ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F41B 審判 全部申し立て 2項進歩性 F41B |
---|---|
管理番号 | 1338151 |
異議申立番号 | 異議2017-701172 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-12-13 |
確定日 | 2018-03-03 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6145770号発明「ブローバックガスガン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6145770号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.手続の経緯 特許第6145770号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成25年6月12日に特許出願され、平成29年5月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 渡邊明(以下「申立人」という。)により平成29年12月13日に特許異議の申立てがされたものである。 第2.本件発明 特許第6145770号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下「本件発明1ないし3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 弾丸を発射する際、ピストンの前方のシリンダ内に供給された圧縮ガスの圧力によって、スライドに固定したピストンがシリンダの内周に沿って後退するようにした遊戯用ブローバックガスガンにおいて、シリンダの内周にクリアランスをあけて収納したピストンの前端に軸部を突出形成し、該軸部の外周にクリアランスをあけてカラーを装着し、該カラーの外周に形成した環状溝に弾性のピストンパッキンを嵌合し、さらにピストンの軸部の前端にピストン頭部を結合することによって、軸部の周りのクリアランスだけカラーを周方向に移動可能としたことにより、シリンダ内を摺動するピストンパッキンの軸芯がシリンダの軸芯と一致するように構成し、且つ前記ピストンの軸部に結合したピストン頭部は、ガン本体の前方に向けて湾曲状に突出した形状を有することを特徴とするブローバックガスガン。 【請求項2】 ピストンパッキンの形状はピストンパッキンの周部がガン本体の前方に向けて傾斜状に突出した形状とし、ピストンの前方に供給された圧縮ガスの押圧によってピストンパッキンの周部が外周方向へ起き上がったとき、ピストンパッキンの周部がシリンダの内周へ密着するようにしたことを特徴する請求項1記載のブローバックガスガン。 【請求項3】 弾性を有する合成樹脂材料によりカラーとピストンパッキンを一体的に形成するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のブローバックガスガン。」 第3.申立理由の概要 1.申立人の主張の概要 本件発明1?3に係る各発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号に該当するか、あるいは、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明と甲第4号証及び甲第5号証とに記載された発明とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、本件特許は同法第113条第2号の規定に該当し、特許を取り消されるべきものである。 2.申立人が提出した証拠方法 ・甲第1号証:月刊アームズ・マガジン2007年10月号、2007年10月1日発行、[編集人]小川友太、[発行人]山口英生、[発行所]株式会社ホビージャパン ・甲第2号証:トイガン解体新書 改訂版2011-2012、2011年9月29日発行、[編集人]岩田友太、[発行人]松下大介、[発行所]株式会社ホビージャパン ・甲第4号証:特開平11-287596号公報 ・甲第5号証:特開2004-205053号公報 第4.各甲号証の記載事項 1.甲第1号証 甲第1号証には以下の事項が記載されている。 以下、各甲号証の(1a)等の記載事項を「摘記事項(1a)」などという場合がある。また下線は当審において付与した。 (1a)80ページ(なお、ページ番号として甲第1号証の各ページ下隅に付された番号を用いる。)の最上部には「トイガン」と記載され、タイトル「解体新書」のと記載の下には「東京マルイ コルトM1911A1」に関し、以下の記載がある。 「M1911A1ガバメントのハンマーメカニズムは先のハイキャパと同じ構造だ。・・・ブローバックメカニズムも東京マルイ独自の筒型弁で、これも各ブローバックモデルに共通だから、経験者には簡単な解体だろうし、ホップアップバレルの仕組みも他のモデルと同じだ。」 (1b)80ページの中程にある「フレームの分解」との見出し下には、複数の写真が掲載されているところ、その最上段左には以下の写真及び説明文が掲載されている。 (1c)82ページの最上部にある「スライドの分解」との見出し下には、複数の写真が掲載されているところ、同ページの上から4段目?83ページ上から1段目には、以下の写真及び説明文が掲載されている。 (1d)コルトM1911A1は、摘記事項(1a)によれば、ブローバックメカニズムを有するトイガンであり、摘記事項(1b)によればスライドを有し、摘記事項(1c)によれば、シリンダを内部に有するピストンがスライダに取り付けられていること、ピストンカップがネジによりピストンに固定されていることが理解できる。 以上の記載事項(1a)?(1c)及び認定事項(1d)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。 「スライドと、該スライドに取り付けられ内部にシリンダを有するピストントと、該ピストンにネジで固定されるピストンカップを備えた、ブローバックメカニズムを有するトイガンであるコルトM1911A1。」 2.甲第2号証 甲第2号証には以下の事項が記載されている。 (2a)102ページ(なお、ページ番号として甲第2号証の各ページ下隅に付された番号を用いる。)の上段には「MEUピストル」に関し、以下の記載がある。 「MEUピストルのハンマーメカニズムも、東京マルイ独自の筒型弁によるブローバックシステムも、M1911A1ガバメントモデルやハイキャパシリーズ、デトニクスシリーズとまったく同じだ。従って基本的な分解・組立方法も違いはない。ただ、リアサイトの違いからくる、シリンダーリターンスプリングの取り付け位置や、サムセーフティがアンビになっている点など、若干の違いはある。また、ピストンカップの形状も変わっている。・・・」 (2b)「スライドの分解」において、複数の写真が掲載されているところ、104ページの最下段?105ページ最上段には以下の写真及び説明文が掲載されている。 以上の記載事項、掲載された写真及び説明文によれば、甲第2号証には、以下の事項が記載されているといえる(以下「甲第2号証に記載された事項」などという場合がある。)。 「M1911A1ガバメントモデルのピストンカップに代えて、ヘッドとYリングからなるYリングヘッドを採用すること。」 3.甲第4号証 甲第4号証には以下の事項が記載されている。 (3a)「【0013】ピストン15は可動部材14の後部をシリンダ34として、その内部にて後退及び前進可能な構成を有し、圧力室12に面する側から加わる圧力ガスに対する気密性を高めるためにシール手段35を有する。可動部材14の前部はガス流路31を構成し、その間つまりシリンダ34とガス流路31との間に圧力室12が位置する。可動弁32は、圧縮ガスを受ける側面36が圧力室12において圧縮ガスの圧力を受けても、その動きが乱されることなくピストン15の後退運動に追随して移動するように設定される。」 (3b)「【0020】引き金操作により打撃部材18が作動すると、弁口21が開いて蓄圧部22のガスが部外通路11へ噴出し、この状態が打撃部材18によって維持される。図2参照。ガスは可動部材14の通口46から圧力室12へ流入し、開閉手段33が閉じているためピストン15を加圧し、ピストン15が後退し始めるとともに、可動弁32が同方向へばね付勢下に移動し始める。ガスの圧力は可動弁32にも作用するが、圧力の影響を受けにくい形状とされ、かつばね手段39がガス圧力に対抗するので、可動弁32は安定してピストン15の後退に追随する。 【0021】ピストン15の後退が進み、開閉手段33の口37、38が重なる状態になると、装弾室27へ通じるガス流路31にガスが流入し、その圧力によって、装弾室27に保持されていた弾丸13が一気に発射される。図3の状態である。この間にもピストン15にはガスの圧力が継続してかかっているため、ピストン15は後退運動を続ける。 【0022】その結果、開閉手段33が再び閉じ状態となり、後退運動を続けているピストン15にガスの圧力が集中する。ピストン15は後退運動を続け、この過程で打撃部材18が後退するピストン15によって起こされ始める。図4参照。なお可動弁32はばね手段39の作用を受けて閉じ位置におかれる。 【0023】可動部材14がスライダ16と共にさらに後退し、打撃部材18がシア24に係止される段階になると、開閉弁20が復帰して弁口21が閉じ、ガスの噴出が停止する(図5)。スライダ16の後退とともに、銃本体の上部が露出される。このとき本発明では可動部材14がピストン15と共に後退してスライダ16の中に隠れ、外から見えないため、より実銃に近いリアルな感じとなる。」 (3c)【図1】?【図5】には、ピストン15の前端が湾曲状に突出した形状であることが示されている。 4.甲第5号証 甲第5号証には以下の事項が記載されている。 (4a)「【0012】 今、蓄圧部11にガスが充填され、弾丸装填部25に弾丸26が装填された状態において(図1)、引き金16を引くと、ハンマー18が回転して、開弁した開閉弁12からガスがガス通路13に放出される。ガスは可動弁27から前方ガス通路14を経て、弾丸装填部に装填されている弾丸26を移動させ、その一方では、後方ガス通路15を経てシリンダ28に流入し、ピストン29を加圧し、ピストン29と一体のスライド21の後方への移動(往動)を開始し得る状態になる(図2)。 【0013】 弾丸26が銃身31から発射され、可動弁27が前方ガス通路14を閉じると同時に、図3に示すようにブローバックが始まりスライド21が銃身後方へ移動し、その結果スライドブリーチがハンマー18の前面に接触する状態になる。このとき、スライド21のブリーチ部にはローラーが設けられているためこれを抵抗低減部23として軽い抵抗力でハンマー18が押される状態となる。スライド21の後方移動の間ローラーがハンマー前面22を滑動するので、ハンマー18はスムーズに引き起こし状態となりシアー32により係止され、所謂コッキング状態となる(図4)。」 (4b)【図1】?【図5】には、ピストン29の前端が湾曲状に突出した形状であることが示されている。 第5.当審の判断 1.本件発明1について (1)対比・判断 申立人が、甲第1号証の写真に挿入した引出帯に付された部品番号(摘記事項(1c)を参照。)を利用して対比・判断を行う。 ア.対比 (ア)引用発明の「トイガンであるコルトM1911A1」は「遊戯用」といえるところ、引用発明の「ピストン」は、「スライドに取り付けられ」るものであり、甲第1号証の82ページ最下段の右から2番目の写真(摘記事項(1c)の中段右から2番目)を参酌すると、「シリンダ」の内周を摺動する部品2(本件発明1の「ピストン」に相当。)を有するものといえる。そして、シリンダとピストンを利用するブローバックメカニズムとしては、甲第4号証及び甲第5号証(摘記事項(3b)及び(4a)を参照。)に示されるように、弾丸を発射させ際に、ピストンの前方のシリンダ内に供給された圧縮ガスの圧力によって、スライドに固定したピストンがシリンダの内周に沿って後退するように構成することが技術常識といえる。そうすると、引用発明は、本件発明1の「ピストン弾丸を発射する際、ピストンの前方のシリンダ内に供給された圧縮ガスの圧力によって、スライドに固定したピストンがシリンダの内周に沿って後退するようにした遊戯用ブローバックガスガン」であることを充足するものといえる。 (イ)引用発明の「シリンダ」と該「シリンダ」の内周を摺動する部品2(ピストン)との間にクリアランスがあることは技術常識から明らかであり、甲第1号証の82ページ最下段の右から2番目の写真(摘記事項(1c)中段の右から2番目)を参酌すると、部品2(ピストン)の前端に部品15(本件発明1の「軸部」に相当。)を突出形成することが看取できるから、引用発明は、本件発明1の「シリンダの内周にクリアランスをあけて収納したピストンの前端に軸部を突出形成し」との構成を充足するものといえる。 以上によれば、本件発明1と引用発明とは以下の点で一致するといえる。 <一致点> 「弾丸を発射する際、ピストンの前方のシリンダ内に供給された圧縮ガスの圧力によって、スライドに固定したピストンがシリンダの内周に沿って後退するようにした遊戯用ブローバックガスガンにおいて、シリンダの内周にクリアランスをあけて収納したピストンの前端に軸部を突出形成したブローバックガスガン。」 そして、以下の点で相違するといえる。 <相違点> 本件発明1は、「該軸部の外周にクリアランスをあけてカラーを装着し、該カラーの外周に形成した環状溝に弾性のピストンパッキンを嵌合し、さらにピストンの軸部の前端にピストン頭部を結合することによって、軸部の周りのクリアランスだけカラーを周方向に移動可能としたことにより、シリンダ内を摺動するピストンパッキンの軸芯がシリンダの軸芯と一致するように構成し、且つ前記ピストンの軸部に結合したピストン頭部は、ガン本体の前方に向けて湾曲状に突出した形状を有する」のに対して、 引用発明は、「内部にシリンダを有するピストンと、該ピストンにネジで固定されるピストンカップを備えた」ものであるが、ピストンカップがピストンにネジで固定されるための具体的構造が明らかでなく、また、かかるピストン頭部がどの部分であるか不明なので、その形状も明らかでない点。 イ.判断 (ア)特許法第29条第1項第3号について 本件発明1と引用発明との間には上記相違点が存在するから、本件発明1は引用発明であるとはいえない。 (イ)特許法第29条第2項について 甲第1号証の82ページ最下段の右から2番目及び3番目の写真及び説明文(摘記事項(1c)の中段の右から2番目及び3番目)を参酌すると、ピストンカップがネジで部品2(ピストン)の前端に突出形成された部品15(軸部)に固定されることが開示されているといえるとしても、ピストンカップ、ネジ及び部品15(軸部)の相互の連結構造までは把握できない。また、甲第2号証には、上記「第4.2.」において示したとおり、「M1911A1ガバメントモデルのピストンカップとして、ヘッドとYリングからなるYリングヘッドを採用すること」が開示されているが、甲第2号証の104ページ最下段右から1番目の写真及び説明文(摘記事項(2b)を参酌しても、Yリングヘッド、ネジ及び甲第1号証の部品15(軸部)に相当する部品の相互の連結構造まで開示するものでない。なお、申立人が参考資料として提出している甲第3号証は、甲第1号証のピストンカップ(甲第2号証のYリング19及びヘッド16として示されている。)、ネジ及び部品15(軸部)の相互の連結構造を実際の部品のサイズどおりに正確に描いたものとは直ちに認められないから、参照することはできないが、仮に参照しても、ヘッド16の中心の孔の径はネジの頭の径よりも大きく描かれているから、どのようにしてヘッド16がネジにより部品15に固定されるものか明らかでない。 また、甲第4号証及び甲第5号証には、ピストンの前端が湾曲状に突出した形状であることが示されている(摘記事項(3c)(4b)を参照。)が、ピストンカップがピストンにネジで固定されるための具体的構造については示されていない。 よって、引用発明、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項とに基いて、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)まとめ 以上によれば、本件発明1は、引用発明でなく、また、引用発明、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本件発明2ないし3について 本件発明2ないし3は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加するものであって、上記1.のとおり、本件発明1は、引用発明でなく、また、当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明2ないし3は、引用発明でなく、また、引用発明、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項とに基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 第6.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないことから、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2018-02-22 |
出願番号 | 特願2013-123374(P2013-123374) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(F41B)
P 1 651・ 113- Y (F41B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 諸星 圭祐 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
中田 善邦 島田 信一 |
登録日 | 2017-05-26 |
登録番号 | 特許第6145770号(P6145770) |
権利者 | マルシン工業株式会社 |
発明の名称 | ブローバックガスガン |