート」は,「出光面に不規則な凹凸構造を有する」ものである。ここで,引用発明の「凹凸構造」は,その文言のとおり,凹凸という形のある物であるから,「構造体」ということができ,また,「出光面」は,「異方性拡散シート」の一方の面である。加えて,引用発明の「凹凸構造」は,「0.1μm?50μm」の「高さ」及び「ピッチ」のものであるから,凹凸という模様を形成しているといえる。
したがって,引用発明の「異方性拡散シート」と本願発明の「回折光学シート」は,「構造体を,少なくとも一方の面に,備える」点,及び「構造体は,不規則な凹凸パターンを形成し」という点で共通する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「構造体を,少なくとも一方の面に,備える光学シートであって,
前記構造体は,不規則な凹凸パターンを形成した,
光学シート。」

イ 相違点
本願発明と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
光学シートについて,本願発明は「回折光学シート」であるのに対して,引用発明は「異方性拡散シート」であり,本願発明でいう「回折光学シート」に該当するものか,一応,明らかではない点。

(相違点2)
構造体に関して,本願発明は「熱可塑性樹脂を用いて形成された回折構造体」であって,「前記回折構造体を構成する凸部の前記回折光学シートのシート面への法線方向に沿った高さh〔μm〕,前記回折光学シートのシート面に沿った前記凸部の配列ピッチp〔μm〕,および,前記回折光学シートのシート面への法線方向に沿った前記回折光学シートの厚みt〔mm〕が,次の式(1)および式(2)を満たし」,「複屈折率の平均値Δn_(ave)および複屈折率の標準偏差σ_(Δn)が,次の条件(a)および(b)を満たす」のに対して,引用発明は,この構成を具備するとは特定されていない点。
なお,式(1),式(2),条件(a)及び条件(b)は以下のとおりである。
0.5 ≦ h/p ≦ 3 ・・・式(1)
0.6 ≦ h/p+0.47t ≦ 5.5 ・・・式(2)
Δn_(ave)≦50×10^(-6) ・・・条件(a)
(σ_(Δn)/Δn_(ave))≦0.10 ・・・条件(b)

(3) 判断
ア 相違点1について
本件出願の発明の詳細な説明の【0031】には,「図9及び図10に示された回折光学シート10の回折構造体20は,数百nm?数μm程度のピッチで設けられた多数の凸部21aによって形成されている。図9及び図10に示された回折光学シート10の回折構造体20において,凸部21aは不規則的に配列されている。すなわち,回折構造体20は,不規則的な凹凸パターン21を形成し,ホログラムを構成している。とりわけ,図9及び図10に示された回折構造体20は,異方性光拡散機能を発現し得るように設計されている。」と記載されている。
(当合議体注:図9及び図10は以下の図である。)
【図9】


【図10】


そうしてみると,本願発明の「回折光学シート」は,いわゆる回折格子のようなものではなく,数百nm?数μm程度のピッチで設けられた不規則的な凹凸パターンにより異方性光拡散機能を達成するものと解することができる。
他方,引用発明の異方性拡散シートは,「光を相対的に広い角度範囲に拡散させる」ものであるから,引用例2の図12A及びBの,高拡散側がより拡散性を有する凹凸形状(【0036】)から看取されるような数μmのピッチのものが引用発明に含まれる。
そうしてみると,引用発明の「異方性拡散シート」は,本願発明の「回折光学シート」に該当するということができるか,少なくとも,引用発明の「異方性拡散シート」を相違点1に係る本願発明の構成を具備したものとすることは,引用例2の記載が示唆する範囲内の事項にすぎない。

イ 相違点2について
引用発明の「異方性拡散シート」は,液晶表示装置等に使用される光学シートであるから,その複屈折率を抑えることは当業者における自明の課題である。また,当該課題を解決しつつ光学シートを製造する手段として,柔軟性を有するロールを使用した(熱可塑性樹脂の)溶融押出成形法が周知技術である。
すなわち,例えば,周知例1の【0031】及び図2に記載された「Hitz産機テクノ株式会社製のUFロール挟圧押出成形機」により成形された光学シート(実施例5)は,レタデーション値が18nm,標準偏差値が1(【0036】の表1の実施例5の欄を参照),厚みが0.4mm(【0033】)であるから,Δn_(ave)は45×10^(-6),σ_(Δn)/Δn_(ave)は0.056と計算され,本願発明の条件(a)及び条件(b)を満たす。周知例2においても,周知例1の押出成形機と同様のものが開示されており,同等の性能の光学シートが作成可能と考えられる。
また,引用発明において,凹凸形状のアスペクト比は0.5?10とされているが,アスペクト比が3を超えるものを作製することは,凹凸構造の賦形方法(周知例1の【0032】に記載された方法,周知例1の【0027】や引用例2の【0033】に記載された方法,あるいは,周知例2の【0008】に記載された方法等)及び生産性を考慮すると,現実的ではないと解される。したがって,引用発明の凹凸形状のアスペクト比,すなわち,本願発明でいう「前記回折構造体を構成する凸部の前記回折光学シートのシート面への法線方向に沿った高さh〔μm〕,前記回折光学シートのシート面に沿った前記凸部の配列ピッチp〔μm〕」としたときの「h/p」は式(1)の要件を満たすと考えられる。
加えて,引用発明の「異方性拡散シート」の厚さは不明であるが,引用発明が前提とする光源ユニット(直下型である)ならば,ある程度の剛性が求められる。したがって,0.2mmに近い程度まで薄く設計することはなく,また,5mmを超えるまで厚くする必要もない(1mm程度で良いと考えられる。)から,式(2)の要件をも満たすと考えられる。
(当合議体注:アスペクト比が0.5であるとしても,厚さが約0.22mmを上回ればh/p+0.47tは0.6以上となる。また,アスペクト比が3であるとしても,厚さが5mmを下回れば,h/p+0.47tは5.5以下となる。また,数μm程度の凹凸構造を賦形しても,複屈折率の悪化は僅かと考えられる。)

以上勘案すると,引用発明の「異方性拡散シート」を作製するに際して周知の製造方法を採用することにより,相違点2に係る本願発明の構成を具備する回折光学シートを得ることは,当業者が容易に発明できた事項といえる。

(4) 本願発明の効果に関して
本願発明の効果(【0016】)は,引用発明及び周知技術から当業者が予測可能な範囲内の効果にすぎない。

(5) 請求人の主張について
請求人は本件意見書において,概略,発明の詳細な説明の【0052】-【0054】及び【0055】の記載を指摘して,本願発明の各構成の組み合わせにより,高精細な回折構造体について透過する光の特定方向の輝度を高めながら,光学機能の面内均一性を確保することができたと主張する。
しかしながら,本願発明は,【0052】及び【0053】に記載のような製造方法の発明ではない(なお,製造方法については,引用例3に開示されている。)。また,【0054】に記載の式(1)及び式(2)に関して,本件出願において実際に製造されたものは図9及び図10(前記(3)ア参照)から看取されるようなものであり,引用例2の図12(前記1(1)オ参照)から看取されるようなものと同程度のものである。そして,【0055】において言及された条件(a)及び条件(b)に関して,本件出願においては,回折構造体を含まない,単なる板状材において値が確認されているにすぎない。
あるいは,前記(3)及び(4)で述べたとおり,引用発明の「異方性拡散シート」を作製するに際して周知の製造方法を採用することが容易であり,その効果も予測可能な範囲内である。
したがって,請求人の主張を採用することはできない。

第3 まとめ
本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-09 
結審通知日 2018-01-12 
審決日 2018-01-24 
出願番号 特願2012-217945(P2012-217945)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
河原 正
発明の名称 回折光学シートおよび表示装置  
代理人 永井 浩之  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 堀田 幸裕  
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