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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  G01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01J
管理番号 1338108
異議申立番号 異議2016-701038  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-08 
確定日 2018-01-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5920388号発明「温度センサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5920388号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正後の請求項〔1-2〕について訂正することを認める。 特許第5920388号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5920388号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成22年10月29日を出願日とする特願2010-244377号の一部を平成26年3月28日に新たな特許出願としたものであって、平成28年4月22日に設定登録がされ、その後、本件特許の請求項1及び2に係る特許に対し、異議申立人中和正一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
その後、当審より平成29年1月18日付けで取消理由が通知したところ、その指定期間内である同年3月24日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求(1回目)がなされ、当審より同年4月7日付けで再度取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月9日付けで特許権者から意見書の提出及び訂正請求(2回目)がなされ、その訂正請求に対して申立人から同年8月9日付けで意見書が提出され、同年9月7日付けで取消理由通知(決定の予告)がなされ、その指定期間内である同年11月13日に意見書の提出及び訂正請求(3回目)がなされ、その訂正請求に対して申立人から同年12月26日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

平成29年11月13日付けの訂正請求書でした訂正請求(3回目)(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、同訂正請求書の記載によれば、以下のとおりである。
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、平成29年1月18日付けの訂正請求(1回目)及び同年6月9日付けの訂正請求(2回目)は、本件訂正請求により取り下げられたものとみなされる。

(1) 請求項1に係る訂正事項

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「熱源から入射する赤外線を吸収する赤外線吸収膜」とあるのを、「熱源から入射する赤外線を吸収し、材料が樹脂である赤外線吸収膜」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記赤外線吸収膜上の赤外線入射領域に配置され、」とあるのを、「前記赤外線吸収膜上の赤外線入射領域である有効受光範囲に配置され、」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「赤外線が遮蔽された領域に配置され、前記検知用感温素子にブリッジ接続する補償用感温素子」とあるのを、「前記赤外線吸収膜上の赤外線が遮蔽された領域に配置され、前記検知用感温素子にブリッジ接続する補償用感温素子と、」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「開口部を有する筐体と、」とあるのを、「筐体開口部を有する筐体と、」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「前記筐体の開口部内にあって」とあるのを、「前記筐体の前記筐体開口部内にあって前記筐体の前記筐体開口部から導入される」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に「有効受光範囲を制限する」とあるのを、「前記有効受光範囲を規定し」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に「ための開口部」とあるのを、「周囲雰囲気を通すためのアパーチャ開口部」に訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項1に「前記補償用感温素子を前記赤外線から遮蔽するための遮蔽部」とあるのを、「前記補償用感温素子を前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線から遮蔽するための遮蔽部」に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項1に「前記開口部を有する筐体は、」とあるのを、「前記筐体開口部を有する前記筐体は、」に訂正する。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項1に「前記アパーチャは、前記赤外線吸収膜に近接して設置されており、」とあるのを、「前記アパーチャは、前記筐体の前記筐体開口部に比べて前記赤外線吸収膜に近接して設置されており、」に訂正する。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項1に「前記補償用感温素子は、前記筐体の開口部の内部に配置されて」とあるのを、「前記筐体の前記筐体開口部の内部において、前記補償用感温素子は、前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線から、前記遮蔽部によって遮蔽された状態で配置されており、前記検知用感温素子は、前記筐体開口部及び前記アパーチャ開口部の略中央に位置して」に訂正する。

(2) 請求項1に係る訂正に伴う訂正事項

請求項1に係る上記の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2も訂正された。

(3) 明細書についての訂正事項

ア 訂正事項12
願書に最初に添付した明細書の段落【0021】に
「図3及び図4に示すように、アパーチャ70は、開口部61から導入される赤外線の有効受光範囲を制限するための開口部71と」とあるのを、
「図3及び図4に示すように、アパーチャ70は、開口部61から導入される赤外線の有効受光範囲を規定するための開口部71と」に訂正する。

2 一群の請求項について

訂正前の請求項の引用関係からみて、訂正事項1ないし11は、請求項1及び2を一群の請求項として請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
また、訂正事項12に関して、本件訂正請求による訂正は、請求項1及び2についての訂正であるから、明細書又は図面の訂正に係る請求項1及び2を含む一群の請求項の全てについて行っており、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合する。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1) 訂正単位1について

ア 請求項1に係る訂正事項

(ア) 訂正事項1について

a 新規事項の有無について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)の段落【0014】には、「・・・赤外線吸収膜20の材質は、熱源からの輻射赤外線を効率よく吸収して発熱する材質であればよく、例えば、遠赤外線と称される4μm?10μmの波長帯域の光に吸収スペクトラムを有する材質が望ましい。このような材質として、フッ素、シリコーン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、又はポリフェニレンスルフィド等の高分子材料からなる樹脂が好ましい。・・・」と記載されている。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、赤外線吸収膜の材質を特定することによって特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ) 訂正事項2について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0015】には、「・・・検知用感温素子31を第一の主面21へ投影した領域が、開口部71を第一の主面21へ投影した領域の略中心に位置するように開口部71の形状及び検知用感温素子31の取り付け位置を調整するのが好ましい。これにより、検知用感温素子31は、赤外線吸収膜20の有効受光範囲に分布する熱量を各方位から略均等に集熱することができる。・・・」と記載されており、検知用感温素子31が取り付け位置が、赤外線吸収膜20の有効受光範囲であることが読み取れる。
よって、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、検知用感温素子が配置される部位が、有効受光範囲であることを限定することによって、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ウ) 訂正事項3について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0014】には、「・・・赤外線吸収膜20は、熱源から輻射される赤外線を受光する第一の主面21と、第一の主面21の裏面である第二の主面22とを有する。第一の主面21には、補償用感温素子32が取り付けられており、第二の主面22には、検知用感温素子31が取り付けられている。・・・」と記載されており、段落【0015】には、「アパーチャ70は、・・・補償用感温素子32を赤外線から遮蔽するための遮蔽部72とを有する。・・・」と記載されていることから、補償用感温素子32が赤外線吸収膜20上の赤外線が遮蔽された領域に配置されることが読み取れる。
よって、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、補償用感温素子が、赤外線吸収膜上に配置されることを限定することによって、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(エ) 訂正事項4について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0014】には、「感温素子31,32は、上部筐体60に形成された開口部61の内部に配置される。」との記載がされており、段落【0015】には、「アパーチャ70は、開口部61から導入される赤外線の有効受光範囲を制限するための開口部71と、・・・(略)・・・とを有する」との記載がされており、図3及び4を参照すると、「筐体開口部」である筐体60の開口部61と、「アパーチャ開口部」であるアパーチャ70の開口部71とが、区別されて記載されている。
よって、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1において、筐体の「開口部」と、アパーチャの「開口部」の2つの開口部が存在することにより、いずれの「開口部」であるか明瞭でなかった記載を、「筐体開口部」及び「アパーチャ開口部」とに区別して記載することにより明瞭にすることを目的とするものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(オ) 訂正事項5について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0015】には、「・・・アパーチャ70は、開口部61から導入される赤外線の有効受光範囲を制限するための開口部71と、補償用感温素子32を赤外線から遮蔽するための遮蔽部72とを有する。・・・」と記載されており、アパーチャ70に向かう赤外線が、筐体60の開口部61から導入されるものであることが読み取れる。
よって、訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、アパーチャに向かう赤外線が筐体の開口部から導入されるものである点を限定することによって、特許請求の範囲を減縮するものであり、また、「開口部」が「筐体開口部」であることを明確にし、どの「開口部」であるかを明瞭にすることを目的とするものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(カ) 訂正事項6について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0015】には、「・・・検知用感温素子31を第一の主面21へ投影した領域が、開口部71を第一の主面21へ投影した領域の略中心に位置するように開口部71の形状及び検知用感温素子31の取り付け位置を調整する・・・」と記載されており、図3及び図4の記載を参照すると、アパーチャ70の開口部71により、有効受光範囲が規定される点が読み取れる。
よって、訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
本件訂正前の「有効受光範囲を制限する」との記載は、図3及び図4の記載に鑑み、技術内容を必ずしも適切な表現できていないことから、「前記有効受光範囲を規定する」と訂正することによって、当該記載を明瞭にしようとするものである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(キ) 訂正事項7について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0015】には、「・・・開口部71を通じて周囲雰囲気に接している・・・」と記載されており、周囲雰囲気が開口部を通り得る点が読み取れる。
よって、訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項7は、アパーチャの開口部が、周囲雰囲気を通すためのものでもある点を限定することによって、特許請求の範囲を減縮するものであり、また、「開口部」が「アパーチャ開口部」であることを明確にし、どの「開口部」であるかを明瞭にすることを目的とするものである。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(ク) 訂正事項8について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0015】には、「・・・アパーチャ70は、開口部61から導入される赤外線の有効受光範囲を制限するための開口部71と、補償用感温素子32を赤外線から遮蔽するための遮蔽部72とを有する。・・・」と記載されており、アパーチャ70に向かう赤外線が、筐体60の開口部61から導入されるものであり、アパーチャ70の遮蔽部72が遮蔽する赤外線が、筐体60の開口部61から導入されるものである点が読み取れる。
よって、訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項8は、遮蔽部で遮蔽する赤外線が筐体60の開口部61である「筐体開口部」から導入されたものである点を限定することによって、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(ケ) 訂正事項9について

a 新規事項の有無について
上記「(エ) 訂正事項4について」で検討したように、本件特許明細書等の段落【0014】、【0015】、図3及び4を参照すると、「筐体開口部」である筐体60の開口部61と、「アパーチャ開口部」であるアパーチャ70の開口部71とが、区別されて記載されている。
よって、訂正事項9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項9は、本件訂正前の請求項1において、筐体の「開口部」と、アパーチャの「開口部」の2つの開口部が存在することにより、いずれの「開口部」であるか明瞭でなかった記載を、「筐体開口部」及び「アパーチャ開口部」と区別して記載することにより明瞭にすることを目的とするものである。
よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(コ) 訂正事項10について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の図3及び図4の記載を参照すると、アパーチャ70が筐体60の開口部61に比べて赤外線吸収膜20に近接して配置される状態が図示されている。
よって、訂正事項10は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項10は、アパーチャが筐体の開口部である「筐体開口部」に比べて赤外線吸収膜に近接して設置されている点を限定することによって、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(サ) 訂正事項11について

a 新規事項の有無について
本件特許明細書等の段落【0015】には、「・・・アパーチャ70は、開口部61から導入される赤外線の有効受光範囲を制限するための開口部71と、補償用感温素子32を赤外線から遮蔽するための遮蔽部72とを有する。・・・」及び「・・・補償用感温素子32は、遮蔽部72によって赤外線受光が遮られているため・・・」と記載されており、補償用感温素子が、筐体の開口部から導入される赤外線から、遮蔽部によって遮蔽された状態で配置されるものであることが読み取れる。また、同段落【0015】には、「検知用感温素子31を第一の主面21へ投影した領域が、開口部71を第一の主面21へ投影した領域の略中心に位置するように開口部71の形状及び検知用感温素子31の取り付け位置を調整するのが好ましい。これにより、検知用感温素子31は、赤外線吸収膜20の有効受光範囲に分布する熱量を各方位から略均等に集熱することができる。」と記載されており、また、図2及び図4を参照すると、検知用感温素子31が、上部筐体60の開口部61及びアパーチャ70の開口部71の略中心に位置していることが読み取れる。
よって、訂正事項11は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

b 訂正の目的の適否について
訂正事項11は、補償用感温素子が筐体の開口部の内部に配置されるにあたって、前記筐体の開口部から導入される赤外線からアパーチャの遮蔽部によって遮蔽された状態で配置される点、及び、検知用感温素子が、前記筐体開口部及び前記アパーチャ開口部の略中央に位置する点を限定することによって、特許請求の範囲を減縮するものである。
よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(シ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

請求項1に係る訂正事項1ないし11の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ス) 請求項1に係る訂正のまとめ

以上のことから、請求項1に係る訂正事項1ないし11の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ 請求項1に係る訂正に伴う訂正事項

請求項1に係る上記の訂正に伴い、請求項1を引用する請求項2も訂正された。
そして、請求項1に係る訂正事項1ないし11は、上記「ア 請求項1に係る訂正事項」「(ス) 請求項1に係る訂正のまとめ」のとおりであり、また、訂正事項1ないし11による訂正によって、請求項2に係る発明が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内ではないものになるものではなく、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
よって、請求項2に係る訂正事項1ないし11は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、また、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、加えて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ 明細書の訂正事項

(ア) 訂正事項12について

明細書に係る訂正事項12は、訂正事項6に伴う訂正後の特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図ることを目的とした訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正事項6と同様に本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

4 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明について

本件訂正請求により訂正された請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定された次のとおりのものであり、1A)ないし2B)の符号を付けると、以下のとおりのものである。

【請求項1】
1A) 熱源から入射する赤外線を吸収し、材質が樹脂である赤外線吸収膜と、
1B) 前記赤外線吸収膜上の赤外線入射領域である有効受光範囲に配置され、前記熱源の温度に対応した電気信号を出力する検知用感温素子と、
1C) 前記赤外線吸収膜上の赤外線が遮蔽された領域に配置され、前記検知用感温素子にブリッジ接続する補償用感温素子と、
1D) 前記熱源から輻射される赤外線を前記赤外線吸収膜に導入するための筐体開口部を有する筐体と、
1E) 前記筐体の前記筐体開口部内にあって前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線の前記有効受光範囲を規定し周囲雰囲気を通すためのアパーチャ開口部及び前記補償用感温素子を前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線から遮蔽するための遮蔽部とを有するアパーチャと、
を備え、
1F) 前記筐体開口部を有する前記筐体は、前記熱源から輻射された赤外線が前記赤外線吸収膜に直接入射させる構造であり、
1G) 前記アパーチャは、前記筐体の前記筐体開口部に比べて前記赤外線吸収膜に近接して設置されており、
1H) 前記筐体の前記筐体開口部の内部において、前記補償用感温素子は、前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線から、前記遮蔽部によって遮蔽された状態で配置されており、前記検知用感温素子は、前記筐体開口部及び前記アパーチャ開口部の略中心に位置している
1I) 温度センサ。

【請求項2】
請求項1に記載の温度センサであって、
2A) 前記補償用感温素子は周囲雰囲気に接している、
2B) 温度センサ。

第4 特許異議の申立てについて

1 申立理由について

申立人は、下記甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
なお、申立人から提出された各甲号証を、以下、甲1などと省略して表記する。

甲1:特開平7-178061号公報
甲2:特開平11-30553号公報
甲3:特開2004-354172号公報
甲4:特開平9-135047号公報
甲5:特開平7-209089号公報
甲6:特開平7-260579号公報
甲7:特許第4567806号公報
甲8:特開平9-181074号公報
甲9:特開2008-111849号公報
甲10:特開平9-264792号公報

そして、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)の第4頁「3.申立ての理由」「(3) 申立ての根拠」の項、第12頁「(5) むすび」の項に記載された条文に鑑み、申立理由を整理すると、次の申立理由1及び申立理由2を申立人は主張している。

申立理由1
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

申立理由2
本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

2 取消理由の概要

平成29年6月9日付け訂正請求書による訂正請求後の請求項1及び2に係る特許に対して平成29年9月7日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次の通りである。

(1) 刊行物等一覧
甲6:特開平7-260579号公報
甲3:特開2004-354172号公報(周知技術を示す文献)
甲7:特許第4567806号公報(周知技術を示す文献)
甲9:特開2008-111849号公報(周知技術を示す文献)

(2) 特許法第29条第2項に関して
請求項1及び2に係る発明は、甲6に記載された事項及びその発明の出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが本来できないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 刊行物等の記載事項

(1)甲6の記載事項及び甲6発明
取消理由で通知した甲6には、以下の事項が記載されている(下線は、当審により付加した。以下同様。)。

(甲6-ア)
「【請求項1】 赤外線検知用感熱素子及び温度補償用感熱素子と、
前記赤外線検知用感熱素子と前記温度補償用感熱素子を夫々密着固定する樹脂フィルムと、
赤外線検知側と温度補償側の前記樹脂フィルムの少なくとも対向する部分を固定する実質的に熱伝導性を有する板部または枠体と、
前記赤外線検知用感熱素子と前記温度補償用感熱素子をその内側に配置するように前記板部または枠体を設けたケースと、
赤外線が入射する入射窓と赤外線を遮蔽する遮蔽部とを備え、
前記赤外線検知用感熱素子側に前記入射窓を配置し、前記温度補償用感熱素子側に前記遮蔽部を配置したことを特徴とする赤外線検出器。」

(甲6-イ)
「【0013】次に、本発明の赤外線検出器の赤外線検出について説明する。先ず、赤外線は、ケース1の蓋体6に設けた赤外線入射窓7から入射されて樹脂フィルム3aに照射される。樹脂フィルム3aには、カーボンブラックを分散させたポリエステルからなり、略100%の赤外線吸収率を有する樹脂フィルム3aであり、赤外線量に応じて樹脂フィルム3aの温度が上昇する。樹脂フィルム3aの温度の上昇によって樹脂フィルム3aの裏面に密着したサーミスタ素子5aの抵抗値を変化させる。従って、赤外線量に応じた樹脂フィルム3aの温度上昇が抵抗値の変化として出力される。無論、この抵抗値の変化には赤外線検出器の周辺の温度の影響も含まれている。
【0014】一方、温度補償用サーミスタ素子5bは、樹脂フィルム3bに密着固定されており、蓋体6によって赤外線を遮断する構造になっているため、温度補償用サーミスタ素子5bは赤外線に影響されることなく、周囲雰囲気の温度に対してその抵抗値が変化する。そして、赤外線検知側と温度補償用側のサーミスタ素子5a,5bのそれぞれの熱容量と、それぞれが被着される樹脂フィルム3a,3bのそれぞれの熱容量とを加算した熱容量がそれぞれ同じになるように構成されている。
【0015】従って、赤外線検出器の周囲雰囲気の温度の変動に対してサーミスタ素子の抵抗値は同じように変化し、この変動を相殺することにより、入射赤外線量に応じた温度変化を正確に検知することができる。この周辺温度の相殺は、図8に示したブリッジ回路によって達成することができる。本発明に係る赤外線検出器の赤外線検知用サーミスタ素子5a(Th1 )及び温度補償用サーミスタ素子5b(Th2 )を用い、先に説明したブリッジ回路を構成し、赤外線検知用サーミスタ素子5aの端子間電圧の変化を、端子A,B間の電圧変化として検出し、赤外線量に応じた温度変化を正確に検出するものである。」

(甲6-ウ)
「【0017】図4は、本発明に係る赤外線検出器の他の実施例を示す分解斜視図である。図4の実施例は、図1に示した赤外線検出器との相違点は赤外線検知用サーミスタ素子5a及び温度補償用サーミスタ素子5bが密着固定される樹脂フィルム8が一枚板で構成されている点にあり、張出部4を形成したケース1、赤外線入射窓7と赤外線遮蔽部6aを設けた蓋体6及び枠体2は図1の実施例と同一である。・・・」

(甲6-エ) 図2




(甲6-オ) 図4




(甲6-カ) 図8




(甲6-キ) 図2及び図4を参照すると、ケース1は、その上端部に蓋体6を接続するための開口部を有しており、赤外線は、該開口部を通して、樹脂フィルム8へと導かれている。また、赤外線検知用サーミスタ素子5aが、赤外線入射窓7の中央近傍に位置することが見て取れる。

(甲6-ク) 図2を参照すると、樹脂フィルム8は、蓋体6に対向して配置されていることが見て取れる。

以上の摘記事項を含む甲6全体の記載を参照すると、甲6には、以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

「赤外線検知用サーミスタ素子5a及び温度補償用サーミスタ素子5bと、
前記赤外線検知用サーミスタ素子5aと前記温度補償用サーミスタ素子5bを夫々密着固定する略100%の赤外線吸収率を有する樹脂フィルム8と、
前記赤外線検知用サーミスタ素子5aと前記温度補償用サーミスタ素子5bをその内側に配置するケース1であり、その上端部に蓋体6を接続するための開口部を有し、赤外線は、該開口部を通して、樹脂フィルム8へと導かれるケース1と、
赤外線が入射する赤外線入射窓7と赤外線遮蔽部6aを設けた蓋体6を備え、
前記樹脂フィルム8は、前記蓋体6に対向して設けられ、
前記赤外線検知用サーミスタ素子5aに前記赤外線入射窓7を配置し、前記温度補償用サーミスタ素子5b側に前記赤外線遮蔽部6aを配置し、前記赤外線検知用サーミスタ素子5aは、前記赤外線入射窓7の中央近傍に位置し、
赤外線検知用サーミスタ素子5a及び温度補償用サーミスタ素子5bを用い、ブリッジ回路を構成した、赤外線検出器。」

(2) 甲3の記載事項
取消理由で通知した甲3には、以下の記載がある。

(甲3-ア)
「【0022】
図1に示すように、赤外線温度センサ1は、検知用サーミスタや補償用サーミスタを収容するハウジング2を有している。このハウジング2は、図2に示すように、その内部空間を隔てる隔壁3が一体的に形成された本体部4を、導光部6と蓋部7とで挟み込むようにして構成されている。これにより、ハウジング2内には、隔壁3、本体部4及び導光部6により空間S1が形成され、隔壁3、本体部4及び蓋部7により空間S2が形成される。」

(甲3-イ)
「【0024】
導光部6には、測定対象物から放射される赤外線を入射させる開口6aが形成されている。この開口6aは、略長方形状の長穴として形成されており(図1を参照)、その内側空間は、隔壁3、本体部4及び導光部6により形成された空間S1と一続きになっている。そして、この空間S1には、開口6aの隔壁3側の端部を覆うようにテープ状の第1の樹脂フィルム8が掛け渡され、この第1の樹脂フィルム8は、導光部6と本体部4とで挟持された状態で固定されている。これにより、第1の樹脂フィルム8は、開口6aに臨む赤外線受光領域R1において、測定対象物から放射される赤外線を受光する。なお、第1の樹脂フィルム8のベースフィルムには、赤外線吸収性を有するものとしてポリイミドフィルムが用いられている。
【0025】
さらに、第1の樹脂フィルム8の隔壁3側の表面8aには、検知用サーミスタ(検知用感熱素子)9が取り付けられている。この検知用サーミスタ9は、赤外線受光領域R1の中央に配置されており、赤外線受光領域R1における赤外線の受光・吸収に伴い加熱されて、その抵抗値を変化させる。この赤外線受光領域R1において受光・吸収される赤外線には、測定対象物から放射される赤外線だけでなく、ハウジング2や隔壁3から放射される赤外線がある。」

(甲3-ウ) 図1




(甲3-エ) 図2




(甲3-オ) 上記(甲3-ウ)及び(甲3-エ)を参照すると、ハウジング2と導光部6により、赤外線温度センサ1の外形が形成されていることが見て取れる。
また、導光部6の入り口と第1の樹脂フィルム8とが、所定の距離だけ離れている点、及び、検知用サーミスタ9が開口6aの略中央に配置された点が見て取れる。

よって、上記(甲3-ア)ないし(甲3-オ)より、甲3には、検知用サーミスタ(検知用感熱素子)9が取り付けられ、赤外線吸収性を有する第1の樹脂フィルム8を用いる赤外線温度センサ1において、検知用サーミスタや補償用サーミスタを収容するハウジング2と、導光部6を有し、導光部6には、測定対象物から放射される赤外線を入射させる開口6aが形成され、このハウジング2と導光部6により、赤外線温度センサ1の外形が形成されており、導光部6の入り口と第1の樹脂フィルム8とが、所定の距離だけ離れており、検知用サーミスタ9が開口6aの略中央に配置された構成が記載されていると認められる。

(3) 甲7の記載事項
取消理由で通知した甲7には、以下の記載がある。

(甲7-ア)
「【0019】
以下、この発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の非接触温度センサ10は、被測定物から放射された赤外線を受光し、その赤外線が有するエネルギーを、赤外線検知用感温素子20aと温度補償用感温素子20bを用いて電気信号に変換するセンサモジュールである。非接触温度センサ10は、図1に示すように、フレキシブルプリント回路基板12と、フレキシブルプリント回路基板12を収容する筺体14と、フレキシブルプリント回路基板12から筺体14の外部に電気信号を取り出すリード線16と、スライド式の感度調節部材18を備え、さらに、フレキシブルプリント回路基板12には、図示しない赤外線検知用感温素子20aと温度補償用感温素子20bが取り付けられている。
【0020】
フレキシブルプリント回路基板12は、被測定物が放射した赤外線を吸収する赤外線吸収体の働きをする樹脂フィルムである。樹脂フィルムの外形は略長方形で、表面には図示しない電気配線用の導体パターンが形成されている。樹脂フィルムの厚みは、赤外線の吸収量の変化に対する熱応答性を良好にするため熱容量の小さい薄いものが好ましく、ここでは、組み立て工程における取り扱いの容易性等も考慮して、20μm程度のものが選択されている。また、樹脂フィルムの素材は、ポリイミドの様な耐熱材料が用いられており、後述する面実装型の赤外線検知用感温素子20aと温度補償用感温素子20bをハンダ付け実装するのに好適である。また、赤外線の吸収能力を向上させるため、カーボンブラックまたは無機顔料を分散させた高分子材料を用いてもよい。」

(甲7-イ)
「【0028】
また、フレキシブルプリント回路基板12及び感度調節部材18が筺体14内に収容された状態で、赤外線検知用感熱素子20aは、導光部40を通って赤外線が入射する開口領域42の中央に配置され、温度補償用感温素子20bは、赤外線が遮光される天板部34の下方に配置される。また、感度調節部材18の可動調整用つまみ18cは、上板部34のスライド孔34bから上方に突出している。」

(甲7-ウ) 図1




(甲7-エ) 図3




(甲7-オ) 図4




(甲7-カ)
上記(甲7-ウ)、(甲7-エ)を参照すると、導光部40の入り口とフレキシブルプリント回路基板12とが、所定の距離だけ離れている点が見て取れる。

よって、上記(甲7-ア)ないし(甲7-カ)より、甲7には、赤外線検知用感温素子20aと温度補償用感温素子20bが取り付けられた、被測定物が放射した赤外線を吸収する赤外線吸収体の働きをする樹脂フィルムである、フレキシブルプリント回路基板12を収容する筺体14を備え、フレキシブルプリント回路基板12が筺体14内に収容された状態で、赤外線検知用感熱素子20aは、導光部40を通って赤外線が入射する開口領域42の中央に配置され、導光部40の入り口とフレキシブルプリント回路基板12とが、所定の距離だけ離れている構成が記載されている。

(4) 甲9の記載事項
取消理由で通知した甲9には、以下の記載がある。

(甲9-ア)
「【0040】
次に、本発明の非接触温度センサの他の実施形態について、図11を参照して説明する。同図(a)はその分解斜視図、同図(b)は断面図、同図(c)は斜視図である。図11の非接触温度センサは、被検知体の温度を近接して非接触で検出する温度センサである。非接触温度センサ39は、開口部41が形成された板状の保持体40と、赤外線検知用感熱素子25と第1および第2の温度補償用感熱素子26,27を電気的に接続した配線パターンが形成された樹脂フィルム23と、蓋部材42とから構成されている。蓋部材42には、赤外線検知用感熱素子25の背後に空間を設けるための空間部43と、温度補償用感熱素子26,27の背に空間を設けるための凹部44が形成され、保持体40と蓋部材42とによって樹脂フィルム23を固定保持すると、蓋部材42に形成された空間部43には、赤外線検知用感熱素子25が収納され、凹部44には、温度補償用感熱素子26,27が収納される。
【0041】
樹脂フィルム23は、保持体40の裏面(赤外線の入射面と反対面)に、開口部41を覆うように配置される。赤外線は、保持体40に形成された開口部41から入射し、開口部41内に露呈する樹脂フィルムに照射される。樹脂フィルム23は、先に説明したように、ポリエステルやポリイミド樹脂等の赤外線を吸収する材料を使用するか、あるいはこれらの樹脂にカーボンブラックまたは無機顔料を分散させて略全波長の赤外線を吸収し得るような材料が用いられる。樹脂フィルム23上には、赤外線検知用感熱素子25と第1および第2の温度補償用感熱素子26,27が、赤外線が入射する面と反対面に形成された配線パターンに接着固定されている。赤外線検知用感熱素子25は、保持体40の開口部41の略中央部に配置され、第1および第2の温度補償用感熱素子26,27は、保持体40に蓋部材42を取り付けた際に、保持体40の表面に樹脂フィルム23が密着し、凹部44に収納されるように取り付けられる。これらの感熱素子は、空間内に閉塞されるように収納されている。第1および第2の温度補償用感熱素子26,27は、蓋部材42を含む保持体40の温度を検知するように配置される。
【0042】
さらに、第1および第2の温度補償用感熱素子26,27は、同一場所の周囲雰囲気温度が検知できるようになるべく近接して配置され、配線パターンの端部には、外部引出端子28が形成されている。これらの感熱素子としては、薄膜サーミスタが使用され、樹脂フィルム23上に形成された配線パターンに電気的に接続される。なお、感熱素子は、薄膜サーミスタに限定されるものではなく、他の半導体温度センサであってもよい。」

(甲9-イ)
「【0046】
図12は、本発明の他の実施形態の非接触温度センサを示している。図11に示した非接触温度センサに樹脂成形した楕円柱状の導光部45を付加した構造の非接触温度センサ39である。本実施例の非接触温度センサ39は、図11で示した開口部41に樹脂で構成した導光部45を取り付けること以外は、図11の構成と同じである。図12の非接触温度センサは、導光部45の開口部41aから被検知体以外の部分から入射してくる赤外線の影響を無視できるために、被検知体の温度変化のみを正確に検知することが可能になる。」

(甲9-ウ) 図11




(甲9-エ) 図12




(甲9-オ)
上記(甲9-エ)の図11(a)および(b)を参照すると、赤外線検知用感熱素子25が開口部41の略中央に位置する点が見て取れる。

よって、上記(甲9-ア)ないし(甲9-オ)より、甲9には、開口部41が形成された板状の保持体40と、赤外線検知用感熱素子25と第1および第2の温度補償用感熱素子26,27を電気的に接続した配線パターンが形成された樹脂フィルム23とから構成され、赤外線は、保持体40に形成された開口部41から入射し、開口部41内に露呈する樹脂フィルムに照射され、樹脂フィルム23は、ポリエステルやポリイミド樹脂等の赤外線を吸収する材料を使用し、開口部41に樹脂で構成した楕円柱状の導光部45を取り付けた構造であり、赤外線検知用感熱素子25が開口部41の略中央に位置する非接触温度センサの構成が記載されている。

(5) 甲3、甲7及び甲9の記載に基づく周知事項の認定

上記(2)を参照すると、甲3には、導光部6の入り口と第1の樹脂フィルム8とが、所定の距離だけ離れている構成、及び、検知用サーミスタ9が開口6aの略中央に配置された構成が記載されており、上記(3)を参照すると、甲7には、導光部40の入り口とフレキシブルプリント回路基板12とが、所定の距離だけ離れている構成、及び、赤外線検知用感熱素子20aは、導光部40を通って赤外線が入射する開口領域42の中央に配置される構成が記載されており、上記(4)を参照すると、甲9には、赤外線が、保持体40に形成された開口部41から入射し、開口部41内に露呈する樹脂フィルムに照射される非接触温度センサにおいて、開口部41に樹脂で構成した楕円柱状の導光部45を取り付けた構成、及び、赤外線検知用感熱素子25が開口部41の略中央に位置する構成が記載されていることから、以下の2点が周知事項であると認められる。
周知事項1:温度センサの筐体の開口部と赤外線吸収作用を有する樹脂フィルムとが、所定の距離だけ離れた構成となるように、温度センサの筐体の開口部を楕円柱状等の構成とする点。
周知事項2:検知用感温素子を筐体の開口部の略中心に配置する点。

4 当審の判断

(1) 本件特許発明1について

ア 対比
本件特許発明1と甲6発明を対比する。

(ア) 本件特許発明1の1A)の特定事項について
a 甲6発明において、「赤外線検出器」により検知される「赤外線」は、熱源から入射するものであることは当業者にとって明らかである。
b 甲6発明の「略100%の赤外線吸収率を有する」ことは、本件特許発明1の「赤外線を吸収」することに相当し、甲6発明の「樹脂フィルム8」は、本件特許発明1の「材質が樹脂である」「膜」に相当する。
c よって、甲6発明の「略100%の赤外線吸収率を有する樹脂フィルム8」は、本件特許発明1の「熱源から入射する赤外線を吸収し、材質が樹脂である赤外線吸収膜」に相当する。

(イ) 本件特許発明1の1B)の特定事項について
a 甲6発明の「赤外線検知用サーミスタ素子5a」は、赤外線を検知するサーミスタ素子であるから、熱源の温度に対応した電気信号を出力するものであることは明らかである。
よって、甲6発明の「赤外線検知用サーミスタ素子5a」は、本件特許発明1の「熱源の温度に対応した電気信号を出力する検知用感温素子」に相当する。
b 甲6発明の「樹脂フィルム8」に「密着固定する」ことは、本件特許発明1の「赤外線吸収膜上」「に配置され」ることに相当する。
c 甲6発明において、「蓋体6」の「赤外線が入射する赤外線入射窓7」「を配置し」た部分に「対向して設けられ」た「樹脂フィルム8」は、「赤外線入射窓7」を介して赤外線が入射される部分であるから、本件特許発明1の「赤外線入射領域である有効受光範囲」に相当する。
d 以上のことから、甲6発明において、「蓋体6」の「赤外線が入射する赤外線入射窓7」「を配置し」た部分に「対向して設けられ」た「樹脂フィルム8」に「密着固定」された「赤外線検知用サーミスタ素子5a」は、本件特許発明1の「前記赤外線吸収膜上の赤外線入射領域である有効受光範囲に配置され、前記熱源の温度に対応した電気信号を出力する検知用感温素子」に相当する。

(ウ) 本件特許発明1の1C)の特定事項について
a 甲6発明において、「蓋体6」の「赤外線遮蔽部6aを配置し」た「側に」「対向して設けられ」た「樹脂フィルム8」は、赤外線が遮蔽される部分であるから、本件特許発明1の「赤外線が遮蔽された領域」に相当する。
b 甲6発明の「温度補償用サーミスタ素子5b」は、「赤外線遮蔽部6aを配置し」た「側に」「配置」されるとともに、「赤外線検知用サーミスタ素子5a」と「ブリッジ回路を構成」するものである。
c よって、甲6発明の「蓋体6」の「赤外線遮蔽部6aを配置し」た「側に」「対向して設けられ」た「樹脂フィルム8」に「密着固定」された、「赤外線検知用サーミスタ素子5a」と「ブリッジ回路を構成」する「補償用感温素子」は、本件特許発明1の「前記赤外線吸収膜上の赤外線が遮蔽された領域に配置され、前記検知用感温素子にブリッジ接続する補償用感温素子」に相当する。

(エ) 本件特許発明1の1D)の特定事項について
a 甲6発明のケース1は、「開口部を有し」ており、「赤外線は、該開口部を通して、樹脂フィルム8へと導かれる」ものである。
b よって、甲6発明の「開口部を有し、赤外線は、該開口部を通して、樹脂フィルム8へと導かれるケース1」は、本件特許発明1の「前記熱源から輻射される赤外線を前記赤外線吸収膜に導入するための筐体開口部を有する筐体」に相当する。

(オ) 本件特許発明1の1E)の特定事項について
a 甲6発明の「蓋体」は、「赤外線が入射する赤外線入射窓7」と「赤外線遮蔽部6a」が「設け」られたものである。そして、甲6発明の「赤外線が入射する赤外線入射窓7」は、赤外線を透過するものであるから、甲6発明の「赤外線が入射する赤外線入射窓7」と本件特許発明1の「アパーチャ開口部」は、「赤外線透過部」である点で共通する。また、甲6発明の「赤外線遮蔽部6a」は、本件特許発明1の「遮蔽部」に相当する。
b 甲6発明は、「赤外線入射窓7」を介して「赤外線が入射する」のであるから、「赤外線入射窓7」が、有効受光範囲を規定するものであることは当業者にとって明らかである。
c 甲6発明の「赤外線遮蔽部6a」は、「温度補償用サーミスタ素子5b側に」「配置」されることから、「温度補償用サーミスタ素子5b」を「赤外線」から遮蔽するものであることは当業者にとって明らかである。
d よって、甲6発明の「蓋体」と、本件特許発明1の「アパーチャ」は、「赤外線の前記有効受光範囲を規定」する「赤外線透過部」及び「前記補償用感温素子を」「前記赤外線から遮蔽するための遮蔽部とを有する」部材である点で共通する。

(カ) 本件特許発明1の1F)の特定事項について
a 甲6発明の「ケース1」は、「その上端部に蓋体6を接続するための開口部を有し、赤外線は、該開口部を通して、樹脂フィルム8へと導かれる」ものである。
b よって、甲6発明の「開口部を有」する「ケース1」が、「赤外線は、該開口部を通して、樹脂フィルム8へと導かれる」構成を有する点は、本件特許発明1の「筐体開口部を有する前記筐体」が、「前記熱源から輻射された赤外線が前記赤外線吸収膜に」「入射させる構造であ」る点に相当する。

(キ) 本件特許発明1の1G)の特定事項について
甲6発明は、本件特許発明1の1G)の特定事項を有しない。

(ク) 本件特許発明1の1H)の特定事項について
a 甲6発明の「前記赤外線検知用サーミスタ素子5aと前記温度補償用サーミスタ素子5bを」「配置するケース1」の「内側」は、本件特許発明1の「前記筐体の前記筐体開口部の内部」に相当する。
b 甲6発明は、「温度補償用サーミスタ素子5b側に前記赤外線遮蔽部6aを配置し」ていることから、「温度補償用サーミスタ素子5b」は「赤外線遮蔽部6a」により「赤外線」から遮蔽されていることは当業者にとって明らかである。
よって、甲6発明の「温度補償用サーミスタ素子5b」が「赤外線遮蔽部6a」により「赤外線」から遮蔽されて「配置」されることは、本件特許発明1の「前記補償用感温素子は、前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線から、前記遮蔽部によって遮蔽された状態で配置され」ることに相当する。
c 甲6発明の「赤外線検知用サーミスタ素子5a」が、「赤外線入射窓7の中央近傍に位置」する点と、本件特許発明1の「検知用感温素子」が、「アパーチャ開口部の略中心に位置」する点は、「検知用感温素子」が、「赤外線透過部」の略中心に位置している点で共通する。
d よって、甲6発明と本件特許発明1は、「前記筐体の前記筐体開口部の内部において」「前記補償用感温素子は、」「前記赤外線から、前記遮蔽部によって遮蔽された状態で配置されており、前記検知用感温素子は、」赤外線透過部「の略中心に位置している」点で共通する。

(ケ) 本件特許発明1の1I)の特定事項について
甲6発明の「赤外線検出器」は、赤外線を検出することによって温度を検知していることから、本件特許発明1の「温度センサ」に相当する。

よって、両者は、以下の点で一致する。

<一致点>
熱源から入射する赤外線を吸収し、材質が樹脂である赤外線吸収膜と、
前記赤外線吸収膜上の赤外線入射領域である有効受光範囲に配置され、前記熱源の温度に対応した電気信号を出力する検知用感温素子と、
前記赤外線吸収膜上の赤外線が遮蔽された領域に配置され、前記検知用感温素子にブリッジ接続する補償用感温素子と、
前記熱源から輻射される赤外線を前記赤外線吸収膜に導入するための筐体開口部を有する筐体と、
前記赤外線の前記有効受光範囲を規定する赤外線透過部及び前記補償用感温素子を前記赤外線から遮蔽するための遮蔽部とを有する部材とを備え、
前記筐体開口部を有する前記筐体は、前記熱源から輻射された赤外線が前記赤外線吸収膜に入射させる構造であり、
前記筐体の前記筐体開口部の内部において、前記補償用感温素子は、前記赤外線から、前記遮蔽部によって遮蔽された状態で配置されており、前記検知用感温素子は、赤外線透過部の略中心に位置している
温度センサ。

そして、以下の点で相違する。

<相違点1>(本件特許発明1の1E)の特定事項について)
赤外線透過部が、本件特許発明1は、有効受光範囲を規定することに加えて、周囲雰囲気を通すための開口部であるのに対して、甲6発明は、その点が不明である点。

<相違点2>(本件特許発明1の1E)、1G)、1H)の特定事項について)
筐体開口部を有する筐体、赤外線の有効受光範囲を規定する「赤外線透過部」及び補償用感温素子を前記赤外線から遮蔽するための「遮蔽部」とを有する部材、及び、検知用感温素子の配置に関して、本件特許発明1は、筐体開口部を有する筐体が、熱源から輻射された赤外線が前記赤外線吸収膜に直接入射させる構造であり、「赤外線透過部」及び「遮蔽部」とを有する部材が、前記筐体の筐体開口部内にあって、前記筐体の前記筐体開口部に比べて赤外線吸収膜に近接して設置された「アパーチャ開口部」と「遮蔽部」とを有する「アパーチャ」であり、さらに、検知用感温素子は、前記筐体開口部及び前記アパーチャ開口部の略中心に位置しているのに対して、甲6発明は、上記のような構成を有さない点。

イ 判断

上記の相違点について以下に検討する

事案に鑑みて相違点2について検討する。
筐体の筐体開口部内において、検知用感温素子を、前記筐体開口部の略中心に位置させる構成は、上記「3 刊行物等の記載事項」「(5) 甲3、甲7及び甲9の記載に基づく周知事項の認定」において、周知事項2として示したように、従来周知の事項であり、また、前記筐体開口部と、赤外線吸収作用を有する樹脂フィルムとが、所定の距離だけ離れるようにする構成も、上記「3」「(5)」において、周知事項1として示したように、従来周知の事項である。
しかしながら、筐体開口部と、赤外線吸収作用を有する樹脂フィルムとが、所定の距離だけ離れるようにした上で、筐体開口部内に、赤外線の有効受光範囲を規定する「赤外線透過部」及び補償用感温素子を前記赤外線から遮蔽するための「遮蔽部」とを有する部材を、前記筐体開口部に比べて赤外線吸収膜に近接して設置し、かつ、検知用感温素子を、前記筐体開口部及び赤外線の有効受光範囲を規定する赤外線透過部を成すアパーチャ開口部の略中心に位置するようにした点は、従来周知の事項ではなく、甲3、甲7及び甲9にも記載されておらず、かつ、その点が、単なる設計的事項であるともいえない。
してみると、甲3、甲7及び甲9に接した当業者といえども、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を想起することはできない。

ウ 小括

以上のことから、本件特許発明1は、甲6発明、及び、周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2) 本件特許発明2について

ア 対比・判断

本件特許発明2は、「前記補償用感温素子は周囲雰囲気に接している」点で、本件特許発明1をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明2は、甲6発明、及び、周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 取消理由通知において採用しなかった申立理由について

1 申立理由1について

申立人は、本件特許発明1及び2は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
しかしながら、上記「第4 特許異議の申立てについて」「4 当審の判断」「(1) 本件特許発明1について」において示した本件特許発明1の相違点2に係る構成は、甲1及び甲2には記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 申立理由2について

申立人は、申立理由2として、「前記アパーチャは、前記赤外線吸収膜に近接して設置されており」とした事項は補正により追加されたものであるが、出願当初の明細書には「近接」の語句を用いてアパーチャが赤外線吸収膜に近接している旨の直接的な記載は無く、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正である旨を主張している。
しかしながら、図3及び図4を参照すると、アパーチャは、赤外線吸収膜に概ね近接して設置されているといえ、また、上記の補正によって、新たな技術的事項を導入するものでもないことから、上記の補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載した範囲内において行ったものではないとまではいえない。
したがって、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対して付与されたものとはいえない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
温度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は熱源の温度を非接触測定するための温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
熱源の温度を非接触測定するための温度センサとして、熱源から輻射される赤外線の熱量を検出する方式が知られている。この種の温度センサは、熱源からの赤外線を効率よく吸収する赤外線吸収膜を備えており、赤外線受光に起因する赤外線吸収膜の温度上昇を感温素子で検知する。感温素子は、温度に対応して電気的特性が変化する温度特性を有しており、感温素子から出力される電気信号に基づいて熱源の温度を推定することができる。特開平11-223555号公報には、保持体の開口部から導入された赤外線を受光することにより発熱する樹脂フィルムの熱量を検知用感温素子で検出するとともに、熱源からの輻射熱や周囲雰囲気温度によって変動する保持体の温度を補償用感温素子で検出し、温度補償を行った上で熱源の温度を測定する温度センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-223555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、保持体の熱容量は大きいため、熱源から赤外線の放射開始直後や放射終了直後において、保持体の温度が熱源の温度変化に追従することができず、正確な温度測定をすることが困難である。また、補償用感温素子は開口部の外にあるため、補償用感温素子と検知用感温素子との熱的条件に違いが生じ、温度補償の精度が低下する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決し、温度追従性及び温度補償性に優れた温度センサを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係わる温度センサは、熱源から入射する赤外線を吸収する赤外線吸収膜と、赤外線吸収膜上の赤外線入射領域に配置され、熱源の温度に対応した電気信号を出力する検知用感温素子と、赤外線が遮蔽された領域に配置され、検知用感温素子にブリッジ接続する補償用感温素子と、熱源から輻射される赤外線を前記赤外線吸収膜に導入するための開口部を有する筐体と、筐体の開口部内に配置され、赤外線の有効受光範囲を制限するための開口部及び前記補償用感温素子を赤外線から遮蔽するための遮蔽部とを有するアパーチャと、を備え、開口部を有する筐体は、熱源から輻射された赤外線が、赤外線吸収膜に直接入射させる構造であり、
アパーチャは、赤外線吸収膜に近接して設置されており、
補償用感温素子は筐体の開口部の内部に配置されている。これにより、検知用感温素子と補償用感温素子との、赤外線の輻射による要因以外の熱的条件を近づけることができ、温度補償性能が最適化される。
【0007】
また本発明に係わる温度センサは、補償用感温素子は周囲雰囲気に接してもよい。これにより、赤外線の輻射による要因以外の熱的条件の一つである周囲雰囲気の温度についても、検知用感温素子と補償用感温素子との熱的条件を近づけることができ、より温度補償性能が最適化される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検知用感温素子と補償用感温素子との赤外線の輻射による要因以外の熱的条件を近づけることができ、温度追従性及び温度補償性に優れた温度センサを提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係わる温度センサの検出原理を示す回路図である。
【図2】本実施形態に係わる温度センサの全体斜視図である。
【図3】本実施形態に係わる温度センサの分解斜視図である。
【図4】本実施形態に係わる温度センサの断面図である。
【図5】本実施形態に係わる赤外線吸収膜の配線パターンを示す模式図である。
【図6】本実施形態に係わる赤外線吸収膜の配線パターンを示す模式図である。
【図7】図5及び図6の7-7線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図を参照しながら本発明に係わる実施形態について説明する。同一の部材については同一の符号を付すものとし、重複する説明を省略する。なお、図面は、模式的なものであり、部材相互間の寸法の比率や部材の形状等は、本発明の効果が得られる範囲内で現実のセンサ構造とは異なっていてもよい。
【0011】
図1は本実施形態に係わる温度センサ10の検出原理を示す回路図である。温度センサ10は、直列接続された検知用感温素子31及び固定抵抗素子33から成るハーフブリッジ回路と、直列接続された補償用感温素子32及び固定抵抗素子34から成るハーフブリッジ回路とが並列接続されたフルブリッジ回路を有している。二つの固定抵抗素子33,34の接続点と、二つの感温素子31,32の接続点との間には、電源35が接続されており、フルブリッジ回路に電流が流れるように構成されている。検知用感温素子31は、熱源から輻射される赤外線の熱量を検知するためのセンサ素子であり、補償用感温素子32は、周囲雰囲気からの熱量を検知するためのセンサ素子である。検知用感温素子31が受け取る熱量は、熱源から輻射される赤外線の熱量に限らず、周囲雰囲気からの熱量も受け取るため、周囲雰囲気からの熱量を補償用感温素子32で検出することにより、熱源から放射される赤外線の熱量(即ち、熱源の温度)を推定することができる。このため、検知用感温素子31は、熱源から輻射される赤外線を受光できるように配置される一方、補償用感温素子32は、熱源から放射される赤外線から遮蔽されるように(言い換えれば、周囲雰囲気からのみ熱量を受取るように)配置される。
【0012】
感温素子31,32は、温度に応じて電気的特性が変化するセンサ素子であればよく、例えば、抵抗温度特性を有するサーミスタ、サーモパイル、金属測温度体等が好適である。感温素子31,32の温度変化に対応する電気特性の変化は、検出温度に対応する電気信号として外部に取り出される。例えば、感温素子31,32が抵抗温度特性を有するサーミスタである場合には、感温素子31,32の温度変化は、抵抗値変化として現れる。感温素子31,32に予め所定の電流を流しておくことにより、感温素子31,32の抵抗値変化は、電圧変化として検出される。感温素子31,32の出力電圧は、検出温度に対応する電気信号として信号処理される。
【0013】
検知用感温素子31と固定抵抗素子33との接続点には出力端子36が接続され、補償用感温素子32と固定抵抗素子34との接続点には出力端子37が接続されている。検知用感温素子31及び補償用感温素子32の抵抗温度特性を略同一に調整し、固定抵抗素子33,34の抵抗値を略同一に調整すると、熱源からの赤外線が温度センサ10に照射されない状態では、出力端子36,37の間の電圧はゼロとなる一方、熱源からの赤外線が温度センサ10に照射される状態では、検知用感温素子31及び補償用感温素子32のそれぞれの抵抗値変化の相違により、出力端子電極36,37の間に不平衡電圧が出力される。この不平衡電圧と熱源の温度とを対応付けたマップデータを参照することにより、不平衡電圧から熱源の温度を推定することができる。
【0014】
次に、図2乃至図7を参照しながら温度センサ10の構成について説明する。図2は温度センサ10の全体斜視図、図3は温度センサ10の分解斜視図、図4は温度センサ10の断面図を示す。また、図5及び図6は、赤外線吸収膜20の配線パターンを示す模式図であり、図7は図5及び図6の7-7線断面図である。図3に示すように、温度センサ10は、熱源から輻射される赤外線を受光して発熱する赤外線受光膜20を備える。赤外線吸収膜20の材質は、熱源からの輻射赤外線を効率よく吸収して発熱する材質であればよく、例えば、遠赤外線と称される4μm?10μmの波長帯域の光に吸収スペクトラムを有する材質が望ましい。このような材質として、フッ素、シリコーン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリカーボネート、又はポリフェニレンスルフィド等の高分子材料からなる樹脂が好ましい。図4に示すように、赤外線吸収膜20は、熱源から輻射される赤外線を受光する第一の主面21と、第一の主面21の裏面である第二の主面22とを有する。第一の主面21には、補償用感温素子32が取り付けられており、第二の主面22には、検知用感温素子31が取り付けられている。感温素子31,32は、上部筐体60に形成された開口部61の内部に配置される。
【0015】
図3及び図4に示すように、アパーチャ70は、開口部61から導入される赤外線の有効受光範囲を規定するための開口部71と、補償用感温素子32を赤外線から遮蔽するための遮蔽部72とを有する。検知用感温素子31を第一の主面21へ投影した領域が、開口部71を第一の主面21へ投影した領域の略中心に位置するように開口部71の形状及び検知用感温素子31の取り付け位置を調整するのが好ましい。これにより、検知用感温素子31は、赤外線吸収膜20の有効受光範囲に分布する熱量を各方位から略均等に集熱することができる。補償用感温素子32は、遮蔽部72によって赤外線受光が遮られているため、赤外線からの熱量を受取ることはないが、開口部71を通じて周囲雰囲気に接しているため、周囲雰囲気からの熱量を検出することができる。特に、開口部61は、熱源と温度センサ10との間で交わされる熱伝導の中心的役割を担うため、補償用感温素子32を開口部61の内部に配置することで、補償用感温素子32は周囲雰囲気の温度変化に遅れることなく追従することができる。
【0016】
図3及び図4に示すように、赤外線吸収膜20は、基体80によって支持された上で下部筐体90内部に収容される。基体80には、赤外線吸収膜20の第二の主面22に形成されている複数の接続端子51,52,53及び複数のリード配線41,42,43,44(図5参照)から基体80が熱伝導的に分離されるための構造として、接続端子51,52,53が形成されている領域に対応して基体80の表裏を貫通する貫通孔81と、リード配線41,42,43,44が形成されている領域に対応して下部筐体側に陥没する溝部82とが形成されている。このような構造により、接続端子51,52,53と基体80との間、及びリード配線41,42,43,44と基体80との間には空気が介在し、熱伝導が遮断される。このような熱伝導を遮断するための構造は、貫通孔81及び溝部82に限られるものではなく、例えば、基体80と接続端子51,52,53との間、又は基体80とリード配線41,42,43,44との間に断熱部材を介挿してもよい。なお、基体80は必ずしも必須ではなく、例えば、下部筐体90又は上部筐体60の何れか一方又は両者が基体80の機能を兼ねてもよい。このような場合、上述の熱伝導を遮蔽するための構造は、下部筐体90又は上部筐体60の何れか一方又は両者が有していればよい。図5に示す接続端子51,52,53は、図3に示す導線101,102,103にそれぞれ接続する。
【0017】
図5に示すように、リード配線41,42は、検知用感温素子31の各電極から第二の主面22上に引き出されて、それぞれ、接続端子52,53に接続する。図5及び図6に示すように、リード配線43,44は、補償用感温素子32の各電極から引き出されて、第一の主面21から第二の主面22へ赤外線吸収膜20を貫通し、それぞれ、接続端子51,52に接続する。リード配線41,42,43,44の熱伝導率(例えば、400W/mK)は、赤外線吸収膜20の熱伝導率(例えば、0.2?0.4W/mK)よりも極めて高いため、感温素子31,32の温度変化に寄与する熱量の大部分は、赤外線吸収膜20ではなく、リード配線41,42,43,44を伝わる。このため、リード配線41,42,43,44のそれぞれが仮に熱的に異なる条件下にあると、熱的条件の定常偏差によって二つの感温素子31,32を同一の熱的条件下におくことができなくなり、正確な温度補償が困難になる。このような事情に鑑み、本実施形態では複数のリード配線41,42,43,44は、相互に熱結合する程度に密集する密集部分40を有する。密集部分40は、複数のリード配線41,42,43,44に共通のサーマルグランド(1点アース)として機能し、複数のリード配線41,42,43,44の温度勾配はサーマルグランドで終端され、それぞれの熱的条件が均一化される。これにより、熱的条件の定常偏差がゼロに収束し、正確な温度補償を実現できる。なお、赤外線吸収膜20の一端側に複数の接続端子51,52,53を設けると、複数のリード配線41,42,43,44が束ね易くなり、密集部分40を形成するのに都合がよい。密集部分40は、検知用感温素子31及び補償用感温素子32から複数のリード配線41,42,43,44を直線的に引き出すことなく、より近接して束ねられた配線構造を有しており、接続端子51,52,53の配列方向の全幅よりも内側に形成されている。また、補償用感温素子32の配置箇所は、接続端子51,52,53が形成されている側が好ましい。
【0018】
複数のリード配線41,42,43,44のそれぞれの熱的条件をより均一化するためには、例えば、図6に示すように、複数のリード配線41,42,43,44のそれぞれに熱結合する伝熱性薄膜50を第一の主面21に形成するのが好ましい。伝熱性薄膜50は、熱伝導的なグランドパターンとして機能する。図7に示すように、赤外線吸収膜20の膜厚を薄くし(例えば、20?30μm程度)、伝熱性薄膜50及びリード配線41,42,43,44を赤外線吸収膜20に密着させることにより、良好な熱結合を得ることができる。伝熱性薄膜50の面積を、密集部分40の面積よりも大きくし、密集部分40を第一の主面21に投影した領域が伝熱性薄膜50の領域に含まれるように設計すると、更に良好な熱結合を得ることができる。また、図6に示すように、伝熱性薄膜50は、複数の接続端子51,52,53の裏側にまで及ぶように形成するのが好ましい。接続端子51,52,53の端子幅は、リード配線41,42,43,44の配線幅より太いため、接続端子51,52,53が伝熱性薄膜50に対向する面積が大きくなり、伝熱性薄膜50を流れる熱流路の断面積が増大する。これにより、サーマルグランドの熱抵抗が下がり、安定化する。また、リード配線41,42,43の配線幅は必ずしも一定である必要はなく、例えば、伝熱性薄膜50の裏側を通るリード配線41,42,43の配線幅は、伝熱性薄膜50の裏側以外を通るリード配線41,42,43の配線幅よりも太い方が好ましい。これにより、リード配線41,42,43が伝熱性薄膜50に対向する面積が大きくなり、伝熱性薄膜50を流れる熱流路の断面積が増大し、サーマルグランドが安定化する。
【0019】
また、例えばリード配線41,44を電気回路のグランドに接続する等の目的で両者を接続する場合には、リード配線41,44の接続部分45が密集部分40の中に位置するように設けるのが好ましい。つまり、リード配線41,44は、密集部分40でのみ接続するのが好ましい。これにより、リード配線41,44は、接続部分45において熱的に1点アースされるため、リード配線41,42,43,44の熱的条件を均一化する上で効果的である。仮に、接続部分45が密集部分40の外側に設けられていると、接続部分45を起点として熱伝導が行われ、それぞれのリード配線41,42,43,44の熱的条件がばらついてしまうので、好ましくない。また、上述したように、基体80は、複数の接続端子51,52,53及び複数のリード配線41,42,43,44から熱伝導的に分離されているため、基体80からリード配線41,42,43,44又は接続端子51,52,53への熱の流出入は遮断され、リード配線41,42,43,44の熱的条件のばらつきが抑制される。
【0020】
なお、図5に示すように、検知用感温素子31は、集熱部材38を備えてもよい。集熱部材38は、赤外線吸収膜20の各所に分布している熱量を捕捉し、これを検知用感温素子31に集熱させるための部材である。集熱部材38は、検知用感温素子31近傍の領域だけでなく検知用感温素子31から離れた領域からも広範囲にわたって熱量を捕捉し、検知用感温素子31に効率良く集熱できるように、検知用感温素子31の電極を起点として赤外線吸収膜20の面内に放射状に形成されている。集熱部材38は、電気信号の伝送に係わる部材ではなく、熱伝導のみに係わる部材であるため、外部の部品に接続することなく、赤外線吸収膜20の面内で終端している。このため、集熱部材38から外部に熱が流出することはなく、集熱部材38の終端から感温素子31へ向かって一方向に熱が流れる。集熱部材38は、赤外線吸収膜20の各所に蓄熱している熱量を万遍なく捕捉するために、赤外線吸収膜20の外周端部に向かって枝分かれを繰り返しながら放射状に形成されているのが好ましい。このような構成により、赤外線吸収膜20に分布する熱量は、集熱部材38の枝と枝との間に島状に点在し、赤外線吸収膜20と感温素子31との間の温度勾配により、感温素子31へ向けて熱の流れを生じさせることができる。また、集熱部材38を放射状に形成することで、熱を捕捉できる集熱範囲を赤外線吸収膜20全体に拡大することが可能になり、集熱効率を高めることができる。また、集熱部材38と感温素子31との接続部分から赤外線吸収膜20の各点へ至る伝熱経路を短くできるため、赤外線吸収膜20に分布する熱量を低熱抵抗の伝熱経路を通じて感温素子31へ素早く集熱することができる。これにより、感温素子31は、熱源の温度変化に対して応答性よく反応することができる。
【0021】
集熱部材38を流れる熱量は、感温素子31に近づく程、多くなるので、感温素子31に近づく程、集熱部材38を太くして熱抵抗を下げるのが好ましい。これにより、集熱部材38は、終端に近づく程、細くなり、熱抵抗が高くなるので、終端方向への熱の流れを抑制し、感温素子31への熱の流れを促進させることができる。また、赤外線吸収膜20の各点に分布する熱量が少ない場合であっても、低抵抗の集熱部材38を介して熱が集められ、感温素子31へ流れ込むため、感温素子31の温度低下を抑制し、感度特性を高めることができる。
【0022】
熱源からの赤外線が赤外線吸収膜20に輻射され始めた時点では、感温素子31と赤外線吸収膜20との間の温度差は大きく、両者の温度勾配によって集熱部材38から感温素子31へ熱が流入する。すると、感温素子31の温度上昇に伴い、温度勾配は小さくなるので、感温素子31への熱流入は少なくなる。一方、感温素子31に集熱された熱量の一部は、リード配線41,42や周囲雰囲気を伝わって放熱され、感温素子31の温度低下が生じるため、温度勾配によって感温素子31への熱流入が持続する。そして、感温素子31へ流れ込む熱量と感温素子31から流れ出す熱量とが釣り合ったところで、熱平衡状態になり、感温素子31の温度は一定になる。なお、本実施形態において、集熱部材38は必須ではなく、省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係わる温度センサは、熱源の温度を非接触測定する用途に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
10…温度センサ
20…赤外線吸収膜
31…検知用感温素子
32…補償用感温素子
40…密集部
41,42,43,44…リード配線
45…接続部分
50…伝熱性薄膜
51,52,53…接続端子
60…上部筐体
61…開口部
70…アパーチャ
80…基体
90…下部筐体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から入射する赤外線を吸収し、材質が樹脂である赤外線吸収膜と、
前記赤外線吸収膜上の赤外線入射領域である有効受光範囲に配置され、前記熱源の温度に対応した電気信号を出力する検知用感温素子と、
前記赤外線吸収膜上の赤外線が遮蔽された領域に配置され、前記検知用感温素子にブリッジ接続する補償用感温素子と、
前記熱源から輻射される赤外線を前記赤外線吸収膜に導入するための筐体開口部を有する筐体と、
前記筐体の前記筐体開口部内にあって前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線の前記有効受光範囲を規定し周囲雰囲気を通すためのアパーチャ開口部及び前記補償用感温素子を前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線から遮蔽するための遮蔽部とを有するアパーチャと、を備え、
前記筐体開口部を有する前記筐体は、前記熱源から輻射された赤外線が前記赤外線吸収膜に直接入射させる構造であり、
前記アパーチャは、前記筐体の前記筐体開口部に比べて前記赤外線吸収膜に近接して設置されており、
前記筐体の前記筐体開口部の内部において、前記補償用感温素子は、前記筐体の前記筐体開口部から導入される前記赤外線から、前記遮蔽部によって遮蔽された状態で配置されており、前記検知用感温素子は、前記筐体開口部及び前記アパーチャ開口部の略中心に位置している温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサであって、
前記補償用感温素子は周囲雰囲気に接している、温度センサ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-18 
出願番号 特願2014-68543(P2014-68543)
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (G01J)
P 1 651・ 121- YAA (G01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 喜々津 徳胤塚本 丈二▲高▼場 正光  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
伊藤 昌哉
登録日 2016-04-22 
登録番号 特許第5920388号(P5920388)
権利者 TDK株式会社
発明の名称 温度センサ  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  

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