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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1338081
審判番号 不服2017-3331  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-06 
確定日 2018-03-08 
事件の表示 特願2015-229835「二次元コード、二次元コードの作成システムおよび解析プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月25日出願公開、特開2016- 28364〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成25年11月7日(優先権主張平成24年11月13日 日本国)を国際出願日とする出願(特願2014-546958号)の一部を、平成27年11月25日に新たな特許出願としたものであって、平成28年9月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年11月9日付けで手続補正がなされたが、平成28年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[結論]
平成29年3月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
平成29年3月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成28年11月9日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された、

「【請求項4】
二次元のマトリックス状のパターンとして配置され、二進コードで表されるデータを表す複数のセルと、
前記複数のセルの位置を決定するために用いられる位置検出パターンと、
任意の絵柄が配置され、前記複数のセル及び前記位置検出パターンは配置されない絵柄領域であって、周囲には前記複数のセルが配置される絵柄領域と、
を備える二次元コード。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項4に記載された、

「【請求項4】
二次元のマトリックス状のパターンとして配置され、二進コードで表されるデータを表す複数のセルと、
前記複数のセルの位置を決定するために用いられる位置検出パターンと、
任意の絵柄が配置され、前記複数のセル及び前記位置検出パターンは配置されない絵柄領域であって、周囲には前記複数のセルが配置される絵柄領域と、
を備え、
前記位置検出パターン及び前記絵柄領域以外の領域は、誤り訂正の単位に応じて、複数のブロックに分割されている単一の二次元コード。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更する補正事項を含むものである。

2.補正の適否
(1)補正の目的要件
本件補正のうち上記補正事項は、本願発明の「二次元コード」の「位置検出パターン」及び「絵柄領域」以外の領域が、「誤り訂正の単位に応じて、複数のブロックに分割されている」と、また、「二次元コード」が、「単一の」ものであると限定したものであるから、特許法第17条の2第5項第2号にいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものと認められ、特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合している。
また、特許法17条の2第4項(シフト補正)の規定に違反するものでもない。

(2)独立特許要件
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下検討する。

ア.補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「補正後の発明」として認定したとおりのものである。

イ.引用文献、引用発明
(ア)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2004-206674号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2次元に配置されたセルの明暗により情報を符号化してなるコードを有する2次元コードおよびその形成構造に関する。」

b.「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記レンズなどの場合は、組付け後にも外から見えるように配置される表示意匠部分が大部分を占めており、残りのわずかなスペースに、位置決め穴52と識別記号50、51とが配置されるため、識別記号50、51を表示するためのスペースは非常に小さくなる。そのような小さなスペースに識別記号と2次元コードを並べて配置すると、識別記号が非常に小さくなり、作業者が目視により読み取りできないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記点に鑑みなされたものであり、目視により読取可能な識別記号と光学的に読取可能な識別コードの両方を小さなスペースに表示可能にする2次元コードおよびその形成構造を提供することを目的としている。」

c.「【0017】
【発明の実施の形態】
(一実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係る2次元コード11の一例を示しており、図2は2次元コード11を、その全体構成を示すために、データセルを省略して表示している。2次元コード11は、マトリックス型2次元コードの1つであるQRコードをベースとしている。QRコードは、黒色の正方形を印字してなる暗セルと、その暗セルが存在しない部分として白色の正方形となっている明セルとを2次元的に組み合わせることで、数字、英字、漢字、カナ、記号などの情報を符号化し、矩形状に形成されているものである。
【0018】
2次元コード11は、その正方形のコード領域1が、3つの頂点に対応する隅に配置された3つの位置決め用シンボル2によって定義される。コード領域1は21×21セルからなる。1セルを0.2mmとして、一辺は4.2mmとなり、これに両側それぞれ4セル分のマージンスペースを加えて、実際に2次元コード11を印刷するのに必要なスペースは5.8mm × 5.8mmとなる。コード領域1内の位置決め用シンボル2が配置されていない隅には、人間が目視により読取可能な識別記号3を表示するための記号領域4が形成されている。
【0019】
2次元コード11は、詳細は後述するが、コード読取装置によって光学的に読み取られる。位置決め用シンボル2の間には、明セルと暗セル(タイミングセル)を交互に配置してなるタイミングパターン5が設けられており、これは、コード読取装置によりコードを読み取る際に、各セルの中心座標を補正するために用いられる。
【0020】
位置決め用シンボル2は、一辺の長さが7セルに相当する黒い正方形、一辺の長さが5セルに相当する白い正方形、一辺の長さが3セルに相当する黒い正方形を同心状に重ね合わせて得られる図形である。位置決め用シンボル2は、図3(a)に▲1▼、▲2▼、▲3▼で示すような縦、横、斜めのどのコースで走査される場合でも、図3(b)?(d)に示すように、「黒、白、黒、白、黒」のパターンが1:1:3:1:1の比率で検出されるため、2次元コード11の画像を走査していく途中で、「黒、白、黒、白、黒」がこのような比率で検出されたら、位置決め用シンボル2が検出されたと判断することができる。このようにして位置決め用シンボル2が3つ検出されれば、その内側の領域をコード領域1として特定することができる。
【0021】
識別記号3が表示される記号領域4の大きさは9×9セルであり、記号領域4を除くコード領域1のうち、位置決め用シンボル2やタイミングパターン5などを除外した残りの領域(データ領域)6には、図1に示すように、2次元に配置されたセル(データセル)を明(白)あるいは暗(黒)に色分けすることにより符号化されたデータ(コード)が表示される。各データセルは1ビットのデータに対応しており、例えば白は1、黒は0を示している。
【0022】
各データセルの位置は、3つの位置決め用シンボル2の中心と2つのタイミングセルを、それぞれ縦方向と横方向の座標の指標として、簡単な計算により求めることができる。このようにして各データセルの位置を特定して、データセルの中心付近が黒であるか白であるかを判定することにより、2値データを得ることができる。
【0023】
2次元コード11は、コードの一部が汚れていたり破損していたりしてもデータが復元できるように、誤り訂正機能を備えている。この誤り訂正機能は、リードソロモン符号をデータ領域6に配置することにより実現される。2値データから元のデータを得る復号化の際に、コード読取装置はリードソロモン符号によりデータの誤り訂正を行う。」

d.「【0052】
上記実施形態において、2次元コード11の外形は正方形であったが、長方形でもよく、また、大きさについても21×21セルに限らず、符号化されるデータの量や記号領域として必要なスペースの大きさなどに基づいて、2次元コードを配置するスペースに納まる範囲内で、QRコードで設定可能な大きさのうちから1つを選択することができる。2次元コードの大きさが決定したら、そのコード領域内に、符号化されたデータを表示するのに必要なスペースをデータ領域として確保すれば、識別記号の読み取り易さなどを考えて、残りの領域の適当な位置に、適当な大きさ、形の記号領域を配置することができる。
【0053】
例えば、複数の文字からなる識別記号を表示する場合などには、図8(a)?(d)に示すように、記号領域を、位置決め用シンボルに隣接した位置に、コード領域を定義する4辺のうちの一辺に沿うように配置するとよい。QRコードでは、一般的に、21×21セルを最小の大きさとして4セルずつの間隔で177×177セルまでの大きさが設定可能である。ところが、位置決め用シンボルは7×7セルで、その両側に明セルが配置されるため、実質的には8×8セルであり、データセルは8ビットのコードワードが表示される2×4セルのブロックに分割して用いられるため、位置決め用シンボルに隣接した部分のデータ領域には必ず1セルの幅のデッドスペースができる。従って、位置決め用シンボルに隣接した部分に記号領域を配置すると、スペースを有効に利用することができる。
【0054】
上記実施形態において、コード作成システムは、コードの大きさ(セル数)、記号領域の大きさおよび位置は固定であるとして2次元コード11を作成したが、これらをユーザが指定できるような構成であってもよい。また、ユーザにより入力された識別記号の文字数に基づいて記号領域の大きさを決定するような構成であってもよく、コードの大きさは、符号化される部品データの量や記号領域の大きさに基づいて決定するようになっていてもよい。」

e.



・上記c.の段落【0021】には、データ領域6は、2次元に配置されたセル(データセル)を明(白)あるいは暗(黒)に色分けすることにより符号化されたデータ(コード)が表示され、各データセルは1ビットのデータに対応しており、例えば白は1、黒は0を示すことが、また、段落【0023】には、データ領域6に、コードの一部が汚れていたり破損していたりしてもデータが復元できる誤り訂正機能を備えるように、リードソロモン符号が配置されることが記載されている。
さらに、上記d.の段落【0053】には、データ領域6のデータセルは8ビットのコードワードが表示される2×4セルのブロックで分割して用いられることが記載されている。
したがって、引用文献1には、データ領域6は、2次元に配置されたセル(データセル)を明(白)あるいは暗(黒)に色分けすることにより符号化されたデータ(コード)が表示され、各データセルは1ビットのデータに対応しており、例えば白は1、黒は0を示しており、さらに、コードの一部が汚れていたり破損していたりしてもデータが復元できる誤り訂正機能を備えるように、リードソロモン符号が配置され、また、データセルは8ビットのコードワードが表示される2×4セルのブロックで分割して用いられる、ことが記載されているといえる。

上記引用文献1の記載(特に、下線部。)及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「3つの頂点に対応する隅に配置された3つの位置決め用シンボル2によって定義され、21×21セルからなっている、正方形のコード領域1で構成される2次元コード11であって、
位置決め用シンボル2が配置されていない隅に人間が目視により読取可能な識別記号3を表示するための記号領域4が形成され、
前記位置決め用シンボル2の間には、明セルと暗セル(タイミングセル)を交互に配置してなるタイミングパターン5が設けられ、
前記記号領域4を除くコード領域1のうち、位置決め用シンボル2やタイミングパターン5などを除外した残りの領域はデータ領域6であり、
前記データ領域6は、2次元に配置されたセル(データセル)を明(白)あるいは暗(黒)に色分けすることにより符号化されたデータ(コード)が表示され、各データセルは1ビットのデータに対応しており、例えば白は1、黒は0を示しており、さらに、コードの一部が汚れていたり破損していたりしてもデータが復元できる誤り訂正機能を備えるように、リードソロモン符号が配置され、また、データセルは8ビットのコードワードが表示される2×4セルのブロックで分割して用いられ、
前記位置決め用シンボル2は、一辺の長さが7セルに相当する黒い正方形、一辺の長さが5セルに相当する白い正方形、一辺の長さが3セルに相当する黒い正方形を同心状に重ね合わせて得られる図形であって、位置決め用シンボル2が3つ検出されれば、その内側の領域をコード領域1として特定することができるものであり、
前記記号領域4は、大きさが9×9セルからなり、
各データセルの位置は、3つの前記位置決め用シンボル2の中心と2つの前記タイミングセルを、それぞれ縦方向と横方向の座標の指標として、簡単な計算により求めることができ、このようにして各データセルの位置を特定して、データセルの中心付近が黒であるか白であるかを判定することにより、2値データを得ることができる、
2次元コード11。」

(イ)周知文献1
原査定において周知技術を示す文献として引用された、特開2012-183720号公報(以下、「周知文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【0012】
はじめに、挿入画像が挿入後の2次元コード(QRコード)の例を、図4を用いて説明する。図4の(a)は、星型のマークである挿入画像が2次元コード(QRコード)の中央の位置に挿入された画像の例である。図4の(b)は、列車型のマークである挿入画像が2次元コード(QRコード)の中央の位置に左右に分布した領域において挿入された画像の例である。図4の(c)は、雪だるま型のマークである挿入画像が2次元コード(QRコード)の中央の位置に上下に分布した領域において挿入された画像の例である。図4の(d)は、星型のマークである挿入画像が2次元コード(QRコード)の右下の位置に挿入された画像の例である。このように、挿入された位置、大きさ、形が異なる場合、印刷後の読取条件に異なる影響を及ぼすことが判っている。」

b.


(ウ)周知文献2
原査定において周知技術を示す文献として引用された、特開2009-259192号公報(以下、「周知文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【0307】
更に、図26の二次元コード310では、コード領域(矩形領域)内において、セルCとは異なるデザインを挿入するデザイン挿入領域311が設けられている。このデザイン挿入領域311は、図27(a)のように構成されており、図27(b)のような絵柄((図27(b)では音符絵柄312)、文字、記号等の様々なデザインを挿入して使用される構成となっている。
【0308】
図27(a)に示すように、デザイン挿入領域311は、セルCのサイズよりも広い領域として構成され、且つコードブロック10の複数のセル位置に跨る構成で配置されている。なお、図27(a)では、白色で塗り潰されたデザイン挿入領域311が構成され、図27(b)ではこのような白色のデザイン挿入領域311に音符絵柄312が記録された使用例を示している。
【0309】
本実施形態の構成のように、矩形領域内にデザイン挿入領域311を設けると、矩形領域内にセル以外のデザインを挿入できるようになり、デザイン性を効果的に高めることができる。特に、デザイン挿入領域311がセルのサイズよりも広い領域として構成され、且つコードブロック10の複数のセル位置に跨る構成で配置されているため、デザイン挿入領域をより広く確保でき、コード利用者により印象付けることができる。
【0310】
なお、図27(a)の例では、白色で塗り潰されたデザイン挿入領域311を例示したが、デザイン挿入領域311の境界部分全体が、隣接するセルCとは色彩、濃度、輝度の少なくともいずれかが異なるように構成されていてもよい。その一例としては、例えば、図27(b)のデザイン挿入領域311全体の色を、図26の二次元コード310のコードブロック10に使用されていない色によって構成する例が挙げられる(例えば、コードブロック10の各セルが、黒、白、赤、緑、青、黄、シアン、マゼンタによって表現される場合、これら以外の一色(例えばオレンジ等)のみ)によってデザイン挿入領域311を構成すればよい)。
【0311】
このように、デザイン挿入領域311における境界部分全体が、隣接するセルと比較して色彩、濃度、輝度の少なくともいずれかが異なるように構成されていると、デザイン挿入領域311と、これに隣接するセルとが明確に区別され、デザイン挿入領域311をより際立たせることができる。」

b.【図26】


c.【図27】


上記周知文献1、2の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、次の技術事項事項(以下、「周知の技術」という。)が、本願優先日前において周知の技術と認められる。

「単一の二次元コードにおいて、データを表す複数のセル及び位置検出パターンは配置されない絵柄領域の周囲にデータを表す複数のセルを配置すること。」


ウ.対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「データ領域6」の「セル(データセル)」は、「2次元に配置され」「明(白)あるいは暗(黒)に色分けすることにより符号化されたデータ(コード)が表示され、各データセルは1ビットのデータに対応しており例えば白は1、黒は0を示」すものであり、また、「データセルの中心付近が黒であるか白であるかを判定することにより、2値データを得ることができる」ものであるから、引用発明の「データ領域6」の「セル(データセル)」は、補正後の発明の「二次元のマトリックス状のパターンとして配置され、二進コードで表されるデータを表す複数のセル」に相当する。
b.引用発明では「各データセルの位置は、3つの前記位置決め用シンボル2の中心と2つの前記タイミングセルを、それぞれ縦方向と横方向の座標の指標として、簡単な計算により求めることができ、このようにして各データセルの位置を特定」するものであり、「位置決め用シンボル2」は、「各データセルの位置」を特定するのに用いられていることは明らかであるから、引用発明の「位置決め用シンボル2」は、補正後の発明の「複数のセルの位置を決定するために用いられる位置検出パターン」に相当する。
c.補正後の発明の「絵柄」は、本願の詳細な説明の段落【0063】に「・・・。図8の二次元コードは、ブロック座標(2,5)と(11,8)を対角とする長方形の絵柄領域を有し、IDコードと物品名が記載された画像が付されている。これにより、ユーザーは、コードを認識する前でも認識対象の概要を判別することが可能である。」、及び段落【0069】に「図10の(B)は、36×36セルで、8×8ブロックの二次元コードである。図10の(B)の二次元コードは、ブロック座標(2,3)と(5,4)を対角とする長方形の絵柄領域を有し、数字の画像が付されている。」と記載されていることから、ユーザーが認識できる文字や数字が含まれるものと認められる。
してみると、引用発明の「識別記号3」は、「人間が目視により読取可能な」記号(文字や数字)であるから、引用発明の「識別記号3」は、補正後の発明の「絵柄」に相当する。
d.さらに、引用発明の「記号領域4」は、「識別記号3を表示する」ものである。
ここで、引用発明の「データ領域6」は、「コード領域1」のうち、「記号領域4」、「位置決め用シンボル2」、「タイミングパターン5」を「除外した残りの領域」であるから、「記号領域4」には「位置決め用シンボル2」、複数の「セル(データセル)」からなる「データ領域6」は配置されないことは明らかである。
したがって、引用発明の「記号領域4」と、補正後の発明の「任意の絵柄が配置され、前記複数のセル及び前記位置検出パターンは配置されない絵柄領域であって、周囲には前記複数のセルが配置される絵柄領域」とは、「任意の絵柄が配置され、前記複数のセル及び前記位置検出パターンは配置されない絵柄領域」の点では共通する。
e.引用発明の「データ領域6」は、「コード領域1」のうち、「記号領域4」、「位置決め用シンボル2」、「タイミングパターン5」を「除外した残りの領域」である。
また、「データ領域6」は、「データ(コード)を表示」するものであって、さらに、「コードの一部が汚れていたり破損していたりしてもデータが復元できる誤り訂正機能を備えるように、リードソロモン符号が配置され、また、8ビットのコードワードが表示される2×4セルのブロックで分割して用いられ」るものであり、ここで、誤り訂正符号にリードソロモン符号を使った場合、誤り訂正はワード単位で行われることは技術常識であり、引用発明の「データ領域6」は誤り訂正の単位である「コードワード」の「2×4セルのブロックに分割」されているといえる。
したがって、引用発明の「データ領域6」は、補正後の発明の「誤り訂正の単位に応じて、複数のブロックに分割されている」「位置検出パターン及び前記絵柄領域以外の領域」に相当する。
f.引用発明の「2次元コード11」が単一であることは明らかであるから、引用発明の「2次元コード11」は、補正後の発明の「単一の二次元コード」に相当する。

したがって、補正後の発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「二次元のマトリックス状のパターンとして配置され、二進コードで表されるデータを表す複数のセルと、
前記複数のセルの位置を決定するために用いられる位置検出パターンと、
任意の絵柄が配置され、前記複数のセル及び前記位置検出パターンは配置されない絵柄領域と、
を備え、
前記位置検出パターン及び前記絵柄領域以外の領域は、誤り訂正の単位に応じて、複数のブロックに分割されている単一の二次元コード。」

(相違点)
補正後の発明では、「絵柄領域」は「周囲には前記複数のセルが配置される」のに対して、引用発明では、「記号領域」はそのような配置はされていない点。


上記相違点について検討する。
上述したように、二次元コードにおいて、データを表す複数のセル及び位置検出パターンは配置されない絵柄領域の周囲にデータを表す複数のセルを配置することは、周知文献1、2にも記載されるように本願の優先日前において周知の技術であったといえる。
また、引用文献1の段落【0052】には、記号領域(補正後の発明の「絵柄領域」に相当する。)の配置は、ユーザーが、記号領域の識別記号の読み取り易さ等を考慮して、コード領域内の適当な位置に配置できることが記載されている。
してみれば、引用発明の記号領域について、識別記号の読み取り易さ等を考慮して、上記周知の技術を適用し、単一の二次元コードにおいて、記号領域(補正後の発明の「絵柄領域」に相当する。)が、周囲に複数のセルが配置される領域とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明、及び周知の技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。


したがって、補正後の発明は、引用発明、及び周知の技術に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明である。

3.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである


第3.本願発明について
1.本願発明
平成29年3月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明は上記「第2」の「1.」の欄に転記したとおりのものであり、本願の請求項4は、上記「第2」の「1.」の欄に転記した記載事項により規定されるとおりのものである。

2.引用発明
引用発明等は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「イ.引用文献、引用発明」の項中の「(ア)引用文献1」の項で「引用発明」として認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「2.補正の適否」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「ウ.対比・判断」の項で検討したとおり、上記引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明することができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-25 
結審通知日 2018-01-09 
審決日 2018-01-24 
出願番号 特願2015-229835(P2015-229835)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山田 正文
山澤 宏
発明の名称 二次元コード、二次元コードの作成システムおよび解析プログラム  
代理人 宮本 哲夫  
代理人 関根 宣夫  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 鶴田 準一  

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