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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1338138
異議申立番号 異議2017-701165  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-12-08 
確定日 2018-02-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第6146873号発明「喫煙品用のパック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6146873号の請求項1?24に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6146873号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?24に係る特許についての出願は、平成21年11月19日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 平成20年12月22日 米国)を国際出願日とする特願2011-541270号の一部を、平成26年10月9日に新たな特許出願としたものであって、平成29年5月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人山▲崎▼浩一郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1?24に係る発明(以下、「本件発明1?24」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
パックを形成するように構成された前部及び後部に位置する2つの大きい平面パネルと、両側部に位置する2つの小さい平面パネルとを備えた喫煙品用のパックであって、
前記2つの大きい平面パネルの少なくとも一方が、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を含み、
前記突起によって前記パックの前記1つ以上のパネルの表面との間に隙間を介した外側包装材をさらに備え、
前記突起が規則的配列に配置されており、
前記突起が略円形の凸形状であり、
前記突起における前記パネルの厚さが、前記突起同士の間の領域における前記パネルの厚さよりも大きい、喫煙品用のパック。
【請求項2】
前記2つの大きい平面パネルの両方が前記突起を含む、請求項1に記載のパック。
【請求項3】
前記両側部に位置する小さい平面パネルが前記突起を含む、請求項1または2に記載のパック。
【請求項4】
上部パネルおよび底部パネルをさらに備えており、前記上部パネルが前記突起を備える、請求項1?3のいずれか1項に記載のパック。
【請求項5】
上部パネルおよび底部パネルをさらに備えており、前記底部パネルが前記突起を備える、請求項1?4のいずれか1項に記載のパック。
【請求項6】
蓋を備える上部パネルをさらに備える、請求項1?5のいずれか1項に記載のパック。
【請求項7】
前記蓋が押し上げ式の蓋である、請求項6に記載のパック。
【請求項8】
前記パックがシート材料から組み立てられており、前記突起が、前記シート材料の層の厚み中に形成される、請求項1?7のいずれか1項に記載のパック。
【請求項9】
前記シート材料が厚紙を含む、請求項8に記載のパック。
【請求項10】
前記突起が前記1つ以上のパネルの表面領域の実質的に全体に形成される、請求項1?9のいずれか1項に記載のパック。
【請求項11】
前記突起が前記1つ以上のパネルの表面領域の一部のみに形成される、請求項1?9のいずれか1項に記載のパック。
【請求項12】
前記突起が前記1つ以上のパネルの対応する外面と内面との両方から突出する、請求項1?11のいずれか1項に記載のパック。
【請求項13】
前記1つ以上のパネルが5?2000個の突起を備える、請求項1?12のいずれか1項に記載のパック。
【請求項14】
前記突起が10?1000個である、請求項13に記載のパック。
【請求項15】
前記突起が50?750個である、請求項14に記載のパック。
【請求項16】
前記突起の全てが同一の距離だけ前記1つ以上のパネルの対応する表面から突出する、請求項1?15のいずれか1項に記載のパック。
【請求項17】
前記突起が前記1つ以上のパネルの表面に規則正しい行列で配置される、請求項1?16のいずれか1項に記載のパック。
【請求項18】
前記パックの内部に内側フレームをさらに備える、請求項1?17のいずれか1項に記載のパック。
【請求項19】
前記パックが前記内側フレームの一部を露出する切り欠き部を含む前部パネルを備える、請求項18に記載のパック。
【請求項20】
前記内側フレームの前記露出部にマークまたは図形が印刷されている、請求項19に記載のパック。
【請求項21】
前記パックの前端部が斜面、曲面、または直角である、請求項1?20のいずれか1項に記載のパック。
【請求項22】
喫煙品を収容する、請求項1?21のいずれか1項に記載のパック。
【請求項23】
前記喫煙品が紙巻きタバコを含む、請求項22に記載のパック。
【請求項24】
前部及び後部に位置する2つの大きい平面パネル部と、両側部に位置する2つの小さい平面パネル部とを備えるブランクから喫煙品用のパックを組み立てる方法であって、
前記2つの大きい平面パネル部の少なくとも一方に、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を形成するステップと、
前記パックが喫煙品で充填された後に外側包装材内に前記パックを包装するステップと、
熱を利用して前記パック上の前記外側包装材を密封するステップであって、前記外側包装材は、前記複数の突起によって前記外表面との間に隙間を介する、ステップと
を含み、
前記突起が規則的配列に配置されており、
前記突起が略円形の凸形状であり、
前記突起における前記パネルの厚さが、前記突起同士の間の領域における前記パネルの厚さよりも大きい、方法。」

3.申立理由の概要
以下、「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第1号証に記載された発明」等を「甲1発明」等といい、「甲第1号証に記載された事項」等を「甲1記載事項」等という。
申立人は、証拠として、以下の甲1?甲12を提出し、
(1)本件発明1?9、12?16、18、及び21?23は、(1-1)甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術、あるいは、(1-2)甲9発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術、あるいは、(1-3)甲3発明及び周知技術に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(2)本件発明10は、(2-1)甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項及び周知技術、あるいは、(2-2)甲9発明、甲2記載事項、甲3記載事項及び周知技術に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(3)本件発明11は、(3-1)甲1発明、甲2記載事項、甲4記載事項及び周知技術、あるいは、(3-2)甲9発明、甲2記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(4)本件発明17は、(4-1)甲1発明、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術、あるいは、(4-2)甲9発明、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術、あるいは、(4-3)甲3発明及び周知技術に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(5)本件発明19及び20は、(5-1)甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項、甲10記載事項及び周知技術、あるいは、(5-2)甲9発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項、甲10記載事項及び周知技術、あるいは、(5-3)甲3発明及び甲10記載事項に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(6)本件発明24は、(6-1)甲1発明、甲1記載事項、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項、甲9記載事項及び周知技術、あるいは、(6-2)甲9発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項、甲9記載事項及び周知技術、あるいは、(6-3)甲3発明、甲1記載事項、甲9記載事項、甲11記載事項、甲12記載事項及び周知技術に基き、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1?24に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨主張している。

(証拠一覧)
甲1:特開平8-53175号公報
甲2:特開2004-205768号公報
甲3:意匠登録第1067939号公報
甲4:意匠登録第1067938号公報
甲5:特許2947795号公報
甲6:特開2002-249106号公報
甲7:国際公開第2005/066029号
甲8:特表2005-518998号公報
甲9:特開2006-56603号公報
甲10:特表2002-521280号公報
甲11:特開2006-225004号公報
甲12:特開2003-205928号公報

4.甲1?甲12の記載事項
(1)甲1
甲1には、以下の甲1発明が記載されている(【0004】、【0009】?【0013】、【0016】、図3及び図4参照)。
「包装容器を形成するように構成された前部に位置するボックス前壁14及び後部に位置するボックス後壁15と、両側部に位置するボックス側壁16とを備えた、煙草用のヒンジ蓋付き包装容器。」

(2)甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、清涼飲料水、乳飲料、ビール、ワイン、栄養ドリンク、調味料、化粧品などに使用されるプラスチックボトル、ガラス瓶、金属缶等の容器の表面に付けるラベルおよびそれを用いたラベル付容器に関するものである。
さらに詳しくは、優れた触感性を付与すると共に、断熱性を感覚的に付与することもでき、持ち運びやすく、優れた緩衝性、意匠性を持たせたラベル、および、それを用いて製造されたラベル付容器に関するものである。」
「【0012】
次に、本発明において、上記のような本発明にかかるラベル、ラベル付容器等を構成する材料、その製造方法等について説明すると、本発明に係るラベル10を構成する基材フィルム層1としては、紙、不織布、布、各種のプラスチックフィルム、発泡フィルム、あるいは、これらを任意に積層した積層体等を用いることができ、その厚さはその基材によって異なるが、10?250μm程度のものが好ましい。・・・」
「【0021】
上記の触感付与層2をラベルの表面にコーティングする印刷方法のパターンとしては、例えば、図5に示すような点状のパターンや、図6に示すような格子状のパターン、線状、布目状のパターン等、凸部が形成できるようなパターンであれば特に限定はされない。
また、このパターンを形成する点や格子の大きさ、ピッチ等も適宜変更することができるものである。」
「【0035】
・・・本発明のラベル付き容器においては、従来の平滑な表面のラベルと比べ、加熱して販売される場合においても、消費者等が、手に持った場合、ラベルに断熱性を感覚的に付与することもできるという利点を有するものである。・・・」

(3)甲3
甲3には、以下の甲3発明が記載されている(【意匠に係る物品】、【正面図】、【背面図】、【右側面図】、【左側面図】、【A-A断面図】、【開蓋斜視図】参照)。
「前部及び後部に位置する2つの平面パネルと、両側部に位置する2つの側面パネルと、蓋部を備えた包装容器であって、
前部の平面パネルのほぼ全域にわたって、両側が円弧状の横長突部が縦5列、横8行に配置された、包装容器。」

(4)甲4
甲4には、以下の事項が記載されている(【意匠に係る物品】、【正面図】、【背面図】、【右側面図】、【左側面図】、【A-A断面図】参照)。
「前部及び後部に位置する2つの平面パネルと、両側部に位置する2つの側面パネルとを備えた包装容器であって、
前部の平面パネルの右半分の領域全体に、両側が円弧状の横長突部が縦6列、横11行に配置された、包装容器。」

(5)甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【0024】・・・外包機にて、シガレットパックPはフィルムシートにより更に包装される。」

(6)甲6
甲6には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】例えば、シガレットのソフトパックは先ず内包材に20本のフィルタシガレットを包み込んで内包体とし、この内包体をさらにフィルムシートにより包装して得られている。・・・」
「【0013】
・・・これらヒートシーラ20は対応する開口18を通じて各胴シール位置P_(1),P_(2)にあるポケット12に対して接離運動し、後述するように胴フラップをヒートシーする。」

(7)甲7
甲7には、以下の事項が記載されている(訳文は、申立人の提出した抄訳による。)。
「Referring to FIG. 6, a film 70 is wrapped around the package 50 and the sleeve 100. 」(「図6に示すように、フィルム70は、パッケージ50およびスリーブ100の周りに巻き付けられる。」)(5頁25行?26行)

(8)甲8
甲8には、以下の事項が記載されている。
「【0010】
・・・該フィルム包装機は、シガレットパック48を外装フィルムまたはプラスチックブランクで包むという処理を有する。・・・」
「【0016】
・・・フィルムで包装されたシガレットパック48は、第1ヒータ51および第2ヒータ52に沿ってガイドされ、第1ヒータ51は、シガレットボックス48を封入するフィルムの長手方向の継ぎ目をシールするために設けられており、また第2ヒータ52は、蓋およびフィルム包装の基部をシールするために設けられている。・・・」

(9)甲9
甲9には、以下の甲9発明が記載されている(【0001】、【0011】、【0018】及び図2参照)。
「たばこ品のパッケージを形成するように構成された前部に位置する広い側壁8及び後部に位置する広い側壁9と、両側部に位置する二つの狭い側壁10とを備え、広い側壁8に設けられているマーキング15がエンボス加工した要素を含む、箱。」

(10)甲10
甲10には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、喫煙用物品のためのパックに関している。」
「【0028】
前方パネル22に対するカラーパネル27のZ字状の折り畳み及びサブパネル38、39の折り畳み戻りが、「窓」42の形成をもたらすことが認められる。この「窓」は、カラーパネル27によって裏打ちされ、蓋部14の前方パネル16の下方端縁によって、その上方端縁で効果的に閉じられる。この窓は、全ての側でパックの前方パネルによって囲まれている。窓42の3つの側方を規定する折り畳み端縁と蓋部の折り畳み下方端縁の存在は、窓を通してカラーパネル27を見る時、へこんだ特性を与える。カラーパネル27は、言葉、ロゴ、他のグラフィクス等の、その上に印刷された要素(matter)を有し得る。この印刷は、パックの主要パネルの印刷と同時になされ得る。これによって、要求される時のカラーマッチ(同一)が保証され、印刷要素の窓内での正確な位置が保証される。」

(11)甲11
甲11には、以下の事項が記載されている。
「【0005】
・・・万線パターン加飾が施された紙容器を提供するものである。」
「【0006】
本発明の請求項1は、
印刷が施されたこの板紙上に、万線パターンを施したエンボス用の凹版を加熱及び加圧により押圧し、この板紙表面に万線パターンの表面加飾を施す加工において、前記板紙表面に、耐熱インキによる模様等の印刷層と耐熱耐圧離型ニスが設けられていることを特徴とする万線パターン加飾が施された紙容器である。」
「【0014】
・・・また、図2は、本発明の一実施例における万線パターン凹版を加熱、加圧により板紙上に押圧して万線パターンを形成した板紙を示す断面説明図である。」
「【0025】
本発明の加飾された板紙から、紙製容器、例えば贈答用の化粧箱、用品等を収納するケース等、その他、装飾に用いる板状製品等、広範囲の紙製品にも使用することが可能である。」

(12)甲12
甲12には、以下の事項が記載されている。
「【0009】本発明の請求項2に記載の表面エンボス仕様の紙製容器は、請求項1に記載の表面エンボス仕様の紙製容器において、円筒状などの胴面板20の積層紙材料の表面側に、積層紙材料の内面側を平滑に保持した状態でエンボス加工を施したことを特徴とする表面エンボス仕様の紙製容器である。」
「【0010】・・・図1Cに示す積層紙材料の内面側を平滑に保持した状態で、凹凸の高低差が50?100μm程度のエンボス加工を施したことによって、300μm程度の紙材料層3が50?100μm程度のエンボス加工の凹凸を吸収して、内面側の12μm程度のバリアー層4や60μm程度のシーラント層5などがエンボス加工の影響を受け難いために、各種のバリアー性や熱圧着時の密封性などを損なう恐れがない表面エンボス仕様の紙製容器を提供することができる。」
「【0016】
【発明の実施の形態】本発明の表面エンボス仕様の紙製容器における、円筒状などの胴面板20の積層紙材料の表面側に、エンボス加工を施す方法については、少なくとも紙材料層3の表面側に、樹脂フィルム層2を積層して成る、円筒状に成形する胴面板20の、長方形状に切断する前の巻取り状の積層紙材料製のブランクを、表面側を金属製のマット状のエンボスロールに、また内面側を金属製の平滑な受けロールに、それぞれ強く接触させて熱圧着しながら通過させる、通常のエンボスロールを用いる方法などで、図1Cに示す積層紙材料の内面側を平滑に保持した状態で、凹凸の高低差が50?100μm程度の、例えば和紙に似たマット状のエンボス加工を、特に制約なく適宜に施すことができる。」
「【0021】次に、円筒状に成形する胴面板20の、この巻取り状の積層紙材料製のブランクを、表面側を金属製の和紙に似たエンボス形状を彫刻したマット状のエンボスロールに、また内面側を金属製の平滑な受けロールに、それぞれ強く接触させて熱圧着しながら通過させて、図1Cに示す積層紙材料の内面側を平滑に保持した状態で、凹凸の高低差が50?100μm程度の、和紙に似たマット状のエンボス加工を施した後に、縦横が120×196mmの長方形状に切断して、この長方形状の積層紙材料製のブランクを、金属製の円柱状の成形バーに巻付けて、左右の端部どうしを熱圧着して、積層紙材料の表面側にマット状のエンボス加工を施した胴面板20を、図1Aに示す60mmφの円筒状に成形した。」

5.判断
(1)甲1発明を主たる引用例とする理由について
ア 本件発明1について(理由1-1)
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点1>本件発明1は、パックの「2つの大きい平面パネルの少なくとも一方が、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を含み、前記突起によって前記パックの前記1つ以上のパネルの表面との間に隙間を介した外側包装材をさらに備え、前記突起が規則的配列に配置されており、前記突起が略円形の凸形状」であるのに対して、甲1発明は、そのような突起や外側包装材を有さない点。

相違点1を検討する。甲2には、ラベル付容器に設けられる円形の凸部について、甲3、甲4には、凸部を有する包装容器について記載され、シガレットパックを外装フィルムで包むことが、甲5?甲8に記載されているように周知技術であるとしても、相違点1に係る構成のうちの、パックの2つの大きい平面パネルの少なくとも一方が、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を含み、前記突起によって前記パックの前記1つ以上のパネルの表面との間に隙間を介した外側包装材をさらに備えた点は、甲1?甲4に記載されていないし、その点が周知であることを示す証拠は、示されていない。
そして、本件発明1は、相違点1に係る構成を有することにより、「本発明のパックでは、突起18が、包装材をパネルの表面から浮かせて、それらの間に空隙を形成」し、「パック内部に収容された喫煙品に伝わる熱も減少し、熱により、パックに収容された喫煙品の品質に何らかの悪影響が及ぼされることは著しく制限される。」(本件特許明細書【0044】)という作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?9、12?16、18、及び21?23について(理由1-1)
本件発明2?9、12?16、18、及び21?23は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2?9、12?16、18、及び21?23は、甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明10について(理由2-1)
本件発明10は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明10は、甲1発明、甲2記載事項、甲3記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明11について(理由3-1)
本件発明11は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明11は、甲1発明、甲2記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明17について(理由4-1)
本件発明17は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明11は、甲1発明、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件発明19及び20について(理由5-1)
本件発明19及び20は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明19及び20は、甲1発明、甲3記載事項、甲4記載事項、甲10記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ 本件発明24について(理由6-1)
本件発明24と甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点2>本件発明24は、パックの「2つの大きい平面パネル部の少なくとも一方に、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を形成するステップと、前記パックが喫煙品で充填された後に外側包装材内に前記パックを包装するステップと、熱を利用して前記パック上の前記外側包装材を密封するステップであって、前記外側包装材は、前記複数の突起によって前記外表面との間に隙間を介する、ステップとを含み、前記突起が規則的配列に配置されており、前記突起が略円形の凸形状」であるのに対して、甲1発明は、そのような突起や外側包装材を有さない点。

相違点2を検討する。相違点2に係る構成のうち、パックの2つの大きい平面パネル部の少なくとも一方に、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を形成するステップと、前記パックが喫煙品で充填された後に外側包装材内に前記パックを包装するステップと、熱を利用して前記パック上の前記外側包装材を密封するステップであって、前記外側包装材は、前記複数の突起によって前記外表面との間に隙間を介する、ステップとを含む点は、甲1?甲4に記載されていないし、その点が周知であることを示す証拠は、示されていない。
そして、本件発明24は、相違点2の構成を有することにより、「本発明のパックでは、突起18が、包装材をパネルの表面から浮かせて、それらの間に空隙を形成」し、「パック内部に収容された喫煙品に伝わる熱も減少し、熱により、パックに収容された喫煙品の品質に何らかの悪影響が及ぼされることは著しく制限される。」(本件特許明細書【0044】)という作用効果を奏するものである。
よって、本件発明24は、甲1発明、甲1記載事項、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲9発明を主たる引用例とする理由について
ア 本件発明1について(理由1-2)
本件発明1と甲9発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点3>本件発明1は、パックの「2つの大きい平面パネルの少なくとも一方が、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を含み、前記突起によって前記パックの前記1つ以上のパネルの表面との間に隙間を介した外側包装材をさらに備え、前記突起が規則的配列に配置されており、前記突起が略円形の凸形状」であるのに対して、甲9発明は、広い側壁8に設けられているマーキング15がエンボス加工した要素を含むものの、そのような突起や外側包装材を有さない点。

相違点3を検討する。相違点3は、上記(1)アの相違点1と実質的に同じであるから、相違点1の判断と同様な理由により、相違点3に係る構成を当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、本件発明1は、甲9発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?9、12?16、18、及び21?23について(理由1-2)
本件発明2?9、12?16、18、及び21?23は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2?9、12?16、18、及び21?23は、甲9発明、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明10について(理由2-2)
本件発明10は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明10は、甲9発明、甲2記載事項、甲3記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明11について(理由3-2)
本件発明11は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明11は、甲9発明、甲2記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 本件発明17について(理由4-2)
本件発明17は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明11は、甲9発明、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

カ 本件発明19及び20について(理由5-2)
本件発明19及び20は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明19及び20は、甲9発明、甲3記載事項、甲4記載事項、甲10記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

キ 本件発明24について(理由6-2)
本件発明24と甲9発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点4>本件発明24は、パックの「2つの大きい平面パネル部の少なくとも一方に、その外表面から外側に突出する互いに間隔をおいて配置された複数の突起を形成するステップと、前記パックが喫煙品で充填された後に外側包装材内に前記パックを包装するステップと、熱を利用して前記パック上の前記外側包装材を密封するステップであって、前記外側包装材は、前記複数の突起によって前記外表面との間に隙間を介する、ステップとを含み、前記突起が規則的配列に配置されており、前記突起が略円形の凸形状」であるのに対して、甲9発明は、広い側壁8に設けられているマーキング15がエンボス加工した要素を含むものの、そのような突起や外側包装材を有さない点。

相違点4を検討する。相違点4は、上記(1)キの相違点2と実質的に同じであるから、相違点2の判断と同様な理由により、相違点4に係る構成を当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、本件発明24は、甲9発明、甲1記載事項、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲3発明を主たる引用例とする理由について
ア 本件発明1について(理由1-3)
本件発明1と甲3発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点5>本件発明1は、パックの2つの大きい平面パネルの少なくとも一方に設けられた突起によって前記パックの前記1つ以上のパネルの表面との間に隙間を介した外側包装材をさらに備えたものであるのに対して、甲3発明は、外側包装材を備えておらず、前部の平面パネルに配置された突起と外装包装材との間に間隙を有するものではない点。

相違点5を検討する。パックの2つの大きい平面パネルの少なくとも一方に設けられた突起によって前記パックの前記1つ以上のパネルの表面との間に隙間を介した外側包装材をさらに備えた点は、甲3に記載されていないし、その点が周知であることを示す証拠は、示されていない。
そして、本件発明1は、相違点5に係る構成を有することにより、「本発明のパックでは、突起18が、包装材をパネルの表面から浮かせて、それらの間に空隙を形成」し、「パック内部に収容された喫煙品に伝わる熱も減少し、熱により、パックに収容された喫煙品の品質に何らかの悪影響が及ぼされることは著しく制限される。」(本件特許明細書【0044】)という作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲3発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2?9、12?18、及び21?23について(理由1-3、4-3)
本件発明2?9、12?18、及び21?23は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2?9、12?18、及び21?23は、甲3発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明19及び20について(理由5-3)
本件発明19及び20は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明19及び20は、甲3発明、甲1記載事項、甲9記載事項、甲11記載事項、甲12記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明24について(理由6-3)
本件発明24と甲3発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。

<相違点6>本件発明24は、「パックが喫煙品で充填された後に外側包装材内に前記パックを包装するステップと、熱を利用して前記パック上の前記外側包装材を密封するステップであって、前記外側包装材は、前記複数の突起によって前記外表面との間に隙間を介する、ステップとを含」むものであるのに対して、甲3発明は、外側包装材を備えておらず、前部の平面パネルに配置された突起と外装包装材との間に間隙を有するものではない点。

相違点6を検討する。パックが喫煙品で充填された後に外側包装材内に前記パックを包装するステップと、熱を利用して前記パック上の前記外側包装材を密封するステップであって、前記外側包装材は、前記複数の突起によって前記外表面との間に隙間を介する、ステップすべてを含む点は、甲1?甲4に記載されていないし、その点が周知であることを示す証拠は、示されていない。
そして、本件発明24は、相違点6に係る構成を有することにより、「本発明のパックでは、突起18が、包装材をパネルの表面から浮かせて、それらの間に空隙を形成」し、「パック内部に収容された喫煙品に伝わる熱も減少し、熱により、パックに収容された喫煙品の品質に何らかの悪影響が及ぼされることは著しく制限される。」(本件特許明細書【0044】)という作用効果を奏するものである。
よって、本件発明24は、甲3発明、甲1記載事項、甲2記載事項、甲3記載事項、甲4記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 小括
以上のとおり、本件発明1?24は、上記(1)?(3)に述べたように、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1?24に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?24に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-02-15 
出願番号 特願2014-208070(P2014-208070)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 蓮井 雅之
井上 茂夫
登録日 2017-05-26 
登録番号 特許第6146873号(P6146873)
権利者 ブリティッシュ-アメリカン タバコ (ホールディングス) リミテッド
発明の名称 喫煙品用のパック  
代理人 池田 成人  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 野田 雅一  
代理人 阿部 寛  
代理人 山口 和弘  

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